「PPP(公共サービスの民間開放)による 地域活性化推進モデル構築調査

「PPP(公共サービスの民間開放)による
地域活性化推進モデル構築調査」報告書
∼クックチル方式によるセントラル・キッチン・システム実施方策検討調査∼
平 成 16年 3月
中
国
経
済
産
業
局
特定非営利活動法人シンクバンク研究所
はじめに
<地域活性化を呼び起こす、地域の知恵の集結>
平成15年3月に、中国地域の官・民のPPP・PFIの意識調査を中心に構成した「中
国地域イノベーション促進方策検討調査」を報告した。事業提言として「中国地域、地域
活性化のためのPPP調達事業提案」を行った。具体的には、「高齢化社会がどこの地域よ
りも深刻に進む地域課題」や「産業空洞化に対応した内需拡大のための施策」などを分析
した。その結果、最近急激に話題にされる「食の安全」などを考慮し、これからの事業と
して「地域統合型クックチル(新調理)・セントラル・キッチン・システム」を地域活性化
の目玉として提案報告させて頂いた。
今回は、その提案事業の可能性を探りながら、他地域の進んだ取組み、海外事情も紹介
しながら、踏み込んだ調査報告を行い、PPP(PFI)の手法で、地域の実状に応じた
取組みがなされるモデル事業調査となるように配慮した。
平成14年7月の「構造改革特区」さらにそれに加え平成15年10月から「地域再生
構想」がスタートし、小泉内閣の骨太方針である「民間ができることは、できるだけ民間
に委ねる」の原則の下、公共サービスのあり方も大きく動き始めてきている。
地域再生構想の提案募集も異例とも思える年末年始の短期間の募集であったが、提案主
体数:392(地方公共団体:299、民間企業・個人等:93)、地域再生構想の提案数:
673、プロジェクト数:1036と意識の高い反応が上がってきている。
PFI法も6年が経ち、見直し検討のための聞き取り調査も開始されている。
消費低迷、税収入の落ち込み、デフレスパイラルがまだ続く中、今までの概念を打ち破
るように、地域再生新基軸づくりに、「PFI法」、「特区」
、「地域再生構想」とメニューも
揃い始めており、
「国から地方へ」、
「官から民へ」という構造改革の流れも強化されてきた。
まだ、英国のように、PPP・PFIを推し進める制度や組織が強固なものではないが、
明らかに「地域のことは地域の知恵で解決する」知恵比べのステージに変化している。
英国に代表されるように公共サービスの民間解放は、先進諸国の重点政策である。また、
同様に日本においてもやっとカタチが見え始めたところである。景気もひところの底を脱
した感はあるものの、長引く不況で企業はもとより、金融機関や地方自治体、国に至るま
で体力は低下している。
「地域の再生・復活」は、その地域に生かされた官の知恵・民の知
恵を生かし、パートナーシップと地域資産の総合力で、地域の未来を切り拓いていかなけ
ればならない。
今回、英国のPPP・PFI調査で長年実績のある広島国際大学PFI研究チームにご
協力いただいた。また、最後に、先進事例としてヒアリング調査に快く応じてくださいま
した関係機関・企業の方に厚く御礼申します。
シンクバンク研究所
所長
吉長成恭
「PPPによる地域活性化推進モデル構築調査」
はじめに
目次
調査概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 ∼ 2
《要約》
調査結果の概要と要約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 ∼ 4
《モデル地域可能性調査》
モデル地域可能性調査の考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5∼11
地域統合型クックチル・セントラル・キッチン・システムプロジェクト ・・12∼14
モデル地区選定理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15∼16
呉クックチルプラント PPP 事業計画調査 ・・・・・・・・・・・・・・・17∼21
課題と応用・展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22∼23
《先進事例調査:日本》
国内先進事例からのまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24∼25
秋田
フードセンターたかのす
(町立学校給食)・・・・・・・・・・26∼29
佐賀
カルナ
(私立学校給食)・・・・・・・・・・30∼33
京都
シダックスデリカクリエイツ
(事業所給食・公立校弁当)・・・・・34∼37
岡山
ライフタウンまび
(老人保健施設)・・・・・・・・・・38∼40
鳥取
こうほうえんヘルスケアフーズ事業部(医療・福祉施設)・・・・・・41∼42
フード
サービス
《先進事例調査:海外》−広島国際大学教授
英国
森下正之−
TUPEとREM制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43∼45
米国の先進事例からのまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
米国
テネシー州政府
クックチル・センター・・・・・・・・・・・・・ 47∼49
沖縄
米国海兵隊沖縄駐屯地キャンプ キンザー
クックチル・カミサリー
50∼51
《企業聞取り調査》
株式会社メイワ・ビー・ピー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52
中国電力株式会社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53∼55
株式会社エフ・エム・アイ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・56∼57
《検討委員会》
地域活性化モデル検討委員会より ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58∼60
<調査概要>
1、調査の目的
「中国地域、地域活性化のためのPPP調達事業提案」を平成15年3月に「中国地
域イノベーション促進方策検討調査」の中で報告した。少子高齢化がどこよりも早く進
み、輸出依存が高く、空洞化した産業等と課題の多い中国地域の活性化として、「食の
安全」を通した内需拡大で地域再生の道を探る「地域統合型クックチル(新調理)・セ
ントラル・キッチン・システム」プロジェクトの提案を行った。今回の調査目的は、こ
のプロジェクトの可能性について、モデル地域を選定し、実際に落とし込んだ場合のP
PP(PFI)有効性を調査するものです。また、この事業に関連して、給食産業の新
しい流れを他地域の先進事例調査に学びながら、今後の活動に反映し、「食の安全」を
高める産業の開発や事業展開、海や山の自然に恵まれた地域性を生かした一次産業、こ
れからのHACCP基準に沿った機器開発の二次産業、安全な食の提供サービスを行う
三次産業、それらを横串でくくる物流・IT技術など、これらを組み合わせながら、
「地
域の課題は地域の知恵で解決を図る」地域再生の基軸になるようなプランの抽出を目的
とした。
2、調査期間
平成15年9月∼平成16年3月
3、調査の内容
(1) 地域統合型クックチル・セントラル・キッチン・システムプロジェクト
PPP・PFI手法での可能性調査
① PFIでの給食事業の現状と取組みの考え方
② 仮モデル地域の選定
③ フィージビリティ・スタディでの検証
④ 課題と応用
(2) 地域再生、活性化を可能とする内需拡大の担い手フードビジネス
その中で、食の安全と大量調理を可能とし、技術産業に貢献できる
新調理システム先進事例調査(国内・米国)
① 新調理導入経緯・理由
② 新調理導入事例
③ 新調理導入後の成果・課題
1
(3) 新調理システム及び給食事業の取組み関連企業の調査(国内)
① 主な事業内容とこれからの動向と課題
4、調査方法
(1) 先進事例施設・企業ヒアリング調査:国内、米国
訪問面接ヒアリングを行い、実施されている内容、経緯、成果、課題等の意見
を収集した。なお、PFIプロジェクトプランをもとに、より具体的な聞き取
りを行った。
(2)PPP/PFIヒアリング調査:英国
PPP・PFI先進国
英国の概念と実際の慣行について、6年間現地にて定
点観測する広島国際大学PFI研究チームと共同で調査。特に、英国と日本の
差異について、PFIを推し進めるための考え方を検討した。
(3)本活性化モデル検討会(名簿、別紙)を3回開催し、調査を進めるに当っての
指導・支援を受けた。新調理の体感やヒアリング調査の結果をもとに、本活性
化モデルの将来像を検討した。
(4)総合分析
上記調査結果をもとに、可能性の判断と今後推進のための課題を整理した。
5、調査実施機関
特定非営利活動法人シンクバンク研究所
同調査メンバー:吉長成恭
広島国際大学
医療福祉学部
医療経営学科
教授
小林暁峯
広島国際大学
医療福祉学部
医療経営学科
教授
森下正之
広島国際大学
医療福祉学部
医療経営学科
教授
海生知亮
中原
猛
松浦康高
2
<調査結果の概要と要約>
PPP調達による地域活性化推進モデル構築調査
呉モデルフィージビリティースタディ 調査
呉市はキャプティブマーケット(官制マーケット)の集積率が高く
事業の安定と大型で民間主導のBOT型PFI事業が構築でき
地域の活性化が見込める。
予測2万食/日 720万食/年間(市町村合併入れず)
2)官制マーケット2万食部分での試算
営業利益1.46億円/年間、営業利益5.7%
ROI:11%、DSCR:1.38と標準をクリア
自主事業やプラス アルファーで売上アップも見込める。
3)本プロジェクトの先行で、大量新調理メニュー開発ノウハウや
従来の日本酒で培った温度管理技術開発、船舶への新調理
技術、IT関連や高齢化社会対応のコミュニティビジネスが確立できる。
地域活性化モデル検討委員会
1)本提案事業は「食の安全」をベースにした、内需拡大型事業で、高齢化社会に対応も可能なた
め、これからの新基軸となる事業として十分考えられる。
2)キャプティブマーケット(官制マーケット)の地方自治体への権限委譲と統合は、従来の縦割り行
政の弊害を払拭し、安定的でスケールアップするため、民間の資本参加意欲も高まり、好循環
が期待できる。 ※応用編として地域間連合や他のキャプティブマーケット(例えば刑務所給食)も可能。
3)BOT型PFI手法での取組みは、民間のモラルアップにつながる。また、官も予算をコア部分に集
中できるメリットとBOT型のため自主事業部分の利益還付が期待できる。
4)「食の安全」「おいしさ」につながるマーケットは、拡大が予想される。特にHACCP対応の技術
や温度管理技術、トレーサビリティの技術や周辺技術開発は、メニュー開発と合わせ重要な
ポイントになってくる。
<主要課題>
1)各官制マーケットの地方自治体への権限委譲
2)地方自治体や地域事業者の問題共有化と意識の醸成
3)公共サービス開放に伴う、従来従事者の雇用保護の問題
<対応策>
1)地方自治体首長のリーダーシップと行動力・組織力
2)特区や地域再生構想の提案利用
3)地域の持つ「知恵」や「潜在力」を引き出すネットワーク
4)雇用保護と民間活力を同時に生かす案として、民間主導の「自治体1円資本参加、第3セク
ターSPC」でのPFI導入検討
1)本プロジェクトは、方向性としては正しいという意見が多かった。
2)地域再生構想の提案返答:文部科学省は、衛生面に問題なく
責任体制が明確ならば、現法でも対応可能。防衛庁は、PFIの
導入にあたっては隊員食堂のPFI化は検討しているが、どの
分野にするかは、まだ継続的に検討中。現時点でただちに導入
は、困難との回答。
3)呉市はもとより地域事業者の意識も醸成されていない。
呉市の風土を考えると、実現のハードルは高いのでは、という意見が
あった。
住所
1
社会福祉法人 こうほうえん 鳥取県境港市
病院・介護福祉 ヘルスケアフーズ事業部
事業主体
民間
設立日
平成8年
社会福祉法人 こうほうえん
生産規模
現状平均
工費
最大キャパ
生産食数
8億円 10、000食 4、500食
2交替時
2
ライフタウンまび
介護福祉給食
岡山県吉備郡真備町 民間
倉敷成人病センター
平成9年
公表未
3
学校給食
私立
4
事業所給食
学校給食
佐賀県神埼郡神埼町 民間
平成15年
4.5億円
土地別
松尾建設 給食事業部
カルナ フード サービス
松尾建設(株) シダックスデリカクリエイツ 京都府久世郡久御山町 民間
CK事業部
シダックスデリカクリエイツ(株)
CK事業部
平成9年
公表未
※平成15年 リース
譲渡
方式
1日
3食
公表未
200食
3食
6、000食
3、750食
3食
10、000食 5、800食
2交替時
昼1食
公立(当日弁当)
5
ケアタウン鷹巣
介護福祉給食
6
学校給食
公立
秋田県北秋田郡鷹巣町 町設置 財団法人委託運営 平成11年
公表未
公表未
600食
3食
2、000食
600食
昼1食
財団法人たかのす公社
フードセンターたかのす 秋田県北秋田郡鷹巣町 町設置
併設
南部学校給食センター(町直営)
平成15年
2.7億円
のみ
7
沖縄キャンプキンザー
海兵隊員給食 クックチル・カミサリー
沖縄県浦添市
8<地域統合型>テネシー州政府
刑務所・病院 クックチルセンター
学校など
アメリカ合衆国
テネシー州
アメリカ合衆国
海兵隊直営
テネシー州立
民営委託
平成9年
※推定
平成6年
設備のみ
40、000食 20、000食
180万ドル
土地別
改築・設備 160、000食 80、000食
2000万ドル
2食
昼・夜
3食
と
2食
「食の安全」は
これからの全ての産業のキーワード
1) オール電化の学校給食施設は、76件
2) 業務用電化厨房契約は161%(第3四半期/昨年年間)
3) 新調理のメイン機器は年々130%の伸び
英国でも、PPP/PFIを推進するに当たり、公務員の雇用保護の問題は
大切な課題であった。
<英国の雇用保護2タイプ>
1)TUPE制度(事業移転に伴う雇用保護)または、
REM(公務員の出向モデル)制度の2種で対応。
※英国では公共サービスが民間に移った場合、
基本的には雇用は民間に移る。
日本では、雇用移動かできないため、
BTO型PFIによる部門移動となっている。
セントラル
体制
運営方式
新調理方式 備考・特徴・ポイント
25名体制 セントラルキッチン&8サテライト クックチル 国内最初の院外調理、クックチルシステム
平成15年7月より介護形態の見直しからサテライト重視に変更。
約8箇所にサテライト有り
11名体制 施設内
クックチル 全電化厨房
真空調理 老人保健施設でホテル並の料理の提供
併用
クリーンで働きやすい仕事環境
63名体制 セントラルキッチン&2サテライト クックチル 関連私学(中・高一貫教育)への給食事業(キャプティブマーケット)
内P30名
真空調理 全電化厨房 併用
80名体制 セントラルキッチン&8サテライト クックチル 前社(オムロン子会社)より譲渡。給食事業の大手シダックスが
+当日調理クックチル給食事業に参加。将来の給食事業の変革に備える。
オムロン関連会社の給食事業(キャプティブマーケット)+
中学校給食(弁当)の受注。本年度は、クックチルでの学校給食対応予定
14名体制 施設内
真空調理 3日単位の調理ローテーション。作業の平準化、早朝・深夜作業軽減。
たかのすフードセンターのパイロット的存在
8名体制 セントラルキッチン&4サテライト 真空調理
給食センター
授産施設(たかのす福祉公社委託)
PFI手法での給食4事業は、全てHACCP対応。
※HACCPのノウハウがない企業は入札参加できず。
英国PPP/PFI ヒアリング調査
先進事例調査からは、
1)院外調理が可能となった病院・福祉施設においては、新調理は定着しつつある。
特に真空調理はおいしい料理として、ホテル同様、関係者の注目の的。
2)学校給食衛生管理基準は、衛生上のガイドラインとして当日調理を指導しているが、
保存の可能な新調理で、公立学校の給食も始まってきた。
先進事例ヒアリング調査(国内・米国)
名称
「食の安全」を基軸に、HACCP対応の電化厨房・新調理機器・
温度管理トレーサビリティ機能付は、高成長。
先進事例及びフィージビリティースタディ調査などからの総合分析
1)年間需要見込みは25億6千万円
※プラス アルファーの要素として
①市町村合併②保育園③介護福祉含めると、この数字はさらに
拡大する。また、周辺地域も巻き込むことが可能
②BOT型のため、民間はインセンティブ獲得を模索
自主事業展開で自治体にも50%の利益還付が期待できる。
形態
企業ヒアリング調査
地域統合型クックチル・セントラル・キッチン・システムプロジェクト調査の要約
学校給食の新調理方式、初採用。町内3ブロックの内、南部分の中1校、小3校対応。
学校栄養士・調理員は、ローテーション。再加熱後2時間以内条件に保険所許可。
調理法のひとつとして認める。当時の町長が、町責任で行う。
クックサーブからの移行段階。他ブロックはクックサーブ。
将来見据え、全エリア校カバーする生産キャパ
24名体制 セントラルキッチン&9サテライト クックチル 沖縄本島9箇所の海兵隊基地に供給。基地内の学校への供給計画中
パン製造含む
生鮮食品は地場買付け拡大。隊員の食物に対する要求レベル高い。
各基地で高級シェフ雇用が困難なためスタート→この方式本国基地内水平展開
WEBによる食事満足度常時チェック
45名体制 セントラルキッチン&32サテライト クックチル 州政府の4部門をカバー。18刑務所、6病院、4児童センター、4学校に供給
内P40名 パン製造含む
基本提供方式 合計32施設。州の衛生局の検査員が常駐で監視。高級シェフによりメニュー開発
注:冷凍保存
細菌検査室・コンピューター温度管理システムによる追跡調査体制
6ヶ月保存用
−3∼4−
《モデル地域可能性調査》
昨年度の「中国地域イノベーション促進方策検討調査報告書」の中で、地域再生を起こす新調理
クックチル方式による地域統合型セントラル・キッチン・システムの提案を行った。今回は、そ
の考え方、地域選定理由などを中心に説明をしながら、地域活性化のケーススタディとして考え
ていく。
<モデル地域可能性調査の考え方>
1)
求められる権限委譲と地方自治体のリーダーシップ
↓
地域の工夫と知恵比べ。「国から地方へ」、「官から民へ」
平成14年の構造改革特区による地域限定型の規制緩和に加え、平成15年に始まった
地域再生構想では、地域経済の活性化と地域雇用の創造を地域の視点から積極的に推進
するために、内閣に地域再生本部が設置された。
新たな財政支出は伴わないことを前提に、各省庁の地域活性化策を統合・再編し、補助
金の利用条件の緩和、権限委譲などの支援措置により、効率的、一元的な実施が可能と
なった。従来のような地域経済の活性化や雇用創出のためのばらまき型の予算ではなく、
地域の持つ「知恵」や「ネットワーク」や「潜在力」を引き出すアイデアを自治体や民
間にも広く求め、地域再生本部を窓口として、内閣官房と各省庁の調整をはかりながら、
インターネットを通じて応えるシステムになっている。
「地域が自らを考え、行動する、
国はこれを支援する」ことを基本とし、ホームページでも随時状況が確認できるような、
オープンな環境を整えつつある。第一回は392の主体から673件の提案数があり、
地域再生推進のためのプログラムになったものは141件(地域限定支援処置:23、
全国対象支援処置:118)となっている。
このような中、これからの自治体は意識を高め、地域の課題、特性、潜在力、可能性を
分析・確認しながら、将来に向け強いリーダーシップで望む必要がある。
先進事例調査で訪問した秋田県鷹巣町の公立小学校・中学校における全国始めての新調
理システム(いわゆる、文部科学省のガイドラインである当日調理ではない新しいこれ
からの技術を使った給食システム)での試み(平成15年8月実施)は、住民や保護者、
関係者への熱心な説明と、起案した町長や町の強い指導力のもと「これからの子供たち
に、おいしい暖かいものを食べさせたい」という思いと願いとで実現したものだと伺っ
た。今、規制概念を取り払い、従来の枠にとらわれない、風穴を開ける斬新なアイデア
とリーダーシップと実行力が地方自治体にも求められている。
5
2)PFI事業における給食施設の取組み
↓
食の安全・衛生面の強化で、HACCP導入は時代の流れ
平成15年末までに、基本方針策定以降に実施方針が策定・公表されたPFI事業は、
122件(国:24件、地方公共団体:97件、その他:1件)。中国地方では、
岡山県:3件、広島県:3件(坂町合同含む)
、岡山市:2件、八雲村(島根県)
:1件、
呉市:1件、山陽町(山口県):1件となっている。
基本方針策定以降に実施方針が策定・公表されたPFI事業一覧
平成12年
平成13年
平成14年
国
計
平成15年
18件
6件
24件
(中国地方)
(1件)
(2件)
(5件)
(3件)
(11件)
地方公共団体
11件
25件
28件
33件
97件
その他
計
※
1件
11件
1件
26件
46件
39件
122件
PFI 推進委員会HPより
その内、学校給食施設のPFI事業での推進も目立ってきている。主な5件を比較する
と、共通項はすべて衛生管理に優れたHACCP対応である。食品の安全性を確保する
科学的、合理的、効率的な手法として、PL法やO−157事件から注目を集め、NA
SAの宇宙食開発チームが生み出した食品の安全・衛生管理システムである。
PFI事業による学校給食センター
期間・方式
一覧
能力
八雲村学校給
30年
1000 食
食センター
BTO
当日調理
川俣町学校給
16年
2000 食
食センター
BOT
当日調理
HACCP
その他
HACCP
村が所有・運営
対応
道路拡張移転建替
HACCP
地産地消条件付、民に弁当事業
対応
等インセンティブ有りの純粋B
OT。町の体制変化により断念
(断念)
新津市学校給食
20年
4000 食
共同調理場場
BOO
当日調理
千葉市大宮学校
16年
給食センター
BOT
HACCP
2箇所の自校給食、2箇所の共
対応
同調理場、建替に伴う統合
11000 食
HACCP
施設の老朽化建替
当日調理
対応
本事業のみ、インセンティブ事
業はない。
上山市学校給
22年
3300 食
食センター
BTO
当日調理
HACCP
小中14校。施設老朽化に伴
対応
う建替
6
学校給食センターのPFI事業において、民間の自由度が高いBOTは、千葉市と川俣町であ
ったが、川俣町は地産地消を条件としており、また弁当事業も可能というインセンティブ付であ
る。民間にとっても魅力のある日本でも珍しいアイデアの詰まったBOTであったが、町長の交
代にあわせ、住民の同意が得られないという理由から断念となった。ちなみに千葉市のBOTは、
学校給食以外の調理事業展開は許されていない。千葉市の大宮給食センターと新津市の学校給食
調理場が調理まで受け持つタイプであり、あとは各自治体の調理運営となっている。
3)
テーマの選定とビジョンの構築Ⅰ
↓
フードビジネス産業関連の事業推進と構築が一番の内需拡大
地球温暖化で食べ物の不安がいっそう増す時代になった。食品にまとわる問題は、199
6年のO−157事件より始まり、ここ2∼3年もマスコミ報道で賑わっている。低脂肪乳
の食中毒、BSE、偽装牛肉、鳥インフルエンザ等ひとつの事件で企業生命を絶たれる状況
に陥る。今まで、自然豊かな環境に恵まれ、水をはじめ食べ物の流通経路や状態など気にか
ける事もなかったが、生産者も販売者も消費者も、神経質すぎるほど気をつかう時代になっ
てきた。
これから建築する給食施設は、PFI事業の条件の一つとして、ほとんどのところがHAC
CP導入がうたってある。HACCPの建築実績やそれ相当の対応ができないところは、P
FI事業の入札資格もない状況になっている。学校給食、病院、特別養護老人施設など大量
に調理する場所は、安全で衛生的な環境づくりは当然のことHACCPの取組みが必須科目
となっている。このように「食」に関することは最も大切なことなのであるが、残念ながら
生きる源にもかかわらず一番縦割り行政の弊害を受けていることもまた事実なのである。
O−157の事件を思い出してみよう。学校給食で集団食中毒が発生し、学校給食の管轄の
文部省が調査に入る。厚生省が特定の野菜を名指ししたため、今度は農水省がといった具合
に時間ばかりが経ち、正しい情報が流れずパニックを引き起こした。食べ物に関しては、衛
生面では当然厚生労働省であるが、流通経路や仕組み、技術や範疇が多肢にわたるため、省
庁の垣根を越えた追跡調査や問題解決には、現状においては限界がある。このことは、新技
術に関しても同様である。従来型の検証や査定では範疇外のため、判断や基準づくりがいっ
こうに進まない。農業も株式会社化が認められ、今までの出荷方法から大きく変わり安定的
な供給と品質が保てるよう、カット野菜・チルド帯保存や冷凍食品など、いろいろな商品化
が始まった。これらのことは、食品に関連した産業は、従来の第一次、二次、三次の産業構
造とは異なり、視点を変えれば横串産業ともいえるような、いわば、全てに関わる産業とい
っても過言ではない。これらに関連した総合的な管轄セクションが求められている。
マッキンゼー&カンパニーの「ニューグロース戦略」によれば、フードビジネスは食品の生
7
産、加工、など全て含めると61兆円、調理、後片付けなど手間部分は、家事代行も含め4
0兆円になるという。現在は、外食産業だけでみても27兆円市場で、自動車産業の18兆
円の1.5倍になる。温度帯管理技術と物流の発達により、安全で衛生的な、そしておいし
く楽しい食事が、全国共通で、都市も地方も老若男女全ての方を対象として、しかも地域内
で生産と消費も行え、他地域への配送も可能な巨大マーケットが生まれるのである。
4)
テーマの選定とビジョンの構築Ⅱ
↓
新調理システムの研究・普及・構築は、これからのフードビジネスの目玉
新調理システムは、最近にわかに脚光を浴びているが、まだまだこれから普及が期待され
る将来性の高い調理・保存方法なのである。当日調理のクックサーブ、冷凍保存のクックフ
リーズのデメリッ
<大量調理方法・4タイプ>
項目
調
理
内
容
1)クックサーブ
当日調理して、供給
調理後すぐに食する方式
歴
史
特
徴
ー
新調理システム(クックチル・真空調理)
ながら、「安全」・
<安全><生産性向上><高品質>の3大メリット
「おいしさ」を追
3)クック・チル
4)真空調理
加熱調理済みをー18℃
加熱調理済みを、チルド温
にて冷凍保存したのものを 度帯(0∼3℃)に保存した
最終加熱して提供
ものを最終加熱して提供
いわゆる冷凍食品
加熱調理前に真空包装し
旨み、香りを封じ込め、低
温長時間加熱。チルド温度
帯にて保存し、供給時に
最終加熱し提供
1930年米国のゼネラル
フーズ社が冷凍食品発売
日本には1954年紹介
東京の池袋のデパートで
茶碗蒸、フライの試食会
1974年フランスにて開発
日本には、1986年谷孝之
氏が独自に開発。1997年
真空低温調理研究会が
中心となり普及活動を行う
鮮度は高いが、大量調理 凍結解凍により組織破壊
には様々な負担が多い
がおきる食材には適さない
事前計画、準備ができ
ないため、スタッフの負担
が大きい
保
存
期
間
タ
イ
プ
2)クック・フリーズ
トをうまく解消し
約3ヶ月
1968年スウェーデンでの
病院導入がスタート
日本には1990年代から
紹介
保存料を入れられない病院 フォアグラのテリーヌの歩留
給食の観点から発達
まりを上げるとこから開発
英国・米国では、中食として された調理法。列車食堂の
普及・定着
高級料理提供で話題。
料理品質の安定と平準化
食材の風味を生かした、
作業効率が優れ、大量調
おいしい料理を計画的に
理を安全に高品質で提供
効率よく提供できるシステム
できるシステム
システムの基本が、「温度」 システムの基本が、「温度」
と「時間」のデータ管理のため と「時間」のデータ管理のため
HACCPとの親和性が高い HACCPとの親和性が高い
ブラストチラー方式:約5日間
タンブルチラー方式:約45日間
基本的に6日
細菌検査で安全性が
認められれば14∼21日間
求した大量調理を
可能とした。欧米
では、一般家庭に
おいても市民権を
得ており、外食、
内食、の分類では、
中食(なかしょく)
に位置づけられる。
スーパーで買われ
たクックチル商品
は、家庭で電子レ
ンジにかけられ、
アツアツ料理とし
て食卓にならぶ。
職人(クラフト)型
産業(インダストリー)型
産業(インダストリー)型
産業(インダストリー)型
学校給食
小型飲食店
外食産業 機内食
事業所給食、病院(院外
厨房) 機内食
病院、老人保健施設
一流ホテル、レストラン
宴会場、機内食
病院、老人保健施設
まだ日本のスーパ
ーの惣菜コーナー
ではなじみが薄い
<21世紀大量調理システム>
<これからのフードビジネス>
「食品安全」の衛生管理手法HACCPシステム
大量調理は、従来型
のクラフト的な対応か
ら、産業型の調理へと
大きく転換
が、核家族化やひ
とり暮らし等、個
細菌増殖の3条件をクリアする技術開発
①水分と栄養分、②温度、③時間に対する、厳格な流れが
食品材料→配送→保管→調理→保存→最終加熱→配膳
が全てにおいて求められ、その高度な技術、システム、
設備は、これからの国内産業活性化技術の目玉となっている。
8
食時代に相応しい
合理的なこれから
の料理の提供方法なのである。新調理システムのクックチルや真空調理は、表示義務もない
ためとりわけ目立った存在感はないが、コンビニの惣菜コーナーの多くはこの調理手法に自
然派生的に切り替わっている。
<大量調理方法・4タイプの調理工程(事前・当日)>
新調理システム
<安全><生産性向上><高品質>の3大メリット
1)クックサーブ
2)クックフリーズ
3)クックチル
4)真空調理
材料 保管
下ごしらえ
事
前
当
日
真空パック
1
日
工
程
工
程
加熱調理
急速冷凍
急速 冷却
保存−18℃
冷蔵 0∼3℃
配 送
再加熱 70℃
盛付・提供
当日
1
日
工
程
※1) クックサーブは、当日1日での、大量下ごしらえ 、大量調理、大量配膳と負荷が掛かる流れになって いる。
それに、味は技術が伴い、限られた時間に量及び質どちらも高度な 熟練を要する。
※2) ∼4)は、事前計画で、仕事の平準化や労働時間の合理化が計れる。
当日の再加熱、盛付・ 提供工程には、熟練調理はいらない
この新調理法の原点は、T・T管理という「温度(Temprature)」と「時間(Time)」のデ
ータを管理コントロールすることによって「安全」と「おいしさ」を追求している。加熱温
度は芯温で管理し、素材にあった「加熱温度」と「加熱時間」を設定し、調理していく。従
来の感や経験値ではなく、あくまでもデータに基づいた調理法なのである。よって、メニュ
ー開発については、PCのプログラム同様、多大な実験・検証等のノウハウ蓄積のソフト開
発が必要となるが、いったん出来上がれば、熟練した調理員でなくても調理が可能となり、
作業の平準化が行えるメリットもある。また、この調理法のよい点は、品質をできる限り落
とさず保存させるという観点から、調理後芯温を0℃∼−3℃のチルド温帯域に、調理後9
9
0分以内に急速冷却する。このことは「細菌を増殖させない3条件」①水分と栄養分を与え
ない②増殖温度帯にしない③増殖の時間を与えないといった衛生面での配慮がなされ、危険
な温度帯に長時間置かない、HACCPの衛生管理手法の国際基準に沿っている。よって、
この調理方法がHACPP基準との親和性が高く、
「安全性」が高いといわれる所以である。
このように、調理の世界もクラフト型から産業型へと大きく方向転換されつつある。これに
より、温度管理や最新の設備、PCでの管理・運営と高度な技術に裏づけされつつ、メニュ
ー等のソフト開発、大量調理後の安心な供給方法設備、配送等多くのサービス・技術・設備
の投資や雇用拡大が予想される。
5)
官制マーケット(キャプティブマーケット)の開放と統合
↓
事業の成功と安定性確保のための統合
キャプティブとは、
「拘束された」
「従属・専属関係」という意味。主に買い手が売り手
のものを選択できない市場をキャプティブマーケットという。言い換えれば従来より官
に主導権があり、官独自で確立・完結された市場のことを、官制マーケットと呼ぶこと
ができる。(官にしかコントロールできない市場→官制であり、官製ではない。)
文部科学省の学校給食、防衛庁の隊員食堂など、民間の力ではどうしようもできない
この市場を、地域自治体に権限を移譲・統合しスケールアップさせて民間のリスクを押
さえ、民間資本の参入意欲をかきたてるのが、本提案のPFI事業の第一の狙いである。
【サンフレッチェ方式】
毛利元就の「3本の矢の訓え」
地域・自治体における「3本の矢」
地域の省庁間、官制マーケットの権限委譲・統合
又は、地域連合による官制マーケットの統合
厚生労働省の公立病院給食も当初はこの範疇であったが、平成8年の通達から院外調理
が認められた。また、公立の保育園も特区扱いで現在前向きにかつ具体的に検討されて
10
いる。学校給食も、衛生面に問題なければ現行法でも可能との見解である。公立学校関
係でも、秋田県の「たかのすフードセンター」のように、平成15年の8月からスター
トしているところもある。また、防衛庁のPFI推進チームによる、平成14年3月の
「自衛隊施設へのPFI導入可能性等の調査報告書」によれば、英国国防省のPFI事
例を引き合いに、PFI事業は、「①国防活動のコアの部分に集中できる。②プログラ
ムやプロジェクト計画の柔軟性が確保できる。③リスクを適切に抽出し、それを最適に
管理できる主体に移行できる。④革新的な方法によって、サービスの質を高めることが
できる。⑤テナント収入によって、国の負担が軽減できる。」以上5つをメリットとし
て上げている。また、「英国国防省は、2002年1月の時点で、PFI案件の契約済
みのものは、39件10億ポンド(約1900億円)。検討中のものは、90以上を超
え60億ポンド(約1兆1400億円)で、英国PFI事業のリーダー格である。」と
している。その中で、自衛隊施設の隊員食堂のPFIによる推進は、「駐屯地施設の共
同利用としての可能性もあるが、民間事業者が、類似施設で運営ノウハウを有している
し、仕様も自由になる余地が大きいと見られ、また、民間収益事業との併設も立地条件
によっては考えられるが、あえて国の想定には含めず応募者提案によることとした方が
確実であろう。」と報告している。
このように、各省庁間で足並みはまちまちであるが、少しづつ給食事業への取組みの考
え方が、時代の流れとともに変化してきている。このことは、文部科学省の学校給食、
防衛庁の隊員給食、今は開放されてはいるが厚生労働省の病院や福祉施設等の3つの統
合で巨大マーケットを創りだすことが可能であり、たとえで言うと、毛利元就の「3本
の矢の訓え」そのものなのである。各省庁間の事業サービス、いわゆる官制マーケット
の統合によりさらにスケールアップが行え、民間企業の参入意欲が高まり、補助金、助
成金に頼らない本来の民間主導型(BOT型)のPFI事業を成功させる基軸の考え方
なのである。
このことは、ビジネスの安定性、成長性、収益性が高くなれば、いわゆる地元金融機関
を始めとした関連各社が資本参加するユーザーフィー方式(利用社・参加社負担)が可
能となり、地域に好循環をもたらして行く。
今回は事例として、各省庁間の給食事業の開放と統合を例に出したが、当然、追加案と
して、総務省管轄の刑務所での食事事業の組み込みも可能である。また、現在進められ
ている市町村合併にも応用展開ができる。地域間におけるそれぞれが抱える給食事業サ
ービスの統合は、個別には単位にならなかったものが、単位となり、民間参入への道が
開けてくるのである。
この官制マーケットの統合をベースに、BOT型PFI事業が安定していけば、将来は
大型企業への給食事業へのアプローチや一人身の高齢者の方へのあたたかい食事の提
供も可能となり、新しい可能性がどんどんステップアップし、結果的に地域の再生が可
能となるような関連事業の底上げへと広がるビジネスモデルになって行くものと思わ
れる。
11
∼中国地域の地域活性化のための PPP 調達事業提案∼
<地域統合型クックチル・セントラル・キッチン・システムプロジェクト>
【ねらい】
1) 新技術・新システムの開発・製造による低迷する地場産業の再生
2) 地域の資源を生かした、より良い公共サービスの提供
3) クックチルの新調理集中方式により、低コスト、ハイクオリティのサービスの提供
4) 高齢者へも、おいしい満足度の高い和食の提供・開発
5) 安全で多メニューの食事の提供
6) 開発・生産・販売と自地域需要依存率を高め、安定した産業構造の形成
冷蔵配達車
冷蔵車
トラック
冷蔵車
トラック
クックチル温度管理:
−2度C∼+4度C
サテライト
KTCN
複数
工場・
事務所
給食
冷蔵車
トラック
給食
冷蔵車
トラック
地場の卵・
魚・肉
サテライト
KTCN
複数
セントラル・キッチン
=セントラル・KTCN
サテライト
KTCN
給食
地場の米
食材供給市場
・食品衛生検査等機能
病院 ・
福 祉施 設
加工工場・冷蔵倉庫
複数
KTCN
給食
地場の野菜・果物
安定供給を受ける食材 は一般卸売り市場より供給
サテライト
高齢者家庭への個別宅配給食
学校︵
小中高︶
地域統合型クックチル・セントラル・キッチン・システム概念図−1
警察・消防署・自衛隊
4
図 1
12
【本プロジェクトの基本的考え方】
ポイント:①キャプティブ給食市場の地域統合(事業所、病院、福祉施設、学校、自衛隊、刑務所他)
②和食を中心としたクックチル方式と規模の利益
③シェフ中心のメニュー開発
④工業的生産システムの確立
⑤衛生面と安全性面の追跡能力、特に食品衛生管理(HACCP など)
⑥地域食(スローフード)の要求満足と文化伝承、地産地消、観光資源開発
⑦IT によるフィードバック(CS、学校教育)
⑧英国における本システムの拡大傾向の潮流
⑨サテライトキッチン機能
⑩PFI/PPP の導入、プロジェクト・ファインス
⑪政策連携によるソーシャル・アントレプレナーのアライアンス化
⑪雇用創出
⑫食生活と健康管理
⑬食材流通
⑭ロジスティックス
⑮省エネ洗浄プラント
⑯食物残渣廃棄リサイクルシステム
【導入可能な地域とその理由】
時間距離で 1 時間内外のセントラルキッチンプラント整備が可能な地域
① キャプティブマーケットの集積
② 機械工業技術の集積
③ 国内外の食材調達の利便性
④ 産官学連携と官−官調整
⑤ 情報インフラの利活用が容易
⑥ 流通システムとサテライトキッチンの利便性
⑦ 少子高齢化社会への対応
【システムの汎用性】
1)このクックチルによる地域統合型セントラル・キッチン・システムは、日本各地のキャ
プティブマーケットのバンドリングにより、地域の特徴を生かした食文化を提供しながら、
健康、教育、地域性などの社会問題を解決する手法となる可能性があり、また、汎用性があ
る。
2)各種関連産業(機械産業、IT 関連産業、農水産業、教育等)への波及効果が高い。
【このプロジェクトの効果と成功要因】
1)キャプティブ給食市場統合:行政のタテ割りのため、これまで分割されており、規模の
利益追求、生産効率性改善、品質向上、安全性確保等に限界があった。この解決策が本
システムである。
13
2)本クックチル方式統合型セントラル・キッチンの規模の利益(Economies of scale)が
生み出す大きなメリットとは:
① 雇用が可能となった一流料理人(シェフ)が主に作り出す和食を中心としたメニュー
を管理栄養士が栄養学的にアドバイスする。
注:通常の給食は管理栄養士・栄養士がメニューを開発、和食が主ではない。和食とは懐石料理的
なものではなく、もっと幅が広く地域性や伝統食文化に根ざすもの、このためボランティアの人達
の参加が求められる。
② クックチルの保存期間は約 45 日のため、メニューの多様性(バラエティ)が可能。
(工業生産システムの単一のメニューイメージは誤り)
③ 食品の安全性・衛生管理を集中管理調理システム:温度を24時間制で監視をコンピ
ュターで記録をとり行う追跡能力=Traceability の精度を格段にアップさせる。同時
に検査員がラボで細菌検査と食品安全性と更に本工場内の調理システム・冷蔵システ
ムの検査を常時専門に行う。また、駐在の保健衛生局の人間が監査する二重チェック
システムの構築が可能となり、食品の安全性が確保される。
④ 学校給食は春夏冬等の長期休暇中も関係職員に雇用をしなければならないというコス
ト面の非効率性をクックチルの保存期間(約 45 日)が解決する。
⑤ 英国の NHS 病院が本システム導入に積極的な理由は、食品の品質向上(安全性・衛
生を含め)とコスト面の有利性以外に、回教徒系、ユダヤ系、ベジタリアン、インド
系、アフリカ系等の多民族・多人種患者のニーズにも対応できるからである。英国で
は今、医療・福祉分野でクックチル方式セントラル・キッチンは急速に拡大している。
⑥ 本システムは学校において、IT により双方向でコミュニケーションをとることが容易
となるため、教育効果が大変期待できる。
⑦ インターネットにより給食利用者からリアルタイムで満足度のフィードバックを得る
ことで、給食オペレーションを絶えず監視し、給食サービスの改善が可能となる。この
方法は給食サービス提供者側を利用者がチェックし、絶えず品質改善を求める有効的手
段となる。例:沖縄米軍基地海兵隊のインターネットの顧客フィードバックシステム。
⑧ 一つのセントラル・キッチンのカバーが可能な範囲は、チルド輸送の品質管理の観点
から米国では100マイルとされているが、日本では100キロメートル程度と推定で
きる。
⑨ 和食中心のメニュー開発は非常に重要である。洋風食より優れた栄養のバランスを持
っており、地域の伝統食の合理性を見直し更に発展させることができる。クックチルの
メニュー開発においては、パイオニア的な取り組み経験や蓄積ノウハウ利用を考えると、
全国から人材の育成の受け入れに対し、教育機関の設立も考えるべきである。又、ボラ
ンティアによる伝統食に基づくメニュー開発助言は非常に有益であると考えられる。
⑩ 三温帯(常温、冷凍、チルド)輸送のための車両開発と輸送技術の充実
⑪ サテライトキッチンとコミュニティの関係
14
<モデル地区選定理由>
今回の新調理クックチル方式による地域統合型セントラル・キッチン・システムのビジネスモデ
ルの検証にあたって、想定モデル地域として、呉市をイメージモデルとした。
この検証は、あくまでも当研究所がこのPPP(PFI)事業実現のために、上記の【導入可能
な地域とその理由】にそって想定した地域です。
イメージモデルとして、呉市地域を選定した主な理由
① キャプティブマーケット(官制マーケット)の集積度が高いため、事業の安定と
大型で民間主導のBOT型PFI事業が構築でき、地域活性化が見込める。
キャプティブマーケットの平均1日当りの食数概算は、現状2万食(市町村合併入れず)可
能な市場である。
・ 公立系病院・・・・5200食/1日平均
・ 自治体関係・・・・
800食/1日平均
・ 公立小・中校・・・9000食/1日平均
・ 防衛庁関連・・・・5000食/1日平均・・・・・・合計20,000食/1日平均
※
防衛庁関連は、施設内人数が公表されていないため、推測。
※
公立系の病院は1日3食、防衛庁関連は1日2食で試算。
② 機械工業の集積が高いため、新調理関連事業の展開と技術開発が見込める。
クックチル方式と類似タイプの真空調理は、フランスの列車内における高級料理提供の
ために開発され、それによってヒットした経緯もある。これらの技術開発・ノウハウ蓄
積は、造船業の大型客船や旅客機に積極的に取り入れられる。また、牡蠣の配送で得た
チルド輸送の技術、ノウハウ、酒の製造で培った温度管理技術は3温帯(保温、チルド、
冷蔵)にも生かされ、国外はもとより、国内でもこれからの有効な技術開発となる。
③
東広島・呉道路が開通すると、国内・外からの食材調達の利便性と広島‐呉‐東
広島のトライアングルネットワークが確立する。
「創造とふれあいの海洋・拠点都市」としてだけでなく、学園都市
平和文化都市
東広島市、国際
広島市とトライアングルネットワークで結ばれ、空港利用や山陰から
の食材の調達だけでなく、広島中央テクノポリス圏域をはじめとしたクックチル事業
のマーケット拡大も大いに見込める。
また、情報トライアングルの整備と合わせ、オンとオフの産官学連携や技術開発の人
的交流も高くなり、研究開発の活発化が予想される。
15
④
高齢化率は、23.27%(平成15年9月 住民基本台帳)と高く、高齢者
向け食事サービスにおいて、コミュニティビジネスの確立が期待できる。
市域の54%は山林で平坦地が少なく、65歳以上の単身世帯への食事サービスは、
事業者だけでは負担が掛かるため、ボランティア、NPOなどが参加のコミュニティ
ビジネスモデルとしても期待できる。また、クックチルを利用した、
「安全」で「おい
しい」「できたて」料理の提供は、一人ひとりに喜んでいただけるに違いない。
また、市町村合併で協議されている町の一部は島嶼部もあり、どこも高齢化率は高い。
この方式での給食サービスは、サテライトも負担が軽く、また個人宅での再加熱も可
能なため、これらの地域には大いに期待できるシステムといえる。
呉市人口:203,842人、
65歳以上:
47,451人、
世帯数:89,019人
高齢化率:23.27%
65歳以上単身世帯人数:
9,026人(平成12年)
要介護(要支援)認定者:
7,183人(平成15年)
平成12年度人口調査呉市と周辺地域一覧表
地域
総人口
65歳以上人口
高齢化率
市
203,159
43,555
21.4%
音戸町
15,084
3,641
24.1%
倉橋町
7,593
2,583
34.0%
下蒲刈町
2,223
763
34.3%
蒲刈町
2,741
1,139
41.6%
安浦町
12,913
2,876
22.3%
川尻町
10,380
2,145
20.7%
豊浜町
2,175
1,054
48.5%
豊
2,956
1,442
48.8%
259,224
59,198
22.8%
呉
町
合計
中国地方の高齢化率:平成12年度資料より
高齢化率全国平均:17.3%
高齢化率中国地方:20.6%
高齢化率
島根県:24.8%・・・全国
1位
高齢化率
山口県:22.2%・・・全国
6位
高齢化率
鳥取県:22.0%・・・全国
7位
高齢化率
岡山県:20.2%・・・全国23位
高齢化率
広島県:18.5%・・・全国28位
16
<呉クックチルプラントPPP事業計画調査>
1) 事業概要と目的
● 呉クックチルプラントPPP(PFI)事業の背景と必要性
① 各省庁の給食サービスは縦割り行政のため、それぞれが独自の規則・基準
で衛生面に不安を抱えながら、非効率な運営になっている。
そこで、各省庁の権限を自治体(呉市)に委譲・統合し、スケールメリ
ットをだしながら民間資本によるPPP事業にて、安全で満足度の高い
食事を提供する。
② この給食サービスは、これからの新調理システム(クックチル方式)を採
用し、大量調理の技術開発、メニュー開発や HACCP の安全基準を大き
くクリアする最新鋭の工場を整備し、全国に普及可能なモデル事業となる
ように、産官学民の知恵の結集と技術開発を行いながら自主的な地域活性
化を呼び起こす事業とする。
③ モデル地区となる呉地区では、すり鉢状の地形、高齢化率21.4%、市
町村合併で島嶼部の拡大と高齢者在宅サービス、学校給食サービスのコス
トを始めとした課題が多い。
新しい給食サービスは、財政負担を軽くしながら高度化されたシステムが
求められるが、これからの日本に予想される課題をクリアする地域再生の
モデル事業となり得る。
目的
この事業は、学校給食法の目的である「児童及び生徒の心身の健全な発達に
資し、かつ、国民の食生活の改善に寄与するもの」を達成し、安全で質の高
い給食を学校給食だけでなく、地域の高齢者、自治体職員、自衛隊隊員など
へも提供し、地域の活性化につなげて行くことを目的とする。
2) PPP(PFI)の導入と期待する効果
● 民間のノウハウ活用により、低コストで質の高いサービスを享受する。
● キャプティブマーケットの統合と制度変更で、民間資本による給食プラント
工場の設備投資が行われることにより、新たな財政負担が発生しない。
● 限られた財政予算を、他の優先案件に振り分けることが可能となる。
● 先進モデル事業となり、高度な温度管理技術とメニュー開発技術などが蓄積
され、地域の技術・経済の活性化が見込める。
● 安定した事業として予測されることから、SPC参加民間企業からの投資(ユ
ーザーフィー方式)や地場金融機関も巻き込み、新たなキャッシュフローが
生まれる。
● 民間の柔軟な経営能力により、新たな税収入、収益収入が見込める。
17
3)呉クックチルプラントの組織イメージ図
呉クックチルプラント組織概要と流れ
︵防衛庁︶
自衛隊関係給食
︵
厚生労働省︶
公立病院・保育園
︵文部科学省︶
公立学校給食
①官制市場を開放する
ことで、各省庁は、本来
のコア業務に専心し、予
算を集中シフトできる
メリットがある。
②地方自治体への権限
自治体(呉市)に権限委譲
委譲で、地域に応じた
きめ細かな対応と地域
再生の基軸が確立する。
「三本の矢、サンフレッチェ方式」事業安定の統合
安全なおいしい給食サービス提供
③SPCの設立により
事業会計の明確化、リス
民間部門のSPC設立
IT・
配送・
調理・
メニュー開発
地域産業の活性化
地場金融機関
地域統合型
ユーザーフィー方式
BOT−PFI事業
クックチルプラント
会社設立
自主運営事業の利益50%は、自治体に還付
リスク回避、事業会計の明確化のために
ク回避が行え、資金調達
公共の事業継承が容易
となる。
④地域資産の有効活用
を図るため、地域の産業
が参画できる体制を構
築しながら、地域活性化
につなげて行く。
⑤自主運営も可能とし
インセンティブ
(自主運営事業)
たBOT型とし、利益の
50%は自治体に還付
し、民間も自治体もメリ
利益50%は固定
ットある構造とする。
18
4)事業概要【施設概要】(案)
① 施設名称:呉市PPP(PFI)クックチルプラント
② 建 設 地:呉市郷原地区又は、呉市海上自衛隊敷地内
③ 敷地面積:10,000㎡
④ 延床面積: 4,400㎡
⑤ 構
造:RC造2階建、
⑥ 施設内用:調理室、冷蔵保管室、温度管理室、事務室、更衣室、トイレ、
洗浄室、倉庫、その他共有施設
5)事業概要【PPP(PFI)事業の範囲、契約条件】(案)
<PPP(PFI)事業の範囲>
① クックチルプラントの設計・建設にかかる業務
② 調理施設及び配送車等の調達にかかる業務
③ 給食サービスにおける食材の調達、調理、運搬、また、サテライトでの
調理にかかる業務
④ 施設等の維持管理、修繕、更新にかかる業務
⑤ 給食の衛生面・安全性のトレーサビリティシステムにかかる業務
⑥ 給食のメニュー開発にかかる業務
<契約条件>
① 事業期間:16年間(建設期間1年含む)
② 事業方式:BOT方式
③ 敷
地:土地は市有地、
(又は国有地)を契約事業者に事業期間中無償
貸与する。
④ 事業期間終了後:契約事業者は事業終了後、主要施設を無償譲渡する。
⑤ 自主運営事業:運用開始1年間は、安定供給の意味からキャプティブマ
ーケットの部分に専心する。2年目からは、明らかに問
題がないと自治体が判断した場合、自主運営事業を認め
る。また、本業に支障をきたすことが予想されたり、問
題がおきた場合は、自治体の判断で自主運営事業は休止
または、中止できる。
⑥ 衛生管理:当施設はHACCP対応の施設とする。
19
6)
事業損益【概算案】
<1.需要見込み>
キャプティブマーケット:2万食/日、720万食/年間
年間需要売上見込み:25億5千8百万円
年間需要見込み
人数
公立系病院関係
役所関係
公立小中学校関係
自衛隊関係
合計
1日当り食数
1,750
1,100
16,300
3,400
22,550
3
1
1
2
日数(稼動/月)
30
22
18
22
月数
<2.損益分析>
営業利益:年間1.46億円
損益分析
年間食数
12
12
11
12
月平均食数
1,890,000
290,400
3,227,400
1,795,200
7,203,000
1日平均食数 単価
157,500
24,200
268,950
149,600
600,250
5,250
807
8,965
4,987
20,008
400
400
300
400
単位:円
年間売上
756,000,000
116,160,000
968,220,000
718,080,000
2,558,460,000
営業利益率5.7%
単位:100万円
売上
2,558
100.0%
895
35.0%
1,663
65.0%
人件費
771
30.1%
水光熱費
128
5.0%
34
1.3%
配送費・通信費
205
8.0%
返済
200
7.8%
57
2.3%
雑費
122
4.8%
営業利益
146
5.7%
売上原価
売上総利益
固定資産税
金利費用
前提条件(BOT方式)
① 初
期
投
資
(内訳)建
築
:20億円(土地代含まず)
費:12億円
厨房設備費:
② 借
入
金
8億円
:20億円
15年間(180回)元金均等払い
金利2%
③ 減価償却費は、定額法
建築工事:耐用年数20年
厨房設備:耐用年数10年
④ 人件費:7.71億円
(内訳)セントラル関係:1.82億円
サテライト関係:5.89億円
正社員:14名
準社員:60名
準社員:200名
20
⑤ コンサルタントフィーは、営業利益の2%
⑥ 人件費のみ毎年1%アップとし、水光費、原材料費等は、物価スライド制で、1品単
価と連動するため、試算上はそのままとする。
⑦ キャプティブマーケットは、市町村合併の予定先及び、保育所は入れない。
<3.年次推移損益予想>
①事業採算をみる指標
ROI(投下資金利益率):11%
②事業の安全性をみる指標
DSCR(単年度、借入金返済能力指標):1.38
年次推移損益予想
売上
売上原価
売上総利益
人件費
水光熱費
配送費・通信費
租税公課
減価償却費
金利費用
修繕・予備費用
雑費
コンサルタントフィー
営業利益
法人税等
税引き後利益
返済
キャシュフロー
売上
売上原価
売上総利益
人件費
水光熱費
配送費・通信費
租税公課
減価償却費
金利費用
修繕・予備費用
雑費
コンサルタントフィー
営業利益
法人税等
税引き後利益
返済
キャシュフロー
1年
2,558
895
1,663
771
128
205
34
126
39
122
48
191
78
113
134
105
2年
2,558
895
1,663
779
128
205
33
126
36
20
122
49
165
67
97
133
90
3年
2,558
895
1,663
786
128
205
32
126
33
20
122
48
162
66
96
133
89
4年
2,558
895
1,663
794
128
205
31
126
31
20
122
47
159
65
94
134
86
11年
2,558
895
1,663
851
128
205
24
126
12
20
122
35
140
57
83
133
76
12年
2,558
895
1,663
860
128
205
23
126
10
20
122
34
136
55
80
133
73
13年
2,558
895
1,663
868
128
205
22
126
7
20
122
33
132
54
78
134
70
14年
2,558
895
1,663
877
128
205
21
126
4
20
122
32
128
52
76
133
69
5年
2,558
895
1,663
802
128
205
30
126
28
20
122
46
155
64
92
133
85
6年
2,558
895
1,663
810
128
205
29
126
25
20
122
45
152
62
90
133
83
7年
2,558
895
1,663
818
128
205
28
126
23
20
122
44
149
61
88
134
80
8年
2,558
895
1,663
827
128
205
27
126
20
20
122
43
145
59
86
133
79
9年
2,558
895
1,663
835
128
205
26
126
17
20
122
42
142
58
84
133
77
単位:100万円
10年
10年累計
2,558
25,580
895
8,950
1,663
16,630
843
8,066
128
1,280
205
2,050
25
295
126
1,260
15
266
20
180
122
1,220
41
455
138
1,558
56
637
82
921
134
1,334
74
847
15年
15年累計
2,558
38,370
895
13,425
1,663
24,945
886
12,407
128
1,920
205
3,075
20
405
126
1,890
2
301
20
280
122
1,830
31
619
124
2,217
50
906
73
1,311
133
2,000
66
1,201
※官制マーケットが呉市に権限委譲され、統合できると
↓
確実に安定した公共サービスの民間開放が行える。また、これからの市町村
合併、保育園・介護福祉施設を加えるとさらにボリュームアップする。
また、BOTでの自主事業での展開は、官民同時にインセンティブをもたら
す。
21
<課題と応用・展開>
【課
題】
①「公務員雇用保護制度」が必要。また発想として「自治体1円
資本参加、第3セクターSPC」設立によるPFI事業検討。
現状、呉市公立校の給食事業はすべて自校式で行っている。
民間資本で地域活性化を目指し、創意工夫が生かされるBOTでのPF
I事業には、今まで働いていた方が安心して働けるように、英国の「公
務員雇用保護制度」
(TUPE制度)やREMのような制度が必要となる。
日本型PFI事業の多くは、BTO方式である。民間が建物を建て、官に
移管し、官の裁量での運営。このことは、民間からすると固定資産などの
税負担がなくなる反面、従来通りの決まりの中で自由度の低い運営となり、
インセンティブもなく、民間の利益拡大を追求する自由な発想や運営が期
待できない。
また、官側からすると、建物のコストダウンははかれるが、それ以外につ
いては、税収や新たなBOTでの新規収入の見込みもないし、人件費など
の負担もそのまま継続するため、限られた予算を有効かつ集中的にシフト
することも不可能となり、ダイナミックな地域の活性化は望めない。
また、現法律での雇用保護と民間活力を同時に満たす案としては、「公益
法人等への一般職の地方公務員の派遣に関する法律」(平成14年4月1
日施行)を使用し、民間ベースで運営可能とする「1円起業」ならぬ「自
治体1円資本参加、第3セクターSPC」設立によるPFI事業の可能性
を検討。
②大量調理のT・T管理含めた温度管理と和食を中心としたメニ
ュー開発
1日 2 万食以上のレシピやメニュー開発、温度管理技術の早期習得が必
要である。これらのノウハウが蓄積されたオンリーワン企業になれば、水
平展開時にビジネスチャンスが広がる。
22
③不測の事態に対応するバックアップシステムの検討・構築
万が一のトラブルに対応した、2重・3重のバックアップシステムの検討。
食中毒など不測の事態や製造ライン停止時等の予測される対応策の構築。
④クックチルシステムの地域普及啓発活動
学校給食においては教育委員会・保護者・教師、自衛隊においては隊員に
対して、クックチルシステムの普及啓発活動が必要。
【応用と展開】
本提案はPPP(PFI)による給食ビジネスのため、その地域に応じたキ
ャプティブマーケットの組み合わせで様々な展開が可能となる。
タイプは下記の3タイプ
例えば
① 省庁間統合タイプ・・・本提案事業
先進事例でも取り上げたテネシー州のように、刑務所・学校・児童センタ
ー・病院との組み合わせたスケールメリットを活用し、民間が安心して投
資できるような状況を創出する。
② 地域間統合タイプ
地域においてキャプティブマーケットの集積度が少ない場合は、広域連合
制度を利用したサンフレッチェ方式とする。
③ 官民統合タイプ
官民の統合タイプは将来の安定性の問題があり、PFIでは対応できない
可能性が高いが、民間事業者との話会いで、ボリュームアップした効率メ
リットが期待できる。
23
《先進事例調査:日本》
<国内先進事例からのまとめ>
国内の新調理導入6箇所7施設及び企業のヒアリングから学ぶ。
<総評>
1.全施設HACCP対応施設となっている。HACCP対応は時代の流れで
ある。
2.新調理システムは、院外調理が認められた平成8年より、医療・福祉の施
設での取組みが本格化してきた。主な導入目的は「安全」「おいしさ」
「効率」
の3点。最近は、学校関係の取組みが目立ちはじめている。
3.新調理システムの課題は、メニュー開発と機器の耐久性に研究開発の余地
がある。特に洋食関係のメニュー開発より和食のメニュー開発が整ってい
ない。
4.医療・福祉の給食施設は、メニューに合わせ調理法を使いわけている施設
が増え始めている。サテライトの重要度も増し機能強化が求められている。
5.安全性追求の観点からトレーサビリティ(追跡可能性確保)の重要性が増
し、細菌を繁殖させない温度管理・時間管理だけでなく、食材ルート、配
送・供給ルートまで、コンピューターを使った一元管理が求められ始めて
きている。
<施設調査から>
1. 公立学校給食における新調理システムの最初の導入は、秋田県鷹巣町であ
り、町内3ブロックの給食センターのうち、最も老朽化した施設を建替時
に取り入れた。
「フードセンターたかのす」の生産能力は、3ブロック合計
の食数を確保している。調理員は全員新調理の研修会に参加しており、ロ
ーテーションできるような体制をとっているなど、将来を考えた取組みを
行っている。
新調理システムの導入には、真空調理の父と呼ばれる谷孝之先生が介護老
人保健施設「ケアタウンたかのす」の設立時より指導を行った。
「ケアタウ
ンたかのす」の真空調理の実績を踏まえ、また、生徒に安全でおいしいも
のを提供したいという思いから、町長が関係者や住民が参加している真空
調理研修会時に学校給食をこの真空調理で行うと発表した。自らがリーダ
ーシップをとり、関係省庁の調整に当たり、当日調理しかできなかった学
校給食に新たなページを新調理システムで切り拓いた。
24
2.佐賀県「カルナフードサービス」
(松尾建設の給食事業部)は、九州で最初
のクックチルシステムを導入。関連私学への給食供給のため設立。また、
これからの建設業として公共事業費削減対応のため、自らHACCP対応
の施設を建設し運営することによりノウハウを吸収している。
3.給食事業の大手シダックスは、オムロンの子会社が始めたクックチル事業
を平成15年10月譲渡。従来の給食事業の委託業務だけでなく、今後様々
な給食事業のアウトソーシング対応や限られた事業所スペースでの給食シ
ーン提供を研究開発する目的とし、これからの成長・育成部門としてクッ
クチル事業を位置づけしている。食材調達の得意分野を生かし早期事業安
定化に取組んでいる。
<企業調査から>
1.新調理システムに対応する電化厨房は温度コントロールが容易な点と炎の
排熱がないため快適な環境を提供できる利点を生かし、HACCPとの親
和性が高いため、医療・福祉・学校の給食施設に急速に伸びてきている。
2.新調理やHACCPのこれからの技術に関して、調理師だけではなく、ホ
テル関係者、栄養士・給食関係者、建築設計事務所など幅広い関係者の注
目を集め、水面下では動き始めている。
3.大型のチルド輸送車だけでなく小口配送向けの2温帯3層構造のケータリ
ング車の開発が行われ、高齢者向けの事業展開も普及し始めている。
25
■先進事例調査:秋田
新調理システム先進事例調査
1
∼全国初の新調理公立学校給食スタート∼
フードセンターたかのす
〒018-3454
秋田県北秋田郡鷹巣町脇神字南陣場岱26
TEL 0186-62-5207
運営方式:町立町営
FAX 0186-62-5218
※併設の授産施設は福祉公社委託
事業内容:学校給食事業
真空調理を全国初採用
設立年月:平成15年8月(2学期)からスタート
従業員:8名(栄養士1名、調理員7名)
提供先:中学校1校、小学校3校への昼食提供
600食
生産能力:約2000食/日
1.設立の経緯
平成11年4月に7年の歳月をかけた「ケアタウンたかのす」(在宅複合型施設)を鷹巣町に開設。
1年後の平成12年4月より真空調理方式による配食サービスがスタートする。
「ケアタウンたかの
す」は、デンマークの福祉を参考にしながら、住民参加の福祉のまちづくりを目指し、現在でも視
察に訪れる人は年間3500名と絶えない。
このような「福祉の町」鷹巣町は、
「自分達の『まち』は自分達でつくる」をモットーに、住民参加・
主体の運営が行われている。その精神は、
「ケアタウンたかのす」の建物や食事にも表れ、自然が十
分に感じられる建物や家庭と同じようなおいしい料理を真空調理方式による提供と、入居者へは最
高のケアをサービスしている。
「フードセンターたかのす」は、
「ケアタウンたかのす」に隣接し、身体障害者通所授産施設と南部
学校給食センターとで構成された複合施設である。身体障害者通所授産施設は在宅への配食サービ
スを行い、南部学校給食センターは4校(中学校1校、小学校3校)への昼食提供を行っており、
どちらもメインの食事は、当日調理(クックサーブ)ではなく、新調理(真空調理方式)を採用し、
公立小中校への新調理の採用は、国内初の試みである。
南部学校給食センターにおける新調理(真空調理方式)の取り組みは、前給食センターの老朽化に
伴う改築構想と連動し、平成14年5月に前岩川町長陣頭指揮のもと、新調理(真空調理)の取組
み表明を行い、わずか1年3ヶ月後の平成15年8月よりスタートさせている。
2.設立の目的
フードセンターたかのすは、社会福祉の推進と安全な学校給食の提供を目的に建設された。
また、これからの子供さんにおいしいものを食べていただきたいという思いから発想。
特徴は、真空調理システムを採用。
(利点は、安全で栄養価の高い食事の提供ができ、人件費等コス
トの軽減がはかれ、温度管理が行き届いた、働きやすい職場環境の改善(オール電化)、また、仕事
の平準化が行え、計画作業が行える点)
26
3、スタートまでの流れ
H14.5
町長、教育長、教育委員長、PTA会長、栄養士、調理員が集まり、
「ケアタウンたか
のす」の厨房設計・調理システム・真空調理メニュー開発や指導を行った谷先生・金
谷先生の真空調理の研修会を開催。研修会終了後、当時の岩川町長が南部学校給食セ
ンターの真空調理システム構想を表明。教育関係者からは、文部科学省
学校給食の
衛生基準管理(当日調理、当日配膳)が制定されているがとの質問あり。それに対し
ては、メリットがあることは町が責任を持ちますのでチャレンジし進めたい主旨で答
える。
H14.7∼8
夏期休業利用して、一人2日間、調理員・栄養士全員で「ケアタウンたかのす」
で実施研修を行う。
H14.11∼15.3
中核となる調理員2名を5ヶ月間ケアタウンたかのすに派遣し、技術の
習得にあたらせる。
H15.4∼
H15.7
改築後の南部給食センターで開設準備にとりかかる。
小中学校保護者を対象とした真空調理の体験と試食会を実施。
レトルトカレーをイメージされた方が多く、おいしい食事に好評。
H15.8
衛生管理について保健所の指導
↓
スタート
※ 各機関との協議の流れ
① 町教育委員会から県教育委員会を通し、文部科学省へ協議文書で打診。
② 協議を重ね、食品衛生法内で、衛生管理が徹底されれば問題ない。
③ ポイントとしては、保健所の新調理に対する理解と解釈。
↓
まず、県・保健所に新調理システムの説明と理解を行う。
↓
現段階は、調理法の1つとして認めるが、条件有り。
<提供するときは、2時間以内に、加熱(再加熱)して提供すること>
※新調理システムは、チルド帯保存から、再加熱して提供するので条件内。
27
4.現状
①生産能力:2000食
②現状生産数:600食/日
町内には、中・小学校の給食センターは3ヶ所(南部、北部、中部)。その内の南部給食センター
が真空調理システム採用。他の2ヶ所は従来通り。
南部給食センター
<真空調理セントラルキッチンシステム>
約600食/日
フードセンター
南
たかのす(南部給
中:215食
竜森小:
食センター・身体障
南
害者授産施設)
25食
小:131食
中央小:192食・・・合計571食
<加熱後・・常温配送>
身体障害者授産施設
<真空調理セントラルキッチンシステム>
利用者定員:20名
在宅への配食サービス(70食/日)
③人員構成:8名体制(栄養士1名、調理員7名)
配送:3名
④ その他
・南部給食センターは、将来的に町内公立中・小学校の3ブロックのセントラルキッチン化も見
据え、2000食規模。
・栄養士、調理員は全員、新調理の技術習得済み。また、真空調理施設の快適な職場環境、
仕事の平準化、計画性があり、希望する調理員が多い。
・オール電化
・給食費:小学校270円、中学校300円
・生徒さんの反応は好評。どれが真空調理の給食かわからず表示するようにしている。
5、初期コスト
単位:百万円
通所授産施設
建築関係
備品購入費関係
計
学校給食センター
計
169
186
356
60
82
142
229
268
498
28
6.課題
・新調理システムでスタートさせ、おいしく安定した供給に全力投球。
1年経過して、課題整理。
・メニュー開発、真空調理が理解できる学校栄養士の育成。
7、感じたこと(ポイント、特徴)
① 町に根ざした「新調理(真空調理)システム」
「ケアタウンたかのす」をベースに、真空調理システムを確実に根づかせている。特に日本でカ
リスマ的な谷先生、金谷先生の直接指導により、ケアタウンたかのすから、給食センターの栄養
士、調理員、それに、毎日おいしくいただく生徒さんや在宅の人たちの真空調理ファンが確実に
輪がひろがっている。今回、一連の関係機関の協議の流れをみても、国内初の学校給食、新調理
システムの導入は、現実に稼動しいる「ケアタウンたかのす」の真空調理システムの評価なくし
ては、なりたたない。
② 住民の意識の高まりと自治体責任者のリーダーシップ
7年もかけ、住民参加による「福祉の町づくり」を実践。デンマークを手本に、クオリティ・オ
ブ・ライフを追求。前提として住民の意識の高まりが重要だが、前岩川町長の行動力、先見性、
リーダーシップなくしては、学校給食の新調理システムは誕生しなかったと考えられる。
29
■先進事例調査:佐賀
新調理システム先進事例調査
2
∼私立学校給食から医療福祉給食へ∼
カルナフードサービス (松尾建設株式会社
〒842-0122
給食事業部)
佐賀県神埼郡神崎町大字城原字熊谷 1511-1
TEL 0952-55-7217
FAX 0952-55-7108
運営方式:民営
事業内容:給食事業
設立年月:平成 16 年 4 月
従業員:63 名(パート 30 名)
売上高:年間 7∼8 億円の見込み(本事業部のみ)
生産能力:6,000 食/日
1.設立の経緯
松尾建設㈱の 100 周年記念事業として学校法人松尾学園(弘学館中学校、高等学校:中高一貫教育校)
を設立した。
現在の全校生徒は約 1,050 人であり、全寮制を採用しているため、毎日 3 食の給食供給が必要であ
る。(役職員を含めて 1 日 約 3,450 食程度供給が必要)
従来は 3 ヶ所の給食施設を持って、構内食堂の大テーブルに配膳していたが、落下菌の問題と温か
いものは温かく、冷たいものは冷たい状態で生徒さんに提供したいと考え、保温・保冷庫への配膳
とカフェテラス方式への変更を目的とし給食設備を1ヶ所に集約計画した。それに基づき、九州電
力の全面的な協力を得て、オール電化セントラルキッチンのHACCPに基づいた調理工程を構築
したもの。
(※ガスを使った調理室の場合、室温が上昇する為衛生管理が難しく労働環境も電化キッチンに比べて劣る。)
また、建設業も生き残りをかけ、HACCP対応の施設建設でのノウハウ吸収や他事業への可能性
も探る意味からも給食事業を設立した。
関連の学校給食(ある意味での、キャプティブマーケット)をベースに、事業を安定化させ、将来
は、医療・福祉・介護施設への食事提供も視野にいれ、九州地区で始めての「クックチルシステム」
を導入。尚、カルナフードサービスは、平成14年10月にHACCP手法支援法(食品の製造過
程の管理の高度化に関する臨時処置法)に基づく、社団法人日本給食サービス協会認定国内第1号
の施設となる。
2.設立の目的
・ グループ内学校法人の給食サービスを基本展開とし、今後ラインフル稼働により病院給食、官公
庁給食のアウトソーシング化の開発・獲得を推進していく計画。
・ 同社は今後特に医療福祉関係への営業を強化していく予定。
・
建設業としてのHACCP対応施設のノウハウ吸収
30
3.現状
① 生産能力:6 千食
② 現状生産数:約 3,750 食/日
弘学館給食(生徒+職員)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・約 3,450 食/日
医療福祉関連給食(希望者注文) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 約 300 食/日
<クックチルセントラルキッチンシステム>
松尾建設㈱給
約 3,450 食/日
食事業部
事業所給食:1 ヶ所
カルナフードサービス
医療福祉関連給食:3 ヶ所
事業所等は、再加熱用のスチームコンベクション有
白ご飯は、サテライト対応で当日炊飯
③ 競合状況
・ 九州地区内には競合先はない。
④ デリバリー状況
・ 配送係・・・4 名(自衛隊 OB:パート)
・ チルド状態(0℃∼3℃)で配送を行なっている。⇒
一温帯のみ
※弘学館までの配送時間は 15 分程度
配送用トラックには 0℃∼3℃に保たれるように冷却装置を備え付けてある。
・ 工場からのデリバリーの距離・・・・現在は自社で佐賀市内のみ対応している。
今後は外注先にシフトしていく予定であり、福岡・
長崎・熊本・佐賀の北九州エリアは十分配送が可能で
ある。
・ 喫食 2 時間前にサテライトキッチン(SK)にて再加熱する。⇒スチームコンベクションオーブン
の利用設置
31
⑤ イニシャルコストについて
(単位
種
類
金
百万円)
額
建物建築
100
空調、給配水設備
113
処理槽
45
冷蔵庫
10
外構、舗装、植栽工事
20
135
機械設備
25
その他備品
合
448
計
※土地(工場敷地)20,000 坪について自社所有物件につき資金負担はなし。
⑥ 資金調達について
(財)日本給食サービス協会の高度化計画の認定を取得し、農林漁業金融公庫の高度化資金を活用し
て、土地資金を除く総所要資金の 80%以下の 3 億円部分について金利 1.2%で 15 年の長期資金を
導入した。
※HACCPの認証も取得済。
⑦ SK 人員構成:弘学館・・・・37 名
合計 40 名
病院他・・・・3 名
※ 1.人員についても法律には記載されていないが、県からの指導もあって計画以上に張付けてい
る状態。
※ 2.衛生関係では、当初計画以上にマスクや手袋等の消耗品費が多くかかっている。
⑧ ライセンス取得状況
管理栄養士
栄養士
2名
33 名(全員取得)
調理師(プロのコックさん)
不在
※ 経験のない世界なので現状不在。但し、メニュー開発について年数回のアドバイスを受ける。
⑨ 同社の考える損益分岐点・採算性について
・ 土地を除き 4∼4.5 億円の投資の場合、1 日 2,000 食程度で収支均衡の見込み。
・ 採算性からは大きな施設の顧客を持っていないと採算性は低い。
・ 現在は事業部制を採用しているが、将来は独立採算の別会社化を計画している。
32
4.課題
① 学校給食を中心にしているが、メニューに関して PTA から改善の声がある。
↓
(魅力のあるメニュー開発の促進が必要である。)
② 営業構造の改善
→
点から線へ(医療福祉関連施設の重点開拓)
③ 学校給食だと対象者が食べ盛りの年代なので、1 食あたりの食材費が計画に比べ高目に推移して
いる。(地産地消の推進と食材仕入ルートの研究)
④ 厨房機器は償却年数 6 年、初年度のメンテナンス費用を 100 万円程度と予定していたが、既にメ
ンテナンス予算よりオーバーしてしまっている。九州電力や機器メーカーとの協調により、能力と
耐久性のアップを図ることが重要である。
⑤ どうしても洋食中心のメニューになりがちなので、和食メニューも充実させる必要がある。
⑥ 新調理システムに早く慣れ、使いこなすことができるようになることが重要。(教育の必要性)
5.今後の展望
① 医療関係の院内調理・院内消費の原則が変わり、アウトソーシングが可能になったので、多くの
医療機関を顧客として開拓し、スケールメリットの追求を図り、コスト低減・収益向上に繋げてい
く方針。
② メニューの開発と生産時間短縮の追求にも注力し、より競争力のある商品構成とし、地域内に新
市場を自ら創造する。今後、異業種からの参入も予想されるので有機野菜の仕入れネットワーク
の構築等のビジネスモデルを早期に強化していく計画。
33
■先進事例調査:京都
新調理システム先進事例調査
4
∼事業所給食から学校給食へ∼
シダックスデリカクリエイツ株式会社
〒613-0035
Tel
HP
CK事業部
京都府久世郡久御山町大字下津屋小字北野35−4
0774-44-2745
Fax
0774-44-2768
http://www.shidax.co.jp/
運営方式:民営
事業内容:給食事業
設立年月:平成15年10月(平成9年2月設立
前オムロンデリカクリエイツ(株)より譲渡)
従業員:216名(パート含む)
売上高:約11.6億円(平成15年3月期実績)
生産能力:約1万食/日(2交代の場合)
1.設立の経緯
オムロングループで前身のオムロンデリカクリエイツ(株)は、これからのアウトソーシング化と
いった時代のニーズに応えるため、新たな事業分野として進めたファシリティ・サービス業務の食
事サービス部門を担当する会社として平成9年2月設立された。
病院での院外調理の許可、公立学校における給食の民間委託化などに対する規制が緩和されつつあ
る社会の動きを見据えての事業展開。平成12年6月に最新鋭のHACCP対応のクックチル・セ
ントラルキッチンシステムに食品生産設備が稼動していたが、事業の選択と集中による対事業所サ
ービス事業の再編施策の一環として、親会社のオムロン(株)が事業譲渡を決断。
一方、
「食」を基盤としたコントラクトフードサービス事業、メディカルフードサービス事業を含む
給食事業やレストラン・カラオケ事業など拡大を進めているシダックス(株)が、今後、グループ
各社として食材仕入れの共通化などのシナジー効果により、よりよい食材を低コストにて調達する
ことで、サービスの向上と収益機会の拡大を多く見込めることから、株式譲渡契約を締結し、平成
15年10月より子会社化することとした。
2.設立の目的
<前身のオムロンデリカクリエイツの場合>
・ グループ企業の事業所給食サービスを基本展開(ある意味で、これもキャプティブマーケット)
しながら、これからの病院給食や学校給食サービスのアウトソーシング化事業の開発。
・ 温度管理が重要な新調理システムに、製造メーカーとして培った高度な品質管理技術、生産技術、
運用ソフトを開発・育成。
<シダックスデリカクリアエイツの場合>
・ 基幹である病院給食・学校給食の受託運営事業にとどまらず、
「食」に関わる全分野包括のため、
これからのアウトソーシング化対応のクックチル・セントラルキッチンシステムの事業開発とパ
イロット的展開。
34
3.現状
①生産能力:1 万食(1シフトの場合)
②現状生産数:約5800食/日
事業所給食+デイサービス給食(新調理クックチル方式)・・・・・・約3000食/日
中学校給食(当日調理の弁当、希望者注文)・・・・・・・・・・・・約2800食/日
<クックチルセントラルキッチンシステム>
シダックス
約3000食/日
デリカクリ
事業所給食:8ヶ所(平均1事業所約350食)
エイツ
デイサービス給食:15ヶ所(平均1施設約20食)
事業所等は、再加熱用のスチームコンベクション有
白ご飯は、サテライト対応で当日炊飯
<12台のチルド+冷蔵車で配送
1車:150∼200食>
<中学校給食:弁当、クックサーブセントラルキッチ
ンシステム>約2800食/日
京都市の全79校のうち29校(平成13年10月)
その内の約5割の受託。希望者オーダーシステム
③人員構成:約80名体制
配送・配膳員:35名・・・・・自社便(12台)、契約車(2台)
サテライトの配膳係は、シダックス専任、100食あたり2名
体制
製造ライン他:45名
※ 学校給食弁当製造部門において、学校休み期間は休暇希望のパートさんを採用
(子供といっしょに夏休みなどの休暇時過せるため好評、ニーズ高い)
35
④メニュー構成と流れ(クックチル方式):メインメニュー5種/日
500メニューの中からローテーション。
メニュー開発は、調理師と管理栄養士とで共同開発。
特別養護老人施設の特別
<オーダーの流れ>
・ 1ヶ月半∼3週間前に、日別メニュー表提示
↓
・ 1週間前オーダー数確定。(FAXとPCメール、半々)
↓
・ 前日夕方納品・・・チルド冷蔵へ納品
⑤検食体制(食品の衛生管理体制)
サテライト(調理が終わった段階)とセントラルキッチンの2段階方式
2週間の保管でトレースできる体制
⑥食材の供給
シダックスのルートに一本化して、スケールメリットを生かす。
⑦施設
地元冷凍施設に賃貸借契約での入居。設備も含め、リース契約。調理器具は、電気・ガス併用。
4.課題
① ニーズに合わせた、当日調理(クックサーブ)と新調理(クックチル方式)の併用運営のため、
効率が上がりづらい展開となっている。→規模の拡大模索
② メニュー開発とメニューアイテム数の見直し。→満足度UPと提供メニュー数の見直し
③
調理方法の適材適所の考え方の導入。→クックチルセントラルキッチン方式を推し進める
ものと、サテライトキッチンで対応できるもの等、柔軟な考えで取組みたい。
※理由:メニューによっては、クックチル方式にとらわれないほうがよい場合もある。
④ 時代の変化による競争の激化。企業の存続維持から、給食等の分野にも見直しのメスが入って
いる。受益者負担の考え方も浸透し、従来の企業・事業所の管理費体制の見直し、変更だけで
なく、個人が負担する単価制への移行がすでに始まっている。給食業界は味の満足度や提供サ
ービスの満足度を高める競争に激しさが増してきている。
管理費体制の見直しから単価制への移行
<高度成長時代>
<低成長時代>
<これから>
給食は企業の福利
企業存続のため管
税制の見直し
・ 厚生の一環
理費の大幅見直し
捕食費のカットへ
個人負担少
個人負担増
全額個人負担
36
5.今後の展望
① 給食施設のない施設への食事サービス提供の研究・開発
事業所給食、病院給食等の受託調理運営業務が本体の柱のひとつであるが、将来の企業の在り
方を視野にいれると、給食設備の設備投資、厨房スペースの確保等、調理員の育成、食の安全
や単価など、いろいろなケースが想定される。これからは、給食施設のないスペースにはどの
ような対応ができるか。弁当がよいのか、セントラルキッチンシステムがよいのか、給食セン
ター方式がよいのかなど、時代の変化にあった様々なニーズがあり、これらについての対応が
求められている。その中のひとつとして、クックチルセントラルキッチン方式を極めて行きた
い。また、受託調理運営事業においても、クライアント企業の厨房設備が対応年数を超えた場
合、再投資するのか、投資は見合わせアウトソーシングするのかといった判断もある。お客様
への食事サービスの選択肢のひとつとして、このクックチルセントラルキッチンシステムは、
研究・開発するべきだと考えている。
② 学校給食のクックチルセントラルシステムの提案
全国的にみて、学校給食の受託業務の割合は2割∼3割だが、増える傾向にある。
岡山市の場合も学校給食センターの民間への受託調理運営業務の移行は終了し、本年度は自校
調理方式の学校(6校)が、受託調理運営業務に切り替え予定である。
現在、シダックスデリカクリエイツでは、学校給食クックチルセントラルキッチンシステムの
公立校への導入がはかれるように提案中。受け入れられれば、公立校へ安全性にすぐれた新調
理給食サービスの展開は、民間による全国でも始めてのケースとなる。
6.感じたこと(ポイント、特徴)
① 京都冷凍倉庫内に、リース契約で入居。
初期コストを抑え、温度管理が徹底できる同じビル内への入居は、民間企業の知恵が感じられる。
② 前オムロングループの社員給食センターとしての存在は、いわゆる民間市場でのキャプティブマ
ーケット(従属関係にあるマーケット)。新規事業を早期軌道にのせるためには有効な手段。
大口顧客の存在は、安定した事業計画が見込め、採算ベースのボーダーラインが大きく下がる。
37
■先進事例調査:岡山
新調理システム先進事例調査
4
∼老人保健施設から大型総合病院への導入∼
財団法人
倉敷成人病センター
〒710-1301
岡山県吉備郡真備町 1130
Tel
0866-98-9000
HP
Fax
老人保健施設
ライフタウンまび
0866-98-9133
http://www.fkmc.or.jp/
運営方式:民営
事業内容:医療・福祉機関
設立年月:平成9年12月
同施設栄養部
人員:11名(正社員5名、パート5名、アルバイト1名)
通常生産:200食/日
1.設立の経緯
豊かな老後を送って頂きたい願いから、利用者と地域の人々が楽しく過せるアットホームな老人保
健施設として誕生。快適性を追求するため、本格的な温泉施設、レクリエーションルームも完備。
その中で、最も力をいれたのが、お年寄りの方に楽しい食事時間を提供するために、新調理システ
ム(真空調理)を使ったおいしさを追求した料理。加えて、働きやすい職場環境を考えオール電化
厨房を導入した。
このライフタウンまびの経験を生かし、本体の倉敷成人病センターも新調理システム、HACCP
対応オール電化厨房が採用となった。
2.設立の目的
① 高齢者の方に喜んでいただく、おしい料理の提供
② 安全で安心な料理の提供
③ 時間や人員の有効利用
④ 職場環境の改善
3.現状
① 方式:新調理、クックチル・真空調理
② 食数:約200食/日
朝 56 食
③
昼約 100 食
夜 56 食
老人保健施設概要:介護老人施設
定員
56 名(全個室)
ショートステイ定員
デイサービス
4名
定員
60 名
在宅介護支援センター
訪問看護ステーション
④
給食施設:老人保健施設内
オール電化厨房
38
約120平方メートル(36坪)
⑤
栄養部:正社員 5 名
パート 5 名
(管理栄養士 2 名、調理師 3 名)
アルバイト 1 名
で構成
平均一日 3 人体制
⑥
厨房内の状態:
下処理と調理場は分けてある。野菜、魚は前処理した状態で仕入れ
厨房内は基本的にドライな状態
魚、野菜などは別のシンクで処理
包丁、まな板は色分けし、滅菌殺菌。保存は冷凍−17 度
⑦
冷蔵 3 度
提供時間:
朝食
7:30
昼食
12:00
間食
15:00
夕食
18:00
栄養部が食堂まで運び、提供は介護職員
⑧
⑨
提供方法:
入所
適温配膳車
食堂で提供
通所
適温トレイメイクワゴン、チェーフィングウォーマーを使用し、バイキング方式で提供
メニューサイクル:
5 週間
曜日で何の日などとは決めていない
曜日ごとに来る人がいるので 0 の日:麺類、2の日:パン、5の日:寿司の日と決めている
現在は 5 品 30 種
⑩
←朝は希望があればパンも対応
仕込み:
2∼3 日後の仕込みを主に行う。96時間保存可能
⑪
新調理のメリット:
事前仕込み可能、人件費の低減、計画的、環境改善(職場環境、ゴミ処理)
経験がなくてもマニュアルがあればできる
⑫
オール電化厨房メリット:
煙がでない→
クリーン
衛生管理は電気が簡単
夏場も温度が上がりにくく作業環境がよい
ゴキブリやねずみがいない
⑬
その他:
・栄養士も調理を行う。また、残食調査、コンプライアンス調査、嗜好調査を記録として残す
・検査は年 2 回
生野菜、調理済みの食材は50g以上を保存し検査を行う
・検便は夏場(6,7,8,9 月)は月 2 回
その他は月 1 回実行
39
4.課題
①
現在7年目。厨房設備の耐久性に課題があり、修理コストが高くついている。
②
メニュー開発やマニュアル作り(何度で何分スチーム、加湿何パーセントかなど)
③
今までの厨房とは、イメージが異なる。経験型の調理師からマネジメント型の調理師が
求められている。
5.感じたこと(ポイント、特徴)
① 開設から6年経過したとは、思えないクリーンな厨房施設であり、オール電化厨房のよさを
実感できた。ただ、耐久性にまだ若干問題があり、メンテナンスと合わせ厨房設備の技術開発は
これからも必要。又、ライフタウンまびの新調理システム経験を生かし、現在建築中の倉敷成人
病センターも、大規模のオール電化の新調理システムが完成する予定。
入所者の方に、ホテル並のおいしい料理の提供サービスを一番に考えておられることが印象に残
った。
40
■先進事例調査:鳥取県
新調理システム先進事例調査
5
∼日本初の院外調理施設∼
社会福祉法人
本部事務局
Tel
こうほうえん
〒683-0841
0859-24-3111
0859-53-3921
HP
改名)ヘルスケアフーズ事業部
鳥取県米子市上後藤 3−7−1
Fax 0859-24-3113
ヘルスケアフード事業部
Tel
(養寿会
〒689-3326
鳥取県西伯郡大山町安原 1050
Fax 0859-53-3925
http://www.kohoen.jp/
運営方式:民営
事業内容:医療・保健・福祉機関
設立年月:平成8年10月
人員:25名(内パート5名)
最大生産能力:10,000食/日(2交替制)
1.設立の経緯と概要
平成8年10月
給食サービスの向上を目指すHACCP対応でのクックチル・セントラルキッチ
ンシステムは、日本初の院外調理施設としてスタート。廣江病院を母体に療養施設・通所事業、訪
問事業、相談事業、シュートステイ事業など、鳥取県に4エリアのヘルスケアタウンに、最近では
24時間の保育園と地域の保健・医療・福祉を担うコングロマリット。ケアハウスと介護老人保健
施設の合築も全国初。ISO9001の取得、テレビCMの取組みや、関連施設の授産施設は焼き
たてパンが売り物のレストランと、柔軟な発想で医療・保健・福祉経営に取組まれている。新調理
を使ったセントラルキッチンもその一環。
2.設立の目的
① 「食べることの幸福感」・「食のアメニティの向上」の実現。
②
安全な食品の提供
③
合理化の追求でコスト削減
3.現状
平成8年10月から平成15年7月まで、クックチルセントラルキッチンシステムをメインに採用
していたが、介護のあり方も家庭の食事の延長線という、いわゆるユニットケア方式が主流になっ
てきたことや、コスト、手続きも合わせて再検討した結果、平成15年7月よりサテライトキッチ
ンにウエイトを高める方法に軌道修正を行った。そのため、新調理の良さとサテライトでの当日調
理の良さをミックスさせた融合タイプに進化した。セントラルよりサテライトで作るほうがおいし
いものはサテライトで調整行う考え方のもと、味噌汁、おひたし、揚げ物、てんぷらなど全メニュ
ーの30%はサテライト対応とした。一方セントラルは、サテライト対応が強化された分、最高で
300人のフルコース対応や弁当配食、仕出しなどの売上拡大の対応力も強化された。介護施設の
食事などのきめ細かな対応には、セントラルは不向きな部分もある。
41
<セントラル>
① 方式:新調理、クックチル・真空調理
② 食数:4000食/日
③ 施設概要:4エリア17施設
入所・通所1457人
従業員
オール電化厨房
950人
④
給食施設:単独施設
総工費:8億円
⑤
フーズ部:25人(内パート 5 名)+サテライト61人(内パート9名)
⑥
メニュー:
豊富なメニューから選べるカフェテリア方式
2週間前にコンピューターシステムにてオーダー。
当初70アイテムであったが、効率化のため40アイテムにしぼる。
4、課題と取組み
①
セントラルとしての可能性を高めるため、ソフト食の開発や真空調理弁当の開発を行っている。
②
料理長、栄養士、調理師の連携が大切
③
サテライトの重要性と負担増の課題
④
セントラル厨房設備のメンテナンスコスト増の課題
5、感じたこと(ポイント、特徴)
①
介護のあり方も、時代の流れとともに大きく変化している。おいしいく安全なものの提供から
さらに生活の場として、あたかも家での食事ができるようにユニットケア方式に対応したサテ
ライトのあり方も重要なポイントになってきてるようだ。
42
《先進事例調査:海外》
∼英国にみるPPP/PFIプロジェクト推進における
公務員の雇用保護に関する2つの制度∼
<TUPE制度(公務員等の雇用保護規則)と
REM制度(公務員の出向モデル):英国>・・英国医療福祉の視点から
【PPP/PFIプロジェクト公務員雇用保護制度の必要性】
今回の調査から、日本におけるPPP/PFIプロジェクトが大きく進まない要因
は、公務員の雇用の問題が一番にあると感じた。民間でもそうだが雇用保護と移籍の
問題はとてもデリケートな問題で、公共サービスを民間に委託する際必ず議論される
問題である。未知の分野であればBOT型で、民間の自由裁量で大きな成果が得られ
るが、従来の公共サービスからの民間開放には雇用の問題は大きな障害となり、移籍
を棚上げしたBTO型に落ち着く。建築コストだけが軽減された、いわゆるハコモノ
のPFIになってしまう。
現状、公務員の民間との交流は2タイプ。原則3年で国の一般職員を民間企業に派遣
する法律と、一般職の地方公務員の公益法人へ派遣する法律があるが、PPP/PF
Iを推進するための、公務員雇用の問題に関する保護制度は整備されていない。よっ
て、どこの自治体もこの部分で足踏み状態が続く。
今回は特別に、PPP/PFIの先進国である英国の医療福祉の現場からみた保護事
例の紹介を行うが、事業営業権の譲渡・移転による従業員(民間・公務員)の雇用保
護を目的としたTUPE制度と最近注目される公務員の出向REM制度を取り上げ
る。
今後日本における一般職の地方公務員の公益法人へ派遣する法律を英国のREM制
度のように柔軟な運営で、BOT型PPP/PFIプロジェクトに結びつける工夫が
求められている。
【先進事例1】
TUPE:( 発音はチュピー)
∼公務員等の民間企業への移籍に関わる雇用保護制度∼
Transfer of Undertakings (Protection of Employment) Regulations:
事業の譲渡・移転(雇用保護)規則:1981年
病院PFIにおいて当初、英国厚生省は、TUPE の厳格な順守を PFI プロジェクト契約の
中で規定する事を病院トラストに求めていた。雇用保護の詳細契約書は(移籍従業員に関
43
する保証条項を含め)、個別プロジェクト特性を考慮し、トラスト側が主導的に契約ドラフ
トの作成を行なうように指導している。主要なポイントは、
①TUPEの適用について双方が契約調印前に分析の完了を必要とする。もしコンソーシ
アム側がTUPE適用外と判断する場合、その理由を明示しNHS行政部の同意を得る必
要がある。
注)TUPEではETO事由(経済的、技術的、組織的妥当性をもった理由)により、余剰労働者(Redundancy)が
発生する場合、余剰労働者は解雇できる規定がある。但し解雇を行なおうとする雇用主側がその合理的事由の証明責任
を負っている。又、1996 年のERA(雇用権利法)で規定されている解雇の公平原則に照らしてみると不公平であると
判断される可能性がある。
一方、移籍に関係した理由による如何なる解雇もその解雇が移籍前であろうと後であろう
と自動的に不当であると判断される。
NHS行政部の方針としては、コンソーシアム側が当初の移籍受入後一定期間(3∼4ヶ
月程度)以内に余剰労働者のETO事由が正当である事を示す詳細情報を添付し通知すれ
ば、トラストは契約で事前に取決めた一定限度内での補償をコンソーシアムに行なう。但
し、特定目的会社及びサービスの下請け会社は余剰労働者のコストを低減するために、そ
の組織内で余剰労働者を吸収するなど合理的努力をしなければならない。
②移籍する従業員に関する情報をトラストは十分考慮する。
対象従業員の雇用コストを算出できる計算根拠(時給、年間契約労働時間、昇給の基準、
有給休暇日数とその他給与外給付、仕事スキルの等級・区分等を含む)に基づいて、コン
ソーシアム側がコストの調整をトラスト側に求める事が出来る。
③年金について、移籍後各職業別年金プランの継続加入はTUPEの適用から除外される。
このため、移籍企業(特定目的会社又はFMサービス提供する下請け会社)に対して、政
府保険経理部門の合意する総合的に同等な年金プランを移籍する被雇用者に付与する要件
が課される。
④移籍する従業員の能力については、プロジェクトの特殊要因で能力保証が必要とされる
以外、一切の保証は避ける。このような能力保証をトラストが行なう場合はNHSの事前
相談が必要である。
注)1977 年のARD(Acquired
Rights
Directive)労働者が取得した権利に関する EC 指令が英国内で法的効力を持つ
ために、サッチャー政権時代の 1981 年にTUPEとして立法化された。広義にはTUPEは公務員だけを対象にした
ものではなく、その適用対象は民間企業の労働者も含まれる。事業の経営権が事業のアイデンティを保持した形で第三
者に譲渡・移転された場合、雇用主が変わるため、非雇用人である(そこで働く)従業員の雇用条件を保護する事を目
的に作られた法律である。
TUPEはその後、公的部門を中心とするサービスの一部外部業務委託(アウトソーシン
グ)の導入に対しても修正適用された。これは 1994 年のECJ(ヨーロッパ共同体裁判所)
の判断に従い、1995 年英国において控訴院(Court of
44
Appeal)がTUPEに関わる画
期的な判決を下した。医療分野で公的分門(保健局)の外部委託クリニングサービスにお
いて、その契約請負人を代えた事で従業員の移籍が発生した。同じ敷地内で、同じ発注者
(保健局)のために、主として同じ労働者が同じサービスを提供するのはTUPEが適用
されると本控訴院は判断した。
この判断によりNHSトラストが既に外部委託しているホテル機能相当のサービスを、P
FIプロジェクトでのサービスを含めたFMサービスとして一本化し、特定目的会社に一
元化的にアウトソーシングする事が容易になった。
TUPEの新たな展開としてREMが医療・福祉分野で注目されている。
【先進事例2】
∼管理職は民間企業へ移籍、一般公務員は出向タイプ∼
REM(Retention of Employment Model)
(公務員の)雇用維持モデル
公務員の労働組合であるUNISONの主要構成組合のひとつであるNHS労働組合
(UNISON
Healthcare)は当初から医療福祉分野PFIに反対してきた
が、1997 年に再挑戦が始まった病院PFIにおいて、順調にPFIプロジェクトが導入さ
れ、拡大の軌道に乗るにつれ、非臨床(Non
Clinical)部門の組合員(清掃・
警備・クリーニング・給食・ポータ・営繕等)を中心にPFIのコンソーシアム・グルー
プの民間企業への大量移籍が始まり、組合員数が急激に減少し始めたことに危機感を持っ
た組合が、PFIによる組合員の民間企業への移籍に関して反対の声を強く上げ始めた。
移籍の組合員の付与される年金条件は、将来低下する可能性があること及び、UNISO
Nの団体交渉力の大きさによる賃上げ可能性の高さと較べ、民間企業における賃上げの低
さの可能性を主たる事由として、PFIによる民間への業務委託に伴う公務員移籍(TU
PE)の反対運動に大々的に乗り出した。2001 年のブレア労働党政権が再選の見返り条件
として、移籍に代わり業務委託部門の公務員の民間企業への出向策が、厚生省の妥協策と
して提案された。この出向策も組合員の反対にあい交渉は難航したが、厚生省側の最後通
告(組合側の反対ストライキの場合は、民営化策の対抗案で応じる旨の付帯条件)により
民間企業への出向策(REM)はNHS労働組合により受入れられた。当初は3病院の実
験REMで話し合ったが、3病院プロジェクト以降はすべてREM条件適用で合意されて
いる。REMの下では、管理職は全て民間企業に移籍する。組合員は民間の管理者の管理
の下に働くわけで、民間企業ではごく当たり前に多機能作業員として働くことがあたりま
えであるが、公務員の職務では専門化が進み民間の労働慣行に対する抵抗感が強いといわ
れている。民間企業の管理者に出向の組合員に対する人事権が行使できない状況下で、効
率的な管理指導が可能であるかとの疑問の声もある。2005 年に新規開設される病院からこ
のREM適応による運営が開始される予定である。
45
<米国先進事例からのまとめ>
テネシー州政府クックチルセンターと米国海兵隊沖縄駐屯キャンプキンザー・
カミサリ=クックチル・セントラル・キッチン(CKT)から学ぶ
1.キャプティブ・マーケット(宛がい扶持の市場又は他に供給者の選択肢を
持たない消費者)が対象、言い換えれば官制市場に有効な供給システム
2.CKTの直接製造人員は一交代制下、8 万食で 45 名、2 万食で 24 名、1 万
食で 17 名程度と推定される
直接製造担当要員は1万食:100 とすると2万食:141、8万食:265
1万食を基準とし、8万食=8 倍で人員は2.65倍程度に抑制可能
製造コストの人件費削減効果大
3.上級シェフがメニュー開発及びレシピ開発の主役で管理栄養士は補助的・ス
タッフ的役割で且つ開発メニューレシピに基づきスキルレベルの低い調理
人が料理を行う・・・人員の効率的使用
4.食物・料理の質の改善と均一性及び安全性を確保
温度の集中管理・監視システムにより安全保存期間を担保
(Traceability=追跡可能性の確保)
5.VFM(Value
for
Money)を獲得
6.加工・製造方式が計画的で、作業の平準化による人件費の合理化が可能
計画的生産・計画的配送が可能
7.キッチンの機器・設備の集約化による投資コストや維持管理費の合理化、食
材の一元購入・管理・保管によるコストの引き下げが可能
8.工業的生産システム採用による食材コスト削減と食材・加工食品の安全・衛
生管理徹底によるコスト抑制と安全性の担保、製造コストの削減
同時に多様なメニューの提供が確保
9.エネルギー消費コスト及び廃棄物処理コストの削減が可能
10.ITの積極的活用により、消費者と提供者の間で双方向の対話がより容易と
なり、顧客満足度向上の可能性が高い
46
■先進事例調査:米国 テネシー州
新調理システム先進事例調査 7
∼8万食/日
生産の巨大クックチルプラント∼
テネシー州政府
クックチルセンター
アメリカ合衆国
テネシー州
ナッシュビル市
運営方式:州立民営委託=委託業者、ソデックスホー(北米地域)アメリカ社
事業内容:クックチル方式による給食加工製造・配送
設立年月:平成6年(1995年)
従業員:45名(直接製造部門)
提供先:刑務所、病院、学校など
32箇所
生産量:8万食/日
最大生産能力:16万食/日
2交替制
1.概要
テネシー州は、人口約580万人。その州都ナッシュビル市(人口約57万人)にこのテネシー州
政府
クックチルセンターはある。刑務所への食事を軸に、病院(療養型)、児童センター、学校と
地域の給食事業の取りまとめを行いながら、スケールメリットをだし、ローコストの運営う地域統
合型のクックチルセンターなのである。本調査報告書のビジネスモデルである。
2.現状
①生産能力:16万食(2交替の場合)
②現状生産数:8万食/日
週5日8時間で一交替制、年間2100万食のほぼフル生産
(注)東部の海兵隊基地数箇所への中間食材(スープ・ソース・グレービィー・シチュー等)
や冷凍食品を2交替(セカンドシフト)に基づき供給
③人員構成:45名体制=直接製造部門
総支配人・食物製造責任者・副食物製造責任者・シェフ・営繕責任者
調理、配送関係(契約社員・パート)
計 5名常勤者
・・・・・・・・・・・・・・計40名
(注)間接部門=財務・システム・人事・顧客サービス・品質保証等責任者5∼7名
④投資額:
旧刑務所施設の改築・改造費費用と設備・機械等費用で2000万ドル
但し、土地代除く
⑤施設推定面積:
93,000平方フィート=約2620坪=8646㎡
⑥受託企業:
ソデックスホー社はフランス本拠のフードサービスの多国籍企業
創業は1966年、現在は31ヶ国で現地法人を運営(ソデックスホー・アライアンス
グループと呼ぶ)米国ではホテルチエ−ンのマリオット社との合弁でスタート、現在
はソデックスホー社(米国)に変更、米国・カナダで10万人の従業員を雇用
47
⑦供給先:
テネシー州7つの政府機関のキャプティブマーケット
18刑務所、6病院(療養型中心)、4児童センター、4学校
計 32 ヶ所
注)・テネシー州の4部門(矯正、精神保健・後天性障害、児童サービス、教育)中心
・対象人員数:矯正が13,500人、精神保健・後天性障害が3、000人
児童サービスが750人、学校が1200人
⑧配送方法:
5台のコンボイ・トレイラー(冷蔵温度帯:マイナス2.2度と冷凍温度帯:マイナス17.
8C度、供給出の保管機能)は配送距離は半径100マイル=160キロメートル程度網羅、
1 週一回の割合で各供給先に配送。
合計年間運輸走行距離=21 万マイル=34.6万Km
⑨発注方法:
2 週間先の必要注文内容をコンピューターにより発注
受注充足率=99.6%、(業界平均95∼97%)
⑩加工・製造方法:以下の3方式から構成される
1)最新技術のクックチル機器(400 ガロン=1514リットル大釜)使用よるスープ、
ソース、グレービィー、カセロール料理や牛の腿肉・ポーク腰肉の塊肉のクック・タンク調理
後、マイナス2.2℃∼0℃で保管、安全保存期間が42日間(6 週間グループ)の料理
2)ポークチョップ等オーブンによるフライドチキン等通常の料理法で準備し急速冷凍する。
安全保存期間が 6 ヶ月
3)パン等(ビスケット、ブローニー、コーンブレッド、マフィン等)製造された後、
急速冷凍される。
⑪メニュー数:
95以上の異なった製品
⑫本実施計画:以下の3グループの協議により実施計画の策定を行う
1)規準委員会(住民への一般サービス局、財務管理局、会計検査局から構成)
2)クックチル運営管理グループ(構成はクックチルによる食事の提供を受ける先からの代表
委員、副代表委員)
3)クックチル部門のフードサービス責任者
⑬クックチル方式と先進的な食物調理・処理の組み合わせによるコスト削減の実績は、通常の給食
生産方式と比較すると
・労働コストが20%∼33%削減
・食材コストが11%∼20%削減
・水光熱費が20%∼35%削減
・維持・修理費が25∼30%削減
・機器・機械の更新費用が40%∼60%削減
48
⑭テネシー州監視体制:
州政府の一般サービス局次長レベルの責任者が常駐
特に以下のQA(品質保証)の体制・実施状況の監視を行っている
①品質管理実験室でのテスト:O−157と大腸菌、最終出来上がり食物の細菌総数
②環境テスト:機器を綿棒で拭く(清掃実地検証)、手と手袋の綿棒による実地検証や手
洗いの訓練、空気のサンプル調査、綿棒による排水口、床、壁のリステリア菌チェ
ック、飲料水の水質検査
③生産開始前の肉眼による検査
④品質管理タグシステム:工場のHACCP遵守違反の箇所にはタグをつけ、欠陥が是正
されたときのみタグを取り除くシステム
⑤ 製品評価:視覚・触覚・味覚・嗅覚によるテスト、均一性テスト(pH、重量、粘度)
⑥ 良い生産慣行:個人別衛生監視、毎日のHACCPの運営検査
⑦ ラベルの実地検証:製品につけられるラベルは事前承認が必要
⑧ 食品安全保存期間調査:保存期間内製品であることの確認のため、毎月各製品10−15の無作
為抽出検査
⑨ 水のメーター、温度記録装置、秤、温度計等の検査・調整
⑩ 従業員のHACCP教育:新規被雇用者を対象に、毎日の勤務時間に必要に応じ実施
毎月全従業員に対しての教育実施
⑪外部機関による細菌検査:承認検査機関による物理的、化学的な細菌の特別テストと特別の相談、
検査室の実地検証や米国農務省の病理検査(リステリア菌、サルモネラ、
O−157菌対象)
⑮クックチルセントラルキッチンによる提供サービスの優れた点:
フードセーフティ(食物の安全性)の確保
①品質の向上と品質の一定水準の獲得
②安全保存期間が延長可能なために防腐剤や添加物の使用が抑制可能
③生産設備の中央での集中的設置による監視
④労働生産性の大幅向上
⑤HACCPと他の保健・衛生規則の遵守の徹底
⑥機器・機械の集中保守点検によるコスト削減
⑦更新機器・機械のコスト削減
⑧水光熱費の合理化
⑨シェフ等の人材不足を含め、熟練労働者不足の解消
49
■先進事例調査:沖縄
新調理システム先進事例調査
∼米国
海兵隊
6
給食事業(クックチルセントラルキッチン)パイロット版∼
沖縄キャンプキンザー
クックチル・カミサリー
沖縄県浦添市
運営方式:海兵隊直営(ソデックスホー社の運営コンサルを受けている)
事業内容:クックチル方式による沖縄本島内兵員食堂の給食加工製造・配送
設立年月:推定
平成9年
従業員:24名(直接製造部門)
提供先:沖縄本島内海兵隊兵員食堂
9箇所
生産量:2万食/日
最大生産能力:4万食/日
2交替制
1.設立の経緯と目的
キャンプキンザー(牧港補給地区)は、沖縄県浦添市の国道58号線から西側の海岸までの南北3
km、東西1kmに及ぶ広さ2,750,000㎡の広大な兵站補給基地。キャンプキンザーの任
務は、継続的な戦務支援(整備、補給、工作、そして医療支援)を第三海兵隊に提供する。
基地人口は5200人。
設立目的は、遠隔地の沖縄でも合衆国、本土の隊員と同じようなおいしい食事を提供できることで、
クックチルシステムを海兵隊では、初めて採用された。その後このパイロット・プラントが認めら
れ、本土へ水平展開されて行く。
2.現状
①生産能力:4万食(2交替の場合)
②現状生産数:2万食/日
③人員構成:24名体制
総支配人、製造責任者、副製造責任者、野菜処理担当6名、ミートカット担当2名、パン担当
4名、大釜2名、急速冷蔵・コンビネーションオーブン1名、食材ルーム2名、調理機器・カ
ート洗浄1名、荷受・配送担当3名、
④投資額(設備・機器のみ):
180万ドル
注)建物費用は含まない
⑤施設推定面積:
32,220平方フィート=約905坪=3,000㎡
⑥供給先:
沖縄本島内9箇所(海兵隊基地内兵員食堂:Messhallと呼ばれる)
兵員食堂の位置づけは、サテライトキッチンである
注)一基地内に 2 ヶ所の食堂も2ヶ所と勘定
50
挿入するテキストを入力
⑦食物加工・製造:
クックチルセントラルキッチンの保存期間 5 日から 45 日。人の手に触れる工程を極小化するこ
とにより細菌の混入を防ぐ
⑧衛生管理:
クックチルセントラルキッチンの消毒は朝夕 2 回
エアーシャワーや従業員の服装・靴や衛生管理により、ごみ・泥・埃等の大幅除去と温度管理
の徹底を加え、細菌の繁殖を抑制
⑨配送:
基本的には、毎日配送。(必要に応じ随時もある)
⑩海兵隊基地内兵員食堂:Messhall=サテライトキッチン(カミサリー)
クックチルセントラルキッチンを採用したことによるサテライト側直接メリット:
1)建設コストが従来の同種食堂の建設コストより20%削減できた
理由:倉庫スペースの縮小、キッチン機材・機器の削減
2)食材費のコスト削減:食材の購入単位を拡大(バルクサイズに変更)することによるコスト
引き下げと包装等の廃棄処理量の縮小、食材在庫を減少させることによるコスト削減
3)水道光熱費の合理化:大幅削減可能となった
4)廃棄物処理・清掃のコスト削減:食べ残し、フードロスの縮小と清掃スペース縮小
5)キッチン機器・機材代替・更新コスト:5 年周期の更新コストを50%から60%削減、更に
メンテナンスコストも削減
⑪人件費の削減:年間 50 万ドル(5000 万から 6000 万円)削減
注)セントラルキッチンとサテライト(食堂)を合わせた数字
⑫ITの活用:海兵隊員が若い年齢層中心であるためネットで食事の要望や不満など
毎日情報が集まり、双方向のコミュニケーションが確立され顧客満足度が改善
51
《企業聞取り調査》
モデル地域の提案検証と併せ、地域における有効な資源の確認を行うため、給食市場への取組みやそ
の周辺産業の企業への聞き取り調査を行った。クックチルセントラルキッチンでの給食事業可能性を
確認しつつ、大きく変化している市場動向などを調査した。
1)
株式会社
メイワ・ビー・ピー
広島県呉市広吉松 2-10-30
TEL:0823-74-3088
FAX:0823-73-2371
HP http://www.meiwabp.co.jp/
「スローフード事業」、「ケータリング事業」、それらの配食事業を中心とした「代理店募集
事業」と、在宅配食サービスのノウハウを全国展開に生かした事業を柱とする。食の安心と
安全をテーマに、システムと配送車の開発から、有機野菜(オーガニック)食材中心のスロ
ーフード事業も手がける。今年度末には、50代理店達成予定。
(1)2温帯、3層構造ケータリング車の開発
平成8年より開発、販売。65℃以上の温蔵庫と3℃以下の冷蔵庫の2温帯室と空箱用の3
層構造。温度管理トレーサビリティ装置付。HACCP認証(NPOアジアHACCP)
軽
自動車使用:配送能力
40食分、1台約310万円
普通自動車使用:配送能力180食分、1台約410万円
※ 例えば呉市の場合、すり鉢状の地形で道幅が狭い箇所が多い。在宅配食サービスを行
う上で軽自動車のケータリング車は有効。1回2時間30分のコースで、
「配食」と「在
宅確認」を行いながら、約5分で30人分のサービスを提供。温蔵庫の提供と、ケー
タリング車、ケータリングバックの組み合わせで安心な食事の提供を行う。
真
52
2)
中国電力株式会社 販売事業本部 エネルギー営業センター
広島市中区小町 4-33
TEL:082-523-6259 FAX:082-523-6265
電化厨房案内HP
http://enec-n.energia.co.jp/enec_inet/chubo/index.htm
HACCP基準や新調理システムとの親和性が高い電化厨房を、全国の電力会社の中でも、早
くから取組む。「COOL」「CLEAN」「CONTROL」
「CONVENIENCE」の4
Cによって、衛生管理が行き届き、安全と快適性に優れる電化厨房を提案。
(1)中国電化厨房研究会でこれからの厨房研究も活発化
安全・快適・合理的な厨房システムの構築に向けさまざまな課題を共有し、解決するための活
動を平成5年からスタート。平成10年より中国5県に活動エリア拡大。HACCP概念の厨
房システムや新調理(真空調理・クックチル)の技術研修を開催。構成人数は749人。また、
エネルギー有効利用提案ルーム「エネック」
(広島)の開催は、2003年4月∼12月までの
9ヶ月で、30 回。 参加受講者は、725人。熱心な参加者が増え、具体的な質問が多くなっ
てきた。
<中国電化厨房研究会の構成員内訳>
業種別構成
業種
人数
調理師
208
飲食・ホテル
124
栄養士・給食
174
メーカー
88
設計事務所
42
食品製造
21
その他
92
計
749
業種別構成 人数
その他
12%
食品製造
調理師
3%
27%
調理師
設計事務所
飲食・ホテル
6%
栄養士・給食
メーカー
メーカー
12%
設計事務所
食品製造
飲食・ホテル
その他
17%
栄養士・給食
23%
県別構成
県名
人数
広島
522
山口
86
岡山
56
鳥取
10
島根
50
その他
25
計
749
県別構成 人数
島根
鳥取 7%
岡山
その他
3%
1%
7%
広島
山口
山口
岡山
11%
鳥取
島根
広島
71%
53
その他
(2)業務用電化厨房は、介護施設、病院、学校関係に着実に増えている。
業務厨房の業務用電化厨房契約は、平成15年度第 3 四半期現在で、昨年年間実績対比の1
61%と驚異的な伸び。また、中国地方のオール電化学校給食施設は、全国シェアの22.
3%と高い導入率となっている。
中国電化厨房研究会やエネルギー有効利用提案ルーム「エネック」を利用した普及啓発活動
と安全・安心を求める社会の流れが確実に実を結び始めてきた。
①業務用電化厨房契約(選択約款)実績 【累計】
(単位:口)
契約口数
2000(H12)
2001(H13)
2002(H14)
2003(H15)
年度末
年度末
年度末
12 月末
2
38
90
146
注:業務用電化厨房契約加入条件
供給約款の業務用電力、または選択約款の業務用TOU、業務用高負荷率電力、業務用高
負荷率TOU、業務用ウィークエンドをご契約いただき、次の両方の契約を希望される方
(1)指定電化厨房機器を採用していただくこと
(2)採用された電化厨房機器の総容量(出力)が原則として 30kW以上であること
注:2000(H12)年 10 月より,選択約款として設定
【参考】業務用電化厨房契約(選択約款)実績 【累計】
各種専門学校
2%
コミュニティ施設
3%
料亭・酒場
2%
ホテル
2%
その他
2%
その他卸売り・小売
り
4%
社会公共的施設
42%
スーパーマーケット・ショッ
ピングセンター
8%
食堂・レストラン喫
茶
9%
学校・教育機関
11%
医療・保健衛生業
15%
54
②オール電化学校給食施設の稼動件数実績 【累計】
(単位:件)
稼動件数
2001(H13)
2002(H14)
2003(H15)
年度末
年度末
12 月末
15
18
18
③全国でのオール電化学校給食施設の稼動状況
76件〈2003(H15)年 12 月末〉・・・中国電力調べ
(3)厨房機器のネットワーク化、衛生管理とエネルギー管理一元システム開発・
販売
電力会社4社(中国電力、東京電力、東北電力、関西電力)と富士電機システムズは、業務用
電化厨房の衛生管理とエネルギー管理を同時に行うシステム「調理当番」を開発し、平成16
年6月より販売する。
食材の搬入から保管、調理、提供に至る全工程において、衛生面の重点監視・記録が容易にな
り、食中毒などの未然防止や作業効率向上が期待できる。また各種厨房機器や空調機器ごとの
電力消費や給水・給湯量を自動計測し、これらのデータ分析から、電力消費量の抑制などのエ
ネルギーコスト低減にも貢献する。1 つのシステムで、トータル的に管理が可能となった国内
初のシステム。開発期間は、平成 14 年 10 月∼平成 16 年3月。販売価格は、1,000 食規模(36
台の機器を管理)の標準厨房タイプの場合で、初年度 20,800 千円を予定。このように、これ
からの厨房システムは、HACCP概念をさらに押し進め、トータルで厳格な温度制御が行え
る機器の開発と製作にスポットが当たっている。
55
3)
株式会社エフ・エム・アイ 広島営業所
広島市安佐南区川内 6-43-9
TEL:082-876-1855
HP
FAX:082-876-1854
http://www.fmi.co.jp/
大量クックチルシステムやスチームコンベクションオーブン、ブラストチラーなど新調理シス
テムに欠かせない調理機器についての現状を伺った。
<新調理の主要機器>
① スチームコンベクションオーブン(電気式、燃焼式)
熱風と蒸気を利用してコンベクション(対流)機能により調理するクッキングロボット。
これ1台で、蒸す、焼く、煮るなどの調理が行える。温度・時間・モードをセットするだ
けで、余熱から調理まで全ておまかせ。調理技術者の経験と勘に頼っていたものを、全て
数値化し、調理作業を平準化する調理器具。
OSP-6.10
収納バット数:1/1GN6枚
庫内寸法:幅 595×奥行 500×高さ 450 ㎜
標準価格:¥2,140,000
② ブラストチラー
冷風を吹き付けることによって、調理したものを、急速に冷却する(90分以内に3℃ま
で冷やす)機器。細菌繁殖を妨げる急速冷却に必要な機器。冷却方法は2タイプ。
1、 ブラストチラーシステム(BCS)
:加熱した食品を−22℃の冷風の循環によって
冷却。一般にほとんど全ての食品が対象。保存期間は96時間程度。
2、 ダンブルチラーシステム(TCS)
:冷却水が循環するタンクにパック詰めし、冷却。
主に、出来立てのスープやソース類を充填パック詰めし、冷却。保存期間は30∼
45日と長い。
AL-14M
収納バット数:1/1GN14枚
庫内寸法:幅 780×奥行 970×高さ 1925 ㎜
標準価格:¥3,500,000
56
(1)ブラストチラーの販売台数は、年々130%の伸び
新調理動向を確認するには、ブラストチラーの販売台数で推定できる。
2002年度の全国での販売台数は、448台で約130%アップ。
主な販売先は、老人福祉施設が全体の40%
参考として、同じく2002年度のスチームコンベクションは、5458台。
ブラストチラー導入先 構成比
その他
15%
ホテル
老人福祉施設
10%
40%
老人福祉施設
病院
ケータリング
ホテル
その他
ケータリン グ
15%
病院
20%
(2)集中調理センター、生産規模と投資コスト概算
8時間1サイクルでの、3千食、5千食、1万食の3タイプ毎に、生産規模と投資コスト、人
配の目安を示すと以下のとおり。建築と設備部分のみで、PC やソフト等は、含まない。
集中調理センター(CPU)、生産規模と投資コスト概算
バルク方式(ご飯、汁物は各サテライトでの当日調理の場合)
生産食数/8時間
3,000食
建物床面積
建築費概算
事務所、更衣室、会議室含む
(坪単価:60万円の場合)
厨房機器概算
冷蔵・再加熱カート
初期コスト合計
社員+パート
900㎡
17,000万円
15,000万円
32,000万円
1,400㎡
26,000万円
25,000万円
51,000万円
2,400㎡
44,000万円
35,000万円
79,000万円
(6,000食/16時間)
5,000食
(5,000食/16時間)
10,000食
運営スタッフ数
(20,000食/16時間)
16名
5+11
31名
10+21
49名
14+60
カート方式(ご飯、主菜、汁物は全て盛付済みでサテライトへ搬送。汁物は直前盛付の場合)
生産食数/8時間
3,000食
建物床面積
建築費概算
事務所、更衣室、会議室含む
(坪単価:60万円の場合)
厨房機器概算
冷蔵・再加熱カート
初期コスト合計
社員+パート
1,500㎡
27,000万円
18,000万円
30,000万円
75,000万円
2,000㎡
37,000万円
30,000万円
50,400万円
117,400万円
3,000㎡
55,000万円
43,000万円
99,600万円
197,600万円
(6,000食/16時間)
5,000食
(5,000食/16時間)
10,000食
運営スタッフ数
(20,000食/16時間)
※土地代は含まず。
※外構、廃水処理施設含、コンピューター、関連ソフト含まず。
※冷熱・再加熱カートは20膳用。トレイ・飯器・主菜皿を含んだコストで見積もっています。
1セット150万円。(実勢価格)
※2003年11月作成
57
35名
7+28
68名
18+50
130名
27+103
《検討委員会》
<「PPP(公共サービスの民間開放)による地域活性化推進構築調査」
における地域活性化モデル検討委員会より>
1、調査の目的
「地域統合型クックチル(新調理)・セントラル・キッチン・システム」プロジェク
トを呉市で想定し、仮に進めた場合、どのような課題や有効性があるか意見交換を
行い検討した。
2、
構成メンバー
座長:吉長成恭 NPO法人シンクバンク研究所 所長 広島国際大学教授
西野正浩
呉市経済部
種村
呉市企画部企画調整課
隆
次長
末重正己
呉市経済部
藤井達也
呉商工会議所
小林暁峯
広島国際大学教授
森下正之
広島国際大学教授
課長補佐
呉地域産業振興センター
振興部
地域振興課
主幹
課長
オブザーバー 末国博文
中国経済産業局
地域振興課
課長
オブザーバー 安部
中国経済産業局
地域振興課
産業施設係長
努
松浦康高
NPO 法人シンクバンク研究所
事務局
海生知亮
NPO 法人シンクバンク研究所
事務局
中原
NPO 法人シンクバンク研究所
事務局
猛
3、調査方法と日時、内容
【会議方式によるヒアリング】
第1回
平成15年10月
9日(木)呉市つばき会館
※ 呉市モデル地域調査の選定理由とプロジェクト説明
PPP・PFIの考え方の説明
主な内容としては、
・ 日本型PFIは、本来のPFIではない。建物を作って終わりではなく、民
のマーケットから永続的なマネーフローがあることが重要。
58
・ キャプティブマーケットは、景気にあまり左右されないため、長期計画が立
てやすい。
・ 企業体のクックチルはあるが、PPPでのクックチルはまだない。
・ 呉商工会議所としては、即効性のあるPPP事業を呉市に要望中。
・ 英国事例をもとに、PPP・PFIの定義と取組みの説明。
・ 英国は民間投資をまねくプロジェクトのPFIしか着手しない。銀行も投資
できるようなプロジェクトを創るべき。
・ 英国では、医療福祉のPFIが増えている。税金で医療本体はまかなうが
建物が古いため、建替えは官だけではできない事業となる。その実行を民に
任せ、民は30年程度で償却できるくらいの利益を得る。病院本体のサービ
ス内容は変わらない。官は金が助かる構図。
・ 今までとの具体的な相違点、クックチルをPPPでやるとここが違うという
説明が必要。また、何をするか中身が問題。
・ 民間ベースで事業化すべき。採算性のあるものがあれば、官が考えつかなか
った形をつくることができる。要は安全、責任、環境、採算性。
【講習会方式によるヒアリング】
第2回
6日(木)広島市中国電力 E-キッチンスタジオ
平成15年11月
※新調理の講習と体験・試食
・ 電化厨房アドバイザー
小川博明氏による新調理の説明・実演・試食。
・ 株式会社生活デザイン研究所
代表取締役
動向についての説明。
59
宮野鼻治彦氏による新調理の
【会議方式によるヒアリング】
第3回
平成16年
2月27日(金)呉市つばき会館
※ 先進事例調査報告と本事業の地域再生構想提案に対する意見交換
主な内容としては、
・ 第1回の地域再生構想提案とその提案に対する各省庁の見解。
文部科学省の見解は、衛生面に問題なく、責任体制が明確ならば、現法でも
対応は可能。
防衛庁は、PFIの導入にあたって、隊員食堂における取組みも可能性とし
てはあるとの見解である。どの分野にPFIを導入するかは、継続的に検討
中。自己完結型の組織のため、現時点で直ちにPFIを導入することは困難
であると考えるとの見解。
・ 産官学プロジェクトとして、呉市にも積極的に検討していただきたい。
・ 全国に先駆けて取組み、中国地域に広めたい。
・ 呉市では提案事業に関してオーソライズされていない。呉市の風土を考える
と、ハードルは高い。事業開始スキームが短期的であれば、なおさら実現は
厳しい。地域の事業者の意識も醸成されていない。
・ 行政サービスの民間委託を進めていくことは、必要。しかし、短期的に全て
クリアしていくことは難しい。ただし、この提案の方向性は正しいのでは。
・ 民間ビジネスにつながると思う。どのような進め方で、協力すればよいか。
60