Paper

日本バーチャルリアリティ学会第 10 回大会論文集(2005 年 9 月)
MR テーブル花火
The Desktop Mixed Reality Fireworks
木村 朝子,小川 直昭,秋友 恵,大槻 麻衣,川野 圭祐,比嘉 恭太,柴田 史久,田村 秀行
Asako KIMURA, Naoaki OGAWA, Megumi AKITOMO, Mai OTSUKI,
Keisuke KAWANO, Kyota HIGA, Fumihisa SHIBATA, and Hideyuki TAMURA
立命館大学 情報理工学部
(〒525-8577 滋賀県 草津市 野路東 1-1-1)
Abstract: "The Desktop Mixed Reality Fireworks" is a Mixed Reality attraction, mixing virtual world and
real world, with which users can design different kinds of colorful fireworks as if they were a "fireworks
designer," and also can display the fireworks launching up above a table with explosion sound. In this
attraction, there are three steps to display fireworks; "designing firework balls," "setting the firework balls into
a launcher on the table," and "firing up a launcher, and displaying the miniature fireworks." Two tool devices;
a tweezers device and a firebrand device, are used to manipulate virtual CG objects such as and firework ball.
Key Words: Mixed Reality, Fireworks, Video See-through HMD, Interactive Tool Device.
1. はじめに
2. システム構成
「MR テーブル花火」は,複合現実感(MR)を利用して,
図 1 に本システムの体験風景,図 2 にシステム構成を示
打ち上げ花火のデザインを楽しむ MR アトラクションであ
す.このアトラクションは,キヤノン製の MR プラットフ
る.ヒューマンインタフェース教育の一環として,MR と
ォーム・システム上に,同 SDK を用いたアプリケーショ
いう新しい概念を学ぶと共に,自ら花火をデザインできる
ンとして構築した.体験者は,ビデオシースルー型 HMD
楽しさを味わえるよう配慮して開発した.
を装着し,複合現実空間で花火玉を作り上げ,打ち上がっ
本システムでは,体験者が花火デザイナとなって様々な
た CG 製の花火を観賞する.現実物体として存在するのは,
形・色のミニチュア花火を作成し,テーブル上空に打ち上
打ち上げ筒,花火の作成用のピンセット型デバイスと打ち
げることができる.「MR テーブル花火」には,「花火玉の
上げ用のたいまつ型デバイスである.2 つの操作デバイス
作成」「花火玉の打ち上げ筒へのセット」「打ち上げ筒へ
と HMD の位置姿勢検出には,Polhemus 社製の磁気センサ
の点火と打ち上げ」という機能があり,それぞれピンセッ
3SPACE FASTRAK を使用している.
ト型デバイス,たいまつ型デバイスという実物の道具を利
用して操作を行う.本システ厶では,複数の筒から沢山の
3. インタラクション機能
花火を連射することも可能であり,テーブル上空に効果音
3.1 花火玉の作成
とともに描画される花火を,好きな角度から確認・観賞す
ることができる.
HMD を通してテーブルを眺めると CG で描かれた花火
玉の枠と星パレット(図 3)が並んで見える.星とは,花
火の種類を決める火薬で,「掛け星」「菊星」「小割星」
たいまつ型デバイス
(磁気センサ)
ピンセット型デバイス
(磁気センサ)
トランスミッタ
MR テーブル花火の操作風景
図 2
表示映像
(VGA)
中継
BOX
センサコントローラ
図 1
カメラ映像
(NTSC)
HMD
コントローラ
位置姿勢
システム構成
PC スピーカー
図 3
星パレット
掛け星
菊星
小割星
千輪菊星
柳星
終了星
図 4
(a) 花火玉の作成
(c) 導火線の着火
星の種類
図 5
(a) 掛け星
(d) 花火の打ち上げ
テーブル花火の制作工程
(b) 柳星
図 6
(b) 花火玉の筒への投入
(c) 掛け星・千輪菊星混合花火の同時打上げ
花火の打ち上げ例
「柳星」「千輪菊星」の 5 種類あり(図 4),それぞれ赤,
がスピーカーから再生される.1 つの筒に複数の花火玉が
青,紫,緑,金,銀色のバリエーションがある.
入っている場合には,最後に投入された花火玉から順に打
星の配置作業には,ピンセット型のデバイスを用いる
(図 5(a)).花火玉の枠は 3 層構造で,各層には 1 種類の
ち上がる.また,2 つの導火線に瞬時に着火することで,2
つの花火を同時に並んで打ち上げることができる.
星を配置する.星の種類と枠内の配置を変えることで,
花火を構成する個々の火花は,炎らしさを出すため,透
様々な花火を表現できる.3 層中 1 層だけに星を配置して
明なオブジェクトを重ねて表現している.花火らしく自然
もよい.外側の層の星ほど,打ち上げ時に大きく広がる.
に見えるように,花火玉の爆発後,それぞれの火花はラン
枠の中央に「終了星」を入れると,花火玉が完成する.
ダムに,しかし重力に従って放射状に落下するように描い
完成した花火玉は,ピンセット型デバイスで机上の打ち
ている.図 6 に花火の打ち上げ例を示す.
上げ筒(実物)の中に入れる(図 5(b))
.筒に花火玉が入
ると,筒から導火線が伸びてくる.打ち上げ筒は 2 つあり,
4. むすび
1 つの打ち上げ筒に複数の花火玉を入れることができる.
複合現実空間の体験と花火作りの楽しさを味わえるア
作成した花火玉をすぐに打ち上げたい場合は,次の花火玉
トラクション「MR テーブル花火」制作した.体験者の視
の打ち上げ作業に進み,同時に複数の花火を打ち上げる場
点移動に応じて,ミニチュアの花火を任意の視点から眺め
合は,引き続き新しい花火玉の作成を行う.
られる機能は好評を得ている.
3.2 花火玉の打ち上げ
花火玉の打ち上げには,たいまつ型デバイスを利用し,
一般に,拡がる花火に対して,音は遅れて出て届くもの
というイメージがある.ミニチュアの花火の場合,視覚空
CG の導火線に着火する(図 5(c)).導火線が燃え尽きる
間と聴覚空間は同じスケールに合わすべきなのだろうか.
と花火玉が打ちあがり,筒の上(テーブルの約 1m 上空)
視覚と聴覚が共存する複合現実空間の問題として,今後は
で花火が爆発する(図 5(d)).打ち上げ音と花火の爆発音
本システムを研究的観点から分析する予定である.