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電子回路の作り方
電子回路は、基板と呼ばれる板に電気素子を接着して作り、そこに電気を
流すことで動作させます。まずは接着のやり方と、各電気素子の働きから学
んでみましょう。
・はんだ付け
はんだ付けとは、はんだと呼ばれる鉛とスズを主成分とした合金
WASEDA ものづくり工房
学生プロジェクト
(最近では鉛を用いないものも多い)を熱で溶かし、それを接着剤
製作
のようにして電気素子を基板に固定する作業のことです。失敗して
はじめに
も専用の道具を使うことでリカバリできますが、非常に面倒なので
このイベントでは、電子回路に触れたことのない人、多尐触れた事はあっ
基本一発勝負です。手作業ではんだ付けをする場合は、はんだごて
ても自分で組んだりするようなことはない人を主な対象にし、電子工作に触
と呼ばれる道具を使用します。
れてもうことを目的としています。今回は知識・技術に合わせ難易度別に以
下の三つの LED 点滅回路を用意しました。
1.
無安定マルチバイブレータによる LED 点滅回路
2.
リング発振回路による LED 点滅回路
3.
タイマ―IC を利用した LED 調光回路
・はんだ付けのやり方
①
詳しい説明はまた後のページで行いますが、簡単に言ってしまうと上二つの
まず基板のランドと呼ばれる
回路はトランジスタとコンデンサの働きを利用した回路で、三つ目の回路は
はんだ付けをする部分に素子を
タイマ―IC と呼ばれる IC を使った回路です。
通す
②
・はんだ付けをするときの注意
1)、温度に気をつける
はんだごてが十分に温まっていなければはんだを溶かすこと
ができません。温まるまでに電源を入れてから 3 分から 5 分程
はんだごてをランドと素子の足
度かかります。また様々な要因ではんだごての温度は変わって
に当て、十分に熱する
しまうので注意が必要です。
はんだごてが温まっていても、その熱が素子やランドに伝わ
っていなければはんだは流れ込まず、また熱しすぎると素子
③
やランドの破壊につながります。
2)、量に気をつける
はんだを溶かして流し込むわけですが、この流し込む量が多
すぎると、他の素子に繋がって回路がショートする危険があり
はんだを溶かし、流し込む
ます。目安としては大体はんだ 1~2cm 程度、横から見て富士
山の形になっていて光沢があるのが理想です。
④
はんだ、はんだごての順で離す
・各電気素子の働き
・抵抗
・LED
名前の通り、電流の流れを抑制する働きを持ち、
電流、電圧を制御するのに欠かせない電子部品で
順方向に電圧を加えたときに発光する半導 体素
す。四本(稀に五本)の帯の色によってその数値
子。エネルギ変換効率が白熱電球や蛍光灯など
を知ることができます。
の他の光源よりも優れています。
抵抗の値を表す単位はΩ[オーム]。
・コンデンサ
電荷を蓄える働きを持ち、用途によって幾つかの
・タイマーIC 555
種類があります。その中でも電解コンデンサとい
かなり古くから使われている IC で、代表的な使い
うものには極性があるので注意が必要。脚の長い
方は単安定マルチバイブレータによるタイマー回
方が陽極、短い方(あるいは側面に白い帯が存在
する方)が陰極となっています。
コンデンサの容量は F[ファラド]で表しますが、値
が小さいので通常はμF か pF を使用することが殆
6
7
8
CNT
RES
TH
OUT
DCH
TRG
VDD
GND
U1
どです。
・トランジスタ
三本脚の半導体素子。平らな面を表として見たと
き、左から E(エミッタ)、C(コレクタ)、B(ベース)
と呼ばれています。B-E 間を流れる電流によって
C-E 間の電流を制御することができ、回路中では
増幅、またはスイッチ等の用途で使われることが
多いです。
路、無安定マルチバイブレータによる発振回路で
LMC555
5
4
3
2
1
す。安価で使い勝手も良いですが、発振回路とし
て使うには精度はあまり高くありません。
丸い窪みのあるところが一番ピンです。
・無安定マルチバイブレータによる LED 点滅回路
抵抗の読み方
無安定マルチバイブレータとは発振器回路の一つで、非常に単純な構造を
④
持ちます。回路中の抵抗 R2,R3 とコンデンサ C1,C2 の値によって周期を決定
①、②
③
黒
0
1
茶
1
10
±1%
赤
2
100
±2%
橙
3
1000
黄
4
10000
緑
5
100000
青
6
1000000
紫
7
10000000
灰
8
100000000
スタ TR1 のベースに電流が流れなくなるのでがトランジスタ TR1 が
白
9
1000000000
off、LED1 は消灯。コンデンサ C2 に電荷がたまり始める。
します。
・動作説明
電源を 入れると、コンデン サ C1 かコンデン サ C2 のどちらかに電
流が流れ込みます。(どちら流れ込むかはコンデンサの個体差による。)まず
はコンデンサ C1 に電流が流れ込んだとして進めます。
① 電流が流れ込むことによりコンデンサ C1 に電荷が溜り電圧が上昇、
やがてトランジスタ TR2 のベースに電流が流れ込む。
② トランジスタ TR2 のベースに電流が流れることにより、トランジス、
タ TR2 のコレクタ、エミッタ間に電流が流れ LED2 が点灯、トランジ
金
0.1
±5%
銀
0.01
±10%
③ コンデンサ C2 に電荷が溜ることで電圧が上昇、やがてトランジスタ
TR1 のベースに電流が流れ込む。
④ トランジスタ TR1 のベースに電流が流れ込むことによりトランジスタ
TR1 のコレクタ、ベース間に電流が流れ LED1 が点灯、トランジスタ
TR2 のベースに電流が流れなくなるので TR2 が off、LED2 は消灯。コ
ンデンサ C1 に電流が流れ込む。
⑤ ①に戻る。
(
①×10 + ②
)×
③
許容誤差④
点滅周期の計算
R1
100
LED1 の点灯時間
R2
10k
R3
10k
LED2
LED1
LED2 の点灯時間
C
E
R4
100
C1 100μ
C2 100μ
B
B
TR1
TR2
C
E
無安定マルチバイブレータの回路図
・使用材料
記号
部品名
型番/定格
個数
R1
金属皮膜抵抗
100Ω
1
R2
金属皮膜抵抗
10kΩ
1
R3
金属皮膜抵抗
10kΩ
1
R4
金属皮膜抵抗
100Ω
1
C1
電解コンデンサ
100μF
1
C2
電解コンデンサ
100μF
1
TR1
トランジスタ NPN 型
2SC1815
1
TR2
トランジスタ NPN 型
2SC1815
1
LED1
発光ダイオード
赤、黄、緑から選択
1
LED2
発光ダイオード
赤、黄、緑から選択
1
基板
48×72cm
1
電池 BOX
単三二本用
1
電池
単三アルカリ
2
3.0V
・リング発振回路による LED 点滅回路
・使用材料
記号
部品名
型番/定格
個数
リング発振回路とは、インバータ(NOT 回路とも呼ばれるデジタル回路の
R1
金属皮膜抵抗
10kΩ
1
動きの一つで、入力が High なら Low を出力し、入力が Low なら High を出力
R2
金属皮膜抵抗
470Ω
1
する働きをする回路。
)を奇数個リング状に接続することで発振させる発振回
R3
金属皮膜抵抗
10kΩ
1
路です。トランジスタのベースに繋がる抵抗とコンデンサの値によって周期
R4
金属皮膜抵抗
470Ω
1
を変化させることができます。
(※値が大き過ぎたり、逆に小さすぎると発振
R5
金属皮膜抵抗
10kΩ
1
が止まってしまいます。
)
R6
金属皮膜抵抗
470Ω
1
C1
電解コンデンサ
100μF
1
C2
電解コンデンサ
100μF
1
C3
電解コンデンサ
100μF
1
TR1
トランジスタ NPN 型
2SC1815
1
TR2
トランジスタ NPN 型
2SC1815
1
TR3
トランジスタ NPN 型
2SC1815
1
LED1
発光ダイオード
赤、黄、緑から選択
1
LED2
発光ダイオード
赤、黄、緑から選択
1
LED3
発光ダイオード
赤、黄、緑から選択
1
基板
48×72cm
1
電池 BOX
単三二本用
1
電池
単三アルカリ
2
・動作説明
電源を入れると、コンデンサ C1、C2、C3 のいずれかに電流が流れ込みま
す。
(どのコンデンサに流れ込むかは個体差による。
)まずは LED1 が点灯し
たとして進めます。
① LED1 が点灯しているということは、TR1 が off の状態。TR1 が off のた
め、C3 に電流が流れ込み昇圧。
② C3 の電圧が一定値を超えると TR1 が on。
TR1 が on になったことで LED1
が消灯、C1 が減圧。
③ C1 減圧により TR2 が off。TR2 が off のため LED2 が点灯、C1 が昇圧。
④ C1 の電圧が一定値を超えると TR2 が on。
TR2 が on になったことで LED2
が消灯、C2 が減圧。
⑤ C2 減圧により TR3 が off。TR3 が off のため LED3 が点灯、C2 が昇圧。
⑥ C2 の電圧が一定値を超えると TR3 が on。
TR3 が on になったことで LED3
が消灯、C3 が減圧。
⑦ C3 減圧により TR1 が off。①に戻る。
TR2
2SC1815
100μ
タイマーIC の発振作用を利用した発振回路で、コンデンサとトランジスタ
を繋ぐことにより LED をじんわり点滅させることができる回路です。
TR3
2SC1815
+3V
C3
LED3
100μ
470
R6
10k
C2
LED2
2SC1815
R5
470
R4
10k
R3
470
R2
TR1
LED1
R1
10k
C1
・タイマーIC を利用した LED 調光回路
100μ
・動作説明
タイマーIC に幾つか素子を繋ぐことで方形波信号を作ることができます。
リング発振回路
回路図
この時の点滅周期は抵抗 R2,R3、半固定抵抗 VR1 とコンデンサ C2 の値によ
って定まります。半固定抵抗を使用しているので、適当に値を変えて周期の
変化を見てみましょう。方形波はタイマーIC の 3Pin から出力されるので、こ
の出力を、抵抗を通してコンデンサ C1 に溜め、トランジスタを駆動して LED
を点灯させます。このコンデンサ C1 によって LED の輝度の上昇、下降まで
の時間を調整することができます。
発振周期の計算
・使用材料
個数
U1
タイマーIC
LMC555
1
R1
金属皮膜抵抗
100Ω
1
R2
金属皮膜抵抗
10kΩ
1
R3
金属皮膜抵抗
33kΩ
1
R4
金属皮膜抵抗
10kΩ
1
R5
金属皮膜抵抗
10kΩ
1
VR1
半固定抵抗
100kΩ
1
C1
電解コンデンサ
100μF
1
C2
電解コンデンサ
33μF
1
C3
セラミックコンデンサ
0.01μF
1
TR1
トランジスタ NPN 型
2SC1815
1
LED
発光ダイオード
赤、黄、緑から選択
1
基板
48×72cm
1
電池 BOX
単三二本用
1
電池
単三アルカリ
2
LMC555
6
7
33k
RES
TH
OUT
DCH
TRG
VDD
GND
4
3
2
1
U1
LED 調光回路
LED
R4
R5
10k
10k
C1
0.01μ
33μ
C2
100k
VR1
C3
R3
+3V
8
CNT
100
5
R1
型番/定格
R2
部品名
10k
記号
回路図
TR1
2SC1815
WASEDA ものづくり工房
企画統括
: 岡村
資料作成
: 大須賀
広報担当
: 黒田
試作検討
: 松永
準備調整
: 上田
2013 年度 5 月 製作
学生プロジェクト