幼 虫 ~雨の夜に始まる冒険旅行~ 桜の花も散り、野山も緑色に染まってくる5月の始め頃、ホタルの 幼虫は水から離れ陸へ上がる準備を始めます。その頃になると、川の 水温と明け方の気温が同じになっています。雨が降っている夜や降り やんで土が湿っている夜の8時頃川岸のあちらこちらに黄緑色の光を 発しながら幼虫が上陸する姿を見ることができます。よく見るとお尻 の2箇所で光って、まるで目が輝いているようです。ゆっくり動きな がら規則正しく光を放ちます。しかし、敵が近づいたりすると光るの をやめその場にじっとしています。やがて土手の柔らかな土を捜し、 (提供:岩崎一照氏) 土まゆ 時間をかけてもぐりこんでいきます。 土の中にもぐりこんだ幼虫は、液を出しながら体を回転させ、周り の土を固めてまゆをつくります。幼虫の姿をしたまま(前ようと言い ます)約40日過ぎると脱皮をし、クリーム色をしたさなぎに変化し ます。さなぎも黄緑色の淡い光を出します。 さなぎになって約10日後、最後の脱皮です。いよいよホタルとな って飛び立つ日がやってきます。柔らかだった体も次第に固くなり、 6月中旬土まゆの中から陸上へはい出してきます。 (提供:岩崎一照氏) 飛 翔 ~新しい世代へ命を引き継ぐために飛び交う光~ 土美濃加茂市を流れる川浦川とその支流廿屋川では、6月15日か ら20日頃がゲンジボタルの飛び交うピークです。しかし、この時期 も年によって多少の違いがあります。特に5月上旬の気温や雨の降り 具合で幼虫の上陸期が異なってくるからです。 気の早いホタルは、5月下旬に飛び始めます。やがて日を追って飛 び交うホタルの数も多くなってきます。7時過ぎ、あたりが暗くなる 頃、草むらや川岸の木の葉の裏で黄緑色の光が一つ二つと輝き始めま す。その数は増し飛び交うホタルは多くなっていきます。川浦川では 8時から9時頃までの間がホタルのよく飛び交う時間です。一つのホ タルが光り始めるそれに応えるように他のホタルも光始めます。光り 方は雌雄によっても違います。雄のホタルの方がやや短く点滅しま す。だいたい2秒ごとに強くなったり弱くなったりします。 (提供:岩崎一照氏) 盛んに飛び交うのは雄ボタルです。雌ボタルは木や草の陰で光って います。やがて交尾をし、卵を産むため雌ボタルは上流へ飛んでい行 きます。6月も終わるころ、ホタルは新しい世代に命をたくし死んで い行きます。成虫になって約 2 週間の命です。 成 長 交尾を終えたホタルは、川の淵の湿ったコケのある場所に集まっ てきます。産卵です。光りながら卵をコケに産み付けます。一つの ホタルで約 500 個と言われていますが、三和小学校の研究室では、 200 個から 300 個くらい観察できています。 卵は約 30 日で孵化します。体長 1.5mmほどの小さな幼虫です。 卵からかえるとすぐに水面に落ちていきます。幼虫の食べ物は、清 流に住む巻貝のカワニナです。ホタルの幼虫が誕生したころ、カワ ニナも小さな会をたくさん産みます。幼虫の大きさとカワニナの大 きさが同じくらいです。ホタルの幼虫はカワニナにかみつきます。 幼虫につかまったカワニナは体を大きく振り回し、幼虫を振り落と そうとします。幼虫は口から消化液をだし、カワニナの肉を溶かし て食べます。 1 か月ほど過ぎると今までの皮を脱ぎ、一回り大きくなります。 (提供:岩崎一照氏) 脱皮です。幼虫は、はじめはまっ白い体ですが、やがて黒っぽくな ります。こうして上陸するまでに6回脱皮を繰り返し、体長約 2.5 cmに成長します。しかし、十分に餌が食べられずに成長できなか った幼虫は、成虫になれず、もう1年水の中で過ごさなければなら ないのです。
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