4.5S 5S と言えば日本の会社員ならほとんど知っていると思います。 SEIRI, SEITON, SEISO, SEIKETU, SHITUKE の頭文字を採って 5S。 ここ、タイでも、日系を振り出しに 5S が蔓延してきています。 「蔓延」などと云う言い方をすると「良くない事」のように聞こえますが、もちろんそんな悪意を持って言っているわけでは ありません。 ただ、日本では「整理」「整頓」と言うだけで、ほとんどの人が何をすれば良いか分かっています。それでもこの活動の裏 では、現場の長や作業者の「グチ」が聞こえてきます。現場にとって「整理」「整頓」は、物を作る事より難しいのではない でしょうか。 タイでは、ササーン、サドゥアック、サアート、スックラックサナ、サーンニッサイと言ってタイ語の S に相当する言葉を使っ て「ハーッ ソー」と表されています。 日本には、春夏秋冬があって、着る物にしても、寝具にしても、夏用と冬用、さらに春秋用と使い分けなければなりませ ん。季節が順番に廻って来るので、それに対応するように着る物も準備する事ができます。 4 畳半 1 間の下宿(最近ではあまり聞かなくなりました)でも、押入れは付いています。最近の 1 ルームマンションでも、 クローゼットと称して、西洋押入れが付いています。日本にいると当たり前なので気付きませんが、 日本人は、収納する国民なのです。 部屋は狭いし、物は多い。 きちんと整理整頓しなければどうにもならないのでしょう。 私の友人達であるワーカーと呼ばれるタイ人のアパートの部屋を紹介しましょう。 入り口のドアを開けると、8 畳∼12 畳程の広さの板敷きの部屋があります。その奥にトイレがあります。トイレのある小部 屋にはシャワーも付いています。ちょっといい部屋だと、洗濯物を干す事ができる小さなベランダのような物がついていま す。それだけです。 下駄箱を使っている人もいますが、大概は、入り口のドアの外側に靴を脱ぎ捨てています。 ベッドを持っている人もいますが、床に敷物をひいて寝る人も多いようです。部屋の隅に敷物が畳んで置いてあります。 小さな箪笥を持っている事が多いですが、テレビを除くと家具と呼べるのは、それだけです。 タイの季節ですが、三つの季節があります。暑い季節、蒸し暑い季節、ものすごく暑い季節。 当然、冬物はありません。着る物にも寝具にもです。 着る物は、会社の作業着と普通の服です。会社の作業着は、オールマイティで、会社は言うに及ばず、結婚式、お葬式 でもこれで O.K. さて、問題です。 このような部屋で暮らしてきた人達にとって、整理、整頓とは、どのような行動を指すのでしょうか? 賢明な皆様には、既にお分かりの事と思います。 正解は、「捨てる」です。 レストラン等で、ウェートレスがテーブルの上を片付けている時、手にした布巾で、テーブルの上の食べかすを叩き落と すのを御覧になられた方も多いのではないでしょうか。 整理整頓とは、目の前の全ての物を見えない所に移動する事。自分の大切な物以外は、きれいに目の前から削除して しまう事と理解しているようです。 会社で、掃除をしなさいと言うと、怪訝な顔をされます。会社には、「メーバーン」と呼ばれる掃除のオバチャンがいるの です。掃除はその人達の仕事な訳です。 「小学生の時だって、授業の後で掃除をしただろう」と言うと、「そんな事はしない」と答えが返ってきました。 きちんと整理する。ちゃんと整頓する。の「きちんと」や「ちゃんと」を付けて、5S の説明が出来ないものか。と頭を抱えて います。 超一流の日系企業のスタッフから電話がありました。 「先日頂いた、客先提出用のサンプルをもう一回送って下さい。昨日「5S」をしたので無くなりました。」 日系よ、やっぱりあんたのところも……。
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