「プラン」検討過程における諸論点と新政策への期待 ○岡田 秀二 (岩大農) はじめに 新たな市町村森林整備計画や森林経営計画制度の実施を目前に控えているが、「関係者 は依然として後方において様々な方向を見ながら足踏みを続けている」、そんな情景を目 にすることが少なくない。報告は、「再生プラン」検討過程における種々の議論を踏まえ、 そして、改めて「森林・林業基本計画」としてまとめられた今日段階の林政を「再生プラ ン」期林政と捉え、その林政史上における画期性と林政論からする特徴点の整理をし、関 係者の「再生プラン」理解促進の一助としたい。 整理と考察 「再生プラン」期林政の画期性や特徴点は以下の点にある。 ① 「再生プラン」が国家の最重要政策である「新成長戦略」の基軸政策のひとつであ ること ② 政策形成・プロセスのガバナンス化とイノベーションの進展があること ③ 計画制度の分権化・地方主権化が新たな段階を迎えていること ④ 人工林資源の本格的利用段階に入り、路 網と機械による伐出システムのイノベーシ ョンが待ったなしであること ⑤ 政策の実効性確保と重層的成果実現が強く意識されていること ⑥ 森林経営計画制度が創設されたこと ⑦ 論理として「第 3 の道」への方向性があること ⑧ 「日本型フォレスター制度」が大きな位置を占め登場していること ⑨ 産業軸的林政論において、川上から川中・消費者を含めた大産業循環を強く意識し ていること ⑩ 森林組合の役割変更が打ち出されたこと、等である。 報告においては各々の大事な点と思われることを補足したい。また森林経営計画につい ては、掘り下げた分析を示してみたい。 と こ ろ で 、「 再 生 プ ラ ン 」は や っ と 実 施 段 階 に 入 っ た と こ ろ で あ る 。期 待 す る 姿 へ の 歩 み が 遅 々 と し て い た り 、そ の 段 階 で 新 た な 問 題 が 生 じ た と し て も 、そ れ を も っ て 直 ち に「 再 生 プ ラ ン 」や 改 革 を や め に す る と い う こ と に は な ら な い 。森 林 ・林 業 セ ク タ ー と し て 後 が な い 状 況 の 中 で 、多 く の 林 業 経 済 学 会 会 員 も 参 加・議 論 を し て ま と め た も の で あ る 。引 き 続 く 改 良・修 正 の プ ロ セ ス こ そ が 大 事 で あ る 。ま し て や こ の「 再 生 プ ラ ン 」は 、3.11 以 後 の わ が 国 が 改 め て 共 有 す べ き 新 た な 社 会 づ く り へ の 論 理 と 方 法論を携えている。そのことの重要性・先駆性に過小評価があってはならない。 キーワード :森林・林業再生プラン、新成長戦略、森林・林業基本計画、森林経営計画制度 (連絡先:岡田 秀二 [email protected]) 1 森林・林業基本問題検討委員会の議論内容と課題 ―抜本改革なき抜本改革― ○柿澤宏昭(北大農) はじめに 森林・林業再生プランの具体的検討のために設置された五つの委員会の中で、森林・林 業基本問題検討委員会は森林計画など制度的な側面を中心に検討及び方向性の取りまとめ を行った。本発表では、この検討委員会に参加した発表者の立場から議論内容を紹介する とともに、どのようなプラン検討でどのような成果があがり、何が課題として残されたの かについて議論することとしたい。 結果と考察 委員会の課題の一つは持続的な森林管理を支える仕組みの構築であったが、結論から言 えば大きな変革はできなかった。森林計画・施業規制に関わっては森林計画制度・保安林 制度の抜本改革は時間的にも技術的にも困難であったほか、私的所有権が強固に保護され た日本での施業規制の展開がきわめて困難であった。また市町村への分権化によって森林 行政の執行体制や専門性が脆弱となっている課題についても、分権化の流れの中で再構築 を図ることはできなかった。以上の点で森林法体系の改革については抜本改革とはほど遠 いものとなった。こうした中で、新たなゾーニングを含めてマスタープランの位置づけを 与えられた市町村森林整備計画、所有と利用の分離を意識した森林経営計画制度に上述の 課題達成の成否がかかっている。 この可能性を現実化するのは、本プラン検討でのもう一つの大きな課題であった人材育 成である。これまでの林政改革が地域森林行政レベルまでも含めた総合的な人材育成とい うソフト政策にほとんど焦点を当ててこなかったなかで、これに焦点を当てたことが、本 プランを最も特徴づけているといえるかもしれない。多くの欧州諸国がもっているような 体系的かつ実効性のある施業コントロールの制度を構築できないがゆえに、これら諸国よ りより高度な能力を持った人材が必要とされている。森林政策・計画から現場作業までそ れぞれのレベルごとの人材の育成と、これら人材をつなぐネットワーク・相互連携の形成 が今日の最大の課題といえよう。 筆者はこれまで森林ガバナンスの構築の重要性を主張してきたが、多様な専門家の連携 によるガバナンス構築こそがまず求められており、この構築なしには再生プランの実行は 不可能である。そしてこれらガバナンスの構築により、より抜本的な改革への道を開くこ とが期待される。 キーワード:森林・林業再生プラン、森林法、地方分権、フォレスター (連絡先:柿澤宏昭 [email protected]) 2 「森林・林業再生プラン」の課題について ―国産材の加工・流通・利用検討委員会の検討過程から― ○久保山裕史(森林総研) 森林・林業再生プラン(再生プラン)において示された3つの基本理念は「森林の有する多 面的機能の持続的発揮」、「林業・木材産業の地域資源創造型産業への再生」、「木材利用・エ ネルギー利用拡大による森林・林業の低炭素社会への貢献」であり、ここでは木材の加工・ 流通・利用の位置づけが重要であることが示されている。これは再生プランの目標が、木材 自給率50%以上であることを考えると当然のことといえるが、筆者の参加した「国産材の 加工・流通・利用検討委員会(以下、委員会)」が再生プランの推進のために設置された5 つの委員会の中で高く位置づけられていたかということについては疑問を感じている。 筆者は、委員会において、①非住宅分野の需要開拓と製紙原料利用の拡大、②量産と低 コスト高効率乾燥技術の開発・導入による外材に対抗できるKD材生産、③広葉樹を活用し た低コスト製紙原料供給、④林地残材チップを利用した熱利用の拡大、⑤バイオマス発電 では経済性の高い熱電併給を推進、⑥バイオマス燃料の規格設定、ボイラー等の認定(性 能表示)制度の創設、等の提言を行った。これらはおおむね最終取りまとめに盛り込まれ ることとなった。 他方、委員会は2020年の木材の総需要を8100万m3と見込み、国産材利用量の目標を、 製材用で2200万m3、パルプ・チップ用1500万m3、合板用600万m3に設定した。これは2009 年の実績より、それぞれ800万m3、1000万m3、400万m3利用拡大するというものである (森林・林業基本計画では若干引き下げられている)。近年、一部の地域において丸太生産 が拡大しているのは、素材生産事業体の生産力拡大も一因であるが、欧州の事例との類似 性からして、合板産業における地域材利用の拡大や製材工場の規模拡大等の林産企業の革 新による地域材の需要拡大が大きな要因になっていると考える。このことからは、例えば 製材用材需要拡大の目標を達成するためには、単純に考えると丸太消費量10万m3の製材 工場が毎年8つ程度出現する必要があるといえる。 このことは、提言の②の意図するところであり、その実現には施設整備に対する支援策 が不可欠であるが、H23年度には、これまでの定率補助制度から低利融資主体へと大きく 政策の方向転換が行われた。確かに、高率補助によるモラルハザードや補助金の利用にと もなう事業制約等の問題は解消されるかもしれないが、木材の総需要が減少しつつある局 面で、低利融資が投資リスクを十分軽減できるか、今後の動向を見守る必要がある。 パルプ・チップ用材需要の拡大の大部分は、木質バイオマスのエネルギー利用の増加が見 込まれているが、H23年の再生可能エネルギー固定価格買取法の成立により、需要拡大に 向け一歩前進したとはいえ、低利融資でどこまで需要が拡大するか疑問の残るところであ る。また、④と⑤に関連して、熱利用の重要性への理解がようやく広がりつつあるのに対 して、震災以降の電力偏重の流れの中でどれだけ熱電併給を実現できるかがカギとなろう。 最後に、③に関する施策は、里山林再生に関する地域住民の活動支援にとどまっており、 工程表においてもH25年度からの取組とされていることから、今後の大きな課題であると 考える。 (連絡先:久保山裕史 [email protected]) 3 森林・林業再生プランにおける人材育成の議論と養成活動 ○枚田邦宏(鹿大農) ・奥山洋一郎(鹿大演) 1, 基本法林政と森林・林業再生プラン −担い手変化と人材育成− 本報告では、基本法林政から森林・林業再生プラン(以下再生プランと略す)までの政策の担い手の 変化、それに従って人材育成の対象、課題がどのように認識されてきたかをまとめ、最後にその視点か ら現在進行中の人材育成のための養成活動の課題について述べたい。 1964 年に成立した林業基本法林政のもとでは、森林造成を積極的にしていた中小の自営的農林家を担 い手として措定し、中小森林所有者の協同組合である森林組合を自営的農林家の代わりとして育成して いくことになる。一部の林家では、育林過程における枝打ちを実施することにより、立木の価値をたか め、収穫時の収入を拡大する動きのように、育林を中心に日本林業の発展方向と考えられたりした。 しかし、住宅にもとめられる機能、要求の変化のため、育林過程の努力が生産物である素材の価値の 増大につながらなくなり、規模の論理による木材加工における生産構造の変化により、原材料である素 材に求められる性質は、高品質、高価格より均質性や安定的供給性となった。これを実現するのは、伐 採・流通過程の技術発展と生産性の向上に求められ、生産事業現場の搬出の基盤整備(路網)と面的な 広がりが必要となる。さらに、安定的な素材供給の範囲は、木材加工産業の規模拡大が決定的となり、 新たな素材流通体制が求められることとなる。その結果、個別生産事業体の個々の生産だけではなく、 一定の面的広がりをもつ範囲での生産の計画性が求められる。また、立木伐採が森林の公益的機能に少 なからず影響を与えることから、地域の中において生産と環境との調整は必要であり、これをコントロ ールするしくみも求められる。今日、基本法林政で担い手であった森林資源の造成者たる森林所有者は、 所有地の森林資源(資産)の処分決定権者ではあるが、生産の担い手としては、素材生産事業体、素材 生産基盤を集団化、集約化する事業体(森林組合)である。さらに、森林のもつ木材生産と公益的機能 の調整をいかに行うか、調整をするどのようなしくみが必要であり、そのしくみを動かしていく人材と はだれであるのかを明確にすることが求められている 2,再生プランでもとめる人材育成と議論 再生プランでは、 「森林施業の集約化、路網の整備、必要な人材の育成を軸として効率的・安定的な森 林経営の基盤づくりを進める」としており、人材育成の改革の大きな柱となっており、大きく2つに人 材の内容を区分できる。1つは、木材生産を担う「意欲と能力を有する者」である各事業体等で従事す る素材生産技術者(素材生産、路網作設)や素材流通コーディネーター、森林施業プランナーの能力を 高め、低コストで生産できる生産体制を作っていこうというものである。もう一つは地域(市町村程度) の森林のマスタープランを作成支援するとともに、実行者を指導するフォレスターを新たに育成しよう としている。 委員会の議論では、時間をかけて議論したのは、新たに作ろうとしたフォレスターと森林経営計画を 担う森林施業プランナーであり、論点は、フォレスターの役割と権限、資格や現時点で担えるのはだれ か、森林施業プランナーは、既存の施業プランナーとの違いやその担い手についてであった。 3,再生プランにおける人材育成の養成活動 特に准フォレスター研修を通して 再生プランの実現の主要な政策手段は、森林計画制度による政策誘導によって行おうとしている。 今回の再生プランの議論においてゼロベースで議論をはじめるという当初の出発とは異なり、具体的な 実現のために政策の具体化は同制度に矮小化された。そのため、准フォレスター育成内容は、理念とし てフォレスターの役割や像を理解させる一方で、計画制度の中の市町村森林整備計画や森林経営計画の 策定に関する実践研修が中心になってしまっているという問題がある。 (連絡先:枚田邦宏 [email protected]) 4 「基本法林政」50 「基本法林政」50 年の宿題と「森林・林業再生プラン」 ○川村 誠・由水 葵(京大農) 1 問題の所在 「森林・林業再生プラン」(以下、「プラン」)が論議された 2010 年は、奇しくも「林業基本 法」制定に向けて「林業基本問題調査会」が設置された 1960 年から 50 年目に当る。かつて、 高度経済成長を迎えて、林政はもとより、生産流通から消費に及ぶ実体経済のあり方そのもの を見直す機運の中で、広範囲な議論を経て「基本法林政」はスタートした。社会経済の諸条件 が大きく変わった現在、 「基本法林政」そのものを見直す必要があることは論を待たない。しか し、現行の「森林・林業林業基本法」は、謂わば、 「基本法林政」に環境というキャップを被せ たにすぎず、グローバル化する時代に対応したものではない。政府内の「プラン」に関わる論 議は、この時代性を踏まえた林政改革への道を閉ざしたまま、森林計画制度の論議に終始した。 本研究においては、 「基本法林政」50 年という視点から、 「プラン」とその論議が等閑視した課 題を明らかにしたい。 2 「基本法林政」が目指したもの 当時、拡大する国内市場、拡大する地域較差に対し、森林・林業における再生産拡大という 生産力視点を前提とした政策であり、その生産力の担い手として措定されたものが、旧「農業 基本法」における「自立経営農家」に対応した「自立経営林家」 ( 「農家林家」)の育成であった。 3 「基本法林政」50 「基本法林政」50 年の道程 年の道程 (1)90 年代以後、日本林業を巡る資源と市場に大きな変化があった。世界的に資源利用は、 天然林から人工林へと急速に変化している。拡大造林による人工林造成は、日本を資源国に押 し上げる結果となった。しかし、日本の木材産業は国産材・輸入材を問わず、国内向けに偏っ た市場を形成してきた。 国内市場自体が縮小する中で、新たな市場政策が必要となっている。 (2)何より、人工林経営の担い手について、林政は政策的な誤謬を重ねてきた。兼業化の道 を歩む農家の現実と「農家林家」育成とは相いれない。 「林家」に代わる林業経営体の育成を怠 った上に、森林組合への過度な政策期待が「基本法林政」の破綻を招いた。 4 劣化するガバナンス 劣化するガバナンスと林政 ガバナンスと林政 明治政府以来、日本の政策形成は官僚主導であって、民主導(「政治主導」)であったことは ない。戦後民主憲法下においても変わるところはなく、林政においても「生産力増強計画」は じめ、それに続く「基本法林政」においても変わらなかった。しかし、現在、時代認識を欠落 させたまま、 「基本法林政」の延長上に「プラン」を設計することに無理がある。まして、森林 計画制度の手直しに林政の課題を押し込めるが如き政策のあり様には、かつての官主導の政策 形成の片鱗すら認められない。今や、林政におけるガバナンスが問われている。 5 「プラン」後 「プラン」後に托された課題 以上、 「基本法林政」50 年の宿題とは、日本林業における経営体の育成に他ならない。 「プラ ン」の論議では、 「最小流域単位」や「経営計画」に、新たな踏み出しが試みられた。しかし、 基本的な法制度改革、とりわけ担い手のあり方を巡る議論が必要である。ただし、その前提と して、現代に持続的な経営を実現するための新たな生産力視点に立った研究が求められる。 (連絡先:川村 誠 [email protected] ) 5 ドイツからみた林業基本法と再生プラン論議の特徴づけと評価 石井 寛(元北海道大学) はじめに 報告者はこれまでの比較森林政策の研究から,森林政策を資源・環境政策として捉えている。 森林政策のこうした性格は先進諸国が 1970 年代以降,高度情報化社会,そして環境問題や自然 保護に対する関心が高まった「エコロジー時代」に入ったことから強まっている。ドイツの森林 政策は世界の中でそうした性格を典型的に示すものである。一方,我が国の森林政策は林業基本 法の構成,森林・林業基本法の主張,さらには今回の「森林・林業再生プラン」の論議をみても, 森林の木材利用機能を偏重した産業政策的性格に強く刻印されている。 本報告はドイツとの対比において,我が国の林業基本法と再生プラン論議の特徴付けとその評 価を行うものである。 林業基本法とドイツ連邦森林法 林業基本法は 1964 年に制定されており,その構成は産業政策としての森林政策のあり方を典 型的に示している。政策の目標として,林業の総生産の増大を期すとともに,林業の生産性の向 上を目途として,あわせて林業従事者の向上を図ることに置いている。林業基本法の特徴は林業 の担い手として小規模林業経営を措定し,その規模拡大によって林業構造の改善を実行しようと していることである。 林業基本法に遅れて 11 年後に制定されたドイツ連邦森林法は森林には木材利用機能,環境保 全機能,レクリエーション機能があることから,森林を維持し,必要に応じて増加させるととも に,秩序に即した森林施業を持続的に確保することを目的としている。そのためには公共の利益 と森林所有者の利益との調整を図ることを求めるとともに,森林転用の許可制とともに森林の立 ち入り権を規定している。こうした原則は小規模森林所有者を含めて全ての森林所有者に課せら れていることに改めて注目すべきである。 経営規模論的に林業経営をみた時に,1000ha 以上の大規模経営,200ha 以上の中規模経営, 200ha 以下の小規模経営という区分が一般的であり,小規模経営の中心は 50ha 以下の農家林で ある。さらに林業経営は保続経営を原則としており,専門教育を受けた技術者による直接的な経 営実行あるいは間接的に経営指導を受けることを想定している。他方,農家林は農業と林業との 混合的利用・経営であり,林業経営の論理だけでこれを見ることは出来ない。さらには近年では 林業経営に関心を持たない小規模森林所有者も増えている。こうしたドイツ的理解からすれば, 小規模林業経営を林業の担い手とする考え方は理解不能であり,こうした捉え方が一時,我が国 である程度の市民権を得たのは農地解放後の一時的な造林活動の進展に囚われたからである。 (連絡先:石井 寛,069-0802 江別市野幌寿町9-4,[email protected]) 6 森林組合改革・林業事業体育成検討委員会の議論内容と課題 ○堀 靖人(森林総合研究所) はじめに 2010 年 12 月に「森林・林業再生プラン」(以下、再生プラン)が公表され、「森林・ 林業再生プラン推進本部」の下にその具体的な対策を検討する 5 つの検討委員会が設置さ れた。「森林組合改革・林業事業体育成検討委員会」はそのうちの 1 つである。 本報告では、同検討会で議論になった諸点を取りあげて、それぞれの内容の概要と議論 の着地点を示すと共に、その意義と今後に残された課題について検討することを目的とす る。なお、同委員会では、森林組合以外の林業事業体育成に関する議論も重要であったが、 本報告では森林組合に関する議論に絞ることにする。 研究の方法 林野庁のホームページで公表されている「森林組合改革・林業事業体育成検討委員会」 での配付資料、議事録と同委員会に委員と参加していた際の記録を元に、同委員会での論 点の整理と論点の意味するところを分析する。また、論点として欠落していた部分につい ても明らかにする。 結果と考察 周知のように再生プランの最大の目標は木材供給の増強にある。それを実現するプロセ スとして、本来ならばどの森林所有者層が生産力に貢献するかが議論されるべきである。 今回の再生プランにおいても、戦後林政の伝統に則り中小林家も生産力増強に動員される こととなった。ただし、中小林家は能力と意欲のないものとして扱われ、生産力化するた めには、その森林を経営する権限を森林組合や林業事業体、大規模林家に委譲させるよう に誘導しようとした。つまり、その誘導のための枠組みが森林経営計画で、その実行部隊 が森林組合という関係であるといえよう。 一方で森林組合は地域資本として地域に密着した多様な事業を展開し、実績を積んでき た。だが、再生プランではこうした実績は、森林組合を施業集約化、合意形成、森林経営 計画作成に専念さるための邪魔となる。員外利用の厳格化(本業重視)、イコールフッテ ィングは、森林組合に上記に専念させるための理屈として位置づけられよう。 検討委員会の議論を経て、森林組合の改革の方向性として森林組合の最低眼の役割が確 認されたと共に、その地域的多様性や個々組合の事情は尊重されることとなった。他方、 木材販売など協同組合としての機能に対する評価など議論から欠落した部分もあった。 キーワード:森林・林業再生プラン,森林組合, (連絡先:堀 靖人 horijas@affrc.go.jp) 7 「森林管理・環境保全直接支払制度」の特徴と論点 ○ 佐藤 A7 宣子(九大院農) はじめに 「森林・林業再生プラン」に基づく制度変更の中で,森林施業計画から森林経営計画への変 更及び計画策定者を対象とした「森林管理・環境保全直接支払制度」(以下,森林直払い制度) の導入は大きな変更点である。直接支払い制度は,支払い対象(経営規模や形態、生産方法な どの特定)や資格要件,支払い水準,交付対象者の行動制約を設定できる制度であり(飯國 2011) , 本報告は,林政史上はじめて導入される森林直払い制度の特徴と論点の考察を目的とする。 研究方法 林野庁企画課,同整備課および熊本県森林整備課の行政資料を基に, 「森林管理・環境保全直 接支払い制度」 (その中心である森林環境保全整備事業の間伐)をこれまでの造林補助金体系お よび他直接支払い制度を比較した。 制度の仕組みと特徴 これまでの造林補助金は, 「標準単価(県が標準工程や労賃水準等を基に算定)×(1+諸掛 率)×事業量×査定係数(森林施業計画森林の間伐では 170)×補助率」で算定されていた。 これに対して,新たな事業は,①支払対象:森林経営計画の作成者に限定,②資格要件:60 年 生以下の間伐では1計画当たり最低 5.0ha 以上かつ一定量(間伐実施面積 1ha あたり平均 10 m3 以上)の搬出,③支払い額:国が標準となる工程を設定し,都道府県が国の標準工程を基に, 賃金・樹種・平均径級等に応じて標準単価を設定,間伐については車両系と架線系を設定,搬 出材積に応じた支払,標準単価の一部である間接費は雇用の有無と雇用条件(所有者の自伐・ 一人親方と雇用者か,保険加入等の労働条件)によって率が異なる,④交付申請のために森林 作業道整備と年度別計画等の提出が必要,といった特徴がある。 以上のように, 「集約化」計画を含む経営計画の策定とそこでの間伐搬出を促進(=生産量の 増大)するという目的が強く意識された制度となっており,小規模所有の自営林家が多い熊本 県にとっては自伐の減尐が懸念されている。規模拡大や「集約化」といった構造政策的なハー ドル設定という点は,平地とくらべて生産条件が悪くコスト増加分の一部が交付される農業の 中山間直接支払においても第 3 期対策でも追加されている。条件不利性の緩和という視点から みると,車両系集材と架線集材を分けて単価設定するという点は条件不利地(搬出条件の悪さ, 環境配慮の必要性=位置条件)の支払単価が高くなる仕組みとなっている。同時に,1計画地 からの下限間伐面積と下限搬出量の設定ならびに支払水準が搬出材積に応じた標準単価が設定 されるため,人工林率や齢級構成,地位などの資源構成や搬出条件のよい計画地で交付額が大 きくなる制度設計となっており,優良林地のみが対象となる可能性もある。今後,制度を評価 するためには実証的な研究が必要である。 引用文献 飯國芳明「国民合意に基づく制度設計のための論点整理」 『農業経済研究』82-4,2011 年,245 ~250 頁 キーワード:直接支払い,森林・林業再生プラン,森林経営計画,条件不利地域対策 (連絡先:佐藤 宣子 [email protected]) 8 森林の信託性についての序論的考察 ○山本 伸幸(森林総研関西) 課 題 と方法 今般の森林・林業再生プランの議論においても同様だが,経営受委託の遙か彼方にあるエル・ ドラードとして,森林の信託はしばしば言及される。もちろん周知の通り,森林組合法九条は「組合 員の所有する森林の経営を目的とする信託の引受け」を組合事業の一つに掲げており,僅かなが ら事例もある。また,2006 年の信託法全面改正や金融関連企業の森林問題へのコミットメント増加 などの要因もあって,森林信託の言葉を耳にする機会も最近多い。しかしながら,森林の信託性に 関する考究は少なく,その森林経営・管理に対する意義などの実像は依然として不鮮明なままで ある。本報告では,これまでの森林の信託性に関する議論および最近の実例を踏まえ,序論的考 察を行うことを課題とする。 森林の信託性に関するこれまでの議論 信 託 の法 概 念 はイギリス衡 平 法 を起 源 とし,アメリカで商 事 的 色 彩 を強 めつつ発 達 した。日 本では 1922 年に,英 米 法のほかドイツ法系の民 法体 系との調 和等 も加 味し,信託 法が制定さ れた 1) 。林業 界でもこの時 期,森林 信 託導 入の気運 が高まりを見 せた。その結実の一つが,島 田錦 蔵の日本 森 林信 託 会社 法 要綱 案である 2) 。戦 後,1951 年森 林 法は森 林組 合 事業の一 つとして,森林の経 営を目 的とする信 託を新たに設けた。この条 文は 1978 年森 林 組合 法にも 引き継がれるが,事業 実 績自 体は長らく皆 無であった 3 ) 。はじめて本 法に基づく森 林 経営 信 託 事 業 が実 施 されたのは,1987 年 に森 林 組 合 法 が改 正 され,分 収 造 林 ・育 林 契 約 による林 業 経 営 ,森 林レクリエーション事 業を目 的とした信 託が認 められたことによる。とはいえ,わずか 2 組合の実 績に止まった 4) 。 近 年 の動 きと小 括 近年,信 託事 業に新規 着 手する森 林組 合が現れた。その 1 つである三 次 地方 森 林組 合の 事 例では,生 産 森 林組 合 の信 託 に際 し合 同 会 社を設 立するなど新たな試みも見 られる。担当 者への取 材からは,信 託による事業 の安定 性に加え,手 続きの透 明 性の重 視が特 徴づけられ た。本 事 例は,所有 者との信頼 関 係 醸成 を前 提とするなど,広 範な適 用に致 命的 問 題は残す が,森 林 経 営 信 託 を商 事 的 性 格 から民 事 的 性 格 ,公 共 的 性 格 へと位 置 づけ直 す契 機 という 点 で評 価 できる。かつて島 田 は「森 林 財 産 」の性 質 解 明 を信 託 研 究 の本 旨 と定 めた。本 報 告 はこの島田の問いへの,現 代からの再接 近とも言える。 引用文献 (1)新井誠・神田秀樹・木南敦編『信託法制の展望』日本評論社,2011 年,など,(2)島田錦藏「森林の信託 性に關する二,三の検討」『林學會雑誌』Vol.15-3,1933 年,177~186 頁,(3)小 畑 勝 裕 『森 林 信 託 につい て』地 域 社 会 計 画 センター,1984 年 ,(4) 枚 田 邦 宏 「 森 林 組 合 による 地 域 の 森 林 管 理 に 関 する研 究 」 『林 業 経 済 研 究 』No.129,1996 年 ,159~164 頁 (連絡先:山本 伸幸 n.yamamoto@affrc.go.jp) 9 森林の所有と経営の分離に関する一考察 ―北海道東部地域の調査を踏まえて― 立花 敏(筑波大) 研究の目的と方法 持続可能な森林管理を実現するために,森林の所有と経営の関係に再考が求められている。 「森林・林業の再生に向けた改革の姿」において「意欲と能力を有する者への森林経営の委託 を進めること」(p.7,p.11)の必要性が明示され,また外国資本による国内森林の買収の動き がクローズアップされている(「平成 23 年版 森林・林業白書」57 頁)。本報告は,森林の所 有(権)と経営(権)と利用(権)に着目し,主に北海道東部地域における事例調査に基づき, 分収育林等を取り上げて持続可能な森林管理を実現するための課題に接近したい。 研究方法としては,2011 年 8 月~10 月に北海道森林整備公社や森林組合,森林所有者等に 対する聞き取り調査と,得られた資料等を用いた文献・資料調査に基づく。 森林所有者の人工林経営 筆者らが 2009 年度に行った森林所有者へのアンケート調査において,北海道を代表する人 工林地帯である東部地域では,林業の後継者が決まっていない所有者が大半を占め,所有林の 売却を考えている者も少なくないという結果を得た(立花・駒木,2010)。このことは,例え ば再造林未済地の発生に直結することとなり,中長期的には森林管理の放棄や粗放化の蔓延に 結び付くと危惧される。他方,社有林や一部の個人所有者への集積という流動化を伴う動きも 現れ始めている。こうした状況下で,森林ないし林地の所有権と経営権の分離等により誰かが 適切に管理しなければ,持続可能な森林管理を行えない地域は今後に拡大すると考えられる。 分収育林に見る課題 こうした状況への手立てとして,第三者が森林管理に責任を持つという仕組みが考えられる。 米国やニュージーランド等では,森林投資・管理会社(TIMO)や不動産投資信託会社(REIT) による森林の買収や管理が展開し,投資を伴う第三者の参画が広まっている。それは特に 1990 年代以降に世界的に拡大を見せている。他方,日本では分収林特別措置法施行規則(1983)を 契機に民有林の分収造林や分収育林が 1980 年代に広まった。北海道では森林や緑への関心や 環境貢献の認識の広まりを背景に,一面的には環境貢献という出資者の費用負担という意味合 いを持って展開した。しかし,分収契約の満期を迎え,低い材価のため元本割れする収益分収 権も発生し,当初設計の事後評価を含む制度の再考が求められる。森林所有者・管理者は施業 や収支に明確なシナリオを示し,出資者は環境貢献か投資かという目的の顕示が必要と言える。 引用文献 立花敏・駒木貴彰(2010)北海道東部における人工林経営の現況と課題―森林所有者アンケー ト調査結果を元にして―,山林 1517: 26-35. (連絡先:立花 敏 tachibana.satoshi.gn at u.tsukuba.ac.jp) 10 久万広域森林組合の集約化施業と「森林・林業再生プラン」 泉 尚行(京大農) はじめに 「森林・林業再生プラン」において、 「集約化施業」は政策推進の切り札として位置付けられ ている。しかし、集約化が単なる施業委託の集合にとどまるのか、あるいは新たな林業経営モ デルとして展開可能なのかについて検証が必要である。今年度より政策の根幹を成す森林経営 計画制度や特定受託者制度が創設され、その概要が明らかとなってきた。全国的にみて、集約 化の主体が森林組合である場合が多いことから、本研究では久万広域森林組合の集約化施業を 事例に、集約化施業の課題について整理し、 森林経営計画制度の実行可能性について検討する。 調査方法 久万広域森林組合は、既に 2002(平成 17)年度より集約化施業を積極的に推進してきた。本 研究では、平成 17 年度から平成 22 年度までの実績について資料を収集した。さらに、従来、 久万林業の特徴であった自伐林家との関係について検討を加えた。その結果を踏まえて、森林 計画制度に基づく集約化との比較検討を行い、本制度への移行に係る問題を明らかにした。 結果と考察 平成 17 年度から平成 22 年度末までの集約化施業の実績を図 面積(ha) 1に示した。集約化施業の対象となる長期管理委託契約の実績 民有林 43,010 は、契約数で 940 名(内組合員 627 名) 、面積で 9,018ha(管内 組合員所有林 23,546 民有林の 21.0%)であった。特に、平成 20 年度以降施業計画 委託契約林 9,018 整備実施林 1,881 の弾力的運用(いわゆる房状の施業計画)を用いることで、契 約数、面積ともに大きく伸びた。組合員の参加率は 3,211 名中 627 名(19.5%)であった。集約化施業による整備実施状況は、 契約数で 361 名、面積で 1,881ha であるが、管理委託契約に対 図1 集約化施業の実績 注1:平成 22 年度末累計 注2:組合内資料より作成 する整備実施割合は契約数で 38%、面積で 21%と低位に留まっている。以上から、集約化施業 の課題は、①組合員の参加率が低いこと、②契約したにもかかわらず整備未実施の所有者と山 林が多く存在していること、の 2 点である。特に、②については今年度から 3 年間で 500 件以 上の契約更新を控えており、森林所有者の動向を注視する必要がある。契約更新の成否によっ ては、集約化施業を継続的に実施していく上で大きな障害となる可能性が高い。 森林経営計画制度への移行に係る課題として、補助対象となる集約化条件が難化することに 加え、①事務処理や現場管理等の事業実行能力が限界を迎えていること、②経営委託の契約締 結へのハードルが施業委託のそれに比べ高く、経営委託の締結に関わるノウハウが蓄積されて いないこと、の 2 点が指摘される。当地域では年々自伐林家の活動が弱ってきており、組合の 集約化施業を中心とした森林整備が必要とされるが、森林経営計画制度への移行は容易ではな いと考えられる。 (連絡先:泉 尚行 [email protected]) 11 流通視点からみた新たな政策課題 ―原木市売市場の分析から― 下田 佳奈(京大農) はじめに 「森林・林業再生プラン」では,安定的・効率的な流通システムの構築や,物流・情報 流の両面における各主体の連携の必要性について言及されている が,総じて,増産すれば 輸入材のシェアーを国産材に代替できるとの思惑が強い.さらに,「国産材の加工・流通・ 利用検討委員会」では,効率的な流通体制整備の一環として,中間土場の整備や木材搬出 のための大型トレーラーの活用,路網の整備が提唱されているが,「新生産システム」を 引き継いだ政策となっている.何れも,国産材流通の現実に踏み込んだ具体的な政策とは なっていない.何より,国産材供給が増えた場合の向かうべき流通チャネル,ひいては摑 むべき需要を明確にする必要がある. 1 研究方法 国産材製材において,新設の大型工場はじめ在来の小規模工場に至るまで, 原木市売市 場からの原木調達の比重は大きく,未だ市売市場から得られる情報量は多い.しかし,市 売市場の構造とりわけ椪仕訳や買手間のシェアーに大きな変化があり,市場の役割(「市 場の競争構造」)は大きく変化した.本研究では,市売取引のデータ分析(茨城県森連・ 大宮共販所)によって,国産材流通の現状からみた政策課題を明らかにしたい. 2 結果と考察 (1)市売市場における取引については,1990 年代から 2000 年代にかけて,取引椪の規 模の拡大,取引単価の幅の縮小といった変化がみられた. 主要な買手の入れ替わりも起こ った.スギ 3m20-30cm を中心に,一椪の規模が 50 ㎥を超える椪も多数みられ,こうした大 規模椪での取引が市場取引の中心を占めている. (2)大口の買手は大規模取引椪を活用した原木調達を行っているが,買手ごとの 購買内 容に着目すると,それぞれの買手は,特定の種類の椪(樹種,長さ,径級)を集中的に購 入する傾向がある. (3)しかし他方で,小規模椪を購入する買手も 依然として多数存在している. 以上のことから,市売市場は従来以上に,買手のニーズに合わせて原木の仕訳,取り揃 えを行う機能を重視されるようになっている.同時に,原木の在庫機能も果たしている. 原木市売市場を経由せずに中間土場を活用する場合であっても,原木の仕訳を行い,必要 に応じて原木を取り揃え,適宜提供できるように在庫を行う機能を,流通のいずれかの段 階が担う必要があることに留意する必要がある. こうした市場構造の変化やその背後にある製材工場の変化への対応 策として,今後,市 売市場の再編を通じた新たなストックヤードの形成も視野に入れる必要がある. (連絡先:下田佳奈 [email protected]) 12 森林・林業再生プランによる人材育成の最前線 ―准フォレスター研修の試み― ○藤野 正也(元京都大学大学院農学研究科) はじめに 森林・林業再生プランが公表され、様々な議論が行われたが、人材育成に関する委員会 が設けられ、これからの林業に求められる人材像についての議論が行われた。中でも関係 者の関心を集めたものの一つにフォレスター制度が挙げられる。人材育成委員会において 議論が行われ、その内容が公表されてきた。この中で、フォレスターを含めた人材育成マ スタープランが作成され、今年度からはこのマスタープランを実行に移す段階になってい る。本報告ではフォレスター育成に向けて今年度より開始されている「准フォレスター研 修」について、カリキュラム等を紹介すると共に、本研修の意図を明らかにし、我が国林 業界における人材育成の方向性を論ずる。 准フォレスターとフォレスターの関係 林野庁ではフォレスターを森づくりのマスタープランを作成し、実行に向け指導し得る 技術者と位置づけている。しかし、我が国にこのような人材が豊富にいるわけではなく、 フォレスター候補を見つけ出し育成していかなければならない。そこで、将来のフォレス ター候補となる者を対象として研修を実施し、その研修修了者が「准フォレスター」とし て各地域でフォレスターに準じた役割を当面担うこととなっている。 准フォレスター研修の概要 准フォレスター研修は「日本型フォレスター育成事業」の一環として本年度より開始さ れている。全国 7 カ所で開催され、都道府県職員(林業普及指導員)および国有林職員の 約 450 人が受講している。全 10 日間のカリキュラムが組まれており、「市町村森林整備計 画の概要」「ゾーニングと森林施業の考え方」等の講義、「森林施業の実行監理演習」「森 林整備企画演習」「森林経営計画作成演習」等の演習が行われている。 研修の目的・意図 研修では、新しい市町村森林整備計画を作成するために必要な、森林施業、路網、 作 業 シ ス テ ム な ど に つ い て の 基 本 的 な 考 え 方 を 教 え 、フ ォ レ ス タ ー と し て の 心 構 え を 身 に つ け さ せ る こ と を 目 的 と し て い る 。特 に 、こ れ ま で 形 式 的 に 作 成 さ れ て い た 市 町 村 森 林 整 備 計 画 等 に 実 効 性 を 持 た せ る た め の 意 識 改 革 に 力 点 を 置 い て い る 。研 修 の ス タ イ ル は 上 意 下 達 の よ う な 講 義 形 式 で は な く 、技 術 を 伝 搬 す る 研 修 で も な い 。理 念 を 説 き 、国 や 都 道 府 県 の 枠 を 越 え て 議 論 さ せ る こ と で 、自 分 で 考 え る こ と が で き る 人 材 の 育 成 を 目 指 し て い る と こ ろ に 、森 林・林 業 再 生 プ ラ ン の 方 向 性 が 表 さ れ て い る と 考 えられる。 (連絡先:藤野 正也 [email protected]) 13 林業普及指導事業と日本型フォレスター ○井戸田 祐子((株)自然産業研究所) 1.はじめに 「森林・林業再生プラン」を受け、人材育成検討委員会では、持続可能な森林経営を先 導していく役割を担う存在として、日本型フォレスターの創設が議論された。日本型フォ レスターの主たる担い手のひとつとして、都道府県の林業普及指導員が挙げられている。 本報告では、林業普及指導事業の展開・現状と日本型フォレスター導入に向けた取り組み 状況から、林業普及指導員を日本型フォレスターへと移行させていく上での課題について、 検討したい。 2. 森 林 ・ 林 業 再 生 プ ラ ン と 日 本 型 フ ォ レ ス タ ー 「森林・林業再生プラン」の実現に向けた検討は、森林計画制度の改正と人材育成の 2 つが大きな柱となっている。「人材育成検討委員会最終とりまとめ」では、日本型フォレ スターに求められる役割として、「市町村森林整備計画の策定支援を通じて地域の森林づ くりの全体像を描き、併せて市町村が行う行政事務の実行支援を通じて森林所有者等に対 し指導等を行う」とされている。また、「フォレスターとは、森林の取扱い等の計画作成 や路網作設等の事業実行に直接携わり、指導等を行うなどの実務経験を基礎とし、長期的 視点に立ち、目標をもって森林づくりを計画し、的確に指導できる技術者」とされている。 日本型フォレスターは、平成 25 年度以降の認定開始を目指すこととされているが、それま での間、森林計画制度改正に伴う当面の市町村森林整備計画の一斉変更や森林経営計画の 認定等の支援は、研修を受けた都道府県職員および国有林職員(准フォレスター)が担う こととなっている。平成 23 年度より、主に都道府県の林業普及指導員を対象に「准フォレ スター研修」が開始されている。 3. 林業普及指導事業の現状 林業普及指導事業の見直しは直近では平成 16 年に行われた。この見直しは、普及事業の 重点化・効率化や組織のスリム化を推進することを目的とし、林業普及指導員への一元化、 林業普及指導事業交付金の縮減等が行われ、職員配置や普及指導手当の支給などが各都道 府県の裁量に任されることとなった。この制度見直しを受けて、林業普及指導員の専任化 の方針を取った都道府県がみられるものの、全体としては林業普及指導員の数は減少し、 兼務化が進み、業務量の増加がみられる。 4.課題 現行の林業普及指導員が、日本型フォレスターとして「長期的な視点に立ち、目標を持 って森づくりを計画し、的確に指導できる技術者」として本来的に機能していくためには、 在任期間の長期化や指導に対する権限の明確化、予算的な裏付けなどの対策の検討が必要 と考えられる。 キーワード:日本型フォレスター,人材育成,森林・林業再生プラン (連絡先:井戸田 祐子 idota@ri-nc.co.jp) 14 林家経済調査・林業経営統計調査の変遷と分析 ―活用意義と課題― ○根津 基和(東京農業大学生物資源開発研究所オホーツク実学センター ) Ⅰ.はじめに 林家経済調査・林業経営統計調査(以後、必要に応じ本統計調査ないし本統計と省略する) は、林家や林業経営の簿記的内実を毎年度(2008 年以後は5年毎)において把握する全国 的標本調査であり、属人調査としては農林業センサスに匹敵する重要さを持っていた。し かし、その利用にあたっては、時系列的難題を背負った、まさに頭を抱えるべき資料と筆 者は考える。ここでは、本統計調査の変遷を追いかけ、いかにして利用を図るべきか、そ の利用上の課題を指摘したい。さらに、その利用上の課題を指摘するために若干の分析を 試みた。 なお、本報告は本格的な分析を加えるための予備的整理として提示したい。 Ⅱ.方法 第一に、 林家経済調査報告(1964~2001 年)・林業経営統計調査報告(2002~2008 年[以後5年毎])の変遷を利用者の立場から概観する。 第二に、林家経済・林業経営体の推移について分 析し、統計的結果が本統計に今後、どう 影響し得るのかについて、推考した(あくまで可能性の一つとして考えられ得る範囲での こと)。 Ⅲ.結果と考察 これまでの、変遷の経緯をふまえれば、「林家経済・林業経営」をどの範囲と見なすかは 可変であり、統計的連続性が考慮された不動な定義づけとはなっていない。そのため、極 論すれば 今後、500ha 以上層のみを林業経営体と再規定し、本統計調査を今まで以上に 圧縮することすら可能といえる。これは、過去に零細階層(1~5ha,5~20ha)調査 を事実上廃止してしまった経緯に基づく。また、統計的な推移からも分析的な裏付け が可能である(あくまで可能性の一つとして)。 かつて、「林家経済」は山林所有・保有者のなかから自立経営を営む者の出現をもっ て、山村経済発展(ないし体制温存)に向けた実績・成果とされていた。しかし、現 段階の「林業経営」は、山村経済のいかほどを温存しえるのか不明な統計となりつつ ある。大切なことは、かつて林業経営の動向が山村経済全体を反映・代表し命運を左右 する存在であったという事実である。大規模階層に統計的視座を限定すること自体が 懸念されることだが、「簿記式統計」が山村経済一般を描写しきれないとするのであ れば、新たに生産=「簿記」以外の記帳をし、山村領域把握に努めなければならない。 私なりには、山村経済一般を描き得る「家計」把握の補足こそ現段階に必要な統計手 段ではないかと考えている。 引用文献 (1) 「林家経済調査報告」,「林業経営統計調査報告」,各年次 キーワード:林家経済調査、林業経営統計調査、山村経済 (連絡先:根津基和 m3nezu@bioindustry.nodai.ac.jp) 15 山村集落の展望をどう描くか ―集落調査結果とセンサスデータによる試み― ○垂水 亜紀(森林総研四国) はじめに 「限界集落」という言葉が登場してから20年が経っている。この言葉はマスコミにも取 り上げられることが多く、山村の疲弊した状況を多くの国民に知らしめる効果はあったが、 逆にその基準に数値的に該当している集落住民や自治体に対して、誇りや希望を失わせる 結果も招いている (1)本報告では、そういった「限界集落」該当集落を多く抱える高知県N 町を対象にして、住民を中心に今後の展望を描いていくための目標となるシナリオの策定 を行うことを最終目的とし、そのために必要な集落の特徴(強み)を示すデータや調査項 目の精査を既存研究も踏まえ、検討した。 調査方法 N町の社会福祉協議会が各集落で主催するデイサービスに参加し、集まった高齢者に対 して聞き取り調査を行った。調査項目は①集落の現況(戸数、空き家等新規居住可能戸数、 独居後期高齢者数、若者(子供)の数等)②住民の生活(買い物・通院・通勤・通学、薪利 用)、③集落の集まりの状況、④農林業の概況(集落の戦後農林業、農林地所有、生産物、 販売の有無、獣害等)、⑤移住者(Uターン含む)の受け入れ有無と意向の5項目である。 さらにN町役場の担当者へのヒアリング調査とセンサスデータ(農業集落カード)を用い て集落展望を示す基準を検証した。 結果と考察 以上のデータから集落の特徴を検証した結果、①農林業集落②ツーリズム集落③居住集 落④見守り集落といった、概ね4つのタイプに集約された。 集落展望を語る上で優先されるべきは居住者の意向であることは言うまでもない。ただ、 今後WS、座談会などで住民が主体となって集落の計画を作成していくための一助として、 様々なシナリオを提示していく必要はあると考える。その際、本研究の成果が活かされる ためには、調査方法はもとより、データ収集の項目等の精査を継続し、より住民が希望を もって生活でき、集落の歴史、現状に沿った計画が策定され、実行されていく仕組みを構 築するのが今後の課題である。 本研究は(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センター「地域に根ざした脱温暖化・環境 共生社会研究開発プログラム」、「Bスタイル:地域資源で循環型生活をする定住社会づくり」プロ ジェクトの研究成果の一部である。 引用文献 (1) 小田切徳美『農山村再生「限界集落」問題を超えて』岩波ブックレット768,2009 年,46~48頁 キーワード:限界集落,地域資源,農林業センサス (連絡先:垂水亜紀 tarumi@ffpri.affrc.go.jp) 16 群馬県下仁田地域における施業の集約化の条件 ○吉野聡(東京農業大学大学院) はじめに 2011 年の森林・林業白書によると林野庁は木材自給率を 50%まで引き上げることを目 標としており、そのために施業の集約化(以後、集約化とよぶ)を推し進めている。下仁 田町森林組合は群馬県下仁田地域を管轄しており,昔から集約化を行なってきた。そのた め関東における集約化の研究において取り上げられることが多いので、集約化の条件を検 討するのに適していると考えられる。そこで下仁田町森林組合が 2005 年に行なったアン ケートをもとに集約化の条件を数量化Ⅲ類及びクラスター分析を利用して明らかにするこ とにした。 分析方法 2005 年に下仁田町森林組合がとったアンケートに森林簿の情報を付加し,数量化Ⅲ類及 びクラスター分析によって森林所有者の特徴を明らかにする。 結果と考察 下仁田町森林組が 2005 年に行なったアンケートの概要は表 1 の通りである。下仁田町 森林組合が 2005 年に行った集約化に関するアンケートでは,集約化に賛成する森林所有 者は 296 名(約 36%),反対が 75 名(約 9%),分からないが 450 名(約 54%)だった。 このことから下仁田地域で集約化の事例を増やすためには分からないと回答した森林所有 者を賛成にした方が,反対と回答した森林所有者を賛成にするよりも効率的であると考え られる。 表1 集約化に対する意向 集約化事業に同意されますか? 集約化に 興味 所有する森林の場所や境界をご存知ですか? 今後の森林の手入れ だいた 詳しく聞 分から 知人が知って 自分で実 森林組合に 縁者・知人 全くしてい 知っている い分か 知らない きたい ない いる 施 依頼 に依頼 ない る 同意する 同意しな い 174 22 32 40 12 18 0 53 87 74 91 49 10 2 30 8 43 59 141 18 14 15 20 41 12 72 123 243 181 182 19 68 119 143 44 148 はい いいえ よく分か らない 現在、間伐など森林の手入れをどうして いますか? 自分で実 森林組合 縁者・知 全くして 施 に依頼 人に依頼 いない 集約化に 興味 61 56 151 はい いいえ よく分か らない 67 11 55 21 11 43 集約化に 興味 はい いいえ よく分か らない (連絡先:吉野聡 作業道の必要性 考えて 見積もりが合 いない えば考える 思う 69 55 203 林齢 間伐まで 主伐可能 皆伐への意思 44 8 22 122 115 344 52 10 82 地位 高齢林 1等 2等 3等 必要 124 32 120 地利 2等 1等 将来必要 必要としない 41 19 80 3等 15 57 68 3ha未満 分からな い 38 25 174 面積2 3-5ha 5ha以上 71 47 144 76 3 10 11 10 85 55 122 68 163 101 49 30 6 2 110 79 27 23 81 31 159 273 17 26 157 265 329 114 9 263 67 121 [email protected]) 17 集落組織による農地・森林の一体的管理について ―活動組織から見た直接支払制度の活用― ○石橋洋司(島根大院・飯南町・(農)長谷営農組合) 伊藤勝久(島根大) はじめに 中山間地域においては、人口流出と高齢化の進行により、3 つの空洞化(人・土地・ム ラ)に直面している。これにより、農林業生産力と集落機能が低下し、従来、生産活動を 通じて適正に管理されてきた農地・森林等の地域資源について、その管理対象が限定的と なり、地域資源が有している水源涵養機能や災害防止機能などの公益的機能の低下が懸念 される状況にある。 本研究においては、これらの地域資源に関して、その公益的機能の保全管理に着目し、 集落組織による保全管理の手法を直接支払制度の活用を通して考察する。 調査方法 島根県飯南町における集落の現状を通して中山間地域農業の問題点を整理するととも に、生産活動の継続に合わせて農地等の多面的機能の保全を促している中山間地域等直接 支払事業などの制度活用状況と制度上の課題を整理し、地域資源の保全管理のために有効 かつ効率的な直接支払制度のあり方を活動組織の視点で考察する。 また、地域資源の保全管理から資源の有効活用へつなげていくために必要な制度のあり 方について、中山間地域対策の側面を踏まえて考察する。 結果と考察 中山間地域においては、生産活動においても集落活動においてもマンパワーの不足は深 刻な問題である。農林業生産力が低下している中山間地域において、農地・森林等の公益 的機能を保全していくためには、保全活動に対する支援制度が必要である。 中山間地域等直接支払事業等の現行制度は、地域全体から見れば、対象資源を限定した 制度となっている。しかし、それぞれの制度の構成は類似している点が多く、資源の有効 活用の視点からは、資源横断的な制度とすることで、より効率的な取り組みが可能となる。 また、中山間地域においては、人口減少と高齢化に対応した生産形態への移行により、 農業経営は単一経営化が進んでいる。その結果として、生産活動を通じて行われてきた地 域資源の管理は、その対象区域を縮小し、生産活動における地域資源の活用は不要化して きている。 地域資源の保全管理に関する資源横断的な直接支払制度の構築は、集落を地域資源の保 全管理を実践する担い手として位置付け、集落の取組みとして資源管理と資源活用の連携 を図りながら、中山間地域農業の新たな生産システム構築へつなげていく手法として期待 できる。 (連絡先:石橋 洋司 [email protected]) 18 九州山村における防災組織の現状と課題 ―消防団員の職業構成に着目して― ○ 笹田 敬太郎(九大院生資環) ・佐藤 宣子(九大農) はじめに 2011 年は 3 月に発生した東日本大震災、9 月の台風 12 号被害などの災害に見舞われた。地方 行政、地域住民の間にも、生活の安全や防災を見直す機運が高まっている。特に山間部、山村 自治体においては、過疎化、高齢化、財政緊迫の中でいかに地域の安全を守るかが大きな課題 となっている。山村において地域防災面で活躍するのが消防団であり、団員は各自の職業を持 ちながら、平時の訓練、有事の際には災害復旧、防災、住民の避難誘導などを行っている。し かし、これまで山村の消防団に関してどのような人が団員としてどのような活動を担っている のかは明らかになっていない。そこで、本研究では山村における消防団の実態と課題を急峻で 災害の多い九州山村の 2 自治体・1 地域を対象に調査を行い、中でも林業従事者の防災活動へ の寄与、林業衰退の影響が地域の消防・防災活動にどのような影響が出ているのか、防災組織 の今後の課題を明らかにする。 面積 調査方法 まず、 むらや消 防団に関 する既往 表 1 調査対象地の概要 林野面 林野率 人口 消防団 (人) 実員数(人) 有効 回収率 回答数 (%) (ha) 積(ha) (%) 球磨村 20,773 18,447 88.8 4248 291 157 54.0 諸塚村 18,759 17,775 94.8 1882 130 86 66.2 五家荘地域 16,319 15993 98.0 366 31 15 48.4 注:人口は国勢調査(2010)八代市 HP(2010)より、消防団実員数は 2010.7.1 現在 研究のレ ビュー、行政資料より消防団研究の意義を確認し、現在抱えている課題を把握した。次に、調 査対象地として 1)常備消防(消防署など)を持つ通勤圏山村(熊本県球磨村) 、2)常備消防が なく、消防団など非常備消防と消防団 OB からなる消防支援隊をもつ宮崎県諸塚村、3)常備消防 はあるが、中心部まで遠く住民自ら消防に従事する山村(五家荘地域、熊本県八代市)の条件 が異なる 3 つの自治体・地域を選び、役場消防担当者への聞き取り調査・資料収集と、消防団 員へのアンケート調査を実施した。そして、それぞれの調査結果から特に職業構成と防災組織 への関与度について分析を行った。 結果と考察 通勤圏山村である球磨村では 80 年代までは森林組合を中心に林産活動が盛んに行われてい たが、現在都市部への通勤被雇用者の増加している。地域組織へ加入率の減少など地域との関 わりが薄れてきている。一方、諸塚村では、防災の中心が役場へと移行しており、自治公民館 という地縁組織を介した消防支援隊(消防団 OB)の存在が地域の安全へ寄与していることが分 かった。そして五家荘地域では、40 代が中心となって土建、林業に従事し、地域の組織や役職 を掛け持ちながら山村の安全を守っていることが分かった。 (連絡先:笹田 敬太郎 [email protected]) 19 中国西北出稼ぎ農村における住民と農村のつながり ―農業・住民間諸活動への参加と意欲― ○桒畑恭介(鳥取連大院)・伊藤勝久(島根大) はじめに 本報告では、中国西北部の出稼ぎ農村において、地域内の農業・住民活動の変化、それら への参加意欲といった住民と農村とのつながりをみることで、今後の農村の担い手を考え てみたい。 中国西北部の農村では、2000 年以降になって就業機会が増えたことにより農業から農外 への労働力移動が本格化した。条件不利地域においては沿海などから近隣都市へと出稼ぎ がより手軽なものとなり、2000 年代半ばには一般的なものとなった。現段階では、出稼ぎ 労働者の多くが一時的な離村に留まっているが、今後は労働者の質の向上と戸籍制度の更 なる緩和に伴い恒久的離村が加速すると考えられる。そうした中、農業や住民間の諸活動 への参加と意欲をみることは、地域居住の継続を判断するだけではなく、外部からの支援 者、或いは U ターンによる将来の担い手化といった離村者への期待を判断する材料にもな ると考えている。 調査 寧夏回族自治区の南部山間部に位置し、出稼ぎ地域となっている固原市彭陽県において、 条件の異なる 3 つの村で 09,10 年の秋に村の指導者層に対しヒアリングを行い、地域住民 を主要メンバーとする組織、活動の現状を把握した(昨年報告)。2011 年 9 月に 3 農村か らそれぞれ 1 集落を選定し、調査への同意を得られた住民に対して農業および地域活動へ の参加意欲等に関して、面接による質問紙調査を行った。 結果 昨年、明確に組織化・規定化された活動自体か少なく、公式な集会等も多くが意思決定 を伴うようなものではないことを報告した。本報告ではオフィシャルなものだけではなく、 地域住民間、或いは個人間で自発的に行われている活動も扱った。 調査時点の在村者からの聞き取りという性格上、若年者は農村での活動に関心が高い者 が多くなる可能性はあるが、農業、地域活動ともに、出稼ぎを経験した 30 代の若い世代に おいて比較的参加・意欲が高かった。逆に常に村に居るはずの高齢者を中心とした出稼ぎ 未経験者の参加意欲は低く、村の活動状況も十分に把握していない場合がみられた。ただ し地域条件により差がある。 また、村には 20 代以下はほとんど存在していない。現 30 代のように将来村に戻る可能 性もあるが、昨年報告した、子供を媒介とした活動がみあたらず学校組織も地域から切り 離されている状況を考えると、次世代からの担い手不足が懸念される。 キーワード:中国農村,住民活動,出稼ぎ,条件不利地域 (連絡先:桒畑 恭介 todokyoro@yahoo.co.jp) 20 野生動物による被害に対する地域住民の認識 -栃木県佐野市の集落を事例に- ○加藤恵里(東農工大)、桑原考史(新潟大)、土屋俊幸(東農工大) 研究の背景と目的 近年、野生動物による農林業被害の拡大がみられる。野生動物による被害への対策は、地域 住民が主体となることが重要であると言われており、被害への対策を考える上で、地域住民の 被害に対する認識を知ることが重要となる。そこで本研究では、野生動物によって農林業被害 を受けている中山間地域において、地域住民の被害に対する認識を把握する。 調査地は栃木県佐野市秋山町 A 地区である。A 地区は、山間農業地域に属し、高齢化率 43.4% (秋山町) 、林野率 85.1%(旧氷室村)、民有林率 99.9%、人工林率 82.6%(以上秋山町)で ある。全戸 61 戸で、7 つの坪(町会の班)に分かれている。(1 班 4~12 戸) 全戸調査で地区の概要を把握し、個人へのより詳細な調査から、地域住民の認識の把握を行 った。全戸調査は 2010 年 8 月~2011 年 8 月に計 52 戸、個人への調査は 2010 年 8 月~12 月に 計 13 名に対して行った。 地区の概要 A 地区では、戦後に大規模山林所有者数戸が、労働者を雇用して一気に薪炭林の拡大造林を 行った。こうしたことから賃労働者化が進行し、所有山林面積も、1ha 以上の世帯が約 20%であ るのに対し、全く所有していない世帯が約 45%存在している。 次に、各戸の農地の所有面積に着目し、耕作面積、耕作放棄地のうちの管理している面積、 放棄している面積との関係を分析したところ、所有面積 50a 以上、10a 未満、その他のグルー プで、営農意欲の違いがみられると考えられた。また、初めて被害があったと認識されている 年で差がなかったのに対し、被害への対策を始めた年は、所有面積 10a 以上の世帯では 5 年前 以前、10a 未満の世帯ではより近年となっており、被害への対策意欲が異なると考えられた。 以上より、所有農地面積が 50a 以上を比較的大規模所有層、0~10a 未満を零細所有層、その 他を中間層とし、それぞれに対し、より深い聞き取り調査を行った。 地域住民の認識 聞き取り調査の結果、被害に対する認識についても、おおむね世帯の所有農地面積による上 記分類ごとに分類できた。比較的大規模所有層は 2 種類に分類され、比較的若年層(60 歳代) は、被害による営農意欲減退が強くなっていた。零細所有層は、かつての賃労働者層であり、 被害への対策に費用をかけていない。しかし、独自の被害への対策を行うことで、営農意欲を 保っていた。中間層は、営農意欲はやや低いものの、被害への対策に費用をかけることは許容 しており、被害への対策が実際に被害を防除できているという認識が強かった。 以上より、所有農地面積が大きいほど、営農や被害への対策意欲が高いと推測されたのに対 し、本調査においては、比較的大規模所有層のうち、比較的若年層は意欲が低く、逆に零細所 有層は意欲が高いことが分かった。 (連絡先:加藤恵里 [email protected]) 21 岩手県葛巻町における地域振興と人的ネットワークの役割 -町政の展開と人的ネットワークの概要- ○八巻一成(森林総研北海道)・比屋根哲(岩手大連大院)・藤崎浩幸(弘前大) ・柴崎茂光(国立歴博)・林雅秀(森林総研東北)・茅野恒秀(岩手県立大) ・金澤悠介(立教大)・高橋正也・齋藤朱未(岩手大連大院)・辻竜平(信州大) はじめに 山村地域における経済活性化とともに地域資源の持続的利用を図るための取り組みが、 各地で進められている。しかし、その取り組みを成功に導くのは容易ではない。本研究で は、地域資源を活用した地域づくりの成功事例として知られる岩手県葛巻町を取り上げ、 その取り組みの成功要因について、組織活動のパフォーマンスに大きな役割を果たすと考 えられる中心性(centrality)、結束(bonding)、橋渡し(bridging)の3つの人的ネッ トワーク構造に着目し、その実態を明らかにした。 調査方法 2010~2011 年にかけて実施した関係者への聞き取り調査、および収集した文献、資料を もとに、対象地における地域振興の取り組みを明らかにし、取り組みに寄与した人的ネッ トワーク構造の抽出を行った。 結果と考察 葛巻町における地域づくりの起点となったのは、1969 年の新全国総合開発計画を契機と して開始された、北上山系開発による酪農地域整備である。当時のT町長は同窓生を通し て小岩井農場に支援を求め、1976 年に設立した畜産開発公社の初代専務理事として迎え た。それとともに、町役場職員のN氏(後に町長)を出向させ、役場と公社との連携を強 化した。一方、T町長は「ミルクとワインのまち」として地域おこしを進めるため、1980 年、ワインづくりの権威であるSH氏のもとに町役場職員のS氏(現町長)を研修で派遣 し、その後 1986 年に「くずまきワイン」の操業を開始した。さらに、1993 年には宿泊施 設グリーンテージを開業し、支配人には町づくり委員会で実績のあったO氏を就任させた。 1999 年には、牛乳生産を通じて以前から関係があったコンサルタントのM氏を介して、風 力発電施設が建設された。 このように、葛巻町ではT町長のリーダーシップによって、酪農を中心とする町づくり がスタートしたが、その後開始された事業には町役場の職員を送り込むなど、町と各事業 間の強い結束のもとに運営が進められ、結束型のネットワーク構造が形成された。また、 役場職員でありながら出向経験の長いN氏、S氏がその後の町長に就任しており、何回か の町長交代を経ながらも町長を中心とする役場と各事業の強い結束が維持されてきてい る。一方、町内から調達困難な支援については、外部との橋渡し型ネットワークを有効に 活用しながら入手している。以上のことから、町長および役場による中心性の高いネット ワークを一貫して維持しながら、役場と第三セクターとの人事交流を通した強い結束、お よび外部との橋渡しによるネットワーク構造が存在していることが明らかとなった。 (連絡先:八巻一成 [email protected]) 22 岩手県葛巻町における地域振興と人的ネットワークの役割 ―自治会組織の成立過程と活動実態― ○比屋根哲(岩手大連大院)・八巻一成(森林総研北海道)・藤崎浩幸(弘前大) ・柴崎茂光(国立歴博)・林雅秀(森林総研東北)・茅野恒秀(岩手県立大) ・金澤悠介(立教大)・高橋正也・齋藤朱未(岩手大連大院)・辻竜平(信州大) はじめに 本 研 究 は 、岩 手 県 葛 巻 町 に お け る 地 域 振 興 に 果 た す 人 的 ネ ッ ト ワ ー ク の 役 割 の 分 析 に先立って、地域振興の主体として位置づけられる町民の町政に対する意識や評価、 地 域 振 興 に お け る 町 民 レ ベ ル で の 可 能 性 に つ い て 検 討 し た も の で あ る 。葛 巻 町 民 の 意 識 や 活 動 実 態 を 網 羅 的 に 把 握 す る た め 、こ こ で は 主 と し て 町 民 を 包 括 す る 組 織 で あ る 自治会に注目し、その成立過程と活動実態について 明らかになったこと を報告する。 調査方法 葛 巻 町 に は 計 35 の 行 政 区 が あ り 、1 地 区 を 除 い て 実 質 的 な 自 治 会 組 織 が 34 存 在 し て い る 。調 査 は 、ま ず 町 内 の 自 治 会 の 成 立 過 程 に つ い て 当 時 の 様 子 を 知 る 役 場 職 員( OB を 含 む ) 等 か ら の 聞 き 取 り と 「広 報 く ず ま き 」 等 の 資 料 に よ り 把 握 し た 。 ま た 、そ れ ぞ れ の 自 治 会 活 動 の 展 開 過 程 や 特 徴 、自 治 会 の 活 動 状 況 や 住 民 の 意 識 等 に つ い て 、全 体 の 9 割 弱 に 相 当 す る 30 自 治 会 の 会 長へ の 聞 き 取 り に よ り 実 態 を 把 握 し た 。さ ら に 、 隣 接 す る 町 村( 岩 泉 町 、九 戸 村 等 )役 場 の 関 係 部 署 に も 聞 き 取 り 調 査 を 行 う と と も に 資料を収集し、葛巻町の自治会組織と比較した。 結果と考察 葛 巻 町 で は 、 T 町 長 時 代 に 「 新 葛 巻 町 発 展 計 画( 基 本 計 画 )」 ( 昭 和 58~ 62 年 度 ) を 策 定 し 、そ の な か で 行 政 区 の 数 を 45 か ら 26 に 再 編 し「 住 民 一 人 ひ と り が 参 加 で き る 自 治 会 型 の 組 織 を 全 行 政 区 に 結 成 す る 」方 針 を 掲 げ た 。そ の 後 、町 で は 可 能 な と こ ろ か ら 順 次 自 治 会 組 織 を 立 ち 上 げ 、 行 政 区 の 数 を 見 直 し つ つ 平 成 5 年 頃 ま で に 35 す べ て の 行 政 区 に 自 治 会 が 組 織 さ れ て い る 。昭 和 か ら 平 成 に か け て の 時 期 に 自 治 会 の 設 立が促進されたのは、近隣の町村にはみられない葛巻町独自の施策であった。 主 と し て 自 治 会 長 か ら の 聞 き 取 り の 結 果 、葛 巻 町 に お け る 自 治 会 の 設 立 は 、そ れ ま で 納 税 組 合 、衛 生 組 合 等 が バ ラ バ ラ に 存 在 し て い た 地 区 の 組 織 を 束 ね 、総 会 や 役 員 会 の話し合いで物事を決める運営体制が確立したことで 住民の自治意識や団結力が向 上する等のプラスの結果をもたらしていることが確認された。 ま た 多 く の 自 治 会 長 が、林 業 と 畜 産 を 中 心 と し た 町 づ く り 、環 境・エ ネ ル ギ ー 政 策 、 第 三 セ ク タ ー の 設 立 と 連 携 等 の 町 の 取 り 組 み を よ く 知 っ て お り 、こ れ を 評 価 し て い る こ と 。ま た 自 治 会 総 会 に も町 長 が 足 を 運 び 、自 治 会 役 員 と主 要 な 役 場 職 員 と の 交 流 の 機 会 も 多 い こ と 。さ ら に役 場 は 各 種 の 補 助 制 度 を 立 ち 上 げ て 自 治 会 活 動 を 支 援 し て い る こ と 等 か ら 、現 在 で も 行 政 と 自 治 会 と の 関 係 は 良 好 に 維 持 さ れ て お り 、自 治 会 組 織 の存在は町政を支える1つの大きな要因になっていると考えられた 。 (連絡先:比屋根哲 hiyane@iwate-u.ac.jp) 23 持続的農業と提携にもとづく農山村地域の生存戦略の検討 ―岩手県久慈市を対象地として― ○岸岡健太(岩手大院)・伊藤幸男(岩手大) 1. 背景と目的・方法 3.11 大震災を契機に改めて都市、農山村ともどう持続可能な将来像を描くか問われている。そうした 中、岩手県北上山地の山村が過去に有していた、雑穀・牛・森林などの地域資源を複合的に有効活 用してリスク分散を図る生存戦略(岡惠介,2008)が注目される。また、有機農家と消費者間の「提携」の ように、地域資源の有効活用と持続性・経済性を両立させる仕組みも必要である。 本研究の目的は北上山地北部に位置し山村の性格が強い久慈市山形町・山根町を対象に、持続 的農業と提携に基づく生存戦略の展望を考察する事である。方法としてまず地域農業の変遷を資料 や統計から確認する。次いで提携に適する作目として、無農薬栽培が一般的で健康食としても注目さ れるが手間と価格の面から衰退しつつある雑穀に注目し、生産状況の聞き取り調査を行う。また、提携 消費者として当地の農産物や文化の価値を理解してくれる人を想定し、山形町の山村文化を活かした 体験交流拠点である「バッタリー村」の来訪者に対するアンケート調査を、イベント開催時に行なった。 2. 本論 対象地では戦後は開田が進行し、農業センサスによると対象地の蕎麦等も含む雑穀栽培面積は 1965 年の 384ha(収穫面積)から 2005 年に 15ha(販売面積)へ減少した。2005 年の当地の主作目は 肉用牛と施設野菜であるが牛肉輸入自由化・石油価格高騰・震災の影響を受けている。 雑穀生産者への聞き取り調査は、山形町の 14 戸、山根町の6戸で行なった。イナ黍は最も多い 13 戸で栽培され、戸数では高黍、稗、粟、ホウキ黍の順に多かった。雑穀は全戸で無農薬だが、化学肥 料の使用・他作目での農薬使用はある。収穫後の用途は山形町で自給用 13 戸:出荷用6戸で自給用 が多かった一方、山根町では4:5であった。販売先は山形町は道の駅(3戸)、市外業者(3)等で、山 根町では新山根温泉の産直(5)、月1回の市(2)などであった。道の駅や産直、市での価格は精白品 で 950 円~1,250 円/kg で、市外業者に売る未精白品は高黍で 300 円/kg である。価格について生産 者からは、「割には合わないがこの地域ではこの値段で無いと売れない」あるいは「(自給用の余りであ るから)・(地域おこしの為でもあるから)値段は関係ない」などの感想があった。一方で道の駅での聞き 取りでは雑穀の売行きは好調であり、収穫期前の 8 月頃までに品物が少なくなるという回答もあった。 消費者に対するアンケートは、総回答 75 人中の 69%が久慈市民であった。雑穀を食べる頻度は月 数回が 37%、週数回以上が 31%で、食べ方は雑穀ご飯が 71%であった。購入する種類はブレンド品が 19%で最も多く、産地は市内産が 48%、購入場所は産直が 48%だった。購入タイミングは「気分次第」が 47%、「無くなり次第」が 32%であった。定期購入での生産者応援に対する興味は「興味が湧く」「中身次 第」を合わせ 52%で、仮に定期購入する際に重視する点は「信頼感」と「無農薬無化学肥料」が 17%で 最も多い。その中で価格については「安さ」が 4%であった一方、「持続可能な価格」は 8%であった。 今後の課題は、雑穀が過小評価されており地域で価値を高め共有する必要性、都市対象のマーケ ティングの必要性等である。今後、多様な地域資源に着目し、その適正な価値を産消ともに共有する 互恵的な相互扶助関係を形成する事で、持続性・経済性を両立する事が可能であると考えられる。 3. 引用文献 (1) 岡惠介「視えざる森の暮らし 北上山地・村の民族生態史」大河書房,2008 年,192~194 頁 (連絡先:岸岡健太 [email protected]) 24 バイオマスを用いる発電の諸類型とその現状 ―地域の森林整備と林業への貢献の可能性― ○小川沙有里(同志社大学) はじめに 近年,地域分散型の再生可能エネルギーへの期待が高まり,バイオマスも注目されてい るが(熊崎,2009),その全体像は明らかでない。本研究では,バイオマスを用いる発電の現 状の定量的理解進めるため,それを(A)製紙業界の黒液(パルプ廃液)発電,(B)地方自治体 のごみ焼却発電,(C)木質バイオマス発電,(D)家畜糞尿や下水汚泥からのメタンによる発 電,の四類型に大別する。本研究の目的は二つで,第一にそれら各々の設備件数と発電出 力を明らかにする。第二に,林業と潜在的な関連の深い(C)の実態に関し,特に燃料調達の 面からの分析を行い,地域の森林整備と林業に貢献する発電事業者の特徴を論じる。 調査方法 以上のうち(A)は,最新の全国統計の入手は困難であり,製紙業界の断片的な各種資料と やや古い資源エネルギー庁の調査資料をつなぎ合わせて発電出力等を推計した。他の類型 については,「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS 法)に 基づく RPS 認定設備一覧の中に「バイオマス発電」という名称で一括・公表されているの で,そこから(B),(C),(D)への分類を行なった。しかし,その一覧に公表されていない設備 も多々あり,それらについては,新エネルギー・産業技術総合開発機構や日本下水道協会 の資料などを参照して補足した。本研究が焦点をあてる(C)に分類される設備についは,上 記以外に,現地調査,電話取材,インターネット検索も行い,詳細情報を得た。 結果と考察 調査結果として(A),(B),(D)は生物由来の廃棄物の有効利用を目的とするもので,国内の 林業への貢献はないことが判明した。(C)については,全国に 125 の設備があり,発電出力 合計は約 144 万 kW に達し,特に最近 10 年間における伸びが顕著である。燃料調達の面か らは五つの方式に分類できる:(1)地元の木材関連企業と森林組合による協同組合の管理運 営,(2)合板生産等の主業務に伴う副産物を発電燃料とする経営,(3)特定の産廃業者から 定期的に廃木材を確保する経営,(4)国内産の木質バイオマスを混焼する石炭火力発電, (5)RPS 法の要請を念頭に輸入木質チップを混焼する石炭火力発電。125 設備のすべてを分 析した結果,建設廃材などの有効利用にかかわるものが多いが,発電所の立地市町村,な いしはその周辺市町村の山林の林地残材,間伐材の利用に取り組んでいるものもあり,そ れは(1),(2),(4)の中に見出せることが分かった。 参考文献 熊崎実「林業再建のグリーン・ニューディール」『世界』,2009 年,179-190 頁 (連絡先:小川沙有里 [email protected]) 25 果樹剪定枝資源の活用実態に関する研究 ○高橋正也・比屋根哲(岩手大連大院) はじめに 現在,日本でりんご生産が行われている面積は約 38,800ha である。この約 38,800ha の 果樹園からは毎年,木質資源と捉えることが可能な果樹剪定枝が相当量発生している。降 雪量の少ない地域ではわい性の台木を用いて比較的小さな果樹木による栽培(わい化栽培) が行えるが,降雪量が多く,斜面にある果樹園では丸葉台木という台木による大きな果樹 木で栽培せざるを得ない。そのような果樹木の剪定枝は直径,長さ共に 30cm 以上,重量が 約 24kg 以上の形状のものもある。剪定枝はりんご生産をするための付随的な作業により発 生しているのであって,山から伐り出す作業などは伴わない。剪定枝を果樹園に放置する と,腐乱病や害虫であるダニの越冬の温床になる。そのため,りんご農家は何らかの方法 で処分している。 果樹剪定枝をペレット状にし,有効的な利用を目指した研究 ( 1 ) では「木質ペレットと 同形状の燃料を作成することができれば(中略)燃焼器の一部を改造することによって(中 略)利用することが可能」と技術,コスト面での課題を指摘している。そこで,本研究で は極力コストを抑えた利用方法,薪としての利用が可能かどうかに注目した。そのため, まずは現状把握が必要である。りんご生産農家が剪定枝をどれくらい発生させているのか, またどのような処分をしており,活用している場合はどのように活用しているのか実態把 握を第一の目的とした。その上でより有効的な活用について提言したい。 調査対象及び調査方法 調査した地域は秋田県横手市である。横手市は秋田県の県南に位置し 2005 年に旧横手市 と周辺7町村とが合併し誕生した,面積約 693 ㎢,人口約 10 万人の市である。横手市の中 でも比較的果樹農家の多い,旧横手市地域内のりんご生産農家と旧横手市地域外に住む剪 定枝利用者に聞き取り調査を行った。 結果・考察 調 査 の 結 果 ,り ん ご 生 産 農 家 に よ る 剪 定 枝 の 処 分 や 利 用 は 農 家 に よ っ て 一 様 で な い こ と が 分 か っ た 。有 効 活 用 し て い る と 思 わ れ る 農 家 と ま っ た く 活 用 し て い な い 農 家 の 実 態 が 明 ら か に な っ た 。ま た ,剪 定 枝 を 需 要 す る 他 の 主 体 と 関 係 を 構 築 す る こ と に よ っ て 活 用 し て い る こ と も 分 か っ た 。農 家 が 剪 定 枝 を 需 要 す る 主 体 と 関 係 を 構 築 す る 機 会 や 手 段 は 限 ら れ て お り ,農 家 個 人 で は 限 界 が あ る 。今 後 の 剪 定 枝 の 有 効 活 用 に は 剪 定 枝 の 量 や 集 積 場 所 な ど の 情 報 を 取 り ま と め る 主 体 と ,需 要 者 に そ の 情 報 を 効 率 的 に 促す手段が必要であることなどが考えられた。 引用文献 (1) 難 波 邦 彦 井田民男 澤 井 徹( 2010)「 果 樹 剪 定 枝 エ ネ ル ギ ー 利 用 の た め の 基 礎 燃 焼 特 性 に 関 す る 研 究 」 『 高 温 学 会 誌 』 36( 1 ) , 2010 年 , 25~ 30 頁 (連絡先:高橋正也 masaya371@bf.wakwak.com) 26 学校教育における森林教育の実施の可能性 ―高等学校での実践事例をもとに― ○井上 真理子・大石 康彦(森林総研多摩) はじめに 森林について広く国民の理解を得ることは、低炭素社会や持続可能な循環型社会の実現のた めに重要な課題である。林野庁では森林での体験活動などを通じて森林や林業について学ぶ森 林環境教育や、木に親しみ木の文化への理解を求める木育を推進しており、学校教育では、自 然体験活動、持続可能な社会の実現を目指した ESD(Education for Sustainable Development) や環境教育が推進されている。学校教育で森林や木に関する教育が取り組まれれば、その効果 は大きいといえる。学校教育の中で高等学校は、学校設定教科や科目を設置でき、多様な教育 の展開が可能である。そこで本研究では、高等学校で森林教育を行っている事例をもとに、学 校教育の中で森林教育の展開する可能性について検討した。なお「森林教育」は、森林や木に 関わる教育の総称とし(1)、本稿では、学校教育での森林での体験活動を含む教育を対象とした。 方法 学校教育の中で森林教育を展開する可能性について検討するために、高等学校(森林・林業 関連学科を除く)を対象に、担当教員への聞き取り調査を 2005 年~2009 年に実施した(その 後の状況は、学校の Web ページ等で確認した) 。調査は、文献資料等をもとにした予備調査から 森林教育をしている可能性のある学校を抽出し、普通科等 8 校、総合学科 5 校、専門学科(理 数系 2 校、農業系 5 校)計 20 校で実施した(内訳:国立大学附属校 2 校、都道府県立 15 学校、 市立 1 校、町立 1 校、私立 1 校。分校 1 校、定時制 1 校を含む)。調査項目は、森林教育の教育 課程上の位置づけ(科目など)、体験活動の実施方法(時間と場所、指導者など)、教育のねら いと内容、課題とした。結果から学校教育での森林教育の展開の可能性を検討した。 結果と考察 森林教育の教育課程上の位置づけは、普通科目では、理科(科目「生物」 )、地歴・公民(学 校設定科目「文化探究」 )、専門科目では、理数(学校設定教科「環境」 、「環境測定」 、「湿原の 科学」など) 、体育( 「野外活動」) 、農業( 「グリーンライフ」 、 「総合実習」 、 「環境科学基礎」な ど)、その他「総合的な学習の時間」、 「産業学習」であった。全校生徒必修、学科やコース必修、 選択科目(時間外科目を含む)があった。体験活動は、敷地内や隣接地では授業時間内、遠隔 地の場合は 1 日集中授業(授業振替など)や長期休暇中で行われていた。指導者には外部講師 の活用や協力を得ている例もあり、学校外活動に積極的に参加している事例もあった。ねらい には、地域の特色を活かした教育、理科や農業の専門教育、環境教育、学習意欲の喚起、コミ ュニケーション能力や人間性の育成、地域に貢献する人材育成などがあり、教育内容には、森 「森林資源」 (林業や建築など) 、 「自然環境」 (自然観察や環境調査など) 、 「ふ 林教育の 4 分類(1) れあい」(野外活動など) 、 「地域文化」 (地域の理解や貢献など)に関わる内容があった。課題 には、教材や教科書の不足、教員の異動に伴う継続性や専門性の維持、進路先の少なさが挙げ られた。取り組み方や条件次第では、森林教育を学校教育内で実施する可能性が見られた。 引用文献 (1)井上真理子・大石康彦「森林教育が包括する内容の分類」 『日本森林学会誌』Vol.92,2010, 79~87 頁 (連絡先:井上 真理子 [email protected]) 27 市民意識の分析による森林整備への市民参加促進の条件 ○伊藤勝久(島根大生物資源) はじめに 地球環境問題への関心が高まり、二酸化炭素吸収などの点から森林への関心の高まりがみら れる。一方国内の森林は、とくに人工林で手入不足から荒廃が問題になっている。そのため各 県では、森林環境税を導入して、一般市民の関心を高めるとともに森林整備に充てている。一 般に、森林整備に関わる市民参加の形態は、金銭負担、ボランティア、NPO 活動としての参加 があり、その数は徐々に増えている。しかし、多くの県で実施した森林環境税の認識や森林へ の関心は決して高い数字を示しているとは言えない。従って広く森林状況の認識 森林に対す る関心を喚起することが、森林整備を促進する際に政策上今後重要な課題であるといえる。 調査と結果 島根県では 2005 年に「水と緑の森づくり税」 (以下、水森税)を創設し、県民の関心を高め る事業、ボランティア支援及び森林整備事業を推進し、現在第 2 期に入った。しかし県民の森 林林業への関心は低く、森林整備促進と不整合の部分がある。昨年度の報告では、市民及び森 林所有者の森林認識や整備意識の多様性に関して、森林に対する具体的活動とつよく関連して いることを示した。本報告では、今年度実施した意識調査(県下一円で層化二段無作為抽出。 配布数 2000、回収数 654、回収率 32.7%)をもとに、森林への関心喚起と、森林整備への市民 参加の条件を検討する。質問項目は、多岐にわたり、森林への関心・親しみ、森林機能、管理 主体と管理方法、森林への関与、参加の条件、水森税の認知、水森税の使途及びその理由、森 林荒廃の認識、森林のイメージ、国内外の新任に関する取り組みの認識、森林のレクリェーシ ョン利用、森林教育、エネルギー利用などである。本調査の目的は森林整備を進めるうえで、 森林所有者とともに一般市民の関心の高まりが不可欠であり、市民の参加促進の条件を検討す るものである。 登山レク 考察 県民の森林機能への関心からみると、全国 調査と同様に、山崩れ防止、水源涵養、二酸 化炭素吸収など環境機能に対して関心が高 く、木材、燃材、特用林産など生産的機能へ の関心は高いとは言えない。今後、森林整備 と森林機能を結びつける条件、森林や森林政 景観形成 自然親しみ環境教育 心身癒し 野生動植物棲息 二酸化炭素吸収 空気清浄 山崩れ防止 水源涵養 薪などエネルギー きのこ特用林産 木材生産 0% 全く関心なし 20% あまり関心なし 40% どちらとも 60% 少し関心あり 80% 100% 大変関心あり 策への認識を高める条件、市民参加を促進するための条件について、詳細な分析を行い報告す る予定である。市民参加のためは、ウェストビーの指摘の如く、森林・林業政策の明示と理解 しやすさが基本であり、そのためには政策として専門的な知識の翻訳が不可欠のものである。 この側面から、市民参加を促進するための政策方法の課題を検討する。 (連絡先:伊藤勝久 itokatsu@life.shimane-u.ac.jp) 28 産業連関表を用いた木材自給率向上の経済効果分析 ○桑原啓吾・藤掛一郎(宮崎大) はじめに 本報告では、将来の林業の生産規模についての検討結果を報告する。 平成 21 年に政府は「森林・林業再生プラン」を作成した。このプランの目標は、平成 32 年の 木材自給率を 50%以上とすることである。そのために、国産材の供給力を強化することが期待 されている。政策検討委員会の最終とりまとめ「木材自給率と量の可能性(試算)」では、再生 プランが達成された場合、平成 32 年の木材総需要が 8,110 万㎥、自給率が 52%となり、その経 済効果が 1.3 兆円、雇用効果が 7.9 万人との試算がなされている。 しかし、上記の試算は木材需要量と自給率の変化のシナリオを 1 つだけ想定して、しかも素材 生産が増加することで発生する経済効果を分析しているにすぎない。そこで本研究では、いくつ かのシナリオを想定し、経済効果と雇用効果の分析を行った。また、製材部門等の生産増加によ る経済効果についても分析の対象を広げ、全産業に占める林業の生産規模を試算するなど幅広い 分析を行った。 分析方法 分析に必要なデータは、上記の「木材自給率と量の可能性(試算) 」と農林水産省が発表する 各年度の木材需給表から入手した。これらのデータを元に「平成 17 年度農林漁業および関連産 業を中心とした産業連関表(農林水産省) 」を使用し産業連関分析を行った。また、産業連関分 析の結果と過去の産業連関表を用いて、林業の生産規模の推移予測の検討も行った。 結果と考察 分析の結果、次のことが判明した。 ① 「森林・林業再生プラン」の施策によって、国産材の需要量が 2,471 万㎥増加した場合、 林業(育林、素材生産、特用林産)自体には、6,417 億円の経済効果と 4.7 万人の雇用効 果が発生する。 ② 「森林・林業再生プラン」の施策によって、国産材の需要量が 2,471 万㎥増加した場合、 全産業に占める林業の国内生産額は、昭和 55 年の水準に回復する。 ③ 「森林・林業再生プラン」の実行に伴う木材産業の生産拡大によって、国産材の需要量増 加による効果とは別に、2.2 兆円の経済効果と 16 万人の雇用効果が発生する。 ④ 木材需要量が現状のまま推移し、自給率だけが「森林・林業再生プラン」の目標を達成し た場合は、6,018 億円の経済効果と 4.1 万人の雇用効果が発生する。 (連絡先:桑原啓吾 [email protected]) 29 スギ人工林資源と素材生産の変化 ―東北と九州の比較を通して― ○西 了吾・枚田 邦宏(鹿大農) はじめに わが国の素材生産は 1964 年の木材の輸入全面自由化以降、低迷を続けてきた。特に減少して いるのが広葉樹材やマツ類であった。2003 年以降スギ素材生産量が増加したことによってこの ような傾向に変化が見られ始めた。その結果、全素材生産量に占めるスギ比率が拡大している。 スギ素材生産量が増加している背景として、戦後の拡大造林によって造成された人工林資源が利 用可能な時期に入り始めたこととともに、地域によって生産体制の整備が進んで拡大しているた めである。その地域として注目されるのが東北と九州である。 本報告では、近年のスギ素材生産の変化をとらえるため、スギの二大地域である東北、九州に 着目して、その構造的な違いを明らかにする第一歩として統計的な検討を行う。 方法 『木材需給報告書』のデータを中心に、スギ素材生産量の変化、素材価格等について東北と九 州を比較しながら考察した。考察の時期は 1985 年以降とし、まず 1985 年以降の東北、九州の スギ素材生産の変化を概観した後、スギ素材生産量が増加に転じる 2003 年以降については需要 先等について検討した。 結果と考察 1985 年からバブル経済が崩壊を始める 1991 年まで九州のスギ素材生産量は木造住宅の新設 住宅着工戸数の増加とリンクする形で増加し、バブル経済が崩壊した後も 1995 年までスギ素材 生産量は増加している。その後 2002 年まで木造住宅の新設住宅着工戸数が減少するのに合わせ て九州のスギ素材生産量も減少している。一方の東北のスギ素材生産量は、1985 年から 1990 年代中頃まで横ばいで推移した後、2002 年まで減少傾向で推移している。その後、2003 年から 木造住宅の新設住宅着工戸数が低調で推移する中で東北、九州ともにスギ素材生産量が増加して いる。この 2003 年以降の東北、九州のスギ素材生産量の増加は、東北では合板用スギ素材生産 量の増加によって、九州では製材用スギ素材生産量の増加によってもたらされたものであった。 東北ではスギ素材の需要先として合板用に特化し、一方、九州では製材工場が規模拡大しなが ら、スギの素材生産が拡大している。このような違いがなぜ起こったかについては、今後は素材 生産段階、流通段階、加工段階それぞれの段階での構造的な分析が必要である。 (連絡先:西 了吾 [email protected]) 30 育林経営による立木供給行動のモデル分析 ○藤掛一郎(宮崎大農) はじめに 戦後造林された人工林が伐採可能な時期を迎えつつあることを背景に、近年国産材供給 体制を強化し、外材に対抗しうる国産材供給体制構築への取り組みが活発化している。し かし、主伐が活発化している地域では再造林放棄が問題となり、そうでない地域では再造 林ができないことが主伐回避の一因となっているように、問題は戦後造林木の主伐後の再 造林ができるかどうかである。育林経営の成立と担い手の問題は戦前から林業経済学の主 要なテーマであったが、戦後造林木の成熟期に至り、現在の状況に即して改めて育林経営 を論ずべき時を迎えている。本研究では、土地純収穫最大を行動原理とする育林経営をモ デル化し、育林経営が伐採可能な林分を手にした状態から伐採、再造林によって行う短期 から長期にわたる立木供給行動を分析し、育林経営の立木供給とそれに伴う木材価格形成 について新たな知見を得た。 育林経営モデル 所与の造林費用と立木価格のもと、再造林放棄が許される場合と許されない場合とにそ れぞれ育林経営が 4 つまたは 3 つの選択肢(表 1)から最適な選択をするとし、その選択 の立木価格への反応を見ることで、育林経営の立木供給曲線を導いた。 その結果、育林経営の立木供給は 伐採後の再造林費用に影響を受ける ものの、過去に投下した造林費用と は無関係に行われること、さらに再 造林放棄が許されるなら、将来の再 造林費用も長期の立木供給には影響 するものの、短中期の立木供給には 影響を及ぼさないことが導かれた。 表1 育林経営の選択 選択肢 ①短伐期持続経営 ②長伐期持続経営 立木供給 再造林放棄 可 不可 多 ○ ○ ○ 少 ○ ③短伐期再造林放棄 多、一回限り ○ ④長伐期再造林放棄 少、一回限り ○ ⑤経営放棄 無し ○ 考察 以上の育林経営による立木供給行動から、造林費用と市場で成立する立木価格、立木代 の水準について以下の二点を予想しうる。第一に、既存研究が論じてきたように、育林経 営は過去に投下した造林費用(の後価)を立木代によって取り戻しうるとは限らない。第 二に、再造林放棄が許されるならば、立木代で再造林費用を賄えず、育林経営にとって今 後の持続経営の見通しの立たない水準の立木価格が短中期的に成立しうる。育林経営は生 産期間の長期性という技術的特徴ゆえに伐採時にこのような二つの困難に直面するものと 考えられた。とりわけ、この第二の困難に日本の育林経営は今まさに直面しているものと 見られ、そのような厳しい状況下で今後の育林経営の担い手をいかに確立していくかが重 要な政策課題であると考えられた。 (連絡先:藤掛一郎 [email protected]) 31 育成林業の展開過程 ―アメリカ・オレゴン州を事例として― ○大塚 生美(林業経済研) 課題と背景 オレゴン州は,土地所有者の権利すなわち私的所有権に対して強い主張を持つ とされる。 一方,成長管理政策に代表されるように,オレゴン州では土地に対する強い管理を主張す る文化も有している。森林経営にひきつければ,私的所有権を制限するオレゴン施業法や その中に規定される再造林義務は,あらゆる主体によって徹底して実行されている。事実, 再造林率は 98%を示す。こうした再造林のインセンティブについて,オレゴン州林務部へ のヒアリングでは,「森林は先祖から与えられ次世代につなぐべき州民共有の資源(財産) であることから,再造林は州民自らの当然の行動である。」という趣旨の回答を得た。そ こで本報告では,オレゴン州における育成林業の展開過程をふまえ,そうした理念が現場 で貫徹しうる要因を考察することを課題とする。 結果と考察 オレゴン州における育成林業の時期区分は,大きく 1850~1920 年の育成林業前史(天然 更新期),1920~1970 年の育成林業初期,1970~2000 年の育成林業展開期,2000 年以降 の育成林業転換期とすることができる。オレゴン州に再造林を位置づけた制度が登場する のは,1929 年に制定されたオレゴン再造林税法になる。オレゴン州を含め全米で造林が本 格化するのは,土壌保全と緊急雇用対策を目的として造林事業を推進した民間国土保全部 隊組織のための基本法である緊急保全活動法が 1933 年に創設され,全米に展開されたこと による(1941 年終了)。保全の意味を持ち,再造林義務が課せられるのは 1941 年のオレ ゴン森林保全法の制定を待つことなる。オレゴン森林保全法は 1971 年制定の現行法オレゴ ン森林施業法に引き継がれている。1970 年以前の育成林業は資源造成期,1970 年以降は環 境調和型施業展開期と言える。 再造林率の実効性が高いことについて,いくつかの要因が考えられるが,1902 年に制定 された住民発議,住民投票という直接民主主義制度の存在も見逃せない。この制度は,オ レゴン・システムとも呼ばれ,全米における住民発議,住民投票制度のモデルとされ た。 オレゴン・システムは,個別の利益団体や古い政治体質を壊し,州民意思の総意が生かさ れるシステムとして州民に受け入れられた。1900 年代初頭には,州法に対するリコールに よる修正,公共事業の 8 時間労働制,婦人参政権を獲得している。森林・林業では,育成 林業初期には,州の課税財産価額の一定額を超えないことを条件に保育や森林再生のため に使われることが賛成 50.31%で可決された。また,展開期には,施業規制を一層厳しく した皆伐全廃とも言える発議がなされたが,これについては賛成が 19.36%で否決された。 行政,市民,林業・木材産業等の相互作用が州民の総意となる制度設計によって,再造林 率を高めていることが見えてきた。 キーワード:育成林業,環境問題,施業法,直接民主制,オレゴン・システム (連絡先:大塚生美 [email protected]) 32 ノルウェー王国における森林資源構造と分権化下の林業補助金制度の変遷 ○重松彰(九大院生資環)・佐藤宣子(九大院農) 1. 背景 持続的な森林資源管理を実現する上で,どの行政レベルで林業支援・規制を展開することがより効率 的・効果的に資源管理できるのかは世界的な関心事となっている(1)。近年,我が国の林業政策でも改 正森林法にみられるように,県・市町村への権限委譲が強調されている。一方,日本に先行して地方 分権化をすすめたノルウェーでは分権化改革の見直しが図られている(2)。本発表では,日本の林業と 社会的・自然的に類似性を有する(3)ノルウェーでの資源構造と補助金制度の変遷を報告し,日本の分 権化政策への示唆を提示する。具体的には,1)ノルウェー王国における森林資源の構造の地域差を 明らかにし,2)1990 年代以降のノルウェーにおける林業補助金制度の変遷を提示する。一次資料と して 2011 年 6 月に実施した行政機関(農業省・南トロンデラーグ県・セルブコミューン等)へのイン タビュー結果,二次資料として各種行政資料(森林モニタリング調査統計・素材生産統計・補助金統 計等)を用いた。現地通貨(NOK)と円のレートは 1NOK=15 円で換算した。 2. ノルウェー 王国に お ける 森林資源構造 平地・大規模所有の存在により木材生産条件の良好な「東部」と多雨・急傾斜地・小規模所有者の 優占により木材生産の条件不利である「中西部」で対照的な資源分布がみられる。年間生長量に占め る素材生産量の割合は全国平均 40.4%に対して,東部平均 48.1%(20.6-89.5%),中西部平均は 21.9% (0.2-38.9%)と資源利用についても東西で大きな差異が存在する。中西部では森林蓄積の利用促進が 気候変動対策からも急務の課題であり,林道開設や団地化による施業推進に対する「支援」と伐採届 出・再造林の履行監視による「規制」の両輪で展開されている。また,条件不利地域対策として架線 集材に対する補助金(環境直接支払い)が存在するが,補助金の設定は県によって異なる。南トロン デラーグ県の場合,急傾斜地の架線集材は樹種により異なり(スプルース 2,250 円 m-3,マツ 2,200 円 m-3),さらに遠隔地(集材距離 2km 以上)の木材搬出には 450 円 m-3 が供給される。さらに,中西部 の沿岸地域の林業振興として,県・市町村・森林組合等のステークホルダーで構成される広域恊働プ ログラム LENSA が展開されており,年 1.5 億円の財政支援が展開されている。一方,伐採が盛んな東 部ではバイオマスのエネルギー利用促進に対する補助金が年 1.3 億円提供されている。 3. 分権化下の林業補助金制度の変遷 ノルウェーの林業財政支援として,所有者からの積立で構成される「森林信託基金」と「公的補助 金」が存在し,2010 年の供給規模はそれぞれ 143 億円と 33 億円である。1994 年以降,地方分権化の 流れで公的補助金は県から市町村に権限が移譲された。しかし,2007 年以降,架線集材および林道開 設に対する補助金は市町村から県へ権限を戻す政策転換がみられた。この要因は①人材的な制約,② 市町村よりも広域を掌握する県が年度内の余剰資金の分配に優れていること(効率性),③林業規制 に関して県の市町村への権限強化があげられる。この改革により林業補助金のうち県に供給される割 合は全国平均で 48.8%(中西部 35.9-86.4%,東部 13.9-50.9%)に上昇し,県の位置づけが強化された。 ノルウェーと我が国では森林資源の差異,行政機関の位置づけが異なるという制約はある。しかし, 本事例をとおして,我が国で進行する地方分権のなかで,自治体の実施能力(林務職員の有無・財政 状況)や補助金の内容によって林業支援・規制政策における実施主体を検討する必要性が示唆された。 4. 引用文献 (1)Phelps J et al. (2010) Does REDD+ threaten to recentralize forest governance? Science 320, 312-313. (2)馬場義久「財政」岡沢憲芙・奥島孝康編著『ノルウェーの経済』早稲田大学出版会,2004 年,204 頁. (3)佐藤宣子「ノルウェー」(社)日本林業経営調査会・白石則彦編著『世界の林業—欧米諸国の私有林 経営—』日本林業調査会,2010 年,181 221 頁. (連絡先:重松彰 [email protected]) 33 フランス CFT(森林憲章)10 年の成果と課題 −ボージュ山塊 PNR(地域自然公園)の事例より− ○山本 美穂(宇都宮大学) 背景と目的 フランスの CFT(chartes forestières de territoires 圏域の森林憲章):は、2001 年 7 月の森林基本法 に基づき設置された国土整備のツールである。2010 年現在、フランス全土に 104 のCFTが存在し、森 林面積の約 25%をカバーし、約 5000 のコミューンが参加する。CFT のもと地域関係主体が集まり、圏 域 territoires に由来する森林への様々な需要に応えるため、整備計画 projets が共同で練り上げられ る。これにそった行動を起こすことで、国土整備 aménagement du territoire の中に森林管理を組み込 むことが CFT の目的である。その進め方は、フランスの森林管理に分権的手法を導入するものとして 注目される。制度発足以来 10 年を経た CFT の成果と課題について事例をもとに検討する。 ボージュ山塊 PNR(地域自然公園)における CFT の成果と課題 CFT 調印までの背景 ローヌアルプ州のサヴォア県とオートサヴォア県にまたがるボージュ山塊は、中世サヴォワ公国領の 前史を持つヨーロッパアルプスの前衛山域で、歴史的・地誌的にも特異な同一性を持つ。南北菱形の 地域中央を県境が横断し、シャンベリー、アヌシー、アルベールヴィルなどの都市に囲まれていること から、行政上はいくつもの区域に分断され、地域的に一貫した施策が難しいなどの課題に直面してい た。1995 年、当山域は PNR(地域自然公園)として登録され、ひとまとまりの一体性のある圏域 territoire として、法律上の根拠が与えられた。それまで行政域で分断されていた地域関係者の集結、 バラバラになされていた周辺都市からのニーズへの対応、埋もれがちであった地域遺産の再発見を通 じて、混合組合で運営される PNR が地域経済振興の中核となり、さらに、Natura2000 や LEADER など EU レベルの施策の受け皿ともなった。PNR 設立を通して、地域内の人的ネットワークや他部門にわた るデータの整理がなされ、同じような仕組みを持つ CFT の推進に極めて有利に働き、2002 年、森林法 典改正からわずか1年たらずの間に、CFT の第一号事例としてスタートした。 成果と課題 従来の行政域をまたぐ CFT 圏域=PNR は、地域の一体化した取り組みのベースを提供した。日本 になぞらえて言えば、自然保護と産業振興とにかかる課題について、振興計画などでよく見られる「○ △ゾーン」など当座の紙上の線引きで済ませるのでなく、実質的な本来の意味での圏域を、議論の末 に獲得したということである。その鍵として、合併が進まずフランス地域政策最大の桎梏ともされてきた 最小自治体・コミューンの存在が注目される。圏域境の決定がコミューンの意思に委ねられることを通 し、CFT の圏域は「生きたゾーニング」となる。これらをベースに、森林資源と木材流通・加工の連携が すすめられ、全仏レベルでのアルプス産木材建築物の第一号が、当圏域の村役場庁舎として着工中 である。さらに、2010 年 10 月には、ユネスコのジオパークにフランス3箇所目の認定を受けている。 CFT 運営予算上の制約とそれに伴うアニメーターの雇用期限の問題、圏域内森林資源の利用部門 の未成熟さ、既存行政機関における縦割りの残存、などが今後の課題として挙げられる。 (連絡先:山本美穂 [email protected]) 34 都道府県における森林整備関連補助事業の運用に関する比較分析 ○藤田容代、永田信、古井戸宏道、竹本太郎(東大農) はじめに 平成 23 年度から森林整備の関連制度が大幅に改定された。民有林整備に関しては、低 コスト化・団地化や、搬出・利用の促進を目指して補助のメニュー・内容が一新されたと ころである。変更の一つに標準単価歩掛の統一があり、都道府県林政の現場に影響を与え ると予想される。本研究では、標準単価歩掛の統一等の制度変更にあたり、これまでの都 道府県での補助事業の運用の違いについて比較分析を行ったのでここに報告する。 調査・分析方法 聞き取り及びアンケート、資料照会、各都道府県ホームページ等からの資料収集によっ て、都道府県における森林整備関連事業の制度を調査した。なお、聞き取り調査は平成 22 年 11 月~12 月に、アンケート調査は平成 23 年 1 月にそれぞれ実施した。 比較分析は、都道府県の法定分に加えた任意上乗せ、単独事業、標準単価の歩係の設定 等、自治体ごとの差異が生じる原因と考えられる要素について特に着目して行った。 結果 任意上乗せまたは単独事業については、植林・保育等の作業では、今回回答を得られた 31 自治体中では、1県を除いた全自治体で行っていた。 標準単価の歩係については、作業路開設では「森林整備必携」を準用すると答えた都道 府県が 6 割以上で、独自調査をしている自治体は比較的少なかった。一方、造林・下刈・ 枝打・除間伐作業では独自調査によって決定するという自治体が半数近くであった。 各都道府県の標準単価表から、作業条件(齢級や伐採率、本数等)による区分の方法・ 細かさを比較したところ、植栽本数区分や下刈の回数、除間伐の伐採率や搬出の有無、搬 出の場合の材積または本数、集材距離、玉切等の林内整理の有無等に応じた区分がなされ る等、自治体ごとに様々な区分が取られていることがわかった。なお、こうした区分の中 には、今回の制度変更では設定できなくなるものもある。 一方、「地域条件や政策目標を反映する工夫」についての回答から、これまでの細かな 区分が地域条件や政策目標を反映してなされていることが読み取れた。 考察 今回の調査では、各都道府県で、国庫補助への上乗せや単独事業が独自に実施されてお り、補助事業の標準単価の設定といった手法を組み合わせ、多様な林政が展開されている ことが把握できた。 今回の標準単価の統一は、搬出間伐の促進や施業の低コスト化を狙って設定されたもの とされる。標準単価の設定は、これまでも、地域条件への対応や政策目標への誘導を進め る上で様々な工夫がされていたもので、重要な手法として機能していたと考えられる。制 度変更は、自治体ごとの地域条件・政策目標への対応に一定の限界を与えるとともに、実 質補助額を大きく変化させる。そのため、今後、事業量や採用される技術に変化が生じる と予想される。これまでの多様な運用の評価や今後の事業量の変化の追跡が必要である。 (連絡先:藤田 容代 [email protected]) 35 森林環境税を活用した市町村森林行政政策の現状と課題 ―秋田県及び福島県下自治体の調査から― ○高橋拓也(山形大院農学研究科)・菊間満(山形大農学部) はじめに 現在、31 県で導入されている森林環境税は、2 期目に課税延長している県もあるなど、今後 も継続し、拡大していく見込みがあり、税導入県において森林・林業政策遂行上重要な位置づ けとなっている。中でも、2006 年(平成 18 年)に福島県で導入された「森林環境税」は、県 内市町村へ交付金として配分されており、また、2008 年(平成 20 年)に秋田県で導入された 「水と緑の森づくり税」では補助金として配分され、それぞれ税の活用に特色がある。 本研究では、秋田県及び福島県内自治体における森林環境税を活用する政策を分析対象とし て、市町村が自然環境保全活動や森林環境教育等の施策を遂行する上で創意工夫のある取り組 みが可能な交付金及び補助金事業(以下「事業」と示す。)の現状と課題について考察した。 分析方法と分析結果 秋田県 25 市町村(調査期間:2011 年 6 月 10 日~6 月 30 日)及び福島県 59 市町村(調査期 間:2011 年 2 月 28 日~3 月 31 日)の 84 市町村にアンケート調査票を郵送し、調査を行った。 秋田県は 25 市町村の内 15 市町村から回答を受け(回答率 60.0%)、福島県は 59 市町村の内 20 市町村から回答があった(回答率 33.9%)。結果は以下のとおりである。 1.森林財政と政策に関して…①税導入前と比べ、森林・林業関係予算額が増額した自治体が 多かった。②市では、現在の予算額より少なくて良いと考え、一方町村では、予算額の増加 を望んでいる傾向がみられた。③自治体、議会、住民の三者は、「水資源保全機能」「災害防 止機能」「木材生産機能」を政策上重視する割合が高く、「広報戦略機能」は最も低かった。 2.事業に関して…事務量について、福島県では負担となっている割合が高く、逆に秋田県で は低かった。②事業の創意工夫の有無について、福島県では 50%が有りと回答する一方、秋 田県では 20%に止まった。③環境教育に活用する上で、一般会計と複合的に予算執行してい る割合が高かった。④ほぼすべての自治体が、地域住民やNPO等の団体が積極的に事業に 関わることが重要であると考えていた。 考察 各自治体が進めるべき政策目標と合致した内容となるような事業化を図るためには、県が新 規性のある取り組みを定立させるための具体的指針を提示し、自治体の実情に合った事業の採 択をより推進させることが必要だと考えられる。ただし、人事異動等により、速やかに事業を 定立させるには、困難が伴うことを考慮する必要がある。また、セクションを横断し、実施可 能な「森林環境教育」について、地域住民及び各種団体と連携し、事業を最大限活用していく 必要がある。 (連絡先:高橋拓也 [email protected]) 36 財政分析から見る財産区の機能と持続可能性 ○浅井 美香(一橋大院) はじめに 財産区制度が創設され 120 年以上たった今なお財産区は 55 万 ha の土地を所有し、林野 を所有するものは 2,260 を数える。地域住民によって持続可能な形で森林資源を管理する 個別事例が報告される一方で、管理実態がない財産区も存在する。このように財産区とい っても多種多様であり、その機能と持続可能性を検討する上で財産区の類型化や各類型の 推移の把握が必要となる。 調査方法 総務省は毎年、市町村別に財産区決算状況を集計する。1974 年度以降はその集計結果を 電子データとして保存している。本研究は、財産区決算状況を用いて市町村を類型化し、 各類型の推移を分析することを目的とする。対象年度は 1975 年度、1980 年度、1985 年度、 1990 年度、1995 年度、1998 年度である。市町村ごとの推移を分析するため、分析期間を 平成の大合併が始まる前までとした。各年度のいずれかで財産区が林業費を支出した市町 村を対象とする。対象市町村の数は 583 である。これらを次の 5 つに類型化した。(1)財 産区が立木収入により施業、(2)立木収入および県支出金により施業、(3)県支出金に より施業、(4)立木収入はないが施業、(5)施業せず、である。 結果と考察 表 1:財産区の類型の推移 各年度における類型ごとの市町村数を示し (単位:市町村数) た の が 表 1 で あ る 。1975 年 度 、類 型( 1)が 232 で あ り 、大 半 を 占 め た 。1980 年 度 、( 1)が 50 減 少 し( 2)と( 5)が 増 加 し た 。1985 年 度 、( 2) が 20 減 少 し ( 3) と ( 5) が 増 加 し た 。 1990 年 度 、( 1)が 30 減 少 し( 4)と( 5)が 増 加 し た 。 1995 年 度 、( 2)が 40 減 少 し( 1)と( 5)が 増 加 し た 。 1998 年 度 、 ( 2) が 12 減 少 し ( 3) と ( 4) が 増 加 し た 。 1995 年 度 を 除 い て 、 数 値 の 1 2 3 4 5 1975 232 168 29 90 64 1980 182 195 29 94 83 1985 181 175 41 89 97 1990 151 167 39 105 121 1995 169 127 40 102 145 1998 163 115 45 115 145 大 き い 類 型 に 移 行 す る 傾 向 が あ る 。 市 町 村 別 の 推 移 を み る と 、 す べ て の 年 度 で ( 2) と な る 市 町 村 が 48 と な り 最 も 多 い 。次 は( 1)が 連 続 す る 市 町 村 で 30 と な る 。3 番 目 、 4 番 目 に は 、 1980 年 度 以 降 ( 5) と な る 市 町 村 が 続 く 。 立 木 収 入 や 都 道 府 県 の 支 援 が 継 続 し て あ る 場 合 、持 続 可 能 な 資 源 管 理 が 実 現 し て い る 。結果を解釈する上で①林業費 や立木収入は臨時的な性質を有する、②市町村別の集計値という性格から(2)が出やすい 傾向がある、③立木収入の指標として不動産売払収入も含まれる財産売払収入の項目を用 いたため、(1)と(2)が増える傾向がある、④分収交付金収入は立木収入に含まれてい ない、ことに注意する必要がある。 (連絡先:浅井 美香 ed062002@g.hit-u.ac.jp) 37 森林 CSR としての「企業の森づくり」の課題と展望 ――兵庫県におけるコミッション事業を事例に―― ○吉川知里・原田一宏(兵庫県立大学) はじめに 近年、日本では地球環境問題に加え、洪水や土砂災害の多発によって、森林管理の重要性 が認識され始めたが、現行の公的機関・林業従事者・市民団体による森林管理では十分であ るとは言えない。2000 年代後半に入り、企業の森林に対する CSR(以降、森林 CSR)が活発化 し、森林管理への新たな関与組織として期待されている。現在、日本国内の森林を対象とす る森林 CSR 活動は、社員参加の森林整備活動(「企業の森づくり」)を行う傾向にあり、支援 制度、特に都道府県の支援制度が活用されている傾向にある。本研究では、兵庫県の支援制 度を取り上げ、その支援構造を明らかにするとともに、近年の実施傾向にある社員参加型の 「企業の森づくり」の活動実態および森林 CSR への社員の関わり方について明らかにする。 調査方法 2010 年 8 月より 2011 年 7 月まで、兵庫県の支援組織であるコミッション事業体へ関与し、 支援内容及び企業対応の情報収集を実施した。また、2010 年秋季と 2011 年春季の「企業の 森づくり」活動において、活動に参加している社員への聞き取り・アンケートを実施した。 結果と考察 【支援構造】 全国の各都道府県で独自に支援制度が創設(現在 41 都道府県で創設)され、 国土緑化推進機構のコミッション事業により企業の森づくりの実施を支援する組織の認定 が行なわれている(現在 23 都道府県で認定)。それを受けて兵庫県では、2008 年 4 月の「ひ ょうご・企業の森づくり」制度策定と同時に、支援組織の認定を受けた兵庫県緑化推進協会 により、社員参加の森づくり活動を検討している企業に対して、活動実施のための斡旋・コ ーディネート業務が行われていた。実際の支援業務の流れは、①企業の初期相談窓口、②実 施検討中の企業への支援(企業の要望に応じた活動計画提案・企業からの相談対応・企業活 動地の紹介と見学の斡旋)、③企業が実施を決定した時点で活動地の確定、④活動実施に向 けた具体的な支援(活動計画の作成・現場活動での作業指導者の手配)、という手順であった。 支援組織の構成員として、現場活動を実施する際に必要となる知識や技術を提供する専門 家が所属しているため、企業にとっては現場活動の実施をスムーズに行える環境が整備され ていた。しかし、企業の事業目的(水源保全・里山保全・生物多様性保全など)は具体性に欠 けており、その目的に向けた詳細な現場活動方針も不十分な場合が多く、この両者の間を調 整するための議論が行われないまま現場活動が行われていることが明らかになった。 【活動内容】 2010 年以前は森林管理(植樹・除間伐・下草刈り・植生調査・歩道整備)のみ の活動であったが、2010 年に支援の運営主体を改編し、現在では、参加者対象の遊び(自然 観察・木工クラフト・地域食材料理)や学び(講習・研修)といった活動へと活動範囲を拡大 している。これらの活動により企業は、社員が環境意識を向上させ、それによる活動への継 続参加を目指している。実際に、遊び要素の活動は、参加した社員個々人の楽しみに繋がり、 活動への継続的な参加意欲に繋がっているものの、環境意識の向上ではなく娯楽活動として 捉えられていること、学び要素の活動については、社員の活動自体の理解に繋がるが、継続 的な参加意欲に結びつけるには課題があることが明らかになった。 (連絡先:吉川知里 [email protected]) 38 エンドユーザーによる森林資源利用のアイディアとリミテーション ―A マンションを事例として― ○佐藤孝吉・小華和あおい(東京農大) 1.はじめに 生活の利便性は年々向上し、安価でサービスを受けられるようになった。その一方で便 利さの仕組みや技術、物質循環にかかわる生産過程は益々不透明となってきている。森林 資源利用は、森林の広大な面積と多様な生産物、公益的機能とのバランスなどの特徴を考 慮すると効率の良いサービスの提供が困難であり、収益性は益々低下してきている。エン ドユーザーが立木の状態から森林資源利用に取り組むことは一般的ではないが、その現状 を知ること、そして新しいアイディアを創出すること、生産物に対する愛着を持つことに より、その付加価値をあげられるのではないかと考えた。そこで、都内の A マンション住 民をエンドユーザーの事例とし、立木、素材、製材品、製品と森林資源が変化する中で、 利用に関する行動や意識の変化がどのように見られるかを考えた。 2.調査および分析の視点 森林資源利用の段階を①立木、②伐採木、③製材品、④製品とすると、①②間に樹木の 伐採、運搬、②③間に製材、保管、③④間に加工が行われる。それぞれの段階における活 用の実態とアンケート調査をもとに分析した。 3.森林利用の状況 A マンションは、2006 年 12 月竣工、住民は 29 世帯(90 名)、4 階および 3 階 2 つの建 物からなる。建築や部材にできるだけ自然素材を活用することをコンセプトの1つとし、 建設前に協同運営による組合を組織し、建設地の森林利用について入居前に検討が行われ た。対象とした森林は、A マンション建設予定地に位置し、シラカシやコナラを中心とし た天然生林であり、伐採木の年輪から上層木はおおよそ 100 年生である。森林伐採以前は、 話し合いの中で、1)樹木名の確認、2)直径や樹高を測定、3)自生樹木の一部移植、4)既存 の樹木を活かす要望や計画、5)伐採木に対する供養、6)形質の良くない伐採木を原木とし て、7)シイタケ駒の植菌、8)比較的形質の良い素材を選別し、9)製材所へ運搬、10)保管さ れ、11)製材品を個々や全体として活用してきた。調査の対象とした素材は 24 本で、コナ ラ 11 本(45.8%)、シラカシ 10 本(41.7%)、直径は 20~70cm、長さは、1.5~4mであった。 4.結果および考察 森林資源利用に対する多様なアイディアが出された。利用に関しては、主に技術的、経 済的、使用量、入居後の生活状況などから困難となり興味も低下したと考えられる。 キーワード:エンドユーザー、森林資源、木材利用、A マンション (連絡先:佐藤孝吉 [email protected]) 39 住宅市場における消費者の満足度向上と情報の関係 ○宮本基杖(森林総研北海道支所)、立花敏(筑波大学)、 青井秀樹(元森林総研(現林野庁) はじめに 消費者(施主)は住宅市場において住宅供給者とともに重要な担い手であるが、現在の 住宅市場に消費者のニーズが十分に反映されているとはいいがたい。それは、消費者側の 情報の質・量が住宅供給者に比べて圧倒的に少ないことが関係している。 本報告では、つくば市周辺を対象に実施したアンケート調査をもとに、住宅購入におけ る消費者が持つ情報の質と量を把握するとともに、それが住宅満足度とどのような関係に あるかを検討する。本調査(2010年)は、科学研究費補助事業「木造住宅市場における消 費者の満足度向上のための『情報の非対称性』の解明」(課題番号 22510052)で実施した。 方法 つくば市周辺にある JR常磐線沿線とつくばエクスプレス線沿線の新興住宅地において、 一戸建て住宅 1300世帯に調査票を配布し、199世帯から回答を得た(回答率 15%)。 結果 アンケート調査から、満足のいく住宅づくりに有効な情報収集方法として、次の 4点 が明らかになった。①最も有効な情報収集方法は、住宅見学と営業マンである。②住宅の 基本的情報をはじめ多くの種類の情報を収集する。③契約の決め手については、建築費だ けでなく住宅見学や営業マンを含む複数の項目を検討する。④納得のいく情報を提供する 住宅供給者を選択する。 さらに、住宅市場において消費者が直面する問題として、次の 3点が明らかになった。 ①住宅購入において消費者の情報収集方法が限られている。②限られた情報源の主要なも のは住宅供給者の提供するものであり、しかも住宅供給者によって提供情報の質と量にば らつきがある。③中立・客観的な情報源が不足している。消費者が利用できるような専門 の雑誌・書籍・情報発信が少ない状況も明らかになった。 図 1 契約の決め手(住宅満足度別) (連絡先:宮本基杖 [email protected]) 40 木造古民家の存在形態と林野との関係 ○平野和隆・山本美穂(宇都宮大学) はじめに 長屋門とは、長屋の一部に出入口を設けた門のことで本来は武家屋敷に構えられたが、18 世 紀前半頃に上層農民に建築許可が出されるようになり、明治期には建築の規制が無くなり、多 くの農家で競うように構えられた。栃木県は全国的に見ても長屋門を構える農家が多く、中で も那須烏山市内には 81 棟の長屋門が現存し、特に大木須地区では 12 棟と群を抜いて多い。こ の地域が全国有数の葉タバコ産地であったことが理由として示唆されるが、詳細は明らかでな い。当地区において長屋門が農家のどのような林野利用との関連で存在し残されてきたのかに ついて、当地区におけるタバコ作付けの社会的背景と意義を通して、仮説的に提示する。 調査方法 概況調査:烏山町史、葉タバコ関連史料、古民家調査法等の文献収集・整理、農業集落カー ド分析(戦後土地利用の変化) 、長屋門所有者への予備調査等を実施。集落調査:大木須地区の 長屋門所有者全 12 戸のうち 8 戸の所有者に調査票を用いたインタビュー(長屋門の建築時期、 理由、部材の調達元、山林の利用など)を実施。 結果及び考察 那須烏山市の葉タバコ生産は江戸初期から中期に開始され、稲作に変わる農民の換金作物と して重要な位置を占め、盛んに栽培された。旧烏山町 4 ヶ町村における葉タバコ生産は、大正 中期~昭和初期にピークを迎え、特に大木須地区が属する旧境村は、昭和元(1926)年に耕作 面積約 272 町、一人当たり賠償金約 507 円といずれも県内第一位を誇った。 当地区におけるタバコ作付けの背景と意義について、第一に、集落の各戸に十分な林野面積 が配分されていたこと、第二に、稲作と比べた際のタバコ作付けの優位性、第三に、伝統構法 技術を有する大工の存在と継承、が仮説的に考えられる。 「1 反歩の葉タバコ栽培に必要な落葉 を採取するためには、3 反歩以上の山林が必要」 (奥田,1956)とされ、 「普通の耕地 1 反につ いて落葉採取林 1 反」 (奥田,1956)と比べタバコは多くの山林を必要とする。購入堆肥では 収支が合わない農家経営にとって、タバコ作は広大な林野と集約的な労働力の投入によって、 高収入を実現させる最良の手段であった。各戸が持つ私有林はまた、自家用材の備蓄林として 大きな役割を果たした。タバコに支えられた集落の農家経営は、林野を落葉採取地として利用 する一方で、スギ・ヒノキを植栽し備蓄林として長年温存してきた。そして、経済的な裏づけ を持つ当集落において、極めて完成度の高い木造建築技術を有する大工が世代を継承してきた。 大木須地区に 12 棟もの長屋門が残る素地は、以上のように形作られたと考えられる。 引用文献 (1) 奥田久「八溝山地西麓の葉タバコ栽培地域」『宇都宮大学学芸学部研究論集』第 5 号第 1 部,1956 年,64 頁~76 頁 (連絡先:平野和隆 ma118506@utsunomiya-u.ac.jp) 41 「緑の雇用」事業の展開と評価 ―9年にわたる調査事業の結果から― ○興梠克久(筑波大) 1990 年代以降における林業労働対策は大きく3 つに時期区分することができ,第1 に, 林業の雇用条件を改善して人々が職業として林業を選択しやすくすること(1990 年代前 半),第2 に,林業の経験がない若い人を林業に就業させ,林業労働者全体の若返りを図 ること(1990 年代後半),第3 に,確保した新規就業者を基本に忠実な技術者として早 期に教育し,その後も林業に定着させる(2000 年代),という課題に取り組んでいる。 そして,各時期の代表的な施策が,1991 年:林野庁に林業労働対策室設置,1996 年:林 業労働力確保支援法制定,2003 年:林野庁補助事業「緑の雇用」である。 「緑の雇用」は,林業への就業を希望する人が研修生として林業事業体に雇われ,基本的 な育林・伐出技術をOJT(On the job training,職場内育成研修),Off-JT(Off the job training,社外研修)により体系的に学び,研修にかかる費用を国が林業事業体に助成 するものである。2003~05年の第1期対策(緑の雇用担い手育成対策事業),2006~10年 の第2期対策(緑の雇用担い手対策事業)を経て,2011年からは第3期対策(「緑の雇用」 現場技能者育成対策事業)がスタートしている。 また,「緑の雇用」の一環として林政総合調査研究所により「緑の雇用評価調査」が2003年 から8年間実施されており(2011年度も実施中),26都道府県における現地聞き取り調査 (行政機関・関係団体や林業事業体,研修生等に対する聞き取り調査,14人の研究者が参 加),全国の認定林業事業体や研修生に対する意識調査などの各種調査が行われ,その成 果は毎年報告書として全国森林組合連合会から発行されている。 そこで,本研究では,2010年度で第2期緑の雇用事業が終了するにあたり,これまでの 現地聞き取り調査結果より「緑の雇用」の問題点や林業事業体にもたらした影響を整理す るとともに,それが第3期対策でどの程度反映され,どのような課題が残されているのか を明らかにする。 前者については,これまでの現地聞き取り調査結果をもとにして,報告では以下の点を 中心に問題点や事業体への影響について考察する。①ミスマッチの防止,②事業体の雇用 戦略への影響,③研修効果(技能習熟度)の客観的評価,④研修内容の再検討,⑤教える 側への教育,⑥定着支援の強化。 後者については,第3期対策に入り,「緑の雇用」の性格もそれまでの初期教育として の位置づけから中堅教育,高度教育も行うという,林業労働者のキャリア形成を支援する ものへと変化したといえる。こうしたキャリア形成支援に不可欠なのが,林業における仕 事の明確化(職業能力体系を表す職務構成表の作成)と能力開発の明確化(研修体系), つまり職業能力評価の「見える化」であり,2010年度に行われた研修プログラムの見直し過 程で活用され,研修効果の評価ツールも開発された。しかし,教える側への教育を体系化 するには至っておらず,また,上述した「見える化」の効率的雇用管理体制構築(特に人事 考課面)に向けての活用は今後の課題である。 (連絡先:興梠克久 [email protected]) 42 「緑の雇用」事業の事業体経営への影響と研修生の意識 :鹿児島県を事例として ○ 奥山洋一郎、江口亮、枚田邦宏(鹿大農) 方法・目的 鹿児島県における緑の雇用事業の取り組みについて、鹿児島県・県森林組合連合会、事 業体等に聞き取り調査を実施した。また、平成 19 年度研修生 60 名に対して就業動機や継 続意欲を調査した。これらの結果から、緑の雇用研修生の定着にむけた方策を考察する。 結果 林業労働力の状況を見ると、1999 年と 2009 年を比べると、作業班員数は 2503 名→1687 名と大幅に減少している。しかし、緑の雇用事業が実施された 2005 年以降に限ると下げ 止まり傾向である。2009 年の新規雇用者 212 名のうち 46%が緑の雇用事業の研修生であ り、同事業が労働力の確保に与えている影響は大きい。年齢構成でみても、60 歳以上の占 める割合は、51.6%→26.9%と半減しているが、39 歳以下の割合が 11.4%→23.4%と増加 しており、高齢者層の引退と若年層の増加により作業現場の若返りが進行している。緑の 雇用事業の実施状況であるが、平成 15∼21 年度の合計で 626 名の研修生を受け入れて、 そのうち 275 名が離脱している。森林組合と民間事業体では定着率に違いがあるが、個別 に見ると 3 割程度の事業体もあり、個々の経営体間の差は大きい。 平成 19 年度研修生に対して就業に関する意識の調査を実施した。60 名に質問紙を送付 して 53 名から回答を得た(回答率 88%)。最終学歴は高卒(35 名)が多いが、林業科 4 名・農業科 6 名以外は、林業・林学に関する専門教育を受けた者はいなかった。前職は、 土木建設業(10 名)が一番多かった。前職から年収は大幅に減少しているが、農業等の副 収入を持たない者(47 名)が多かった。学歴・職歴面での不利、収入の減少にも関わらず 林業を志した動機であるが、「特になし(6 名)」「他に仕事がなかったため(5 名)」 という回答が一番多く、回答内容を分類すると、積極的就業動機(16 名)に対して、消極 的動機(24 名)という結果であった。一方、就業の継続意欲は、希望者が 30 名であり、 明確に希望しない者は 1 名だけであった。就業を継続する場合の希望は、給与待遇の改善 (13 名)、各種保険の充実(4 名)が多く、雇用条件の厳しさが明らかになった。 考察 緑の雇用事業は、鹿児島県における林業労働構成に新規就業者数増や年齢構成の若返り という影響を与えていることが明らかとなった。個別の研修生の意識の調査結果では、消 極的な動機で緑の雇用研修生となった者が多数であるが、就業継続意欲が低いわけではな い。一方で、収入面での不安が大きく、また農山村での社会生活基盤の充実も必要となる だろう。研修事業が果たすべき役悪としては、不利な条件にもかかわらず林業を続けたい と希望する研修生に対して、知識・技術だけではなく、社会的意義や個人としてのキャリ ア形成の方向性を明示して、就業意欲を失わせない方策が必要となる。 (連絡先:奥山洋一郎 [email protected]) 43 東北地域における林業事業体の雇用実態 ―雇用改善アンケートの分析を中心に― ○伊藤幸男(岩手大学農学部) はじめに 本報告の課題は、東北地域における林業事業体の雇用実態についてマクロな把握を行う ことである。 それには次のような背景がある。森林・林業再生プランにおいて目標設定されている木 材自給率 50%を達成する上で、林業生産力及び林業生産性の大幅な向上は必須条件である が、それに加え林業事業体が将来展望を持った経営を展開しているのか、高度な技術集団 として労働力を再生産可能な状況で雇用できるのかが重要となってくるだろう。 本報告では、林野庁の調査事業「林業事業体就業環境改善事業」 (2008~2010 年度)に おいて実施したアンケート調査をもとに分析をおこなった。アンケートは全国の優良事業 体(表彰事業体)及び認定事業体、2,086 事業体に郵送によって実施し、939 事業体から 回答を得た(回収率 45.0%)。なお、数値は全て 2008 年の実績である。 結果と考察 東北地域で回答のあった 187 事業体のうち、森林組合が 55 ( 29.4%)、会社 111 ( 59.4%)、 個人経営 3(1.6%)、事業協同組合等 18(9.6%)となっている。これらの事業体の事業量 の総和は、造林・保育が 59,092ha、素材生産量が買取、請負を合わせて 1,552,878m3(う ち主伐が 770,350m3)であった。事業量の規模別でみると、植林・保育面積では 200~500ha が 26.7%と最も多く、100ha 以上層で 67.3%を占める。素材生産量の規模では、1~2 万 m3 が最も多く 22.7%、次いで 5 千~1 万 m3 が 20.8%となっている。 直接雇用の従業員数は、造林、林産のそれぞれの合計で 2,090 人、1,115 人であるが、 このうち 150 日以上就労しているものはそれぞれ、61.0%、86.9%となっている。ほとん どの事業体で、雇用契約や就業規則は文書化され、社会保険への加入率も高い。一方で、 賃金形態は月給制が 16.3%となっているものの、なお 77.9%が日給月給制となっている。 平均年収は、20 代 228.7 万円、30 代 265.9 万円、40 代 291.9 万円、50 代 298.7 万円と決 して高い水準ではなく、40 代で頭打ちになっている。 一方で、事業体の生産性は上昇しており、主伐の生産性は 5 年間で 5.77m3/人日から 8.07m3/人日へ、その結果コストも 4,944 円/m3 から 4,732 円/m3 へと減少した。この 成果として、山主に一定程度還元できたとする事業体は 36.8%、今後努力したいとする事 業体は 44.2%であった。一方、従業員への賃金を上げたとする事業体は 34.3%、変わらな いとする事業体は 59.9%となっている。 アンケートの対象となった事業体は比較的優良な事業体であるが、事業規模が比較的大 きく生産性も上昇している。雇用条件等の法的対応は全般に進んでいるものの、山主や従 業員の賃金への還元まで実現できている事業体は 3 分の 1 程度であり、それ以外は厳しい 経営環境のもとで現状維持にとどまっているものと思われる。 (連絡先:伊藤幸男 [email protected]) 44 国勢調査にお ける林業労働の扱いの変遷 ○林 宇一・永田 信(東大院農) はじめに 本報告では、国勢調査における産業分類と職業分類において林業が どのように扱われて 来たか、定義上の変遷と数値上の変遷を整理することにより明らかにしたい。 分析方法 国勢調査において林業を見る場合に用いられる分類は、主に産業では大分類に相当する 「林業」、職業では中分類に相当する「林業作業者」である。加えて、寺下・永田( 1994) が指摘するように、林業の主要な担い手とされる森林組合は、その一部が「協同組合」(中 ・小分類)に産業分類されている。また、現在までに、産業分類・職業分類 ともに大・中 ・小分類段階で分類枠は数度変更されている。このため、産業分類における「林業」及び 「協同組合」、職業分類における「林業作業者」がそれぞれどのように位置づけられてい るか、各分類枠の変遷を把握する。 考察 森林組合の事業所が「2種類以上の事業を行なっている」場合、「協同組合」に産業分 類されることとなり、実際に少なからぬ数の「林業作業者」が「協同組合」に産業分類さ れている。そして、1980 年以降の変化を見てみると、「林業」・「その他」と「協同組合」 の「林業作業者」数の減少速度は大きく異なっている。この背景には、もちろん「林業」 に分類される事業体における雇用環境が、「協同組合」に分類される事業体より 以上に悪 化した、ということも想定されるが、むしろ、森林組合の事業所の少なくない数が「林業」 から「協同組合」へ分類替えされ、結果として「林業」と「協同組合」の「林業作業者」 数の変化にこのような違いが生じている、と想定することが妥当と言えよう。 最近の森林組合の動向として、まず多角化事業の多角化が考えられる。多角化事業を多 角化し2種類以上の事業を行うことになれば、分類上「林業」から「協同組合」への分類 が変更されるからである。更に森林組合の合併の影響も挙げられよう。すなわち、森林組 合同士の合併に伴い、林業以外の事業を新規に展開するようになったか、もしくは既に2 種類以上の事業を展開している森林組合との合併となれば、同様に「協同組合」へ分類替 えされるであろう。 引用文献 (1) 寺下太郎・永田信「『国勢調査』に見る林業就業者の推移‐コウホート法による分 析‐」『林業経済』546,1994 年,14-22 頁 キーワード:林業労働,国勢調査,産業分類,職業分類 (連絡先:林 宇一 uichi@fr.a.u-tokyo.ac.jp) 45 副業的個人請負人および自伐林家の就業実態と労働安全の課題 ―労災保険第二種特別加入制度を通じて― ○川﨑章惠(九大院農)・興梠克久(筑大生環) はじめに 1960 年 代 以 来 進 め ら れ た 林 業 労 働 政 策 は 、通 年 雇 用 労 働 者 を 主 な 対 象 に 労 働 安 全 の 確 保 、雇 用 条 件 の 改 善 、労 働 者 の 確 保 を 行 っ て き た ( 西 田 、 2005) 。一 方 、 国 勢 調 査 ( 2005) を み る と 林 業 就 業 者 の う ち 常 時 雇 用 者 は 47%、 事 業 主 と 家 族 従 事 者 が 33%を 占 め て い る 。そ こ で 、本 報 告 で は 、個 人 請 負 人 や 自 伐 林 家 の 労 働 安 全 の 課 題 を 明 ら か にすることを目的とする。 調査方法 2008 年 8~ 9 月 に 一 人 親 方 団 体 耳 川 地 区 林 業 生 産 協 同 組 合 の 事 務 局 で あ る 耳 川 広 域 森 林 組 合 へ 聞 き 取 り 調 査 を 実 施 し ,一 人 親 方 団 体 加 入 者 を 対 象 に 郵 送 法 に よ る ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し た ( 回 収 数 22 通 、 回 収 率 79% ) 。 調 査 項 目 は 回 答 者 の 属 性 , 一 人 親方になった経緯,就業実態,森林組合との関係と今後の就業意向である。 ま た 、 本 報 告 の 補 論 と し て 、 2008 年 11 月 に 一 人 親 方 団 体 県 中 地 方 労 災 保 険 一 人 親 方 事 務 組 合 を 通 じ た 、労 災 保 険 加 入 窓 口 の 一 つ で あ る ふ く し ま 中 央 森 林 組 合 小 野 事 業 所へ団体の設立に賛同した経緯と加入・脱退の実態について 聞き取り調査した。 結果と考察 耳 川 地 区 林 業 生 産 協 同 組 合 の 加 入 者 は , 43%が 50~ 59 歳 と 壮 年 層 が 多 く , 1 人 や 夫 婦・親子で作業を行う小規模な経営体のみである。加入者は森林組合の請負はせず, 地 域 産 業 で あ る 炭 焼 き 原 木 生 産 や 自 営 林 業 の み を 行 う 者 も 多 い た め ,林 業 請 負 業 へ の 就 業 日 数 が 0 日 の 者 が 63%と 多 い 。 林 業 請 負 業 に よ る 年 収 は 50%が 200 万 円 未 満 と 低 い 一 方 で , 400 万 円 以 上 の 者 も 同 数 と 二 極 化 し て い る 。 本 事 例 は 地 域 の 林 業 請 負 人 や 自 営 林 業 者 に 対 し て ,森 林 組 合 が 組 合 員 で も あ る 彼 ら へ の サ ー ビ ス と し て 一 人 親 方 団 体 の 運 営 を 行 っ て い る 点 で 評 価 で き る 。一 方 で ,県 単 事 業 に よ る 林 退 共 の 掛 け 金 補 助 を 受 け る た め に 一 人 親 方 団 体 に 加 入 し て ,労 災 保 険 に は 加 入 し な い 者 も み ら れ 、さ ら に 森 林 組 合 と 事 業 発 注 関 係 に あ る 個 人 請 負 人 の 中 に は 労 災 保 険 に 加 入 し て い な い 者 も み ら れ る 。労 災 保 険 第 二 種 特 別 加 入 制 度 は 任 意 加 入 で あ る が ,労 働 災 害 対 策 と し て 制 度 の 周 知 ,労 災 保 険 加 入 促 進 が 求 め ら れ る 。 だ が 、加 入が進まない背景には、林業従事者の就業実態と制度がそぐわないとも指摘できる。 引用文献 (1) 西田尚彦「林業労働対策の展開過程」柳幸・志賀編者『構造不況下の林業労働問題』 全国森林組合連合会,2005 年,27-43 頁 キーワード:労災保険,請負,自伐林家 (連絡先:川﨑章惠 [email protected]) 46 林業事業体の安全衛生対策の現状 -経営形態および経営規模別にみた特徴- 山田容三(名大院生命農) はじめに わが国の死傷年千人率は平成 2 年から 20 年以上も 30 前後に推移しており、全産業平均の 13 倍に相当している。また,未だに年間 50 人前後の尊い生命が失われており,林業は最も危 険な産業であると考えられる。森林・林業再生プランを背景に利用間伐を中心とした木材生産 の圧力が高まる中、労働災害の増加が危惧されている。本研究では、経営形態ならびに経営規 模別に林業事業体の労働災害の発生状況と講じられている安全衛生対策の現状を明らかにし、 林業事業体への安全指導の指針を得ることを目的とする。 調査方法 林業事業体の労働災害発生件数と安全衛生活動の実態を把握するために,全国森林組合連合 会と林政総合調査研究所を通して,林業事業体就業環境改善対策に係わるアンケート調査を, 平成 20 年度~平成 22 年度までの 3 年間行った。3 年間の回収データから得られた有効回答 794 件について、死傷年千人率と安全衛生活動の各項目間について独立性の検定(χ2 検定)を行 い、労働災害の発生を減少させるのに効果的な安全衛生活動を洗い出した。 評価項目 評価基準 小項目 中項目 結果と考察 安全衛生 管理体制 死傷年千人率を経営形態別に見る 安全衛生教育 と、森林組合が最も高くなった。一方、 問1 (01) 安全管理者、安全衛生推進者等の選任 問1 (02) 作業現場の管理 死傷年千人率が低くなった。死傷年千 安全制度・活動 十分実施 問2 (08) 車両系建設機械運転者の技能講習の受講 全てが受講 問3 (05) リスクアセスメント 問3 (07) 危険箇所への注意標識の設置 問4 (01) 作業現場ごとに安全担当者の任命 安全体制 人率を経営規模別に見ると、あまり顕 問4 (04) 安全問題を扱う担当者が活発に活動 問4 (06) 緊急連絡体制の周知 問5 (03) 安全作業のマニュアル化 著な差は見られなかったが、造林保育 問6 (03) 安全活動の内容の定期的見直し 安全活動 問7 (03) 災害に関する調査に当事者も参加 問8 (03) 安全に関する問題を全員に周知 事業は 31~50 人規模で、素材生産事 問8 (05) 作業の危険について作業者同士で話し合う公式な場 問9 (01) 定期時の健康診断 業は 11~30 人規模が最も高くなった。 死傷年千人率と統計的に有意な関 係が見られた安全衛生活動は、表に示 問9 (02) 心と体の両面にわたり健康相談のできる体制 安全衛生・対策 問9 (04) 薬品等が現場に配備され、作業員に周知 問9 (07) 保護具、手工具等は定期的に点検、不良のものは補修 安 全 衛 生 問10 (02) 安全保護具(チェーンソー用防護ズボンなど)の普及・定着 労働環境改善 問10 (03) 作業現場での休憩施設の改善(スペース、暖房など) 問10 (05) 防寒対策による屋外での労働改善 問11 (03) 技術や経験を生かし、作業の運営を円滑にしていく役割 す合計 41 項目となった。これらの項 目間の関係をケンドール順位相関係 数で検定すると、職場風土の良い事業 高齢者対策 安全衛生管理も徹底されているとい う構図が推察された。 職 場 風 土 労 災 積極的に 取り組む 積極的に 取り組む 積極的に 取り組む 積極的に 取り組む 積極的に 取り組む 積極的に 行っている 積極的に 行っている 積極的に 行っている その通り 問13 (09) 安全が確認できないときは、作業を中断 その通り 問13 (10) 各自、仕事仲間が規則を守らないときは注意 その通り 問14 (01) 仕事場はオープンで楽しい雰囲気 その通り 問14 (02) 職場の一体感が強い その通り 問14 (03) 事業体の方針(社訓など)をみんなに徹底 その通り 問14 (04) 仕事場での人間関係には問題はない その通り 問14 (07) 仕事の打ち合わせなどのミーティングは十分行う その通り 問14 (08) みんなが知恵を出しあって積極的に問題解決 その通り 問14 (09) 仕事場ではみんなが仕事にやりがいを感じる その通り 問14 (12) 事故防止のための提案や改善意見はきちんと処理 その通り 職場風土 問15 死傷年千人率 注) 取り組んでいる 0件 0 受講していない 取り組んで いない 取り組んで いない 取り組んで いない 取り組んで いない 取り組んで いない 行っている 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない いいえ その通り 労働災害発生件数注) 取り組んでいる はい 問13 (07) 各自が安全規則や作業手順を守る 問15 取り組んでいる 行っている 職員の安全意識 問13 (08) 各自が安全を確保するための工夫 ・行動 労災発生状況 一部が受講 取り組んでいる 積極的に 行っている その通り LL まあまあ実施 実施していない 取り組んでいる いいえ 積極的に 行っている 積極的に 行っている 積極的に 行っている 積極的に 行っている 積極的に 行っている 積極的に 行っている 積極的に 行っている 積極的に 行っている 積極的に 行っている 積極的に 行っている 積極的に 行っている 積極的に 行っている L 管理職員 まあまあ実施 実施していない はい 問13 (04) 作業で疑問が生じたら、仲間や上司に積極的に質問 体では作業員の安全意識も高く、安全 衛生のための対策がしっかり取られ、 問11 (05) 体力の衰えを自覚させて無理をさせないよう指導 問11 (06) 高齢労働者の視認性をよくするため大きな表示 安 全 意 識 班長・現場主任 十分実施 問3 (03) TBM(ツールボックスミーティング) M 専任していない 事業主 問2 (06) 先進林業事業体や優良林業事業体の視察 問3 (01) 指差し呼称 安 全 衛 生 管 理 H 専任している 問2 (03) 作業内容変更時の安全衛生教育 問3 (02) 危険予知活動 森林組合に比べると会社は、全体的に チェック (評価点) 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない 行っている 行っていない どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り どちらかといえ ばその通り 年0.2件 & 死亡0 どちらとも いえない どちらとも いえない どちらとも いえない どちらとも いえない どちらとも いえない どちらとも いえない どちらとも いえない どちらとも いえない どちらとも いえない どちらとも いえない どちらとも いえない どちらとも いえない どちらとも いえない >年0.2件 & 死亡0 >年1件 or 死亡有 <=50 <=100 >100 注) ただし、5年~10年の平均値を用いる。 (連絡先:山田容三 [email protected]) 47 森林組合の組織運営と業務分担 ―役職員・従業員へのアンケート調査より― ○都築伸行(森林総研) はじめに 林野庁業務資料によれば 1994 年から 2007 年までの新規林業就業者数は,32,938 人で, そのうちの 64%に当たる 21,087 人が森林組合による雇用である。このように 1990 年代か らの一連の労働力対策と 2003 年度からの「緑の雇用」事業によって,新規林業就業者の「数」 の確保はある程度達成され,今後は「定着・キャリア形成をいかに図れるかが問われる段 階に移行」しており 1) ,「森林・林業再生プラン」では「施業プランナー」として提案型 集約化施業の牽引役,また「森林経営計画」の代理申請者としての期待を寄せられている。 森林組合の自律的改革を促すためには,それぞれの地域における事業展開特性を明らかに するとともに,組織運営との関係を分析する必要がある。本研究では,利用間伐への対応 が必要な現段階において森林組合林産事業の地域特性がどのように発現し,それと組織運 営がどう関係しているかを解明することを目的とし,アンケート調査を行った。昨年 2010 年の大会においてアンケート結果の概要を報告したので,本年は,森林組合を運営する組 織の構成員である役職員・従業員の組織運営と業務分担に関する分析を行う。 研究方法と対象 研究方法は,先行研究及び森林組合統計分析による各県単位の事業動向把握と利用間伐 への対応が特徴的な県の抽出した後に,全国の単位組合へのアンケート調査と事例として 抽出した県への森林組合の役職員・従業員個人へのアンケート調査分析である。事例とし た県は,①福島県(地域素材生産シェアが低く,民間に比べ森林組合が不活発な地域), ②岐阜県(地域素材生産シェアが高く,販売部門割合は低い地域),③高知県(地域素材 生産シェアが高く,販売部門割合も高い地域)の 3 県とした。 結果と考察 分析の結果,福島県などの林産事業の地域素材生産シェアが低い組合が多い地域では, トップダウンによる官僚型の組織運営の傾向がみられ,岐阜県など地域素材生産シェアは 高いが総損益に占める販売部門割合は低い組合が多い地域では,ミドルからロワーの比較 的下部の職員が地域と密に関わっている傾向にあり,高知県など林産事業が活発で地域素 材生産シェアの高い組合が多い地域では,現場経験が豊富な役員や幹部職員が多く存在す ることが推察された。 引用文献 1) 志賀和人「森林組合組織論と林業就業者問題」,2008 年,森林組合 No.460, キーワード:森林組合,組織運営,事業展開 (連絡先:都築伸行 [email protected]) 48 スイスにおける森林経営・管理組織と林業技術者 ―経営責任者と森林管理区の形成過程- ○志賀 1 和人(筑波大) 課題と方法 本報告は,スイスの森林経営責任者(Betriebsleiter)と森林管理区(Forstrevier)の形成 過程に関する文献研究,統計分析とカントン・ベルン及びグラウビュンデンでの現地調査 からフェルスター(Förster)の存在形態と本質を明らかにすることを課題とする。ドイツ語 圏諸国の森林管理において, “Forstrevier”は学術的・行政的に重要な概念である。ドイツ とオーストリアでは,大規模森林経営における下位の構成単位,スイスでは,行政的管理 義務と結びついた地域森林管理の単位(森林管理区)と理解される1)。 2 森林経営の展開と森林管理区の形成過程 スイスの森林経営は,市町村・住民ゲマインデ有林等を対象に連邦資格を有するフェルスター を経営責任者とする 2,648 の経営組織である。一方,森林管理(Forstverwaltung)は,林務組織 による私有林を含めた森林管理区に対する森林法に規定された任務の執行であり,ゲマインデ・ フェルスターの管轄する森林管理区では,カントンが市町村・住民ゲマインデに交付金を支給し, 森林法に基づく選木記号付け,伐採許可,助言活動,森林現況の監視等の業務を委任している。 本報告では,①Blöchlinger(1995)に基づきカントン段階の森林経営と森林管理制度の展開過 程におけるフェルスター教育の史的展開を検討し2),②カントン・ベルンにおける森林管理区 と住民ゲマインデ・ベルンの経営組織の再編と,③カントン・グラウビュンデンにおける 2011 年カントン森林法改正と森林管理区交付金の再編過程の検討を通じて,スイスのフェルスター の存在形態と本質を検討する。 3 結論:スイスのフェルスターの本質 以上のスイスにおける森林経営,森林管理の歴史的展開過程とフェルスターの関係性に 関する考察からスイスのフェルスターは,①地域との関係性:ゲマインデ自治に裏打ちされた 地域的公共性,②経営との関係性:現場労働経験を持つ経営責任者(保続単位) ,③行政との関 係性:森林法制に規定された森林高権に基づく任務(hoheitliche Aufgabe)に関する森林管理 区責任者として,歴史的に刻印されている点が重要である。森林・林業再生プランの「日本型フ ォレスター」は,以上の本質要件のすべてが欠落し,スイスの林業技術者像の対極にある。 引用文献 1)Fabio Lanfranchi (1996) Organisation und Aufgabe der Forstreviere : Aktueller Zustand und Entwicklungstendenzen, ETH Zürich,S. 2)Von Alfred Blöchlinger (1995) Die Ausbildung der Bannwarte im Kanton Solothurn von 1835-1970, AG Druck und Verlag (連絡先:志賀和人 [email protected]) 49 Inbound tourism at Kamikochi from a national park gateway perspective. ○Tom Jones (Meiji University) 1. Introduction. Kamikochi is an Alpine valley (alt. 1500m) flanked by 3000m mountains. The number of annual visits to this national park hub, which attracts tourists, day hikers and mountain climbers, was estimated at 1.5 million in 2008, but it is in decline. Inbound visitors are seen as a potential growth segment, but no previous research has investigated the demography or characteristics of Kamikochi’s international visitor market. 2. Research method and aim. Surveys and semi-structured interviews were conducted during summer 2010, a year of stabilization for tourism prior to the 3-11 disaster. A total of 188 questionnaires were collected at Kamikochi (n=74), and its two gateways of Matsumoto (n=72) and Takayama (n=42). After first analysing tourist demography, the second aim was to identify Kamikochi’s postitioning in circuit travel around East and West Japan. 3. Results and conclusions. i) Demography; results showed that almost 40% were repeat visitors to Japan, with >50% at Kamikochi. In terms of their purpose in visiting Japan, there were more holiday-makers at Takayama, over 80% of whom were staying in Japan for 2-3 weeks. There were more business visitors at Kamikochi, and to a lesser extent, Matsumoto, where visitors tended to stay longer or be currently living in Japan. One quarter of all– and one third of Kamikochi– visitors were currently living in Japan, with some degree of language ability. ii) Circuit travel; many Takayama (>60%) and Matsumoto (>50%) visitors stayed ≥2 nights, but at Kamikochi day-trips from the gateways (Takayama and Matsumoto) were most common (>40%). Takayama visitors formed a circuit with Kanazawa and Kyoto, but also came from Tokyo due to the high use rate of the JR pass (90%). The most common circuit for Matsumoto visitors was Tokyo. Interview results suggest the trend for longer stays at the external gateways may be influenced by accommodation pricing and guidebook information. 4. Discussion. As the increasingly international face of Kamikochi’s visitor market demonstrates, national park management faces new challenges. An understanding of gateways and circuit travel is vital for marketing parks, as well as providing the basis for visitor flow mitigation. Ultimately, addressing such underlying challenges requires a more flexible, collaborative form of management that can respond to changes in visitor demand. Key words:Kamikochi, national park, gateway, inbound tourism. (Contact:T. Jones :[email protected]) 50 自然地域の管理とリスク認識 ―リスク回避度を用いた分析から― ○庄子康(北大)・久保雄広(北大院)・柘植隆宏(甲南大)・愛甲哲也(北大) はじめに 近年,国立公園などのレクリエーション地域において,リスク管理が大きな社会問題と なっている。本研究では Holt and Laury (2002)のリスク回避度を,選択型実験の評価に 組み入れることで,人々のリスク認識がレクリエーション行動にどのような影響を与えて いるのかを分析する。 調査方法 リスク回避度は図 1 に示すように,二者択一 のくじを回答者に提示して,それを選択しても らうことで評価を行う。当たりはずれの確率を 変化させた複数の組み合わせを提示し,どのよ うな組み合わせで選択を変化させたのかを観察 する。このリスク回避度は,人々の全般的なリ スク認識を評価する尺度であるが,レクリエー 図1 リスク回避度評価のための質問 ションのリスク認識の評価にも用いることができる(庄子他,2010)。 選択型実験のデータは,大雪山国立公園の高原温泉における,ヒグマとの遭遇リスクの あるハイキングを対象としたものである。この選択型実験では,ヒグマの出没状況や管理 状況が異なる複数の歩道状況を提示し,どのような歩道状況であれば利用するのかを,WEB 調査によって聴取したものである。WEB 調査は 2009 年 12 月に(株)日経リサーチのモニ ターを対象として実施した。4,000 名のモニターに対してアンケートの協力依頼を送信し, 最終的に 931 名からの回答を分析に用いた。分析は条件付ロジットモデルを用い,リスク 回避度は属性変数との交差項として分析に導入した。 結果と考察 平均的な回答者は,歩道にヒグマの痕跡がある状況やヒグマの姿を見かけるような状況 を好ましくない状況として評価していたが,リスク回避的な回答者ほど,それらをより好 ましくないと評価していた。一方で,ヒグマとの遭遇リスクを減少させるような管理状況 に対しては,リスク回避度は影響を与えていなかった。 引用文献 (1) Holt, C.A. and Laury, S.K. (2002) Risk Aversion and Incentive Effects. The American Economic Review 92(5), 1644-1655 (2) 庄子康・柘植隆宏・愛甲哲也・柴崎茂光・久保雄広・山本清龍・八巻一成(2010) レクリエーション地域における一般市民のリスク認識―WEB アンケート調査の結果 から―,林業経済学会 2010 年秋季大会要旨集. キーワード:リスク回避度,選択型実験 (連絡先:庄子 康 [email protected]) 51 生物多様性保全政策の経済評価 ―選択実験による評価― ○栗山 浩一(京大)・吉田 謙太郎人(長崎大) はじめに 生物多様性の保全策を検討する際に、生態系サービスの価値を金銭単位で評価する必要 性が生じることが多い。生物多様性を守るためには多額のコストが必要であり、そのため の資金をいかにして確保するかが議論となっているが,そこで生態系サービスの経済価値 評価が注目を集めている。 本研究では,生物多様性の保全策の経済効果を評価するために,選択実験による評価を 行う。選択実験は,複数の環境対策の代替案を回答者に提示し,最も好ましいものを選択 してもらうことで,代替案の価値を評価する(栗山・庄子,2005)。生態系サービスの非 利用価値を評価できることから世界的に注目を集めている手法である。これまで,個々の フィールドでの評価は行われてきたが,本研究では,全国規模での生物多様性の保全策を 検討するために,全国を対象とした保全策を選択実験で評価した。 調査方法 2011 年 2 月に Web 調査により選択実験のアンケート調査を実施し,1088 人から回答を得 た。選択実験では,保護林面積率,環境保全型農業率,自然公園面積率,湿地保全面積率, 絶滅危惧種数,および負担額の6つの属性を採用した。これらの属性を組み合わせること で仮想的な対策を設計した。回答者には3つの対策が示され,そ の中で最も好ましいもの を選択してもらった。対策3は現状であり,すべての設問で共通であるが,対策1と対策 2はさまざまな内容が提示される。各対策は直交表により作成した。選択実験では,一人 につき8回の質問を行った。推定は条件付きロジットおよびランダムパラメータ・ロジッ トで行ったが,すべての属性が有意であり,かつ符号条件が満たされていた(Train, 2009)。 結果と考察 推定結果をもとに3種類の政策評価を行った。いずれの政策も絶滅危惧種は現状より改 善されるが,政策1は保護林および湿地保全,政策2は環境保全型農業を重視したもので あり,政策3は全体バランスを重視したものである。集計価値は, 政策1が 6,626 億 円 , 政 策 2 が 4,596 億 円 , 政 策 3 が 4,862 億 円 で あ っ た 。 引用文献 (1) 栗 山 浩 一 ・ 庄 子 康 編 著 『環 境 と 観 光 の 経 済 評 価 国 立 公 園 の 維 持 と 管 理 』勁 草 書 房 ,2005 年 (2) Kenneth E. Train, Discrete Choice Methods with Simulation, 2nd ed., Cambridge University Press, 2009. キーワード:環境評価,環境経済学,自然公園 (連絡先:栗山 浩一 [email protected]) 52 朝鮮総督府官僚・齋藤音作の緑化思想 ○竹本 太郎(東大院) はじめに 近現代日本における学校林をテーマとして研究を行うなかで、現在の全国植樹祭をはじ めとする緑化運動の発端が 1934 年に大日本山林会が開始する愛林日にあり、その愛林日 の発端が植民地朝鮮における記念植樹にあることを知った。この記念植樹は、学校林の発 端となる 1895 年の牧野伸顕文部次官による学校樹栽日を参考にして朝 鮮 総 督 府 官 僚 ・ 齋 藤 音 作 (以 下 、 音 作 )が朝鮮半島に導入したもので、単に愛林思想を普及させるだけのも のではなく、治山治水や木材生産を強く意識していた政策であった。近 年 、環 境 史 分 野 で は「 環 境 と 帝 国 」に 注 目 が 集 ま っ て い る 。こ れ ら は グ ロ ー バ ル な 環 境 保 護 主 義 の 成 立 過 程 を 植 民 地 の 森 林 官 な ど の 思 想 と 行 動 、国 際 会 議 の 進 展 か ら 探 る も の で 、主 に イ ギ リ ス の 植 民 地 を 対 象 と し て い る 。本 研 究 は 、日 本 の 植 民 地 に お い て こ の 構 図 を 検 証 す るものであるが、今回は、音作の思想と行動に焦点を絞って報告したい。 調査方法 音作の足跡を追うため、文献収集と実地調査を行った。国内では、東大林政学研究室、 東京大学図書館所蔵文献の整理とともに、2011 年 3 月に音作の子孫を訪問して手記や写真 を収集した。国外では、同年同月に韓国において、国立中央図書館およびソウル大学図書 館の文献を収集したほか、忘憂里墓地公園の音作の墓や砂防事業の跡地を調査した。 結果と考察 【朝鮮渡航前】[東京時代]本多静六、川瀬善太郎、河合鈰太郎らと 1891 年に東京農林学 校を卒業(林学士)し、山林局に勤務、東京牛込日本基督教会にて受洗する。[台湾時代]日 清戦争に従軍した経験を買われて 1895 年に林圯埔撫墾署長となり、玉山(新高山)探検に本 多とともに成功する。[山梨県時代]帰国後、石川県技師を経て、1902 年より山梨県第六課 初代課長として「森林整治」を担う。[北海道時代]1906 年から技師として任用され、国有 林存廃区分の実施、エゾマツ・トドマツの天然更新法の研究、野幌林業試験場の開設などを 行う。【朝鮮渡航後】[総督府時代]日韓併合前に技師として招聘され、併合後殖産局山林 課初代課長になり、朝鮮林野分布図や森林令の作成、記念植樹の創設を担う。1915 年に営 林廠長として新義州に赴くが、1918 年に依願免官となる。その後、齋藤林業事務所を開業 し、私有林管理・経営の請負業を営むかたわら、京城日本基督教会長老として活躍するが、 1936 年にソウルにて死去する。林 学 士 、 キ リ ス ト 者 、 軍 人 が 同 居 す る 音 作 の 思 想 と 行 動 は 、一 貫 し て 、治 山 ・ 緑 化 を 善 と し て 各 地 へ 伝 道 す る も の で あ っ た 。こ れ が 、近 代 林学技術の普及や植民地の林政に与えた影響を今後の課題として研究を進めたい。 キーワード:記念植樹,砂防事業,環境史,帝国林業 (連絡先:竹本 太郎 take@fr.a.u-tokyo.ac.jp) 53 REDD+におけるセーフガードの論点 ― 実証活動における地域住民の権利の位置づけ ― ○百村帝彦(九大熱農)・横田康裕(森林総研) 1970 年代後半以降、途上国での森林管理政策は、その管理の担い手として地域住民の積極 的な関与を促進させていった。社会林業やコミュニティ林業など住民参加の森林管理を前提とした 援助が、国際機関や先進国の援助機関によって推進され、それが各途上国の森林管理政策を後 押し、地域住民の森林利用に関する権利の移譲を加速させることとなった。一方、近年議論が本 格化してきた REDD+では、その実施主体は国・準国レベルの主体を基本とすることとなっている。こ の場合、中央政府の森林管理の権限が強化される可能性が高いと考えられ、これまで推し進めら れてきた森林管理の住民への権利移譲の流れとは、逆の方向に進む可能性もある。その一方、 REDD+の議論においても森林ガバナンスや地域住民の生計などについて「セーフガード」という 用語で検討が進められている。本報告では、REDD+の議論をセーフガードの観点から整理するとと もに、REDD+の先行的取組である「実証活動」における地域住民の権利の位置づけを整理する。 UNFCCC の COP16 における REDD+の決定事項に、森林ガバナンスや地域住民の生計など 「セーフガード」の項目を「促進・支援する」とされ、REDD+プラス実施において住民の生計が考慮 されることとなった。このような中、UN-REDD、FCPF、CCBA など REDD+におけるイニシアティブ が、セーフガードに関するガイドライン・指標を整備しはじめ、セーフガードの基準化を試みる動きも 見られる。 REDD+「実証活動」は、COP13 決定において、国レベルの REDD+準備活動のための制度構築 ・能力育成の一環として先行的取組であるプロジェクトレベルのパイロット事業が促進されたことに 端を発する。準備活動の検討事項に、地域住民の生計なども挙げられおり、その制度の検討が行 われている。これらの実証活動は、国際機関や援助機関の支援をもとに実施されているものが多 い。また、これとは別に炭素排出権の獲得を目的としたプロジェクトレベルでの実証活動も、先進国 の援助機関や企業などを中心に進められている。その後、REDD+を含めた気候変動枠組条約の 新たな合意に時間がかかることが明らかになるにつれ、後者の炭素排出権獲得を目的とした実証 活動が、先進国の援助機関や民間企業などを中心に増えていくこととなった。 国際機関や援助機関が支援する実証活動には、地域住民の権利への配慮を促す努力が見ら れるものが多い。これらの多くが、援助機関が実施してきた既存の森林保全プロジェクトやその概念 を、REDD+の枠組みに置き換えて実施しているものとみることができる。これら実証活動では、地域 住民の権利や利益を確保した形での実施が計画されている。 一方、民間企業を主体とした実証活動は、炭素排出権の獲得を目指すプロジェクトである。これ らの事業では、炭素排出権獲得のための方法論の確立に力点を置いており、地域住民の生計や 森林ガバナンスといった項目の検討は、まだ十分に取り掛かられる段階ではない。 援助機関等の主体による実証活動においては、その運用において、セーフガードが設計どおり に実施されていくのかを評価する必要がある。また、民間等を主体としたものでは、セーフガードの 項目を今後いかに実効性のある形で盛り込み運用していくのかを検討する必要がある。 (連絡先:百村 帝彦 hyaku@agr.kyushu-u.ac.jp) 54 REDD+プロジェクトへの地域コミュニティの関与 ○相楽美穂(地球環境戦略研究機関) 気候変動枠組条約第 16 回締約国会議(UNFCCC COP16)において、その奨励が合意され た REDD+は、顕著な改善が見られない途上国での森林減少・劣化問題に対するあらたな 対処策として期待されている。しかし一方で、これまでの森林開発において地域住民の権 利の侵害が問題となってきたことを背景として、REDD+の実施においても、地域コミュニ ティに与える影響が懸念されている。 そのため、地域住民の権利の尊重や REDD+への関与の問題は、UNFCCC のもとでも、 セーフガード の議論の中で取り上げられている。COP16 の決定書 1/CP.16 付属書Ⅰに記 載されているセーフガードは、(1)国の森林プログラム及び関連の国際動向に沿った行動、 (2)透明性・実効性のある国の森林ガバナンス構造、(3) 先住民族及び地域住民の知識と権 利の尊重、(4)先住民族及び地域住民を含む利害関係者の実質的な参加、(5)天然林及び生物 学的多様性の保全、(6)反転のリスクへの取り組み、(7)ディスプレイスメント低減、の促進・ 維持の 7 つとなっている。本報告では、これらの記載事項に沿って、(2)、(3)、(4)の内容 に焦点を当て、REDD+プロジェクにおける地域コミュニティの関与のあり方・その森林利 用権について、そして国レベルの森林政策・REDD+政策における地域コミュニティの権利 問題について整理・分析する。 分析対象は、プロジェクトレベルにおいては、クレジット創出を目指し、かつプロジェ クト計画書(PDD)がウェブ上で公開されている REDD+実証活動 (インドネシア・カンボジ ア・ケニア・ペルー・ベリーズ)とした。クレジット化を計画しているプロジェクトに対象 を絞ったのは、プロジェクトの重点がクレジットの創出に置かれる結果、クレジットに直 結しないセーフガードの問題が軽視される恐れがあるためである。そして、クレジット化 を目指すプロジェクトを、事業実施主体のサイト全域での森林利用が保障されて、営利事 業が可能な「事業型」と、事業実施主体のサイト全域での森林利用が保障されていない「活 動型」とに分類した。このように森林管理区分との関連において REDD+プロジェクトを 分析することにより、国レベル森林政策と関連法制の課題が明らかとなる。 国レベルの森林政策・REDD+政策については、計画・実施中の REDD+プロジェクトが 最も多いインドネシアを取り上げ、主にウェブ上で公開されている文書をもとに分析する。 これまでの森林開発に伴う地域コミュニティの権利の侵害問題から、その対策は国レベル で講じられてきた。国レベル REDD+セーフガードの対策は今後、それら既存の対策をも とに形成されるだろうことから、従来の森林政策及び森林に依存する地域コミュニティの 権利に関わる法制について整理する。また、近年、地域コミュニティによる森林管理を確 保するあらたな制度としての村落林と REDD+政策との関係についても、取り上げる。 現在、REDD+プロジェクトは県レベルあるいはさらに小さい面積の範囲で実施され始め ているが、将来的には国レベルでの実施が検討されていることから、地域レベルと国レベ ルの双方の視点から、地域コミュニティの関与について考察することが求められる。 連絡先:相楽美穂(sagara @ iges.or.jp) 55 C35 Benefit Sharing Allocation on Community Collaborative Forest Management (CCFM) in Java ○Ratih Madya Septiana (Kyushu Univ.), San Afri Awang, Wahyu Tri Widayanti (Gadjah Mada Univ.) , Takahiro Fujiwara, Noriko Sato (Kyushu Univ.) Introduction Most part of state forest in Java has been managed by state forest company (Perhutani) since 1964. In 2001, Perhutani initiated Community Collaborative Forest Management (CCFM). CCFM is a management system of forest resources carried out jointly by Perum Perhutani and villagers or Perhutani and rural community in cooperation with interested parties (stakeholders) with the spirit of sharing, in order to achieve sustainable use of forest resources and benefits of forest resources can be realized in an optimal and proportional. The objectives of this study are to clarify allocation method of benefit sharing and discuss about impact of benefit sharing allocation to forest farmers. Research Method Case studies were carried out in two villages, Glandang Village (non-existence of good teak stands) and Surajaya Village (existence good teak stand) in the Forest Management Unit (KPH) Pemalang, Central Java . The total forest area of KPH Pemalang is 24,423.5 Ha and there are 702.1 ha in Glandang village and 1400.2 ha in Surajaya village. Research carried out by means of literature review and interviews in depth on the key informants. Research Findings and Discussion Benefit sharing allocation is done in two levels; 1) Perhutani and LMDH (Forest Village Community Institution) consisted of local villagers, and 2) benefit sharing allocation in internal LMDH. In addition, the allocation method within LMDH is distinguished: 1) presence or 2) absence of forest farmer at compartment. The Benefit sharing allocation is implemented based on agreement according to the need and characteristics of respective villages, such as public infrastructure (e.g. school, village government office, public road etc) and social fund (e.g. scholarship and assistant for sick people, etc). About 50% of benefit sharing is allocated for forest farmers when they manage forest at compartment. Allocation for forest farmers is important because they have a big contribution can be achieve sustainable forest and economic community welfare. (Corresponding: Ratih Madya Septiana [email protected]) 56
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