女性が活躍できる職場のあり方に関する 調査研究

女性が活躍できる職場のあり方に関する
調査研究報告書
平成 21 年 3 月
財団法人
企業活力研究所
委託先:富士通総研
この調査研究事業は、競輪の補助金を受けて
実施したものです。
http://ringring-keirin.jp/
はしがき
当面の景気状況は極めて厳しく、雇用不安が増大しているが、中長期的には、少
子高齢化の進行により、国内労働力の質的量的不足感が高まり、企業が労働力を確
保することがますます重要な課題となっている。そうした中で、女性の高学歴化や
社会進出が進み、女性が活躍できる機会が拡大し、企業においても女性を活用する
動きが出てきているものの、総じていえば、我が国企業においては女性を十分活用
しておらず、女性が活躍しきれていないように思われる。
このため、企業の実態を踏まえながら、女性が活躍できる職場づくりのあり方に
ついて、多角的に掘り下げて検討を行い、提言をとりまとめることとした。
検討においては、
「人材育成活用研究会」を設置し、企業、経済団体、学識者、
コンサルタントなどの方々に委員として参加いただくとともに、経済産業省にもオ
ブザーバーとして参加して頂いた。
林
文子東京日産自動車販売株式会社 代表取締役社長を委員長とする「人材育
成活用研究会」の委員や、顧問の皆様には、ご多忙の中、熱心に検討に参加して頂
き、心から御礼申し上げる。さらに、何人かの委員等の方に補論を執筆いただき、
感謝の念に絶えない。
また、講演に快くご対応頂いた有識者や企業の方々、オブザーバーとして参加し
て頂いた経済産業省の方々、そして、アンケート調査にご回答頂いた方々に対して
も、心から御礼を申し上げる次第である。
本報告書が、女性が活躍できる職場づくり、そして、男性にとっても働きやすい
職場づくりに貢献できれば幸いである。
平成21年3月
財団法人 企業活力研究所
株式会社 富士通総研
-ⅰ-
調査概要
1.
女性の活用・活躍についての実態調査
本調査研究では、女性の活用・活躍推進に関して、個別企業の具体的取組事
例を聴取するとともに、企業の人事担当者と働く女性に対するアンケート調査
を行ったが、アンケート調査結果の要点は以下の通り。
① 企業が女性の活用・活躍を推進する理由は、「人材確保」と「経営効率化」
が多い。また、その推進した効果としては、採用・定着・能力開発等の人
事面と企業業績、企業イメージ等の事業面を挙げるものが多い。
② 取り組んでいる内容としては、
「育児休業、介護休業などの整備」
、
「人事考
課基準の明確化」が多いが、この2項目においても、利用度が高いとする
割合は45%程度である。
③ 推進が困難な理由としては、
「女性がすぐ辞めてしまうので育成できないこ
と」
、
「企業業績や経営戦略の問題として企業が捉えていないこと」を挙げ
る割合が多い。また、男性人事担当者は女性側に問題があると捉えている
ものが多く、女性人事担当者は企業や風土に問題があると捉えているもの
が多い。
④ 今後促進する上で重要なことは、
「仕事と家庭の両立」
(制度の充実・利用、
働きやすい環境の整備)、「男性の意識変革」、「女性の意識変革」を挙げて
いる。
2.
女性の活用・活躍の意義・重要性
企業が女性を活用し、女性が活躍することは、企業にとっては以下のような
メリットをもたらすと考えられる。
① 女性を活用しないと優秀な人材の確保、定着が困難となる。
② 女性の活用・活躍推進は企業の業績の向上等に良い影響をあたえる。
③ 女性の活用・活躍推進は企業が社会で持続的に発展する上で重要である。
3.
女性が活躍できる職場のあり方(提言)
女性の活用・活躍を推進し、皆が働きやすい職場、社会を作っていくため、
企業への提言と、社会・政策への提言を行い、企業で働く女性と男性へのメッ
セージをとりまとめた。
-ⅱ-
《企業への提言》
1
「経営戦略の中で女性の活用・活躍の推進を明確化する」
① 女性の活用・活躍推進を経営トップ自らの課題としてビジョンに掲げる。
② 女性活用推進組織、委員会を設置して継続的な活動を行う。
③ 女性の職域の拡大、管理職の増加を図る。
2
「女性が働きやすい環境整備と、シンボリックモデルの創出、支援を行う」
① 女性の活用の大前提として女性が働きやすい環境整備を行う。
② 女性社員に対して具体的な目標となるシンボリックモデルを創出する。
③ 女性社員に対する教育研修の充実、メンター制度等のバックアップを行う。
3
「現場の男性管理職並びに男性の意識改革が不可欠である」
① 男性の持つ女性に対する固定概念を打破する必要がある。
② 男性管理職の教育研修により、女性の活用が重要であることを理解させる。
4
「女性に限らず、全ての人が活躍できる職場の実現を目指す」
① 多様性を認める価値観を経営の根幹とする。
② 男女を問わず働く人のワークライフ・バランスを推進する。
《社会・政策への提言》
1 「誰もが、いつでも、社会インフラとして保育サービスを受けたい人が受けら
れる仕組みを構築する。
」
① 既存の認可保育所以外にも保育サービスを受けられる施設、場を拡大する。
② 保育サービスの利用要件と提供時間等に係る制限を緩和する。
2 「学校教育段階で、女性と男性が共に働き、共に社会を作る意識についての教
育を更に推進し、浸透させる。」
3
「税制面の配偶者控除や年金制度における被扶養配偶者受給などを見直す。
」
《企業で働く女性へのメッセージ》
《企業で働く男性へのメッセージ》
-ⅲ-
人材育成活用研究会
委員名簿
委員長
林
文子
東京日産自動車販売株式会社
顧問
篠原
欣子
テンプホールディングス株式会社
〃
髙橋
宏
委員
雨宮
弘子
東京電力株式会社
〃
遠藤
和夫
社団法人日本経済団体連合会
〃
加藤
真
富士通株式会社
ソリューション事業推進本部 本部長代理
〃
北原
正敏
法政大学大学院
政策創造研究科
〃
小早川
〃
斎藤
智文
〃
佐藤
修
〃
鈴木
初枝
株式会社三菱東京UFJ銀行
人事部 女性活躍推進室長
〃
関
幸彦
パナソニック株式会社
コンシューマー人事グループマネージャー
〃
高橋
俊介
慶應義塾大学大学院
〃
田口
光彦
株式会社日本能率協会マネジメントセンター
〃
谷口
真美
早稲田大学大学院
〃
中澤
二朗
新日鉄ソリューションズ株式会社
〃
中島
哲
トヨタ自動車株式会社
〃
鍋山
徹
株式会社日本政策投資銀行
〃
西岡
佳津子
株式会社日立製作所
〃
早坂
礼子
株式会社産業経済新聞社
〃
細谷
功
東京ガス株式会社
〃
村井
満
株式会社リクルートエージェント
オブザーバー
新川
達也
経済産業省
経済産業政策局
産業人材政策室長
〃
一色
広樹
経済産業省
経済産業政策局
産業人材政策室
〃
松井
滋樹
経済産業省
経済産業政策局
経済社会政策室長
〃
大西
啓仁
経済産業省
経済産業政策局
経済社会政策室
室長補佐
〃
平野
恵子
経済産業省
経済産業政策局
経済社会政策室
室長補佐
〃
原
正紀
ジョブカフェ・サポートセンター
事務局
土居
征夫
財団法人企業活力研究所
理事長
〃
沖
茂
財団法人企業活力研究所
専務理事
〃
小藤
雅俊
財団法人企業活力研究所 常務理事
〃
大惠
英樹
財団法人企業活力研究所
〃
臼井
純子
株式会社富士通総研
取締役
〃
狩野
史子
株式会社富士通総研
公共コンサルティング事業部
マネジングコンサルタント
〃
吉本
明憲
株式会社富士通総研
公共コンサルティング事業部
コンサルタント
伊和夫
首都大学東京
代表取締役社長
代表取締役社長
理事長
労務人事部
ダイバーシティ推進室長
労政第二本部 機会均等グループ長
教授
富士フイルムホールディングス株式会社
組織と働きがい研究所
担当部長
所長
株式会社コンセプトワークショップ
-ⅳ-
人事部
理事
コンセプトデザイナー
政策・メディア研究科
商学研究科
教授
研修ラーニング事業本部長
教授
人事部部長
東京総務部
人事室長
調査部長
労政人事部
ダイバーシティ推進センタ長
編集委員兼名古屋特派員
人事部
人材開発室長
代表取締役社長
事務官
代表
企画研究部
事務局長
主任研究員
PPP推進室長
人材育成活用研究会
開催経緯
第 1 回(平成 20 年 10 月 6 日)
□研究会趣旨説明
□事務局による問題提起
第 2 回(平成 20 年 11 月 19 日)
□委員及び外部有識者による課題提起
①慶應義塾大学大学院
高橋俊介委員
②組織と働きがい研究所 斎藤智文委員
③株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
佐々木かをり講師
第 3 回(平成 20 年 12 月 3 日)
□企業の女性活用・活躍推進に係わる取り組み事例の報告
①株式会社三菱東京UFJ銀行 鈴木初枝委員
②株式会社日立製作所
西岡佳津子委員
③新日鉄ソリューションズ株式会社
中澤二朗委員
第 4 回(平成 21 年 1 月 7 日)
□女性が活躍する上での問題点の説明
①テンプホールディングズ株式会社
篠原欣子顧問
□女性を活用した商品開発事例の報告
②パナソニック株式会社 関幸彦委員、発表者:植木
□実態調査内容検討
第 5 回(平成 21 年 2 月 4 日)
□実態調査集計結果報告
□報告書(案)審議
第 6 回(平成 21 年 3 月 4 日)
□報告書(案)審議
-ⅴ-
風子氏
目 次
I. はじめに .............................................................................................. 1 頁
Ⅱ.女性の活用・活躍の現状 ...................................................................... 2 頁
Ⅲ.アンケート調査 .................................................................................... 7 頁
Ⅳ.女性の活用・活躍促進への取組事例 ................................................... 34 頁
Ⅴ.女性の活用・活躍推進の意義・重要性 ................................................. 43 頁
Ⅵ.企業における女性の活用・活躍推進上の課題 ..................................... 51 頁
Ⅶ.女性が活躍できる職場のあり方(提言) ............................................ 53 頁
資料 1.【参考】企業における女性の活用・活躍推進の取組状況と必要な施策例
資料2.報告書補論
資料3.「女性が活躍できる職場のあり方についての実態調査」調査項目
資料4.「女性が活躍できる職場のあり方についての実態調査」単純集計結果
資料5.「女性が活躍できる職場のあり方についての実態調査」自由回答結果
I. はじめに
我が国においては、景気の急速な悪化に伴い、雇用情勢が悪化しているが、中長期
的には少子化の進展もあって、国内労働力の質的量的不足感が高まり、企業が労働力
を確保することがますます重要な課題になると認識される。他方、女性の高学歴化、
および、女性の社会進出が進み、女性が活躍できる機会も拡大してきている。また、
サービス産業の拡大など産業構造が変化するとともに、消費活動における女性の役割
がますます高まってきており、女性社員の積極的かつ戦略的な活用により、市場にお
ける多様なニーズを着実に把握し、商品およびサービスの開発等に生かすことで、業
績をあげている企業もある。
更に、女性を活用している企業の業績が高いという相関関係について種々の報告が
なされており、因果関係は定かではないものの、女性を活用することが業績にも良い
影響を及ぼしているものと思われる。しかしながら、いまだに女性の活用が進んでい
るとは言いがたい企業が多く、遅々として進まない実態が認められる。
一方、企業や社会において、女性が活躍する上でまだ多くの障害、問題があると言
われている。その中には、企業内の風土、男女それぞれの従業員の意識、社会におけ
るインフラ等にまで係わるものもある。
このような状況を踏まえ、本研究会においては、企業側の視点、働く女性の視点か
ら現状の職場を把握した上で、実際に女性が活用されない問題点を探るとともに、企
業の取り組み事例等を検討した。更に、女性を活用する意義・重要性を検討するとと
もに、女性の活用・活躍に向けて主要な四つの課題を掲げ、そして、女性が活躍でき
る職場のあり方に関する提言を取りまとめた。
-1-
II. 女性の活用・活躍の現状
女性の活用・活躍の現状を、就労人口の男女比、女性の就業率、雇用形態、勤続年数、
仕事を辞める理由、女性の管理職の割合から見ると以下のようになる。
1. 労働力に占める女性の割合
就労人口における男女の比率をみると、内閣府「男女共同参画白書」(平成 20 年版)
によれば、労働力人口比率は、平成 19 年度に男女合わせて約 60%であった。1そのうち、
男性の 70%は就労についているが、女性は 50%弱となっており、男性に比べ女性の働
いている人が少ないことがわかる。
また、総務省統計局「労働力調査」によると、女性就業者数2は、平成 19 年現在で、
2,663 万人となっている。また、女性就業者数のうち女性雇用者数は、2,297 万人(同
年)となり、就業者数全体の中で女性は約 40%(同年)を占めるまでになっている。
図表 1.1 からもわかるように、就業者に占める女性の割合は、年々増加していることが
わかる。
しかしながら、世界的にみると、OECD の調査(OECD
Employment Outlook2008)に
よれば、日本の男性労働者(25~54 歳)の就業率は 93%で第3位であるのに対して、
女性就業率(同年齢)は、67%である。これは、アイスランド、スウェーデン、ノルウェー
などの上位国とは 15 ポイントも差があり、欧米の先進国に比べて女性の就業率はまだ
低い状態にある。
因みに、
日本女性の高等教育履修率は OECD 平均の 29%に対して、
43%、
第 3 位と高い地位となっている。このことから、日本の女性は高い教育を受けていなが
ら、その能力が十分に社会で活用されていないことがわかる。
1労働力人口とは、就業者数と完全失業者数の合計であり、労働力人口比率は、15
歳以上の
人口に占める労働力を意味する。
2 就業者数とは、従業者と休業者を合わせた者を指し、雇用者とは、会社、団体、官公庁等
に雇われて給料、賃金を得ている者、及び、会社、団体の役員と捉えている。
-2-
図表-2.1 就労人口の男女比推移
(出典:総務省統計局「労働調査」
)
2. 雇用形態
雇用者数に占める女性の割合は約 40%になっているが、雇用形態からみると、正規
社員では、女性が 29%、男性が 71%となり、非正規社員(パート・アルバイト、契約・
嘱託社員、派遣社員など)では、女性が 53%、男性が 47%となる。女性の就業者数は
高まっているものの、非正規社員が多く占めている様子が理解できる。
図表-2.2 雇用形態別にみた役員を除く雇用者(非農林業)の構成割合の推移
(出典:内閣府「男女共同参画白書」平成 20 年版)
-3-
3. 勤続年数
勤続年数については、平成 19 年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」から、男性
の平均が 13.3 年であるのに対して、女性は 8.7 年であるという結果がでている。
また、リクルートワークス研究所が平成 18 年に行った調査でも、多くの日本企業に
おいて、男性に比べて女性の勤続年数が短いという結果がでている。
図表-2.3
3 年未満の男女別離職率
図表-2.4 男女別平均勤続年数
3年未満の男女別離職率
男女別平均勤続期間
50
46.3
45
離職率
35
46
200
37.7
30
25
20
46
20.3
24.3
23
平均勤続期間(ヶ月)
40
27
15
10
5
0
2000
2002
2004
150
151.7
100
91.9
148.9
145
137.2
72.4
71.7
64.8
50
0
2000
2002
2004
2006
年度
2006
年度
男性
男性
女性
女性
(出典:リクルートワークス研究所)
4. 仕事を辞めた理由
女性の勤続年数が短いという背景には、女性が仕事を辞めざるをえないという理由が
多く存在している。平成 19 年に内閣府が実施した「女性のライフプランニング支援に
関する調査」において、女性が仕事を辞めた理由として、結婚を機とすることが多くみ
られる。その理由として、結婚と仕事の両立が、「体力・時間的に厳しいこと」に加え
て、
「辞めるのがあたり前だと思ったから」
「家事・育児に専念したい」という意見が上
位を占めている。女性の就業率が高まっているなかで、女性が仕事を継続できない制度
的、社会的な問題が多く残っている。
-4-
図表-2.5 仕事を辞めた理由、結婚時に離職した理由
(出典:内閣府「女性のライフプランニング支援に関する調査(平成 19 年)」
)
-5-
5. 管理職に占める女性の割合
女性の管理職比率に着目すると、2007 年の男女共同参画白書によると日本企業の管
理職に占める女性の比率は 10.1%であった。国際的に比較してみると、図表-1.6 が
示すように、先進各国に比べて著しく低く、フィリピン,マレーシア,シンガポール
等のアジア諸国にも大きく引き離されており、日本企業では女性の管理職がまだ少数
であるのが実態といえる。
図表-2.6 就業者および管理的職業者に占める女性の割合
(出典:内閣府「男女共同参画白書(概要版)」平成 19 年版)
-6-
III. アンケート調査
本調査研究では、「企業の人事担当者に対するアンケート調査」と「働く女性に対す
るアンケート調査」の 2 種類のアンケート調査を行い、両者の意識のギャップを比較し
た。2 つのアンケート調査の目的は以下のようになる。
・企業が女性を活用し、女性が職場で活躍している実態を把握する。
・企業が女性を活用した効果について把握する。
・企業が女性活用を図る上での問題点や、女性活用の諸施策推進を妨げている理由を
把握する。
・今後、企業が女性を活用していくためにどのような施策が必要と捉えているかにつ
いて把握する。
1. 企業の人事担当者に対するアンケート調査
企業の人事担当者の意識を把握するために、Web によるアンケート調査を実施した。
調査の概要は以下のようになる。
アンケート調査の概要
実施時期
2008 年 12 月 11 日(木)~12 日(金)
調査方法
インターネット調査会社のパネルにメールで調査依頼を行い、対象者をスク
リーニングしてウェブにて回答
調査パネル
株式会社マクロミルの消費者モニター
スクリーニン
全国の従業員 300 名以上の企業で働いている 25 歳以上の男女且つ、職種が人事
グ条件
業務担当者
業種
公務員以外の全ての職種
-7-
1.1 調査対象プロフィール
(1) 調査対象者性別
下表に、本アンケート調査で集めた対象者の性別の構成を示す。
図表-3.1
対象者の性別構成
性別
人数(人)
割合(%)
男性
151
73.7
女性
54
26.3
合計
205
100.0
(2) 年齢
下表に、対象者の年齢構成を示す。
図表-3.2 対象者の年齢別構成
年齢
人数(人)
割合(%)
25 才~29 才
15
7.3
30 才~34 才
44
21.5
35 才~39 才
51
24.9
40 才~44 才
32
15.6
45 才~49 才
19
9.3
50 才~54 才
29
14.1
55 才~59 才
10
4.9
5
2.4
205
100.0
60 才以上
合計
-8-
(3) 居住地
下表に、対象者の住んでいる居住地を示す。
図表-3.3
対象者の居住地域別構成
地域
人数(人)
割合(%)
北海道
3
1.5
東北
3
1.5
関東
114
55.6
中部
29
14.1
近畿
30
14.6
中国
7
3.4
四国
10
4.9
9
4.4
205
100.0
九州・沖縄
合計
(4) 業種及び企業種別
下表に企業の業種及び企業の設立年度、企業種別を示す。
① 業種
図表-3.4 対象者所属企業の業種別構成
業種
人数(人)
割合(%)
建設業
15
7.3
製造業
58
28.3
情報通信業
22
10.7
運輸業
12
5.9
卸売・小売業
22
10.7
金融・保険業
15
7.3
5
2.4
10
4.9
3
1.5
上記に含まれないサービス業
33
16.1
その他
10
4.9
205
100.0
飲食店、宿泊業
医療・福祉
教育、学習支援業
合計
-9-
② 企業の設立年度
図表-3.5 対象者所属企業の設立年度別構成
創立年度
人数(人)
割合(%)
1945 年以前
68
33.2
1946~1969 年
59
28.8
1970~1979 年
35
17.1
1980~2007 年
43
21.0
205
100.0
合計
③ 企業種別
図表-3.6 対象者所属企業の外資系・内資系別構成
企業種別
人数(人)
外資系企業
割合(%)
11
5.4
日本企業
194
94.6
合計
205
100.0
(5) 業種の規模
下表に企業の規模及び女性の従業員又は女性の管理職の割合を示す。
① 企業規模
図表-3.7 対象者所属企業の企業規模別構成
企業規模
人数(人)
割合(%)
500 人未満
39
19.0
500~1000 人未満
48
23.4
1000~5000 人未満
70
34.1
5000 人以上
48
23.4
205
100.0
合計
- 10 -
② 女性従業員の割合
図表-3.8 対象者所属企業の女性の従業員の割合別構成
女性従業員の割合
人数(人)
割合(%)
10%未満
38
18.5
10~30%未満
76
37.1
30~50%未満
57
27.8
50~100%未満
34
16.6
205
100.0
合計
③ 女性管理職の割合
図表-3.9 対象者所属企業の女性の女性管理職の割合別構成
女性管理職の割合
人数(人)
割合(%)
0%
35
17.1
0~5%未満
59
28.8
5~10%未満
29
14.1
10~20%未満
38
18.5
20%以上
44
21.5
205
100.0
合計
- 11 -
(6) 従業員の平均勤続年数
下図に企業の従業員の平均勤続年数について示す。
① 男性従業員の平均勤続年数
図表-3.10 対象者所属企業の男性従業員の平均勤続年数別構成
男性従業員の平均勤続年数
人数(人)
3 年未満
割合(%)
2
1.0
3 年以上 5 年未満
10
4.9
5 年以上 10 年未満
44
21.5
10 年以上 15 年未満
56
27.3
15 年以上 20 年未満
48
23.4
20 年以上
45
22.0
205
100.0
合計
② 女性従業員の平均勤続年数
図表-3.11 対象者所属企業の女性従業員の平均勤続年数別構成
女性従業員の平均勤続年数
人数(人)
3 年未満
割合(%)
7
3.4
3 年以上 5 年未満
36
17.6
5 年以上 10 年未満
72
35.1
10 年以上 15 年未満
58
28.3
15 年以上 20 年未満
23
11.2
9
4.4
205
100.0
20 年以上
- 12 -
1.2 企業における女性の活用・活躍の実態
(1)女性の活用・活躍の取り組み状況
・
「積極的に取り組んでいる」、
「相当程度取り組んでいる」を合わせると 43.5%
になる。
・男女の担当者間での認識には違いがある。男性担当者は、
「積極的に取り組
んでいる」
、
「相当程度取り組んでいる」の合計が 46.3%であるが、女性担
当者は 35.2%となっている。
・
「少しは取り組んでいる」が男性担当者は 38.4%、女性担当者は 29.6%と
なっている。
・
「あまり取り組んでいない」、
「まったく取り組んでいない」の合計が男性担
当者は 15.3%であるのに対し、女性担当者は 35.2%となっている。
① アンケート調査対象者全体の取り組み状況に対する答え(n=205)
図表-3.12 女性の活用・活躍の取り組み状況(対象者全体)
あまり取り組ん
でいない
19.0%
まったく取り組ん
でいない
1.5%
積極的に取り組
んでいる
17.6%
相当程度取り組
んでいる
25.9%
少しは取り組ん
でいる
36.1%
- 13 -
② 男性の人事担当者の取り組み状況に対する答え(n=151)
図表-3.13 女性の活用・活躍の取り組み状況(男性の人事担当者)
あまり取り組ん
でいない
14.6%
まったく取り組ん
でいない
0.7%
積極的に取り組
んでいる
18.5%
少しは取り組ん
でいる
38.4%
相当程度取り組
んでいる
27.8%
③ 女性の人事担当者の取り組み状況に対する答え(n=54)
図表-3.14 女性の活用・活躍の取り組み状況(女性の人事担当者)
まったく取り組ん
でいない
3.7%
積極的に取り組
んでいる
14.8%
あまり取り組ん
でいない
31.5%
相当程度取り組
んでいる
20.4%
少しは取り組ん
でいる
29.6%
- 14 -
(2)女性の活用・活躍の推進理由(n=89)
・
「男女にかかわらず優秀な人材を確保するため」が 68.5%と最も高く、
「女
性の能力が有効に発揮されていることにより、経営の効率化を図る
た
め」が 62.9%で続いている。
図表-3.15 女性の活用・活躍の推進理由
0.0%
20.0%
経営トップのイニシアチブによる
24.7%
グローバル企業として認知されグローバルな環境での
企業競争力の強化を図るため
25.8%
女性の能力が有効に発揮されることにより、経営の効
率化を図るため
女性の活用により商品開発力の向上に寄与した
62.9%
22.5%
顧客サービスの向上を図るため
34.8%
27.0%
現在いる女性社員が優秀であるから
68.5%
男女にかかわらず優秀な人材を確保するため
女性の活用をIR上の課題として企業価値を高めるため
40.0%
16.9%
顧客志向(女性顧客が多いため)
5.6%
その他
4.5%
- 15 -
60.0%
80.0%
100.0%
(3)女性の活躍促進の効果(n=89)
・
「男女ともに職務遂行能力によって評価されるという意識が高まった」、
「女性のキャリア意識の向上、職域の広がりなどにより、潜在的な能力
が発揮されるようになった」の 2 つの項目については、「非常に効果が
あった」
、
「相当程度効果があった」の合計が 80%を超えている。
・
「採用活動への効果」
(同 75.3%)や「従業員の意欲の向上」(同 68.5%)
を含め、人事面での効果が高い様子が伺える。
・一方、「顧客満足度の向上」、「企業イメージ、ブランドイメージ向上」
等の事業面への効果は、79.8%、77.5%であった。
図表-3.16 女性の活躍促進の効果
0.0%
20.0%
商品開発での効果があり女性の視点によるヒット商品
5.6%
の開発につながった
顧客満足度の向上等につながった
企業イメージまたはブランドイメージの向上につながっ
た
14.6%
19.1%
女性のキャリア意識の向上、職域の広がりなどによ
り、潜在的な能力が発揮されるようになった
58.4%
15.7%
6.7%
24.7%
相当程度効果があった
- 16 -
9.0%
18.0%
6.7%
29.2%
2.2%
61.8%
69.7%
53.9%
その他 3.4% 16.9% 12.4%
非常に効果があった
6.7%
25.8%
女性を中心としたネットワークやコミュニティが生まれ、
12.4%
活気ある働きやすい職場となってきた
12.4%
13.5%
57.3%
15.7%
100.0%
65.2%
56.2%
従業員の定着率・満足度・仕事への意欲が向上した 11.2%
80.0%
32.5%
57.3%
19.1%
男女ともに職務遂行能力によって評価されるという意
識が高まった
60.0%
49.4%
企業業績の改善に貢献した 9.0%
採用活動への効果があり、良い人材を確保できた
40.0%
9.0%
3.4%
11.2%
3.4%
28.1%
5.6%
21.3%
あまり効果がなかった
全く効果がなかった
(4)女性の活用・活躍促進が難しい理由
(全体:n=116、男性人事担当者:n=81、女性人事担当者:n=35)
・
「女性はすぐ辞めてしまうので、人材として育てられないから」が 39.7%
と最も多い。
「女性の活用が企業業績と直接連動しないと思われるから」
が 27.6%、
「女性の活用は、経営戦略上の問題として認識していないか
ら」が 25.9%と続く。
・男女の担当者での認識の違いは大きく、男性担当者では「女性はすぐ辞
めてしまうので、人材として育てられないから」が 1 位(42.0%)であ
るが、女性担当者では「女性の活用は、経営戦略上の問題として認識し
ていないから」が1位(42.9%)となっている。
図表-3.17 女性の活用・活躍促進が難しい理由
0.0%
20.0%
女性の活用の方法がわからないため
42.9%
14.7%
12.3%
20.0%
39.7%
42.0%
34.3%
12.9%
16.0%
5.7%
顧客関係、商慣行上、女性を担当者として活用できな
いため
13.8%
13.6%
14.3%
その他
12.9%
12.3%
14.3%
全体
男性人事担当者
- 17 -
80.0%
25.9%
18.5%
女性はすぐ辞めてしまうので、人材として育てられない
から
女性は仕事に対する責任感、意識が低いから
60.0%
27.6%
28.4%
25.7%
女性の活用が企業業績と直接連動しないと思われる
から
女性の活用は、経営戦略上の問題として認識していな
いから
40.0%
女性人事担当者
100.0%
(5)女性の活用・活躍促進の取り組み状況(n=205)
・
「育児休業、介護休業などの制度が充実している」が 83.4%と最も多く、
「性
別により評価することがないよう、人事考課基準を明確に定めている」が
70.2%と続き、
「長期的なキャリアプラン策定」
が 41%と 3 位となっている。
・
「キャリア形成の部署の設置」(22.4%)、「メンター制度の導入」(20.0%)
等、その他の女性の支援体制の整備は取組が低い様子が伺える。
図表-3.18 女性の活用・活躍促進の取り組み状況
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
女性社員の活用とキャリア形成を支援する部署を設
置している
22.4%
77.6%
メンター制度を導入している
20.0%
80.0%
長期的なキャリアプランの策定を支援する研修制度
を導入している
女性の管理職の数値目標を設定し積極的に登用し
ている
41.0%
女性管理職のためのリーダーシップ研修を実施して
いる
一般職女性に対する意識改革の教育を実施してい
る
69.8%
70.2%
17.6%
29.8%
82.4%
28.3%
71.7%
83.4%
育児休業、介護休業などの制度が充実している
育児、介護の負担を抱えている従業員に対して在
宅勤務、テレワーク制度を運用している
15.6%
フレックスタイム、在宅勤務などワークライフバラン
ス施策が充実している
16.6%
84.4%
40.0%
その他 6.3%
60.0%
58.5%
ある
- 18 -
100.0%
59.0%
30.2%
性別により評価することがないよう、人事考課基準
を明確に定めている
80.0%
35.1%
ない
無回答
(6)女性の活用・活躍促進の取り組みの活用度
・
「利用度(高)
」が高いものは、
「性別により評価することがないよう、人事
考課基準を明確に定めている」が 47.2%と最も高く、
「育児休業、介護休業
などの制度が充実している」が 44.4%と続く。
図表-3.19 女性の活用・活躍促進の取り組みの活用度
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
女性社員の活用とキャリア形成を支援する部署を設
置している
21.7%
メンター制度を導入している
19.5%
51.2%
長期的なキャリアプランの策定を支援する研修制度
を導入している
21.4%
46.4%
女性の管理職の数値目標を設定し積極的に登用し
ている
性別により評価することがないよう、人事考課基準
を明確に定めている
41.3%
27.4%
25.0%
一般職女性に対する意識改革の教育を実施してい
る
22.4%
育児休業、介護休業などの制度が充実している
100.0%
30.4%
6.5%
29.3%
25.0%
56.5%
47.2%
女性管理職のためのリーダーシップ研修を実施して
いる
80.0%
14.5%
45.1%
61.1%
1.6%
6.9% 0.7%
11.1%
51.7%
44.4%
7.1%
2.8%
25.9%
40.4%
13.5%
1.8%
育児、介護の負担を抱えている従業員に対して在
宅勤務、テレワーク制度を運用している
28.1%
フレックスタイム、在宅勤務などワークライフバラン
ス施策が充実している
29.3%
54.9%
13.4%
2.4%
その他
30.8%
53.8%
7.7%
7.7%
利用度(高)
利用度(中)
- 19 -
46.9%
利用度(低)
21.9%
利用されていない
3.1%
(7)育児休業・介護休業の制度の利用を妨げる理由
(全体:n=47、男性人事担
当者:n=34、女性人事担当者:n=13)
・
「現在の職場で、これらの制度を利用しにくい雰囲気がある」が 61.5%と最
も高く、
「会社全体として、これらの制度を利用することへの理解がない」
と「産休や育児・介護休暇をとることにより、キャリア形成上差がつく」
の 2 つが 34.6%と続く。
図表-3.20 育児休業・介護休業の制度の利用を妨げる理由
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
34.6%
33.3%
40.0%
会社全体として、これらの制度を利用することへの
理解がない
61.5%
57.1%
現在の職場で、これらの制度を利用しにくい雰囲気
がある
80.0%
26.9%
19.0%
夫や会社の男性の理解がない
60.0%
11.5%
9.5%
20.0%
同じ職場の女性の理解がない
34.6%
28.6%
産休や育児・介護休暇をとることにより、キャリア形
成上差がつく
60.0%
11.5%
14.3%
その他
0.0%
全体
男性人事担当者
- 20 -
女性人事担当者
100.0%
(8)女性の活用・活躍促進を図る上での工夫(制度以外)
(n=205)
・
「自由でオープンな企業風土を醸成している」が 48.8%と最も高く、「マネ
ジメント層等の男性の意識改革、啓発を行っている」が 33.7%と続いてい
る。
・
「商品開発等で女性を入れたプロジェクトチーム編成」「従業員向け HP の
女性活用サイトの設置等」は 11.2%となっている。
図表-3.21 女性の活用・活躍促進を図る上での工夫(制度以外)
0.0%
商品、サービス開発等において、女性を必ず入れた
プロジェクトチームを編成している
20.0%
40.0%
60.0%
11.2%
ロールモデルとなる女性従業員が、他の女性従業
員の意識向上、キャリア形成を先導する場がある
22.0%
自由でオープンな企業風土を醸成している
48.8%
従業員向けホームページに女性活用サイトの設置・
運用などを行っている
11.2%
第3者認定機関から「働きやすい職場づくりに取組
む」企業の認定を受けている(「くるみん」等)
12.2%
マネジメント層等の男性の意識改革、啓発をおこ
なっている
33.7%
その他、独自に取り組んでいる女性の活用策、活躍
促進策
19.0%
- 21 -
80.0%
100.0%
(9)女性の活用・活躍促進を図る上での問題
(全体:n=205、男性人事担当者:n=151、女性人事担当者:n=54)
・
「女性は時間外、深夜労働をさせにくい」が 40.5%と最も高い、「女性の活
用に対して男性管理職の経験不足である」が 35.6%、
「女性は勤続年数が平
均的に短い」と「男性優位の企業風土である」の 2 つが 32.2%と続いてい
る。
・男女の担当者間で認識に差異がある。
・男性担当者は、「女性は時間外、深夜労働をさせにくい」(43.7%)、「女性
は勤続年数が平均的に短い」
(34.4%)が上位である。一方、女性担当者は、
「女性の活用に対して男性管理職の経験不足である」
(46.3%)、
「女性活用
のための施策を作る人材が企業内にいない」
(42.6%)、
「男性優位の企業風
土である」(40.7%)、「残業が多く、休暇が取りにくい職場環境である」
(37.0%)が上位となっている。
図表-3.22 女性の活用・活躍促進を図る上での問題
0.0%
女性活用のための施策を作る人材が企業内にいない
女性活用は男性社員に対して逆差別、不平等、男性
の職場の縮小となる
女性は時間外、深夜労働をさせにくい
女性は勤続年数が平均的に短い
女性は仕事上の向上心、プロ意識が低い
男性優位の企業風土である
女性に対するやさしさ、思いやりが強く、保護・庇護す
る対象となっている
経営層が女性の活用に対して消極的である
女性の活用に対して男性管理職の経験不足である
女性の管理職に対する男性からの抵抗感がある
業務の性格上男性が主力を占めてきた職場で慣習的
に男性の仕事、女性の仕事の区別がある
残業が多く、休暇が取りにくい職場環境である
女性の活用の意味、意義、必要性が理解できない
その他
十分に活用できており妨げるものはない
全体
20.0%
40.0%
24.4%
17.9%
13.7%
13.9%
13.0%
60.0%
80.0%
42.6%
40.5%
43.7%
31.5%
32.2%
34.4%
25.9%
15.1%
16.6%
11.1%
32.2%
29.1%
40.7%
10.7%
12.6%
5.6%
15.6%
9.9%
31.5%
35.6%
31.8%
46.3%
16.6%
9.9%
35.2%
25.4%
25.2%
25.9%
26.8%
23.2%
37.0%
4.4%
2.0%
11.1%
2.4%
2.6%
1.9%
9.8%
11.9%
3.7%
男性人事担当者
- 22 -
女性人事担当者
100.0%
(10)女性の活用・活躍促進を進めるにあたり重要なこと(全体:n=205)
・
「育児休業・子育て支援、介護休養など家庭責任と仕事を両立する支援制度
の充実と利用を促進する」が 62.0%と最も高く、
「女性だけでなく男性も仕
事と家庭の両立がはかれる働きやすい環境の整備を行う」が 52.7%、
「女性
の仕事に対する責任感、意識を変える」が 47.8%、
「女性の活用、活躍促進
について、経営層、男性管理職の意識を変える」が 44.4%と続く。
・
「産休、育児・介護休業がキャリアアップ(昇格)に影響しない人事制度を
導入する」については、女性担当者の 51.9%が重要であるとしている。
図表-3.23 女性の活用・活躍促進を進めるにあたり重要なこと
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
育児休業・子育て支援、介護休業など家庭責任と仕
事を両立する支援制度の充実と利用を促進する
62.0%
女性だけでなく男性も仕事と家庭の両立がはかれ
る働きやすい環境の整備をおこなう
52.7%
女性の活用、活躍促進について、経営層、男性管
理職の意識を変える
44.4%
産休・育児・介護休業がキャリアアップ(昇格)に影
響しない人事制度を導入する
38.5%
性別により評価することがないよう人事評価基準を
明確化する
31.2%
社内保育所、授乳室など環境を整備する
30.7%
47.8%
女性の仕事に対する責任感、意識を変える
ダイバーシティマネジメントの意味を理解し推進して
いく
その他
80.0%
18.0%
2.4%
- 23 -
100.0%
2. 働く女性に対するアンケート調査
企業で働く女性の意識を把握するために、Web によるアンケート調査を実施した。
調査の概要は以下のようになる。
アンケート調査の概要
実施時期
2008 年 12 月 25 日(木)~1 月 6 日(火)
調査方法
株式会社イー・ウーマンによるウェブ調査より(http://www.ewoman.co.jp/)
調査対象者
イー・ウーマンサイトで会員登録をしている働く女性たち
2.1 調査対象プロフィール
回答者数: 608 名
以下に調査対象の属性別の割合を示す。対象はすべて 608 サンプルである。
(1) 年齢
図表-3.24 対象者の年齢別構成
年齢
人数(人)
割合(%)
29 歳以下
47
7.7
30〜34 歳
110
18.1
35〜39 歳
182
29.9
40〜44 歳
137
22.5
45〜49 歳
94
15.5
50 歳以上
38
6.3
608
100.0
合計
(2)職業
図表-3.25 対象者の職業別構成
職業
会社員
人数(人)
割合(%)
341
56.1
会社役員
21
3.5
自営業
64
10.5
公務員・教職員
61
10.0
派遣・契約社員
47
7.7
パート・アルバイト
26
4.3
その他
48
7.9
608
100.0
合計
(株)イー・ウーマンによるウェブ調査の集計結果より
- 24 -
(3)職種
図表-3.26 対象者の職種別構成
職種
人数(人)
割合(%)
事務
150
24.7
営業
25
4.1
技術・開発
59
9.7
秘書
7
1.2
企画
31
5.1
宣伝・広報
12
2.0
マーケティング
16
2.6
9
1.5
13
2.1
7
1.2
管理職
31
5.1
専門職
110
18.1
経営者
15
2.5
教師・教育担当
27
4.4
その他
96
15.8
合計
608
100.0
調査・分析
記者・ライター
販売
(株)イー・ウーマンによるウェブ調査の集計結果より
- 25 -
(4)業種
図表-3.27 対象者の業種別構成
職種
人数(人)
割合(%)
メーカー(電気・機械)
44
7.2
メーカー(食品)
14
2.3
メーカー(ファッション)
2
0.3
メーカー(化学・薬品)
27
4.4
メーカー(その他)
20
3.3
商社
19
3.1
金融(銀行)
6
1.0
金融(保険)
5
0.8
金融(証券)
7
1.2
金融(その他)
6
1.0
流通
21
3.5
広告・広報
12
2.0
コンサルティング・調査
29
4.8
放送・新聞・出版
18
3.0
情報・コンテンツ・通信サービス
57
9.4
教育
44
7.2
旅行
7
1.2
27
4.4
運輸・航空
9
1.5
医療・福祉
53
8.7
飲食
4
0.7
美容
4
0.7
エネルギー
3
0.5
28
4.6
その他
142
23.4
合計
608
100.0
住宅・不動産・建設
公共サービス
(株)イー・ウーマンによるウェブ調査の集計結果より
- 26 -
(5)パートナーの有無
図表-3.28 対象者のパートナーの有無別構成
パートナーの有無
人数(人)
割合(%)
パートナー有り
408
67.2
パートナー無し
199
32.8
合計
607
100.0
(6)子供の人数
図表-3.29 対象者の子供の人数別構成
子供の人数
人数(人)
割合(%)
1人
113
18.6
2人
115
18.9
3人
29
4.8
3
0.5
無し
348
57.2
合計
608
100
4人以上
(7)個人年収
図表-3.30 対象者の個人年収別構成
個人年収
人数(人)
割合(%)
300 万円以下
146
24.0
301〜500 万円
178
29.3
501〜700 万円
162
26.6
701〜1,000 万円
87
14.3
1,001〜1,500 万円
26
4.3
9
1.5
608
100.0
1,501 万円以上
合計
(株)イー・ウーマンによるウェブ調査の集計結果より
- 27 -
(8)世帯年収
図表-3.31 対象者の世帯年収別構成
世帯年収
人数(人)
割合(%)
300 万円以下
32
5.3
301〜500 万円
76
12.5
501〜700 万円
102
16.8
701〜1,000 万円
147
24.2
1,001〜1,500 万円
152
25
99
16.3
608
100
1,501 万円以上
合計
2.2 企業における女性の活用・活躍の実態
(1)企業における女性の活用・活躍の取り組み状況(n=608)
・
「積極的に取り組んでいる」、
「相当程度取り組んでいる」を合わせると 39.4%
となる。
・
「まったく取り組んでいない」、
「あまり取り組んでいない」、
「少しは取り組
んでいる」を合わせると 60.6%となっている。
図表-3.32 企業における女性の活用・活躍の取り組み状況
まったく取り組ん
でいない
10.4%
積極的に取り組
んでいる
17.9%
あまり取り組ん
でいない
18.8%
相当程度取り組
んでいる
21.5%
少しは取り組ん
でいる
31.4%
(株)イー・ウーマンによるウェブ調査の集計結果より
- 28 -
(2)女性が働く上で問題となっている点(n=608)
・
「仕事と育児・介護との両立」が 78.6%、
「男性優位の企業風土の中でのキャ
リア形成」が 60.7%となっている。
図表-3.33 女性が働く上で問題となっている点
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
100.0%
78.6%
仕事と育児・介護との両立
60.7%
男性優位の企業風土の中でのキャリア形成
補助的な業務が中心で、キャリア形成する道が
示されていない
31.1%
28.9%
残業が多く、休暇がとりにくい
女性に対するやさしさ、思いやりが強く、保護・
庇護する対象となっている
13.0%
その他
14.0%
(株)イー・ウーマンによるウェブ調査の集計結果より
- 29 -
(3)女性が働きやすい職場をつくるために、会社に求めること(n=608)
・
「ワークライフ・バランスを尊重した、女性だけでなく男性も働きやすい職
場環境の整備」が 78.8%と最も多い。
「産休、育児・介護休業制度」利用で
きる職場環境の提供」が 62.7%と次に多い。
図表-3.34 女性が働きやすい職場をつくるために、会社に求めること
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
産休・育児・介護休業制度が利用できる職場環境
の提供
100.0%
62.7%
社内保育所、授乳室などの女性支援環境の整備
44.2%
ワークライフ・バランスを尊重した、女性だけでなく男
性も働きやすい職場環境の整備
78.8%
女性を一人前として扱わない等の、男性優位の企
業風土の変革
41.8%
産休・育児・介護休業がキャリアアップ(昇格)に影
響しない人事制度
55.1%
性別により評価することがないような人事評価基準
の明確化
その他
80.0%
43.3%
8.2%
(株)イー・ウーマンによるウェブ調査の集計結果より
- 30 -
(4)女性を活用・活躍できにくい理由(n=608)
・
「現在の職場で、これらの制度を利用しにくい雰囲気がある」が 43.3%、
「産
休や育児・介護休暇をとることにより、キャリア形成上差がつく」が 41.3%
と大きな割合となっている。
図表-3.35 女性を活用・活躍できにくい理由
0.0%
20.0%
会社全体として、これらの制度を利用すること
への理解がない
40.0%
60.0%
80.0%
100.0%
34.6%
現在の職場で、これらの制度を利用しにくい
雰囲気がある
43.3%
夫や会社の男性の理解がない
23.2%
同じ職場の女性の理解がない
22.4%
産休や育児・介護休暇をとることにより、キャ
リア形成上差がつく
41.3%
16.9%
その他
(株)イー・ウーマンによるウェブ調査の集計結果より
- 31 -
(5)女性を活用・活躍する企業にとっての効果(n=608)
・
「採用活動への効果があり、良い人材を確保できた」の 57.0%、
「企業イメー
ジまたはブランドイメージの向上につながった」の 57.4%が、
「効果があっ
た」と答えている。
・
「商品開発での効果があり、女性の視点によるヒット商品の開発につながっ
た」は 56.2%、
「企業の業績の改善に貢献した」は 51.8%と、半数以上の人
が「効果がなかった」と答えている。
図表-3.36 女性を活用・活躍する企業にとっての効果
0.0%
商品開発での効果があり、女性の視点によるヒット商
品の開発につながった
顧客満足度の向上等につながった
企業イメージまたはブランドイメージの向上につながっ
た
企業業績の改善に貢献した
採用活動への効果があり、良い人材を確保できた
20.0%
40.0%
34.7%
60.0%
80.0%
56.2%
47.4%
44.6%
57.4%
35.9%
34.3%
51.8%
57.0%
32.3%
従業員の定着率・満足度・仕事への意欲が向上
した
53.8%
36.7%
男女ともに職務遂行能力によって評価されるという意
識が高まった
53.4%
35.9%
女性のキャリア意識の向上、職域の広がりなどにより、
潜在的な能力が発揮されるようになった
51.8%
37.1%
女性を中心としたネットワークやコミュニティが生まれ、
活気ある働きやすい職場となってきた
49.4%
42.2%
効果があった
100.0%
効果が無かった
(株)イー・ウーマンによるウェブ調査の集計結果より
- 32 -
3.アンケート調査のまとめ
(1)企業による女性活用の取組の程度について、男性担当者に比し、女性担当者の方が
低いと認識している。
(2)女性の活用を進めている企業において、その推進する理由は、
「人材確保」と「経営
効率化」を挙げるものが多く、推進した効果についても、採用・定着・評価・能力
開発等の人事面と企業業績、企業イメージの改善等の事業面ともかなり高い。
(3)女性の活用・活躍促進の取組状況は、
「育児休業、介護休業などの整備」、
「人事考課
基準の明確化」を除いてあまり高くない。また、取組みが高い前述の2項目におい
ても、利用度が高いとする回答は 45%前後であり、他の項目は更に低い状況となっ
ている。とりわけ、
「育児休業、介護休業などの制度」の利用を妨げる理由について
は、職場風土の問題もあるが、特に、女性担当者は男性の無理解や女性のキャリア
形成に対する影響も挙げている割合が高い。
(4)女性の活用・活躍が難しい理由は、女性がすぐ辞めてしまうので育成できないこと
と、企業業績や経営戦略の問題として企業が捉えていないことによるとする割合が
多い。また、活用・活躍を促進する上での問題点は、男性は、
「女性がすぐやめてし
まう」
、
「時間外、深夜労働をさせにくい」という女性側の問題と捉えているものが
多く、女性担当者は、
「男性優位の企業風土」や「働き方」、
「施策を作る部門の未設
置」
「男性管理職の経験不足」等の企業の問題、風土の問題と捉えているものが多い。
(5)今後、女性の活用・活躍を促進する上で重要なことについては、
「仕事と家庭の両立」
(制度の充実・利用、働きやすい環境の整備)、「男性の意識変革」、「女性の意識変
革」とともに、女性担当者は「キャリアアップに影響しない人事制度」を挙げる者
が多い。
- 33 -
IV. 女性の活用・活躍促進への取組事例
本研究会委員の所属する企業の取り組み事例を以下に紹介する。
1. CS(顧客満足)経営の中で女性の活用・活躍を促進し ES(従業員満足)の向上を図る
例
三菱東京 UFJ 銀行は、女性の従業員比率が高く、業務上も女性の戦力が欠かせ
ない。顧客満足を満たすためには、従業員満足度、とりわけ女性従業員の満足度の
向上が重要であるという経営層の判断により、女性活躍推進に経営課題としての取
組みを始めた。
平成18年4月に人事部内に「女性活躍推進室」を設立し、同室が中心となって、
「企業風土づくり」
、
「女性のキャリア形成」、
「ワークライフ・バランスの実現」を
活動の三本柱に、一人ひとりが‘かがやき’、男女ともに能力を発揮することで、
会社も個人も成長し続ける企業作りに取り組んでいる。
三菱東京 UFJ 銀行の取組の主な点は以下のようになる。
女性のキャリア形成支援では、具体的な数値目標を設定し履行していくことで、
女性管理職のロールモデルを増加させ、次ぎに続く人の目標として意識の向上を
図っている。女性が活躍できる企業風土づくりはすべての施策の基盤として重要と
認識しており、「女性の活躍を推進するフォーラム」に、女性の従業員と上司が参加
し情報を共有化するとともに、話し合いの中で女性のキャリア形成を支援し、多様
な働き方に関する理解を深める取り組みなども行っている。
このような活動の成果として、キャリアについて考える女性や女性部下の指導を
考える上司が増えた。また、そもそも経営の発案で始まった女性活躍推進ではある
が、更に意識は深まり、女性活躍は女性の問題ではなく、実は男性も含めた共通の
問題であるという認識を経営層が持つようになった点などがあげられている。
【目的】
・CS の向上の基盤となる ES の向上
・女性の潜在力への期待
・ CSR 経営「企業価値の向上」
- 34 -
図表-4.1 なぜ、女性活躍推進にとりくむのか
(出典:三菱東京 UFJ 銀行「女性活躍推進室の取り組み」
)
【主な制度・取組状況】
・女性活躍推進室の設置
各種施策の具体化、実施
女性との個別面談・相談
コニュニケーション促進・風土づくり
新しい働き方研究会~女性活躍推進隊の事務局
・女性のキャリア形成支援
女性管理職の数値目標の設定・履行
AP 職(勤務地限定職員)の隔地異動公募制度の設置
AP 職の総合職転換の拡大
女性リーダー向研修
契約社員の正行員登用
- 35 -
図表-4.2 風土づくり施策
(出典:三菱東京 UFJ 銀行「女性活躍推進室の取り組み」
)
・ワークライフ・バランス支援策の充実
仕事と家庭の両立支援ハンドブックの配布
ワークライフ・バランスセミナー開催
短時間勤務制度新設(妊娠中、育児、介護のため)
託児補助制度新設
復職支援セミナー定期開催
育休者等向けホーム PC 貸与
育児休業の一部(10 日間)有給化
・風土づくり
女性が働くことに関する相談窓口設置
冊子の発行
フォーラム開催(女性だけでなく男性も参加。上司と部下がペアで参
加し共同でキャリア形成やコミュニケーションを考える。)
女性が働くことに関するアンケート実施(年 1 回)
従業員のこどもの職場見学会開催
- 36 -
【効果】
・経営層の意識が更に深化。女性活躍は女性の問題ではなく、男性の問題
でもあるという認識を経営層が持つようになった。
・アンケート結果に表れた効果
当行が‘女性にとって働きやすい職場である’という回答が 3 年連
続アップ。
‘自分のキャリアについて考えるようになった’女性や、‘女性部下
の指導に熱心になった’上司が増加
・ 女性支店長の増加。平成 18 年:5 人→20 年:22 人
・ 総合職新卒女性比率。平成 18 年:10%→20 年:30%
・ 育児休業取得者。平成 18 年 3 月末比、平成 20 年 9 月末は 2.8 倍。
2. ダイバーシティ推進の中での女性の活躍支援の例
日立製作所では、ダイバーシティの一つの要素として、女性の活躍支援に取り組
んでいる。ダイバーシティの推進は、経営トップがプロジェクトのオーナーとして
強いイニシアチブをもって、実施されている。女性の活躍支援においても、社内オ
ンラインを通じて社長がメッセージを発信するなど積極的に関与している。
女性の活躍支援では、採用による優秀な人材の確保、女性の管理職候補の育成計
画策定・積極的な登用などの取り組みが行われている。また、女性の活躍支援を浸
透させるために、活動ガイドラインを作成して、全事業部が優先課題に応じて、活
動を進めていくことができるようにしている。また、ダイバーシティに関して、理
解するだけでなく、行動に結びつけ、その効果を検証し、改善された状態を定常化
していこうということを、基本的な進め方のプロセスとしている。
日立製作所は、電力産業機器や電機・電子機器、家電、情報・通信システムなど
幅広い領域を持つ総合電機メーカーであり、女性社員の比率が少ない事業部門もあ
るが、2000 年には数十名であった女性管理職が、2007 年度には 276 人と増加して
いる。
女性の活躍支援は、経営トップの強いイニシアチブによって推進されているもの
の、ダイバーシティは組織風土を変えていく取り組みであり、風土を変えるには、
時間がかかるため、継続していくことが重要であるとしている。
- 37 -
【活動の目的】
経営方針の達成に向け、多様な人財の能力を活用できる企業風土を築き、既
成の枠にとどまらない新たな視点から、顧客価値を追及する社員の力を醸成す
る環境を整備し、次の 100 年に向け、社員一人ひとりがやりがいを持って働
ける企業風土を創り上げる。
【主な制度・取組状況】
・ 活動ガイドラインの策定(それぞれのステップで、
「実現したい姿」と、
それらを実現するためのチェックリストを利用。適用する事業部の優
先課題によって、取り組み内容を変えることも可能)
・ 活動ガイドラインの策定にあたっては、以下のような PDCA サイクル
を回すステップを踏み実施している。
図表-4.3 活動ガイドライン
8. 活動ガイドライン
①トップからの発信
①トップからの発信
●社長直轄プロジェクト
を中心とした活動
●経営者層からの定期
的なメッセージの配信
②母数を増やす
②母数を増やす
●継続的な優秀な女
性の採用
●リーダー育成
③情報の共有
③情報の共有
⑥定常化
⑥定常化
●社内のノウハウを制度の
運用事例としてマニュアル化
●働き方の見直しなど関連課
題へ検討拡大
PDCAによる
改革の継続
●社員の体験談などの事
例をイントラに掲載
●ガイドブックなどの制
作
⑤効果検証
⑤効果検証
④意識から行動へ
④意識から行動へ
●事業所間活動状況共有
●フォーラム等を通じ
た啓発活動
●事業所施策との連携
●全社意識調査で浸透
度や意見を検証
© Hitachi, Ltd. 2008. All rights reserved.
0
(出典:日立製作所「日立製作所におけるダイバーシティ推進の取り組み」
平成 20 年)
【効果】
・女性管理職数の増加(2000 年:73 人→ 2007 年:276 人)
・事業部ごとの施策推進により、事業部の個別事情に合わせた、社員に身近
な取り組みの実現(情報・通信グループ:身近なロールモデルによるパネ
ルディスカッション開催など)
- 38 -
3. 女性の視点と責任委譲によりヒット商品企画を行った例
■女性と若手の構成による食器洗い乾燥機のプロジェクトチームの成果
パナソニックでは、食洗機(食器洗い乾燥機)の市場が低迷していた時に、女性4
人、男性3人のプロジェクトチームを立ち上げ、マーケットリサーチから商品企画、
プロモーションまで、このチームが中心になって実施した。
プロジェクトチームは、若手の女性が中心となり、子育てをする世代にターゲッ
トを絞りこみ、子育てをする家族を支援する商品として売り出す企画を行った。
その結果、女性の意見から辿り着いた「新・子育て家電」という発想から、忙し
い主婦に家事の手間を少しでも減らして、子供と一緒にいる時間を長くしてもらい
たいという思いを訴求した。食洗機は、それを実現する商品であるという、このコ
ンセプトが、市場から高い評価を得た。2006 年 6 月-8 月の商品発売キャンペー
ンを実施した結果、パナソニックでは 71%増というヒット商品に繋がった。業界全
体も 27%増という伸びになった。
■プロジェクト成功ポイントは女性の視点・感性への着眼と徹底的な責任・権限委譲
パナソニックのマーケティングの成功例は、今まで男性やベテラン社員が中心と
して実施してきた従来型プロジェクトの発想を変えた点といえる。女性に限らず多
様な社員が仕事を通して自己実現するために、誰にでも公平に活躍のチャンスが与
えられるということが強く認識されている。
食洗機のプロジェクトは、女性の視点・感性から、食洗機の潜在ニーズを掘り起
こし、不特定多数のマスに対して商品を売る販売方法から、ターゲットを徹底的に
絞り込むという、今までにないマーケティング手法をとった。この方法には、当初
は社内の反対意見も強かったが、経営トップがプロジェクトメンバーに仕事を任せ
切る決断をした。
パナソニックでは、女性のお客様から、よりユーザー視点のモノづくりをとの指
摘を受けることも多かった。経営トップは家庭電化製品の特性上、もっと商品企画
に女性の視点・感性を入れるべきと確信した。トップダウンで商品企画の中枢に女
性を多数配置した。そのため現在家電マーケティング部門では商品企画会議に必ず
女性が入っている状況となっている。
パナソニックの事例は、家庭生活の主体者たる女性の特性を素直に活用すること
と、責任ある仕事をまかせ切ることで、個々人の能力とモチベーションを最大限に
引き出したものといえる。
- 39 -
4. 女性社員、男性社員の意識改革に取り組む事例
2006 年の富士フイルムホールデイングス設立により、富士フイルム、富士ゼロッ
クスがその事業傘下にはいった。富士ゼロックスは、1970 年代から女性の営業職
を積極的に採用し、女性の活躍を推進してきた歴史がある。一方富士フイルムは統
合を機に「第二の創業」として、性別・年齢等をと問わず、能力・意欲に応じて仕事
を遂行し、仕事の成果に応じた処遇を行う取り組みを行っている。その取り組みの
中で、女性の活躍推進を妨げている要因となる男性の固定概念、女性の固定概念を
調べ、その結果生じた企業に与える好ましくない影響を分析し、企業として今後取
り組むべき課題を提言している。提言では、女性社員、上司、職場のメンバー(男
性)がそれぞれすべきことを告知し、意識の変革を求めている。
また、女性社員向けのキャリア教育や男性管理職社員向けの教育にも積極的に取
り組んでおり、意識改革の取組みを益々強化して、女性社員、男性社員、上司、そ
れぞれが持つ固定概念を払拭し、女性の活躍推進にとどまらず、一人ひとりの個性
と力を活かせる組織・風土作りを行おうとしている事例として注目される。
男性にありがちな固定概念
(一例)
女性は家庭に入るべきである
(どうせ途中で退職するだろう)
好ましくない影響(例)
女性にありがちな固定概念
(一例)
責任ある仕事は
男性がやるべきである
好ましくない影響(例)
長期勤続を想定した計画的な育成をしない
リーダーシップや専門性を高める視点での育成が
なされない
責任ある仕事を担当しても、困難な状況になると、
最後は逃げてしまう。
どこかで自分の役割に線を引き、枠を広げるための
チャレンジをしない。
(決まった役割で満足してしまう)
(出典:富士フイルム「FPOWER」
)
5. ワークライフ・バランス向上のため、働きやすい職場づくりに取り組む例
女性の活用・活躍を促進するためには、責任をもって仕事を遂行することと、健
康で心豊かな生活の両面を実現できる環境、すなわちワークライフ・バランスを企
業が整備することが前提となる。ワークライフ・バランスを実現するためには、女
性だけでなく、男性、女性を問わず働く人すべてが、現在の働き方を変えることが
必要であり、企業の理解や取り組みが必須といえる。
- 40 -
システムインテグレーターの新日鉄ソリューションズでは、働き方を変える取り
組みを行っている。システムインテグレーター等の IT 業界では、SE 個人のスキル
が商品の付加価値に直結する部分が大きい。にもかかわらず、重要な資産であるは
ずの「人」に負担を強いる文化が横行している。一方、低賃金による大量の労働力
確保を武器に中国籍の IT 企業が脅威を増している。新日鉄ソリューションズ社は、
日本の IT 技術者が付加価値の高い仕事をし、将来の活路を見出すという明確なビ
ジョンを持って、深夜残業と休日出勤の原則禁止という企業競争力低下を招きかね
ないのではと思われるような施策を行った。施策のねらいは、会社全体の業務効率
を高め、より付加価値の高い仕事を手がけていくための「人材の高度戦力化」にあっ
たのである。
取組みのきっかけは、
「組織風土・コミュニケーション調査」に寄せられた問題
意識である。ハードな勤務状況の中で進行していた疲弊感、閉塞感、成長に対する
疑念と伸び悩みの意識をあらわにしていた。
表-4.4 組織風土・コミュニケーション調査に寄せられた問題意識
組織風土・コミュニケーション調査に寄せられた問題意識
・ 経営ビジョンがみえない。
(トップ層と現場に距離感がある。)
・ 事業部における戦略浸透が十分ではない。
・ 人事評価に対する不明瞭感。
・ 業界他社と比較しても高い業務負荷感。
・ 新しいことに対する挑戦ができていない。
(出典:平成 19 年 7 月 27 日「労政時報 第 3706 号」P42)
具体的な施策内容は、全社員を対象として、22 時以降の深夜残業と休日出勤の
原則禁止(国内 IT 大手で初めての試み)を行った。やむを得ず残業する場合は、
直属上司が事業部長に許可申請をしなければならない。導入に当たっては、「本当
にできるのか」
、
「顧客にどう説明すればよいのか」、
「プロジェクトの進行に影響が
出るのでは」といった不安の声も目立った。しかし、社長自らが「売り上げが落ち
てもよい」と、明確な意思を示したことが推進力となった。
施策実施の効果については、労働時間の削減だけではなく、企業風土やメンタル
ヘルス面等、数値に現れない定性的な効果を感じている声が多い。また、その他の
取り組みとして、業績評価項目に「時間管理意識」を組み込む等、更に、意識面の
変革や風土面の定着を目指して施策を打っている。
- 41 -
6.取組事例のまとめ
以上述べた事例から、女性の活用・活躍を推進する上で重要な視点として認識さ
れるのは、以下の通りである。
■経営方針として、女性の活用・活躍に取り組み、経営層自らがリーダーシップを
とって積極的に取り組もうとしている。
■女性の活用を妨げている、男性が女性に持つ今までの固定概念、女性自身が持つ
固定概念をなくし、企業風土の変革、意識改革を行おうとしている。
■ワークライフ・バランスの推進、働き方の見直しも視野に入れて取り組んでいる。
- 42 -
Ⅴ.女性の活用・活躍推進の意義・重要性
少子高齢化の進展、グローバル化のなかで、日本企業には構造改革の必要性が生じ
てきている。今まで日本企業は生産性向上、業績アップを目指し、業務のムダ、ムリ、
ムラをなくすために BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)を実施し、標準化、
IT 化を進め、効率的、効果的な業務遂行を実現する取り組みを優先してきた。その
結果、業績が向上する等の一定の成果はあった。一方、新たな問題も発生し、人材面
においては、女性を中心に非正規雇用者が増え、正規雇用と非正規雇用間の格差が拡
大している。
産業構造においても、ものづくりを主体とした製造業からサービス業への人的配分
の移行が進んでおり、サービス産業での女性の就業機会が増えている。他方、グロー
バル化の進展や働き方への多様な価値観の醸成等、外的環境の変化により、日本企業
の終身雇用制が変化しつつある。また、労働力人口が減少した結果、中長期的な労働
力不足が心配されている等、企業では人材において多様な問題が発生している。
そのような環境変化の中で、一部を除く多くの日本企業においては、男性中心の企
業社会を形成してきた。また、企業の人材育成については、階層別、職務別の企業内
教育により、自社にふさわしい均一的な人材の育成が中心になされ、女性や外国人な
ど、多様な人材を育成し活用することは今まで十分に考えられてこなかったと思われ
る。
こうした状況のなかで、今まで十分に活用されてこなかった「女性」という経営資
源を活用すること、女性の活躍を推進することは、日本企業が発展、成長をしていく
ために必要なことと思われる。女性を活用できない企業には多くのデメリットがある
と思われ、企業が女性を活用すること、女性が活躍することは、企業にとって以下の
ようなメリットをもたらすと考えられる。
本章では、研究会での審議、アンケート調査、文献調査から、女性の活用・活躍の
意義、重要性について以下のようにまとめた。
6. 女性を活用しない企業は優秀な人材の確保、定着が困難になると思われる
女性を活用し、女性が活躍できる職場環境を提供している企業は、企業の重要な
経営資源である「人材」を確保し、
「人材」の維持、定着を実現している可能性が高
い。そしてさらに、従業員の満足度や仕事への意欲を高めること、企業イメージを
向上させることにも貢献する。女性の活用・活躍の促進は、企業イメージの向上に
よる人材の採用や、働きやすい企業として人材が定着するなど、「正のスパイラル」
の実現に有効に働くものと思われる。
- 43 -
6.1 企業アンケート調査、働く女性に対するアンケート調査から考えられること
本調査研究で実施した企業の人事担当者に対するアンケート調査、働く女性に対
するアンケート調査(㈱イー・ウーマンによるウェブ調査)から、女性の活用・活
躍を促進する効果として「採用活動への効果」
「従業員の意欲の向上」など人事面で
の効果が高いことが判明した。
企業の人事担当者からも、
「男女ともに職務遂行能力によって評価されるという意
識が高まった」という回答が最も高い。人事担当者は、性別による評価ではなく、
能力により人事考課・評価を明確に行い、男女を問わず働く人のモチベーションを
高めることが、企業が良い人材を確保するうえで重要な点であると認識している。
(前述の図表-3.16 参照)
【参考】
内閣府男女共同参画会議・仕事と生活の調査「企業が仕事と生活の調和に取り組むメ
リット」によると、企業が仕事と育児の両立を支援する取組を促進し、女性の活躍を支
援する体制を整備することにより、従業員の定着(離職率の低下)、優秀な人材の確保
(採用)、従業員の満足度や仕事への意欲の向上などに効果をもたらすということを示
している。
(図表-5.1 参照)
図表―5.1
仕事と育児の両立を支援する取組が企業業績に与えるプラス面
(%)
60
51.3
50
40
30
22.3
21.2
20
19.0
12.8
10
9.7
9
8.3
0.3
0
優
秀
な
人
で
材
す
が
む
辞
め
な
い
優
秀
な
人
る
従
業
員
が
一
向
般
上
の
す
労
る
働
意
方こ業一
をれ員時
見まが的
直で増に
間両従
の立業
管に員
理取が
点育
が児
ビ経
ジ験
材
を
採
用
で
り会支
社援
献 、
子へを
が
育の受
期
て忠け
待
復誠た
で
帰心従
き
後が業
る
、高 員
すのえ休
契仕るみ
機事こを
とのと取
な進はる
がり仕
う組事
まむと
く中育
なで児
ネや
ス生
に活
役者
立の
き
貢まの
欲
る め 、従
る時の
つ視
そ
の
他
特
に
な
い
(出典:内閣府男女共同参画会議「企業が仕事と生活の調査に取り組むメリット」
平成 20 年 4 月)
- 44 -
7. 女性の活用・活躍推進は企業によい影響をあたえる
女性の活用・活躍推進に取り組むことは、企業の業績の向上や、顧客満足度の向上
など、企業によい影響を与えていることが、本調査における企業人事担当者に対する
アンケート調査・働く女性に対するアンケート調査(㈱イー・ウーマンによるウェブ
調査)の結果からも見られた。
経済産業省男女共同参画研究会「女性の活用と企業業績」や(財)21世紀職業財
団「企業の女性活用と経営業績との関係に関する調査」などの先行調査においても、女
性の活躍と企業業績との関係についての検討がなされている。
日本企業ではダイバーシティマネジメントにおいて、女性の活用、活躍推進から取
り組むことが多い。女性の活躍・活躍推進は、男性が中心の企業社会で、女性の持つ
異なる価値観と発想法が、新たな創造性を作り出すことや、多様化した顧客のニーズ
を把握することに貢献している例が多くみられる。同質な人の組み合わせよりも、多
様な価値観をもった異なった人の組み合わせが、新しいアイディア、新しい仕組み、
新しい商品を生み出す、イノベーションを引き起こす力となり、企業によい影響を与
える。
7.1 企業アンケート、働く女性に対するアンケートから見られること
本調査の企業人事担当者に対するアンケート調査結果から、女性の活用、活躍促進
の効果として、
「顧客満足度の向上等につながった」
「企業業績の改善に貢献した」と
いう回答がそれぞれ 80%、67%と高い数値を示している(前述図表 3.16 参照)。働
く女性に対するアンケート調査からも「顧客満足度の向上につながった」という回答
が 52%みられた(前述 図表 3.36 参照(㈱イー・ウーマンによるウェブ調査の集計
結果より)
)
。
研究会においても、業績面での効果につながったといえる企業事例が報告された。
具体的には、商品開発において、女性の感性、社会性など女性独自の視点から、顧客
ニーズを把握し、ニーズに適した商品開発を行うために、女性をプロジェクトチーム
に入れ、企画を行い、商品開発やサービス企画において責任を委譲して仕事をまかせ
た結果、ヒット商品が生み出され、業績向上に貢献した例がある。
- 45 -
【参考】
1)経済産業省男女共同参画研究会「女性の活用と企業業績」調査結果より
(平成 15 年)
(1) 女性比率が高い企業は見かけ上パフォーマンスが良いが、本当の理由は女性比率で
はなく、企業固有の風土であると結論づけている。
経済産業省「企業活動基本調査」の 26,000 社のマイクロデータを用い
た計量分析から、企業間での比較では、「女性比率の高い企業は利益が高
い」ことが報告されている。他方、女性比率の変動と利益率の関係を分析
した結果からは、「女性比率を高めても利益率が上がる」とは言えなかっ
た。すなわち、女性比率は見かけ上の要因であって、真の要因はなんらか
の企業特性(企業固有の要因)であることが分かった。女性が活躍できる
風土を持たない企業が単に女性比率を高めても利益率を上げることはで
きないという結果となっている。
図表-5.2 女性が活躍できる風土と企業業績との関係
(出典:経済産業省「男女共同参画研究会報告書」平成 15 年)
(2) 女性の活躍できる風土、企業の人事・労務管理と業績
計量分析の結果、女性が活躍でき、経営成果も良好な優良企業は、「女性が活
躍できる風土を持つ」、
「女性を上手に使って利益を上げるような企業の人事・
労務管理能力が高い」企業であった。女性比率を高め利益率を高めるような企
業特性としては、「男女勤続年数格差が小さい」「再雇用制度がある」企業が浮
かび上がった。
(図表-5.3
参照)
- 46 -
図表-5.3 女性比率と利益率の関係
女性比率
女性比率と正の相関
男女勤続年数格差が小さい★
利益率と 再雇用制度あり★
正の相関 女性管理職比率高い
利
男女平均勤続年数低い
益
総合職採用に占める女性割合高い
率
法定以上の育休制度あり
利益率と
残業時間短い
無相関
フレックス・タイム制度がない
女性の転勤の可能性なし
女性比率と無相関
昇進均等度高い
育休取得率多い
既婚率高い
コース別人事制度あり
(注)★は真の要因の有力候補
(出典:経済産業省「男女共同参画研究会報告書」平成 15 年)
2)
(財)21 世紀職業財団「企業の女性活用と経営業績との関係に関する調査」結果よ
り(平成 15 年)
女性の能力発揮促進のための取組が「進んでいる」、
「ある程度進んでいる」と
評価している企業ほど成長性指標と総合経営判断指標が良好という関係がみら
れるという結果がでている。
取組の分野と企業業績との関連についてみると、採用拡大の取組、職域拡大の
取組、女性管理職を増やすことに関する取組と総合経営判断指標との間には有意
な関係があり、女性の採用拡大・職域拡大や女性管理職を増やす取組を進めてい
る企業で企業業績は拡大している。この調査では女性の活用と業績への効果の因
果関係は必ずしも証明されていないが、図表 5.4 が示すように、
「5年前と比較
した女性管理職比率の変化」が「大幅に増えた」企業の売り上げ指数が 173.7 で
あるのに対し,
「大幅に減った企業」の指数は 83.5 で、2 倍以上の差がでている。
- 47 -
図表-5.4 女性活用の取組と経営パフォーマンスとの関係
総合経営判断指標
競争相手に対しての業績の状況
総数
量的基幹
化の頻度
量的基幹
化の程度
合計
10%未満
10%以上20%未満
女性比率
20%以上30%未満
30%以上
0%
女性が占
0%~1%未満
める比率
1%~3%未満
「課長」
3%以上
大幅に増えた
女性管理 やや増えた
職の比率 現状維持
の増減 やや減った
減った
455
101
169
95
85
218
76
65
78
28
133
240
2
6
良い
やや良い
7.7
4.0
5.9
12.6
10.6
5.0
5.3
9.2
16.7
25.0
17.4
3.8
-
17.8
15.8
14.8
18.9
24.7
17.4
17.3
15.4
21.8
14.3
15.5
18.7
20.0
16.7
ほぼ同じ
やや悪い
レベル
34.3
36.6
33.0
36.8
31.8
33.5
45.3
35.4
24.4
39.3
31.8
35.7
40.0
-
23.1
19.8
27.8
18.9
21.2
24.8
20.0
23.1
21.8
7.1
25.6
22.1
25.0
50.0
成長性指標収益性指数
悪い
不明
得点化
13.4
21.8
15.4
3.4
4.7
16.1
9.3
13.8
9.0
7.1
10.1
16.2
15.0
33.3
3.7
2.0
3.0
4.2
7.1
3.2
2.7
3.1
6.4
7.1
4.6
3.5
-
2.83
2.60
2.47
3.09
3.16
2.70
2.89
2.83
3.16
3.46
2.94
2.71
2.64
2.00
5年前と
5年前と
比較した
比較した
営業利益
売上指標
指標
108.4
154.5
90.9
92.6
101.4
197.3
125.5
151.5
127.9
162.6
100.8
164.8
97.4
110.9
117.1
163.5
135.3
166.6
178.1
289.8
110.9
144.1
102.6
161.7
93.1
66.5
83.5
67.3
(注1)5年前の売上高を100とした場合の売上高
(注2)5年前の営業利益100とした場合の現在の営業利益
(注3)得点化=良い×5+やや良い×4+ほぼ同じレベル×3+やや悪い×2+悪い×1を(総数=不明)で除した値
(出典:(財)21 世紀職業財団「企業の女性活用と経営業績との関係に関する調査」平成 15
年)
3)内閣府「企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット」
(平成 20 年)より
女性を長期的に活用するほうがコスト面、人材のロス面でもメリットがあるという
ことが、内閣府「企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット」において検証されて
いる。女性従業員が出産を機に退職し人員を補充する「出産時退職」より、育児休業
を取得し短時間勤務を行う「就業継続」の方が、企業にとってコストがかからないこ
とを試算した。加えて、それまでに培われた女性従業員の知識や経験の損失を防ぐこ
とができるとしている。企業のコストの損失の削減面からも、女性を活用し続けるメ
リットがあることを示している。
8. 女性の活用・活躍は企業が社会で持続的に発展する上で重要である
昭和 60 年の「男女雇用機会均等法」の公布以後、職場における男女均等について
企業への積極的な取り組み、労使を始め社会一般の認識と周知が図られてきた。平成
19 年には、改正男女雇用機会均等法が施行され、女性だけでなく男性に対する差別
も禁止されることとなり、各企業においては、労働者が性別により差別されることの
ない職場環境の整備が求められている。
企業は、社会の構成員としてこうした社会の方向性に乖離することなく、経営戦略
の中で、女性の活用・活躍の促進に取り組んでいく重要性が増している。女性の活用・
活躍を実践できない企業は社会や市場から評価されなくなる可能性もある。
- 48 -
8.1 女性の活用に取り組まないことによる社会的なリスク
日立製作所では、経営トップのイニシアチブのもと、ダイバーシティの推進に取
り組んでいる。ダイバーシティに取り組む理由として、経営戦略から見た「ダイバー
シティに取り組まないリスク」もあげている。日立にとって、ダイバーシティは、
個人の多様性を尊重し、コングロマリットを形成する、お互いのビジネス面でのシ
ナジーを促進するために進めているが、ダイバーシティに取り組まないと、社会や
顧客から排除されるリスクや、学生から選択されず優秀な人財が確保できないリス
ク、財務面でのリスクなど、企業の経営にマイナスに作用する「リスク」があると
している。
日本企業ではダイバーシティへの取組を行うにあたって、まず女性の活用に取り
組むという例が多くみられる。女性の活用・活躍の推進に取り組まない企業は、ダ
イバーシティに取り組まないリスクと同様の社会的なリスクを背負うものとなろ
う。
8.2 女性を活用している企業としての社会的認知が企業の評価に重要である
近年、企業を評価する指標として、女性の活用に取り組んでいるかどうかが重要
となっている。CSRレポート等を通じていかに女性を活用しているか情報公開を
行う企業も多くなっている。特に、グローバルにビジネスを展開する企業では、女
性を活用しない企業は、国際的なブランド力の低下につながりかねないリスクを負
う可能性もある。近年、マスコミや NPO などが「女性が働きやすい企業」を選び、
ランキングして公表する活動を行うようになってきたが、企業の女性活用度は社会
的な評価の基準として企業評価の重要な項目となっている。
本研究会の事例でも、商品企画で女性の能力を活用しているパナソニックは、日
経ウーマンの「女性が働きやすい会社ベスト 100」において、第 3 位にランキング
されている。パナソニックは女性の感性を商品企画に活かすだけではなく、育児休
暇取得率が高いことや、在宅勤務制度「e-Work@home」の導入などの支援施策が充
実していることでも、高く評価されている。3
日産自動車の事例は、米国の NPO のカタリスト4が選出する「2008 年カタリスト
3
出典:http://woman.nikkei.co.jp/special/article.aspx?id=20080820f1000f1&page=3
カタリスト:米国の非営利の調査・諮問団体で 1962 年に設立された。働く女性に対する
能力開発支援と企業における女性の才能を活用するためのさまざまな支援を行う団体であ
り,企業における女性の実態調査や,企業に対する表彰等,多岐に渡る活動を展開してい
- 49 4
賞」をアジアの企業で初めて受賞したケースである。カタリスト賞は、カタリスト
が毎年女性のキャリア開発、登用を支援する活動に積極的に取り組んでいる企業に
贈るものである。日産自動車は、受賞は同社の女性の能力活用がビジネスの視点で
取組まれた成果とグローバルにもたらす潜在的影響の大きさが高く評価されたと
している。また、女性従業員の積極的な登用が、企業の成長と発展に大きく貢献し、
女性がより活躍する企業となることが、男性も含めた多様な人財の活用、企業価値
創造につながるとしている。
このような事例からも、女性を活用している企業として社会に認知されること
は、企業の成長、発展に有効なものとなる。
る。 1987 年にカタリストが創設した「カタリスト賞」は,女性の登用に関して先進的な取
組を行い,成果を上げた企業に与えられる表彰であり,これまでに 64 の先進的取組に対し
て授与された。
(資料:内閣府「男女共同参画白書」平成 19 年)
- 50 -
Ⅵ.企業における女性の活用・活躍推進上の課題
女性の活用については、1990 年代にも少子高齢化の問題として取り上げられ、
議論がなされてきたが、企業は業務改革や IT 化を進め効率化を推進するなか、女
性を活用する取り組みも行っているが、実態はかならずしも十分進捗していないよ
うである。本研究会の企業の人事担当者に対するアンケート調査からも、女性の活
用・活躍に取り組んでいる企業は、
「少しは取り組んでいる」企業を含めると 80%
となっており、女性の活用・活躍を推進しようとする意識は、多くの企業において
みることができる。しかしながら、前述の統計調査などからも、管理職数に占める
女性の比率が先進国に比べ著しく低いことや、男性に比べて勤続年数が短いことな
どがわかる。これまで、企業は女性を活用するための制度は整えているものの、実
際には、女性の能力を充分に活用できていないと思われる。
女性の活用・活躍が十分になされる職場をつくるためには、女性・男性の区別な
く、能力を活かせる機会が均等にあるとともに、女性・男性とも仕事と生活の調和
(ワークライフ・バランス)が実現できる必要がある。すなわち、女性が活躍でき
る場を拡大するとともに、生活面で犠牲が出る程に仕事を優先するような「仕事の
管理」や「時間の管理」などこれまでの働き方を見直す必要がある。
女性活用の実態と進むべき方向について、二つの軸、すなわち、「女性が活躍で
きる場を拡大するという機会の均等」という軸と「ワークライフ・バランスの実現」
という軸を用いて、イメージを図示すると下図のようになる。
図表―6.1 男女の仕事の機会均等とワークライフ・バランスの関係イメージ図
仕事の機会均等
不均等
仕事と生活
均等
理想
均衡型
働
き
方
仕事優先型
実態
建前上の姿
- 51 -
現在の企業の「実態」は、図の左下の象限にあるものと考えられる。すなわち、
機会が均等にある(
「建前上の姿」)というものの「実態」は必ずしもそうではない。
そして、職場はワークライフ・バランスがとれていない状況にある。この現状から、
右上の「理想」の姿を目指す努力が必要である。つまり、女性の活用・活躍推進の
ためには、以下に示す4つの課題に取り組む必要がある。
1.企業風土を形成してきた男性の意識改革に取り組む必要がある
男性と女性の役割分担などに関する固定概念が、男性が女性に優先される風土を
形作っている面があるので、その基となる男性の意識改革が必要である。
2.これまでの働き方や仕事のやり方を変える取り組みが必要である
女性が働きやすい職場をつくるためには、経営者や管理職を中心とした男性が、
これまでの長時間労働や会社中心の働き方を見直す必要がある。
3.企業内の強いコミットと強力な推進力が必要である
これまでの企業の風土、慣習に根ざす問題でもあるので、実効性のある取り組み
を行うためには、企業内において強いコミットと強力な推進力が必要である。
4.企業内だけで解決できないことについて、社会的・政策的な施策が必要である
企業の努力では限界があるもの、また、企業や個人が構成員である社会にも問題
があるものなどについて、公的、社会的な支援、取り組みが必要である。
- 52 -
VII.女性が活躍できる職場のあり方(提言)
前章の問題・課題を認識し、女性の活用・活躍を推進し、皆が働きやすい職場、社会
を作っていくため、以下のような提言を行う。提言は、企業への提言、社会・政策への
提言に加えて、女性と男性へのメッセージから成っている。
1.企業への提言
1.1 経営戦略の中で女性の活用・活躍の推進を明確化する
1)女性の活用・活躍推進を経営トップ自らの課題としてビジョンに掲げイニシアチブ
をとる
企業の経営者は、激しく変化する経営環境のなかで、女性の活用・活躍推進なくして
企業の成長、発展はないことを認識し、女性の活用・活躍推進を、経営ビジョンにかか
げ、経営戦略の中に位置づけることが強く求められる。経営層のリーダーシップを発揮
して、
「女性活用方針」を明確に定め、社内外に広く宣言し、管理職、男性、女性、取
引先の顧客等も含め理解させ、意識を変えさせていくことが必要である。
女性の活用やダイバーシティの問題は、人事部門に任せておけばよいものではなく、
女性の活用、活躍を実現できるかどうかは、経営能力の試金石ともいえる。
本研究会の事例にある「経営トップの強いイニシアチブで女性活用を推進している例
(日立製作所)
」や「経営の発案で女性活躍の推進を行う中で、経営層の意識がさらに
深まり、女性活躍は、女性の問題だけでなく、男性の問題でもあるという認識を持つよ
うになった例(三菱東京UFJ銀行)」にも、経営トップのリーダーシップがいかに重
要であるかが分かる。
2)女性活用推進組織や委員会を設置して継続的な活動を行う
女性の活用・活躍の推進のための様々な支援や活動を行うために、経営トップのサ
ポートのもとに、専任者をおいて女性活躍を推進する専門組織や委員会等を設置し、継
続的に活動をすることが重要である。本研究会の事例においても、多くの企業が女性活
躍推進のための専門組織を立ち上げているが、責任者を人事部からではなく、実務担当
の女性リーダーから選んでいる点が注目され、現場感覚の新しい血が、従来の企業風土
やマインドを変えていく牽引役になるものと思われる。
人事担当者は、女性の活用・活躍に関しての社会的、あるいは、グローバルな傾向・
- 53 -
要請などを把握するとともに実効性の高い対策を講じていくためには、自らが、現場の
実務を体験するなど、現場で実際におこっている問題を十分把握することも必要である。
3)女性の職域の拡大、管理職の増加をはかる
一部の職域で女性社員や管理職が増えるだけでは真の女性の活躍とは言えない。幅広
い職域に女性が進出し、リーダーや管理職が増え、すそ野も拡大していくことが重要で
ある。そのためには、管理職や役員などを増やす「垂直的なチャレンジ」と、女性が活
躍できる領域を広げる「水平的なチャレンジ」の両面に取り組む必要がある。
「水平的なチャレンジ」を進めるためには、女性にふさわしい仕事に女性が゙就くと
いう考え方から、個人の能力・適性に合った仕事に就くという考え方に変え、それを浸
透させなくてはならない。
女性の「垂直的なチャレンジ」を進めるためには、仕事で勤続した期間で評価するの
ではなく、人材を個々人の持つスキル・能力で評価するしくみが必要である。そのよう
なしくみは、産休や育児・介護休業のため、キャリアアップ(昇格、昇進)の機会を逃
しかねない有能な女性に活躍する道を開くものとなる。
1.2 女性が働きやすい環境を整備するとともに、シンボリックモデルの創出、発掘、
支援を行う
1)大前提として女性が働きやすい環境の整備を行う
まず、女性が働きやすい制度を整備することが「働きやすい職場づくり」の第一歩と
なる。女性が働き続けるうえで、大きな障壁となっているのが、出産、育児であり、近
年は介護も大きな問題となっている。労働基準法や育児・介護休業法で定められた制度
に加え、育児休業期間の拡大、事業所内保育施設の設置、テレワークの導入など、働く
女性のニーズに対応した制度をより充実させ、女性が働き続けることができる職場づく
りを行うことが求められる。
また、せっかく制度があっても実際には取りづらいという課題が多くの企業でみられ
るが、現場の管理職が率先して、制度を理解し支援するなど、職場の雰囲気を変えてい
くことが必要である。
本研究会の事例においても、三菱東京 UFJ 銀行では、妊娠中の短時間勤務、出産から
育児において最長 2 年半の育児休業、小学校 3 年生までの短時間勤務などを新設し両立
支援施策を充実しており、その結果、平成 20 年の育児休業取得者数は、平成 18 年比、
- 54 -
2.8 倍となっている。
2)女性活躍のシンボリックモデルを計画的に創出する
女性が将来に対して希望を持って努力するようにするためには、女性に対して具体的
な目標を示す、シンボリックなモデルの計画的な発掘・育成・認知・支援が必要である。
社内でだれもが認める素晴らしい女性の活用、活躍の実態を積極的に探し出し、ロール
モデルとして社内に広く告知し、次に続く女性に、チャレンジすれば自分たちにも道が
開けるという、やる気と希望を与えることが重要である。
シンボリックモデルをつくることは、女性たちにロールモデルを参考に、具体的に目
指すべき将来像、キャリア形成の過程を示し、モチベーションを高める有効な手段とな
る。
3)女性社員に対する教育研修の充実、メンター制度によるバックアップを行う
かつて多くの企業でコース別人事制度が採用され、女性は一般職が多かったため、女
性に対する教育研修が十分ではなかった。このため、女性従業員一般に対して、職務拡
大に役立つような育成指導力や業務改善能力の教育研修を行っていくことが必要であ
る。また、将来、経営・管理を担う候補として期待される女性に対しては、更に、高度
な教育研修の機会を用意することが必要である。
また、女性社員に対して、キャリアプランや能力開発、仕事上の悩みを相談する「メ
ンター制度(直属の上司、先輩ではない者による助言者制度)」は、女性にやる気を与
えるものとなるので、導入すべきである。さらに、シンボリックモデルとなる女性に対
しては、男性社会の中で潰れないように、女性経営幹部としての育成を目的として、例
えば役員や女性幹部などがメンターとして、きめ細かな支援を行うことも必要である。
1.3 女性の活用・活躍の推進には、現場の男性管理職並びに男性の意識改革が不可欠
である
1)男性の女性に対する固定概念を打破すべきである
女性の活用・活躍の推進を阻む背景には、男性の女性に対する固定概念、偏見や、女
性への期待の低さが大きいものと思われる。家事や育児は女性の役割である、女性は家
庭に入るべきである、女性は感情的で論理的でない、など男性が女性に持つ固定概念は
まだ根強いと思われ、女性が本当に活躍できる職場づくりをするために、こうした男性
- 55 -
の固定概念を変える意識改革、男性中心の企業風土を変えることが必要である。
女性の活用・活躍を進めるためには、社員の意識調査から、女性の活躍推進を妨げる
要因となる男性、女性がそれぞれ持つ固定概念を明らかにし、女性を活用しないこと、
女性が活躍できないことが、職場にとってデメリットをもたらすことを具体的に示し、
男性の意識改革をはかることが必要である。
富士フイルムの事例でも、女性の活躍促進を妨げる要因となる男性、女性の固定概念
を調査し、その結果生じた企業に与える好ましくない影響を分析し、企業として取り組
むべき課題を抽出し、女性社員とともに、男性社員に対して、意識改革を求めている。
2)男性管理職への教育研修を徹底する
今までの男性中心の組織、企業風土のなかで、多くの男性管理職は、女性を活用する
ための、マネジメントに慣れていないのが実態と考えられる。本研究会のアンケート調
査においても、女性担当者があげる問題として、
「女性の活用に対して男性管理職の経
験不足」という回答が多くみられた。
このため、男性管理職に対して、経営トップによる女性の活用・活躍推進の方針を伝
え、女性の活用・活躍を推進しなければ企業のデメリットとなること、企業の成長、生
き残りには女性活用が不可欠であることを徹底して教え、理解させ、意識を変えていく
教育・研修が重要である。
1.4 女性に限らず、全ての人が活躍できる職場の実現を目指す
1)多様性を認める価値観を経営の根幹とする
企業の従業員は、それぞれ個性や個別の価値観を持っている。仕事を遂行する上で、
共通の目標を目指して、従業員は協同して取り組まなければならないが、他方で、従業
員が働きがいを持って仕事に取り組むためには、個々人が持つ個性、価値観について可
能な限り尊重することが必要である。企業を構成する全ての従業員が活躍し、企業が持
続的に発展するためには、従業員の多様性を認め、包容する考え方を経営の基本に持つ
必要がある。そもそも企業は多様な構成員からなる社会の一構成員であり、企業は社会
に影響を及ぼすものの、企業自身も社会の変化に対応していくことが求められる。社会
における多様性を認め、企業においても多様性を尊重することが社会の変化に対する企
業の対応能力を高めるものと考える。
パナソニックが、男女や役職年齢にこだわらず、女性や若手社員の視点・感性を尊重
し、徹底的な責任・権限委譲により、新しい発想で商品企画を成功した例は、多様な人
- 56 -
材の個性・能力の発揮を目指した事例といえよう。
2)ワークライフ・バランスを推進する
女性・男性とも全ての人が活躍できる職場づくりを行う上で避けられないことは、
ワークライフ・バランスを推進することである。現在の日本企業での働き方を変え、今
迄の日本企業に多くみられた長時間労働を是正するとともに、生活面の事情を踏まえて
柔軟な働き方ができるようにすることによって、女性だけでなく男性においても、仕事
と生活の両立支援ができるようにすることが必要である。これにより、男女問わず働く
人の働く意欲やロイヤリティを高めることとなり、企業にとってもメリットとなる。
ワークライフ・バランスの取り組みは将来の成長・発展につながる「明日への投資」と
も言えるものである5。
システムインテグレーターの新日鉄ソリューションズの労働時間の削減を起点とし
た働き方を変える取り組み例は、一時的に売上がおちても、日本の IT 技術者が付加価
値の高い仕事をし、将来の活路を見出すという試みの例である。
2. 社会・政策への提言
2.1 誰もが、いつでも、社会インフラとして保育サービスを受けたい人が受けられる
しくみを構築する
1)保育サービスを受けられる施設、場を抜本的に拡大する
現在、大都市部を中心に我が国全体で約 100 万人ともいわれる潜在的な待機児童が存
在しており、まずは保育サービスを受けられる施設等について、保育の一定の質を保ち
ながら、大幅に量を拡大すべきである。そのためには株式会社や NPO 法人等、多様な主
体の参入が不可欠であり、社会福祉法人と同等に補助金等による支援を行うべきと考え
る。
こうした潜在需要に対応していくためには、既存の認可保育所や幼稚園だけでは対応
は困難であり、認可外保育所も含めた支援強化を行い、サービスの底上げを図るべきで
ある。
また、ベビーシッターやチャイルドマインダー等の民間資格による保育サービスが存
出典:内閣府男女共同参画会議「企業が仕事と生活の調査に取り組むメリット」平成 20
年4月9日
- 57 5
在しているが、昨年末の法改正により、新たに「家庭的保育」が法的に位置づけられた。
この「家庭的保育」について、早急に制度の実施を行い、普及促進を図ることも必要で
ある。
そして、保育サービスを受けたい人がサービスを受けられる身近な施設、場について
の情報を容易に入手できるよう、地方自治体において、それらの情報を収集、整理し、
提供することが期待される。
2)保育サービスの利用要件と提供時間等に係わる制限を緩和する
認可保育所においては、「昼間労働することを常態としていること」、「妊娠中である
か又は出産後間がないこと」が入所要件とされており、「保護者が夜間仕事に従事して
いる」、
「育休中」などのため、入所することができない児童が大勢いる。認可保育所の
入所要件を緩和し、認可保育所のサービスを受けられる対象を拡大すべきである。
また、就学後の児童に対する放課後の保育サービスとして行われている学童保育につ
いては、法律上、対象が小学校就学児童でおおむね 10 歳までと制限されており、また、
助成範囲に応じて、実態上、多くの施設で終業時刻が夕刻までに過ぎない。このため、
これらの制限・制約を撤廃・緩和して、必要とする場合には、いつでも学童保育サービ
スを受けられるようにすべきと考える。
2.2 学校教育段階で、女性と男性が共に働き、共に社会を作る意識についての教育を
更に推進し、浸透させる
女性が活躍できる職場をつくるためには、男性の意識改革が必要であるが、企業に
入ってからの教育研修だけでは十分とはいえない。企業風土や職場の個人の意識を変え
るためには、これらが構成員となっている社会における認識を変える必要がある。この
ようなことから、「企業に入る前段階の若い世代」から、男女が共に働き、共に家庭生
活の活動(家事・育児等)を行うという意識を醸成するため、学校教育の段階から、そ
のような教育を推進する必要がある。
2.3 税制面での配偶者控除や年金制度における被扶養配偶者受給などを見直す
現在の社会保障等の制度において、女性の就労意欲を阻害する面があるものについて
は、見直しが必要である。現状では、配偶者の所得が 103 万円以下であることが、配偶
者控除の適用限度額となっており、また、配偶者の所得が 130 万円になると、被配偶者
の年金や健康保険から配偶者本人の国民年金や国民健康保険に移行しなくてはならな
- 58 -
いものになっている。
こうした制度は、配偶者である女性に適用されることが多いが、制度が適用されない
働く女性にとって不公平感を感じさせるとともに、制度が適用される女性の就労意欲を
低下させるものと考えられる。不公平感や就労意欲の低下を招くような国の制度につい
ては見直すべきである。
3.企業で働く女性へのメッセージ
【女性が活躍できる土壌づくりが進んでいます】
皆さんは、「しょせん女性はアシスタント業務」と思っていませんか。また、責任あ
る仕事を任されている方でも、
「男性並に評価されていないのではないか」と疑問に思っ
てはいませんか。更に、管理職になってみても、「分厚いガラスの天井が存在する」と
感じていませんか。能力主義と会社はいうけど、「能力を発揮できる機会すら与えられ
ていない」もしくは、「男性のように仕事最優先でないと評価されない」と思っていま
せんか。実際、企業の大多数が「女性の活用を推進」といっても、まだ十分とはいえな
いのが実情です。それでも、制度面では、女性が活躍できる土壌は少しずつですが整い
始めました。たとえば、産休、育児・介護休業制度の法律が定められ、企業の社内制度
も整備されてきました。また、昔から女性を悩ませてきたセクシャルハラスメントやパ
ワーハラスメントなども法律で禁止されました。先人達の苦労話が昔話になるのも、そ
う遠い未来ではありません。
【チャレンジしましょう】
これから、日本企業で女性が一層活躍していくためには、一人でも多くの女性が管理
職や役員などをめざす「垂直的なチャレンジ」と、これまで男性が主力だった幅広い職
域に女性が進出してすそ野を拡大し、活躍できる領域を広げる「水平的なチャレンジ」
の両面から取り組んでいくことが求められています。そして、先輩にこうしたチャレン
ジのお手本となる女性がいないならば、「自分がロールモデルになってやろう」という
チャレンジ精神を皆さん一人一人に持って欲しいのです。もちろん、完璧なロールモデ
ルをめざす必要はありません。自分の得意な部分でモデルとなればいいのです。
【気軽に相談できる仲間づくりをしましょう】
といっても、チャレンジするにはちょっと勇気が要りますし、長続きさせるのも大変
ですね。そこで、まず社内・社外で気軽に相談できる、キャリア志向の働く女性の仲間
を持ってみませんか?もちろん、キャリア志向の働く女性といってもさまざまな人がい
ますが、その違いを認め合えれば、きっと頼もしいサポーターになってくれるはずです。
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また、男性の上司や同僚とも、機会をみつけて貴方が目指しているキャリアについてき
ちんと話してみませんか。わかりあえれば、これまた頼りになる応援団になってくれる
でしょう。そうした仲間づくりが、上司やその組織を、ひいては社会を変える原動力と
なるのです。現実がみえてきた優秀な女性にとって、もしかすると乗り越えなければな
らない最初の壁は、すべてのことを自分だけでやり遂げなくてはならないというような、
少し気負いすぎた自己責任意識なのかもしれません。皆さん一人一人がやる気と勇気を
だして、仲間づくりに取り組んでほしいと願っています。
4.企業で働く男性へのメッセージ
【皆が能力を十分発揮する職場をつくりましょう】
職場のメンバー全員がいきいきと働き、能力を十分発揮している姿は素晴らしいと思
いませんか。士気が高まり、仕事の成果も挙がると思います。現在の多くの職場におい
ては、メンバー全員が能力を十分発揮しているでしょうか。特に、女性については埋も
れた能力が沢山あるように思えます。
無意識のうちに、女性に多くを期待せず、補助的な業務を担当させていませんか、女
性は長期間職場にとどまらないと思い込んでいませんか。最近では、長く働きたいと考
えている女性が多いのです。頑張って、企業の業績に貢献しようと思って入社したにも
かかわらず、会社、特に男性から仕事での活躍を期待されず、このため、やる気を失い、
努力することをあきらめている女性が沢山います。
女性に無理をさせてはいけない、女性は守らなければならないとの気持ちを持つ男性
は多いと思いますが、そのような誤ったやさしさにより、女性のやる気を損ねているこ
ともあります。例えば、身近な地域での活動を考えてみてください。そこでは、男性、女
性に関係なく、その人の能力や意欲に応じて仕事を分担し、全体としての成果を挙げてい
ます。また、男性より、女性の方が活躍している場合も多いと思います。
職場においても、男性に対すると同様に、女性にも仕事を任せてみる、そして重要な
業務に参画させてみることが、その女性を元気付け、能力を引き出すことがあります。
そして仕事の分担を男性、女性に区分けして考えるのではなく、仕事の内容に応じて適切
な人に任せることが高い成果につながるように思えます。
【仕事と生活の両立に努力する人を応援しましょう】
もちろん、女性は長いライフスパンの中で、出産のため仕事に十分取り組めない時期
もあります。また、育児や介護の負担がかかるために、仕事ととの両立に苦労する時期
もあります。そのような時期において、このような生活面の負担と仕事を両立しようと
する女性を大いに応援しようではありませんか。
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そもそも、出産はともかくとして、育児や介護のみならず、毎日の生活のための家事
は誰かがせねばならないものですが、必ずしも女性でなくてはできないものではありま
せん。会社の仕事に専念している人の場合には、そのような家庭生活面の負担を誰かが
負ってくれているのです。現在の我が国においては、その負担は女性に多く、場合によっ
ては過度にかかっているのではないでしょうか。
【働き方の見直しに取り組みましょう】
我が国の経済・社会は大きく変化しています。これまでのような働き方、そして家庭
生活面の負担の負い方のままで良いのかについても、考えるべき時期に来ているのでは
ないでしょうか。家庭生活面の負担と職場での仕事の負担は相反するものではなく、両
立できるはずのものです。その両立(ワークライフ・バランス)を図るためには、私生
活面であまりの犠牲を伴いかねないような職場での働き方を変えていくことが必要で
はないでしょうか。そのような働き方の見直しは、女性のみならず、過重な残業で苦し
む若手や中堅を含む、すべての働く人のためになるように思います。容易には実現でき
なくても、その必要性を認識し、働き方の見直しにも取り組むべき時ではないでしょう
か。
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■ 参考 企業における女性の活用・活躍推進の取組状況と必要な施策例
本研究会では、女性の活用・活躍推進を進めていく上での、様々な施策が議論された。
これらの議論のなかから、女性の活用・活躍推進のために参考になると思われる施策例
を、企業の女性活用の取組状況ごとに、以下に一覧にまとめた。
第一フェーズは、女性の活用・活躍推進に取り組むスタートをきったフェーズでの参
考施策例である。
第二フェーズは、女性の活用・活躍推進に取り組んできた結果、いっそう積極的に取
り組もうするフェーズでの参考施策例である。
第三フェーズは、女性の活用・活躍推進という言葉がなくなり、全ての働く人の活躍
を図るフェーズでの参考施策例である。
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