第五章 ホスラクトマイシン B の収束的合成研究

第五章
第一節
ホスラクトマイシン B の収束的合成研究
はじめに
1989 年にホスラクトマイシン類が初めて単離・構造決定され、強い抗真菌活性を示すこと
が報告されてきた 1(Figure 5-1)。また、ホスラクトマイシン類はプロテインホスファターゼ
2A(PP2A)に対して強い選択的阻害を示す抗腫瘍性抗生物質でもある 2 。さらに、ナチュラ
ルキラー細胞の増殖促進により、がん細胞の転移を抑制することも報告されており 3、抗がん
剤開発への応用が期待されている。
OH
HO P O
O
OH
O
O
OH
R
H2N
Phoslactomycin A (1): R =
O
Phoslactomycin D (4): R =
O
O
O
Phoslactomycin B (2): R =
Phoslactomycin E (5): =
H
O
O
Phoslactomycin C (3): R =
O
Phoslactomycin F (6): R =
O
O
O
Figure 5-1
ホスラクトマイシン類をバイオプローブとして活用する研究を行うため、天然体そのもの
が必要となる。しかし、天然から得られるのはごく微量であり、また、官能基が多く存在す
ることから、ホスラクトマイシンのバイオプローブへ誘導することも困難に思える。こうし
た理由から有機合成による効率的な合成法の開発と供給が望まれている。前章では王・武山
らのホスラクトマイシン B(2)中間体の新規合成ルートを開発し、合成効率を大幅に改善す
ることに成功した 4 。本章ではより効率の良い合成法の開発を目的とし、またバイオプローブ
の合成を視野に入れたホスラクトマイシン B(2)の収束的合成法の開発を行った。
- 76 -
第二節
ホスラクトマイシン B の合成戦略
OH
HO P O
14
O
OH
5
O
8
O
9
PMBO
5
EtO2C
8
11
OTBS
9
11
OTES
OH
14
TBDPSO
H2N
7
Phoslactomycin B (2)
前章で述べたようにホスラクトマイシン B(2)は、不飽和ラクトン、8位のアミノエチル
基と水酸基、9 位リン酸エステル、11 位水酸基、(Z, Z)-ジエンを持ち、その高い官能基性が合
成を難しくしている。前述した王・武山らの合成 5 では、ビニルアセチレン 8 からアリルエ
ステル 9 への変換での収率が 48%と低く、合成効率を低下させていた(Scheme 5-1)。この問
題点を解決するために、筆者らはより効率的な合成ルートの設計を行なった。
Scheme 5-1
PMBO
OTBS
PMBO
1) O3
OTES
TBDPSO
OTBS
EtO2C
OTES
2) (EtO)2P(O)CH2CO2Et
(48% 2 steps)
TBDPSO
8
9
I
PMBO
10
OTBS
EtO2C
Pd(PPh3)4
(87%)
OTES
TBDPSO
7
本章では、王・武山らのホスラクトマイシン B 中間体 7 を合成目標とし、その合成前駆体
としてジアステレオマーのアルキニルアルコール 11 を想定した。11 からホスラクトマイシ
ン B 中間体 7 への誘導は、前章での知見を基に野依らのルテニウム触媒を用いた水素移動型
不斉還元反応で達成できると考えた。11 はトリシロキシル化合物 12 とエンイン 13 との 2 つ
のセグメントに分割して合成し、両セグメントをカップリングさせるコンバージェントな合
成計画を立案した。12 の合成は、前節で合成したビスシリルエーテル 14 を出発原料として
用い、ビニル基部分の切断と続く Horner-Wadsworth-Emmons 反応で合成できると考えた。ま
- 77 -
た、エンインセグメント 13 は文献既知のヨードオレフィン 10 とトリメチルシリルアセチレ
ン 16 との薗頭カップリング反応により誘導すれば合成できると考えた(Scheme 5-2)。
Scheme 5-2
Asymmetric
hydrogenetion
PMBO
OTBS
PMBO
EtO2C
OH
EtO2C
OTES
TBDPSO
OTES
TBDPSO
7
11
C-C bond
formation
C-C bond cleavage;
Horner-WadsworthEmmos reaction
PMBO
Sonogashira
coupling
PMBO
OTES
OTES
EtO2C
OTES
OTES
+
TBDPSO
TBDPSO
14
12
13
Chapter 4
I
OH
HO
TMS
+
15
16
- 78 -
10
第三節
セグメント 12 および 13 の合成
まず、前章で合成した 14 を文献に従い四酸化オスミウムと過ヨウ素酸ナトリウムを用いて
酸化開裂反応を行った 6 (Table 5-1、entry 1)。しかしながら、アルデヒドは得られず 1 級ト
リエチルシリル(TES)基の脱保護のみが起きた。このとき、オレフィンの酸化が起こらな
かったのはビニル基の立体障害が大きく、四酸化オスミウムが接近できなかったためである
と推測している。そこで、より強力な酸化条件であるオゾン酸化を検討した 7 (entry 2)。こ
の場合、
14 は完全に消費されたものの続くジメチルスルフィドによる還元時に分解が起こり、
アルデヒドは痕跡程度に得られるのみであった。そこで、オゾン酸化後の還元をトリフェニ
ルホスフィンで行ったところ、分解は起こらず、アルデヒドを効率的に得ることができた
(entry 3)。得られたアルデヒド 17 は精製せずに Horner-Wadsworth-Emmons 反応を行い、(E)オレフィン 12 を選択的かつ収率良く与えた(Scheme 5-4)。
Scheme 5-3
PMBO
OTES
PMBO
Chapter 4
conditions
OH
HO
OTES
TBDPSO
15
O
Table 5-1
TBDPSO
14
OTES
OTES
17
Table 5-1
(EtO)2P(O)CH2CO2Et
NaH
PMBO
OTES
EtO2C
entry
conditions
solvents
aldehyde 17
1
OsO4, NaIO4
2,6-lutidine
dioxane/H2O
—
2
O3 then Me2S
MeOH/CH2Cl2
tracea
3
O3, 2,6-lutidine
then PPh3
CH2Cl2
>74%
OTES
(74% 2 steps)
TBDPSO
12
a
Determined by TLC analysis.
次にもう一方のセグメントであるエンイン 13 を王・武山らの方法に従い合成した。まず、
Stork らの方向 8 を参考にしてヨードメチルトリフェニルフォスフォニウムヨージドとシクロ
ヘキサンカルボキシアルデヒド(18)との Wittig 反応を行った。このとき高い(Z)-選択性でヨ
ードオレフィン 10 が得られた。なお、1 H NMR から(E)-オレフィンの生成は痕跡程度であっ
た。得られた 10 は薗頭反応でトリメチルシリルアセチレン(16)とカップリングを行い、エ
ンイン 19 へと誘導した。さらに 19 はメタノール中、炭酸カリウムで処理してアセチレンセ
グメント 13 を合成した。なお 13 は沸点が低く、また十分にきれいであったことから精製せ
- 79 -
ずに次の反応に用いることとした(Scheme 5-4)。
Scheme 5-4
CHO
Ph3PCH2I2, NaHMDS
DMPU
I
TMS
16
TMS
Pd(PPh3)4, t-BuNH2
CuI
(86%)
(62%)
18
10
K2CO3, MeOH
13
- 80 -
19
第四節
ホスラクトマイシン B キー中間体 7 の合成
両セグメント 12、13 を合成できたので、次に 12 からアルデヒド 20 への変換を行った
(Scheme 5-5)。ここでも前章の結果を参考に Maycock らの方法 9 を使った。合成したアルデ
ヒド 20 とエンイン 13 のカップリング反応は次のようにして行った。まず、低温下でテトラ
ヒドロフラン(THF)溶媒中、n-ブチルリチウムを作用させエンイン 13 のリチウム試薬を調
製し、そこにアルデヒド 20 を慎重に加えた。こうすることでエステルは反応することなく、
高い収率でアルコール 21 を得ることができた。なお得られた 21 の水酸基の立体選択性は、
目的とする 21 とそのジアステレオマー22 とが 3:7 程度であった。
Scheme 5-5
PMBO
(COCl)2
DMSO
Et3N
OTES
EtO2C
PMBO
EtO2C
CHO
OTES
TBDPSO
OTES
TBDPSO
12
13
n-BuLi, THF
PMBO
OH
PMBO
EtO2C
–78 °C
(96% 2 steps)
20
+
OTES
TBDPSO
OH
EtO2C
OTES
TBDPSO
21
3
:
22
7
次に得られた 21 とジアステレオマー22 は単離せずに酸化してケトン 23 へと変換した
(Scheme 5-6)。そこから前章と同様に、野依らの水素移動型不斉還元反応 10 を行い、目的の
立体を有するアルコール 21 へと誘導した。ここでのジアステレオマー22 の生成は極めて微
量であり、カラムで容易に単離することができた。また、ケトン 23 は反応性に乏しいため、
反応温度を 40 °C に設定することで反応を完結させることができた。原著論文では反応温度
を 28 °C に固定
10
しているが、一般的には反応温度を高くしても不斉収率の低下はそれほど
大きくないといわれている
11
。こうして合成した 21 の水酸基を tert-ブチルジメチルシリル
(TBS)基で保護し、王・武山らのホスラクトマイシン B 中間体 7 へ誘導した 5。同時に、7
の合成をもってホスラクトマイシン B(2)の形式全合成を達成したことになる。
- 81 -
Scheme 5-6
PMBO
OH
PMBO
EtO2C
+
OTES
TBDPSO
TBDPSO
3
:
Ph
Ph
O
EtO2C
Ts
N
Ru
N
H
PMBO
+ diastereomer 22
OTES
TBDPSO
PMBO
OH
EtO2C
23
TBSOTf
2,6-lutidine
(90%)
22
7
i-PrOH
OTES
TBDPSO
TPAP
NMO
OTES
21
PMBO
OH
EtO2C
21
(79%)
OTBS
EtO2C
OTES
(95%)
TBDPSO
Phoslactomycin B
intermediate (7)
今回、筆者らが行ったホスラクトマイシン B 中間体 7 の合成は 1,4-ブタンジオール(15)
から 17 段階、全収率 18.6%であり、以前の合成ルート(クロトンアルデヒド(24)から 21
段階、全収率 4.6%)よりも、工程数、収率の両方を飛躍的に向上させることに成功した(Scheme
5-7)。
Scheme 5-7
Previous route
CHO
4.6% in 21 steps
crotonaldehyde (8)
PMBO
OTBS
EtO2C
OTES
Present route
HO
OH
18.6% in 17 steps
TBDPSO
Phoslactomycin B
intermediate (7)
1,4-butanediol (24)
次にホスラクトマイシン B 中間体 7 から、新規バイオプローブとして期待されているデホ
スホ・ホスラクトマイシン B(28)の全合成研究を開始した(Scheme 5-8)。現在は、7 から
王・武山らの合成 5 にしたがってラクトン部分を構築し、保護基の脱保護、エンイン部分の(Z,
- 82 -
Z)-ジエンへの還元、1 級アミノ基の導入等により前駆体 28 の合成を達成している。今後、ア
リルオキシカルボニル(Alloc)基の脱保護を行い 29 の全合成が達成できると考えている。
Scheme 5-8
PMBO
OTBS
PMBO
EtO2C
O
OTES
TBDPSO
O
O
OTES
Phoslactomycin B
intermediate (7)
PMBO
TBDPSO
25
Zn, (CH2Br)2
LiCuBr2
OH
O
PMBO
O
OH
HO
26
HO
O
OH
O
OH
HO
TBAF
AcOH
OTBS
OH
27
HO
O
O
OH
O
OH
OH
(Alloc)2N
H2N
Dephosphophoslactomycin B (29)
28
- 83 -
第五節
まとめ
以上、17 段階、全収率 18.6%でホスラクトマイシン B 中間体(7)の新規合成法の開発に
成功した(Scheme 5-9)。すなわち、第四章で合成したビニル中間体 14 を出発原料とし、ビ
ニル基の酸化開裂の検討と Horner-Wadsworth-Emmons 反応によりアリルエステル 12 を合成し
た。12 からは Maycock らの方法を使いアルデヒドセグメント 20 へと誘導した。また、Stork
らの条件を参考にした Wittig 反応と薗頭反応を使ってエンインセグメント 13 を合成した。合
成した両セグメントは、低温でカップリング反応を行ってアルコール 21 とした後、前章で得
られた知見を基にしてホスラクトマイシン B 中間体(7)の合成を達成した。また、これによ
りホスラクトマイシン B(2)の形式全合成を達成したことになる。本章で得た知見を利用す
ることで、様々なホスラクトマイシン類縁体の効率的な合成が近い将来達成されることを期
待している。
Scheme 5-9
PMBO
OTES
Chapter 4
OH
HO
PMBO
EtO2C
1) O3
OTES
TBDPSO
15
OTES
2) HWE
TBDPSO
14
12
TMS
CHO
1) Wittig
2) Sonogashira
18
19
PMBO
Swern
EtO2C
PMBO
CHO
13
OTES
TBDPSO
OTES
TBDPSO
20
PMBO
OTBS
EtO2C
OTES
TBDPSO
OH
EtO2C
Phoslactomycin B
intermediate (7)
- 84 -
21
OTES
参考文献
1. (a) Fushimi, S.; Nishikawa, S.; Shimazu, A.; Seto, H. J. Antibiot. 1989, 42, 1019–1025; (b) Fushimi,
S.; Furihara, K.; Seto, H. J. Antibiot. 1989, 42, 1026–1036; (c) Ozasa, T.; Suzuki, K.; Sasamura,
M.; Tanaka, K.; Kobari, M.; Kadota, S.; Nagai, K.; Saito, T.; Watanabe, S.; Iwanami, M. J. Antibiot.
1989, 42, 1331–1338; (d) Ozasa, T.; Suzuki, K.; Tanaka, K.; Sasamata, M.; Kaniwa, H.; Shimizu,
M.; Matsumoto, H.; Iwanami, M. J. Antibiot. 1989, 42, 1339–1343.
2. Usui, T.; Marriott, G.; Inagaki, M.; Swarup, G.; Osada, H. J. Biochem. 1999, 125, 960–965.
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Takeuchi, T. Int. Immunopharmacol. 2003, 3, 179–188.
4. Nonaka, H.; Maeda, N.; Kobayashi, Y. Tetrahedron Lett. 2007, 48, 5601–5604.
5. Wang, Y.-G.; Takeyama, R.; Kobayashi, Y. Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 3320–3323.
6. Yu, W.; Mei, Y.; Kang, Y.; Hua, Z.; Jin, Z. Org. Lett. 2004, 6, 3217–3219.
7. Danishefsky, S.; Chackalamannil, S.; Harrison, P.; Silvestri, M.; Cole, P. J. Am. Chem. Soc. 1985,
107, 2474–2484.
8. Stork, G.; Zhao, K. Tetrahedron Lett. 1989, 30, 2173–2174.
9. Afonso, C. M.; Barros, M. T.; Maycock, C. D. J. Chem. Soc. Perkin trans. 1 1987, 1221–1223.
10. (a) Haack, K.-J.; Hashiguchi, S.; Fujii, A.; Ikariya, T.; Noyori, R. Angew. Chem., Int. Ed. 1997, 36,
285–288; (b) Matsumura, K.; Hashiguchi, S.; Ikariya, T.; Noyori, R. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119,
8738–8739.
11. Murata, K.; Okano, K.; Miyagi, M.; Iwano, H.; Noyori, R.; Ikariya, T. Org. Lett. 1999, 1,
1119–1121.
- 85 -
Experimental Section:
General Information.
Infrared (IR) spectra are reported in wave numbers (cm–1). Unless otherwise noted, 1 H NMR (300
MHz) and
13
C NMR (75 MHz) spectra were measured in CDCl3 using SiMe4 (δ = 0 ppm) and the
center line of CDCl3 triplet (δ = 77.1 ppm) as internal standards, respectively. The following solvents
were distilled before use: THF (from Na/benzophenone), Et2O (from Na/benzophenone), and CH2Cl2
(from CaH2). Routinely, organic extracts were concentrated by using a rotary evaporator, and residues
were purified by chromatogrphy on silica gel. Merck silica gel 60 for column chromatography and
Merck precoated TLC plates (0.25 mmthick, 60F-254) were used.
(4R,5R,E)-Ethyl 4-(2-(tert-Butyldiphenylsilyloxy)ethyl)-5-(4-methoxybenzyloxy)4,7-bis(triethylsilyloxy)hept-2-enoate (12).
PMBO
OTES
PMBO
OHC
OTES
TBDPSO
14
OTES
PMBO
OTES
TBDPSO
17
OTES
EtO2C
OTES
TBDPSO
12
A stream of O3 in O2 was gently bubbled into a solution of olefin 14 (4.00 g, 5.24 mmol) and
2,6-lutidine (6.10 mL, 52.4 mmol) in CH2Cl2 (50 mL) at –78 °C for 1 h. Excess O3 remaining in the
solution was purged by bubbling argon at –78 °C. PPh3 (2.10 g, 8.01 mmol) was added at –78 °C and
the cooling bath was removed. After being stirred at room temperature for 1 h, the solution was
concentrated to leave a residue, which was flashed through short chromatography on silica gel
(hexane/EtOAc) to furnish the corresponding aldehyde, which was used for the next reaction without
further purification.
To an ice-cold solution of (EtO)2P(O)CH2CO2Et (2.30 mL, 11.5 mmol) in THF (15 mL) was added
NaH (419 mg, 60% in mineral oil, 10.5 mmol) portionwise. After 20 min, the above aldehyde in THF
(5 mL) was added dropwise. The resulting solution was warmed to room temperature, stirred
overnight, and poured into a mixture of saturated NH4Cl with vigorous stirring. The phases were
separated, and the aqueous phase was extracted with hexane twice. The combined organic phases were
dried over MgSO4 and concentrated to obtain an oil, which was purified by chromatography on silica
gel (EtOAc/hexane) to afford the corresponding ester 12 (3.25 g, 74% from 14): 1 H NMR (300 MHz,
CDCl3) δ 0.49–0.62 (m, 12H), 0.89 (t, J = 8.0 Hz, 9H), 0.98 (t, J = 8.0 Hz, 9H), 1.02 (s, 9H), 1.25 (t, J
= 7.0 Hz, 3H), 1.40–1.42 (m, 1H), 1.73–1.87 (m, 1H), 1.90–2.03 (m, 1H), 2.20–2.33 (m, 1H), 3.52 (dd,
- 86 -
J = 9.8, 2.3 Hz, 1H), 3.58–3.82 (m, 4H), 3.80 (s, 3H), 4.13 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 4.52 (s, 2H), 5.92 (d, J
= 15.6 Hz, 1H), 6.85 (br d, J = 8.9 Hz, 2H), 6.93 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.20 (br d, J = 8.9 Hz, 2H),
7.30–7.44 (m, 6H), 7.59–7.66 (m, 4H).
(Z)-(2-Iodovinyl)cyclohexane (10).
CHO
I
18
10
To an ice-cold mixture of Ph3PCH2I2 (18.3 g, 34.5 mmol) in THF (20 mL) was added NaHMDS
(32.8 mL 1.0 M in THF, 32.8 mmol). After 30 min, the solution was cooled to –78 °C, and DMPU
(15.8 mL, 131.0 mmol) and cyclohexanecarboxaldehyde 18 (2.00 g, 17.8 mmol) were added dropwise.
After 3 h at –78 °C, the resulting solution was quenched with saturated NH4Cl. The resulting mixture
was filtered through a pad of Celite with hexane. The filtrate was concentrated to afford a residue,
which was diluted with hexane and extracted with brine. The organic phases were dried over MgSO4
and concentrated to afford a residue, which was purified by chromatography on silica gel (hexane) to
furnish iodide 10 (2.61 g, 61%): 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.00–1.80 (m, 10H), 2.20–2.40 (m,
1H), 5.98 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 6.05 (d, J = 7.8 Hz, 1H).
(Z)-(4-Cyclohexylbut-3-en-1-ynyl)trimethylsilane (19).
I
TMS
10
19
To an ice-cold solution of vinyl iodide 10 (4.30 g, 18.2 mmol) in benzene (30 mL) were added
Pd(PPh3)4 (210 mg, 0.182 mmol), t-BuNH2 (9.50 mL, 91.0 mmol), trimethylsilylacetylene (3.90 mL,
27.6 mmol), and CuI (347 mg, 1.82 mmol) sequentially. The mixture was stirred at room temperature
for 30 min and diluted with saturated NH4 Cl and hexane. The organic layer was separated, and the
aqueous layer was extracted with hexane twice. The combined organic layers were dried over MgSO4
and concentrated to afford a residue, which was purified by chromatography on silica gel (hexane) to
furnish enyne 19 (3.24 g, 86%): 1 H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.20 (s, 9H), 1.10–1.41 (m, 5H),
1.58–1.82 (m, 5H), 2.52–2.68 (m, 1H), 5.39 (dd, J = 10.8, 0.8 Hz, 1H), 5.79 (dd, J = 10.8, 9.5 Hz,
1H).
- 87 -
(Z)-But-1-en-3-ynylcyclohexane (13).
TMS
19
13
To a solution of enyne 19 (1.20 g, 5.81 mmol) in MeOH (20 mL) was added K2CO3 (1.20 g, 8.68
mmol). After being stirred at room temperature for 10 h, the reaction mixture was diluted with H2 O
and hexane. The organic layer was separated, and the organic layers was extracted with brine, dried
over MgSO4, and concentrated to afford a residue 13, which was used for the next reaction without
further purification: 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.83–1.78 (m, 10H), 2.54–2.69 (m, 1H), 3.04 (dd, J
= 2.3, 0.9 Hz, 1H), 5.35 (ddd, J = 10.7, 2.3, 0.9 Hz, 1H), 5.83 (dd, J = 10.7, 9.8 Hz, 1H).
(2E,4R,5R,7R,10Z)-Ethyl 4-(2-(tert-Butyldiphenylsilyloxy)ethyl)-11-cyclohexyl-7-hydroxy5-(4-methoxybenzyloxy)-4-(triethylsilyloxy)undeca-2,10-dien-8-ynoate (21).
PMBO
EtO2C
OTES
PMBO
OTES
TBDPSO
CHO
EtO2C
12
PMBO
OTES
TBDPSO
20
OH
EtO2C
OTES
TBDPSO
21
To a solution of (COCl)2 (0.84 mL, 9.61 mmol) in CH2Cl2 (5 mL) was added DMSO (1.4 mL, 19.7
mmol) at –78 °C. After 20 min at –78 °C, TES ether 12 (1.60 g, 1.92 mmol) in CH2Cl2 (3 mL) was
added dropwise. The suspension was stirred at –50 °C for 90 min, and then Et3N (2.7 mL, 19.4 mmol)
was added. The mixture was vigorously stirred at –50 °C for 20 min and then at room temperature for
10 min, quenched with saturated NaHCO3. The resulting mixture was extracted with CH2Cl2. The
aqueous solution was extracted with CH2Cl2 twice. The combined extracts were dried over MgSO4 and
concentrated to afford a residue, which was passed through a short column of silica gel
(hexane/EtOAc) to give the corresponding aldehyde 20, which was used for the next reaction without
further purification: 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.51 (q, J = 8.1 Hz, 6H), 0.86 (t, J = 8.1 Hz, 9H),
1.02 (s, 9H), 1.27 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.92–2.06 (m, 1H), 2.18–2.32 (m, 1H), 2.49 (dd, J = 17.7, 7.4
Hz, 1H), 2.66 (dd, J = 17.7, 3.6 Hz, 1H), 3.66–3.81 (m, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.89 (dd, J = 7.1, 3.2 Hz,
1H), 4.16 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 4.38 (d, J = 10.8 Hz , 1H), 4.46 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 5.94 (d, J = 15.6
Hz, 1H), 6.84 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.94 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.16 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.31–7.45 (m,
6H), 7.58–7.67 (m, 4H), 9.76 (s, 1H).
To a solution of the acetylene 13 (336 mg, 2.50 mmol) in THF (15 mL) was added n-BuLi (1.0 mL,
- 88 -
2.30 M in hexane, 2.30 mmol) dropwise at –78 °C. The solution was stirred at –78 °C for 30 min, and
the above aldehyde 20 disolved in THF (5 mL) was added dropwise. After being stirred for 1 h, the
solution was diluted with satulated NH4Cl and EtOAc. The organic phase was separated, and the
aqueous phase was extracted with EtOAc twice. The combined organic layers were dried over MgSO4
and concentrated to afford a residue, which was purified by chromatography on silica gel
(hexane/EtOAc) to give alcohol 21 (502 mg, 31% from 12) and the 11-epimer (1.07 g, 65% from 12).
21: 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.69 (q, J = 7.8 Hz, 6H), 0.90 (t, J = 7.8 Hz, 9H), 1.04 (s, 9H),
1.02–1.34 (m, 4H), 1.28 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.58–1.78 (m, 6H), 1.87 (ddd, J = 14.6, 8.9, 2.6 Hz, 1H),
1.99–2.12 (m, 1H), 2.18–2.30 (m, 1H), 2.44 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 2.49–2.64 (m, 1H), 3.80 (s, 3H),
3.69–3.90 (m, 3H), 4.09–4.25 (m, 2H), 4.61 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.56–4.70 (m, 1H), 5.39 (br d, J =
10.8 Hz, 1H), 5.75 (dd, J = 10.8, 9.6 Hz, 1H), 5.95 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.96
(d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.32–7.46 (m, 6H), 7.62–7.69 (m, 4H). 11-Epimer: 1 H
NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.59 (q, J = 8.1 Hz, 6H), 0.91 (t, J = 8.1 Hz, 9H), 0.80–1.34 (m, 4H), 1.04
(s, 9H), 1.23–1.32 (m, 6H), 1.54–2.11 (m, 8H), 2.18–2.34 (m, 2H), 2.50–2.64 (m, 1H), 3.67 (dd, J =
9.5, 2.6 Hz, 1H), 3.68–3.85 (m, 2H), 3.78 (s, 3H), 4.08–4.22 (m, 2H), 4.52 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.68
(d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.46–4.70 (m, 1H), 5.39 (br d, J = 10.8 Hz, 1H), 5.76 (dd, J = 10.8, 9.6 Hz, 1H),
5.96 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 6.85 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.95 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 7.20 (d, J = 8.4 Hz, 2H),
7.31–7.45 (m, 6H), 7.60–7.69 (m, 4H).
(2E,4R,5R,10Z)-Ethyl 4-(2-(tert-Butyldiphenylsilyloxy)ethyl)-11-cyclohexyl5-(4-methoxybenzyloxy)-7-oxo-4-(triethylsilyloxy)undeca-2,10-dien-8-ynoate (23).
PMBO
OH
EtO2C
PMBO
OTES
TBDPSO
O
EtO2C
21
OTES
TBDPSO
23
To a mixture of alchol 21 (3.50 g, 4.10 mmol), NMO (720 mg, 6.15 mmol), and 4A molecular
sieves (2.10 g) in CH2Cl2 (8 mL) was added TPAP (43 mg, 0.122 mmol) at room temperature. After
being stirred for 1 h, the mixture was diluted with EtOAc. The resulting mixture was filtered through a
pad of Celite with EtOAc. The filtrate was concentrated to afford a residue, which was purified by
short column of silica gel (hexane/EtOAc) to give ketone 23 (3.15 g, 90%): 1H NMR (300 MHz,
CDCl3) δ 0.54 (q, J = 7.8 Hz, 6H), 0.89 (t, J = 7.8 Hz, 9H), 1.04 (s, 9H), 1.28 (t, J = 7.2 Hz, 3H),
1.00–1.38 (m, 4H), 1.60–1.80 (m, 6H), 1.90–2.02 (m, 1H), 2.25–2.39 (m, 1H), 2.52–2.72 (m, 1H),
2.66 (dd, J = 18.0, 8.4 Hz, 1H), 2.92 (dd, J = 18.0, 2.0 Hz, 1H), 3.64–3.77 (m, 2H), 3.79 (s, 3H), 4.03
- 89 -
(dd, J = 8.4, 2.1 Hz, 1H), 4.17 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 4.43 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 4.57 (d, J = 10.5 Hz, 1H),
5.49 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 5.97 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 6.10 (dd, J = 10.8, 9.8 Hz, 1H), 6.85 (d, J = 8.6
Hz, 2H), 6.96 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.32–7.46 (m, 6H), 7.61–7.68 (m, 4H).
(2E,4R,5R,7R,10Z)-Ethyl 4-(2-(tert-Butyldiphenylsilyloxy)ethyl)-11-cyclohexyl-7-hydroxy5-(4-methoxybenzyloxy)-4-(triethylsilyloxy)undeca-2,10-dien-8-ynoate (21).
PMBO
O
EtO2C
PMBO
OH
EtO2C
OTES
TBDPSO
OTES
TBDPSO
23
21
To a commercially available Noyori’s ruthenium chloride pre-catalyst (18 mg, 0.0283 mmol) in
CH2Cl2 (1 mL) was added KOH (5.5 mg, 0.0946) at room temperature, and the mixture was
vigorously stirred for 5 min. This mixture was washed with H2 O (ca. 1 mL x 2), and the organic layer
was dried over CaH and concentrated to afford a residue, which was used for the next reaction. To a
solution of ketone 23 (800 mg, 0.940 mmol) in i-PrOH (5 mL) at 40 °C was added the above Noyori
catalyst in i-PrOH (3 mL) dropwise. After being stirred at 40 °C for 36 h, the mixture was
concentrated to afford a residue, which was purified by chromatography on silica gel (hexane/EtOAc)
to give alcohol 21 (637 mg, 79%).
(2E,4R,5R,7R,10Z)-Ethyl 7-(tert-Butyldimethylsilyloxy)-4-(2-(tert-butyldiphenylsilyloxy)ethyl)11-cyclohexyl-5-(4-methoxybenzyloxy)-4-(triethylsilyloxy)undeca-2,10-dien-8-ynoate (7).
PMBO
OH
EtO2C
PMBO
OTES
TBDPSO
OTBS
EtO2C
21
OTES
TBDPSO
7
To an ice-cold solution of alcohol 21 (1.30 g, 1.52 mmol) in CH2Cl2 (6 mL) were added 2,6-lutidine
(0.35 mL, 3.01 mmol) and TBSOTf (0.42 mL, 1.83 mmol) dropwise. The reaction was carried out at
0 °C for 30 min, quenched with H2 O, and diluted with 1 N HCl. The organic layer was separated and
the aqueous layer was extracted with CH2 Cl2. The combined organic layers were washed with
saturated NaHCO3, dried over MgSO4 , and concentrated to afford a residue, which was purified by
chromatography on silica gel (hexane/EtOAc) to give TBS ether 7 (1.40 g, 95%): 1 H NMR (300 MHz,
CDCl3) δ 0.15 (s, 3H), 0.19 (s, 9H), 0.53–0.64 (m, 6H), 0.93 (s, 9H), 0.84–0.97 (m, 9H), 1.04 (s, 9H),
1.28 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.80–1.34 (m, 4H), 1.52–1.78 (m, 6H), 1.91–2.12 (m, 3H), 2.18–2.32 (m, 1H),
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2.48–2.64 (m, 1H), 3.63 (br d, J = 8.1 Hz, 1H), 3.81 (s, 3H), 3.68–3.88 (m, 3H), 4.10–4.24 (m, 2H),
4.55 (d, J = 10.7 Hz , 1H), 4.60 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.68 (br d, J = 9.9 Hz, 1H), 5.35 (dd, J = 10.8,
1.8 Hz, 1H), 5.72 (dd, J = 10.8, 9.5 Hz, 1H), 5.96 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.96
(d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.31–7.45 (m, 6H), 7.60–7.68 (m, 4H). The 1H NMR
spectra were consisted with those reported by Wang, Y.-G.; Takeyama, R.; Kobayashi, Y. Angew.
Chem., Int. Ed. 2006, 45, 3320–3323.
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