抄録集 - 全日本鍼灸学会

第52回(社)
全日本鍼灸学会学術大会
(香川大会)
抄録集
主
催
社団法人
後
援
行政
全日本鍼灸学会
厚生労働省
香川県
高松市
医師会
(社)日本医師会
(社)香川県医師会
鍼灸関連業界
(社)日本鍼灸師会 (社)香川県鍼灸師会
(社)高松市医師会
(社)全日本鍼灸マッサージ師会 (社)香川県鍼灸マッサージ師連合会
教育機関
関連学会
報道機関
(社)東洋療法学校協会
(財)東洋療法研修試験財団
(社)全国病院理学療法協会
日本理療科教員連盟
日本良導絡自律神経学会
日本臨床鍼灸懇話会
(社)日本東洋医学会
NHK高松放送局
日本伝統鍼灸学会
KBS瀬戸内海放送
TSCテレビせとうち
山陽放送
岡山放送
山陽新聞社
四国新聞社
西日本放送
も
く じ
(ページは抄録集セクション内の番号です)
挨
拶
(社)全日本鍼灸学会会長
丹澤章八 ……………………………………………………………………… 1
第52回(社)全日本鍼灸学会学術大会会長
大麻悦治 …………………………………………… 2
第52回(社)全日本鍼灸学会学術大会実行委員長
学術大会の概要・会場周辺のご案内
越智久男 …………………………………………… 3
交通アクセスのご案内 ……………………………………………………………………………………………… 5
学術大会のご案内 …………………………………………………………………………………………………… 7
会場案内図 …………………………………………………………………………………………………………… 9
認定制度指定講習のご案内
大会参加者へのお願い
……………………………………………………………………………………… 12
…………………………………………………………………………………………… 13
宿泊等のご案内
…………………………………………………………………………………………………… 15
大会プログラム
…………………………………………………………………………………………………… 18
大会日程表
………………………………………………………………………………………………………… 35
特別演題抄録
特別講演Ⅰ
「鍼の胃運動に及ぼす影響とその作用機序」
…………………………… 36
特別講演Ⅱ
「愛媛東医研の抱えてきた2つの使命」
…………………………………… 38
特別講演Ⅲ
「世界的長寿郷の食生活」
市民公開講座
「ひとのいのちも自然のなかのもの」
基調講演
「日本発『鍼のグローバルスタンダード』」 ……………………………… 44
教育講演
「お灸の歴史」
シンポジウムⅠ
「局所治療と遠隔部治療」
シンポジウムⅡ
「灸研究の現在」
実技セッション
「日本における伝承灸」
………………………………………………… 40
…………………………………… 42
……………………………………………………………… 45
………………………………………………… 46
…………………………………………………………… 49
…………………………………………………… 53
パネルディスカッションⅠ「OSCEの実際とその問題点」 ………………………………………… 57
パネルディスカッションⅡ「関節リウマチに対する鍼灸治療の果たす役割」 ……………………… 63
パネルディスカッションⅢ「我が国における鍼灸の多施設ランダム化
比較試験の現状と今後の展望」
…………………………… 69
セミナーⅠ
「ここまでわかった鍼灸医学」……………………………………………… 71
ランチョンセミナー
「女性のライフスタイルに応じた鍼灸医療」……………………………… 75
ワークショップ
「鍼灸安全性の情報更新と具体的方策の検討」
ワークショップ
「鍼の適応症を見つける」
ワークショップ
「鍼灸の経済評価に関する研究の試みと今後の方向性」
一般演題抄録
………………………… 76
………………………………………………… 77
……………… 78
……………………………………………………………………………………………………… 80
キーワード用語解説 ………………………………………………………………………………………………159
索引
キーワード索引 ………………………………………………………………………………………………201
人名索引 ………………………………………………………………………………………………………206
大会役員名簿・抄録集編集後記・編集後記 ……………………………………………………………………216
協賛・協力企業一覧 ………………………………………………………………………………………………218
245
挨
− 1−
拶
学会史上はじめて四国で開催される学術大会
社団法人
全日本鍼灸学会
会
長
丹澤
章八
第52回の本学会年次学術大会が四国香川の高松で開催されることになりました。長い学会史上でも学
術大会が四国で開催されるのは初めてのことであり、まさに記念すべき学術大会といえます。
この歴史的な大会開催に向けて、渾身ご努力をいただいた大会会長:大麻悦治先生、実行委員長:越
智久男先生をはじめ香川地方会の諸先生方に、まずもって学会員を代表し、衷心より感謝の気持ちを捧
げるものであります。
さらにまた、大会運営の実際にあたっては四国医療専門学校の先生方や学生諸氏が奮って積極的にご
協力くださっていること、ならびに諸般の事情を超えて本大会の企画構築に献身的な応援を惜しまなかっ
た学術部の活動もあわせてここにご披露し、会長として深く謝意を表する次第です。
本大会の企画は、今日的鍼灸医学・医療の従事者には欠かすことができない鍼灸界・医療界の学術情
報で満たされています。
心の支え(信仰)と伝統医療が結びついている聖地香川に集い、本大会のテーマである「国民に愛さ
れる鍼灸」の担い手として、また21世紀に生きる医療人として、ともに学び語りあい、本学会員こそが
所持すべきそれぞれの「グローカル(グローバルかつローカル)な鍼灸―伝統医学・医療―の知」を磨
き、その知をより一層輝けるものにて、国民の健康増進に還元・奉仕されることを念願してやみません。
−2−
挨
246
拶
第52回(社)
全日本鍼灸学会学術大会開催にあたって
第52回(社)全日本鍼灸学会学術大会
大会会長
大麻
悦治
第52回(社)全日本鍼灸学会学術大会が瀬戸大橋を渡り、弘法大師
ご誕生の地香川県で開催されるにあたり、一言ご挨拶申し上げます。
二千年の歴史を有する東洋医学、鍼灸が、千二百有余年の間変わ
らぬお大師さん信仰、発祥の地で50回を超える最長最大の学会を開
催させて頂くことに、主催県として関係各位に深く感謝申し上げま
す。
二十世紀の後半、有史以来未曾有の発展を遂げた日本経済が、千
年紀の節目を境に大きな転換期を迎えたのはご承知のとおりですが、
夢の架け橋とまで云われた瀬戸大橋の開通に四国民が歓喜したのは
まだ十年ちょっと前のこと。莫大な借金と高い通行料に三つの大橋
がはや負の遺産化しつつあります。
保健、医療、福祉の分野も例外ではなくなり、特にはり師、きゅ
う師、柔道整復師の養成に異業種の参入を交え、戦国時代の到来と
いっても過言ではありません。経済の衰退に端を発したとは云え、
摘果のできない果樹園で売れない果実を栽培し、これを野鳥に喰い荒らされるような制度。このままで
は鍼灸師の過当競争を招き、低価額化や技術力の低下、また安易な技術を求め、鍼を使わない鍼灸師が
続々と誕生し、免許以外の施術に走ったり、ツボ療法士等というような新しい名称を考えたり、医療従
事者の垣根の無い競争が生き残りをかけ、正に戦国時代、戦前に逆戻りの感さえします。
思えば敗戦直後、米英軍占領統治下で灸等は野蛮な行為だとして禁止令(所謂マッカーサー旋風)が
出かかり、東洋医術の一大危機を迎えたことがありました。当時の伝統医術に対する理解ある有識者や
鍼灸業者、国民が一丸となって存続を勝ち取り、当地高松市においても「あ・は・き業法」の制定にあ
わせ、昭和23年6月、柳谷素霊先生を迎えての学術大会が開催され、次々に全国各地に展開され世界の
鍼灸の礎になりました。
少数非競争の過保護の時代から、多数で競争協調へと転換されつつある今、一大チャンスと捉え、東
洋人には東洋医学、国民に愛される国民のための鍼灸として、この学会が新たな一歩となりますよう、
数多くのご参加をお待ちいたしております。
247
挨
− 3−
拶
第52回(社)
全日本鍼灸学会学術大会の開催にあたり
第52回(社)全日本鍼灸学会学術大会
実行委員長
越智
久男
(社)全日本鍼灸学会学術大会が、初めて四国の地香川で開催され
るはこびとなりました。
“おだいっさん”で親しまれている「弘法大師」ゆかりの遍路八
十八箇所もまた四国、そして、癒しの国四国です。
香川大会は、「国民に愛される鍼灸」をテ−マとして開催いたし
ます。そして開催地の特色を活かし、“お灸”に関する教育講演・
シンポジウム・実技セッションを企画しました。
四国の“お灸”に関係する事柄を紐解いてみますと、「こんぴら
の灸」、「焙烙(ほうろく)灸」,「擂鉢(すりばち)灸」、呪いに「砂
灸」(修行大師に由る)が盛んであることが確認されました。また、
伊予の道後には、その昔から「湯ざらし艾」として多く製造販売さ
れていたことも解りました。“お灸”が盛んな土地柄を反映するよ
うに、香川の銘菓「灸まん」・寺の門前に「やいとまんじゅう」な
ど有名なお菓子が創られ、今ではその土地を代表する「お土産品」
になりました。
会場であります香川県県民ホ−ルのすぐ隣は,水城で名高い玉藻(たまも)城。城前は風光明媚な多
島美の瀬戸内海、東には古戦場の屋島が広がります。JR高松駅前の広場には海水の池を有し、天下の
名園「栗林(りつりん)公園」があります。また、少し足をのばせば「讃岐の金比羅山」と、豊かな自
然が日々の疲れを癒してくれることでしょう。
交通の便も大変良くなり瀬戸内海には美しい橋が三本も架かり海の景色を楽しませてくれますし、高
速道路も開通したことから車でのアクセスは格段と良くなりました。
「美しい青い四国」へ皆様のご参加を会員一同心よりお待ち致しております。
終わりに、この地で開催するにあたり、四国医療専門学校のご支援、ご協力を賜りましたことを厚く
お礼申し上げます。
−4−
248
第52回(社)全日本鍼灸学会学術大会の概要
テ
ー
マ
国民に愛される鍼灸
サブテーマ
日本発 鍼灸のグローバルスタンダード
学会会 長
明治鍼灸大学名誉教授
丹澤章八
大会会 長
大麻学園理事長
大麻悦治
実行委員長
大会会 期
(社)全日本鍼灸学会香川地方会会長
越智久男
平成15年6月6日(金)∼8日(日)
大会会 場
香川県県民ホール
〒760-0030
香川県高松市玉藻町9番10号
TEL:087-823-3131
大会事務局
〒761-8064
FAX:087-823-3124
香川県高松市上之町2-10-37
東洋医学研究所内
第52回(社)全日本鍼灸学会学術大会事務局
TEL:087-865-9555
FAX:087-866-5400
E-mail:[email protected]
◆懇親会
会員の交流の場として懇親会を企画いたしました。つきましては、一人でも多くの会員がご参加され
ますようお誘い申し上げます。
日
時:6月7日(土)
午後6時より
場
所:ウェルシティ高松(香川厚生年金会館)
(懇親会会場までは学会会場よりバスにて送迎いたします)
参加費:5,000円
懇親会の参加につきましては当日の申し込みも受け付けています。総合受付にてお問合せ、お申し込
みください。
◆学会会場および
懇親会会場のご案内
249
◆交通アクセスのご案内
東京(羽田)・福岡・鹿児島
東京・横浜・名古屋・京都
大阪・神戸・福山・広島
徳島・松山・高知
航空便
高松空港
高速バス
空港連絡バス
約 40 分
高松駅
JR
岡山・徳島
愛媛・高知
徒歩
約7分
学会会場
香川県
県民ホール
− 5−
−6−
250
航空便(平成15年5月現在)
羽田空港
→ 高松空港
1日10便
福岡空港
→ 高松空港
1日1便
鹿児島空港 → 高松空港
1日1便
JR
(新幹線)
新幹線
各駅
快速マリンライナー
岡山駅
高松駅
《所要約60分》
(四国内各地)
特
各駅
急
高松駅
高速バス(平成15年5月現在)
東京駅
高松駅
1日1便
新宿駅
横浜駅
高松駅
高松駅
1日1便
1日1便
名古屋駅
高松駅
1日1便
京都駅
高松駅
1日6便
大阪駅
高松駅
1日16便
阪急梅田駅
高松駅
1日16便
南海難波駅
高松駅
1日13便
JR難波駅
高松駅
1日22便
新神戸駅
高松駅
1日10便
三ノ宮駅
高松駅
1日18便
福山駅
広島駅
高松駅
高松駅
1日2便
1日2便
徳島駅
高松駅
1日12便
松山駅
高松駅
1日12便
高知駅
高松駅
1日13便
(注)高速バスは全便指定制になっておりますので、事前に指定席券をお求めください。ご予約はJR四国
ワ−プ高松支店でも承ります。
自家用車
高松自動車道/高松中央IC又は高松西ICより香川県県民ホールまで約20分
251
− 7−
学術大会のご案内
(1)受付
・総合受付は北館2階ホワイエにて行います。
・6月6日(金)は12:00より、6月7日(土)8日(日)は8:15より開始します。
・予約登録済の方は、あらかじめお送りしました参加証をご提示いただき、登録確認の後に、コング
レスセットをお受け取りください。
・当日申し込みの方は、「当日受付」で手続きをしてください。
(2)参加費
1.予約受付
正会員
2.当日受付
10,000円
学生会員
5,000円
正会員
12,000円
学生会員
6,000円
一般
15,000円
一般
17,000円
学生
7,000円
学生
8,000円
予約締め切り:5月2日(金)当日消印有効。以後は当日扱いとさせて頂きます。
(3)参加証
参加証に名前・所属をご記入のうえ、大会期間中、会場内では必ずご着用下さい。
(4)抄録集
抄録集は、各自ご持参ください。残部がある場合は当日1部2,000円でお分けいたしますが、再交付
はいたしません。
(5)総合案内
総合案内は、北館2階ホワイエに設置し、会場の案内や伝言板設置、忘れ物、点字プログラム配布、
歩行や移動に関する会場内手引き等のサービスを行います。
(6)目が見えない方、見えにくい方
移動や歩行に関するサービス(交通情報や手引き等)の利用を希望する場合は、事前に下記までご
連絡下さい。
担当:井下正三
TEL:087-862-8981
E-mail:[email protected]
(7)大会会期中の会議
大会会期中は以下の式典・会議が開催されますので、関係各位はご出席下さい。
[会期中に行われる会議の日程および会場]
理事会・・・・・・6月6日(金)11:00∼13:00
第1会議室(本館5F)
開会式・・・・・・6月6日(金)13:00∼14:00
A会場(グランドホール)
諮問委員会・・・・6月6日(金)14:00∼15:00
第1会議室(本館5F)
支部長会議・・・・6月6日(金)16:00∼17:00
第1会議室(本館5F)
評議員会・・・・・6月6日(金)17:00∼19:00
F会場(大会議室)
鍼灸学術団体会議・6月7日(土)12:00∼13:00
総会・・・・・・・6月7日(土)13:00∼14:00
第1会議室(本館5F)
A会場(グランドホール)
閉会式・・・・・・6月8日(日)15:00∼16:00
A会場(グランドホール)
(8)駐車場
大会参加者のための駐車場は用意いたしておりません。会場周辺に400台程度の駐車場がありますの
で、そちらをご利用ください。
−8−
252
(9)クローク
北館2階エントランスホールと北館5階ロビーにクロークを設置いたします。貴重品、壊れ物は各
自でお持ち下さい。
(10)昼食会場
1.学会期間中の昼食時間に合わせて、讃岐うどん屋台を臨時出店いたします(チケット制)。ご用意
しているのは、讃岐うどん、おにぎり、いなり寿司です。屋台での現金による購入は出来ません
ので、あらかじめチケットをお買い求め下さい(各種単品およびセットのチケットをご用意して
おります。)
チケットの販売場所:本館2階エントランスホール
屋台の場所(昼食会場):県民ホール隣の玉藻公園内(披雲閣:ひうんかく)
時間:11:30∼13:30
2.弁当をお申し込みの方は「弁当引換券」と引き換えていただき、披雲閣の昼食会場でお召し上が
りください。
3.本館6階にレストランがあります(席に限りがあります)。
(11)業者展示場
次の場所にて、業者展示を行っております。
場所:本館2階:グランドホールのメインロビー
北館5階:多目的大会議室前ロビー(ホワイエ)
なお、コングレスセット内の引き換え券をご持参の方には、北館5階 日本理学療法器材工業会ブー
スにて景品をお渡しいたします。
(12)会場案内
A会場 ……………………………………………………(本館2階)グランドホール
B会場
……………………………………………………(北館2階)アクトホール
C会場
…………………………………………………(北館5階)多目的大会議室
D会場
…………………………………………………(北館5階)多目的大会議室
E会場
…………………………………………………(北館5階)多目的大会議室
F会場 …………………………………………………………(北館4階)大会議室
総合受付 ………………………………………………………(北館2階)ホワイエ
総合案内
………………………………………………………(北館2階)ホワイエ
(社)全日本鍼灸学会本部案内所(認定制度指定講習)
……(北館2階)ホワイエ
学会本部
…………………………………………………… (本館5階)特別会議室
大会本部
…………………………………………………(本館2階)第5・6楽屋
253
会場案内図
− 9−
− 10 −
254
255
− 11 −
− 12 −
256
認定制度指定講習のご案内
[指定講習]
第52回(社)全日本鍼灸学会学術大会(香川大会)における指定講習は以下の通りです。
セミナーⅠ
6月6日(金)
14:00∼17:00(A会場)
特別講演Ⅰ
6月7日(土)
11:00∼12:00(A会場)
特別講演Ⅱ
教育講演
6月7日(土)
6月8日(日)
16:00∼17:00(A会場)
9:00∼10:00(A会場)
特別講演Ⅲ
6月8日(日)
11:00∼12:00(A会場)
パネルディスカッションⅢ
6月8日(日)
13:00∼15:00(B会場)
[指定講習の受講について]
* 指定講習が始まる10分前から講習開始より10分後まで受講カードを配布します。
* 受講カードには氏名・生年月日は必ず、その他もできるだけご記入ください。
* 受講カードはホール出口に設置する回収箱に、指定講習終了後各自で入れてください。
回収箱の設置場所
A会場(グランドホール):2階B扉、2階C扉
B会場(アクトホール):2階B扉、2階C扉
なお、会場内におられる会員で会場外に出ない方のために、会場内にてカードを回収する作業も同
時に行います。
* 学術大会の指定講習では1講座につき3点が加算されます。指定講習の受講は自由ですが、認定申
請の資格となる受講数は最高3講座です。3講座以上の受講証を提出されても9点(3講座×3点)
以上の加算はされません。
[認定制度について]
* (社)全日本鍼灸学会認定制度は、「学会員の鍼灸医学に関する学術並びに資質の向上を生涯にわたっ
て図る」ことを目的として導入されました。
* 定められた履修基準の配点によって、5年間で80点以上取得する必要があります。今回の全日本
鍼灸学会学術大会参加によって5点加算されます。そして、指定講習を受けると最大3講座9点が
加算され合計14点になります。また、学術大会での発表演者にはさらに2点加算されます。
* 学会期間中、北館2階ホワイエに(社)全日本鍼灸学会本部案内所を設けますので、認定制度および
指定講習についてご相談下さい。
* 認定制度についてのお問合せは、学会事務局にお問合せください。
学会事務局
〒170-0005
東京都豊島区南大塚3-44-14
TEL 03-3985-6188
FAX 03-3985-6135
日本鍼灸会館
email [email protected]
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− 13 −
大会参加者へのお願い
●一般口演・ポスター発表者の先生方へ
1.一般口演
1)一般口演の発表時間は7分間(終了1分前に演台の前のランプが黄色に変わります)、質疑応答は
5分間です。
2)スライドは35mm(ライカ版)で10枚まで(厳守)とします。演題のタイトルおよび発表者につい
ては、発表中サブスライドにて映写します。また、最後のスライドは【結語】とし、発表内容を
箇条書きにして下さい。
3)プロジェクターは正面1台で、1面のみの映写とします。
4)演者の先生は発表時間の1時間前までに各発表会場前のスライド受付にて受付を済ませて下さい。
スライドは各自でホルダーに入れていただき、必ず試写して順序および天地をご確認下さい。
5)演者の先生は、発表時間の20分前までに次演者席(演題に向かって左側最前列に掲示)でご待
機下さい。
6)発表終了後、スライドは速やかにスライド受付にてお受け取り下さい。
7)スライド受付は8:15∼17:00(8日(日)は15:30)です。
2.ポスター発表
1)ポスター発表の発表時間は7分間、質疑応答は7分間です。
2)ポスター発表の先生は発表時間の1時間前までにポスター
90cm
会場前のポスター受付にて受付をお済ませ下さい。
3)ポスター用パネルの掲示エリアは横90cm×縦180cmです
(右図参照)。例年よりも横幅が若干狭くなっております
のでご注意ください。A3版の用紙8枚を目安として下
演題番号
演題名・
所属・氏名
30cm
さい(最大10枚まで)。文字の大きさは2∼3m離れた位
置から充分読めるようご配慮下さい。
4)大会側でパネルの左上にあらかじめ演題番号を掲示して
おきますので、指定された掲示エリアに掲示してくださ
本文・図表など
い。
5)ポスター掲示用のピンはポスター受付に用意しておきま
すのでご利用ください。
150cm
6)ポスターの掲示・撤去は原則として下記に示す時間内に
行って下さい。なお、撤去時間を過ぎても回収されない
ポスターは大会本部にて処分させていただきます。
ポスター掲示
ポスター撤去
6月6日(金)
13:00∼15:00
6月7日(土)
8:15∼ 9:00
6月8日(日)
15:00∼15:30
− 14 −
258
●座長の先生方へ
1.一般口演の座長の先生方へ
1)一般口演の座長の先生は、ご担当セッション開始20分前までに各会場のスライド受付にて来場
されたことをお知らせ下さい。
2)ご担当のセッション開始20分前に次座長席(演題に向かって右側最前列に掲示)でご待機下さ
い。
3)セッション開始時間になりましたら、会場の進行アナウンスに従って壇上にお進みいただき、セッ
ションを開始して下さい。
4)口演の発表時間は7分間(終了1分前に演台の前のランプが黄色に変わります)、質疑応答は5分
間です。進行は座長にお任せしますが、時間厳守でお願いいたします。
2.ポスター発表の座長の先生方へ
1)ポスターの座長の先生は、ご担当セッション開始20分前までに各会場のポスター受付にて来場
されたことをお知らせ下さい。
2)セッション開始時間になりましたら、セッションを開始して下さい。
3)ポスターの発表時間は7分間、質疑応答は7分間です。進行は座長にお任せしますが、時間厳守
でお願いいたします。
●
質問をされる方へ
質問をされる方は、発表が終了した時点でフロアのマイクスタンドの後にお並び下さい。座長の許
可を得てから、所属または地方会名と氏名を明らかにしてご発言下さい。ご発言時にはマイクをご使
用下さい。質疑応答時間が限られていますので、要点のみを簡潔にご質問下さい。質問を希望されて
いて、質疑応答時間が終了した場合はフロアで発表演者の先生に直接ご質問下さい。
●
ビデオ・カメラ撮影などについて
会場内で、大会本部の許可のないビデオ撮影、ストロボを使用した写真撮影は、学術大会の運営に
支障を来たし、他の参加者の迷惑となりますので堅くお断りいたします。
●
会場内での携帯電話の使用について
会場内では携帯電話の電源を切るか、マナーモードに切り替えて下さい。また、講演中の通話は他
の方に迷惑となりますのでなさらないようにお願いいたします。
259
− 15 −
宿泊等のご案内
1. 宿泊のご案内
(1)宿泊期間は平成15年6月6日(金)・7日(土)の2日間です。
※上記のほか、前泊および後泊の宿泊手配も承ります。
(2)宿泊料金は1泊朝食付・消費税・サービス料込みのお1人様当りの料金です。
(3)ツインルームは、2名様利用時のお1人様当りの料金です。
ホテル名
客室タイプ
宿泊料金
申込番号
交通アクセス
シングル
¥11,800
A−1
ツイン
¥10,800
A−2
シングル
¥10,300
B−1
ツイン
¥9,500
B−2
シングル
¥9,500
C−1
ツイン
¥8,500
C−2
シングル
¥8,100
D−1
シングル
¥7,000
E−1
ツイン
¥6,000
E−2
シングル
¥6,000*
F−1
シングル
¥5,500
G−1
ダブル
¥5,800
G−2
高松ワシントンホテルプラザ
シングル
¥8,900
H−1
JR高松駅より車で7分
ロイヤルパークホテル高松アネックス
シングル
¥8,900
I−1
JR高松駅より車で7分
ウェルシティ高松
シングル
¥7,000
J−1
JR高松駅より車で7分
全日空ホテルクレメント高松
JR高松駅より徒歩1分
リーガホテルゼスト高松
JR高松駅より徒歩8分
高松東急イン
JR高松駅より徒歩8分
ホテルニューフロンティア
オークラホテル高松
JR高松駅より徒歩3分
JR高松駅より車で4分
高松シティホテル
東横イン高松**
JR高松駅より車で4分
JR高松駅より車で7分
厚生年金会館
* 高松シティホテルの宿泊料金を変更させていただいております。
**東横イン高松のみ素泊まりです。軽食程度がサービスになります。
2. 昼食弁当のご案内
(1)ご希望のお客様は下記までお申し込みください。
(2)お弁当のメニューは幕の内弁当(お茶付)です。メニューは日替わりになります。
設定日/6月7日・8日(2日間)、弁当単価 1,000円(お茶付・税込)
(3)お弁当は会場(本館2Fエントランスホール)にて、「弁当引換券」と引き換えさせていただきます。
(4)県民ホール周辺の食事場所は限られておりますので、ご注文をおすすめいたします。
※県民ホール隣の玉藻公園披雲閣等の昼食会場をご用意しております。
− 16 −
260
3. 交通手配のご案内
JR、航空機、高速バス等の交通手配につきましても、ワープ高松支店が承ります。交通手配をご
希望のお客様は下記お申し込み先までお問合せ下さい。
JR四国では四国各地の観光地をJR特急券(往復)に食事、入浴、散策等をプラスして
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贅沢に楽しめる日帰り旅行「駅長推薦あじな散歩道」をご用意いたしております。詳しくはパンフレッ
トをご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
4. お申し込み方法
(1)下記までお問合せ・お申し込みください。(E-mailでもお申込を承ります。)
(2)お申し込み1件につき、通信費として500円を申し受けます。
(3)お申し込み後、宿泊確認票・弁当引換券・請求書・ホテル所在地図を送付させていただきますので、
請求書に記載された期日までにご入金ください。
※指定日までにご入金がない場合はご予約を取り消す場合がありますのでご了承下さい。
●お申し込み先
〒760-0011
香川県高松市浜ノ町1-20(JR高松駅内)
JR四国ワープ高松支店
担
当
:
八
木・大
原
TEL:087-851-1326 FAX:087-821-7734 E-mail: [email protected]
※営業時間 10:00∼18:00(月∼金)、10:00∼17:00(土・日・祭日)
5. ご送金方法
(1)現金書留(全日本鍼灸学会雑誌第53巻1号に綴じ込みの申込書を同封ください)
(2)銀行振込:百十四銀行
本店
普通
2232958
四国旅客鉄道㈱ワープ高松支店(送金手数料はお客様負担でお願い致します)
(3)クレジットカード(1.JCB
2.VISA
3.AMEX)
6. 宿泊等取消料
(1)取消及び変更される場合は、お早めに文書(FAX等)にて弊社までご連絡ください。
(2)下記の取消料及び通信費を差し引いた残額を後日ご返金致します。
(3)取消連絡なしの不泊につきましても、宿泊料の100%を御請求させていただきますのでご注意くだ
さい。
■宿泊に関する取消料
宿泊日の7日∼2日前
宿泊料の20%
前
日
宿泊料の50%
当日又は不泊
宿泊料の100%
大会プログラム
平成15年(2003年) 6月6日(金)
∼8日
(日)
香川県県民ホール
− 18 −
262
大会プログラム
■特別演題の部
特別講演Ⅰ
「鍼の胃運動におよぼす影響とその作用機序」
司
演
日
場
特別講演Ⅱ
「愛媛東医研の抱えてきた2つの使命(医療上の使命と研究上の使命)」
司
演
日
場
特別講演Ⅲ
会:尾崎 昭弘 (明治鍼灸大学 教授)
者:真鍋 立夫 (大会副会長・(社)香川県鍼灸師会 会長)
時:6月8日(日) 10時00分∼11時00分
所:A会場(グランドホール)
「お灸の歴史」-科学史の立場から司
演
日
場
シンポジウムⅠ
会:大麻 悦治 (大会会長)
者:小笠原 望 (大野内科 院長)
時:6月8日(日) 13時30分∼14時30分
所:A会場(グランドホール)
日本発「鍼灸のグローバルスタンダード」
司
演
日
場
教育講演
会:越智 久男 (大会実行委員長)
者:森下 敬一 (国際自然医学会 会長)
時:6月8日(日) 11時00分∼12時00分
所:A会場(グランドホール)
「ひとのいのちも自然のなかのもの」
−四万十川のほとりの在宅医療の経験から−
司
演
日
場
基調講演
会:丹澤 章八 (全日本鍼灸学会 会長)
者:光藤 英彦 (愛媛県立東洋医学研究所 所長)
時:6月7日(土) 16時00分∼17時00分
所:A会場(グランドホール)
「世界的長寿郷の食生活」
司
演
日
場
市民公開講座
会:咲田 雅一 (明治鍼灸大学 教授)
者:高橋
徳 (米国デューク大学 助教授)
時:6月7日(土) 11時00分∼12時00分
所:A会場(グランドホール)
会:矢野
忠 (明治鍼灸大学 教授)
者:東郷 俊宏 (京都大学 人文科学研究所)
時:6月8日(日) 9時00分∼10時00分
所:A会場(グランドホール)
「局所治療と遠隔部治療2」-運動器疾患を対象としてⅡ-
コーディネーター:小川 卓良 (東京衛生学園専門学校)
形井 秀一 (筑波技術短期大学)
篠原 昭二 (明治鍼灸大学)
指定発言:白石 武昌((財)東洋医学研究所)
263
森山 朝正 (筑波技術短期大学)
日 時:6月7日(土) 9時00分∼11時00分
場 所:A会場(グランドホール)
− 19 −
シンポジウムⅡ
「灸研究の現在」
座
長:戸田 静男 (関西鍼灸短期大学 教授)
會澤 重勝 (東京衛生学園専門学校)
「灸基礎研究の概観」
會澤 重勝 (東京衛生学園専門学校)
「施灸部位の組織学的検討」
校條 由紀 (名古屋大学、すこやか鍼灸院)
「灸の免疫系への作用」
東家 一雄 (関西鍼灸大学)
「温灸の作用機序」
仲西 宏元 (明治鍼灸大学)
日 時:6月7日(土) 14時00分∼16時00分
場 所: A会場(グランドホール)
実技セッション 「日本における伝承灸」
座
長:中村 辰三 (明治鍼灸大学医療技術短期大学部 教授)
長野
仁 (森ノ宮医療学園はりきゅうミュージアム)
「日本における名灸穴と形式穴」 長野
仁 (森ノ宮医療学園はりきゅうミュージアム)
「九燿の灸」
山野 員子、有馬 靖子 (赤壁鍼灸院)
「カモ灸」
大嶋小和子 (元カモ灸)
「弘法大師のれんこんの灸」
池田 啓二 (愛媛県鍼灸師会 会長)
日 時:6月8日(日) 13時00分∼15時00分
場 所: F会場(大会議室)
パネルディスカッションⅠ 「OSCEの実際とその問題点」
座
長:丹澤 章八 (明治鍼灸大学 名誉教授)
杉山 誠一 (東海医療学園専門学校 校長)
「東海医療学園専門学校におけるOSCE実施の問題点と今後の課題」
木村 博吉 (東海医療学園専門学校)
「森ノ宮医療学園専門学校のOSCE導入への歩み」
小島 賢久 (森ノ宮医療学園専門学校)
「東京衛生学園専門学校におけるOSCEの実際とその問題点」
菅原 之人 (東京衛生学園専門学校)
「早稲田医療専門学校のOSCE実施について」
鈴木 盛夫 (早稲田医療専門学校)
「盲学校理療教育におけるOSCE実践経過と今後の課題」
武藤 永治 (福島県立盲学校)
指定発言:福田 文彦 (明治鍼灸大学)
日 時:6月7日(土)9時00分∼11時00分
場 所: F会場(大会議室)
パネルディスカッションⅡ 「関節リウマチに対する鍼灸治療の果たす役割」
−関節症状の改善とQOL向上について−
座
長:山本
一彦
(東京大学 医学部 アレルギーリウマチ内科)
− 20 −
264
山口
智 (埼玉医科大学 東洋医学科)
「関節リウマチ(Rheumatoid arthritis: RA)の病態と臨床症状」
山本 一彦 (東京大学 医学部 アレルギーリウマチ内科)
「関節リウマチの薬物療法」
三村 俊英 (埼玉医科大学 リウマチ膠原病科)
「関節リウマチに対する伝統的な薬物療法」
赤尾 清剛 (岐阜大学 医学部 東洋医学講座)
「関節リウマチに対する鍼灸治療」−Quality of life(QOL)を指標として−
粕谷 大智 (東京大学 医学部 アレルギーリウマチ内科)
「関節リウマチに対する鍼灸治療」−ACR活動性指標の変化について−
吉川
信 (東京女子医科大学 東洋医学研究所)
「関節リウマチに対する鍼灸治療」−まとめ−
小俣
浩 (埼玉医科大学 東洋医学科)
日 時:6月8日(日)9時00分∼11時00分
場 所:B会場(アクトホール)
パネルディスカッションⅢ 「我が国における鍼灸の多施設ランダム化比較試験の現状と今後の
展望」 −風邪症状の予防・治療効果に対する多施設ランダム化比
較試験の経験を踏まえて−
座
演
日
場
セミナーⅠ
長:丹澤 章八 (全日本鍼灸学会 会長)
川喜田健司 (明治鍼灸大学 教授)
者:川喜田健司 (全日本鍼灸学会研究部)
七堂 利幸 (全日本鍼灸学会研究部)
井上 悦子 (森ノ宮医療学園専門学校)
北小路博司 (明治鍼灸大学)
鍋田 智之 (大阪医療技術学園専門学校)
角谷 英治 (明治東洋医学院専門学校)
楳田 高士 (関西鍼灸大学)
會澤 重勝 (東京衛生学園専門学校)
西田
篤 (神奈川衛生学園専門学校)
高橋 則人 (明治鍼灸大学)
越智 秀樹 (明治鍼灸大学)
時:6月8日(日) 13時00分∼15時00分
所:B会場(アクトホール)
ここまでわかった鍼灸医学 -基礎と臨床との交流「脳機能および中枢神経系疾患に対する鍼灸の効果と現状」
座
長:矢野
忠 (明治鍼灸大学 教授)
佐藤 優子 (人間総合科学大学 教授)
「脳機能に及ぼす鍼灸の効果(実験研究)」
内田 さえ (東京都老人総合研究所)
「ヒト脳機能に及ぼす鍼灸の効果」
渡邊 一平 (九州保健福祉大学)
265
− 21 −
「中枢神経疾患に対する鍼灸治療の効果」
矢野
忠 (明治鍼灸大学)
日 時:6月6日(金) 14時00分∼17時00分
場 所:A会場(グランドホール)
体験学習コーナー
「1. やってみよう医療面接!」
「2. あなたの灸はいま何度?(灸の燃焼温度)」
司
日
場
会:丹澤 章八 (明治鍼灸大学 名誉教授)
福田 文彦 (明治鍼灸大学 講師)
時:6月8日(日)9時00分∼11時00分
所:F会場(大会議室)
体験学習「やってみよう医療面接!」は事前の受付が必要です(20名限定)。参加を希
望される先生は「住所、氏名、性別、資格取得年数、返信用Fax、Tel」を明記の上、
明治鍼灸大学内、全日本鍼灸学会学術部、福田 文彦宛までFaxにてお申し込み下さ
い(0771-72-0326)。なお、参加者が20名になった時点で締め切らせていただきます。
ランチョンセミナー
司
演
日
場
「女性のライフサイクルに応じた鍼灸」(第3回:最終回)
会:矢野
忠 (明治鍼灸大学 教授)
者:矢野
忠 (明治鍼灸大学)
鈴木 裕明 (明生鍼灸院)
時:6月7日(土)12時00分∼13時00分
所:F会場(大会議室)
ワークショップ 安全性委員会
「鍼灸安全性の情報更新と具体的方策の検討」
司
日
場
会:山下
仁 (筑波技術短期大学附属診療所)
時:6月6日(金) 14時00分∼16時00分
所:B会場(アクトホール)
ワークショップ 鍼灸の経済評価委員会
「鍼灸の経済評価に関する研究の試みと今後の方向性」
司
日
場
会:岩
昌宏 (明治鍼灸大学)
時:6月6日(金) 14時00分∼15時20分
所:C会場(多目的大会議室)
ワークショップ 適応症委員会
「鍼の適応症を見つける」
司
日
場
会:井上悦子 (森ノ宮医療学園専門学校)
時:6月6日(金) 15時30分∼17時00分
所:C会場(多目的大会議室)
− 22 −
266
■一般演題の部
−第1日目−
一般口演
「東洋医学1」
6月6日(金)
F会場
14:00∼15:00
座長:岡
篠原
1O-F-14:00
婦人科疾患における
1O-F-14:12
東洋医学の学理研究(第3報)−東洋医学の原点を易の論理にもとめて−
1O-F-14:24
人中診法に関する中医文献の考察
1O-F-14:36
生気の制御
血に対する鍼灸
関西鍼灸短期大学東洋医学基礎教室
戸田
静男
清野
充典
清野鍼灸整骨院・東京地方会
日本中医推拿研究会
1O-F-14:48
一般口演
李
強
−The control X-energy (=QI)−
江南堂鍼灸院・山梨地方会
花輪
貞良
兵庫地方会
田中
重喜
ドーゼと得気と鍼感の考察(技術転移)
「東洋医学2」
6月6日(金)
1O-F-15:00
F会場
15:00∼16:00
座長:宗岡
俊弘
北出
利勝
手指先の経穴・非経穴から検出される極微弱生物フォトン発光計測について
東北工業大学情報処理技術研究所・宮城地方会
1O-F-15:12
1O-F-15:24
林
昇
池園悦太郎
脉状診と血圧との関連研究
愛知地方会研究部情報・評価班
1O-F-15:48
正照
耳針治療の臨床効果と橈骨動脈反射
新肥満研究所・東京地方会
1O-F-15:36
神
人体フォトンの日中変化についての検討
専門学校浜松医療学院
末梢血液像と中医弁証との相関について
皆川
宗徳
中城
基雄
−脈診から血診へ−
中城歯科医院・神奈川地方会
一般口演
稔
昭二
「自律神経1」
6月6日(金)
1O-F-16:00
F会場
16:00∼17:00
座長:智原
栄一
秋元
恵実
田和
宗徳
刺鍼手技と生体反応(第1報)
−鍼の刺入深度の違いによる末梢血流と筋内血液動態の影響−
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
1O-F-16:12
近赤外線分光法による鍼刺激時の筋組織血液量変動の検討
−刺鍼部位の違いによる血液動態−
東京医療専門学校
大久保正樹
267
1O-F-16:24
温冷刺激の局所皮膚温・熱流量に与える影響(第2報)
日本鍼灸理療専門学校・(財)東洋医学研究所
1O-F-16:36
孝昭
坂口
俊二
木村
研一
反復刺激によるSSR・SFRのhabituationについて
関西鍼灸短期大学東洋医学臨床教室
ポスター発表
小島
鍼灸治療による自律神経反応の検討
関西鍼灸短期大学鍼灸学臨床教室
1O-F-16:48
− 23 −
「調査1」
6月6日(金)
D会場
15:00∼16:00
座長:山岡傳一郎
久住
武
宮村
大地
兵庫県立東洋医学研究所
外間
宏昌
−短時間の鍼「簡易鍼」による肩こり軽減効果の検討−
兵庫県立東洋医学研究所
吉田
剛典
谷口
一也
1P-D-15:00
放送大学学生および教職員における健康と理療の関心度について
1P-D-15:14
鍼灸をもっと身近なものに(1)
東京都立八王子盲学校
−病院勤務看護師の愁訴と鍼灸に関するイメージの調査−
1P-D-15:28
1P-D-15:42
鍼灸をもっと身近なものに(2)
鍼灸技術研修における時系列分析法の運用−えひめ東医研における試み−
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
ポスター発表
「調査2」
6月6日(金)
1P-D-16:00
1P-D-16:14
1P-D-16:28
D会場
16:00∼17:00
座長:金井
正博
木村
友昭
後藤学園ライフエンス総研情報科学研究部
稲木
雅人
音声出力/認識を利用した対話型電子カルテ入力システムの検討
筑波技術短期大学鍼灸学科
木村
友昭
北出
利勝
山崎
寿也
ネットワーク利用による蔵書検索システムの構築
鍼灸高等教育機関・大学院博士課程修了後の動向調査
明治鍼灸大学大学院鍼灸学研究科
1P-D-16:42
鍼灸の動物実験における実験条件の文献による検討
関西鍼灸短期大学鍼灸学基礎教室
ポスター発表
「教育1」
6月6日(金)
E会場
15:00∼16:00
座長:杉山
誠一
鈴木
盛夫
明治東洋医学院専門学校
渡辺
康晴
千葉県立千葉盲学校理療科・筑波技術短期大学鍼灸学科
箕輪
政博
會澤
重勝
1P-E-15:00
四肢択一問題の解答方法と正答率についての検討
1P-E-15:14
あん摩鍼灸実習教育の保険に関する実態調査
1P-E-15:28
施灸技術の自動評価装置の開発
東京衛生学園基礎医科学研究部
− 24 −
268
1P-E-15:42
卒業試験におけるOSCE形式試験導入の試み
早稲田医療専門学校東洋医療鍼灸学科
ポスター発表
E会場
16:00∼17:00
座長:福田
文彦
藤井
亮輔
泉
重樹
明治東洋医学院専門学校
河井
正隆
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
笹岡
知子
桑野
素子
盲学校における医療面接技法評価の試み(第2報)
北海道高等盲学校
1P-E-16:14
盛夫
「教育2」
6月6日(金)
1P-E-16:00
鈴木
鍼灸専門学校における臨床能力育成の検討(第4報)
−コミュニケーション技法の学習と指導−
1P-E-16:28
1P-E-16:42
刺鍼技術実習の授業評価の試み
鍼灸理論・臨床医学各論における授業評価
四国医療専門学校
−第2日目−
一般口演
「運動器1:頚部・上肢」
6月7日(土)
2O-B-09:00
B会場
09:00∼10:00
座長:坂井
友実
佐藤
正人
足臨泣の施鍼による頸部圧痛の変化
南雲治療院・北海道地方会
2O-B-09:12
急性頚部痛に対する鍼治療効果について−刺鍼群と偽鍼群の比較(第2報)−
古東整形外科
小澤
庸宏
東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
小糸
康治
美根
大介
舘田
美保
2O-B-09:24
胸郭出口症候群に対する鍼治療(第5報)
−ルーステストにおける上肢末梢循環動態の検討−
2O-B-09:36
肩関節周囲炎に対する鍼治療(第5報)−拘縮症例についての治療効果−
東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
2O-B-09:48
南雲三枝子
可動域テストによる関節構成要素の形態学的変化と施術への応用
−肩関節に有用性が認められた1例−
国立身体障害者リハビリテーションセンター
一般口演
「運動器2:腰痛」
6月7日(土)
B会場
10:00∼11:00
座長:山田
黒岩
2O-B-10:00
勝弘
共一
腰痛に対する鍼治療の検討(2)
−JOAスコアとVAS、FFDを使用した多施設での症例集積結果−
愛知地方会研究部疼痛疾患班
堀
茂
269
2O-B-10:12
慢性腰痛患者に対するトリガーポイント鍼治療の試み
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
2O-B-10:24
伊藤
和憲
アトピー性皮膚炎を有する椎間板ヘルニアに対する鍼灸治療の1症例
埼玉東洋医療専門学校・東京地方会
2O-B-10:36
脊椎圧迫骨折に対する鍼治療
2O-B-10:48
環跳穴低周波鍼通電療法施術前後の血中セロトニン値の変動
清野鍼灸整骨院・東京地方会
福岡地方会
一般口演
− 25 −
一の瀬
宏
今田
開久
大淵
千尋
「運動器3:筋・硬結・他」
6月7日(土)
B会場
14:00∼15:00
座長:佐々木和郎
井上
基浩
星野
良和
明治東洋医学院専門学校
肩凝りの鍼治療が精神的ストレス認知に与える影響について
有馬
義貴
兵庫鍼灸専門学院
梶間
育郎
大場
雄二
越智
秀樹
2O-B-14:00
超音波断層法による筋硬結の検討(第3報)
2O-B-14:12
腰痛自覚者腰部における硬さの左右差の成因について
日本臨床鍼灸懇話会
−皮下組織の厚さとの関連−
2O-B-14:24
2O-B-14:36
遠位経穴刺激の基礎的研究(第6報)
−腰痛治療点としての「承山−飛陽−崑崙」の刺鍼刺激効果の検討−
日本鍼灸理療専門学校・(財)東洋医学研究所
2O-B-14:48
脛骨叩打テストの有用性について
−脛骨内側顆骨壊死症と変形性膝関節症との比較−
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
一般口演
「スポーツ」
6月7日(土)
2O-B-15:00
B会場
15:00∼16:00
座長:金子
弘志
宮本
俊和
古屋
英治
古田
高征
高知国体セーリング競技会場でのコンディショニング効果
東京医療専門学校
2O-B-15:12
鍼刺激が運動に与える影響について−自転車競技での応用−
明治東洋医学院専門学校
2O-B-15:24
スポーツ選手のコンディショニングに対するSSP療法の効果
−ランダム化比較試験による検討−
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
片山
憲史
2O-B-15:36
トライアスロン競技中の円皮鍼施鍼による競技翌日の筋痛回復効果
東京医療専門学校
金子
泰久
2O-B-15:48
鍼灸療法とコンディショニング−非侵襲的施術と解剖生理学的原理−
竹内
京子
防衛医科大学校解剖学第一講座
− 26 −
一般口演
270
「消化器」
6月7日(土)
C会場
09:00∼10:12
座長:岩
秀雄
岩
昌宏
2O-C-09:00
便通異常に対する鍼治療の効果に関する臨床研究
2O-C-09:12
便通異常に対する鍼灸治療の効果について−1事例研究法(反転法)による検討−
明治鍼灸大学内科学教室 松本
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
2O-C-09:24
術後腸管機能に対する円皮針の影響
2O-C-09:36
麻酔ラットの小腸運動に対する鍼通電刺激の効果とメカニズム
2O-C-09:48
ラット結腸運動に対する鍼通電刺激の影響
昌宏
大沢
明治鍼灸大学外科学教室
中西
淳
博文
筑波技術短期大学鍼灸学科
野口栄太郎
明治鍼灸大学外科学教室
前原伸二郎
−通電頻度の違い、及びその作用機序の検討−
2O-C-10:00
胃電図を指標とした腹部外科手術後の胃機能に対する円皮鍼の影響
明治鍼灸大学外科学教室
一般口演
市川由美子
「泌尿器」
6月7日(土)
C会場
10:12∼11:00
座長:鈴木由紀子
2O-C-10:12
尿失禁を呈する過活動膀胱に対する鍼治療の有用性
2O-C-10:24
鍼刺激が尿噴流に及ぼす影響に関する検討
2O-C-10:36
第Ⅱ期前立腺肥大症に伴う排尿障害に対する鍼治療の1症例
2O-C-10:48
明治鍼灸大学泌尿器科学教室
脳梗塞ラットによる過活動膀胱に対する覚醒下鍼刺激の検討
淳
本城
久司
手塚
清恵
冨田
賢一
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
濱田
明治鍼灸大学泌尿器科学教室
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
一般口演
北小路博司
「代謝・内分泌」
6月7日(土)
2O-C-14:00
C会場
14:00∼15:00
座長:山村
義治
石崎
直人
谷口
博志
米田
裕和
山田
篤
糖尿病性勃起障害に対して鍼治療が有効を示した1症例
明治鍼灸大学附属鍼灸センター・明治鍼灸大学大学院鍼灸臨床医学Ⅰ
2O-C-14:12
鍼治療により改善した糖尿病性胃運動異常の1症例
明治鍼灸大学内科学教室
2O-C-14:24
糖尿病に対する鍼治療の1症例
東洋医学研究所
2O-C-14:36
糖尿病モデル動物に対する鍼治療の効果(IV)
−全身麻酔糖尿病ラットにおける検討−
東洋医学研究所 グループ
271
名古屋市立大学大学院医学研究科細胞機能制御学分野
2O-C-14:48
中村
弘典
服部
輝男
非代償性肝硬変症に対する鍼治療の検討
東洋医学研究所 グループ
一般口演
− 27 −
「アレルギー・膠原病」
6月7日(土)
C会場
15:00∼16:00
座長:坂本
2O-C-15:00
豊次
粕谷 大智
脱毛を主訴とし、夜尿症、気管支喘息及びアトピー性皮膚炎を合併した小児患者に対
する鍼治療の1例
明治鍼灸大学老年鍼灸医学教室
2O-C-15:12
江川
雅人
飯沼
浩江
アトピー性皮膚炎の鍼灸治療と自己免疫疾患への応用
−表記疾病治療と予防を目的とするEBM評価作業−
東京地方会
2O-C-15:24
皮脂欠乏症に対する鍼治療効果の一考察−末梢血液像の変化−
筑波技術短期大学鍼灸学科
和久田哲司
2O-C-15:36
関節リウマチ患者の頚部痛に対する鍼治療
明治鍼灸大学整形外科学教室
喘息症状が灸療によって改善されたと思われる55才男性の1治験例
鷹峰
澄子
2O-C-15:48
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
上郷
樹夫
一般口演
「がん・QOL」
6月7日(土)
F会場
14:00∼15:00
座長:山口
智
木下
伸一
2O-F-14:00
肺癌の化学療法による副作用に対して鍼治療が有効であった1症例
植松
佑介
2O-F-14:12
不定愁訴に対する鍼治療の1症例−大腸癌手術後に生じた不定愁訴−
東洋医学研究所 グループ絹田鍼灸院 絹田
手術後の健康障害・再発不安の解消とQOL障害の改善に有用であった2症例
章
2O-F-14:24
2O-F-14:36
当科における悪性腫瘍患者に対する鍼灸臨床の実態分析(第2報)
明治鍼灸大学内科学教室
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
功
廣瀬
賢一
埼玉医科大学東洋医学科
村山
2O-F-14:48
緩和ケア病棟における電子温灸器の応用(第2報)
東海大学医学部附属大磯病院鍼灸治療室
川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター
一般口演
「脳血管障害
高士
将典
他」
6月7日(土)
F会場
15:00∼16:00
座長:若山
鈴木
2O-F-15:00
両側慢性硬膜下血腫が消失した患者−予後観察−
2O-F-15:12
脳梗塞後遺症に対し電気灸治療を試みた1症例
(社)全日本鍼灸学会愛知地方会研究部頭鍼療法班
財務省東京病院東洋医学センター
育郎
俊明
田中
法一
豊田
陽子
− 28 −
272
2O-F-15:24
脳血管障害の片麻痺に伴う上肢浮腫に対する灸療法の効果
慶熙大学韓医学部附属韓方病院第2内科学教室
2O-F-15:36
動作分析と東洋医学的観点から鍼治療をおこなった書痙患者2症例
谷浦クリニック・関西鍼灸短期大学神経病研究センター
2O-F-15:48
基湖
井上
博紀
頸部・体幹への総合的なアプローチが必要であった頸部左側屈偏倚を主症状とする頸
部ジストニア患者への動作分析と鍼治療
関西鍼灸短期大学神経病研究センター
ポスター発表
D会場
09:00∼10:10
座長:楳田
高士
江川
雅人
大市
三鈴
楳田
高士
肝炎ウィルスの鍼体への付着性について
関西鍼灸短期大学免疫・病理学教室
2P-D-09:14
鍼灸治療における感染防止について−手指の細菌汚染と感染防止対策−
関西鍼灸短期大学鍼灸学基礎教室
2P-D-09:28
指サックが刺鍼手技に与える影響−継続的使用による痛みの変化−
2P-D-09:42
膏肓穴刺鍼の安全深度の検討(2)
筑波大学理療科教員養成施設
森ノ宮医療学園専門学校
2P-D-09:56
半田美香子
尾崎
朋文
山下
仁
鍼の安全性に対する鍼関連業者の見解に関する国際アンケート調査
筑波技術短期大学附属診療所
ポスター発表
朋子
「感染防止・安全性」
6月7日(土)
2P-D-09:00
飯塚
「高齢者」
6月7日(土)
D会場
10:10∼11:00
座長:安野富美子
2P-D-10:10
2P-D-10:24
2P-D-10:38
学生の高齢者に対する意識調査について(第2報)
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
水沼
国男
財務省東京病院東洋医学センター
横川
孝一
高橋
則人
在宅ケアにおける鍼灸の役割
老人保健施設における鍼灸治療(第1報)
明治鍼灸大学老年鍼灸医学教室
ポスター発表
「東洋医学・診断1」
6月7日(土)
D会場
14:00∼15:00
座長:岡田
2P-D-14:00
脈診訓練法の開発(第3報)
日本鍼灸理療専門学校・(財)東洋医学研究所
2P-D-14:14
橈骨動脈拍動部からの圧脈波検出方法の検討
2P-D-14:28
東京衛生学園臨床教育専攻科
難経腹診の研究−圧痛部位と症状との関連性について−
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
ポスター発表
明三
光澤
弘
大久保淳子
山本
晃久
「東洋医学・診断2」
6月7日(土)
D会場
15:00∼16:00
座長:水嶋
丈雄
273
2P-D-15:00
腎不全患者と鍼灸外来患者における音響学的音声解析
明治鍼灸大学大学院東洋医学基礎
2P-D-15:14
関
和辻
直
河村
廣定
内臓反応点を指標とした四肢刺激効果の影響と機序
神戸東洋医療学院
ポスター発表
「自律神経2・ヒト」
6月7日(土)
2P-E-09:00
真亮
舌診の色識別と証判断の検討
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
2P-D-15:28
− 29 −
E会場
09:00∼10:00
座長:坂口
俊二
篠原
正明
鍼刺激に伴う一過性心拍減少反応に関する検討
−仰臥位および坐位姿勢時における変化の比較−
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
2P-E-09:14
鍼刺激が循環系自律神経機能に及ぼす影響−圧痛点への鍼刺激による検討−
早稲田医療専門学校東洋医療鍼灸学科
2P-E-09:28
手技別の鍼刺激による循環動態への影響
2P-E-09:42
鍼灸治療の血圧および脈拍に及ぼす影響について
中和医療専門学校
関西鍼灸短期大学鍼灸学臨床教室
ポスター発表
妹尾千鶴子
二本松
明
黒野由利子
池藤
仁美
「動物基礎1」
6月7日(土)
E会場
10:00∼11:00
座長:木村
2P-E-10:00
ラットの末梢神経再生に及ぼす鍼通電刺激の影響
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
2P-E-10:14
ポスター発表
井上
基浩
小田
剛
五十嵐
純
ラット阻血下肢への鍼刺激による筋血流の変化
明治鍼灸大学外科学教室
2P-E-10:28
数種の市販灸施灸時にみる皮膚局所の微細構造特性
関西鍼灸短期大学解剖学教室
「反射・誘発電位」
6月7日(土)
E会場
14:00∼15:00
座長:渡邊
2P-E-14:00
裕義
角谷
英治
村上
高康
マニュアル鍼刺激がヒト運動誘発電位に及ぼす影響
明治鍼灸大学基礎鍼灸医学教室
ポスター発表
矢嶌
屈曲反射を指標にした鍼刺激の響き感覚の強さと鎮痛効果の関係について
明治東洋医学院専門学校
2P-E-14:28
「ヒト基礎1」
6月7日(土)
E会場
15:00∼16:00
座長:森
2P-E-15:00
一平
振動誘発指屈曲反射に及ぼす経皮的通電刺激の影響
日本鍼灸理療専門学校(財)東洋医学研究所
2P-E-14:14
通郎
英俊
白血球の自律神経における井穴(少商、関衝)の反応について
NPO法人東洋医学研究所
仲原
泉子
− 30 −
274
2P-E-15:14
鍼治療が尿中の過酸化脂質排泄量に及ぼす影響
中京女子大学大学院健康科学研究科
2P-E-15:28
加藤
豊広
加藤
幸子
レモンの精油によるアロマ吸入が自律神経系に及ぼす効果の評価
杏林大学保健学部生理学教室
−第3日目−
一般口演
「産婦人科1」
6月8日(日)
3O-C-09:00
C会場
09:00∼10:00
座長:形井
秀一
瀬尾
港二
機能性不妊に有効であったと考えられる鍼灸治療(第2報)
−41歳で、鍼灸治療後に自覚症状及び他覚的身体所見の改善が観察され妊娠に至った1症例−
藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院産婦人科・中和医療専門学校
3O-C-09:12
清水
洋二
小林
美鈴
北國
善太
片岡
泰弘
木津
正義
難治性不妊症に対する鍼灸治療の検討(第4報)
−子宮内膜形状不良患者にARTと鍼灸治療を併用した57名の追試−
3O-C-09:24
東洋医学研究所 グループ・明生鍼灸院
不妊症患者の不定愁訴に対する鍼灸治療の検討(第1報)
−妊娠群・非妊娠群における健康チェック表の分析−
東洋医学研究所 グループ・明生鍼灸院
3O-C-09:36
不妊症患者の不定愁訴に対する鍼灸治療の検討(第2報)
−不定愁訴指数の減少と妊娠との関係−
東洋医学研究所 グループ・明生鍼灸院
3O-C-09:48
不妊症患者の不定愁訴に対する鍼灸治療の検討(第3報)
−明生鍼灸院における不妊症患者の動向調査−
東洋医学研究所 グループ・明生鍼灸院
一般口演
「産婦人科2」
6月8日(日)
3O-C-10:00
C会場
10:00∼11:00
座長:角谷
英治
鈴木
裕明
鈴木
裕明
高橋
順子
筑波技術短期大学鍼灸学科
形井
秀一
岐阜地方会
松山
幸枝
不育症に対する鍼灸治療の検討(第1報)
−反復流産患者における流産率の検討−
東洋医学研究所 グループ・明生鍼灸院
3O-C-10:12
不育症に対する鍼灸治療の検討(第2報)
−習慣流産患者における流産率の検討−
東洋医学研究所 グループ・明生鍼灸院
3O-C-10:24
妊娠中の腰痛に対する鍼灸治療効果の検討
3O-C-10:36
「演題取り消し」
3O-C-10:48
子宮・卵巣点と婦人科疾患との関連
275
一般口演
「動物基礎2」
6月8日(日)
C会場
13:00∼14:00
座長:東家
一雄
岡田
薫
田口
辰樹
久島
達也
明治鍼灸大学生理学教室
萩原
裕子
明治鍼灸大学生理学教室
岡田
薫
大沢
秀雄
3O-C-13:00
手術侵襲による免疫抑制に対する術前鍼通電の影響
3O-C-13:12
体性感覚刺激における腸管神経系とCD11b陽性細胞の変化
−神経系と免疫系の関連−
明治鍼灸大学外科学教室
横浜市立大学医学部解剖学第2講座
3O-C-13:24
3O-C-13:36
3O-C-13:48
卵巣摘出ラットの血中エストロゲン濃度に対する鍼刺激の影響
痛覚閾値に対する性ホルモンの影響
高血圧自然発症ラット(SHR)の循環系に及ぼす鍼通電刺激の効果
筑波技術短期大学鍼灸学科生理学
一般口演
− 31 −
「鎮痛・感覚」
6月8日(日)
C会場
14:00∼15:00
座長:辻田
純三
武田
大輔
関戸
玲奈
石丸
圭荘
深澤
洋滋
甲田
久士
谷
直樹
3O-C-14:00
炎症動物における鍼鎮痛機序−末梢性鎮痛の関わりについて(第2報)−
3O-C-14:12
ヒト電気鍼の脊髄分節および内因性鎮痛効果について
3O-C-14:24
通電鍼刺激により活性化される内因性抗鎮痛機構
3O-C-14:36
筋ポリモーダル受容器の機械刺激に対する反応
3O-C-14:48
東洋医学研究所 ・愛知地方会
透熱灸による瞬間的な痛みの記憶とその定量評価
明治鍼灸大学外科学教室
明治東洋医学院専門学校
和歌山県立医科大学薬理学教室
東海医療学園専門学校
ポスター発表
「臨床試験」
6月8日(日)
D会場
09:00∼10:00
座長:山下
3P-D-09:00
肩こりに対する鍼治療の臨床効果について−Sham鍼による検討−
3P-D-09:14
腰痛に対する鍼通電と経皮的末梢神経電気刺激のランダム化比較試験
3P-D-09:28
腰痛に対する鍼治療の多施設によるランダム化比較試験
愛知地方会研究部疼痛疾患班
明治鍼灸大学附属鍼灸センター・臨床鍼灸医学Ⅱ教室
筑波技術短期大学附属診療所
ポスター発表
「感覚器
今井
津嘉山
賢治
河瀬
洋
美之
他」
6月8日(日)
D会場
10:00∼11:00
座長:仲西
3P-D-10:00
仁
鼻腔内腫瘍手術後に発症した顔面のしびれに対する鍼治療の1症例
宏元
− 32 −
276
埼玉医科大学東洋医学科
3P-D-10:14
めまいに対する頸・肩部の鍼灸治療の意義について
3P-D-10:28
鍼・温熱・振動の後頭部刺激による視力回復の即時効果の検討
隆
小岩
信義
古賀
義久
森西
誠
早稲田医療専門学校東洋医療鍼灸学科
浅香
日本理工医学研究所
3P-D-10:42
顎関節症に対する鍼治療
−症型分類による治療効果の検討−
明治鍼灸大学歯科学教室
ポスター発表
「調査3」
6月8日(日)
D会場
13:00∼14:00
座長:石神
3P-D-13:00
3P-D-13:14
炳文
女性鍼灸師フォーラム
辻内
敬子
京都府立医科大学老化研社会医学・人文科学部門
藤田
麻里
愛媛地方会
若松
貴哉
鍼灸東洋院・東京地方会
時田
茂生
女性鍼灸師フォーラムが受けた鍼灸医療相談について
高校生における肩こりの実態調査(第5報)
3P-D-13:28
当研究所における失眠穴応用についての調査
3P-D-13:42
不定愁訴評価における健康チェック表と良導絡チャートの検討
ポスター発表
龍代
曽
「調査4」
6月8日(日)
D会場
14:00∼15:00
座長:津嘉山
洋
野口栄太郎
3P-D-14:00
明治東洋医科大学(米国)附属鍼診療所の患者2967名の分析
3P-D-14:14
埼玉医科大学総合医療センター麻酔科における鍼治療の実態(第2報)
3P-D-14:28
えひめ東医研灸療普及啓蒙活動報告
3P-D-14:42
東京都情報サービス産業健康保険組合東中野保健センターにおける活動報告
明治鍼灸大学老年鍼灸医学教室
埼玉医科大学総合医療センター麻酔科
鶴
浩幸
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
阿部洋二郎
光藤
英彦
筑波技術短期大学附属診療所
東京都情報サービス産業健康保険組合東中野保健センター
ポスター発表
堀
紀子
「疫学」
6月8日(日)
E会場
09:00∼10:00
座長:安藤
文紀
宇都宮信博
3P-E-09:00
鍼灸院通院患者の施術者の技術評価に関する疫学的研究
明治東洋医学院専門学校
3P-E-09:14
企業内従業員に対する鍼治療・手技療法の効果
高野
道代
沢崎
健太
−職業性ストレスとの関連性の検討−
福岡県立福岡高等盲学校専攻科研修科
3P-E-09:28
鍼灸受診患者における健康関連QOLと気分の検討
277
東海医療学園専門学校
3P-E-09:42
奥野
友香
森戸
麻美
鍼灸治療を受療する患者の健康関連QOL−SF-36を用いて−
筑波大学理療科教員養成施設
ポスター発表
「動物基礎3」
6月8日(日)
3P-E-10:00
E会場
10:00∼11:00
座長:雨貝
孝
久島
達也
松尾
貴子
灸刺激がラット腹腔内マクロファージに及ぼす影響の検討
関西鍼灸短期大学免疫・病理学教室
3P-E-10:14
3,5-ジカフェオイルキナ酸がラット脾細胞サイトカイン産生能に及ぼす影響
関西鍼灸短期大学解剖学教室
3P-E-10:28
− 33 −
東家
一雄
鍼通電刺激がGABA・グリシンを介して脊髄後角での痛覚抑制作用を賦活化する可能性
についての電気生理学的検討
3P-E-10:42
ポスター発表
関西鍼灸短期大学生理学教室
武田
大輔
後藤学園ライフエンス総研情報科学研究部
尾西
恭亮
鍼遺伝子AIG1の完全長決定の試み
「ヒト基礎2:脳機能
他」
6月8日(日)
E会場
13:00∼14:00
座長:上馬場和夫
3P-E-13:00
ポスター発表
聡子
木南真紀子
鍼による脳循環の変化(第2報)−合谷への鍼と触圧刺激の比較−
富山県国際伝統医学センター
3P-E-13:42
秋山
合谷鍼刺激:正常人脳波の確立密度関数、線形・非線形解析
千葉地方会
3P-E-13:28
孝雄
風池への鍼刺激による脳血流の変化
東京大学医学部生体防御機能学講座
3P-E-13:14
大勝
田口裕紀子
自律神経と血圧の左右同時測定(第13報)−腕の血圧と比例しない脳の血流−
新潟地方会 中村
「動物基礎4:脳機能」
6月8日(日)
E会場
14:00∼15:00
座長:白石
3P-E-14:00
吉伸
武昌
連続施灸刺激がハンドリングストレス負荷ラット前頭前野皮質の細胞外ドーパミンお
よびセロトニン動態に及ぼす影響
明治鍼灸大学基礎鍼灸医学教室
3P-E-14:14
新原
寿志
国立身体障害者リハビリテーションセンター理療教育部
慢性灸刺激の脳内モノアミンに及ぼす影響−刺激部位による比較−
加藤
麦
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
福田
文彦
拘束ストレスに対する鍼通電刺激の影響(第4報)
−下肢刺激によるセロトニン量の変化−
3P-E-14:28
第 52 回全日本鍼灸学会学術大会(香川大会)日程表
6月6日(金)
08:00
09:00
10:00
11:00
12:00
北館2Fロビー
A会場 グランドホール
B会場 アクトホール
C会場 多目的大会議室
13:00
A会場
B会場
C会場
D会場
E会場
F会場
08:00
09:00
10:00
11:00
シンポジウムⅠ
12:00
13:00
14:00
15:00
16:00
ポスター掲示
大会議室
特別講演Ⅰ
会
シンポジウムⅡ
17:00
評議員会
18:00
筋・硬結・他
消化器
泌尿器
代謝・内分泌 アレルギー膠原病
感染防止安全性
高齢者
東洋医学診断1
東洋医学診断2
自律神経2
動物基礎1
反射誘発電位
ヒト基礎1
がん・QOL
脳血管障害他
ランチョンセミナー
第1会議室
特別会議室
第5・6楽屋
本館 2Fメインロビー、北館 5Fホワイエ
スポーツ
学会本部
大会本部
業者展示
10:00
11:00
12:00
13:00
14:00
15:00
16:00
受付開始
第1会議室
特別会議室
第5・6楽屋
本館 2Fメインロビー、北館 5Fホワイエ
懇親会
18:00~
ウェルシティ高松
学術団体会議
09:00
D会場
多目的大会議室
E会場
F会場 大会議室
特別講演Ⅱ
腰痛
パネルディスカッションⅠ
08:00
総
頚部・上肢
多目的大会議室
北館2Fロビー
A会場 グランドホール
B会場 アクトホール
C会場 多目的大会議室
18:00
受付開始
アクトホール
6月8日(日)
17:00
セミナーⅠ
安全性委員会
ワークショップ
医療経済委員会
適応症委員会
調査1
調査2
ポスター掲示
教育1
教育2
東洋医学1 東洋医学2 自律神経1
諮問委員会
支部長会議
学会本部
大会本部
業者搬入
理事会
グランドホール
多目的大会議室
16:00
開会式
第1会議室
特別会議室
第5・6楽屋
本館 2Fメインロビー、北館 5Fホワイエ
北館2Fロビー
15:00
受付開始
D会場
多目的大会議室
E会場
F会場 大会議室
6月7日(土)
14:00
教育講演
基調講演
パネルディスカッションⅡ
産婦人科1 産婦人科2
臨床試験
感覚器・他
疫学
動物基礎3
体験学習コーナー
特別講演Ⅲ
市民公開講座
パネルディスカッションⅢ
動物基礎2 鎮痛・感覚
調査3
調査4
ヒト基礎2 動物基礎4
実技セッション
学会本部
大会本部
業者展示
は認定制度指定講習の対象セッションです。
閉会式
ポスタ
ー撤去
17:00
18:00
特別演題抄録
特
別
講
演
Ⅰ
特
別
講
演
Ⅱ
特
別
講
演
Ⅲ
市
民
公
開
講
座
基
調
講
演
教
育
講
演
シ ン ポ ジ ウ ム Ⅰ
シ ン ポ ジ ウ ム Ⅱ
実 技 セ ッ シ ョ ン
パネルディスカッションⅠ
パネルディスカッションⅡ
パネルディスカッションⅢ
セ
ミ
ナ
ー
Ⅰ
ラ ン チ ョ ン セ ミ ナ ー
ワ ー ク シ ョ ッ プ
− 36 −
282
特別講演
Ⅰ
鍼の胃運動に及ぼす影響とその作用機序
米国デューク大学外科学教室
高橋
助教授
徳
鍼(Acupuncture)は地球上で3千年以上の歴史を持つ医療でありなが
ら、その機序が未だに不明瞭なこともあり、一般の医療現場には広く浸
透していないのが現状である。一方、たった100年足らずの経験にも拘
わらず、西洋医学は、その理論体系が広く受け入れられ、今日の医療を
席巻している。演者は兵庫医大第二外科で消化器外科を10年間専攻した。
その間に鍼治療に興味を持ち、実際に種々の症例に試みてきた。そして、
鍼治療の効果を自分自身も含めて多くの患者で実感してきた。しかしな
がら、『どうして鍼が効くのか』、『つぼとは一体何なのか』といった素
朴な疑問が常に心の中にわだかまったままであった。
最近、鍼を含めた、指圧、灸、漢方薬等の東洋古来の治療法が、代替医療(Alternative Medicine)
の名のもとに、日本のみならず、欧米でも注目を集めてきている。数年前には米国のNational Institute
of Health (NIH) が Alternative Medicine の 研 究 の た め に 国 家 予 算 を 割 き 、 National Center for
Complementary and Alternative Medicine (NCCAM; ホームページ;http://nccam.nih.gov)という部署
を設立している。古来の治療法に対する一般の興味と理解が深まってきたこの21世紀こそ、今まで時に
は非科学的とまで揶揄されてきた鍼の作用機序にサイエンスのメスを入れる絶好の時期と考える。
演者は1988年に医学の基礎研究に専念するため渡米し、以来消化管運動におよぼす自律神経系の役割
を、動物を用いて研究してきた。 そして、鍼の作用機序に対する内外の文献を検索していくなかで、鍼
の消化管運動に対する作用は体表の皮膚、筋肉の知覚神経と自律神経系を介する神経反射ではないかと
の 考えに 思い 至っ た。 一般 的に 、 悪 心、 嘔吐 など の症 状に は、 足三 里 (Zusanli; ST-36) や内 関
(Neiguan; PC-6)などの手足のつぼが、一方、急性腹症などの胃痛に対しては中院(Zhongwan ; CV-12)
や巨閥(Juque; CV-10) などの上腹部のつぼがその治療に用いられている。従って、胃運動に対しては、
手足の鍼刺激は促進的に、腹部の鍼刺激は抑制的に作用する可能性が示唆される。ミシガン大学とデュー
ク大学での演者の研究室で行った動物実験の結果より、手足の鍼刺激による胃運動促進作用は迷走神経、
腹部の鍼刺激よる胃運動抑制作用は交感神経を介する神経反射と考えられる。そして、その反射中枢は
どちらも延髄に存在する可能性が高い。
今こそ、あらゆる近代的な手法を用い、この中国3千年の神秘を解明すべき時である。症例によって
は、鍼が第一選択の医療行為であり、決して『代替え的』なものではないというコンセンサスが得られ
る日も近いと確信する。
283
プロフィール
高橋
徳(たかはし
とく)
1950年
岐阜県生まれ
1977年
神戸大学医学部卒業M.D.
1985年
1986年
兵庫医科大学大学院博士課程卒業
医学博士取得
1985-88年
兵庫医科大学第2外科講師
1988-90年
Postdoctoral Research Fellow (University of Michigan Medical Center)
1990-92年
貞光病院副院長
1992-96年
Research Investigator (University of Michigan Medical Center)
1996-2000年 Assistant Research Scientist (University of Michigan Medical Center)
2000年
Associate Professor (Duke University Medical Center)
所属学会
American Gastroenterological Association,Society for Neuroscience,
American Motility Society
− 37 −
− 38 −
284
特別講演
Ⅱ
愛媛東医研の抱えて来た2つの使命
(医療上の使命と研究上の使命)
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
所長
光藤
英彦
Ⅰ. はじめに
私共愛媛東医研は、開所後24年目の歩みをすすめているところです。
現在は、特にチームリーダーによるAUDIT機能の確立とボランティア灸
療の活性化のための企画に力を注いでおります。
Ⅱ. AUDIT機能について
AUDITとは、聞き慣れぬ言葉かもしれません。愛媛東医研では「診直
し(みなおし)診察」という言葉によって内容を説明しています。東医
研の診療のIdentityを全うするために、一人一人のクライアントの①診
療の目的をたえず設定し②それを意識し続け③その目標達成のために、
チームとしての手持ちの技術をチーム全体としてフルに投入が出来るよ
うに配慮するためのシステムであります。(チームとは連帯して病人の診療にあたる複数のスタッフを指
します。)
ちょうど、宇宙船が目的の行程を全う出来るために宇宙船の船長の能力を補佐するために、
地上の航空宇宙局が果たしている役割に相当いたします。このチームの連帯システムを備えることは能
力的にも経済的にも重いものですが、敢えて可能な限りこれを充実しようと取り組んでいます。AUDIT機
能を発揮するためには、AUDITで必要と判断されるプログラムを必ず実践出来る補助システムを必要とし
ます。愛媛の住民を対象とする場合は、今のところ背腰部の灸療が必須ですから、これが実践出来るよ
うに2年前から所内に、補助システムとしてのボランティア灸療コーナーを設置して、家庭内で施灸ボ
ランティアを確保出来ない人にも施灸出来るようにしてきました。このボランティア灸療コーナーの利
用状況は、AUDIT機能の充実とともに急速に利用状況が活性化しております。
灸療中心の、現在のニードへの対応を強化するためには、所内のボランティア灸療活動を拡大するた
めに、灸療ボランティア育成の教育講習プログラムを積極的に展開することを企画しております。
次の各項について担当スタッフによって分担報告いたします。
Ⅲ. 分担報告
①
イ.時系列診断と単純型慢性健康障害について、
ロ.慢性健康障害の成立と時相的関連性をもつ生活史について
②
ロ.灸療ボランティア育成教室の構想
③
(研修教育担当)
イ.ボランティア灸療コーナーの利用状況
漢代穴位療法の復元構想について
(鍼灸部統括担当)
(復元開発統括担当)
285
プロフィール
光藤
英彦(みつふじ
ひでひこ)
1940年6月
愛媛県生まれ
1965年3月
東京大学医学部医学科卒
1974年4月
日産厚生会玉川病院東洋医学内科医長
(東京大学医学部 物療内科教室関連)
1979年8月
愛媛県立中央病院東洋医学研究所所長
〈師事〉
内科学
東京大学医学部物療内科教室
大島良雄教授
漢方
温知堂
鍼灸
代田文誌先生、 井上恵理先生、 工藤訓正先生、
矢数道明先生
町田栄治先生、 深谷伊三郎先生、 馬場白光先生
〈受賞〉
1983年
大塚敬節賞〈東洋医学切診に関する科学的アプローチ
等〉
− 39 −
− 40 −
286
特別講演
Ⅲ
世界的長寿郷の食生活
国際自然医学会
会長
森下
敬一
1975年以来、森下世界的長寿郷調査団は、全世界の眞正長寿郷を、合
計47回(1990年現在)にわたって実地調査してきた。
いわゆるコーカサス三国(グルジア、アルメニア及びアゼルバイジャ
ン)、中央アジア(特にパミール高原西麓のフェルガナ、コーカンド、
タシケント)、フンザ(パキスタン)、中国・新彊ウイグル特に南彊(カシュ
ガル、アクス及びホータン他)、それに廣西・巴馬等々である。とりわ
け中国領の南彊(1984年)と廣西・巴馬(1991年)は、わが森下調査団の初
調査・認知・発表によって、その存在が全世界に知れわたった。
ユーラシア大陸の中央部を東西8千キロにわたって点在する「シルクロー
ド長寿郷」(1986年 森下)においては、西端・アプハジア(グルジア)から東端・トルファン(南彊)に至る
まで、人種・宗教を超越して全く共通の穀菜食性食生活を行っている事を発見した。これは極めて興味
深く、特筆すべき点であろう。
彼等の食生活は、主食の「ナン」と季節の無農薬野菜と果物である。因みに「ナン」はイスラム圏の呼稱
で、グルジアでは「ムチャーディ」、アルメニアでは「マトナカシュ」と呼んでいる。
肉類は、冠婚葬祭以外は口にしない事も共通だ。またコーカサス南麓の長寿郷においては、自家製発
酵乳、即ちヨーグルト類の「マツォーニ」をよく食するが、当菌種は日本流通の公害物や化学薬剤の中で
は完全死滅、従って培養は出来ない。(現在、日本で爆発的流行の「カスピ海ヨーグルト」はグルジアの山
間僻地の眞正長寿村で愛用されている「マツォーニ」とは似て非なるヨーグルトの一種である)。
又、パミール高原を挟む中央アジア一帯は、至る所で塩を産出している。特にタクラマカン砂漠・辺
緑部においては幾つかの製塩所があり、砂漠下地層から析出する自然塩の製塩作業(夾雑物除去・包装等)
が行われている。つまり「シルクロード」はイコール「ソルトロード」でもあり、この辺り一帯の農作物の
Na(ナトリウム)含有量が多い、というのも当然の話であろう。
「シルクロード長寿郷」の百歳長寿者たちが食する食物は、美食・飽食の日本人の眼から見れば、限り
なく簡素であるが、しかしそれらの食物(又は素材)は驚くほど生命エネルギー値、即ち「氣能値」が高い、
という事を見出した。例えば、主食の「ナン」は、主に小麦などを無農薬栽培し、それを食事の都度、石
臼で荒碾きしてを作り、塩水で練って生地を拵え、粘土製竃の内壁に貼りつけ、竃の底の炭火で焼き上
げるのである。その氣能値(生命エネルギー値)は100点満点の約100点の数値を示した。因みに、この検
査法では国産・白米飯は40点代、また玄米飯は80点代であった。
長寿郷の生活用水は、萬年雪の雪解け水や、地下岩盤を通しての湧(泉)水が用いられていたが、日本
の水道水とは雲泥の差異が見られた。即ち、東京・隅田川の水は100点満点の10点未満、水道水も10点代
であるのに対し、長寿郷の生活用水は80及至90点代の数値であった。このように、この長寿郷の生活用
水即ち雪解け水は、都市河川水に較べると、元素分析値(39項目)に於いては圧倒的に劣勢であるのに
拘らず、生命を表示する氣能値では断然優勢な数値を見せてくれた。ここに、生命問題に於ける「氣能医
学的検索」の必要性と、「元素分析的検索」の限界を知る事が出来よう。
287
− 41 −
プロフィール
森下
敬一(もりした
けいいち)
1950年
東京医大卒業後、生理学教室にて血液生理学を専攻。
1955年
千葉大学医学部より学位授与される。
1960年 「消ガン」と「長寿」を目指す自然医学理論を提唱。
1966年 衆議院科学技術振興対策特別委員会「ガン問題」の学術参考人として証言。同じく1966年は
「ガン問題」、1969年)は「食品添加物問題」。
1970年 「自然医学会」「(社)生命科学協会」「お茶の水クリニック」を創設。
1975年
世界的長寿郷の実地調査を始める。(1984年 中国・新彊ウイグル地区を第4の世界的長寿郷と
認定。1991年 中国・広西巴馬長寿郷を、第5の世界的長寿郷と認定)
1979年
第1回自然医学国際シンポジウムを開催。1987年 第9回自然医学国際シンポジウムに於いて
「シルクロード長寿郷」の新概念を提唱する。
1990年
瀋陽薬科大学・客員教授に任命される。
1993年
森下氣能医学教室を設置。第15回自然医学国際シンポジウムに於いて「氣能医学・序論」を
1993年
発表。
中国・広西巴馬長寿郷の第三次調査を実施。テレビ西日本が同行取材。l994年2月26日フジ
テレビ系列全国ネットで「桃源郷 巴馬を行く」が放映される。
l997年
トルコ及びアジャリア自治共和国の長寿郷調査を実施。トビリシ国立医科大学(グルジア共和
国)・名誉教授に任命される。
2000年
第4回国際新科学シンポジウムに招聘され特別講演を行なう(於韓国・ソウル)。演題は「腸
造血と末梢血液空間理論」。
現在
国際自然医学会・会長
グルジア・トビリシ国立医科大学・名誉教授
中国・瀋陽薬科大学・客員教授
お茶の水クリニック 院長
− 42 −
288
市民公開講座
ひとのいのちも自然のなかのもの
−四万十川のほとりの在宅医療の経験から−
大野内科
小笠原
院長
望
患者さんから求められる医療のかたちが、急激に変化してきている。
患者さんは医療そのもののレベルはもちろんであるが、基本的に求めて
いるものは、「表現される優しさ」である。特に高齢者ではその傾向が
より強い。
「わたしのことを真剣に考えてくれているかどうか」、「言葉でそれを
きちんと伝えてくれるかどうか」、そのことに敏感になっている。病院
でもそうだろうが、かかりつけ医の毎日ではこれを痛切に感じる。
その延長上の気持ちに、西洋医学的な方法や対応を不満に思う患者さ
んが出来るのだろう。「検査では異常がありません」の言葉だけでは何
も救われない人たちが、落胆して医療機関を後にしているのではないだろうか。
人間は曖昧で、解っているところはほんの少しのこと。体のことはまだしもこころのこととなるとわ
りきれないことばかりではないだろうか。突き詰めて行く現代の医学だけでは人間のすべては理解でき
ないのではないか。ここ、四万十川のほとりでの患者さんとのやりとりは、人間と人間のかかわりのな
かでのおおらかさがある。患者さんと向かい合っていて、こちらがほっとするときがある。
地元の超高齢者と話をしていると、「ひとのいのちも自然のなかのもの」、医療のできることは限られ
ているという淡々とした気持ちになってくるから不思議だ。ややもすると、いのちを囲い込む医療者へ
の痛烈な批判の姿のような気もする。それを在宅医療、とくに在宅死のなかに感じる。
わたしは高松赤十字病院で20年間、「大病院の田舎医者」と呼ばれるような、総合診療的な医療や在宅
医療を経験してきた。進行性筋ジストロフィの在宅人工呼吸器療法は、病院時代の最後の仕事だった。
日本最後の清流と呼ばれる四万十川のほとりの無床診療所に6年前に移ってから、そこで今までの経
験をどういうかたちで提供できるかを考えてきた。わたしの何が一番患者さんたちに喜んでいただける
か、一番は在宅医療の現場でのさまざまなやりとりのなかにこそあるようにしだいに感じてきた。
「臨床はなんでもあり」と、私は感じてきたのだが、在宅医療こそその世界である。いのちを素手で
つかんでいる、そんな感じがある。在宅の超高齢者とのいろいろが、本当に「ひとのいのちも自然のな
かのもの」とつくづくと感じる。病院で展開される場面は、本当は医療者に都合のよい切り取った額縁
の世界ではないかとさえ思ってしまう。
在宅死は、患者さんの最高の贅沢であると思う。生の言葉で、遠慮のないやりとりのなかで、死を迎
える。一緒にいのちとかかわりながら、医療者としてより人間としてこころが動く。そんな四万十川の
ほとりでのわたしの在宅医療の経験を、事例をあげながら今回はお話しさせていただく。超高齢者との
やりとり、在宅での看取り、大病院では経験できない、医療者が家族とともに「ひとりのいのち」を支
える様子をお伝えしたい。
地域のなかで生活し、地域で老い、地域で死ぬと決めた、きっぱりとした高齢者との出会いは新鮮で
ある。究極の終末期医療は、在宅死であろう。
日々の実践をありのまま、お伝えしたい。
289
プロフィール
小笠原
望(おがさわら
のぞみ)
1951年
高知県生まれ
1976年
弘前大学医学部卒
1976年
1977年
徳島大学第一内科入局
高松赤十字病院内科勤務
1988年
高松赤十字病院神経内科部長
1997年
中村市大野内科副院長
2000年
大野内科院長
著書
「神経内科治療ガイド」(共著)中外医学社
「医への想い
しなやかに」医学書院
「いのちを支える」四国新聞社
「いのちばんざい」高知新聞社
所属学会
日本内科学会、日本神経学会、日本心身医学会、日本人類遺伝学会、日本臨床血液学会
現在の研究内容
神経難病の在宅医療
地域医療におけるネットワーク作り
医療者と患者の関係論
臨床のなかの言葉
など
− 43 −
− 44 −
290
基調講演
日本発『鍼灸のグローバルスタンダード』
(社)香川県鍼灸師会
会長
真鍋
立夫
日本発『鍼灸のグローバルスタンダード』という演題は、非常に漠然とし
てかつ宏大なテーマである。当初は『鍼灸師のグローバルスタンダード』と
して、長年の鍼灸業界の一臨床家としての提言をしてみたいと考えていたの
であるが、学会としては無闇に業界を刺激するようなことは避けなければな
らないということで、「鍼灸師」が「鍼灸」でいこうということになった。
そこで、学術的な経穴の場所のスタンダードとか、診断学とか、さまざまな角度からこれを再検討し
た結果、学者でもない私として論及できる範囲として、以下の一点に焦点を絞ってみた。
鍼灸のスタンダードという言葉、これは言い替えれば「誰であっても、すぐに思い浮かぶ鍼灸という
もののイメージ」ということにもなる。それを一般市民らの鍼灸に対するイメージ、とするか、これか
ら定着させたいと考える理想的な鍼灸のイメージ、とするかによって論点が変わってくるのであるが、
日本発とした理由は、世界的視野によって現代の鍼灸臨床のありかたを見た時、やはり『鍼灸のスタン
ダードとしてのイメージはこうあるべきだ…』として、今こそ、日本から世界に向けて『鍼灸のグロー
バルスタンダード』を発信しなければ、本来の鍼灸の本流が疎かにされてしまうのではないかとの危惧
を感じたからである。
鍼灸とか漢方療法を伝統療法として現代医学(ヒポクラテス医学:以下は西洋医学と称する)と一線
を画して、代替補完医療と言う位置付けに置こうとしている傾向があるが、世界を見渡した時にいわゆ
る西洋医学が医療の主流をなしていると考えるのは一部の驕りであり、医療の本質はそのほとんどが、
地域の伝統医療によって購われているのが実体であって、そこでは伝統医療のほうがむしろ主流であっ
て、決して西洋医学の代替補完医療にあまんじているわけでは無いのである。
アメリカにおいて抗癌剤治療の行き詰まりから、人間本来の生命防衛システムを活かす事を主流とす
る癌治療の方向転換によって産まれた、伝統医療、民間医療、何であってでも生命力増強に効果のある
ものは取り入れてゆき、西洋医学の補完あるいは代替としようという思想に巻き込まれて、鍼灸療法ま
でもがその位置に置かれようとする事は非常におかしいことであると考える。
私は鍼灸医療は代替医療としての位置に置くのでは無く、西洋医学、鍼灸医学それぞれの医療の得意
とする病態分野を分業として担当するチームメイトとしてあるべきではないかと主張するのである。
とくに、日本鍼灸は独自の『細いハリ』によって現代医学では理解の出来ない、単なる刺激療法とか
理学療法では無い気の調整による医療体系が確立されている。
経絡・経穴を補瀉する鍼灸療法は古くて新しい医療『生体の情報操作医療』なのであって、ハリを刺
入するので無く、経穴にあてるだけで生体の生命防衛システムの生体エネルギーのネットワークを調整
する。これはニューサイエンスによる考察によってのみ説明出来るメカニズムであって、21世紀の『鍼
灸のグローバルスタンダード』はまさに、このイメージが先行しなければならないと愚考するのである。
291
− 45 −
教育講演
「お灸の歴史」
−科学史の立場から−
京都大学人文科学研究所
東郷
俊宏
灸療法は鍼療法、湯液療法とともに、長い中国伝統医学の歴史の中で常に
重要な一翼を担ってきた。今日、私達は鍼、灸双方の治療法をセットにした
「鍼灸」という表現をごく当たり前に用いているけれども、中国、日本の伝統
医学の歴史を振り返れば、両者は必ずしもどの時代においても同等の意味づ
け、重要性を持っていたわけではなく、また同じ灸を用いた療法でもその使用目的、ドーゼ(壮数・艾
の大きさ)に対する考え方やその背景をなす病態把握のありかたは、時代や地域によって多様であっ
たことに目を向けずにはいられない。たとえば灸療法はしばしば湯液療法と併用されてきたし、外科的
疾患にも応用されてきた。壮数についても記載される刺激量は十壮以下に止めているものから百壮単位
に至るものまで、医書によって様々である。またよく知られているように、鍼療法に比べ簡便、かつ安
全とみなされた灸療法は、養生法の一環として用いられることもあり、ひとくちに「灸」といっても期
待される効果、意味づけはコンテクストによって様々であったことがうかがわれるのである。
こうした伝統医学の歴史にみられる灸療法の多様なあり方についてより深く理解することは、今日に
おける私達の鍼灸治療のあり方を見直していく上で、また灸療法の可能性を追求していく上で大きな意
義を持つのではないだろうか。
このたびの講演では、歴代史書、医書、また西洋人の手になる日記や紀行文を通じて中国、日本にお
ける灸療法の歴史を概観しつつ、以下の諸点について言及していきたい。
1.漢代までの灸療法
馬王堆医書(『五十二病方』『陰陽十一脈灸経』『足臂十一脈灸経』)と『黄帝内経』、および『史記』扁
鵲倉公列伝にみられる灸療法の位置づけについて。
2.魏晋南北朝期から隋唐期の灸療法
史書(『南史』など)に記載される灸療法、『肘後備急方』『小品方』『曹氏灸経』『劉涓子鬼遺方』にみ
られる灸療法。灸療重視を明言する『外台秘要方』と『千金要方』の比較。
3.宋代以降の灸療法
劉完素・李杲・朱震亨等のいわゆる「金元四大家」、および彼らと師弟関係にあった医家達の灸療観。
『鍼灸資生経』『扁鵲心書』『景岳全書』『類経図翼』にみられる灸療法。
4.西洋に伝わった灸療法
15世紀末に始まる大航海時代以降、多くのヨーロッパ人が東アジア諸国に渡来し、日記、紀行文を通
じてその文化を西洋に紹介した。東アジアの伝統医学は、主に日本を訪れたイエズス会士やオランダ商
館 医によ って 西洋 に紹 介さ れた 。 フ ロイ スの 『日 本史 』、 元 禄期 に来 日し たケ ンペ ル (Engelbert
Kaempfer)の『廻国奇観』などはその最も著名なものであり、灸療法に関する生き生きとした記述を載
せている。
5.近世日本における灸療法
近世日本においては明代までに編纂された中国鍼灸書の成果をふまえつつ、多くの灸療法の専著が出
版された。その中にみられる日本独自の灸療観について言及していきたい。
− 46 −
292
シンポジウム
Ⅰ
「局所治療と遠隔部治療」−運動器疾患を対象としてⅡ−
‥‥局所とは遠隔部とは‥‥
東京衛生学園臨床教育専攻科
筑波技術短期大学鍼灸学科
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
小川
形井
篠原
卓良
秀一
昭二
Ⅰ.シンポの最終目的
本シンポジウムは、遠隔部治療及び局所治療のいずれかを否定することを目的とするものではなく、
そのどちらかの方が安全でかつ有効性が高いケースがあるかどうか、そしてそれはどの様なケースかを
探ることを目的としている。シンポは3回行うことを前提とし、前回の茨城大会では運動器疾患を対象
として遠隔部治療にスポットを当て、遠隔部治療の有効性を3人のシンポジストがその実際を示し、1人
が局所治療の有効性と優位性について述べた。
Ⅱ.前回シンポの結果
前回は、運動器疾患に対して「遠隔部の方が」ではなく、「遠隔部でも有効」という結論が導かれるの
ではないかと思われたが、シンポジストの1人である吉川恵士氏は他の3人の報告では不十分であると
してこれを認めなかった。ここでは局所と遠隔部の意味を再考する必要があるように思われた。症状の
ある部位を局所とすることに異論はないにしても、鍼が接触するのは皮膚・筋肉であるならば、接触部
位だけが局所なのか、それともデルマトーム全体、筋束及び筋全体に及ぶものなのか、また鍼刺激の受
容体を感覚神経とするならば、そして中枢への経路での何らかの反射や自律神経系との関わり等を考え
ると、局所の機序と考えていたものは実は遠隔部の機序の可能性もあるかも知れない、という疑問も生
まれた。
Ⅲ.今シンポの目的と方法
今大会では、この点を重視し、(社)全日本鍼灸学会の会員諸氏が局所と遠隔部についてどの様に認識
しているのかをまず調査することにした。1991年名簿登載者(会員歴11年以上)約1250名から無作為で500
名を抽出し、臨床歴、主たる治療方式、依って立つ治療理論、8つの症状に対する治療穴の選穴につい
て、遠隔部か局所かの質問とその理由及び局所と遠隔部の定義などを質問項目とした。有効回答数140
(回答率28%:抄録作成時)で、平均臨床歴25年+α、主たる治療方式が現代派38%、経絡派11%、中医
派6%、折衷派32%、その他13%、治療理論としては、解剖・生理に基づくものが36%、経絡治療が9%、
中医学が5%、折衷が43%、その他が8%であった。
症例についての質問では、「泌尿器の障害がある患者に、陰部神経を目標として殿部よりひびきを得る
まで刺鍼した。この治療は遠隔部か、局所か」と「第7・8胸神経に沿った腹部に帯状疱疹があり、痛み
を訴えていた患者があった。この患者の膈兪に刺鍼をした。この治療は遠隔部か、局所か」の二つで大
きく回答が割れたが、その他ではどちらかに90%以上であった。
今大会では、前回と同様に運動器疾患を取り上げ、それぞれのケースでの選穴の考え方の分析、各治
療法や依って立つ治療理論による局所と遠隔に関する考え方の相違のクロス集計等も交え、アンケート
の分析結果を踏まえて検討する。また、前回のシンポジストと司会である白石武昌氏と森山朝正氏、そ
の他代表的なオピニオンリーダーに指定発言を頂き、議場と一緒に、この問題を考えていくこととする。
293
シンポジウム
− 47 −
Ⅰ(指定発言)
「局所治療と遠隔部治療」−運動器疾患を対象としてⅡ−
腰背部疾患に於ける「遠道刺」の意義:第2報
白石
宏史、小島
(財)東洋医学研究所
大場
雄二、筒井
武昌
孝昭
前回同様、概念としてfar points は経絡に依り、near point は脊髄/脳神経の分節性に依り、どちら
かを選択し、取穴・鍼刺∼治療する、という立場で、局所治療を否定する立場でもないことも明確にし
遠道刺の意義を考察する。
今回は委中よりも更に遠位の承山・飛陽・崑崙刺激の場合の足太陽膀胱経腎兪の応答性を軽等∼中等
度腰痛患者76名(男性43名、女性33名)で検討した。腎兪穴での応答性の変化を70∼80分間測定した。
同側承山・飛陽・崑崙を取穴し、1.0ms、 10Hz、0.5∼10.2Vで10分間の通電刺激を行い、40分間測定し、
刺激前後の変化を観察した。腎兪での応答性は先の委中鍼刺激の如く一様性な作用発現ではなく、承山・
飛陽・崑崙通電刺激では個々経穴でのそれぞれ著明な男女差や、経絡・経穴特性を確認した。次のstep
である刺鍼効果の検討が急務となった。
併せて、これらの現象が同一経絡上でのみ認められる特異的現象であるのか、あるいは非特異的であ
るかの確認のため膀胱経隣接の少陽胆経陽陵泉・陽光・光明穴刺激の腎兪での応答性の検討の結果もそ
の一部を報告する。
− 48 −
294
シンポジウム
Ⅰ(指定発言)
「局所治療と遠隔部治療」−運動器疾患を対象としてⅡ−
筑波技術短期大学鍼灸学科
森山
朝正
鍼灸治療の方法には標準がない。治療の標準化が必用であるか否かの検討も十分されているとは思わ
ない。唯一、治療する部位を決定する場合、最終的に症状の存在する部位もしくは訴えの強い部位を選
択するぐらいであろう。それ以外の治療ポイントの選択は症状の関連する部位、理論的に選択される部
位ということになろうか。歴史的に積み上げられた理論的な治療ポイントの選択の正当性をすべて検証
するには膨大な時間が必要であるが、科学的な鍼灸理論を構築するためにはいずれ実施しなければなら
ないと考える。しかし、その検証が終了するまで鍼灸の臨床を留め置くことは不可能であり、鍼灸治療
を希望する患者を放置することもできない。では、今できる科学的な根拠持った治療ポイントの選択は
何かというと、科学的な根拠にのっとった診断であろう。鍼灸師に診断権は…などというレベルの話で
はなく、治療法の選択をするための観察検査がすなわち診断である。この観察検査を理論的に誰もが認
める方法に則って行えば、自然に科学的な治療ポイントの選択につながる。
前回の学会で報告した運動学的な観察検査によれば、上肢や肩の痛みに対して下肢の治療ポイントの
選択が理論的にも正しいことが理解できる。さらにこの理論を科学的に検証しなければならないが、現
在まで筑波技術短期大学付属診療所で実施した臨床的な結果を紹介し、ご批判を仰ぎたい。
295
シンポジウム
Ⅱ
− 49 −
灸研究の現在
灸基礎研究の概観
東京衛生学園専門学校
會澤
重勝
これまでの灸の基礎研究の流れをご紹介し、シンポジウムⅡにてお話いただく各先生の最新の研究へ
の橋渡しをするのが私の役割です。最近の研究を簡単にご紹介します。
1. 艾の成分に対する基礎的研究
艾の製法については、織田が原料のヨモギの産地の史的考察から艾の製法、生産地その変遷まで詳細
な研究を報告している。精製した艾の形態については、會澤や仲西が電子顕微鏡を用いて詳細に検討し
ている。成分については従来から数種類の脂肪酸やタンニン類が報告されているが、ガスクロマトグラ
フィーによりロウ(ワックス)成分が点灸用艾で多いことを最近戸田が報告している。仲西は艾にも輸入
品があり、輸入ヨモギと国産ヨモギならびに生成された艾を比較し、形態と金属元素の含有量に違いが
見られ、これが燃焼温度の違いとして現れることを報告している。施灸温度については、會澤、菅田、
仲西などが繊細な熱電対を用いて皮膚上の正確な温度を計測し報告している。
2. 生体への影響(組織学的見地から)
施灸部の組織変化については、會澤が施灸部の修復過程を工学顕微鏡で報告し、五十嵐らは施灸部直
下の皮下血管網の微細構造を走査形電子顕微鏡を用いて観察し報告している。校條らはマウス真皮コラー
ゲン細線維の形態変化を透過型電子顕微鏡を用いて詳細に検討している。
3. 生体への影響(生理学的見地から)
施灸部の皮膚血流変化については、鍋田ら、桑名らがレーザードップラー血流量計を用いて報告し、
フレアー反応について軸索反射性の機序を想定している。また、血管透過性の変化については會澤の報
告がある。施灸による筋の血流変化については、大久保らが近赤外線分光法を用いて報告している。仲
西は、マウスの発毛による研究から皮膚組織の代謝促進効果を報告し、艾のタール成分の活性酸素消去
作用、有茎皮弁の生着率から血行改善作用についても報告している。東家らはカフェタンニン(艾の含
有成分)によるリンパ球遊走の促進を報告している。後藤らはマイクロニューログラムで施灸局所の受
容器の反応について報告している。
4. 生体への影響(免疫学的見地から)
東家らは施灸部皮膚局所が熱傷(炎症)とは異なる特有の組織学的変化を示し、CD4陽性細胞あるいは
CD161a陽性細胞を主とする著名なリンパ球浸潤が見られ、リンパ行性の所属リンパ節への遊走を認めた
と報告している。また、浸潤閾に一致して通常皮膚では認められない高内皮細静脈の出現を報告してい
る。また、小林は施灸によりストレス蛋白が合成されることを報告している。
− 50 −
296
シンポジウム
Ⅱ
灸研究の現在
施灸部位の組織学的検討
名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻、すこやか鍼灸院
校條
由紀
【目的】
一言で「灸」といっても方法は多彩であり、どの場合にどの灸を用いるかは術者に依存する。施灸に
よる生体への刺激はもぐさの種類、量、燃焼方法によって異なることが予想される。従って、「灸で生体
に何を起こそうとしているのか」を考えて方法を選択することが重要である。灸の熱による生体への影
響を施灸部位の皮膚組織観察から検討した。
【方法】
マウスの背部に5mgのもぐさで透熱灸をし、10分、60分、29時間、48時間後にそれぞれ皮膚を採取し、
固定、パラフィン包埋、次いで連続切片を作成し、HE、アザン染色後、組織観察をした。エポキシ樹脂
包埋した皮膚は透過型電子顕微鏡観察をした。組織変化の程度により施灸部位を色分けし、変化の範囲
を二次元のグラフ化にした。また、燃焼前後のもぐさ線維の走査型電子顕微鏡観察をした。
【結果】
施灸後の皮膚は肉眼的に、刺激部位10分後は皮膚が膨張し、表面が黄色い。29時間後は膨張した頂上
が平坦で、色は中心が茶色、周囲は白い。48時間後は中心よりも周囲が赤い。
皮膚組織観察では、施灸をしない皮膚の表面は表皮層が波状に凸凹しているが、施灸部位の表皮は10
分後は平坦となり、表皮の細胞は伸長し核の消失や空胞化変性を認めた。この変化は中心よりも外輪の
方が強く、体表に灸の痕が円くつくのに対応してドーナツ状になった。29時間後に特に変化の強い範囲
はHEで濃いピンク色に、アザン染色では通常青く染まる真皮上層が赤い。表皮は外側から再生し経時的
に変化の範囲は縮小した。真皮層は施灸部位の中心が強く肥厚し組織が無構造化した。脈管腔は縮小し、
毛根は萎縮、線維芽細胞は萎縮した。29時間後は組織変化を囲む細胞浸潤を認めた。皮下組織層も中心
が強く肥厚し、脂肪細胞が丸みを帯び、細胞間が拡張した。この範囲は60分後では施灸痕を越えて拡張
し、48時間後も持続していた。血管拡張は変化の外側で強い。強い細胞浸潤を認めた。
電子顕微鏡観察から、皮膚真皮の無構造化した結合組織は、構成するコラーゲン細線維がほぐれてい
た。ほぐれの程度はもぐさの量が多くなるほど強く、経時的に減少した。もぐさの線維は筒状や帯状で、
表面は滑らか。燃焼後は表面に泡沫状の付着物や細かい線維の走行が見られ、線維の壁が薄くレースの
様な像も認めた。底辺中心部では燃え残りの部分があり、この部位の線維表面は滑らかなものが多いが
滴状の付着物を認めた。
【考察およびまとめ】
透熱灸はもぐさの量が組織変化の強さに影響することから、刺激の量は術者の調節となる。施灸部位
の表皮組織は中心部を囲んで環状に変性を呈していたことと電子顕微鏡によるもぐさの線維の変性より、
もぐさ底辺での熱の影響は中心部が温熱、その周辺部では直火によるものが強いといえる。これはもぐ
さという植物を用いた透熱灸の特徴であり、高温の金属を当てるような熱傷よりも組織修復が早いと考
えた。燃え残りに認めた滴状のものは精油が染み出していたと考えた。灸が終わってからでも熱による
組織構造の変化の拡がりはゆっくり続くことや、表皮よりも皮下組織の広い範囲に熱の影響を与えるこ
とは、血管拡張の持続、局所の構造的な変性、非感染性の細胞浸潤の目的には透熱灸は有効といえる。
表皮が修復しても深部の組織の修復は継続している場合があり、連日の透熱灸をする際には留意が必要
である。また、疾患マウスでの組織変化と正常との比較の際にこの結果を参考にできる。この結果を灸
治療の際に役立てていただければ幸いである。
297
シンポジウム
Ⅱ
− 51 −
灸研究の現在
灸の免疫系への作用
関西鍼灸大学解剖学教室
東家
一雄
「免疫力が強い人は風邪を引きにくい」、「免疫力が落ちているので体調を崩しやすい」、このような言
葉を会話の中で耳にすることがあります。「免疫力」とは、私たちの身の回りに無数に存在しているウイ
ルスや細菌などの抗原の感染から身体の健康を守ってくれるしくみのことで、それはヒトの体内に約2
兆個あるとも言われている免疫細胞の活動によって維持されていることが知られています。免疫細胞は
個性豊かな細胞集団で、感染の情報を伝える樹状細胞やマクロファージ、また、実際の防御効果を発動
するT細胞やB細胞、NK細胞などのリンパ球が接触や液性因子サイトカインの刺激で相互に連携して、
抗原の感染に対抗する免疫力の形成に重要な役割を演じています。
一方、東洋医学では病気からの快復を説明するときに「自然治癒力」という言葉を使います。この言
葉自体が含む意味合いは奥が深く、多要素が複雑に関係するものですが、感染からの防御やその症状の
改善という部分では免疫力すなわち免疫細胞の活動が源になっています。そして灸療法にはこの自然治
癒力を高める効果がある、と古くから伝えられてきました。これは灸治療の長い歴史の中で経験的に蓄
積され認識されてきたことですが、近年、その科学的根拠を明らかにするために灸と免疫反応あるいは
免疫細胞の活動との関係を探る実験が行われており、本学会でも多くの興味ある研究成果が報告されて
きました。
現在、灸の刺激は生体に対して単なる温熱効果を与えるだけではなく、艾の燃焼と共に空気中に拡散
するシネオールやα-ツヨンなど精油成分の作用、また、燃焼後に生ずるタール中の成分として皮下浸透
するクロロゲン酸やカフェオイルキナ酸などカフェタンニンの作用も推察されています。特に艾中に含
有量が高いカフェオイルキナ酸は強い抗酸化作用を示すことで知られていますが、この物質はマクロファー
ジの運動能を促進したりマスト細胞の脱顆粒を抑制するなどの作用をもつことが報告されています。さ
らに最近ではカフェオイルキナ酸自身に抗ウイルス作用があることも発見されました。
私たちの研究グループではカフェオイルキナ酸を含む艾含有成分が免疫細胞の活動に及ぼす作用に注目
しており、現在、その側面から灸と免疫細胞の活動との関係について実験動物を対象とした基礎研究を
進めています。その結果、これまでに次のようなことが明らかにされてきました。
1)灸刺激にはリンパ組織内におけるサイトカイン産生を促し、免疫細胞が活動しやすい環境を形成す
る作用がある。
2)カフェオイルキナ酸には免疫細胞によるインターフェロン-γの産生能力を高める作用がある。
3)カフェオイルキナ酸を含む艾含有成分には免疫細胞を引き寄せる走化性因子としての作用がある。
このように、灸や艾含有成分は免疫細胞の活動に対してそれらを活性化へと導く様々な作用を示すこ
とが解ってきました。現段階では、これらの知見を直接的に灸治療の臨床へと挿入するには両者の間に
まだかなりの隔たりが存在すると思いますが、今後は基礎研究から得られたデータと臨床の現場におけ
る治療効果との関連性を深め、脈々と続けられてきた灸療法が生体の免疫力、自然治癒力に対して示す
作用を現代科学の立場から認識し説明していくことが重要と考えています。
− 52 −
298
シンポジウム
Ⅱ
灸研究の現在
温灸の作用機序
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅲ教室
仲西
宏元
灸法の起源は中国の秦の時代、約2300年前で仏教と同じ頃に朝鮮半島を経て日本に伝来したと言われ
ている。以来我が国の伝統医療として今日まで様々な疾患の治療に用いられてきている。灸法は大きく
2つに分類され、一つは艾で直接皮膚に熱刺激を与える直接灸(透熱灸)、もう一つは艾と皮膚の間に空
気層や介在物を入れて熱刺激を与える間接灸(隔物灸、温筒灸など)がある。
灸刺激は、一般的に皮膚局所の血管の変化を引き起こし、中でも透熱灸は血管を拡張させ、同時に細
静脈の血管透過性を亢進させる。また、灸刺激部位において貧食能も亢進させる。また、近年の研究で
は灸の抗酸化作用も報告されている。このように灸法は局所的な代謝促進が考えられます。ただ、灸治
療に関する研究は未だ鍼治療に比べ少ないと思います。今回は灸法、特に温灸についてこれまでの研究
結果と最近得た知見について報告します。
1.温灸艾の元素組成と燃焼温度
臨床において透熱灸や温灸は、疾患や施灸部位になど使用目的によって使い分けられるが、ヨモギの
原産地や艾の製造過程によって艾の成分や燃焼温度に差異がないかを日本産温灸艾と中国産温灸艾を用
いて、X線解析で含有元素を調べ、各燃焼温度と比較検討した。
艾の含有元素は日本産と中国産ともSi、P、S、Cl、K、Ca、Ti、Mn、Fe、Cuが含まれている。含有元素
で最も差異を生じたのはTi、Mnで中国産に多く含まれていた。
燃焼最高温度では各温灸用艾には差を認めなかったが、最高温度への到達時間や45℃以上の持続時間
で温灸用艾に差が生じた。
2.灸の基礎研究
灸の刺激入力部位と生理活性物質の変化を比較するためにマウスの坐骨神経、脊髄を指標にSP、c-Fos
を用いてその出現の強さ及び範囲について検討した。坐骨神経において灸刺激の伝達は、鍼刺激に比べ
細い神経線維を伝達することが多いこと分かった。また、脊髄レベルにおいても後角のc-Fos陽性細胞の
出現様式からも灸刺激は鍼刺激と異なることが分かった。このことは鍼刺激とは異なる中枢への伝達系
と治療効果の差を生じるといえる。また、痛みに対する灸の治療効果の研究では、急性疼痛に対する影
響を、脊髄神経細胞で免疫組織化学的に検討した。ホルマリン刺激によって出現するc-fos陽性反応は灸
刺激によって抑制された。灸刺激後にホルマリン刺激を行った場合には、c-fos陽性反応は増加した。サ
ブスタンスP陽性反応は灸刺激によって活性化を示したが、ホルマリン刺激前後に灸刺激を行った場合で
は、ホルマリン単独刺激時と同様の枯渇傾向を示した。
また、脊髄反射機能についてパルス磁気刺激を用いて磁気誘発筋電図で施灸後の変化を観察した。H
波、M波やH/M比の閾値は、磁気刺激では影響は認めなかったが、H波、M波の発達曲線におけるH波の
傾きが施灸前後に有意な差を示した。このことから、灸刺激の局所的な刺激が生理活性物質を奮起し、
機能の活性を引き起こしたと考えられる。
上記の結果から、灸刺激は鍼刺激とは異なる伝達系があり、その治療効果も異なることが考えられる。
ただし、灸の原料であるヨモギの産地が異なり含有する金属元素の含有率の違いが大きく認めたことか
ら同質重量の刺激を行っても、その治療効果に差が生じるのではないかと推測される。
299
実技セッション
− 53 −
日本における伝承灸
−日本における名灸穴と形式灸−
森ノ宮医療学園専門学校はりきゅうミュージアム研究員
北里研究所東洋医学総合研究所医史学研究部客員研究員
長野
仁
【緒言】
中国において、唐代から盛んとなった奇穴の集成作業が、現在でも新穴の発見と追試というかたちで
継続され、量的な拡大をみているのは周知のことである(中風七穴のようにある病証に対する正穴の配
穴パターンを特有の名で呼ぶもの、四神聰のように複数穴を一名で呼ぶものを、集合穴と称する)。近代
以前、中国医学を医療の本流としてきたわが国では、中国の奇穴を活用するだけでなく、鎌倉期から固
有の奇穴を創出するようになり、江戸中∼後期にかけて集大成が試みられた。固有の奇穴は(灸用の集
合穴を大正期には形式灸と呼んでいた)、胃の六ッ灸、小児斜差の灸のように教科書レベルで常識となっ
ているものばかりでなく、家伝・秘伝の名灸穴として現在まで脈々と伝承されているものもある。実技
セッションでは、後者のうち、九燿の灸・カモ灸・弘法大師のレンコン灸を紹介するが、ここでは、名
灸穴(形式灸)の史的展開を概括する。
名灸穴の史的展開
〔古代∼近世〕
○ 黎明期:鎌倉初期∼室町末期
四花患門の穴など中国の奇穴を活用するのみであったが、やがて伝屍病に対する独自の灸穴が登場
し、少しずつその数を増す。僧・良心の「癰疽八穴灸法」は朝鮮半島にまで伝わる。僧医は背部兪穴
への施灸を「五蔵の根焼」と呼ぶ(弘法大師の灸治の親和性は、こうした史実を背景に、近世以降、
御夢想の妙灸の一種として神話的に形成されていったものと思われる)。
○集成期:江戸中期∼末期
『阿是要穴』『秘伝灸穴集』(九燿灸の初出)『灸 鹽土伝』『名家灸選』『困学奇兪』『灸穴秘蘊』『公
益秘事大全』(胃の六ッ灸の初出)などに名灸穴が集大成される。また、後藤艮山が異人の五極灸を伝
え、香川修庵が徹腹穴を創意する。
〔近代∼現代〕
○再考第1期:大正∼昭和前期
小林北洲らが、全国各地に伝わる名灸穴を探訪・公開するいっぽう、沢田健らが、臨床を通じて新
たな名灸穴を創出する。灸治は赤痢・疫痢・結核といった急性・慢性の重篤な疾患に活用された。ま
た、原志免太郎らが医科学的な研究を進める。
○再考第2期:昭和中・後期
代田文誌・深谷伊三郎らが、名灸穴の再発掘と普及に努め、今日的な施灸法の礎石を築く。また、
メーカー主導で間接灸(温筒灸)の商品開発が進み、灸治のソフトランディング化が起こる。
【小結】
以上の歴史を踏まえれば、現在は再考第3期ということになる。しかし、それは灸療が活況を呈して
いるから起こっているのではなく、名灸穴という文化遺産が存亡の機にあるという焦燥感がしからしめ
ているように思われる。「未病を治す」という予防医学的観点を強調しすぎるならば、瘢痕を残し、侵襲
が大きい(と、患者のみならず術者も認識しつつある)透熱灸・打膿灸の類は、時流に乗らない技術と
して自然消滅せざるを得ない。医療は実用・実践の技術であるから、不用の方法が淘汰されるのは仕方
ないとしても、最終的には「きゅう師」免許の必要性(業務範囲)を左右する大問題となろう。先人の
伝えた名灸穴という財産を次世代に向けてどう処理すべきか、たとえ数種であっても実技セッションで
伝承の技法が紹介できるここしばらくが、真剣に考える最後のチャンスと言わねばなるまい。
− 54 −
300
実技セッション
日本における伝承灸
九燿の灸
赤壁鍼灸院
山野
員子・有馬
靖子
1.九燿の灸の歴史
九燿の灸とはおよそ200年前に、鳥取県で木村宗吉という人が病弱の娘のために、弘法大師に祈願した
ところ、満願の日にお告げをいただきました。その夢のお告げのとおりに灸をすえたところ、娘はみる
みる元気になっていきました。その噂で宗吉は、周りの人から治療を乞われるようになったのです。そ
の病弱であった娘ツルは灸に感謝し、生涯灸で人助けをしようと後年、大阪の北浜で施術所を開設しま
した。そのお告げの灸の形が、古代インドで発生した天文学(易学)の九曜星と似ていることから、人
知れず九曜 (燿) の灸と呼ばれるようになりました。この九曜の配置は日本で平安期に、真言の本尊
(九曜曼茶羅)として崇拝されていることからも弘法大師との関連が見られます。そして現在、戦時を守
り抜いた四代目片木冨美子の娘四人に継承されています。
・九燿の灸の特徴
現在施術に使われている九燿の灸の特徴はその大きさで糸状灸と半米粒大の間くらいの大きさで、こ
れは3代目の古野田鶴(たづ)の時代に結核が流行し、一日数百人という患者が来ていたとき、同じ症
状の患者の一方に今までの灸をすえ、もう一方の患者に小さな灸を複数壮すえたところ、その治療効果
に差がないことがわかりました。以来患者への苦痛の軽減の為にこの灸を用いることとなりました。
2.九燿の灸の方法
・九燿の灸の適用
多くの施灸術者が診ていると思われる疾患が適用です。特に慢惟疾患には他の治療法にはない著効が
見られます。例をあげれば、潰瘍などの消化器疾患や喘息などの呼吸器疾患、関節痛などの各種疼痛や
RA、糖尿病などです。
・九燿の灸の取穴法
第八・九胸椎棘突起間に中点を取ります。そしてその上下左右に四点、放射状に四点、一棘突起間分
の距離のところに取穴します。これは基本形で、呼吸器疾患のときなどは中点を第七点八胸椎突起間
(至陽)にとるときもあります。
・九燿の灸のドーゼ
九つの灸点を上段・中段・下段に分け、上段に三壮、中段に五壮、下段に五壮ずつ灸をすえます。こ
れも基本形で、病態によって壮数が変わります。
3.まとめ
以上が概略ですが、我々にとって最も重要なことは患者とのコミュニケーションであると考えていま
す。現代医学では3分診療といわれますが、我々の様な施術を行なうと、一人の患者に対して少なくと
も30分は時間を費やし、長い人となると1時間を越えます。その間、患者との信頼関係を築く時間がうま
れます。患者の不安を取り除き、本人に疾病の回復の意欲を持たせることで、特に慢性疾患の場合は治
療効果が増大します。そのため、情報が氾濫している現代において、多くの知識を持った患者にも対応
できる幅広い知識と見識および一般常識が必要となります。
200年前と現在の患者には大きな疾病の違いがあるでしょう、しかしこの治療法が長く続いているとい
うのは、患者のなまの声を聞き、個々に応じて対処していく鍼灸古来の治療姿勢に準じているからだと
思われます。
301
実技セッション
− 55 −
日本における伝承灸
カモ灸
元カモ灸
大嶋小和子
1.カモの灸の由来
カモ灸の由来は、奈良時代に遡る。香川県多度津町北鴨に四国霊場七十七番札所の道隆寺があり、大
嶋家は当寺の檀家総代を務めてきた。奈良時代に土地の豪族である、和気道隆公により薬師堂が建立さ
れ、当時は出納役を大嶋家が担っていた。ある時、一人の僧が道隆寺を参拝に訪れた際、この僧から
「灸を授けるので、これを以て広く人々の役に立ちなさい」と、灸の技法を授けられたと伝えられている。
以来、9代にわたりカモ灸として大嶋家が継承してきた。「カモ」の呼称は、地名の「北鴨」から由来し
ている。丸亀藩主・京極氏の時代には、駕籠での送迎があるなどの処遇もあり、近郷近在から遠く大阪
や和歌山からもカモ灸の治療を希望して、多くの人々が訪れてきた。しかし、これも父(大嶋久勝)と
母(大嶋ソネ)の9代をもってのみとなり、私自身はこれを継がず、カモ灸の伝承も消え去ろうとして
いるのが現状である。
2.対象とする疾患・症状
いわゆる小児の、「疳(かん)の虫」、百日咳などを主な対象としていた。しかし、その他の成人の症
状や健康管理に対しても広く用いられており、特に、旧八月一日午(うま)の節句(八朔という)の翌
日は、カモ灸をすえる日として押すな押すなの大盛況であった。
3.手法
ここではカモ灸の家伝法として「虫の灸」を紹介する。通常の「ちりげ灸」には身柱穴を使用するが、
カモ灸ではこれとは別に「虫の灸」として命門穴を使用するのが特徴である。男女で左右を使い分けて
おり、男児には椎骨の左際、女児には右際の命門穴に糸のような細い灸をすえる。年齢によっては椎骨
の両際に施灸をすることもある。僅かに「チクッ」とするだけなので、子供への治療が盛んで、即効性
もあった。
4.まとめ
亡き父は、治療家として病人の灸治療に生涯をかけ、その姿は今でも眼に焼き付いている。また、カ
モ灸の治療技術も身近に見たり、私自身も施術を受けることで、効果を体感してきた。多くの伝承灸が
消え去ろうとしている状況の中、本学会においてその伝統を紹介することで、後の世に役立つならばと
思い、今回の実技公開を受けることにした。前述のように、私自身は鍼灸師であるものの、カモ灸を継
承してはいない。先代が行っていた「カモ灸」について、覚えている限りで解説し、実技を行うことと
する。
− 56 −
302
実技セッション
日本における伝承灸
弘法大師のれんこんの灸
愛媛地方会
池田
啓二
1.弘法大師のレンコンの灸の歴史や沿革
約1200年前頃に弘法大師は、修行の為に四国八十八ケ所や弘法大師のゆかりの地を廻って困っている
人や病める人々に薬草や灸治療を教えたり、水不足のところは場所を指定して水を出したり、体の冷え
る人にはサウナの始まりである今治市桜井に石風呂があり、病気を治療する為に今でも夏の暑いときに
利用されております。また農作物が取り入れやすいように木を低くしたり、バラにとげがないところな
ど弘法大師はあらゆる部門で四国に歴史を残してあります。今回は愛媛県の石井地区で、昔から弘法大
師のレンコンの灸として栄えた治療法をご紹介して灸治療法の必要性を強調していきたいと思います。
これは膈兪穴を中心として前後左右に8ケ所の灸点をつけて丁度レンコンを輪切りにしたような形にな
り、先を見とうしのためにも穴があり、レンコンの灸として言い伝えられてきた。
2.対象とする疾患・症状
気管支喘息・アレルギー性鼻炎・蓄膿症・慢性風邪症侯群・花粉症・久咳などの呼吸器疾患
3.治療法
これは背部の膈兪穴を中心にして上下左右に圧痛点を診つけて8個の治療点を出して灸を1ケ所に7壮
∼30壮位すえていきますが、近頃は跡のつかない間接灸やカラー治療があります。カラー治療は探索棒
で指尖百会で調べて患者の病気が蓄膿症であれば蓄膿症のカラーを膈兪を中心とした前後左右の反応点
に約0.5mmくらいの大きさで貼り付けていきます。1週間ないし10日くらいで取り替えていきます。
4.考察とまとめ
学術的な考察として膈兪穴は、第7胸椎棘突起下の両側で1寸半に取穴しますが、このツボは八会穴
の一つで血会と言って血液に関する病気には必須穴であり、これを中心にしてレンコンの穴が9個ある
ので8個の灸点を探索して直接灸をすえると効果があります。施灸により血液の変化には、白血球、赤
血球、血色素、血小板が増加したり、免疫力が高まります。また圧診点としてマッケンジー氏の胸椎圧
痛点、小野寺氏 の胆石疝痛点も同じ灸点の場所であり、横隔膜を中心に背部に刺激を与えることにより、
各種の病気が治癒しますが、特に呼吸器疾患には効果があると考えます。またカラー療法では、皮膚に
も目と同じように光を吸収する光受容器があり、視覚より正確に波長を捉まえており、光受容器は色別
分類も波長により吸収されている。可視光線から診ると生体から出るフォトンと皮膚から吸収する光の
波長が同一波長と見ることが出来て探索棒のオーラが異常部位を正確に診断することが出来る。人体に
カラーを異常部位に貼り付けることにより逆位相になるので病巣部の活性化を抑制または消失する効果
を得て病気が治癒するものと考える。
303
パネルディスカッション
Ⅰ
− 57 −
OSCE の実際とその問題点
丹澤
東海医療学園専門学校校長 杉山
司会:明 治 鍼 灸 大 学 名 誉 教 授
章八
誠一
鍼灸師が身につけておくべき能力として、知的能力(知識)・操作能力(技能)・人間性(態度・習慣)
の3つが必要とされている。鍼灸教育機関では、学習者にこれら3つの能力を習得させるべく教育目標を
設定し方略を立て、学習者の目標への到達度並びに設定した目標や方略が適切であったかどうかを確認
することを目的として評価を行う。
はり師きゅう師国家試験は、教育課程の修了者が社会にて業を行う上での能力を評価する、いわばバ
リアとしての意義を有するものであることは云うまでもないが、現在行われている国家試験では3つの
能力のうちの「知識」の領域しか評価していないのが実情であり、従って鍼灸師として習得すべき「技
能」並びに「態度・習慣」の領域については、各教育機関が社会に保証すべく責任をもって評価しなけ
ればならない。
OSCE(客観的臨床能力試験)は、筆記試験では評価できない技能や情意領域を評価する上でその有用
性が期待され、鍼灸教育機関でも近年導入・試行されつつあるが、評価としての客観性や妥当性など、
まだまだ様々な問題を抱えているといえよう。
そこで本セッションでは、既にOSCEを実施している教育機関に各々の実施状況とその成果や問題点な
どについて明示して頂き、評価としての妥当性・信頼性について考えてみたいと思う。
− 58 −
304
パネルディスカッション
Ⅰ
OSCE の実際とその問題点
東海医療学園専門学校における OSCE 実施の問題点と今後の課題
東海医療学園専門学校
木村
博吉
【導入の目的】
東海医療学園専門学校(以下当学園)の臨床能力に関する従来までの教育は、カリキュラムに沿った
担当教員主導によるものであった。また、その到達度は担当教員の主観的尺度をもって評価してきたが、
これらの教育・評価方法には普遍性を欠く数多くの問題点があった。そこで、この問題点を解消するた
め、卒前教育における臨床能力教育の質的向上及びその客観化を目指して、段階的にOSCE導入に関する
検討を開始し、平成12年度から14年度までの3年間、卒業判定実技試験においてOSCEを実施した。
【実施状況の紹介】
平成12年度の対象は、最終学年(3年生)43名。ステーション(以下ST)は、3つのSTを2列設けて
実施した。ST1は、標準模擬患者(以下SP)参加型の医療面接(制限時間10分)。ST2は、医療面接の情
報理解を問う筆記試験。ST3は、身体診察(制限時間10分)。課題数は4題。内容はバイタルサイン(脈
拍数測定)、上腕二頭筋腱反射、腹部触診、アレンテスト、ならびに課題関連の口頭試問を行なった。
平成13年度の対象は、最終学年41名。STは、3つのSTを2列設けて実施した。ST1は、SP参加型の医
療面接(制限時間10分)。ST2は、身体診察(制限時間10分)。課題数は6題。内容はバイタルサイン(血
圧測定)、膝蓋腱反射、SLR、MMT、ならびに舌診、脈診とした。ST3は、医療面接の情報理解を問う筆記
試験とした。
平成14年度の対象は、最終学年43名。6つのSTを2列設けて実施した。ST1は、SP参加型の医療面接
(制限時間10分)。ST2は、身体診察(制限時間10分)。課題数は6題。内容はバイタルサイン(脈拍数測
定)、上腕二頭筋腱反射、SLR、MMT、ならびに舌診、腹診とした。ST3は、医療面接の情報理解を問う筆
記試験とした。ST4は取穴試験(口頭試問2題、取穴3題)。ST5は鍼実技試験(腹部指定3経穴に直刺)。
ST6は灸実技試験(腰部2点に透熱灸)とした。
【実施上の問題点】
第1に、マンパワーの問題が挙げられる。当学園ではOSCE実施に必要な人員を確保するために、東京
衛生学園専門学校臨床教育専攻科の学生や当学園の学生に協力を仰いでいる。人員については単に人数
を集めるだけではなく、OSCE実施内容をどの程度まで理解してもらうべきなのか、今後の検討課題とし
て挙げられる。
第2に、施設の問題が挙げられる。当学園ではOSCE実施日は施設全体を利用し行なっているが、全施
設を利用しても隣接する試験会場の声漏れや動線の交わり、交代要員の待機場所や出入り口の確保など
が問題点として挙げられている。
第3に、時間の問題が挙げられる。当学園でのOSCE実施時間は、ひとつのST当り4時間程度となって
いる。試験開始時間が後半にあたる学生は、長い待機時間が負担となり、評価者にとっては集中力の低
下が問題になってくる。従って、学生、評価者とも負担が少なくなるような実施方法を検討していかな
ければならない。
第4に、評価の問題が挙げられる。評価項目の標準化と配点比重について、各STで評価目的を明確に
していかなければならない。
【今後に向けての提言】
OSCEの実施は、マンパワーや設備の問題を考えると、養成校単独での実施は大変困難である。養成校
でのOSCE導入を円滑に実施するためには、OSCE実施支援を行なう人員の養成と確保が望まれる。また、
より客観的な評価を行なうためには、評価方法のみに着目して、その客観性を高めるだけではなく、学
習の目標―方略―評価方法についても、今後十分な検討が必要と思われる。
305
パネルディスカッション
Ⅰ
− 59 −
OSCE の実際とその問題点
森ノ宮医療学園専門学校の OSCE 導入への歩み
森ノ宮医療学園専門学校
小島
賢久
【実施(導入)しようとした意図(目的)】
従来、本校での実技評価は教員個人が基準を設けて実施してきた。それらの評価は1人の教員が行っ
ていたため、評価のバラツキについてもあまり意識する必要がなかった。しかし、本校の定員の増加に
伴い、1人の教員によって評価することが難しくなり、標準化した評価表の作成および複数評価者によ
る評価の統一が必要になってきた。
加えて、OSCE調査研究会への参加を機に実技評価法の見直しとOSCE導入の研究が始まり、2年前、実
験的に3年生希望者にOSCEを実施した結果、多くの課題や問題点を改善することで有用であろうと判断
した。
【実施への障害となった問題】
各実技の評価者とその評価時間の確保、学生の長時間拘束あるいは、教員の抱く、「これまでの評価へ
の否定的なイメージ」や「新しいことへの拒絶、不安」など様々な要因から、これまで本格的な導入ま
で進展できなかった。
【実施状況の具体的な紹介と実施上の問題点】
今年度は、2年学年末試験において、OSCEを実施した。今回の目的は、来年度の卒業試験に導入する
ため、教員への意識づけ、ST構成と誘導の確認および評価法の妥当性を確認するものであった。
対象は2年生昼間部57名、夜間部59名で、試験は4つのSTを2日間で行った。各STとも制限時間は課
題理解を含め、8分間とした。ST1の身体診察は、課題が4問(神経学的検査、めまい・頭痛・視覚異
常の症候に対する検査)であった。ST2の筆記試験はST1に基づいた症例や陽性判定に関する問題であっ
た。ST3の鍼実技は課題が1問(腰部への刺鍼)、ST4の灸実技は課題が2問(上肢および下肢への施灸)
を実施した。
結果として、当初の目的であったOSCEをこれまで知らなかった教員への理解および意識づけができ、ST
構成および基本的な誘導に関してはスムーズに行えた。また、評価者からは「各教員間のコミュニケー
ションがとれた」、学生からは「公平性があって良い」などのOSCEに対し、好意的な意見があった。
問題点として、「学生の待機時間が長かった」、「学生への理解が不十分」、「教員間での評価基準のすり
合わせが不十分」など以前からOSCE実施で問題となっていた課題を克服することはできず、今回の実施
が定期試験内の平日であったため、対象者以外の学生が校内におり、誘導に少し支障があった。
また、カリキュラム上、医療面接のSTを設定できなかった。臨床能力を評価する本試験において、患者
対応を重点的に観察できる医療面接は必要不可欠で、今後実施するOSCEでは医療面接STを設置したい。
【今後に向けての実施方針】
本校での今後の方針は、医療面接や身体診察のST運営や評価項目は鍼灸OSCEの報告および医学教育や
看護教育などを基に、本校に適した運営や評価方法を検討していくことにある。
鍼灸実技のSTは当然、鍼灸教育のオリジナリティーが要求され、医療面接や身体診察と比較し、課題
を多く残す。特にSPの確保およびSPの身体的負担への配慮、課題設定、評価項目などである。
今回、本校OSCEの評価項目は、刺鍼・施灸の基本動作、および刺入した鍼の深度、角度や艾
の大き
さや作る速度などで、それらをSPへの施術によって評価した。ただ、鍼灸治療の特徴は、施術時に患者
の受ける感覚も重要な要素であり、「何を、どの様に評価するか」を引き続き検討しなければならない。
− 60 −
306
パネルディスカッション
Ⅰ
OSCE の実際とその問題点
東京衛生学園専門学校における OSCE の実際とその問題点
東京衛生学園専門学校
菅原
之人
【導入の目的】
当校では新カリキュラムの導入にあたり、3年次の臨床実習が新たに設定された。この臨床実習は約10
ヶ月にわたる長期の授業で、学生は小グループを編成し、指導教員のもとで担当患者を治療していくと
いうものである。この実習の初期段階で、学生個々の臨床能力を形成的に評価し、その後の実習で各自
が取り組むべき課題を抽出することを目的にOSCEを導入した。
【実施状況の紹介】
対象は当学科の3年生50人で、期間は平成14年7月22∼25日の4日間で実施した。試験は5つのステー
ション(以下ST)を用意した。ST1では頭痛を主訴とした模擬患者に対する医療面接、ST2では身体診察
として脈診・腹診・背診および腰下肢痛に対する身体診察、ST3では要穴を中心とした取穴実技、ST4
では銀鍼・ステンレス鍼による身体各部の刺鍼実技、ST5では施灸温度測定および下腿要穴への2点交互連続
施灸が用意され、各STでの臨床能力が評価された。
【実施上の問題点】
今回のOSCEは対象学生が50人であったが、非常に多くの人的資源と時間を必要とした。人的配置の内
訳は、各STの評価担当教員が合計14名、受付係り2名、学生誘導係り12名、各STでの模擬患者合計40名、
各STのタイムキーパー20名で、全スタッフ数が88名となった。今回は1・2年生も動員し、4日間の設
定で全学年あげての実施によりOSCEが可能であったことから、使用教室などの施設面の充実はもとより、
マンパワーの充実が必要不可欠であり、この問題をクリアーできることが必要条件と思われる。
【今後に向けての提言】
OSCEは評価方法である以上、評価に先立つ教育目標の設定や学習方略が明確化されている事が重要で、
臨床実習や関連科目も含めた系統立ったカリキュラムプランニングの必要性を再認識した。また、今後
のOSCE実施の課題として、より客観的な評価を実施するための評価基準の統一化や教員間のコンセンサ
スが必要と思われる。このためには他の養成施設も含めたOSCE実施の情報交換や評価基準検討委員会な
どを発足し、その場で実施に向けたより一層の検討が必要と思われる。
307
パネルディスカッション
Ⅰ
− 61 −
OSCE の実際とその問題点
早稲田医療専門学校の OSCE 実施について
早稲田医療専門学校
鈴木
盛夫
OSCE形式を導入する以前の本校の卒業認定実技試験は、教員対学生が1:2で行う、実技試験+口答試
問形式であった。しかし教員毎に質問の内容が異なること等、学生から公平性に欠けるとの声が聞かれ
ていた。この不公平性を改善するために、OSCE形式の実技試験を平成13年度の卒業試験から導入した。
従来の形式とは全く異なるために、学生に変更の趣旨を伝え、混乱がないように、卒業試験の1ヶ月
前に試験要項を配布した。要項には①集合時間と場所②試験の流れ(学生の動き)③出題方法④評価者
⑤評価表等を記載した。
OSCE形式の試験では①医療面接②身体診察③取穴・体表解剖④刺鍼・施灸の4ステーションとし、一
人当たり各10分、合計40分間で行った。
実施上の問題点は人材の確保であった。平成13年度は、評価者8名、模擬患者及びモデル6名、運営
2名の計16名の確保が必要だった。平成14年度は試みとして、取穴・体表解剖のモデルを学生から公募
した。
平成13年度、14年度とも、試験終了後にアンケートを行った。「OSCE形式の実技試験に意義がある」と
答えた学生は、13年度は81.3%、14年度は75.5%、「意義は無い」と答えた学生は、13年度は8.3%、14
年度は9.2%だった。
本校では、1年生の後期末から半期毎に、教員全員で学生の実技能力を判定する「総合実技試験」を
行っている。これは以前の卒業実技試験と同様に1:2の口頭試問形式で行ってきたが、その試験と比較
して「OSCE形式の試験に賛成である」学生が13年度は56.3%、14年度は60.2%であり、「導入に反対」の
学生は13年度が5.2%、14年度が2.9%であった。アンケートの結果を見ても、我々の予想以上に学生が
歓迎していることが分かった。
OSCEの本来の目的の一つに、形成的評価を行うことがある。そこで平成14年度の3年生の前期末総合
実技試験にOSCE形式を導入し、卒業試験と同じ内容を体験させた。評価表を全て返却して質問も受け付
け、総括的評価である卒業試験に備えさせた。14年度に行ったアンケートでは、前期末試験のフィード
バックが「役だった」と答えた学生の割合が、医療面接・身体診察・取穴・解剖で86.7%、刺鍼・施灸
で76.5%だった。理由としては、
「試験の形式に慣れた」「試験範囲が明確だった」「評価表の返却が役立っ
た」の順であった。
本校では、未だOSCE(客観的臨床能力試験)とは呼んでおらず、OSCE形式実技試験と言っている。つ
まりステーション制の導入は先行したが、将来のOSCE実施へ向けた発展途上と位置づけている。しかし
次の四点から、OSCE形式の実技試験導入に意義があったと考える。
第一に公平性である。評価表に慣れれば、刺鍼・施灸の評価は一人でもできると考えるが、その他で
は2人以上の評価者がいれば、より公平である。
第二に学生に行動目標が見せやすい。試験要項には出題範囲が記載されており、前期末試験でフィー
ドバックしておくと、後期に学ぶべきことがより理解されやすい。
第三に教員へフィードバックされやすい。自分で不合格にした学生が多いほど、自分の授業が悪かっ
た事が示唆されるわけである。
最後に、既に明らかになっていることではあるが、情意領域と認知領域の成績は相関しないので、筆記試
験で高得点の学生のみが必ずしも良い鍼灸師になるわけではないことを改めて認識させられた点である。
今後は、本校独自のコアカリキュラムを作成し、それを入学時から学生に公開し、行動目標がさらに
見えやすくしていきたいと考えている。
− 62 −
308
パネルディスカッション
Ⅰ
OSCE の実際とその問題点
盲学校理療教育における OSCE 実践経過と今後の課題
福島県立盲学校
武藤
永治・渡辺
雅彦
【目的】
現在の教育、特に医学教育においては知識伝達型の教育から人間性変容型の教育へと変化しつつある。
知識の指導については国家試験の関係もあるため、まだまだ伝達型の指導が中心であるが、臨床指導に
おいては、変容型の教育を取り入れた新しい学力観に基づく教育、即ち「自ら考え、自ら学び行動する」
教育が求められている。これまでの盲学校における理療教育では、新学力観に立脚した指導や教育目標
の設定とその指導、指導結果の客観的評価等について十分に検討されないままに指導実践がなされてき
たように思われる。
そこで筆者らはここ数年、臨床指導にOSCEを取り入れ、教育目標に対する到達状況を形成的に評価し、
生徒個々の基本的臨床能力を向上させるために指導を行ってきたので、その概要を報告する。
【実施状況】
平成12年1月
平成13年4月
平成13年9月
平成13年10月
平成14年7月
医療面接の研究授業実施
医療面接を専攻科理療科2年生徒に指導開始
理療科教員をSPにして医療面接実施
福島県立医大学生をSPに依頼して医療面接実施
臨床室における鍼実技試験にOSCE導入
平成14年10月 東北・北海道理療科教育研究会(福島大会)において医療面接ワークショップ実施
【実施上の問題点】
今回、東北・北海道理療科教育研究会において医療面接ワークショップを実施して視覚障害者に対す
る指導課題について検討した。主な論点は次のようである。
①視覚障害者に適合したOSCEの考案について
指導過程を基にして、視覚障害に配慮した評価項目を一般項目に追加して設定する必要がある。
②視覚障害者の自己開示について
弱視者の場合は特に、面接者が視覚障害であることを患者に知らせる場合があることから、指導上
の配慮事項として取り上げるべきである。
③非言語的メッセージへの対応について
アイコンタクトの取れない視覚障害者の場合は、できるだけ言語的メッセージとして患者情報を聴
取できるように、各種の面接技法を応用する能力を養う必要がある。更に、面接者の心の動きを「う
なずき動作」等を通して患者にフィードバックできるように指導する。
【今後に向けての実施方針】
これまでの経過を踏まえて今後は次のような実践を推進していきたい。
(1)評価項目の追加について
医療面接、身体診察、治療技術の各ステーション毎に、OSCE調査研究会において提案された評価項
目に、視覚障害への配慮事項を加えて項目設定を行う。
(2)医療面接の臨床応用と配慮事項の抽出について
①生徒が初診患者に応対する場合には、全て医療面接によって実施させる。
②指導上の配慮事項については、関係学校からの意見をも求めながら抽出を行ない、コアカリキュ
ラムの編成及び評価項目の見直しを行う。
309
パネルディスカッションⅡ
− 63 −
関節リウマチに対する鍼灸治療の果たす役割
関節リウマチ(Rheumatoid arthritis : RA)の病態と臨床症状
東京大学医学部アレルギーリウマチ内科
山本
一彦
【関節リウマチ(RA)とは】
RAは原因が不明の多発性関節炎を主体とする進行性炎症性疾患である。関節滑膜に病変の主座がある
と考えられ、滑膜の増殖から次第に周囲の軟骨、骨が侵され、関節の破壊と変形に至ることが多い。多
関節の腫脹と疼痛が特徴である。また関節以外の症状として、皮下結節、血管炎、皮膚潰瘍、肺線維症
などの症状をきたすことがあることから、全身の疾患と考える必要がある。
【RAの病態と病因に関する現在の考え方】
RA の 最 初 の 炎 症 は 関 節 滑 膜 を 中 心 に 始 ま る と 考 え ら れ て い る 。 正 常 の 滑 膜 は 滑 膜 表 層 細 胞
(synovial lining cell:SLC)と呼ばれる1∼3層の細胞からなる滑膜の内膜に相当するものと、その下
層に血管、リンパ系、神経を含む内膜下層からなる。初期のRAの病理変化として、SLCの増殖、T細胞を
主体としたリンパ球浸潤、血管内腔の閉塞、内皮細胞間間隙の出現など微小血管系の損傷などがある。
完成されたRAでは6∼10層からなるSLCの増生と、CD4陽性(ヘルパー型)T細胞を主体とし、さらに
CD8陽性(キラー型)T細胞、B細胞などを含むリンパ球浸潤が特徴的な病理変化である。そしてリン
パ球、マクロファージ、多核白血球、血管内皮細胞などの細胞から炎症に関する種々のサイトカイン、
ケモカイン、プロスタグランジン、活性酸素などが放出され、これらの炎症に反応し、滑膜細胞が増殖・
肥厚すると考えられる。これらの増殖した滑膜、炎症細胞、血管などからパンヌスと呼ばれる組織が形
成される。多くの炎症細胞から蛋白分解酵素が放出され軟骨を破壊し、またパンヌスと骨に接した部分
に出現する破骨細胞により骨が破壊されていく。
RA の 病 因 に 関 し て は 現 在 2 つ の 代 表 的 な 考 え 方 が あ る 。 一 つ は 間 葉 細 胞 仮 説 (mesenchymal
hypothesis)である。RAでは関節滑膜を構成する間葉系の線維芽細胞の異常増殖が病態の前面に出てお
り、細胞内のシグナルや遺伝子発現異常を伴う滑膜炎がオートクリン的に起こり、骨、軟骨破壊などに
導かれるとする考えである。もう一つの仮説はT細胞仮説である。関節内には多くのT細胞が集積して
いる。滑膜の小血管周囲に集簇するCD4陽性T細胞の存在、異なる関節における共通のT細胞クローンの
存在、RAの重症度と相関するHLA(T細胞に抗原を提示する分子)の遺伝子型、実験動物モデルでの関節
内抗原特異的T細胞の移入による関節炎の惹起などが、RAにおけるT細胞の役割を支持する根拠である。
【臨床症状】
初発症状は多くの場合、関節炎による関節痛、関節腫脹、朝のこわばりなどである。RAの全身症状と
して、全身倦怠感、微熱、体重減少などを呈することがある。朝のこわばりはRAに特異的ではないが、
しばしばみられる症状で、朝起きて関節を動かすと抵抗感や異常感のある状態がしばらく続く現象である。
活動性の滑膜炎の存在は、関節の腫脹と熱感として現れる。疼痛も重要な所見であり、安静時疼痛や
圧痛は炎症の存在する時に多い。滑膜炎の持続により滑膜の下の軟骨が薄くなり、軟骨下骨が露出、骨
と骨が接触すると骨融合が起き強直関節となるか、または関節の接触面がさらに破壊され、支持機能が
なくなりぐらぐらの状態でムチランス変形と呼ばれる状態になる。
RAの重症型では血管炎を伴うことがある。血管炎によると思われる臨床症状は、多発性単神経炎、肺
障害(間質性肺炎、胸膜炎など)、心障害(心膜炎、心筋炎)、血栓症、眼症状(強膜炎、上強膜炎、虹
彩炎など)、皮下結節、皮膚潰瘍などである。これらとリウマトイド因子高価、補体低価などを呈するも
のを本邦では悪性関節リウマチ、欧米ではリウマチ性血管炎(rheumatoid vasculitis)などと呼ぶ。
− 64 −
310
パネルディスカッションⅡ
関節リウマチに対する鍼灸治療の果たす役割
関節リウマチの薬物療法
埼玉医科大学リウマチ膠原病科
三村
俊英
関節リウマチ(RA)は、滑膜を炎症の主座とする全身性の多発関節炎で、全身関節の変形・破壊・拘
縮が進行するとともに、炎症と臓器障害を呈することもあり、ADLやQOLの低下、さらに平均的生命予後
の短縮を来すことが示されている。RAの治療目的は、短期的には疼痛と炎症のコントロールであるが、
長期的そして本質的には関節の変形・破壊・拘縮の抑制、ADL・QOLの改善もしくは悪化の予防、そして
生命予後の改善である。薬物療法はその中心を担うものであり、特に最近、RAの関節破壊は発症後1∼
2年の早期に進行することが示され、発症後早期から積極的な治療が必要と考えられるようになってき
た。RA治療に用いる薬物は以下のように分類できる。
1)非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):炎症の
メディエーターであるプロスタグランディン産生において重要な酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)
を阻害することで、即効性に炎症、疼痛や発熱を抑えるが、RAにおける関節変化に対しては無効である。
COXにはCOX-1とCOX-2の2つのアイソザイムが存在する。COX-1は、構成的に発現し生理的に重要であ
る。COX-2は、炎症性サイトカインによって誘導され炎症の惹起に関与する。COX-2選択的阻害薬は、
消化管障害などの副作用軽減に有効である。
2)疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs):免疫系の調節に
よりRAをコントロールする薬剤で、RAに対する薬物治療の中心になる。RAの確診がつけば早期に使用を
開始し寛解に持ち込む。効果の発現には2∼3ヶ月を要する遅効性で、症例ごとに有効性や副作用発現
が異なるため各症例に合ったDMARDの選択が必要である。主なものに、金チオリンゴ酸ナトリウム(シオ
ゾール)、オーラノフィン(リドーラ)、d-ペニシラミン(メタルカプターゼ)、ブシラミン(リマチル)、
サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN)、アクタリット(オークル)、メトトレキサート(リウマ
トレックス)、ミゾリビン(ブレディニン)がある。メトトレキサートは、有効性が高く米国ではRA治療
の第一選択薬とされているが、副作用のためわが国においては比較的慎重に使用されている。新規薬剤
のレフルノマイドはメトトレキサートと同様の有効性が期待される。欧米においては既に発売されてお
り本年中にはわが国でも発売される予定。
3)免疫抑制薬:DMARDsに抵抗性の場合には、免疫抑制剤で
あるアザチオプリン(イムラン)、シクロフォスファミド(エンドキサン)、シクロスポリン(ネオーラ
ル)、タクロリムス(プログラフ)を用いる。
4)副腎皮質ステロイド剤:強力な炎症抑制効果によりRA
の関節炎を抑制するが、骨破壊などに対する長期的な有効性に関するエビデンスは十分に蓄積されては
おらず、使用の是非に関する明確な見解は得られていない。
5)生物製剤 : RA の病態に、炎症性サイト
カイン(TNF-α、IL-6、IL-1)が重要な役割を果たすことから、治療目的で、TNF-αを抑制するもの
と し て、 抗TNF- αモ ノ ク ロ ーナ ル 抗 体 (infliximab)、 完全 ヒ ト 型 抗TNF-α モ ノ ク ロー ナ ル 抗 体
(adalimumab)、可溶性TNF-α受容体(etanercept)、IL-6を抑制するものとして抗 IL-6 受容体抗体、IL1を抑制するものとしてIL-1受容体拮抗蛋白(anakinra)が開発されている。既に、欧米においては一
部は承認・発売され、骨破壊などにおいて著効を示している。我が国においても infliximab は本年中に
承認される見通しである。
311
パネルディスカッションⅡ
− 65 −
関節リウマチに対する鍼灸治療の果たす役割
関節リウマチに対する伝統的な薬物治療
岐阜大学医学部東洋医学講座
赤尾
清剛
関節リウマチ(RA)は痺証に相当すると考えられる。
「黄帝内経
素問」の痺論篇第四十三には、以下の記載がある。
黄帝が問うて言われる。
痺という病はどうして生じるのか。
岐伯が答えて言う。
風気と寒気と湿気とが一緒になって人体に侵入しますと、陽気の巡りが悪くなって痺病となります。
特に風気が強い時は、移行性の痺病である行痺となります。
特に寒気が強い時は、疼痛性の痺病である痛痺となります。
特に湿気が強い時は、沈着性の痺病である着痺となります。
(途中を略す)
黄帝が言われる。
痺病は痛んだり、あるいは痛まなかったり、あるいは麻痺したり、あるいは凍えたり、あるいは熱
を持ったり、あるいは湿ったりといろいろであるが、それはどうしてか。
岐伯が言う。
熱を持つものは、陽気が多くて陰気が少なく、病邪が陽気をおだて、そのために陽気が陰気をとり
かこんでしまいますので、痺熱を生じます。
(小曽戸丈夫、浜田善利共著
意釈黄帝内経素問より抜粋)
これらのことから、痺証は病態・臨床から行痺、痛痺、着痺、熱痺の4つに分類される。
治療は、それぞれ蒼朮、独活などの 風湿薬、附子、乾姜などの温裏 寒薬、茯苓、猪苓、沢瀉などの
利水滲湿薬、石膏、黄連、連翹などの清熱薬の適応となる。
方剤としては、麻黄湯、麻杏苡甘湯、桂枝湯、大防風湯、防已黄耆湯、越婢加朮湯、白虎湯などが挙げ
られるが、必要に応じて加減して用いる。
− 66 −
312
パネルディスカッションⅡ
関節リウマチに対する鍼灸治療の果たす役割
関節リウマチに対する鍼灸治療
―Quality of life(QOL)を指標として―
東京大学医学部 アレルギーリウマチ内科
粕谷
大智
【目的】
関節リウマチ(以下RAと略す)の治療は「炎症を抑制し、鎮静化を図り、痛みとこわばりを軽減し、
関節機能を維持強化する」や「変形、拘縮、強直を予防する」が大きな目的になる。すなわちRA患者の
身体的、精神的、社会的な生活の質(QOL)の維持、向上が治療目標となる。近年、このようなRA患者の
多面的病苦をQOLの視点から総合的に捉え、定量的に測定することで、RA患者個人の健康レベルの評価や
疾患の臨床経過のフォローアップと治療に役立てていこうとする試みがなされるようになった。今回、
我々はRAに対する鍼灸治療の有効性と有用性および安全性を、外来にて薬物療法を行っている群を対照
とした多施設ランダム化比較試験により、RAのQOL評価法であるAIMS-2(Arthritis Impact Measurement
Scales version2)日本語版自己記入式質問紙を用い、QOLの観点から検討した。
【方法】
群の構成は外来にて薬物療法を行っている薬物療法群(A群)と外来にて薬物療法を行いながら鍼灸治
療を併用した鍼灸治療併用群(B群)の2群をもうけ比較した。endpointはAIMS-2日本語版にて1年間
観察した。介入(治療法)については、RA患者の活動性や機能障害を考慮しながら局所と全身の治療を
行えるよう病期別治療法チャートを作成し、患者の病態に応じて統一した治療法にした。
【結果】
対象はA群が80例(女性78例、男性2例)、B群が90例(女性85例、男性5例)で計170例。両群間に
おいて背景因子に差は認められなかった。AIMS-2の1年後の総合点の変化はA群が平均145.2→135.3点
へ、B群が平均143.6→117.4点と両群共QOLの向上がみられたが、両群間において1%以下で有意にB群
の鍼灸治療併用群がQOLの向上を認めた。またAIMS-2の項目において「痛み」「歩行能」「手指機能」「社
交」「家事」「精神緊張」「自覚健康度」が、両群間において有意にB群の鍼灸併用群に改善を認めた。さ
らに170例が最も改善を希望する病苦は「痛み」「手指機能」「歩行能」「家事」など肢体不自由が上位を
占めており、それら項目が鍼灸併用群において改善を示す傾向であった。
【考察及び結語】
過去の文献やRA患者のアンケート調査でも、RA患者の最も辛い症状は痛みであることが示されている。
痛みは著しくRA患者のQOLを低下させる。今回、AIMS-2の項目で「手指機能」「歩行能」「家事」などの
日常生活動作や「痛み」「緊張」などが薬物療法群よりも鍼灸併用群において有意に改善を示した。この
ことは従来の治療法に鍼灸治療を併用することで、RA患者の一番の悩みである「痛み」をさらに軽減さ
せる有益性が示唆された。また、今回のRCTにおいてQOLを指標とした検討では、鍼灸併用群で上述の項
目において有意に改善を認め、また改善優先度の質問で痛み、手指機能、歩行能、上肢機能などを上位
に挙げる患者が多い中で、それら項目が改善を示す傾向であった。このことは鍼灸治療を併用すること
でRA患者の身体機能の低下を予防し、血行改善や精神的安定も得られ、QOL向上に寄与するものと考える。
313
パネルディスカッションⅡ
− 67 −
関節リウマチに対する鍼灸治療の果たす役割
関節リウマチに対する鍼灸治療
―ACR活動性指標の変化について−
東京女子医科大学附属東洋医学研究所
吉川
信
【目的】
関節リウマチ(RA)の各種臨床試験の効果判定には、これまでにさまざまな指標が用いられてきた。
現在では、感度や再現性などの点から米国リウマチ学会提唱の活動性指標(ACRコアセット)が最もスタ
ンダードな評価法として広く用いられている。ACRコアセットは、①圧痛関節数 ②腫脹関節数 ③患者に
よる疼痛評価 ④患者による全般活動性評価 ⑤医師による全般活動性評価 ⑥患者による運動機能評価
⑦急性反応物質(赤沈またはCRP)⑧X線写真または他の画像診断による評価の8つの指標からなってお
り、患者による主観的評価が8項目中3項目含まれていることにこの評価法の特徴がある。今回、我々
はこのACRコアセットを用いて、RAに対する鍼灸治療の有効性と有用性および安全性を検討するため、多
施設ランダム化試験をおこなった。
【方法】
外来にて薬物療法を受けている薬物療法群(A群)と外来にて薬物療法に鍼灸治療を併用した群(B
群) の2群に 振り分け、 ACRコアセ ットを指標に1年間 観察した。 評価判定はACRの示す改善度基 準
(ACR20)に従った。すなわち、①圧痛関節数および②腫脹関節数の20%以上の改善を必須条件とし、
③∼⑦の5項目中、3項目以上で20%以上の改善を認めた場合に、改善したと判定されるものである。
治療法については、RA患者の活動性や機能障害を考慮しながら局所と全身に治療をおこなえるように病
期別治療法チャートを作成し、患者の病態に応じて統一した治療法にした。
【結果】
対象はA群80例(女性78例、男性2例)、B群90例(女性85例、男性5例)の計170例。両群間の背景
因子に差は認められなかった。治療開始12ヵ月後にACRコアセット改善基準を満たした例は、A群80例中
8例、B群90例中20例で、鍼灸併用群(B群)の方が有意に改善を示した(P=0.04)。①∼⑦の7項目中、
治療開始12ヵ月後に20%以上の改善がみられた項目は、A群では患者による全般評価の1項目、B群で
は圧痛関節数、患者による疼痛評価、患者による全般評価,医師による全般評価の4項目であった。治療
開始12ヵ月後の両群間を比較すると、患者による疼痛評価(P=0.005)、患者による全般評価(P=0.003)
の2項目において、鍼灸併用群(B群)に有意な改善を認めた。
【考察および結語】
RAのような治癒が期待しにくい疾患では、いかに患者の生活の質(QOL)を高めるかまたは低下させな
いかが重要な課題となり、その評価として患者や医師による主観的な疾患活動性評価が重要視されてい
る。とくに、疼痛の強さはRAの活動性を反映する指標であり、QOLを低下させる重要な要素の一つである。
今回の試験において、患者による疼痛評価および全般評価が鍼灸治療併用群で有意に改善されたという
結果は、RA治療の戦略の一つとしての鍼灸治療の有用性を示唆したものと考える。
− 68 −
314
パネルディスカッションⅡ
関節リウマチに対する鍼灸治療の果たす役割
関節リウマチに対する鍼灸治療
−まとめ−
埼玉医科大学東洋医学科
小俣
浩
関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis :RA,以下RA)は、主に慢性炎症性疾患で関節・筋腱の疼痛を主
体とする運動器症状と間質性肺炎や貧血等の内科的異常を合併する疾患である。本疾患に対する現代医
学的治療は、抗リウマチ剤等の様々な薬物療法を中心に手術療法や作業療法・理学療法・物理療法も試
みられ、炎症の抑制効果や関節の機能回復に役立てられている。一方、本邦におけるRA患者の東洋医学
的治療は、湯液療法や鍼灸療法が以前より活用され、現在鍼灸治療でも療養費払いという型であるが一
部保険診療の対象にされている。しかし、研究の現状では湯液療法単独もしくは湯液を含んだ中での鍼
灸治療効果の論文はみられるが、鍼治療の効果を詳細に分析した報告は極めて数少ない。1999年,British
Society for Rheumatologyに 掲載 された David らの “The effect of acupuncture on patients with
rheumatoid arthritis: a randomized, placebo-controlled cross-over study”では、鍼治療方法や経
過期間に有意差がなかったことが証明され、鍼治療効果が否定的に報告されており、この結果はその後
様々な論議がかわされることになった。
今回我々は、本疾患に対する臨床的な鍼治療効果を検討する
目的で、倫理面にも配慮し多施設における鍼灸治療のランダム化比較試験を行なった。割り付けは、薬
物療法を行っている薬物療法群(A群)と薬物療法を行いながら鍼灸治療を併用した鍼灸治療併用群
(B群)の2群をもうけ、米国リウマチ学会提唱の活動性指標(ACRコアセット)とQOL評価法であるAIMS2(Arthritis Impact Measurement Scales version2)を用い、継続期間3ヶ月毎に12ヵ月間、両群間
を比較検討した。また、鍼治療方法では多施設間の治療指針を統一する為に、RA患者の活動性や機能障
害を考慮しながら局所と全身に治療を行えるように病期別治療法チャートを作成し、患者の病態に応じ
た治療を行なった。その結果、治療開始12ヵ月後にACRコアセット改善基準を満たした例は、B群の方が
有意に改善を示し、12ヵ月後に20%以上の改善がみられた項目が圧痛関節数、患者による疼痛評価、患
者による全般評価、医師による全般評価の4項目に改善がみられた。さらに治療開始12ヵ月後の両群間
を比較すると、特に患者による疼痛評価と全般評価の2項目において、B群に有意な改善を認めた。一
方、QOL評価法であるAIMS-2の12ヵ月後の総合得点の変化は、A群・B群両群共にQOLの向上がみられた
が、B群の鍼灸治療併用群が有意なQOLの向上を認めた。さらに、患者のAIMS-2における最も改善を希
望する病苦は「痛み」「手指機能」「歩行能」「家事」など肢体不自由が上位を占め、各項目の変化ではB
群のみで有意に改善を認めた。
これらのことから、鍼治療は特に疼痛を中心とした症状の軽減や改善
が期待でき、そのことがRA患者の全体像を良好に維持し、QOLの向上に寄与した可能性が示唆された。し
かしながら、炎症反応の低下や薬物療法の減量に至るまで改善した症例は極めて少なく、統計上では有
意な変化を認めることはできなかった。このことは、本疾患の慢性炎症性の自己免疫疾患という背景を
考慮すると、臨床的に患者群の有する症状を軽減させることが重要であり、現代医学的な治療に併療す
る治療方法として有用性が高く、今後はさらに基礎的な鍼灸刺激の影響も再検討し、早急な基礎・臨床
双方の解明が課題と考える。
315
− 69 −
パネルディスカッションⅢ
我が国における鍼灸の多施設ランダム化
比較試験の現状と今後の展望
丹澤 章八
川喜田健司
利幸、北小路博司
英治、楳田 高士
篤、高橋 則人
司会:(社)全日本鍼灸学会会長
(社)全日本鍼灸学会研究部長
パネリスト:井上
鍋田
會澤
越智
悦子、七堂
智之、角谷
重勝、西田
秀樹
全日本鍼灸学会では、我が国における鍼灸研究の一層の発展を目指し、研究部を中心として、プロジェ
クト研究の公募・実施をはじめ、安全性委員会、適応症委員会、経穴委員会、医療経済委員会、教育部
会をおいて幅広く調査・研究活動を行ってきた。その一環として、1999年より(財)東洋療法研修試験財
団から調査研究の依頼を受け、「未病治」をテーマにした臨床試験および調査研究を現在も引き続き実施
している。
本パネルディスカッションでは、これまで研究部が中心となって、我が国で初めて実施した「風邪症
状に対する鍼灸の予防・治療効果に対する多施設ランダム化比較試験」について、その経緯とそこで得
られた成果の概要、ならびに検討されてきた臨床試験に関連した問題点のいくつかをピックアップして
報告する。その内容は以下の通りである。
1. 風邪症状に対する鍼灸の臨床試験実施について
(川喜田健司)
1) パイロット試験、鍼の多施設RCT、間接灸のRCTプロトコールの紹介
2) 各RCTで得られた成果の概要と現在の課題
2. 対象疾患および被験者の選定および割付の方法について
(井上悦子、七堂利幸)
1) 風邪症状を臨床試験の対象に選んだ理由について
2) ボランティアを被験者とするRCTの長所と短所
3) インフォームド・コンセントの必要性について
3. 為化割付の意味と方法
(鍋田智之)
1) RCTにおける対照群の設定の意義
2) 介入方法の決定方法について
4. サンプルサイズの決定と評価方法について
1) 評価方法の決定の際に注意すべき点、
2) データの解析方法
(七堂利幸、高橋則人)
− 70 −
316
5. パイロット試験の概要紹介
1) 明治鍼灸大学におけるRCTの現状
(越智秀樹、北小路博司)
2) 関西鍼灸大学におけるRCTの現状
(楳田高士)
3) 森ノ宮医療学園専門学校におけるRCTの現状
(井上悦子)
4) 明治東洋医学院専門学校におけるRCTの現状
(角谷英治)
6. 今後の鍼灸臨床研究の在り方について
(會澤重勝、西田
篤ほか)
7. 総合討論
鍼灸の臨床的な意義を明らかにするためには、RCTをはじめとする臨床試験が不可欠である。今回のパ
ネルディスカッションでは、被験者総数300余名の多施設RCTを鍼刺激、灸刺激を介入として実施してき
た経緯と現在実施されているパイロット試験の現状報告を通じて、鍼灸のRCTの実施に関わるさまざまな
問題点や課題を検討する。その中から、我が国の鍼灸臨床研究の在り方、今後の研究課題等について何
らかの方向性を見いだすことができるように討議を進めていく予定である。会員各位の参加と忌憚のな
い意見をお願いするものである。
317
セミナーⅠ
ここまでわかった鍼灸医学
− 71 −
―基礎と臨床との交流―
―脳機能および中枢神経系疾患に対する鍼灸の効果と現状―
矢野
人間総合科学大学人間科学部 佐藤
司会:明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
本セミナーは、今回で第4回目である。今年のテーマは「ここまでわかった鍼灸医学
忠
優子
―基礎と臨床
との交流―」―脳機能および中枢神経系疾患に対する鍼灸の効果と現状―である。本テーマを設定した
理由は、鍼灸治療の効果及び作用機序を考察する上で脳機能への作用は極めて重要であるからであり、
しかも中枢神経疾患への治療的根拠を提供してくれることに繋がる可能性があると考えたからである。
本セミナーでは、これまでと同様に基礎研究と臨床研究の両面から研究成果を分かりやすくレビュー
してもらい、基礎と臨床との交流を図りたい。それは鍼灸臨床における種々の問題点の理解や中枢神経
疾患への治療のヒントあるいは可能性を示唆してくれるものであると考えているからである。
基礎研究における動物実験のレビューは、昨年に引き続き内田さえ先生にお願いした。麻酔ラットへ
の鍼刺激と皮質血流量に及ぼす影響とその機序について昨年のセミナーで紹介していただいた。本年は
皮質と海馬に着目した研究成果を紹介していただける予定である。大脳皮質も海馬も虚血性神経細胞死
をまねきやすいと云われているが、その部位の血流が鍼刺激で増加するとなれば、脳血管障害をはじめ
とする中枢神経疾患への鍼灸治療の根拠にもなりうるものであり、効果発現を考察する上で有力な知見
を提供してくれる。
一方、ヒトを対象とした基礎研究のレビューは、渡邊一平先生にお願いした。渡邊先生には生きてい
るヒト脳を対象に、脳波、PET(ポジトロンCT)、fMRIによる研究を中心にレビューしていただき、鍼刺
激が脳機能にどのように影響しているのかを分かりやすく紹介してもらう予定である。鍼の刺激をどの
ようにヒトの脳は認識しているのか、単なる侵害刺激なのか、鍼の刺激に意味があるのか、などの日常
臨床の問題点を理解する上でヒントに繋がるレビューが期待される。
臨床研究のレビューは、矢野が担当することになった。ここでは主として各種疾患に対する効果の観
点からレビューし、鍼灸臨床に資するようにしたいと考えている。高齢社会を迎えた我が国においては、
今後益々中枢神経疾患が増加することが予想される。これらの疾病は老化を背景としているだけに多く
は治癒困難であり、治療においても難治である場合が多い。そういった中で鍼灸医療を求める患者も少
なくない。これまでは脳卒中後遺症に対する痙性抑制あるいは廃用症候群の改善によるQOLの向上、パー
キンソン病(症候群も含めて)の症状の緩和、多発性硬化症、痴呆などのさまざまな疾患に対して試み
られてきた。これらの様々な疾患や病態に対する鍼灸治療とその効果について紹介する予定である。
[発表者]
内田さえ(東京都老人総合研究所自律神経部門)
渡邊一平(九州保健福祉大学社会福祉学部)
矢野
[参
忠(明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室)
考]
第1回目:「内臓痛・消化器機能・消化器症状への鍼灸の効果」
第2回目:「筋肉痛・筋機能に及ぼす鍼灸の効果について」
第3回目:「末梢循環に対する鍼灸治療の効果」
− 72 −
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セミナーⅠ
ここまでわかった鍼灸医学
―基礎と臨床との交流―
―脳機能および中枢神経系疾患に対する鍼灸の効果と現状―
脳機能に及ぼす鍼灸の効果(実験研究)
東京都老人総合研究所
運動・自律機能相関研究グループ
内田
さえ
昨年の本学会セミナーにおいて、麻酔ラットへの鍼刺激が前脳基底部コリン作動性神経を働かせ大脳
皮質のアセチルコリン放出を高め、同時に血流を増やすことを報告した(Uchida et al 2000)、その後
演者の研究室では、前脳基底部コリン作動性神経が投射する大脳皮質と海馬に着目して研究を展開して
きたので、本セミナーで紹介する。また、近年文献的に報告された、鍼が脳機能に及ぼす効果の実験研
究についても紹介する。
アセチルコリンを神経伝達物質とする前脳基底部コリン作動性神経はアルツハイマー病で著しく脱落
することが知られているが、この神経は大脳皮質や海馬に神経線維を投射してそれらの部位の血流を増
やす働きを持つ。脳の中でも大脳皮質や海馬は、血流不足によって神経細胞が死滅しやすいことが知ら
れている。演者の研究室では、前脳基底部コリン作動性血管拡張系が大脳皮質や海馬の血流を増やし、
虚血 性神経細 胞死を防 ぐ働きを もつこ とをラッ トで明ら かにした (Kagitani, Uchida et al 2000;
Hotta, Uchida et al 2002)。皮膚への機械的侵害刺激が前脳基底部コリン作動性神経を興奮させること
から(Akaishi et al 1990)、鍼刺激は前脳基底部コリン作動性神経を働かせることにより、虚血性神経
細胞死を防ぐと考えられる。これらの事実は、脳循環障害に伴う後遺症や意識障害などに対する鍼治療
効果の根拠になると考えられる。
その他、種々の精神機能にかかわる脳内神経伝達物質、例えば、ノルアドレナリン、セロトニン、ド
パミンなどに及ぼす鍼を含めた体性感覚刺激効果を調べた文献的研究についても紹介する。
319
セミナーⅠ
ここまでわかった鍼灸医学
− 73 −
―基礎と臨床との交流―
―脳機能および中枢神経系疾患に対する鍼灸の効果と現状―
ヒト脳機能に及ぼす鍼灸の効果
九州保健福祉大学
社会福祉学部
東洋介護福祉学科
渡邊
一平
「脳の時代」と呼ばれて久しい。科学が急速に発展する現在、究極の命題である「人とは何か」に対
する答えを見つけることが可能なのは、脳の研究ということになろう。パスカルは人間を「考える葦」
と定義し、カッシーラは「言葉を操る動物」と定義している。つまり脳活動によって生まれる思考とそ
れに基づいた行動や言動が人間としての特徴であることを示している。
医療の世界では、EBM(科学的証拠に基づく医療)の重要性が叫ばれている。治療者の勘や経験則だけ
ではなく、科学世界における「客観的」データに基づいた治療方針の組み立てを推奨するものであり、
鍼灸治療の科学化、客観化にこの方法論を適応することには妥当性がある。しかし鍼灸治療は数値化や
客観視が困難な「感性」という領域が重要視されており、そこが鍼灸治療の本質ともいえる。人間の精
神・思惟活動は、大脳皮質に存在する約140億の脳細胞の複雑かつ微妙な働きがもたらすものであるとす
るならば、治療後の心地よさなどの客観的評価には脳の研究がもっとも近道のはずである。
1928年、ドイツのHansbergerが初めて脳から発生する電位変化を測定することで始まった科学的研究
は、脳波の周波数分析によって波形の持つ意味の解釈が試みられた。脳波研究はヒトの情動を捉えられ
るとの期待からα波やθ波の出現率と安定した精神状態との関連性が着目され、鍼灸領域では治療後に
得られるリラックス効果をそれらの波の増減で解釈することが試みられた。その後、急速なコンピュー
タ技術の進歩によって加算平均法が容易に可能となり、体性感覚、聴覚、視覚、さらには嗅覚に対する
様々な大脳誘発反応が計測可能となった。この方法では主に鍼刺激による鎮痛効果の証明に応用され、
ある程度の成果をあげている。さらにf-MRI(functional Magnetic Resonance Imaging)、PET (Positron
Emission Tomography)などの処理法により、生きて機能している脳活動の一端を視覚情報として垣間見
ることが可能となった。このように、飛躍的に進歩を遂げ「ヒトの精神活動とは?」という命題に迫る
かに見えている脳研究であるが、現段階では限界がある。2003年、情緒や思惟活動が大きく異なると思
われる人とチンパンジーのDNAは98.77%が同一であり、相違は僅か1.23%にすぎないことが報告された。
つまり脳のバイオロジカルな働きは解明されても、脳研究に期待されているメンタルな働きに関しては
ほとんどわからないのも現状である。
今回のセミナーでは、ヒトの脳をテーマにした鍼灸研究の内容を中心に、できるだけ平易な解説を試
み、ヒトの脳領域における鍼灸研究の今後を考えてみたい。
− 74 −
320
セミナーⅠ
ここまでわかった鍼灸医学
―基礎と臨床との交流―
―脳機能および中枢神経系疾患に対する鍼灸の効果と現状―
中枢神経系疾患に対する鍼灸治療の効果
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
矢野
忠、山田
今井
浦田
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
埼玉東洋医療専門学校
伸之
賢治
繁
"中風七穴"に代表されるように中枢神経疾患に対する鍼灸治療の歴史は古い。近年では頭鍼療法や耳
鍼療法、あるいは醒脳開竅法などの新しい治療法を使って難治性の中枢神経疾患へのアプローチが行わ
れている。中には注目すべき成果もあるが、そこにはおのずと限界があることも事実である。中枢神経
疾患の多くは未だ原因が不明なものが多い。また原因が明らかなものでも治療法が確立されていない場
合が多い。いずれにしても中枢神経系は人間として存在するための最も重要な部位だけに、この部の障
害はさまざまな機能的障害を引き起こす。ここに中枢神経疾患に対する鍼灸治療を試みる根拠がある。
1.脳血管障害に対する鍼灸治療
中国では現在においても脳血管障害の治療に積極的に鍼灸治療を試み、高い成績をあげているが、わ
が国では理学療法が中心であり、鍼灸治療への理解は必ずしも浸透しているとは言い難い。しかしなが
ら理学療法だけでは解決のできない種々の症状に対しては鍼灸治療への期待があることも事実である。
脳血管障害に対する鍼灸治療では、片麻痺による運動機能の回復、しびれ、廃用症候群などに対して鍼
灸治療が行われている。日本ではほとんどが症例集積による臨床研究であるが、外国ではRCTによる臨床
研究が少ないながらも試みられている。
我が国では丹澤らの一連の臨床研究が注目される。丹澤らは脳卒中の中枢性知覚障害、特に"しびれ"
に対する鍼治療の効果について検討し、やや有効例以上は33.4%であったと報告している。しかも鍼治
療に反応するには体性感覚系の機能が重要な役割を担っていることを指摘している。一方、運動麻痺に
対しても丹澤らは脳卒中患者40例(45例中中断例5例)を対象に鍼治療を行い、BrunnstromのRecovery
stage が2段階上がったものを有効とした場合、有効は4例、不変は36例であったと報告している。
運動機能の回復には、治療開始時期や障害の重症度など様々な要因を受ける。従ってその評価には慎
重さを必要とする。これまでの報告を概括すると、鍼灸治療が有効であったとする報告と無効であった
と報告とがあり、その効果は一定していない。そこで患者のQOL向上を目的として廃用症候群を対象とし
て行うことの重要性が指摘されている。
2.その他の中枢神経障害に対する鍼灸治療
その他の中枢神経系の疾患としてパーキンソン病や痴呆、更には小脳変性症、多発性硬化症、ジスト
ニアなど難病と云われている疾患に対して症例レベルで行われている。ここでパーキンソン病と痴呆を
とりあげる。パーキンソン病に対する鍼灸治療については主として症例集積による研究が進められてい
るが、報告はそれ程多くはない。それらの結果を概括すると概ね症状の緩和に効果的であるとする報告
であった。一方痴呆に対しては、まだ試みの段階であるが、軽度痴呆の改善が得られる可能性を示唆す
る報告もあり、興味が持たれる。
高齢社会の到来でますます中枢神経系の疾患が増加するものと思われる。これら疾患に対する鍼灸治
療の需要は高まるものと考えられるが、何を対象に、どのステージが適応するのかなど様々な問題を解
決していきながら、有効性を明確にしていくことが求められる。
321
− 75 −
ランチョンセミナー
「女性のライフサイクルに応じた鍼灸医療」
第3回 最終回
司会:明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
講師:明生鍼灸院院長
矢野
鈴木
忠
裕明
本セミナーの企画の背景には、働く女性の増加と女性鍼灸師の増加があった。女性の雇用機会均等法
の整備、少子化など女性を取り巻く社会的環境は大きく変わり、社会進出する女性は非常に多くなった。
そこでこれらの社会的な状況を鑑み、女性と鍼灸について、みんなで考える機会をもとう、ということ
でランチョンセミナーを企画した。本セミナーは、これまで2回行ってきた。今回は第3回目であり、
最終回としたい。
第1回目(第49回学術大会:兵庫大会)では、働く女性の健康管理として鍼灸医療を積極的に活かそ
うをテーマに田所千加枝産婦人科医師を迎えて討論した。田所講師は地域医療の中で、職場の中で女性
の健康管理に鍼灸医療を活かすことの有効性について自らの経験を通して紹介していただいた。第2回
目(第50回大会:大阪大会)では、女性鍼灸師のネットワークづくりとレディース鍼灸の実践をテーマ
に辻内敬子先生(女性鍼灸師フォーラム代表)と岩崎友貴先生(レディース鍼灸さいとう)を迎えて討
論した。辻内先生は女性鍼灸師のネットワークづくりの重要性を述べると共に地域の中で他の医療との
連携を深めることの必要性を語った。具体的には助産婦さんとの連携を例として紹介された。一方、岩
崎先生は子供と女性専科の鍼灸院の実践を紹介され、レディース鍼灸の可能性を提示された。そこで今
回は、これまでの討論を踏まえ「女性のライフサイクルと鍼灸医療」をテーマとして、各ライフサイク
ルに応じて、どのような鍼灸医療を提供できるのかを提示し、成熟女性の深刻な問題となっている「不
妊症の鍼灸治療」について、高い実績をあげている鈴木裕明先生を迎えて、女性鍼灸学の可能性と広が
りについて意見交換することを企画した。本セミナーが女性鍼灸学の萌芽となることを期待すると共に
鍼灸医療の新しい波となることを願っている。
【ランチョンセミナーの構成】
第1部
女性のライフサイクルに応じた鍼灸医療の展開
第2部
不妊症の鍼灸治療
第3部
討論とまとめ
矢野
忠
10分
鈴木裕明先生40分
10分間
【ランチョンセミナーの申し込みの方法】
●本セミナーは、開会時の混乱を避けるために事前登録制をとっています。従ってセミナー開始時
の参加は受け付けていませんのでご注意下さい。
●ランチョンセミナーの参加を希望される方は、総合受付の「ランチョンセミナー受付」で6月7日
(土)の午前9時から11時までに申し込みをして下さい。整理券を発行します。但し定員に達した
時点で
申し込みを締め切らせていただきますのでご了承下さい。
− 76 −
322
ワークショップ
鍼灸安全性の情報更新と具体的方策の検討
(社)全日本鍼灸学会研究部
安全性委員会
昨年の茨城大会で本委員会が開催したワークショップ「各国の鍼灸安全性ガイドラインの現状」によっ
て、海外と日本における考え方の相違点がより明確になり、今後の日本におけるガイドラインの方向性
について重要な示唆を得ることができた。しかしながら、時間の関係で討論の機会を失うことになり、
発表者以外からの意見を聞くことができなかった。したがって本大会におけるワークショップでは、前
回明確になった論点をクローズアップして討論し、会員の方々の意見をうかがう時間を設けたいと考え
ている。また、学術雑誌等で発表された安全性関連文献について、最近の情報を調査して紹介する予定
である。
1. 1998年以降に発表された有害事象および安全性に関連する文献の紹介
2. 安全性に関わる日本独自の問題点
江川雅人
石崎直人
3. 鍼灸治療における感染制御のエビデンス
楳田高士
4. 指サック、Clean Needle Techniqueの効率と操作性
宮本俊和
5. 日本の学校実習における衛生管理の現状
形井秀一
6. フロアの会員を交えての討論
山下仁、形井秀一
鍼灸治療における安全性向上については理想を語るのは簡単だが、現実には技術面やコスト面の制限
があるため具体的な方策を示すことが難しい。例えば、指サックを用いることによって感染防止のどの
部分に有益なのか、本当に正しく使いこなせるか、刺鍼技術は低下しないのか、導入するとコストは幾
らかかるのか。安全性における議論は、総論を語っていても何も進展しない。各論として具体例を挙げ
ながら、そして実現性を問いながら意見を交わす必要がある。
このような点を踏まえて、本委員会ではワークショップ開催前から会員の方々の意見や問題提起を募
ることにした。開業鍼灸師、病院勤務鍼灸師、視覚障害をもつ鍼灸師、教育者、あるいは歴史と伝統を
守る鍼灸師の立場など、さまざまな観点から意見をいただき、ワークショップ当日に提示して討論の活
発化および現実的な議論に役立てたいと考えている。
意見の送付先
筑波技術短期大学附属診療所
山下仁
E-mail: [email protected]
Fax: 029-858-9591(電話は御遠慮ください)
当日の議論に関係する資料
1) 全日本鍼灸学会研究部安全性委員会. 鍼灸の安全性に関する和文献(1)∼(9). 全日本鍼灸学会雑誌
50巻4号 (2000年): 680∼718頁, 51巻1号 (2001年): 98∼128頁, 51巻2号 (2001年): 195∼206頁.
2) 全日本鍼灸学会研究部安全性委員会. 各国の安全性ガイドラインの現状. 全日本鍼灸学会雑誌 52巻
5号 (2002年): 509-528頁 (53巻1号の正誤表も参照のこと).
323
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ワークショップ
鍼の適応症を見つける
(社)全日本鍼灸学会研究部
森ノ宮医療学園
井上
適応症委員会
悦子、于
思、清水 尚道
大阪医科大学麻酔科 伊藤
薫
すこやか鍼灸院 校條 由紀
日本中医推拿研究会 李
強
鍼灸興健堂 田中
充
国立福岡視力障害センター 池田 和久
研究部 七堂 利幸
明治鍼灸大学生理学教室 川喜田健司
近年、鍼治療の臨床試験が世界各国で行われ、それら文献のデータベースにインターネットで容易に
アクセスすることが可能になっているのは周知のことである。1997年にNIH(の)パネルが鍼に関する合
意声明を発表、2000年には英国医師会が医療消費者の安全な医療行為の要求と労働党の医療費政策上の
問題から、その合意をほぼ踏襲し、同様の鍼の効果を追認した。その背景にはEBMの世界的潮流があり、
コクラン・ライブラリ、クリニカル・エビデンス、バンダリエ等にみられる鍼灸のレビュー文献数もこ
こ2・3年飛躍的に伸びている。 このように鍼適応症の科学的エビデンスは日毎に更新されており、個人
の経験だけに頼って治療していた時代から、エビデンスを共有し、医療関係者間、患者・治療者間でコ
ンセンサスを得ながら治療していく時代に変わりつつある。
EBMの考え方自体は世界的に浸透し、日本の医学界においても、採用されるべき治療・予後・診断のエ
ビデンスの重要性が、声高に叫ばれ、いまさらEBMの感もあるほど、ポピュラーな用語となってきた。た
だ、大方の鍼灸の臨床家は、EBMという言葉は知っているが、その概念や具体的手法について、充分理解
しているとは言い難いのが現状である。本ワークショップでは、鍼灸臨床家がどのようにEBMの考え方を
取り入れ、実践を試みていけばよいかを、個々のケースを提示しながら、1)鍼灸の臨床文献・レビュー
文献の検索法、2)NNTの計算方法とその使い方、3)鍼論文の批判的吟味の方法、4)エビデンスをどの
ように作るか等、に沿って、臨床家の視点から、その問題点と解決策を探っていきたい。
− 78 −
324
ワークショップ
鍼灸の経済評価に関する研究の試みと今後の方向性
(社)全日本鍼灸学会研究部
鍼灸の経済評価委員会
岩
沢崎
演者:福岡県立福岡高等盲学校研修科 石丸
演者:埼玉東洋医療専門学校 浦田
指定発言:アサヒビール株式会社博多工場 健康管理室 住徳
司会:明治鍼灸大学 健康鍼灸医学教室
演者:福岡県立福岡高等盲学校研修科
昌宏
健太
浩徳
繁
松子
昨年、第51回学術大会において初めて鍼灸の経済評価研究委員会のワークショップを行った。1回目
は「鍼灸の費用対効果に関する研究の現状と必要性」と題して、日本では鍼灸の経済評価に関する研究
報告がほとんどないことや欧米諸国での研究の現状と研究論文について紹介した。今回は鍼灸の経済評
価に関する研究の試みとして、職場(企業)における鍼治療の経済評価に関する研究報告を紹介し、企
業の保健師の意見も交えながら鍼灸の経済効果についてディスカッションしたい。最後に今後の経済評
価を加えた鍼灸研究の方向性についてディスカッションする。
「職場(企業)における鍼治療の経済評価」
沢崎健太
企業内における運動器症状への経絡テストを用いた鍼治療の効果と医療費との関連性があるかを製鉄
業の肉体労働職を主体とした有痛者117名を対象として検討した。8週間の治療で運動器症状の痛みが半
減した者は約8∼9割に達した。心理検査(POMS)ではスコアが有意に減少した。鍼治療期には運動器疾
患の受診は半減し、その健康保険医療費は約1/3となった。終了後も医療費減少は持続し、鍼治療は健
康づくりならびに経済的効果のある可能性が考えられた。
「職場(企業)における鍼治療・手技療法の経済評価」
石丸浩徳
職場における鍼治療・手技療法の有用性を検討することを目的として、アサヒビール株式会社博多工
場所属の従業員の希望者に職場内で治療を行った。腰痛・肩こりが多く、ほとんどの者が今回の治療は
効果があると回答した。健康管理室の月別利用件数は、治療後に減少傾向を示し、診療報酬点数は減少
傾向を示した。以上のことから、鍼治療・手技療法は企業内における健康管理の一手段として有用であ
り、経済的効果のある可能性も推測された。
「鍼灸の経済評価に関する研究の方向性」
浦田
繁
鍼灸研究において、その評価項目に費用対効果を含むものが欧米を中心に年々増加している。鍼灸の
治療効果を評価するにあたっては、1)効果があるか? 2)安全か? 3)患者に対する満足度は? そし
てさらに付加価値を加える意味で 4)費用対効果の有無が問われている。本ワークショップでは、現在
委員会において進めている調査・研究報告を述べ、さらに今後の研究の方向性について提言したい。
一般演題抄録
− 80 −
326
1O-F-14:00
婦人科疾患 における
鍼灸
血に対する
−東洋医学の原点を易の論理にもとめて−
関西鍼灸短期大学東洋医学基礎教室
戸田静男
【目的】婦人科疾患と 血の関係は、 古来より
「血の道症」ということばがあるくらい密接な関
係がある。特に、
1O-F-14:12
東洋医学の学理研究(第3報)
清野鍼灸整骨院・東京地方会
清野充典
【緒言】はじめに、昨今の東洋医学領域特に鍼、
灸に関する学問体系及び研究は、東洋思想(中国
血の腹証は小復急結が特徴的
思想)に基づいていないうえに、その東洋医学
である。このようなことは、『金匱要略』をはじ
(鍼灸医術)の原理論と臨床実践が乖離している
めとする歴代の医書にも多く記載されている。そ
点がさらに東洋医学の発展を妨げていると考える。
して、それに対する鍼灸についても数多く論じら
演者は東洋医学の理論と実践が一致した共通の言
れている。今回は、中国および日本の歴代の医学
語が必要と考えており、それを漢字文化の原点と
文献より婦人科疾患における
なっている「易」の論理を元に検討を行っている。
血に対する鍼灸に
ついて考察したので報告する。
【方法】易は今日、王弼の注釈本を元にした「十
【方法】中国および日本の漢方医書(たとえば、
三経注疏」が底本と考えられている。易が太極か
『金匱要略』、『萬安方』、『諸病源候論』、『有林福
田方』など)、腹診書(たとえば、『腹証奇覧』、
ら八卦(乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤)に派
生するまでの思想とその文字を検討し、その背景
『腹診録』、『東洞先生腹診伝』、『腹候要訣』など)、
にある身体の見方・病態把握について検討してみ
鍼灸医書(たとえば、『鍼灸要穴』、『鍼灸秘書』、
『鍼書』、『鍼灸五蘊抄』など)などを参照して、
考察がなされた。
た。
【結果】『易經』の繋辞傳に「易に太極あり、こ
れ両儀を生ず。両儀四象を生じ、四象八卦を生ず。」
【結果】更年期障害、月経不順をはじめとした婦
人科疾患では、
血が生じ、小腹急結、小腹
満
とある。医学に置き換えると、『太極』はヒト、
『両儀』は身体を陰陽で見ようという思想、と理
とよばれる状態となる。婦人科疾患は、任脈と衝
解できる。『両儀四象を生じ』とは、老陰、老陽、
脈とに特に密接な関係があった。これら二脈の気
少陰、少陽のことである。易では「虚」は「陰」、
血が衰えると、月経不順が起こると考えられてい
た。鍼灸治療では、気海、天枢などの経穴がよく
「実」は「陽」という意味で用いられている。「四
象」は陰虚・陽実・陰実・陽虚といえる。そして
使われていた。
『四象八卦を生ず』とあるように、
「八卦」乾・兌・
【考察】以上のように、婦人科疾患と
血には密
離・震・巽・坎・艮・坤という思想が生まれ、こ
接な関係があった。そして、それらに対する鍼灸
れらを元に身体の見方が確立されたと考えられる。
治療が試みられたといってよい。
これらは、「五行の色体表」の成立の基本思想と
【結語】婦人科疾患における
なっている。
血およびその腹証
である小腹急結の存在は非常に重要といえる。そ
【考察と結語】易に基づいた身体の見方・病態把
して、その鍼灸治療はそれを目標として行われた
握の思想を健康体から病体に移行し死を迎えるま
といってもよい。
でに置き換えると、陰虚・陽実・陰実・陽虚とい
う「象」を移行すると考えられる。この思想をも
とに、現代医学に基づく病名診断を東洋思想に置
き換えることに応用することや、鍼灸の手技を共
通の思想のもとに統一することが鍼灸医学・医療
の発展の鍵を握ると考える。
キーワード:婦人科疾患、
血、小腹急結
キーワード:易、太極、両儀、四象、八卦
327
1O-F-14:24
人中診法に関する中医文献の考察
日本中医推拿研究会
李
1O-F-14:36
− 81 −
生気の制御
−The control of X-energy(=QI)−
強
江南堂鍼灸院・山梨地方会
花輪貞良
【目的】人中部、別名水溝、鼻下。『霊枢・五色』
【目的】古典における補瀉について多く伝えられ、
には「面王以下者、膀胱子処也」「唇厚人中長以
候小腸」という記載がある。中医望診において、
あるいは解説されているが、検証しても納得出来
なかったので、30年の総括を報告する。
人中部の形態・色沢などを観察して体内の疾病を
【方法】先ず経穴は、示指腹を該当部位に載せ、
推察・診断する方法を人中診法という。中国では
術者の肩から手指迄の力を抜き、腕を軽く引きず
人中診法に関する研究発表は散在でありながら、
ると、その指腹内に、表皮のざらつきとして触知
注目すべき成果が挙げられる。一方、日本鍼灸界
出来る点をもって確定した。次に刺す深さは、表
では人中穴を用いて臨床治療に応用するのは大多
皮内に出現するざらつきが目標だから、深さはそ
数であるが、望診の1部位とされる研究報告は稀
の分、0.1mm 以内である。そして決め手は鍼尖を
のようである。本研究は、中医学文献データベー
その深さに刺す為に、押し手を固くして簡単に刺
スを利用して、人中診法に関する文献を検索し、
さらないようにして、なお静かに竜頭を摘まんで
その結果をまとめ、私見を加えて報告する。
【方法】 「中国中医薬文献数据庫」 を on line
押す事によって得られる「ひびき=echo」を目標
にすると良い。
して、人中診法というキーワードを用い、この20
【結果】補法の場合、押し手の左右から鍼尖を締
年間発表された文献を検索し、検索された文献を
める力を強め、鍼を抜く時の瞬間に、押し手(ま
検討し、文献の信頼性評価を加え、システマティッ
たは刺し手でも可)を横に寝かせ(例えば母指)、
ク・レビューを行った。
その鍼口=経穴の部位を閉じる事によって生気の
【結果と考察】人中の色沢・長さ・深浅・しわと
充実がもたらされ、瀉法の場合は押し手を寝かせ
隆起の有無を望診する。この中、人中の長さは診
る事なく、鍼口=経穴を閉じない事によって得ら
察指標として多く応用されている。人中短浅もの
れる。これらは脉診で確認出来る。
には不妊症・インポテンスなど、人中狭長ものに
【考察】生気の制御、 即ち補瀉の違いが上記の
は包茎・生理不順などが多く見られる。診察に応
用される範囲は泌尿生殖系疾患のみならず、小腸
(結果)のように制御出来る事は、そこに何らか
の「力」が作用している事を示唆している。演者
や心臓の部分の疾患にも及ぼす。また、形態学に
は1996年開催の第4回世界鍼灸学会でこの点に触
おいて、性成熟期女性の子宮と人中との高い相関
れ、その強い左右圧の関与から、鍼口から出る何
性を有する結論が付けられた調査研究は報告され、
かの「気体」が関与している可能性がある旨、報
人体組織発生学上において人中と子宮との関連性
告したが、未だ解明出来ていない。
が論議された。
【結語】手方手技の上から、そして一連の経緯か
【結語】古来の人中診法は今日の臨床診断に有効
ら生体における気、即ち生気の制御が補瀉として
に応用され、なおさら鍼灸臨床では、人中穴の多
作用している事が伺われるが、その本態は未だ解
岐的な臨床応用にも可能性が示唆された。ただし、
明出来ない。しかし実地臨床を通して、生気の制
evidence-based 診察法だとすれば、 さらなる測
定手段の客観化・より大規模の症例収集と画像診
御、即ち補瀉を言葉の上ではなく科学的に証明し
たいと考えている。
断の照合に関する研究は重要であると考えられた。
キーワード:人中診法、望診、中医文献システマ
テ ィ ッ ク ・レ ビ ュ ー 、 診 察 法 、
evidence-based
キーワード:脉診、補瀉、左右圧、経穴、鍼口
− 82 −
328
1O-F-14:48
ドーゼと得気と鍼感の考察 (技術
転移)
兵庫地方会
1O-F-15:00
手指 先の経穴・非経穴から 検出さ
れる 極微弱生物フォトン発 光計測
について
田中重喜
東北工業大学情報処理技術研究所・宮城地方会
【目的】平成6年から「ドーゼの標準化」「鍼感得
気の相関」について、これまで6回関係学会で口
演した。その結論のひとつとして、1施術におい
て日本は中国の24倍ドーゼを要する事が明らかに
なった。そこで本口演ではその原因の背景として
専門書の記載内容が関与するものと考え、日本と
中国で使用されている標準教科書を対象に、経穴
に関する記載事項、刺鍼法、施灸法などについて
比較検討した。
【方法】日本および中国の標準教科書を対象とし
た。日本の標準教科書として東洋療法学校協会編
の『経穴概論』と『鍼灸実技』を、中国のものと
して『中国針灸学概論』(三中医学院研究所編)
と『針灸学』(上海中医学院編)を採用した。調
査項目として、取穴法、筋肉・血管・神経、施術
部位、刺鍼法、刺鍼深度、刺鍼方向、鍼感、施灸
法、施灸の可否などについて調査した。
【結果】
①日本の経穴に関する情報は位置情報が主である
のに対して、中国のそれは臨床に則した情報
(深さ、得気、方向、主治など)が主であった。
②日本の教科書には刺鍼深度や刺入方向の記載が
無いことから、医療過誤のリスクが高くなるこ
とが予想される。
③日本では経穴への刺鍼時に生ずる鍼感について
の記載がない。
④日本の刺鍼においては無痛刺入を重視する傾向
にあり、しかも浅刺で多数穴に刺鍼する傾向に
ある。
【考察と結語】以上の結果から、中国で示されて
いるように日本においても経穴への刺鍼の深さ・
方向・鍼感・主治などについて標準化をはかり、
臨床に則した目的的機能情報を重視すべきである。
そうすることによって臨床効果を高め、医療過誤
を未然に防ぐことが可能となる。中国針灸術は標
準化医療技術システムとして機能していることか
ら、日本への技術導入に際しては、一部を取り入
れるのではなく、原型をそのまま移入することが
肝要である。そういったことから、今後は経穴に
関する機能的情報を明確に記載することが求めら
れる。
キーワード:鍼感、得気、ドーゼ、標準化
神
正照
【目的】人差し指から手の甲に分布している、経
穴・非経穴から検出される極微弱生物フォトン発
光測定を行い、生物フォトン発光強度の比較を行っ
た。経穴・非経穴では生物フォトン発光に差違が
あることが認められた。その結果、経穴の方が生
物フォトン発光強度が高いことが確認されたので
報告をする。
【方法】今回は、人差し指の末端から指の付け根
の所にある経穴・非経穴を測定し、それぞれの生
物フォトン発光強度を調べた。測定時間は1ケ所
それぞれ100秒間行った。
測定前は手と指先をきれいに洗浄し、外部から
の光を完全に遮光し測定を行った。測定人数は、
学生(20代)男子5人である。
【結果】測定の結果、経穴と非経穴では生物フォ
トンの発光特性がそれぞれ異なることが観測され、
指先の爪の生え際にある経穴の方が生物フォトン
発光強度が高くなっていることが計測された。人
差し指先にある経穴(商陽穴)部位で観測された
生物フォトンと非経穴の(指の腹)を比較した結
果、経穴側の方が多く発光していることが確かめ
られた。
【考察】手の指先から検出される生物フォトン発
光強度は、測定の結果経穴には左右差があること
が確かめられた。指先に分布する経穴においては、
右手の経穴の方が発光強度が高いことが観察され
た。
【結語】同様な方法で測定した結果、左右の腕・
手首の経穴で測定した生物フォトン発光量は、右
手側の方が発光量が多く測定された。これまで測
定してきた結果を比較すれば、上腕も左右差が有
ることが実験で確かめられた。
キーワード:経穴、非経穴、発光強度、生物フォ
トン発光
329
− 83 −
1O-F-15:12
人体フォト ンの日中変化について
の検討
1O-F-15:24
耳針 治療の臨床効果と橈骨 動脈反
射
専門学校浜松医療学院
新肥満研究所・東京地方会
林
池園悦太郎
昇、竹村千冬、山下典秀
竹下文朗、下村壯介
【目的】生物は生きている間、常に微弱なフォト
ンを外部へ放出していることがすでに知られてい
る。前回我々は鍼刺激による人体フォトン反応に
ついての検討を報告した。その検討の中で我々は
人体から放出するフォトンの量には個人差があり、
同一のモデルでも時間帯によって、あるいは生理
状態によって異なることに気がついた。今回、我々
は、日中に人体経穴から放出するフォトン量の変
化と、運動前後におけるフォトン量の変化につい
て検討した。
【方法】1)被験者の手三里、合谷、手掌を遮光
テープで遮光し、直射日光を避け、弱い自然光の
部屋で普通の事務仕事(パソコンや読書)をしな
がら、朝9時から夕方6時まで、1時間毎に手三里、
合谷、手掌のフォトンをそれぞれ5分間測定した
(測定方法は前回と同じく、暗室で行う)。2)夕
方6時から20分間運動し、運動後のフォトンを測
定した。以上の平均値をグラフにして分析した。
【結果】朝9時から夕方6時にかけて、手掌、合谷、
手三里ともにフォトン量の変化は波状を呈し、朝
9時頃はフォトンの量が高く、昼に向かって徐々
に低下する。昼過ぎに再び上昇し、2時と3時の間
にピークとなり、その後また徐々に減ってくる。
夕方6時頃低下した時点で20分間運動をした後、
フォトン量が再度上昇する。日中、手三里、合谷、
手掌フォトン量の変化曲線が平行して移行するも
のではなく、それぞれ異なった波線をなしている。
【考察・結語】結果から見ると、朝9時から夕方
6時の間、手三里、合谷、手掌のフォトン量の変
化には二つの高値点があった。一つは朝初回測定
の頃、もう一つは昼食後しばらく経過してからで
あった。二つのピークはともに食後に現れた。ま
た、フォトン量が低下した時点で運動をした場合、
フォトン量の上昇が見られた。この結果から日中
フォトン量の変化が体の代謝レベルに関連してい
るのではないかと考えられる。経穴間フォトン量
の異なる変化は東洋医学におけるいわゆる気の変
化との関連があるのではないかと思われる。
キーワード:フォトン、経穴、代謝、気
【目的】第51回本大会において、肥満治療におけ
る耳針の効果として、胃点の刺激が満腹感を催起
し、視床下部における摂食中枢の抑制物質が増加
する事を報告した。肥満治療では、胃点の他に、
味覚を変化させる神門点、苛立ちを抑える脳点に
置針した。また喘息、アレルギー性皮膚炎を合併
する患者には、耳介のアレルギー点を探索し、橈
骨動脈の変化を記録した。
【方法】Paul Nogier の脈診は、左手首の関の脈
診を用いている。この脈診法を客化する為に日本
コーリン社製の圧トランスジューサーを用いて、
橈骨動脈波をアナログで測定し、これをデジタル
化して解析をおこなった。アレルギー点は、耳介
の 頂上 部耳 輪の 縁 の下 にあ る。ツボ 探索 には 、
Nogier が作製した Agiscop DT を使用し電気抵抗
値が1/2に減弱する点を、患者が知覚しない 3-5μ
Aの電流で探索し橈骨動脈波の変化を測定した。
【結果】患者は30歳、BMI=29.4の女性で日光アレ
ルギーがあり、四肢のどの部位でも日光にあたる
と掻みを伴う赤い小丘疹ができた。 Agiscop DT
を用いて、アレルギーポイントを探索し、耳介頂上
部で耳輪の内側に反応点を発見した。探索時にお
け る 橈 骨 動 脈 の 最 高 血 圧 は 、対 照 時 97.16 ±
3.09mmHg (n=52)より 101.66±3.26mmHg(n=57)
に 上昇 (p < 0.001)、 PP 間隔 は 759.23 ± 13.28
msec より730.64±12.16 msec に下降(p < 0.001 )、
脈圧は 51.68 ± 1.24 mmHg より 53.51 ±123 mmHg
に上昇(p < 0.001)、upstroke(脈圧 / DIA→SYS)
時 間 は 326.746 ±19.21 mmHg/sec よ り346.28 ±
21.13 mmHg / sec に上昇 (p<0.001) し た。 こ の
アレルギー点に円皮針を刺入留置した結果日光ア
レルギーは軽快した。
【結語】耳介には、満腹感催起、味覚変化、アレ
ルギー改善点、腰痛点などがあるが、ツボ探索器
Agiscop DT を使用し、 反応を橈骨動脈反射で確
認する事が望ましい。
キーワード:Paul Nogier、脈診、Agscop DT、橈
骨動脈波、アレルギー
− 84 −
330
1O-F-15:36
脉状診と血圧との関連研究
1O-F-15:48
末梢 血液像と中医弁証との 相関に
ついて
愛知地方会研究部情報・評価班
皆川宗徳、石神龍代、堀
−脈診から血診へ−
茂、中村弘典
田中法一、服部輝男、河瀬美之、絹田
章
中城歯科医院・神奈川地方会
中城基雄
中村高行、黒野保三
【目的】黒野等は、脉診の実態を客観的に引き出
す目的で、脉診と六祖脉との研究結果を第32回、
34回(社)全日本鍼灸学会学術大会において報告
した。六祖脉を基本として、脉状診と血圧との関
連を、正常血圧群、高血圧群、低血圧群に分けて
比較検討したので報告する。
【方法】平成13年7月より12月までに10治療院に
来院した患者に対し、血圧測定、脉診を行った。
脉状診は、浮・沈・遅・数・滑・ に分類し、血
圧測定データから、正常血圧群、高血圧群、低血
圧群の3群に分類した。さらに高血圧群を拡張期
血圧(以下DBP)90mmHg 以上をパターン、収縮期
血圧(以下SBP)140mmHg 以上をパターン2、DBP
90mmHg 以上かつ SBP140mmHg 以上をパターン3と
した。低血圧群を DBP60 mmHg 以下をパターン1、
SBP110mmHg 以下をパターン2、DBP60mmHg 以下か
つ SBP110mmHg 以下をパターン3とした。
【結果】①多施設 (10治療院) での集積結果は
243例となり、正常血圧群126例(52%)、高血圧
群80例(33%)、低血圧群37例(15%)となった。
②高血圧群では、パターン2の割合が59%、低血
圧群ではパターン2の割合が70%と多かった。③
浮・滑群では、正常血圧群59%、高血圧群47%、
低血圧群28%と正常血圧群、高血圧群の割合が多
く、沈・ 群では、低血圧群31%、高血圧群16%、
正常血圧群6.7%と低血圧群の割合が多かった。
【結語】脉状診と血圧との関連を正常血圧群、高
血圧群、低血圧群に分けて比較検討した結果、浮・
滑群では、正常血圧群、高血圧群の割合が多く、
沈・ 群では、低血圧群の割合が多いことが判明
した。今後、脉状診と血圧の客観化として、パラ
マコロトコフ音図との関連性も検討していきたい。
キーワード:脉状診、六祖脈、血圧
【目的】中医弁証を行う際、特に脈診において、
「何が」「どの様に」「脈状」に反映しているのか、
客観的に評価しうる明確な指標はなかった。今回、
演者はブラッドフォード末梢血液評価システム
(アメリカンバイオロジクス社製、以下、BVPMと
略す)を用いて、患者の血液像を観察し弁証との
相関を検討した結果、弁証の違いによって発生す
る血流中の変化を初めて画像として捕らえ、興味
ある知見を得たので報告する。
【方法】歯科口腔疾患を主訴とする患者に対し、
中医学的な弁証と脈診を行い記録した。次いで、
患者の商陽穴より刺絡を行い、プレパラートに採
取しB VPM システムを用いて末梢血液象を顕微鏡
観察し、DVビデオレコーダーにて記録して、弁証
と脈診との相関を検討した。
【結果】①痰濁証(主訴:辺縁性歯周炎)の患者
に、特有の50μ大の血中脂質プラークを認めた。
② 血証(主訴:歯髄壊死)の患者に、粘調度増
加による赤血球の巨大集合体を認めた。③肝腎陰
虚証(主訴:急性歯槽膿瘍)の患者に、変形した
ウニ状赤血球を多数観察した。
【考察】従来、血液中には主に血漿成分と血球成
分が含有していると考えられているが、実際の生
体には、それ以外の物質が多く流れている事は、
BVPMシステムの客観的評価法によって確認されて
いる。演者は、この様な体質の変化によって発生
する、典型的な末梢血液像が中医弁証との間に何
らかの相関が内在している事に着目した。すなわ
ち、こうした病理産物が、生体にとっての「実」
な部分であり、「邪の正体」ではないかと類推す
る物であり、ひいては、脈状に反映している可能
性がある事も示唆するものである。今後は、さら
に臨床的検討を進め、治療効果の判定も視野に入
れて、脈診から発展した新たな概念として「血診」
の有意性を考慮して行きたいと考える。
【結語】BVPM システムを用いて、患者の末梢血
液像を観察し、中医弁証との間に客観的評価法へ
つながる相関を見出した。
キーワード:末梢血液像、ブラッドフォード末梢
血液評価システム、弁証、脈診、血診
331
1O-F-16:00
刺鍼手技と生体反応(第1報)
−鍼の刺入深度の違いによる
末梢血流と筋内血液動態の影響−
1O-F-16:12
近赤 外線分光法による鍼刺 激時の
筋組織血液量変動の検討
−刺鍼部位の違いによる血液動態−
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
東京医療専門学校
田和宗徳、北小路博司
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
矢野 忠
大久保正樹、坂本
鹿屋体育大学
筑波医療技術短大
東京医科大学衛生学公衆衛生学教室
坂井友実
− 85 −
歩、村居眞琴、斉藤秀樹
浜岡隆文
勝村俊仁、下光輝一
【目的】鍼刺激時の局所や遠隔部の血流の検討は、
これまで多くの報告がされている。しかしながら、
刺鍼手技と血流との関係についての報告は少ない。
今回演者らは、置鍼による刺入深度を変えたとき
の刺激局所及び遠隔部の血流と皮下深層から筋肉
表層までの深部の血液動態の変化を検討した。
【方法】健常成人男子6名(平均年齢24.2才)を
対象とした。皮下血流はレ−ザ−ドップラ−血流
計ALF21を用い、深部の血液動態の変化は近赤外
分光計MCPD-2000を用い、それぞれのプロ−ブを
刺鍼部位(上巨虚)より2cm離れた所に装着した。
また刺鍼側の足の第1指に指尖容積脈波計を装着
した。なお、実験に先立ち超音波画像診断装置で
皮膚の厚みを計測して各被験者の刺入深度を決定
し、皮下,筋肉内1cm刺入の置鍼を行った。容積脈
波のデ−タ−はポリグラフに入力した後に、皮下
血流はMacLab/8sに、それぞれオンラインでデ−
タ−を保存した。近赤外分光計のデ−タ−は専用
のコンピュ−タ−にて保存した。デ−タ−の解析
は、MacLab/8sで容積脈波の1分間当たりの積分値
と皮下血流の平均値を算出し、近赤外分光計のデ−
タ−は専用の多成分解析プログラムにて数値化し
た。以上の条件で刺鍼前、置鍼中、抜鍼後10分間
の測定を行った。
【結果と考察】容積脈波は筋肉内1cm刺入により
置鍼中、抜鍼後に増加傾向を認めた。皮下血流は、
いずれの刺入でも実験開始から終了まで減少傾向
を認めたが、筋肉内1cm刺入において置鍼中の値
が置鍼前の値に、抜針後の値が置鍼中の値に、復
する傾向が見られた。深部の血液動態は、いずれ
にも変化は見られなかった。このことから、容積
脈波の変化は交感神経を介した血管反応を引き起
こしたと考えられた。一方、皮下血流及び深部の
血液動態にはあまり影響しないことが示唆された
が、被験者の中には深部の血液動態と皮下血流が
変化している例もあるので、症例を増やして検討
する必要がある。
【結語】置鍼の刺入深度の違いによる変化を検討
した結果、筋肉内1cm刺入時の血管反応以外には
変化を認めることは出来なかった。
キーワード:鍼、近赤外分光法、血流、刺鍼手技
【目的】本研究では、近赤外線分光法の測定部位
の中心に鍼刺激を行った場合と測定部位外に鍼刺
激を行った場合、僧帽筋筋組織における血液動態
がいかに変化するかを検討した。
【方法】被験者は健常成人16名(うち男子2名、
女子14名)、年齢は23歳∼64歳(平均;35歳)で
あった。刺激部位は右肩上部の僧帽筋上部線維の
筋腹とした。筋組織の血液量(BV)は、オムロン
社製HEO-210を用い0.2秒毎に測定した。分離型プ
ローブの送光部と受光部の距離は4cmとした。刺
激部位は、送受光部の中心になるように設定した
場合(中央部)とプローブの遮光シート外縁に設
定した場合(外側部)の2部位に行った。鍼刺激
は、測定開始3分後から雀啄術を2分間行い、ひび
きを感じた時の時間を記録した。更に測定開始15
分後に僧帽筋最大随意収縮(肩挙上)を5秒間行っ
た。僧帽筋内血液量の評価は、肩挙上後の血液量
変化の最大値に対する刺激時の血液量変化の割合
(%)で行った。
【結果】血液量は、中央部・外側部ともに刺鍼前
に比べて刺激中は有意に増加した(p<0.0001)。
刺激中最大値の比較では、外側部(13.9±30.8%,
平均±SD)に比べて中心部(50.0±18.6%)は有
意に血液量が増加した(p<0.001)。また、ひびき
と血液量の間には相関関係はみられなかった。
【考察と結論】近赤外線分光法では、送受光部の
距離(4cm)の半分を半径(2cm)とした半球状の深さ
を測定している。これまでの実験で中心部の刺鍼
によって測定部の血液量が増加することが認めら
れている。本実験では、刺激部位である外側部は
中央部(測定部位の中心)
から3cm離れていた。従っ
て、測定部位から少し離れた外側部の鍼刺激によ
る血液量の増加は、神経系を介した筋組織の血管
床の拡張によるものと考えられる。
キーワード:近赤外線分光法、僧帽筋、血液量、
中央部、外側部
− 86 −
332
1O-F-16:24
温冷刺激の 局所皮膚温・熱流量に
与える影響(第2報)
1O-F-16:36
鍼灸 治療による自律神経反 応の検
討
日本鍼灸理療専門学校1)、
関西鍼灸短期大学鍼灸学臨床教室
(財)東洋医学研究所
2)
小島孝昭1、2 )、小川
坂口俊二、中吉隆之、池藤仁美、川本正純
一1 、2)、白石武昌2)
【目的】生理的反応や機能障害は生体の約60%以
上を占める種々の体液の組成変化・循環障害を反
映している。このことから、ある種の刺激で機能障
害を発現している部位の体液の“流れ”を調整す
ることによって、その正常化が可能であるかを試
みた。換言すると全身の治療を目的とした血・津・
液の流れを調整しようとする試みである。この方
法を“BOFCOORT(Body Fluid Coordination Trea
tment)”として提唱した。今回は軽∼中等度の腰
痛患者の皮膚温と単位時間当たりの熱流量(熱流
束;W/m2)を指標とし検討した。
【方法】被検者は informed consent を得た男性
30名、女性29名、軽度∼中等度の腰痛患者、平均
年齢約29( 19∼49)歳で、 刺激はアルミ製の温球
(直径約2cm、温度約42∼45℃)・冷球(直径約5c
m、温度約20℃)を木製握棒で連結した温球と冷
球で皮膚面を交互に温・冷刺激した。患側・健側
の腎兪近傍の皮膚温はthermistorで、熱流束と共
に連続測定し、1秒毎、約60分間 PC-HD に記録し
た。併せてサーモグラフと同時計測し、刺激・治
療(BOFCOORT)前後の変化を大杼周辺と比較検討
した。
【結果】腰痛患者の患側腎兪近傍の皮膚温(33.9
±0.2℃)は健康者(33.3±0.2℃、n=10)より高
かった(p<0.05)。また大杼近傍(34.4±0.2℃)
に比し低かった(p<0.05)。BOFCOORT 後の治療効
果は、腎兪近傍の皮膚温は熱流束の変化に伴い低
下し、大杼では上昇させるなどの成績を得た。
【考察と結語】今回軽度∼中等度の腰痛患者に対
する BOFCOORT 効果は、興味あることに患部の体
液の“流れ”が調整され、結果的に熱流束の変化
に伴う温度変化が得られるという未知の所見を得
た。このことは未病を治し自然治癒力を亢める
BOFCOORT の有効性を示唆するものであろうか。
今後、他の疾患等に試行し詳細に検討する。
キーワード:温冷刺激、皮膚温、熱流量、
BOFCOORT、腎兪
【目的】我々はこれまで、鍼灸治療(以下、治療)
による生体反応を末梢循環動態や自律神経機能を
評価する加速度脈波(SDPTG)を用いて観察して
きた。今回は、SDPTG に皮膚通電電流量(ECV)、
血圧・脈拍測定を加えて、治療による自律神経反
応を検討した。
【方法】対象者は、口頭にて同意の得られた本学
附属鍼灸治療所の患者58名(男20名、女38名、平
均年齢58.6歳)であった。対象者には仰臥安静に
て問診、SDPTG、ECV および血圧測定後に各症状
に対する治療を行い、終了後に再度 SDPTGと ECV
を 測定 し た。 SDPTG は 、 加 速 度脈 波計 SDP-100
(フクダ電子製)を用いて右第2指で測定し、ECV
は、ノイロメーターマスターチャートAD(K.K.デー
タグラフ製)を用いて、手足12か所、左右計24か
所の代表測定点で測定した。血圧は右上腕で聴診
法にて測定し、22名は治療終了後に再測定した。
なお、測定環境は、室温 24.3 ±1.2℃、湿度56.
1±8.9%であった。
【結果】対象者を降圧剤を服用している群(「服
用群」)18名とそうでない群(「非服用群」)40名
に分類した。「服用群」では脈拍数のみが有意に
減少 したのに対し、「非服 用群」 では脈拍数 と
ECV の有意な減少、SDPTG の d/a 値の有意な減少
と PTGAI 値の有意な増加がみられた。 22名の治
療後の血圧に有意な変化はみられなかった。
【考察】降圧剤服用の有無に関連しない治療後の
脈拍数減少と「非服用群」にみられたECVは、副
交感神経機能亢進を示し、それに誘起された交感
神経機能亢進が、d/a値減少とPTGAI値増加という
機能的な動脈壁の緊張状態を表したものと考えら
れる。
【結語】鍼灸治療による自律神経反応は、降圧剤
服用の有無が影響し、降圧剤を服用していない者
では、副交感神経機能の亢進とともに交感神経機
能の亢進による機能的な動脈壁の緊張状態を作り
出すことが示唆された。
キーワード:鍼灸治療、自律神経、加速度脈波、
皮膚通電抵抗、血圧
333
− 87 −
1O-F-16:48
反復刺激によるSSR・SFRの habituation について
1P-D-15:00
放送大学学生および教職員における
健康と理療の関心度について
関西鍼灸短期大学東洋医学臨床教室
東京都立八王子盲学校
宮村大地
木村研一、黒岩共一、増田研一、若山育郎
【 目 的 】 我 々 は 本 学 会 で sympathetic sweat
response (SSR)・ sympathetic flow response
(SFR)が鍼刺激によって抑制されることを既に報
告 し た 。 し か し 、 SSR 、 SFR は 慣 れ 現 象
(habituation)による修飾を強く受けるため、そ
の再現性について指摘されている。そこで今回、
反復 刺激 による SSR・ SFRに おける habituation
の発生機序について microneurography を用いて
皮膚交感神経レベルでの検索を行った。
【方法】対象は神経学的異常の無い健常成人14例
とした。実験は室温25℃、湿度40%の検査室で行っ
た。被験者は安静仰臥位とし室温順応30分後、右
側手関節部正中神経を経皮的に20秒以上の間隔を
置い て duration 0.2msec,60mA の 矩形波 電気刺
激 を 10 回 行 い 、 左 側 肘 部 正 中 神 経 か ら
microneurography を用いて反射性皮膚交感神経
活動(SSNA)を記録し、同時に換気カプセル法を
用いて母指掌側基節部から SSR、レーザードップ
ラー血流計を用いて示指指尖部から SFR を記録
した。
【結果】反復刺激により SSNA バーストの潜時は
変化しなかったが、振幅は1回目に比較し2回目以
降は有意な低下を示した。同様に、SSR も2回目
以降は有意な反応性の低下を認めたが、SFRは有
意な変化を示さなかった。また、SSR は SFR に比
較すると有意な反応性の低下を認めた。
【考察と結語】2回目以降に SSNA バースト振幅
が低下し たことから habituation による交感神
経出力の低下が皮膚交感神経レベルで示唆された。
また、SSR が SFR に比べ、有意な反応性の低下を
示したこ とは habituation によ る発汗運動神経
出力の低下と汗腺の活動性の低下により SSR の
反応が2回目以降、著しく漸減したと推測した。
キー ワー ド:SSR、 SFR、 SSNA、 habituation、
microneurography
【目的】放送大学は平成13年2学期現在で学生数
約9万人が学ぶ教養学部から成る通信制大学であ
り、平成13年4月より大学院が設置された。在学
生の年齢や職業は様々であり、それに伴い家族構
成や生活習慣、嗜好なども同様に多種多様である
と考えられる。今回、理療(はり、きゅう、あん
摩マッサージ指圧)の受療経験の有無や既往歴、
現病歴の有無、衛生学・公衆衛生学など理療科科
目分野に関連する生活に関する基礎的な情報を客
観的に調査分析し、理療に対する印象、ストレス、
現在の体調など回答者の健康に関する事項を記述
してもらいまとめた。
【方法】年齢、職業、嗜好、趣味、運動習慣、現
病歴、既往歴等と、はりきゅうマッサージの印象
(イメージ)、受療経験の有無、種類、場所等を問
う選択記述複合形式のアンケートを作成し平成14
年7月25∼26日に東京多摩学習センター、同年7月
27∼28日、8月15日に東京世田谷学習センター、
同年8月17日に埼玉学習センターで切手付き返信
用封筒とアンケート用紙を総計124通配布した。
【結果】学生、教職員合わせて84名(男性30名、
女性54名)から回答が得られた。平均年齢は47.6
歳(男性50.5歳 女性45.8歳)で、理療の受療経
験「あり」は53.6%(45名)、なしは46.4%(39
名)であった。中でもマッサージが47%(40名)
で割合が高く、以下はり29.7%(25名)、きゅう
9.5%(8名)であった。はりの印象については、
「良くなる(なりそう)」・
「効果がある(ありそう)」、
「痛い(痛そう)」、きゅうは無回答、「熱い(熱そ
う)」、マッサージは「気持ち良い」・「効く」・「良
くなる」、無回答の順で多く、受療経験のある中
で4名が定期的に受療していることがわかった。
【考察・結語】マッサージの受療割合が高く、治
療院以外にクイックマッサージやエステ、スポー
ツクラブなど最近開拓された場所での受療がある
ことがわかった。 はりに対して「痛い」よりも
「効果がある・良い」といった正のイメージが多
かったことがわかった。
キーワード:アンケート、理療、受療経験
− 88 −
334
1P-D-15:14
鍼灸をもっと身近なものに(1)
1P-D-15:28
鍼灸をもっと身近なものに(2)
−病院勤務看護師の愁訴と鍼灸に関するイメージ
−短時間の鍼「簡易鍼」による肩こり軽減効果の
の調査−
検討−
兵庫県立東洋医学研究所
外間宏昌、吉田剛典、伊達敬太郎
石川 亨、曽 炳文
兵庫県立尼崎病院
兵庫県立東洋医学研究所
吉田剛典、外間宏昌、伊達敬太郎
石川 亨、曽 炳文
兵庫県立尼崎病院
植田英子、石谷明子、近藤優子
【目的】兵庫県立東洋医学研究所は同県立尼崎病
院に併設されている。そのため看護師が肩こりや
腰痛の改善を求めて鍼灸治療を受けたり、病院受
療中の患者が看護師の勧めによって来所すること
もある。しかしそういったケースは必ずしも多く
はない。今回我々は、同病院勤務看護師の鍼灸に
ついての理解を深めることを目的として、看護師
の有する鍼灸適応症状と鍼灸受療経験に関するア
ンケート調査を行った。さらに希望者に対しては、
鍼の体験治療も実施したが、不参加者を対象とし
て鍼灸に対するイメージ調査もあわせて行ったの
で報告する。
【方法】対象とした看護師417名(男6名・女 411
名、20∼60歳)に対し、肩こり・腰痛・膝痛およ
びその他の自覚症状の有無と鍼灸受療経験につい
てアンケート調査を行った。そのうち体験治療不
参加者181名については、不参加の理由を無記名
調査用紙にて回答してもらった。
【結果】有効回答数329名
(79.8%)について、有
訴 症状 を有 す るも のは 、 肩こ り 80.8% 、 腰痛
60.7 %、 膝痛18.5%、その他としては頭痛、下
肢の浮腫・だるさなどが多かった。鍼灸経験につ
いては 「経 験あり」 が20.7%、「経験なし」 が
79.3 %であった。年齢による症状の違いについ
て は、 50歳 代に 膝痛 を 有す る傾 向が みら れた
(χ2test)。体験治療不参加の理由としては「自
覚症状がない」
「鍼灸に関心がない」
「怖いという
印象がある」などが上位を占めた。
【考察と結語】病院勤務看護師の多くが鍼灸適応
症状を有するが、鍼灸治療経験者は予想外に少な
いことが分かった。年齢・勤務内容による自覚症
状の差異は、50歳代に膝痛を有する者が多かった
以外は特に一定の傾向はみられなかった。体験治
療不参加の理由から鍼灸に対する意識を推察する
と、今後病院勤務看護師に対して鍼灸をアピール
する機会をより多く提供する必要性があると思わ
れた。
キーワード:病院勤務看護師、鍼灸受療経験、ア
ンケート調査
植田英子、石谷明子、近藤優子
【目的】鍼治療は肩こりに対して有効な治療手段
の1つである。しかしながら、鍼に対する恐怖感・
時間的制約・経済的問題などの理由から、実際に
鍼灸治療を受けるのをためらっている患者もかな
り多いことが想像される。またこれらは、鍼灸適
応と考えられる患者に対して、医師が積極的に鍼
治療を勧めにくい理由ともなっている。
この問題を解決し鍼灸をより身近なものにするた
め現在当診療所では、軽刺激による局所主体取穴・
短時間による治療システム(以下「簡易鍼」)の
導入を検討している。これを前提として、今回兵
庫県立尼崎病院看護部の協力を得て、簡易鍼が有
用であるかどうかを検討したので報告する。
【方法】対象は兵庫県立尼崎病院勤務の看護師の
うち、肩こり症状を有する簡易鍼希望者134名(3
4.5±10.7歳)である。方法は対象者に座位にて、
40㍉16号ディスポ針を用いて、項頸部・肩背部主
体に、浅刺・軽刺激による10分間の治療を、約1
週間の間隔をおいて2回行なった。対象者には治
療 前・直後・ 2日後の自 覚症状の数 値スケー ル
(numerical scale:NS)と治療後の感覚や鍼治療
に対する印象などの調査項目について記録しても
らった。
【結果】症状の数値スケールについては記載漏れ
を除いた125名において、鍼治療前後で有意な低
下がみられた(p<0.01)
。「鍼が心地よい」と感じ
たものは64名であった。治療時間については「初
めての体験で手軽で良かったが、10分では物足り
ない」という意見も多かった。「今後続けて治療
を受けたい」とした者は71名であった。
【考察と結語】簡易鍼は肩こりの自覚症状を軽減
し得ることが確認できた。今後効果の持続日数の
延長や他症状への適用拡大を検討していく必要が
ある。軽刺激・局所主体の治療体験を通じて鍼に
対する恐怖心や不安感を払拭し、患者にとって鍼
灸治療がより身近なものになるための有用な手段
になり得ると考えられた。
キーワード:肩こり、簡易鍼、数値スケール
335
1P-D-15:42
鍼灸技術研 修における時系列分析
法の運用
− 89 −
1P-D-16:00
ネットワーク利用による蔵書検索シ
ステムの構築
−えひめ東医研における試み−
後藤学園ライフエンス総研情報科学研究部1)
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
谷口一也、山見 宝
山岡傳一郎、光藤英彦
岩手医科大学歯学部口腔生化学講座2)
稲木雅人1)、高松邦彦 2)、高岡
裕1 ,2)
ラムに導入する事が不可欠であると考える。
【目的】図書館等の蔵書検索は、コンピュータを
利用したものが増えてきている。学校内のパーソ
ナルコンピュータ(PC)から蔵書を直接検索でき
れば、作業効率の向上と、それに伴う教育の質の
向上が期待され、さらには生徒の自学自習にも役
立つ。昨年本大会で報告したように、後藤学園は
インターネット接続とサーバ群を独自に管理運営
しており、鍼灸教育に積極的に利用してきた。今
回、本校が所有しているサーバ上に図書検索シス
テムを構築、 校内既設の Windows や Machintosh
等の PC から、Web ブラウザ利用の検索を可能に
したので報告する。
【方法】蔵書データの管理には Micro Soft 社のM
S-Access を用いた。検索用データは、データベー
ス標準形式の一つである CSV 形式を利用し、 そ
の際変換プログラム(Perl(Ver.5.005_02)言語)
を作成することで文字コードの問題を解決した。
Unix サーバには当校既設の Sun Microsystems 社
製 Enterprise250 に 、 Apache (Ver.1.3.27) を
インストールして Web サーバとして使用した。
そして、 検索結果は Web ブラウザで閲覧できる
ようにした。
【結果/考察】この蔵書検索システムが完成した
ことで、直接教員自身の PC から蔵書を検索でき
るようになった。その結果、教職員が教材を作成
するときに、作業効率が向上した。また、学生も
図書館に設置された PC を利用し、同様の恩恵に
あずかった。また検索用 PC のソフトは Web ブラ
ウザであり、PC の機種に非依存のため、メンテ
ナンスはサーバ側のみでよい。通常、このシステ
ムの構築には、高価なソフトウェア購入か多額の
開発費が必要になる。しかし、今回我々は短時間
かつ低コストで開発を終了できた。現在、本学園
内(東京校及び神奈川校)からのみ検索が可能に
なっている。今後は、インターネット上で公開す
ることも検討したい。
キーワード:鍼灸技術研修、時系列分析法、チー
キーワード:蔵書検索、インターネット、WWW
【はじめに】愛媛県立中央病院東洋医学研究所で
は、平成9年度より研修プログラムを導入し、鍼
灸師の卒後研修を試行している。この研修におい
て時系列分析法を取り入れている。その事により、
研修生がチーム医療の中で効率良く臨床研修が行
えると考えている。今回、具体例を示してその一
端を報告する。
【具体例】ポスターにて症例の詳細を掲示する。
要約は以下の通りである。器質的には問題が無い
と診断されている13才の夜尿症の症例。時系列分
析を行う事により以下の事が明らかになった。①
夜尿は一次性で比較的軽症であると考えられる。
②転居を契機に、咳・風邪引きやすさ・頭痛等を
発症している。③夜尿症である事が頭痛を増悪さ
せているのではないかと考えられる。④兄弟・両
親ともに夜尿症の既往は無い。②・③に注目する
と、本症例は、転居に伴う生活環境の変化によっ
て固定された心身症ではないかと考えられる。
【結語】医学領域での時系列分析法とは、既にこ
れまでの医療での歴史的認識である、既往歴・家
族歴・現病歴と矛盾するものではなく、むしろこ
れらを包括し、それぞれの歴史を並列・比較する
ように工夫したものである。この時系列分析法の
運用により、①病人を全人的に捉えられる。②家
庭・社会環境における病人の位置付けの理解。③
病人を中心としたチーム医療の中での共通の認識
が得られるため、効率良く研修が行えると考える。
しかし、時系列分析法の運用には、①治療相談カー
ドからの情報収集、②面接技術、③生活上の出来
事と病症との関連性の掌握等のテクニカルノウハ
ウが必要となり、そのトレーニングを研修プログ
ム医療
− 90 −
336
1P-D-16:14
音声出力/認識を利用した対話型電
子カルテ入力システムの検討
1P-D-16:28
鍼灸高等教育機関・大学院博士課程修
了後の動向調査
筑波技術短期大学鍼灸学科
木村友昭
明治鍼灸大学大学院鍼灸学研究科
筑波技術短期大学附属診療所
津嘉山洋
北出利勝、渡邉
【目的】これまでに我々は、音声認識を利用した
電子カルテ入力システムを試作し、カルテ入力の
効率化に役立つ可能性を指摘した。今回は、定型
的な所見入力のためのガイダンスを音声出力し、
音声で所見を入力する対話型入力システムを試作
し、その有用性について検討した。
【方法】対話型の所見採取のモデルとして、腰下
肢痛に対する日本整形外科学会(JOA)スコアを
採用した。JOA スコアの各項目(計14項目)に対
し、(1)各項目名、評価基準等を音声合成により
読み上げ、音声認識により結果を入力し、データ
ベースに保管する機能、(2)過去のスコア記録を
読み上げる機能を満たすユーザーインターフェー
スを作成した。入力者の熟練度に応じて入力効率
を向上させるため、スコア項目のガイダンス機能
は音声コマンドによって省略可能とした。本シス
テ ムの開 発に は Visual BASIC 6.0 (Microsoft
製)、合成音声エンジンには TTS 3000(Lemount&
Hauspie製)、音声認識エンジンには AmiVoice4.0
(Advanced media 製)を使用した。ハードウェア
は パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ (SONY 製 PCGC1VJ/BP)とマイクロホン付ヘッドホンおよび自
家製 USB ペダルで構成した。
【結果と考察】項目名とその詳細説明が音声出力
されることにより、対話形式でスコアの入力が可
能であった。さらに、過去のスコアを音声で参照
することが可能となった。以上の特長から、本シ
ステムがディスプレーによる情報の確認が困難な
視覚障害者のための定型的カルテ所見の入力支援
システムなどに有用であると考えられた。
キーワード:電子カルテ、ユーザーインターフェー
ス、音声認識、対話型、JOA スコア
泱、平澤泰介
【目的】本大学院鍼灸学研究科は、博士前期課程
(修士課程;2年間)が、鍼灸医学における研究能
力または高度の専門性を要する職業などに必要な
能力を養う(以下、マスター)。また、博士後期
課程(博士課程;3年間)は、研究者として自立
して研究活動を行い、専門的な業務に従事するに
必要な高度の研究能力を養うこととしている(以
下、ドクター)。そこで、マスター、ドクター両
者の修了時の進路とその後の動向を知るために調
査した。
【方法】マスターは1991年に開設され、修了年は
1993年であり2002年までの10年間を、ドクターは
1994年にスタートして修了年は1997年であり2002
年までの6年間を調査した。調査項目は次の通り
である。マスターおよびドクターの進学先と就職
先について、現在の立場において大学院教育が生
かされいるかどうか(教育、臨床、研究)。
【結果】マスター修了者は1993年から10年間、合
計75名(男:57名、女:18名)であった。進学の
内訳はドクターへ進んだ者が44名(この内、6名
は他の大学院)、教員養成科が3名、本学研修生が
3名、海外留学(ニュージランド、米国)が2名で
あった。就職の内訳は病院、鍼灸院が11名、教員
が8名、開業が2名、その他が2名であった。ドク
ター修了者は1997年から6年間、合計22名(男:18
名、女:4名)であった。就職の内訳は教員が20
名、研究生が1名であり、その他が1名であった。
【考察と結語】わが国最古の医学全書である『醫
心方』を編纂した丹波康頼は、鍼博士・医博士で
あった。大学院ドクターコース修了者は「鍼灸学
博士」という名の学位記を授与される。同博士が
誕生した1997年は医聖・康頼が永眠して1002年後
のことであった。なお、課程博士ではない論文博
士は現在、5名が鍼灸学博士を取得している。マ
スター修了者はドクターへ進学する者が過半数を
占めた。本学に限らず他大学もあった。教員とし
て就職する比率が高かった。ドクター修了者はほ
とんどが教員になっていることが分かった。
キーワード:鍼灸高等教育機関、大学院教育、鍼
灸学博士、論文博士、調査
337
− 91 −
1P-D-16:42
鍼灸の動物実験における実験条件の
文献による検討
1P-E-15:00
四肢択一問題の解答方法と正答率に
ついての検討
関西鍼灸短期大学鍼灸学基礎教室
明治東洋医学院専門学校
山崎寿也、楳田高士、吉備
北村 智、錦織綾彦
関西鍼灸短期大学生理学教室
登
内田靖之
【目的】鍼灸のメカニズム解明のため、多くの動
物実験が行われている。実験の条件は、その結果
に大きな影響を与える。そこで、どのような条件
で行なわれているかを、日本国内で発刊されてい
る文献について調査を行い、検討を行った。
【方法】1982∼2002年間の文献を対象に、キーワー
ドを「動物」及び「鍼」、「動物」及び「灸」とし、
「医学中央雑誌刊行会」から検索を行った。項目
としては、動物の種類、性別、週齢、体重、麻酔
剤の種類や使用量、施術部位、鍼の種類、太さ、
長さ、パルスの使用、周波数、波形、電流、電圧、
灸については艾 の大きさや壮数等について分析
を行った。
【結果】抽出した文献数は鍼文献64、灸文献42、
鍼・灸両方を含む文献12の118文献が抽出された。
条件の記載のない文献も多く認められたが、動物
の種類ではラットの使用が最も多く(72文献 : 61
%)、ついでマウス(23文献 : 19%)、ウサギ(14
文献 : 12%)の順であった。麻酔は64文献で記載
があり、ペントバルビタール(28文献 : 44%)、
ウレタン(27文献 : 42%)が多く使用されていた。
鍼の施術部位では、後肢が最も多く、ついで背部、
腹部、前肢の順であった。パルス使用は50文献に
みられ、周波数は1、2Hzが最も多く、波形、電流、
電圧等の全ての条件を記載した文献は少なかった。
施灸部位は背部が最も多く、ついで腹部、後肢、頭
頂部の順であった。艾 の大きさは一定ではなく、
壮数については1∼3壮が最も多く認められた。
【考察と結語】動物実験の実験条件を調査、分析
したが、その条件は研究者に依り一定していなかっ
た。異なる条件では結果に差が生じる可能性があ
り、結果を他文献と比較検討する場合、適切であ
るのかどうか疑問が残る。今後出来る限りこれら
の実験条件の統一化が望まれる。
キーワード:動物実験、実験条件、鍼灸、文献
渡辺康晴、安藤文紀、田中
博、谷口和久
【目的】今回、はり師きゅう師国家試験で行われ
ている四肢択一問題において、正答率の良い学生
とそうでない学生の間に解答方法に違いがあるか
どうかを検証したので報告する。
【方法】対象は本校の第1鍼灸学科1年と柔道整復
学科1年の学生で、平成14年度中に解剖学Ⅲを履
修した219名とした。使用した問題は、第1回から
第10回のはり師きゅう師国家試験および柔道整復
師国家試験問題とした。これらの問題の中から、
授業で学習した範囲(中枢神経系)に該当する35
問を抽出し、内容別に2回にわけて授業中に学生
に解答させた。学生には各問題の解答時に解答方
法を評価するよう指示した。評価は3段階で、容
易に解答が1選択肢に絞れた問題(A)、選択肢を2
つにまで絞ったが残る2つの選択で迷った問題(B)、
選択肢を2つに絞ることもできなかった問題(C)
とした。2回の模擬テストが行えなかった学生は
解析から除外し、解析には209名のデータを使用
した。
【結果】全体の正答率は52.2±19.0%(SD)であっ
た。学生を成績別に3群に分類した。35問中25問
以上正解した高得点群(47名:正答率80.6±7.3
%)では解答方法の評価と正答率に極めて良い一
致が見られた。一方、11問以下の正解数であった
低得点群(32名:正答率27.3±4.0%)では、解
答方法をAと答えた問題で誤答を選ぶケースが多
かった。その結果、解答方法をAと答えた問題と
解答方法をCと答えた問題の間で正答率に大きな
違いは見られなかった。12問から24問の正解数で
あった中間群(130名:正答率48.1 ± 9.9%)で
は、高得点群と低得点群の中間の傾向を示した。
【考察と結語】高得点群では問題を解答すると同
時に、その解答が正答である可能性を正しく評価
できる傾向が見られた。一方で低得点群では、選
んだ解答が正答であるかどうかを認識できず、安
易に誤答を選ぶ可能性のあることが示唆された。
キーワード:四肢択一問題、正答率、解答方法、
成績
− 92 −
338
1P-E-15:14
あん摩鍼灸実習教育の保険に関する
実態調査
1P-E-15:28
施灸技術の自動評価装置の開発
東京衛生学園基礎医科学研究部
千葉県立千葉盲学校理療科
1)
筑波技術短期大学鍼灸学科
2)
箕輪政博1 ,2)、形井秀一2)
【目的】平成元年の厚生省の指導要領の改訂をう
けて、専門学校では臨床教育の充実が急務となっ
てきている。しかし、臨床実習中の事故等の対策
についての実態は明らかでない。そこで、あん摩
マッサージ指圧鍼灸(以下あん摩鍼灸とする)教
育の臨床実習に関する保険(主に賠償責任保険)
についてアンケートによる実態調査を実施したの
で報告する。
【方法】調査対象は大学を除く全国のあん摩鍼灸
教育機関(以下学校とする)
、盲学校61、視力障
害センター6、専門学校等54の合計121校とし、調
査期間を平成14年7月∼9月とした。アンケートは
選択と記述形式で行い、回答は記名式とした。内
容は施設や指導の実態、衛生面・安全面や保険な
どを大項目A∼Eにわけ全質問数を49問とした。
本発表では特に保険問題に焦点を絞って報告する。
【結果】回答件数は121校中100校で、有効回答率
は82.6%であった。実習の保険に関して民間保険
会社と契約している学校は48校で、契約していな
い学校は36校であった。契約保険会社では総加入
校数52校のうちA社が31校、59.6%で最も多く、
ついでB社が13校、25.0%であった。補償内容は
「学生が附属臨床施設で患者へ起こした事故」が
89.6%で最も多く、ついで「教職員が附属臨床施
設で患者へ起こした事故」が66.7%であった。1
校あたりの合計保険料は1万円以下から10万円以
上とばらつきがあるが、5万円台が18校と最も多
く、54,680円の学校が14校あった。対人補償の限
度額でも1千万円から1億円と幅があり、1名につ
いて3千万円が22校、1事故について3千万円が23
校で最も多かった。平成元年以降の保険金の支払
い事例は9校で13例あり、支払額は最高で31万円、
最低で11,620円であった。
【考察】臨床実習における賠償責任保険商品とし
て流通しているのはA社の「鍼灸マッサージ臨床
実習賠償責任保険」だけであった。しかしすべて
の学校でこの保険を契約しているわけではなく、
そのほかの保険商品はそれぞれの学校が代理店や
保険会社を通じて独自につくったものであった。
社会情勢の変化を鑑みて、各校が保険について再
認識し、再検討する必要もあると考える。
キーワード:あん摩鍼灸教育、臨床実習、実習中
の事故、賠償責任保険
會澤重勝、勝又隆弘
【目的】施灸技術の評価は、竹筒や紙の上に施灸
し、手際のよさや、焼け焦げ具合から行ってきた。
時には、評価者の皮膚上に艾を立てさせたり、実
際に施灸を行うことも行われている。皮膚上への
施灸は最も臨床に近く望ましい事ではあるが、評
価者の負担が大きく、ばらつきも生じ易い。竹筒
や紙の上への施灸では評価者の負担は軽減し、焼
け焦げの程度から施灸時の温度の評価もある程度
客観的にできるが、多人数を評価する場合には作
業が煩雑で時間を要する。今回、センサー上に施
灸を行い、これを自動的に評価する装置を開発し
たので報告する。
【方法】スライドグラスに封入した熱電対を施灸
部位とし、2つの施灸部に交互に施灸を行う。熱
電対の出力をソフトサーモを介してパソコンに接
続し、専用ソフトで温度データを自動解析する。
評価は標準施灸数、標準施灸温度、上限温度、下限
温度、点火不良の判定温度を独立に設定して行う。
結果は施灸のグラフに加えて、各壮ごとの施灸温
度の平均と標準偏差、施灸間隔の平均と標準偏差、
下限温度と上限温度の間に収まる施灸数、上限温
度を超えた施灸数、下限温度に満たない施灸数、
点火不良回数、の値とコメントおよび評価点を表
示し、印刷する。
【結果】施灸の技術評価を自動的に行うことが可
能となった。点火時の不手際は、従来の方法では
温度曲線を注意深く見なければ読み取れなかった
がこの装置により自動的に検出することが可能と
なり、実技の評価に有用と考えられる。
【結語】従来は施灸時の温度曲線を記録計により
描き出し、この図から定規を用いて温度や、施灸
間隔を測定していた。これは大変煩雑で間違いも
起こりやすい。また、結果の通知にも時間を要し
た。今回開発した方法では、施灸終了と同時に施
灸温度曲線と各評価項目及び評価点が印刷される。
また、各被験者のデータが記憶されているのでク
ラスの平均など統計も可能である。
キーワード:灸、施灸温度、パソコン、評価、開
発
339
− 93 −
1P-E-15:42
卒業試験におけるOSCE形式試験導入
の試み
1P-E-16:00
盲学校における医療面接技法評価の
試み(第2報)
早稲田医療専門学校東洋医療鍼灸学科
北海道高等盲学校
鈴木盛夫、小岩信義、所
数樹、浅野貴之
坂本真紀、二本松明、町田雅秀
昭和大病院リハビリテーション科
久住
武
【目的】近年鍼灸師の養成施設において OSCE 客
観的臨床能力試験の導入が進んでいる。本学では
平成12年度までの卒業認定実技試験は、学生1名
に対し教員が1名で鍼灸実技及び取穴・理学検査
の成績判定を行っていたが、一部の学生から合否
の判定に不公平感があると批判があった。そこで
平成13年度の卒業認定実技試験に OSCE 形式を導
入し、学生1名は4つのステーション6分野を巡り8
人の教員に判定される方法で行った。学生は共通
の評価者に評価されることになったが、それまで
の実技試験とは違った方法の試験を受験すること
になった。試験後に行ったアンケートの結果を報
告する。
【方法】対象は平成13年度の卒業認定実技試験を
受験した96名、内訳は昼間部学生68名(男40名・
女28名)夜間部学生28名(男15名・女13名)。全
員にアンケートを行った。
[結果]問題の難易度は、「易しかった」が14.6
%、
「 普通だった」が62.5%、
「難しかった」が22.6
%。自分の結果をどう思っているかは、「出来た
と思う」が37.5%、「何ともいえない」が40.1%、
「出来なかった」が21.7%。実技能力の判定に意
義があると思うかについては81.3%の学生が意義
があると答えた。この形式での卒業試験に賛成の
学生は56.3%、反対は5.2%、どちらとも言えな
いが37.5%であった。
【考察】受験生は卒業試験の約1ヶ月前に突然そ
れまでに受けたことのない試験形式の要項を渡さ
れ試験方法の説明を受けた。それにもかかわらず
前述のアンケート結果を得たことは、1.学生から
公平だと評価された、2. 臨床で役立つと評価さ
れた、と言える。本学では未だ OSCE とは呼べず、
ただ形式を採用したに過ぎないと考えているが、
導入の途中経過としても、公平な試験であること、
認知領域の試験では計れない学生の情意領域の技
能を見ることができたことで、卒業認定実技試験
に導入したことは意義があったと言える。
キーワード:OSCE、卒業試験、評価
泉
重樹、岡部博之、舟崎
隆
【目的】第51回大会では本校において OSCE によ
る医療面接評価を行い、視覚障害鍼灸・あん摩マッ
サージ指圧師養成施設においても OSCE 実施は可
能であり有用性は高いことを報告した。平成14年
度は臨床理療実習の中に医療面接カリキュラムと
して OSCE を盛り込み、4月と11月にそれぞれ OSCE
による診断的評価と形成的評価を行い、内容およ
び評価について検討したので報告する。
【方法】対象は本校専攻科3年生10名(理療科9
名・保健理療科1名)である。医療面接カリキュ
ラムは OSCE を含め8時間で配当した。内訳は4月
に医療面接事前指導2時間、第1回 OSCE 2時間、
第1回 OSCE フィードバック1時間を行い、11月に
第2回 OSCE 2時間、 第2回 OSCE フィードバック1
時間の内容で行った。OSCE はステーション(以下
ST)を2つ設定し ST1で医療面接を行い、ST2では
医療面接内容を4択式で解答させる筆記試験を行っ
た。 事前指導は態度としてよくない例のモデル
(教師が実施)が医療面接している場面をビデオで
視聴しながら医療面接の態度・技法について討議
する方法で行い、フィードバックについてはビデ
オ撮影した各自の医療面接の模様を生徒全員で視
聴し意見交換しあう形式で行った。
【結果と考察】第1回 OSCE の結果、ST1のインタ
ビューのプロセス(患者への対応) の得点は 67
(±14.6)点、インタビューのコンテント(症状に
ついて)の得点は43.4(±16.4)点、ST2の得点は60
(±27.4)点であり、 第2回 OSCE の結果はそれぞ
れ、82.8(±14.8)、53.4(±17.9)、68.3(±21.4)
と1回目よりも2回目のほうが増加していた。また
今回は全盲教員による評価も実施した。評価表の
工夫と評価者の位置取りに配慮することにより全
盲教員でも医療面接中の非言語的コミュニケーショ
ン評価の一部は可能と考えられる。
キーワード:医療面接、OSCE、臨床実習、評価、
視覚障害教育
− 94 −
340
1P-E-16:14
鍼灸専門学校における臨床能力育成
の検討(第4報)
−コミュニケーション技法の学習と指導−
明治東洋医学院専門学校
河井正隆
1P-E-16:28
刺鍼技術実習の授業評価の試み
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
笹岡
知子
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
山田
伸之
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅰ教室
石崎
直人
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅲ教室
佐々木和郎
【目的】本校では、学生の臨床能力育成をテーマ
に、授業「シミュレーション実習」を本年まで9
年間継続し開講している。この授業から得られた
いくつかの知見は、本学会で過去3回に亘り発表
を行った。
そこで今回は、昨年の第51回大会(筑波大会)で
発表した内容をさらに発展させ報告する。具体的
には、鍼灸臨床における面接場面でのコミュニケー
ション技法の構造化を試み、面接に関する学習上
の着目すべきポイントや指導面での手だてを抽出
してみたい。
【方法】まずは、面接時のコミュニケーション技
法について、さまざまな文献を下敷きに整理・検
討し、その構造化(枠組みの作成)を行う。続い
て、実際に学生が行った面接場面と突き合わせ、
学習と指導の両面から、コミュニケーション技法
の習得に有効な方法を検討する。
【結果と考察】得られたコミュニケーション技法
の構造をもとに、何点かの学習と指導の上で注目
すべき事柄が抽出された。以下に述べてみたい。
①面接の流れに影響を与えるコミュニケーション
技法として、質問方法の選別と傾聴のタイミング
が挙げられる。②活用する質問方法により、“収
束的な面接”または“拡散的な面接”という2つ
の流れが生じる。④積極技法の活用には、患者と
の信頼関係のうえに用いてこそ、有用と思われる。
⑤コミュニケーション技法を階層構造として把握
することが、その技法の習得に有用と思われる。
【結語】鍼灸臨床における面接時のコミュニケー
ション技法を習得するうえで、その技法の構造理
解にともなう適切な学習・指導が重要と思われる。
キーワード:鍼灸臨床、医療面接、コミュニケー
ション技法、臨床能力、
【はじめに】刺鍼および施灸の技術教育は、鍼灸
師を育成する上で非常に重要である。技術の習得
には、学生自身による自習復習が不可欠であり、
そのためにも学生と教員の相互の努力により学習
意欲を高く持たせ続ける事が必須である。同時に、
より良い教育を提供するためには、教育内容を自
己点検し評価を実施することが必要である。そこ
で我々は、鍼技術学(演習)について授業評価を
目的としたアンケート調査を行ったので報告する。
【対象と方法】本学在学生1回生118名(男子68名,
女子50名)を対象とし、全講義終了時に、多摩大
学および聖徳大学の授業評価アンケートの内容を
参考に授業評価アンケートを独自に作成した。調
査の内容は、大項目として1. 授業について(小
項目;2項目)、2. 授業科目について(5項目)、
3. 授業に対する学生自身(7項目)、4. 担当教員
(3項目)について調査し、回答は5段階の選択法
を用いた。それぞれの大項目において自由記述式
に意見を求めた。
【結果】アンケートの有効回答数は107であった
(有効回答率91%)。授業に興味を持って参加した
98名 (91.6%)、 有 意 義 な 実 習 で あ っ た 85 名
(79.4%)と高かったが、自習・復習を行った62名
(57.9%)、質問を行った58名(54.2%)と低かっ
た。自分の身体であれば不安なく刺鍼出来る81名
(75.7%)であり、他人の身体に不安なく刺鍼出
来る43名(40.2%)であった。自由記述式の意見
で多かったのが、切皮痛を与えてしまう事の不安
感と、技術が臨床上どう活かされるのかという疑
問や興味であった。
【結語】今回のアンケート調査により、学生の授
業に対する興味や参加意識は高いが、自習・復習
はあまり出来ていない事が明らかとなった。本ア
ンケート調査は、実習内容をより良く改善するた
めの方法として有効で有り、今後、技術習得に対
する自己努力を促す工夫が更に必要であることが
明確になった。
キーワード:鍼灸、技術教育、授業評価、アンケー
ト調査
341
1P-E-16:42
鍼灸理論・臨床医学各論における授
業評価
− 95 −
2O-B-09:00
足臨泣の施鍼による頸部圧痛の変化
南雲治療院・北海道地方会
南雲三枝子
四国医療専門学校
桑野素子
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
福田文彦
【目的】足臨泣に施鍼し、頸部(完骨付近)の最
【目的】教育および教育効果を高めるためには、
大圧痛点の圧痛の変化を、鍼経験群と未経験群と
に分けて検討した。更に、圧刺激による痛みの感
適切な評価とそれに伴う教員および学生への双方
向のフィードバックシステムが必要である。授業
受性と自己評価の差異について考察を試みた。
の受け手である学生の視点からの授業内容および
教育方法における問題点の抽出は貴重な評価とな
る。そこで演者は、自身の授業における問題点の
愁訴をもった100例(男41例・女59例、年齢19∼83・
抽出および授業内容向上を目的に授業についての
アンケート調査を実施したので報告する。
【方法】対象は演者の担当授業(全3科目、鍼灸
た。計測は、左右完骨付近の最大圧痛点に対し、
理論前半・鍼灸理論後半・臨床医学各論)を受け
た本校学生とし、最終授業終了後に無記名、自記
式、集合調査法にて調査を行った。アンケートの
みと抜鍼後、施鍼前の圧痛閾値の数値にて加圧し
た痛みの程度を表現させた。経験群は66例(男25
内容はⅠ.教員の授業の進め方に対する評価、Ⅱ.
授業を受けた学生の自己評価とし、各項目とも5
段階の選択法とした。また、それと同時に授業に
である。
対する意見を記述法により調査した。
【結果】アンケートの回収率は各科目において
86.5-95.3%であった。各評価項目の「非常にそ
う思う」と「そう思う」の割合は以下のようになっ
た。Ⅰでは「熱心であった」
( 78.3-93.9%)、「準
備は十分であった」
( 65.0-100%)、「解説はわかり
やすかった」
(53.0-77.0%)、「回答は適切だった」
(53.0-77.0%)、
「板 書は 見 やす かっ た 」(46.286.4%)などであった。Ⅱでは「積極的な姿勢で
【方法】頚部の痛み・重苦しさ・こわばり感等の
平均47歳)を対象に、仰臥にて安静を得た後、40ミ
リ16号鍼を用いて左右足臨泣に5分間の置鍼を行っ
圧痛計(FPメーター)を用いて施鍼前後の圧痛閾
値の変化をみた。VASは、施鍼前の圧痛閾値の痛
例・女41例)、未経験群は34例(男16例・女18例)
【結果】100症例の圧痛閾値は上昇(p < 0.01)、
VAS は低下(p < 0.01)。経験群 の圧痛 閾値は上 昇
(p < 0.01)、VAS は低下(p<0.01)。未経験群の圧
痛 閾 値は 変化 が認 め られ ず、 VAS は 低下 (p <
0.05 )。
【考察】今回、経験群は圧痛閾値とVAS共に改善
をみた。過去に鍼治療により愁訴の軽減を得てい
る経験群は、施鍼により望ましい生体反応が生じ
圧刺激による痛みに対して良好な感受性を示した
ものと推察する。術者は、より快適で満足感が得
授業に参加した(26.5-47.6%)、「基本的事項が
身についた」(23.1-41.5%)などとなった。
【考察および結語】Ⅰでは大半の項目で「非常に
られる治療を提供することが、鍼効果を高める上
そう思う」「そう思う」の割合が5割以上という評
価が得られたが、Ⅱではいずれの項目も5割に満
たなかった。教員自身がより深い知識を持った上
をみたことより、鍼効果に対する期待や要求等の
で授業に臨み、学生の疑問点に的確に回答できる
ようにすることが授業内容の向上や学生の興味・
関心を惹くことにつながると思われる。そして、
に影響を及ぼしたものと推察する。痛みの感受性
は個人差が大きくしかも、不安や緊張等のストレ
それが学生の学習に対する積極性の向上を可能に
させると考える。
とより、リラクゼーションの必要性やコミュニケー
キーワード:授業評価、アンケート調査、学生の
キーワード:足臨泣、頸部圧痛、圧痛閾値、VAS、
積極性
で大切であると考える。未経験群は術後、客観的
な圧痛閾値に変化がみられず主観的なVASに改善
心理的要因及び、鍼治療の紹介者やマスコミ等か
ら得 ていた情報や学習によ る予備知識等が VAS
スがある未経験群は感受性が高いと考えられるこ
ションの重要性が伺われた。
鍼経験の有無
− 96 −
342
2O-B-09:12
急性頚部痛に対する鍼治療効果につ
いて
2O-B-09:24
胸郭出口症候群に対する鍼治療(第5
報)
−刺鍼群と偽鍼群の比較(第2報)−
−ルーステストにおける上肢末梢循環動態の検討−
古東整形外科
小澤庸宏、古東司朗
【目的】第50回本学会において当院の田辺らが急
東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
小糸康治、美根大介、粕谷大智、杉田正道
江藤文夫
性頚部痛に対する鍼治療の効果について報告した。
今回我々は、さらに症例を追加し、ランダム化比
較臨床試験(以下RCT)をもちいて鍼治療効果の
検討を行なった。
【方法】対象は2000年9月から2001年2月までに急
性頚部痛を主訴として来院した30症例(男性 10
例、女性20例、平均年齢52.6歳)を対象とした。
全例インフォームドコンセントを行ない同意が得
られた後、封筒法にて刺鍼群と偽鍼群に割付を行
なった。刺鍼群の治療法は、患者を伏臥位とし両
側の風池、肩井と頚部最大圧痛部一点の計5穴に50
㎜20号鍼を刺入したの後、置鍼を10分間行なった。
偽鍼群は、前述の5穴に鍼管だけを叩打した後、伏
臥位姿勢を10分間行なわせた。評価方法は治療前
後の頚部運動時痛についてVASをもちいて評価し
た。
【結果】刺鍼群のVASは治療前67.2±17.8、治療
後50.0±19.4で有意差が認められた(P<0.01)。偽
鍼群のVASは治療前73.9±16.1、治療後59.9±22.0
で有意差が認められた(P<0.05)。また治療後の
VASについては両群間に有意差は認めなかった。
【考察】当院の田辺らは、神経根症状を認めない
急性頚部痛に対して鍼治療を行ない、両群共に治
療前後のVASは有意に減少していたと報告した。
今回の結果も前回の報告と同様に、治療前後にお
けるVASは有意に減少していた。よって、急性頚
部痛に対して鍼治療が有効であるが、その効果に
は鍼の効果に加え、プラセボの関与も考えられた。
また、鍼経験の違いや、原因疾患による違いが効
果に影響したものと考えられた。
【結語】急性頚部痛に対して鍼治療が効果的であ
【目的】我々は本学会において、胸郭出口症候群
(以下TOS)の評価に用いられているルーステスト
についてサーモグラフィにより手指皮膚温変化を
観察・分類し、胸郭出口部での神経刺激症状の程度
と罹病期間が関与する可能性を示した。また鍼施
術での症状緩和に伴いサーモグラムのパターンも
変化し神経刺激症状の改善が認められた。そこで
今回我々はサーモグラフィとレーザードプラー血
流計を用い胸郭出口部への鍼施術が上肢末梢循環
動態に及ぼす影響について検討したので報告する。
【方法】対象は安静時上肢症状を自覚しないが脈
管テストで症状誘発される6名。鍼施術は中斜角
筋に対し低周波鍼通電を10分間行った。サーモグ
ラフィの測定方法は鍼施術の前後、一定の室温下
で座位にて肘の高さの台に上肢を置き、皮膚温安
定後ルーステストを行い、上肢を元の位置へ戻し
た後、経過を12分間観察した。測定部位は両側第
1∼5指の爪根部とした。またレーザードプラー血
流計により両側中指指先部の血流量を測定した。
【結果】鍼施術前は全例でサーモグラムに回復の
遅延など健常者と異なるパターンが認められた。
鍼施術後、脈管テストでの陽性所見や上肢症状誘
発に臨床上有意な変化は認められなかったが、上
肢挙上負荷中の血流量は鍼施術前より増加し、負
荷直後の皮膚温低下も軽減した。また皮膚温回復
の時間も短縮しサーモグラムのパターンに改善が
認められた。
【考察と結語】鍼施術後、挙上負荷中の手指血流
量が増加したことから、胸郭出口部の緊張緩和に
よる阻血状態の改善、もしくは挙上に伴う腕神経
叢に対する刺激の軽減の可能性が示唆された。ま
た上肢皮膚温の回復時間短縮から交感神経機能亢
進状態の軽減が示唆された。以上サ−モグラフィ
とレーザードプラー血流計より TOS の病態を把
握でき、鍼治療経過の客観的評価に有用と考えら
れ、TOS症例に対する鍼治療の有用性が期待され
た。
るが、プラセボの関与も考えられる。
キーワード:急性頚部痛、偽鍼、プラセボ効果、
鍼治療
キーワード:胸郭出口症候群、ルーステスト、鍼
治療、サ−モグラフィ、レーザード
プラー血流計
343
2O-B-09:36
肩関節周囲炎に対する鍼治療
(第5報)
−拘縮症例についての治療効果−
東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
美根大介、小糸康治、粕谷大智、杉田正道
江藤文夫
【目的】我々は本学会において、拘縮を伴う症例
は非拘縮例と比べ治療効果が劣り、治療に長期を
必要とすることを報告した。一般的に拘縮を伴う
患者は医療機関においても治療手段は少なく、症
状の軽減を期待し鍼灸治療を受ける場合が多いと
思われる。そこで今回、拘縮を伴う症例の鍼灸治
療に対する満足度及び満足度に影響を与える要因
について非拘縮群を対照として検討したので報告
する。
【方法】対象は当院において肩関節周囲炎と診断
され鍼治療を行った11例12肩(男性5例、女性6例、
平均年齢62.7歳)である。これを拘縮群5肩、非
拘縮群7肩に分類し2群間を比較した。評価項目は
①疼痛の程度、②関節可動域、③日常生活動作、
④鍼灸治療全般に対する調査とした。
【結果】鍼治療により全例で疼痛の軽減、可動域
の改善、日常生活動作の向上が認められたものの、
拘縮群では非拘縮群と比べ改善しにくい傾向であっ
た 。し か し 、満 足 度 は VAS(visual analogue
scale)において両群ともほぼ同様であり、その
内容については拘縮群で肩の動かしやすさ、だる
さの軽減などの治療効果や、施術者の説明、日常
生活上のアドバイスなどの施術者に対する評価が
多くみられた。
【考察と結語】今回の結果は従来報告されている
ように、拘縮群では疼痛の軽減や可動域の改善が
非拘縮群と比べ劣る傾向であった。しかし、鍼治
療に対する満足度は高く非拘縮群と比較しても同
様であった。これは拘縮を伴う症例の場合、疾病
治癒を期待したものではなく、上述した治療効果
や日常生活指導など QOL の向上を期待しており、
鍼治療はその期待に応えたことで満足度を高めた
ものと考える。
キーワード:鍼治療、肩関節周囲炎、拘縮
− 97 −
2O-B-09:48
可動域テストによる関節構成要素の
形態学的変化と施術への応用
−肩関節に有用性が認められた1例−
国立身体障害者リハビリテーションセンター
防衛医大・解剖第1
舘田
竹内
美保
京子
日本柔整鍼灸専門学校
小比賀黎子
埼玉東洋医療専門学校
一の瀬
宏
【目的】運動器疾患における評価で、関節可動域
(ROM)テストは一般的に角度計測を行うものであ
る。我々は、このテストを施術の一部という前提
で施術を行っている。評価は、ROM に加えエコー
像により軟部組織の状態観察をしている。今回は、
複数の慢性外傷を有するラグビー選手に、この方
法で施術を行い有用性が認められたので報告する。
【症例】22歳男子(医学科学生、ラグビー部)
主訴:左右肩の挙上制限、不安定感と疼痛。既往
歴:平成13年4月 右肩関節亜脱臼、平成13年10
月 右鎖骨骨折。その他、肉離れ、膝関節捻挫、
手指の突き指等、競技の特性から頻回に受傷をし
ている。
【方法】左右肩関節を対象に ROM テスト(自動、
他動)を行った。ROM テストは施術の前後に、屈
曲位・外転位にて行った。なお、他動テストにつ
いては、Scaption で挙上に抵抗感のない方向を
さぐりながら、90°挙上までは肩峰を固定しなが
ら行った。他動 ROM テスト効果を検討するため、
自動 ROM テストを1回のみ実施し、灸施術した。
また、エコーにて、すべての検査、もしくは施術
の前後に患部を観察した。
【結果】自動ROMテストとそれに続く他動 ROMテ
スト直後の可動域は左右とも約10度改善していた。
しかし、患側と健側間の差は10度のままであった。
灸施術後は、健側には変化が認められなかったが、
患側は10度改善し、両者間の差は消失した。
【考察と結語】肩可動域制限の著しいスポーツ選
手において、他動による肩関節 ROM テストその
ものが、施術としての効果があると考えられてい
るが、テスト後の灸施術は、慢性外傷に伴う痛み、
筋力低下等の症状の改善が認めた。エコー観察を
行いながらのテストならびに施術は被検者に対す
るインフォームドコンセント得るのに非常に有用
であった。
キーワード:スポーツ鍼灸、灸療法、関節可動域
テスト、Scaption、関節構成要素
− 98 −
344
2O-B-10:00
腰痛に対する鍼治療の検討(2)
−JOAスコアとVAS、FFDを使用した多施設での症
2O-B-10:12
慢性腰痛患者に対するトリガーポイ
ント鍼治療の試み
例集積結果−
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
愛知地方会研究部疼痛疾患班
堀
茂、河瀬美之、石神龍代、中村弘典
服部輝男、皆川宗徳 甲田久士、井島晴彦
中村高行、絹田
伊藤和憲、越智秀樹、北小路博司
明治鍼灸大学整形外科教室
小嶋晃義、北條達也、勝見泰和
章、校條由紀、黒野保三
【目的】鍼灸院を訪れる患者のうち、疼痛疾患で
も特に多い腰痛に対する鍼治療の有効性を客観的
に検討する目的で、鍼治療の有効性を定量的に見
出すスケールを用い、班員による多施設での症例
集積を行って医学統計処理を行った結果、興味あ
る結果が得られたので報告する。
【方法】平成12年5月より平成14年11月までの間
に12施設に来院した患者のうち、主訴が腰痛であっ
た患者134例(平均年齢52.9歳,男:女= 81 : 53)
に対し鍼治療を行った。その評価として日本整形
外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(JOAスコア)
と Visual Analogue Scale(VAS)、前屈指床間距
離(FFD)を使用してそれぞれの推移を観察し、
腰痛に対する鍼治療の有効性を検討した。統計処
理は JOA スコアに対しては Mann-Whitney U test、
VAS に対しては Wilcoxon rank sum test、FFD に
対しては不合順位検定を用いた。
【結果】初診時と平均治療回数3.4回の最終時を
比較すると、JOA スコアは平均18.6点が23.0点、
VAS は10∼100が0∼100、 FFD は平均22.6cmが15.
7cmとなり、それぞれ有意な改善(p<0.05)が認
められた。また、最終時の効果判定は著効 27 例
(20.1%)、有効42例(31.3%)、やや有効48例(3
5.8%)、無効17例(12.7%)となり、症例の87.3
%に何らかの改善が認められた。
【考察と結語】今回の結果は、腰痛に対する鍼治
療の有効性を示唆するものと思われ、今回のよう
なスケールを用いることは鍼治療の有効性をより
客観的に検討することができる一方法と思われる。
キーワード:腰痛、JOAスコア、VAS、FFD
【目的】慢性腰痛に対して鍼治療は効果的な保存
療法と考えられているが、その治療方法は様々で
あり治療成績も異なる。一方、慢性腰痛の原因の
一部に筋・筋膜由来の疼痛が関与していることか
ら、筋・筋膜に対する治療の必要性が報告されて
いる。そこで慢性腰痛患者を対象に、腰下肢痛に
効果があるとされる経穴への治療群(経穴群)と
筋・筋膜への治療群(トリガーポイント治療群:
TrP群)の2群に分け、鍼治療の効果を検討した。
【方法】明治鍼灸大学附属病院整形外科を受診し、
6ヶ月以上腰下肢痛が持続している患者の中で、
インフォームドコンセントの得られた8名(68.9
±6.4歳)を対象とした。患者は封筒法により無
作為に経穴群と TrP 群の2群に分け、それぞれ週
1回で計3回の治療を行った。効果判定は施術前に
腰下肢の痛みを VAS(100mm)、治療開始時と治療
3回終了時に QOL を Roland Morris Questionnaire
(RMQ:24点満点)にて評価した。
【結果】対象患者は全例退行性変化を基盤とした
変形性腰椎症であった。治療前経穴群では VAS :
54.0±19.2mm、RMQ : 7.2±2.0点、TrP 群ではVAS
: 54.3±24.6mm (mean±S.D.)、 RMQ : 12.2 ±3.5
点であったのに対し、治療3回終了後経穴群では
VAS : 50.0±10.5mm、 RMQ : 7.7 ± 2.1 点 、TrP 群
では VAS : 28.0±16.6mm、RMQ : 3.3±2.3点でTrP
群に著明な改善が見られた。
【考察・結語】鍼灸治療は慢性腰痛に対して効果
的な保存療法の一つである。今回腰下肢痛の原因
となる筋肉に対してトリガーポイント治療を行う
ことにより、高い治療効果を得ることができた。
このことから、慢性腰痛患者に対して鍼治療を行
う際には、筋・筋膜由来の疼痛を考慮した治療法
(トリガーポイント治療)が必要であると考えら
れた。
キーワード:慢性腰痛、QOL、トリガーポイント
治療
345
2O-B-10:24
アトピー性皮膚炎を有する椎間板ヘ
ルニアに対する鍼灸治療の1症例
− 99 −
2O-B-10:36
脊椎圧迫骨折に対する鍼治療
清野鍼灸整骨院・東京地方会
埼玉東洋医療専門学校・東京地方会
一の瀬宏
日本柔整鍼灸専門学校
土肥康子、小比賀黎子
防衛医大解剖第一講座
竹内京子
【目的】前回まで肩こり症状に数穴の皮膚接触鍼
法( 鍼)が症状改善の自覚的変化をもたらし、
並びに主要経穴部のエコ−像の変化を観察してき
た。今回椎間板ヘルニアによる下肢疼痛としびれ
に対して 鍼を試み症状と罹患していたアトピ−
性皮膚炎の改善が見られた一症例を報告する。
【症例】36歳男性 医師(救急救命外科医) 身長
178cm、体重86kg
主訴:右大腿前・外側の疼痛としびれ。両足のし
びれ。
現病歴:平成6年入浴後ギックリ腰、以来長時間
の手術後に痛み、及びしびれが出現。1年前に
MRI撮影によりTh12・L1、L4・5の椎間板ヘルニ
アを確認。日常的には問題箇所を探りながら台
座灸の試行、運動療法により疼痛の改善を図っ
ていたが、激務のため最近は両足がしびれるよ
うになり、自助努力だけでは症状緩和の効果を
保てなくなった。
治療:銀製 鍼(直径0.3mm長さ80mm)にて(手
当ての鍼と命名)と知熱灸(燃焼温度34∼36.6
℃)を行う。1回目(02年11/20)下 穴知熱灸
3壮、鳩尾・右太白・th12・腰の陽関に皮膚接
触鍼法。2回目(11/27)下 穴・関元知熱灸3
壮、th3・9・12・右中封・曲泉・左陽稜泉・三
里に 鍼。3回目(12/4)以後継続の治療を行
う。術前後に姿勢・動作チェック並びにエコ−
像による軟部組織経穴部の観察を行った。他に
皮膚表面の写真を撮った。
【結果】治療初期の頃にはしびれは著効で2日間、
疼痛は7日間位緩解するが、後は緩慢に薄皮を剥
がすように改善していった。経穴部のエコ−像の
変化が認められた。腰痛が軽減するとアトピ−症
状も変わった。
【考察・結語】本症例の改善に 鍼治療が役にたっ
たと思われる。
キーワード:皮膚接触鍼法、
鍼
今田開久、清野充典
【目的】当院では1988年2月に鍼灸・整骨院とし
て開院以来、様々な外傷に対する鍼灸治療を試み
てきた。今回我々は、当院で取り扱った脊椎圧迫
骨折患者の訴える腰部∼背部痛に対する鍼治療の
効果を検討したので報告する。
【対象と方法】対象は、腰背部痛を主訴とし来院
した患者群で、他医療機関において脊椎圧迫骨折
と診断、または臨床所見により圧迫骨折の疑いの
高い患者群10例(男性3例・女性7例)、年齢56∼77
歳(平均年齢70.1歳±6.9歳、mean±SD)であり、
発症からの期間は、1∼92日(平均41.6日±30.9
日)である。施術方法は、圧迫骨折部上下の左右
棘間傍点に対し、ステンレス鍼40mm16号鍼を用い
管鍼法で弾入切皮し、刺鍼深度は皮下に到達しな
い程度までとし10分間の置鍼術を行った。評価方
法は患者の自覚症状を指標とした。尚、鍼施術後
骨折部位はサラシ、またはコルセットにて固定し
経過を観察した。
【結果】患者群の急性期疼痛は、いずれの症例も
鍼治療直後より緩解し、放射状に広がる腰背部痛
は4∼5回の鍼治療により消失した。また、慢性期
に残る背部痛についても同様の効果が見られた。
【考察】通常、骨折による疼痛は固定が十分であ
れば最小限に抑えられるが、脊椎骨折では固定が
困難であり体位変換等、疼痛を生じる要素が数多
く、また骨折部を中心に腰背部に放散痛・自発痛
を伴う事も多い。脊椎圧迫骨折に伴う疼痛は、骨
膜・椎間関節部、及び脊椎周囲の軟部組織由来の
疼痛であることが考えられるが、受傷からの経過
期間や鍼刺入深度により鍼治療効果に差があるこ
とも考えられた。
【結語】脊椎圧迫骨折に伴う疼痛に対し鍼治療を
行ない、症状の緩解を得ることが出来た。これら
の事から、骨由来の疼痛に対する鍼鎮痛機構に影
響があった事が考えられ、他疾患に対する臨床応
用も可能であることが示唆された。
キーワード:脊椎圧迫骨折、外傷、刺鍼深度、鍼
治療
− 100 −
346
2O-B-10:48
環跳穴低周波鍼通電療法施術前後の
血中セロトニン値の変動
福岡地方会
大淵千尋、箱嶌大昭
2O-B-14:00
超音 波断層法による筋硬結 の検討
(第3報)
日本臨床鍼灸懇話会1)、川村病院神経内科2)
星野良和1)、湯谷
達1)、鈴木
竹田博文1)、尾崎朋文 1)、米山
【目的】セロトニン(5-HT)は坐骨神経痛では減少
し、鍼治療後は増加するとされているので、環跳
信 1)
榮1,2)
穴低周波鍼通電前、後の変動を正常人1名、坐骨
【目的】我々は腰部において高率に筋硬結が認め
神経痛患者1名で術前術後に測定検討した。
られ、鍼灸臨床においても治療点として頻度の高
【方法】対象は正常人1名、患者1名の計2名であっ
い志室穴周囲の筋硬結について、エコー・CTを
た。術式は環跳穴に刺鍼し(−)、更に秩辺穴に刺
用いて検討してきた。そして志室穴周囲において
鍼(+)して低周波鍼通電を1Hz 15分間行い、術前、
その深部には肋骨突起が存在し、筋硬結を触れる
術後に採血した。採血した検体は(株)シー・アー
例の過半数に肋骨突起近傍に高輝度像を認めるこ
ル・シーに 5-HT 測定を依頼した。鍼は(株)タ
とを報告した。今回頚肩腕痛・肩こりにおいて、
ガシン製90mm 20号針、低周波通電器は全医療器
筋硬結が高率に認められ治療点としても重要と思
製オームパルサー LFP4500であった。
【結果と考察】
われる肩外兪・肩井穴のエコーによる検討を行っ
たので報告する。
鍼 通 電 前の 血 中 5-HT 濃度 は 正 常人 で 305.0
【方法】川村病院神経内科を受診した肩こりを訴
ng/ml であったが、坐骨神経痛患者では低下して
える患者8名(女性8名、年齢27∼74歳)の肩外兪・
いる傾向にあり 79.7ng/ml であった。 また、鍼
肩井穴、左右各16部位を対象に、触診による筋硬
通電に伴い正常人では 272.0ng/ml、 坐骨神経痛
結の理学的所見・エコーによる検討を行った。
患者では 74.5ng/ml へといずれも低下する傾向
【結果】
にあった。
①触診所見
【結語】坐骨神経痛に対し環跳穴低周波通電療法
肩外兪穴:1度(筋緊張様)1部位。2度(弾力
は、その症状の緩解作用にセロトニン増加が関与
していると推察される。
ある硬結)15部位。
肩井穴:1度(筋緊張様)10部位。2度(弾力あ
る硬結)1部位。硬結なし5部位。
②エコー所見
肩外兪穴:線状高輝度像:14部位。
肩井穴:線状高輝度像:13部位。
【考察】肩外兪穴の近傍には肩甲骨内上角、肩井
穴の深部には肩甲骨内上角・第1肋骨が認められ、
それぞれ骨周囲に高輝度像が認められた。これは
肩甲挙筋など僧帽筋の深部に存在する筋の高輝度
像と思われ、特に肩外兪穴においては肩甲挙筋の
停止部が筋硬結に関与する可能性が示唆された。
また肩井穴においては僧帽筋内に高輝度像が認め
られる例もあり、筋腹においては筋硬結に筋膜が
関与している可能性が示唆された。
キーワード:坐骨神経痛、低周波鍼通電療法、セ
ロトニン(5-HT)
キーワード:筋硬結、起始停止部、筋膜
347
2O-B-14:12
腰痛自覚者腰部における硬さの左右
差の成因について
− 101 −
2O-B-14:24
肩凝りの鍼治療が精神的ストレス認
知に与える影響について
−皮下組織の厚さとの関連−
兵庫鍼灸専門学院
明治東洋医学院専門学校
梶間育郎
有馬義貴、高野道代
【目的】腰痛自覚者の腰部では脊柱を挟んだ左右
【緒言】鍼灸臨床において肩凝り症は臨床上よく
見られる症状であるが、一般にその原因は単に局
で硬さに差があることがこれまでの研究で明らか
所筋群の疲労のみならず、他の身体症状との関連
になっている。また、皮下組織の厚さが硬さ決定
や精神的なストレスとの関連が示唆されている。
の大きな要因であることも明らかになっている。
本研究では、肩凝りとして自覚される愁訴の改善
このことから、腰痛自覚者における硬さの左右差
によって、その他の身体的、精神的愁訴の改善に
は皮下組織の厚さが変化したことによって起こっ
どの様な影響が見られるかについて臨床的検討を
ている可能性が考えられる。そこで、腰痛自覚者
試みた。
における腰部の硬さと皮下組織の厚さについて測
【方法】肩凝りを自覚し、CMI による調査で精神
定し、腰痛自覚者腰部における硬さの左右差の成
的愁訴の是認回答数の比較的多い24歳から42歳の
因に皮下組織の厚さが関与するかについて検討を
行った。
成人男女(女12名、男7名、平均年齢32.7±5.5歳)
を被験者群とし、天柱、肩外兪、肩井、肺兪、膈
【方法】健康成人ボランティア(腰痛非自覚者12
兪の左右10穴に対し、セイリン社製 50 mm、20号
名、腰痛自覚者12名)の腰部の硬さおよび皮膚表
ステンレス鍼を用い、得気を得た後 10 分間の置
面から筋膜までの皮下組織の厚さを生体用組織硬
鍼を行う方法で週1回、3週間にわたり3回の治療
度計および超音波診断装置を用い多点的に測定し
を行った。肩凝りの自覚状況は各回治療の前後に
た。なお腰痛の自覚以外に明瞭な差がない者の腰
被験者自身により VAS に記入させた。 全身愁訴
部を対象とした。
及び精神愁訴の状況は初回治療前と終了時に CMI
【結果】腰痛自覚者群では脊柱を挟んだ腰部の硬
を用いて調査し、それぞれの改善変化を統計手法
さに有意な左右差が認められた。しかし、皮下組
を用いて検討した。
織の厚さに有意な左右差は認められなかった。
【考察と結語】皮下組織の厚さが皮膚表面から触
【結果】各被験者の VAS による肩凝り自覚の改
善率と CMI による身体愁訴、精神愁訴全項目合
知する硬さの主要な成因であるが、腰痛自覚者腰
計の各是認回答率増減において、スピアマン順位
部における硬さの左右差の成因についてはその他
相関係数は、身体愁訴0.31、精神愁訴0.44、全項
の要因を検討する必要があることが明らかになっ
目合計0.48であった。また減少した人数の多い項
た。
目は、「目と耳」「消化器系」「筋肉骨格系」「疲労
度」「怒り」などであった。
【考察と結語】肩凝り局所に対する鍼治療は、そ
の部位の筋の緊張を緩和するだけではなく、精神
的緊張などのストレス反応についても緩和する傾
向があり、それらの改善は心身の緊張に関連する
消化器系や目の疲労等の症状改善にも影響すると
思われる。よって、肩凝りの鍼治療は、単に局所
的治療というだけでなく、心身相関として全人的
な健康管理面においても有用であると考えられる。
キーワード:腰痛、硬さ、皮下組織、触診
キーワード:肩凝り、精神的ストレス、鍼治療
− 102 −
348
2O-B-14:36
遠位経穴刺激の基礎的研究(第6報)
2O-B-14:48
脛骨叩打テストの有用性について
−腰痛治療点としての「承山−飛陽−崑崙」の刺
−脛骨内側顆骨壊死症と変形性膝関節症との比較−
鍼刺激効果の検討−
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
1)
日本鍼灸理療専門学校
越智秀樹、伊藤和憲、北小路博司
(財)東洋医学研究所 2)
大場雄二1 ,2)、筒井宏史1 ,2)、白石武昌2)
明治鍼灸大学整形外科学教室
勝見泰和、北條達也、小嶋晃義
【目的】前回、軽―中等度の腰痛患者に対して、
足太陽膀胱経上の「承山」、「飛陽」、「崑崙」刺激
一方、「飛陽」での変化は「健常群」で応答性は
経時的に動揺があるものの低下傾向が認められた。
【結語】同一経絡上の経穴では「委中∼承山、飛陽、
崑崙」とその解剖学的位置とは直接関係しない、
それぞれ固有の経穴特性があることを確認した。
【目的】膝関節特発性骨壊死が一つの疾患として
報告されて以来、二次性の変形性膝関節症の原因
の一つとして注目されるようになった。鍼灸臨床
においても脛骨内側顆骨壊死症と変型性膝関節症
の鑑別が不明瞭であり困難を伴う。そこで今回本
疾を鍼灸師の立場で分析しうる方法として新しく
考案した検査法を施行し検討を行なったので報告
する。
【対象・方法】対象は、本学附属病院整形外科お
よび附属鍼灸センターに膝痛を主訴とし受診し、
四肢専用 MRI(ARTOSCAN, ESAOTE Bio- Medica 社
製)で脛骨内側顆部に骨壊死様所見が確認された
患者5名(骨壊死群)と、変形性膝関節症をX-pに
て分類した、初期例8名(初期OA群)、中期例8名
(中期 OA 群)、末期例8名(末期 OA 群)を対象と
した。これらの症例に脛骨粗面部を叩打し、健側
と患側のひびき感覚の違いを確認する脛骨叩打テ
ストを施行した。また臨床所見として発症状況、
発症の誘因の有無、発症時の疼痛の程度を4段階
で評価した。
【結果】脛骨叩打テストの結果、骨壊死群はすべ
ての症例で健側と患側との叩打による左右差が確
認でき陽性であった。また変形性膝関節症の初期
OA 群はすべてにおいて陰性であり、中期 OA 群は
1名のみ擬陽性以外はすべて陰性であった。しか
し末期 OA 群は2名が陽性、 2名が擬陽性、4名が
陰性となった。
【考察・結語】骨壊死の病巣は、微少骨折が発生
しその結果形成されるという説がある。今回我々
が行なった脛骨叩打テストは、叩打により、骨伝
導で微少骨折を来している壊死病巣部へ刺激が伝
わり、陽性所見が確認出来たと考えれれる。また
変形性膝関節症の末期例2症例で陽性が確認され
た理由として、これらの症例は関節軟骨の破壊が
進行し骨組織へ及ぼし出現したと考えられる。末
期 OA を除外すれば、脛骨叩打テストは本疾患の
病態把握に有用な一方法であると考えられた。
キーワード:遠位経穴刺激、腰痛、腎兪-委中・
キーワード:脛骨内側顆骨壊死症、骨壊死、変形
に通電刺激を行い、腎兪における閾値の変化、す
なわち、応答性の変化等を報告して来た。今回は
その腎兪の応答性を「承山」、「飛陽」、「崑崙」へ
の刺鍼刺激により、測定することにし、興味ある
成績が得られたので、その一部を報告する。
【方法】実験は、インフォームドコンセントを得
た健康成人男(17名)
、女(15名)と、「腰痛患者」
男(12名)、女(27名)を被験者とした。応答性
の測定部位は、左右足の太陽膀胱経の腎兪とした。
測定方法は、測定部位にSSP電極およびシールを
貼付の後、測定した。測定条件は、従来の成績を
参考に、電気刺激装置よりパルス幅0.02ms、矩形
波による単一刺激電圧48.5V∼168.9Vで行った。
測定時間は、刺鍼前10分、それぞれの経穴への
刺鍼直後、10分経過・抜鍼直後、抜鍼10分後、抜
鍼20分後、抜鍼30分後、抜鍼40分後に測定した。
刺鍼方法は、安静伏臥位で、鍼は、40 mm、 18号
で約15mm刺入後雀啄をし、得気を得た後、置鍼し
た。
【結果・考察】先の委中鍼刺激の劇的な閾値の上
昇(治療効果)や、前回の通電効果に比し、更に
遠位での「刺鍼」の役割は多様で、「承山」への
刺鍼により、患者群は男女とも腎兪での応答性は
上昇、また女性の健常群も腎兪の応答性を上げた
(p<0.05)。女性の「崑崙」では腰痛の有無に拘ら
ず明らか(p=0.02-0.03)にその応答性を高めた。
承山・飛陽・崑崙
性膝関節症、脛骨叩打テスト
349
− 103 −
2O-B-15:00
高知国体セーリング競技会場でのコ
ンディショニング効果
2O-B-15:12
鍼刺激が運動に与える影響について
東京医療専門学校
明治東洋医学院専門学校
古田高征
兵庫医科大学生理学教室
辻田純三
古屋英治、小川裕雄、石川慎太郎
金子泰久、坂本
−自転車競技での応用−
歩
【目的】近年、競技選手への鍼灸施術の報告が多
【はじめに】第57回国民体育大会夏季大会セーリ
ング競技選手に対するコンディショニング効果を
調査したので報告する。
【方法】高知県夜須町セーリング会場に平成14年
9月21∼23日、9:00∼17:00(最終日14:00迄)にコ
ンディショニングルームを開設した。利用者は年
齢、性別、種目、競技歴、主訴等必要事項を各自で記
入した。コンディショニングは鍼治療が主で取穴
は主訴の局所とし、単刺術・置鍼術及び散鍼を用い
た。その他必要に応じてアイシング・テーピング・
ストレッチ・マッサージ(以下他手技)を用いた。
効 果の 判定 は主 訴 に対 する 施術 前後 の visual
analogue scale(VAS)値を求め、有意差の検定は
t検定で行った。
【結果】利用者は延べ人数88名でヨット競技は 3
6名、平均年齢21.1±6.4才、競技歴7.1±4.4年、ウィ
ンドサーフィン(以下WS)競技は52名、27.4± 4.
7才、8.9±3.9年であった。主訴は腰痛51名、頚・肩・
背のこり感・鈍痛・つっぱり感(以下肩痛)22名、
その他15名であった。コンディショニングは腰痛
の鍼治療単独41名、鍼治療と他手技の併用9名、他
手技1名、肩痛の鍼治療単独17名、鍼治療と他手技
の併用4名、他手技1名であった。治療穴は腰痛で
大腸兪・関元兪・腎兪・気海兪等、肩痛で天柱、肩井、
膏肓、膈兪等であった。鍼治療単独の VAS値は腰
く行われている。その評価は選手の自覚的疲労度
や筋痛の発生状況に関するものが多く、競技成績
を検討したものは少ない。そこで競技現場での施
術を検討するため、自転車競技の参加選手に鍼灸
施術を行い、その影響について競技成績などから
検討した。
【方法】対象は、インフォームドコンセントが得
られた成人男子6名で、自転車4時間チーム耐久レー
スの競技参加者とした。実施手順は被験者を2チー
ム(1チーム3人)に分け、周回コースを2周毎に
交代しながら走行させた。周回のペースは基本的
には各人の自由とした。走行後の被験者は自由に
休息を取らせた。対照群と鍼群を設定し、被験者
をランダムに2群に分けた。鍼群では、休息時間
に鍼刺激を行なった。鍼施術は、大腿四頭筋を中
心に大腿や下腿の全体をローラー鍼(擦過鍼)に
て擦過刺激した。測定項目は周回時間や自覚的運
動強度として、周回を経るごとの変化について観
察した。
【結果】周回時間は、初回の所要時間と比べると、
対照群では徐々に周回時間が増大する傾向を示し
た。しかし鍼群では、若干増大がみられるものの
ほぼ初回の所要時間と同等であった。自覚的運動
強度は、初回の走行後を基準とすると、対照群は
周回を重ねるごとに運動強度が上昇する傾向がみ
られた。一方、鍼群は対照群に比べ低い傾向が見
行うコンディショニング法のひとつとして鍼治療
られた。
【考察】周回時間や自覚的運動強度は、対照群に
比べ鍼群の変動率が運動の初期と同程度で推移し
たことから運動による疲労が対照群より小さかっ
たのではないかと推測される。これは今回行った
鍼刺激がローラー鍼による軽度の擦過を行うもの
であり、マッサージの様に組織中の血液循環を促
は有効であることが示唆された。
進したためではないかと思われた。
キーワード:コンディショニング、腰痛、スポー
キーワード:自転車競技、ローラー鍼(擦過鍼)
痛(n=41)で治療前54.0±22.7㎜が後 20.6 ±17.
1㎜(p<0.01)、肩痛(n=17)で前59.9±20.6㎜が
後16.7±15.2㎜(p<0.01)で減少した。
【考察と結語】セーリング競技で発生する症状に
対する局所への鍼治療は治療前後の VAS 値が減
少したことから、その効果が確認され、競技現場で
ツ鍼灸、ヨット競技、鍼治療
− 104 −
350
2O-B-15:24
スポーツ選手のコンディショニング
に対するSSP療法の効果
2O-B-15:36
トライアスロン競技中の円皮鍼施鍼
による競技翌日の筋痛回復効果
−ランダム化比較試験による検討−
東京医療専門学校
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
金子泰久、古屋英治、坂本
片山憲史、井上基浩、矢野
明治鍼灸大学整形外科学教室
勝見泰和、小嶋晃義
明治鍼灸大学大学院鍼灸学研究科
北出利勝
龍谷大学トレーニングセンター
堀場久司
【目的】SSP療法は鎮痛や筋緊張の緩和などに広
く用いられているが、スポーツ選手のコンディショ
ニング目的に用いた報告はない。そこでSSP療法
を一定期間施行し、コンディショニングにおける
有効性を検討した。
【方法】大学の運動選手18名を対象とし、封筒法
にてランダムに低頻度群6名、高頻度群6名、対照
群6名(評価のみ)の3群に分け、倫理上の配慮を
十分に行い研究を実施した。SSP療法は低頻度2Hz、
高頻度50Hzで刺激は10分間とした。強度は至適強
度より少し強い程度とし、選手の状態により主に
圧痛や反応点のトリガーポイントに施行した。施
術の頻度は週2回とし、評価はオリジナルの健康
調査表にて毎回施術前に行った。群間の有意差は
Mann-WhitneyのU検定を用い、危険率5%未満を有
意とした。
【結果】スコアの合計は低頻度群67点、高頻度群
64点、対照群56点であった。低頻度群と高頻度群
の間では差はなかったが、対照群とは両群ともに
有意に得点が高かった。各項目の平均値では精神
面や全身状態は低頻度、高頻度群ともに差はなかっ
たが、身体面の筋肉疲労、痛み、疲労感に関して
対照群との間で有意な差があった。特に筋疲労と
疲労感については低頻度群で、痛みについては2
群ともに対照群と比較し高得点であった。
【考察】両群ともに鎮痛作用は認められたが、高
頻度は低頻度に比較し筋疲労や疲労感の緩和作用
は少なかった。鎮痛作用は内因性オピオイドの関
与が、筋疲労は低頻度では単収縮を、高頻度では
強縮をおこす作用が報告されており、今回の結果
もそれらに由来すると考える。
【結語】低頻度群と高頻度群間では合計点に差は
なかったが、対照群との比較では、両群ともに有
意に高得点であった。低頻度群は筋肉疲労や疲労
感と痛みに、高頻度群は痛みに関して対照群と比
較して有意に高得点であったが、精神面や全身状
態に関しては各群間に差はなかった。
キーワード:SSP療法、スポーツ選手、コンディ
ショニング、RCT(ランダム化比較
試験)
歩
忠
【目的】トライアスロン競技後に発生する筋痛に
及ぼす円皮鍼施鍼効果を検討した。
【方法】対象は平成13年8月11日、平成14年8月10
日に西湖で行われたトライアスロンレース(51.5
㎞)に参加した選手、男女121名(年齢 27.0 ±8.
3才)とした。被験者には事前に調査内容、方法
について十分な説明を行い、同意を得て調査を行っ
た。円皮鍼はセイリン株式会社製パイオネックス
鍼(鍼長0.6㎜、0.8㎜)およびプラセボで、これ
らの鍼の被験者への割付は乱数表を用いた。施鍼
部位は左右のL2-S1の各棘突起間外方2cmおよび第
2仙骨裂孔計10ヶ所であり、レース中の施鍼とし
た。筋痛の評価はVisual Analogue Scale(VAS)
値を用い、レース前後と翌日に大腿前部・後部、
下腿前部・後部、腰部、臀部の6部位についてア
ンケート形式で調査した。統計処理はレース前・
後・翌日の各部位毎に、 0.6 ㎜群、0.8㎜群、 プ
ラセボ群の筋痛をVAS値として求め、3群間で2
元配置分散分析及び多重比較を行った。
【結果】レース後のVAS値はレース前に比べ各群
とも全ての部位で有意に増加した。レース後から
翌日のVAS値の変化は大腿前部においてプラセボ
群37.9±21.4㎜→42.8±22.6㎜、0.6㎜群で 48.3
± 21.3→ 38.3± 23.4㎜、 0.8㎜ 群で49.2± 23.4
㎜→34.2±22.9㎜となり、0.8㎜群のVAS値が有意
(p<0.05)に減少した。他部位においても円皮鍼
群のレース翌日のVAS値はレース後と比較して有
意に減少あるいは減少傾向であった。
【考察・結語】トライアスロン競技中の腰部への
円皮鍼施鍼によって翌日の筋痛が抑制された。競
技中ばかりでなく日常のトレーニングでも円皮鍼
の腰部への施鍼は、トレーニングによって発生す
る腰下肢の負担を軽減し、効率良いトレーニング
を実施できると考えられる。
キーワード:トライアスロン、円皮鍼、筋痛、ト
レーニング、鍼治療
351
2O-B-15:48
鍼灸療法とコンディショニング
−非侵襲的施術と解剖生理学的原理−
− 105 −
2O-C-09:00
便通異常に対する鍼治療の効果に関
する臨床研究
防衛医科大学校解剖学第一講座
竹内京子
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
岩
昌宏
筑波大・体育センター
進藤正雄
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
今井賢治
埼玉東洋医療専門校
一の瀬宏
国立身障者リハビリテーションセンター理療教育
明治鍼灸大学外科教室
部
【目的】鍼灸治療が便通異常に効果があるとされ
ているにもかかわらず、研究報告はほとんどない
のが実状である。今回はさらに詳細に便通異常に
対する鍼治療の効果を明らかにするために、便通
異常を有する被験者を鍼群とシャム鍼群に分け、
比較検討したので報告する。
【方法】対象:本学学生419名を対象に排便に関
するアンケート調査を行った。排便に不快感を
有する者22名を鍼群(11名)とシャム鍼群(11
名)の2群に無作為に分けた。
治療方法:治療穴は足三里とし、鍼群では鍼体長
1.2mmの円皮鍼(セイリン社製pyonex)を使用
し、シャム群ではテープのみを貼付した。
研究行程:治療前、中、後をそれぞれ3週間とし、
治療期間には週2回、計6回の円皮鍼及びテープ
の貼り替えを行った。全期間にわたって排便日
誌を記録させた。
評価:途中8名が脱落したため14名(鍼群9名、シャ
ム群5名)を対象とした。「排便回数」
、「排便量」、
「便性状」、「残便感」、「排便時の腹痛」、「兎糞
便の有無」の6項目について比較検討した。
【結果】排便量:シャム群5名全員が変化なかっ
たのに対して、鍼群では9名中5名が改善してい
た。
便性状:シャム群5名全員が変化なかったのに対
して、鍼群では9名中7名が普通便へと改善して
いた。
兎糞便の有無:シャム群5名全員が変化なかった
のに対して、鍼群では6名中4名が減少していた。
排便時の腹痛:排便時の腹痛の割合の平均値を見
ると、シャム群では治療前36.7%、治療中33.5
%、治療後43.5%と増加しているのに対して、
鍼群では治療前42.5%、治療中26.2%、治療後
24.1%と減少していた。
【考察と結語】
足三里への鍼刺激が便秘や下痢、交代性便通異
常などのそれぞれタイプの異なった便通異常を改
善する傾向が認められた。特に排便量や便性状な
どに影響を及ぼし、付随する残便感や腹痛などを
軽減さるのではないかと考えられる。
舘田美保
日本柔整鍼灸専門学校
小比賀黎子
【目的】運動選手のコンディショニングは、個々
の選手の様々な要求を100%満たすことが望まれ
ているが、我々は、この条件を満たすべく可能な
限り安全でかつ著効が得られる施術方法を検討し
ている。今回は非侵襲的施術の効果および作用機
序について解剖生理学的に考察を加えたので報告
する。
【方法】対象は運動クラブ所属(サッカー、陸上
競技その他)の高校生、大学生、社会人と一般成
人男女合計148名である。施術の種類は、 鍼、
台座灸、電子鍼、手技療法、チップ類貼付(チタ
ン系、遠赤系、布・テープ等)である。刺激の強
さは本人の感覚を優先し、気持ち良く受け入れら
れる程度とした。施術部位は個人により異なるが、
通常2-3個所である。評価は、本人の感想、姿勢・
関節可動域の変化、エコー像の変化、障害からの
回復状況、運動パフォーマンスの改善などで行なっ
た。
【結果と考察】非侵襲的療法は皮膚など組織への
侵襲がない、施術直後も運動が可能、緊張緩和・
消炎鎮痛に著効ということで非常に好評であった。
エコー像にも変化が認められた。障害が重篤なほ
ど強い刺激に鈍感であったが、弱い刺激の方が効
果は著しかった。金属系の刺激効果は著しく、衣
服の上からでも著効があった。皮膚へ持続刺激は、
時に副作用として、非刺激部位につり感や冷感が
生じたが、これは刺激量過多が原因と思われる。
人と人あるいは人と物体間に電位差がある時、両
者が接触すると必ず電流が流れる。施術部位に生
じた電流が更なる刺激となって自律神経系に作用
していると考えられるが、今回の結果から、非侵
襲的刺激は副交感神経系へ優位に作用しているも
のと示唆される。
【結語】競技力低下をもたらすことなく、疲労や
障害からの回復を図るためには、施術は楽にトレー
ニングができる身体造りを目指す必要があるが、
今回の方法はこの目的に適うものである。
キーワード:スポーツ鍼灸、コンディショニング、
副交感神経系、非侵襲的施術
田村隆朗、咲田雅一
キーワード:便通異常、鍼治療、円皮鍼、シャム
鍼、足三里
− 106 −
352
2O-C-09:12
便通異常に対する鍼灸治療の効果に
ついて
−1事例研究法(反転法)による検討−
2O-C-09:24
術後腸管機能に対する円皮針の影響
明治鍼灸大学外科学教室
中西博文、田村隆朗、咲田雅一
明治鍼灸大学内科学教室
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
松本 淳、小野公裕、苗村健治、山村義治
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
矢野 忠
【目的】開腹外科手術後の数日間は麻酔や手術侵
明治鍼灸大学鍼灸臨床医学Ⅰ教室
襲の影響で腸管機能が低下する。多くの場合、腸
石崎直人
岩
昌宏
管機能は徐々に回復するが、なかには遷延する症
【緒言】過敏性腸症候群(以下、IBS)を始めと
する便通異常は、近年増加傾向にある。それらの
患者は、全身の愁訴や心理的異常を伴うことが多
く、従来の治療に抵抗するものも多い。今回、
IBS を中心に便通異常を有する患者に対し鍼灸治
療を行い、反転法により臨床効果を検討した。
【対象及び方法】当院内科に通院しIBSと診断さ
れた患者4名。全員が罹病期間1年以上で、半年以
上の投薬によっても症状の完全な改善が得られな
かった患者であった。鍼灸治療は、各患者に対し中
医学的な弁証を行い、随時配穴した。治療期間は
10回ないし20回を1クールとし、無治療期間と交
互に繰り返した。便通異常の評価は、排便日誌を
もとに、腹痛の程度(VAS、マクギル・メルザック
式痛みアンケート〔MPQ〕)、腹部膨満感、排便回数、
便性状等を記録した。また全身状態(フェイスス
ケールと明治鍼灸大学式弁証スコアー〔MOS〕)、心
理状態(Self-rating Depression Scale〔SDS〕、と
Profile Of Mood States〔POMS〕)、QOL(Gastrointestinal Symptoms Rating Scale〔GSRS〕)につ
いても合わせて評価した。
【結果】1クール終了時には、4例中3例において
腹痛、腹部膨満感、全身状態が軽減したが、無治
療期間中には増悪するものもあった。QOLも同じ3
例で治療期間毎に改善したが、無治療期間中には
増悪した。残りの1例は治療期間中に、腹痛のみM
PQにおいて改善を認めたが、無治療期間中は増悪
した。心理状態については一定の傾向は見られな
かった。症状の変化に伴い服薬量は2例で減少し、
1例で増加した。
【考察と結語】今回の治療期間及び無治療期間の
経過から、鍼灸治療が便通異常における腹痛等の
症状軽減に有効である可能性が示唆された。
例もあり、なるべく早期に回復することが望まし
キーワード:過敏性腸症候群、腹痛、便通異常、
キーワード:円皮針、鍼治療、術後腸管機能、開
反転法、鍼灸治療
い。そこで術後腸管機能の早期回復を目的に、手
術直後から予防的に円皮針を行うことで術後の腸
管機能の回復過程にどのような影響を与えるのか
を比較検討した。
【方法】全身麻酔下で開腹外科手術が施行された
患者10名を対象とした。手術終了直後から両側の
合谷穴および足三里穴に円皮針を貼り付けた。円
皮針はセイリンJr(セイリン社製)を用いた。円
皮針は週3回貼り換え、術後2週間継続して行った。
評価は開腹外科手術を受け、円皮針を受けなかっ
た患者を対照群として円皮針群と比較した。胃腸
管の切断を伴わない手術(A)と胃腸管の切断を伴
う手術(B)に分類し、腸動確認時間、初発排ガス
時間、初発大便時間、経口摂取開始時間を比較し
た。
【結果】対照群に比べて円皮針群においてすべて
の項目で明らかな時間の短縮がみられた。特にA
では腸動確認時間、初発大便時間に短縮がみられ
た。Bでは腸動確認時間、経口摂取開始時間に短
縮がみられた。
【考察と結語】円皮針は簡便で患者への負担が少
なく、持続して刺激を与えることが可能である。
今回の研究ではそれぞれの回復過程において時間
の短縮がみられたことより、開腹外科手術後の腸
管機能の早期改善に円皮針が有用であることが示
唆された。
腹外科手術
353
2O-C-09:36
麻酔ラットの小腸運動に対する鍼通
電刺激の効果とメカニズム
− 107 −
2O-C-09:48
ラット結腸運動に対する鍼通電刺激
の影響
−通電頻度の違い、及びその作用機序の検討−
筑波技術短期大学鍼灸学科
野口栄太郎、大沢秀雄
筑波大学附属盲学校
志村まゆら
【目的】前回の本学会において、鍼通電刺激によ
り小腸運動が亢進または抑制することを報告した。
今回は鍼通電刺激が、小腸のどの部位にどのよう
な影響およぼすのかを検討する目的で、測定部位
を空腸部と回腸部に分けて鍼通電刺激効果とその
メカニズムについて検討した。
【方法】実験は、ウレタン麻酔人工呼吸下のラッ
トを用い、空腸運動は幽門部より約15cm肛門側で、
回腸運動は虫垂より15cm口側にバルーンカテーテ
ルを挿入し、2ヶ所の小腸内圧の変化を同時に観
察した。実験終了後に胃から虫垂部までを摘出し
測定部位を計測した。刺激は鍼通電刺激と小腸部
での迷走神経の関与を明らかにする目的で、大内
臓神経と迷走神経を刺激した。
【結果】腹部鍼通電刺激と大内臓神経刺激により
空腸・回腸運動の抑制が観察された。腹部鍼通電
刺激による空腸・回腸内圧減少反応が内臓神経の
切断で消失した。空腸運動とは異なり、後肢足蹠
鍼通電刺激による回腸運動の反応は、約81%が無
反応で19%に亢進反応が認められ、さらに迷走神
経刺激による回腸運動の亢進反応は認められなかっ
た。
【考察と結語】腹部鍼通電刺激による回腸運動反
応は胃・十二指腸・空腸運動と同様に交感神経を
介した抑制反応と考えられた。足蹠刺激により少
数例で観察された回腸運動亢進反応の機序は、内
臓神経を介することが示唆された。
キーワード:鍼通電刺激、空腸運動、回腸運動、
迷走神経、ラット
明治鍼灸大学外科学教室
前原伸二郎、咲田雅一
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
岩
昌宏
【目的】我々はこれまでに直腸拡張刺激による結
腸運動抑制反応に対する鍼通電刺激(EA)の効果
について検討し、EAが結腸運動を亢進させる可能
性を報告した。また、その作用機序として消化管
ホルモンであるコレシストキニン(CCK)が中枢
レベルで関与していると推測されるが、詳細につ
いては不明である。そこで今回、まず結腸運動に
対するEAの通電頻度の違いによる影響を観察し、
次にその作用機序に中枢のCCKが関与しているか
明らかにするために、CCK受容体拮抗薬の脳室内
投与実験、及びEA後の脳脊髄液中のCCK濃度測定
を行った。
【方法】実験動物はWistar系雄性ラットを用いた。
結腸運動に前駆して発生する平滑筋の電気活動
(LSB)を記録するための電極を結腸漿膜面に縫着
した。実験1:刺激前値として30分間のLSBを記録
し、その直後より後肢へのEAを30分間行い、刺激
後も60分間、LSBを記録した。なお、通電頻度は3、
15、100Hzとしその影響の違いを比較した。実験2:
CCK-A(CR-1505)、CCK-B(L-365,260)の2種類の
受容体拮抗薬を、それぞれEA前に5μg/5μl/10分
間で脳カニューレより脳室内投与し、その影響を
観察した。実験3:脳脊髄液をEA前、EA30分後、EA
60分後に採取し、CCK濃度をRIA法を用いて測定し
た。
【結果・考察】実験1:100HzのEAによりEA後60分
間にわたり結腸のLSBの有意な増加を示したが、3、
15HzではLSBの変化が認められなかった。実験2:
100Hz の EA による LSB の増加は CCK-A 受容体拮
抗薬の脳室内投与によって拮抗されたが、CCK-B
受容体拮抗薬投与では拮抗されなかった。実験3:
100HzのEAによって脳脊髄液中のCCK濃度はEA30分
後に有意に増加したが、3HzのEAではCCK濃度の増
加が見られなかった。以上の結果より、100HzのE
Aによって中枢に放出されたCCKが中枢のCCK-A受
容体を介して結腸運動を亢進する可能性が示唆さ
れた。
キーワード:結腸運動、鍼通電刺激、CCK、LSB、
脳脊髄液
− 108 −
354
2O-C-10:00
胃電図を指標とした腹部外科手術後
の胃機能に対する円皮鍼の影響
2O-C-10:12
尿失禁を呈する過活動膀胱に対する
鍼治療の有用性
明治鍼灸大学外科学教室
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
市川由美子、塩見真由美、田村隆朗、咲田雅一
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
今井賢治
【目的】腹部外科手術侵襲により消化管機能は抑
制され、胃においても運動の抑制と異常筋電図の
出現することがすでに知られている。特に異常筋
電図は胃電図による評価が可能であり、手術直後
には速波や遅波などの異常波形が出現し、時間経
過と共に3cycles/min.の正常波へと復することを
すでに確認した。今回は、手術直後から円皮鍼に
よる刺激を行い、術後の胃機能の回復を促進でき
るかどうかを検討した。
【方法】全身麻酔下で腹部外科手術が施行された
患者14名(男性8名、女性6名。平均年齢75.6歳)
を、円皮鍼群7名、非円皮鍼群7名に分けた。円皮
鍼はセイリンJrを使用し、手術終了直後から両側
の合谷穴および足三里穴に貼付した。手術終了直
後から胃電図の記録を開始し、翌朝9時まで継続
して行った。 尚、記録にはポータブル型胃電計
(ニプロ社製)を用い、解析は専用のソフトでFFTを
行 い power spectrum を 描 出 し た 。 0∼9
cycle/min(cpm)の帯域を胃電図の成分とみなし
遅波成分(0∼2cpm)、正常波成分(2∼4cpm)、速
波成分(4∼9cpm)の占める割合を算出し、その
経時的推移を両群で比較した。
【結果】両群共に手術直後には胃電図の異常波形
の占める割合が高く、正常波の占める割合を上回っ
ていた。しかし、正常波成分の経時的な推移に着
目すると、非円皮鍼群に比べ、円皮鍼群でその占
める割合が高く推移していた。特に、術後10時間
では、円皮鍼群で正常波の占める割合が60%を越
え術前のレベルに復したのに対し、非円皮鍼群で
は約50%と低値を示したままであった。
【考察】両側の合谷穴および足三里穴に円皮鍼を
貼付することで、術後の胃機能の回復を促進でき
得る可能性が示唆され、その評価に胃電図を応用
することは妥当であるものと思われた。
【結語】円皮鍼群では非円皮鍼群に比べ、術後に
出現する胃電図の異常波形の占める割合が低く、
正常波成分の占める割合が高く推移していた。
キーワード:胃電図、円皮鍼、腹部外科手術後
本城久司、北小路博司
京都府立医大泌尿器科学教室
浮村 理、小島宗門、三木恒治
明治鍼灸大学泌尿器科学教室
斉藤雅人
【目的】我々は頻尿、尿失禁に対する鍼治療の有
用性を報告してきた。今回、尿失禁を呈する過活
動膀胱患者に対する鍼治療の効果を検討した。
【方法】尿失禁を伴う過活動膀胱を有する患者
40 例(男性27例,女性13例)に鍼治療を施行した。
過活動膀胱の原因疾患は脳血管障害およびパーキ
ンソン病を含む脳神経障害患者22例と脊髄損傷患
者18例 であった。 脳神経障害患者全例に脳 MRI
を施行し障害部位を特定した。鍼治療は第3後仙
骨孔部の中 穴(BL-33)に直径0.3mm、長さ60mm
のディスポーザブル鍼を刺入した後、鍼を半回旋
する旋撚刺激を左右合計10分回行うことを1回の
治療とし、週1回で計4回施行した。1ヶ月治療直
後の評価のため鍼治療前と鍼治療4回終了1週後に
ウロダイナミクス検査を施行し比較検討した。さ
らに、鍼治療前と鍼治療4回終了の1週間での排尿
記録による尿失禁量を評価した。その後、月1回
の維持療法を原則として行い長期の治療効果も評
価した。
【結果】尿失禁が消失した症例は8/40(20%)で、
尿失禁量が50%以上改善した症例は20/40(50%)
であった。ウロダイナミクスによる治療評価では、
膀胱容量が110.1±57.9mlから178.7±84.4mlに有
意(p<0.0001)に変化した。脳神経障害患者22例
のうち、膀胱容量の増大のみられなかった症例は
6例あり、5例に前頭葉の広範な梗塞とラクネが明
らかに描出されていた。また、月1回の維持療法
が有効な症例を10例経験した。なお特記すべき合
併症はなかった。
【考察】中 穴の鍼治療は膀胱容量を増大させる
ことにより、尿失禁の改善に寄与したと考えられ
た。また、脳神経障害患者において、前頭葉の著
しい障害は鍼治療による尿失禁治療が困難な対象
であると考えられた。
【結語】鍼治療は膀胱容量を増大させ、尿失禁治
療に有用な低侵襲的治療の選択枝と思われる。
キーワード:尿失禁、過活動膀胱、鍼治療
355
− 109 −
2O-C-10:24
鍼刺激が尿噴流に及ぼす影響に関す
る検討
2O-C-10:36
第Ⅱ期前立腺肥大症に伴う排尿障害
に対する鍼治療の1症例
明治鍼灸大学泌尿器科学教室
明治鍼灸大学泌尿器科学教室
手塚清恵、冨田賢一、斉藤雅人
冨田賢一、手塚清恵
明治鍼灸大学鍼灸臨床医学Ⅱ教室
本城久司、北小路博司
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
北小路博司、本城久司
【目的】鍼刺激が尿噴流に及ぼす影響について、
明治鍼灸大学大学院修士課程
谷口博志
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
矢野
忠
超音波カラードプラ法を用いて検討したので報告
する。
【方法】18∼26歳(平均年齢23歳)の学生ボラン
ティア20名(男性10名、女性10名)を対象に行っ
た。実験3時間前に350mlの飲水負荷を行い、以後
絶飲食とするように各対象者に指導した。尿噴流
の測定項目は5分間における尿噴流の出現頻度、
最高流速、持続時間とした。さらに腎臓の血流動
態 を 検索 す るた め に 腎葉 間 動 脈の Resistance
Index(RI)を測定し検討した。刺激部位は中極
穴(CV3)を選択し、鍼刺激は通電刺激、捻鍼刺
激とし、それぞれ日を変えて15分間行った。また
無刺激をコントロールとした。
【結果】尿噴流の出現頻度、最高流速は刺激前値
に比べて通電刺激群と捻鍼刺激群で増大したが、
コントロール群では変化がなかった。持続時間は
通電刺激群と捻鍼刺激群で短縮がみられたが、コ
ントロール群では短縮する傾向が観察された。腎
血流動態の指標のひとつであるRIは全群で変化が
みられなかった。
【考察と結語】中極穴への鍼刺激は尿管機能に作
用し、蠕動運動を促進させると考えられた。
キーワード:鍼刺激、尿噴流、カラードプラ法、
超音波
【目的】高齢化社会を迎え、加齢によって起こる
と考えられる排尿障害の出現は高齢者のQOL低下
を招く要因となっている。これまで、第Ⅰ期前立
腺肥大症に対し鍼治療の有効性が報告されている。
しかし、手術適用とされる第Ⅱ期前立腺肥大症へ
の鍼治療が有効であったとされる報告はされてい
ない。今回、夜間頻尿を主訴とし第Ⅱ期前立腺肥
大症患者に対し鍼治療を行い、症状の改善が見ら
れたので報告する。
【症例】[患者]75歳男性。[現病歴]平成13年9
月夜間排尿時に腹圧をかけないと排尿できない状
態になり、近医泌尿器科を受診。前立腺肥大症と
診断され、α1ブロッカーを処方された。医師に
は手術を勧められたが、拒否。平成14年6月、夜
間頻尿の改善を目的に明治鍼灸大学附属鍼灸セン
ター、専門外来を受診した。[所見]排尿症状は
夜間頻尿が5∼6回、残尿感(+)、尿失禁(−)、
排尿 時痛 (−)、 国際前立腺 肥大症症状スコ ア
(以下IPSS)が23点。前立腺重量は37g。超音波検
査にて65mlの病的残尿を確認した。
【治療方法】中 穴(BL-33)にセイリン化成社
製鍼灸鍼(直径0.30mm×鍼長60mm)を用いて、刺
入後10分間捻鍼を行った。治療は7回目までが週
に1回、以降は月1回の間隔で計9回行った。評価
は排尿日誌、尿流測定、IPSSにて行った。
【結果】治療前は夜間排尿が5.14(±0.69)回。
IPSSが23点。平均尿流率(以下AFR)が5.7ml/s。
治療7回で夜間排尿が2.71(±2.71)回。IPSSが
15点。AFRが8.4ml/sと改善が見られた。
【考察と結語】今回、手術適用とされる第Ⅱ期前
立腺肥大症患者に対し鍼治療を行った結果、良好
な結果を得た。夏季から冬季になっても症状の増
悪は見られず、治療間隔も1ヶ月に1回程度の鍼治
療で症状は安定しており、患者のQOLの向上に鍼
治療が貢献していると考えられた。
キーワード:前立腺肥大症、鍼治療
− 110 −
356
2O-C-10:48
脳梗塞ラットによる過活動膀胱に対
する覚醒下鍼刺激の検討
2O-C-14:00
糖尿病性勃起障害に対して鍼治療が
有効を示した1症例
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
明治鍼灸大学附属鍼灸センター1 )
北小路博司、本城久司、谷口博志、冨田賢一
明治鍼灸大学大学院第3基礎医学教室
渡邉 泱
明治鍼灸大学生理学教室
川喜田健司
明治鍼灸大学薬理学教室
栗山欣彌
【目的】過活動膀胱の患者に対して仙骨部の鍼刺
激を行うと膀胱容量の増大が生じ、尿失禁が改善
することを報告した。しかし、膀胱過活動モデル
の覚醒下における鍼刺激の基礎的検討は報告がな
い。今回、脳梗塞ラットによる排尿反射の亢進に
対する鍼刺激の影響を検討したので報告する。
【方法】S-D系雄性ラット (9∼10週齡:体重約
340g)7匹を用い麻酔下(pentobarbital sodium)
で膀胱瘻カテーテル固定し、ボールマンゲージ内
で覚醒下に生理食塩水を0.2ml/minで持続注入し
膀胱内圧測定を行った。このときの膀胱容量を
Control値とした。後日、左中大脳動脈を永久閉
塞した脳梗塞ラットモデルを作成し同様の方法に
て膀胱容量を測定した。このときの膀胱容量を梗
塞後値とした。次に、仙骨部に鍼灸針で1分間刺
激を行い、鍼刺激後の膀胱容量を鍼刺激後値とし
た。評価はControl値、梗塞後値および鍼刺激後
値の各膀胱容量とした。統計学的検討は、多重比
較検定の Tukey 法を用いて(Stat ViewJ-5.0)、危
険率5%以下を有意とした。
【結果】膀胱容量は、Control値1.7±0.8ml(平
均±標準偏差)に比べ梗塞後値0.5±0.3mlと有意
な(p<0.05)膀胱容量の減少がみられた。鍼刺激
後値は0.9±0.5mlでControl値との間に有意な差
はなかった。
【考察・結語】脳梗塞ラットモデルの排尿反射の
亢進に対して、仙骨部の鍼刺激は排尿反射の亢進
を抑制し、膀胱容量を増大させることが考えられ
る。
キーワード:ラット、脳梗塞モデル、過活動膀胱、
覚醒下、鍼
明治鍼灸大学大学院鍼灸臨床医学Ⅰ2)
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室 3)
谷口博志1 ,2)、矢野 忠1,2) 北小路博司1 ,3)
本城久司1,3)、冨田賢一1,3 )
【目的】糖尿病を有する男性の約半数は勃起障害
(Erectile Dysfunction以下ED)を合併するとい
われている。今回、糖尿病性EDに対してクエン酸
シルデフィル(以下、バイアグラ)の薬物療法が
施行されるも抵抗を示した症例に鍼治療を行い、
有効性が見られたので報告する。
【対象】61歳・男性。平成13年1月に雪かきをお
こなっていたところ四肢に感覚がなくなるほど冷
えを感じ、その後EDが発症した。同年の9月に国
立舞鶴病院泌尿器科を受診し、糖尿病性神経障害
によるEDと診断され、バイアグラ50mgを処方され
た。バイアグラを2、3回服用することにより、改
善が見られたものの、その後効果がなくなったの
で、知人の紹介にて本学附属鍼灸センターの受診
となった。初診時の性機能所見は、早朝勃起なし、
性 交時の勃起な し、 国際勃起障 害機能スコア 5
(以下、IIEF5)は9点であった。
【治療と経過】鍼治療は週1回の間隔で合計31回
行った(平成14年12月現在)。1回目∼5回目は中
穴に旋撚術を行ったところ早朝勃起がみられ、
性交時に勃起が可能で硬度も約60%まで改善した。
また、IIEF5は17点と改善がみられた。より高い
効果を期待して6回目∼25回目は鍼治療部位を陰
部神経刺鍼点の鍼通電療法に変更したところ、性
交時の陰茎の感覚が改善したが、他の所見にさら
なる変化はみられなかった。そこで26回目以降は、
鍼治療部位を陰部神経刺鍼点と中 穴の鍼通電療
法に変更したが、早朝勃起、性交時の勃起硬度、
IIEF5いずれにおいても増悪、緩解はなく、性交
時の勃起硬度は60%∼70%で、ED罹患前までは回
復しないものの、性交渉を試みた時は、勃起障害
の定義である「75%以上性交が行えない状態」を
上回るまで性機能が回復した。なお、現在も鍼治
療は継続中である。
【結語】今回、糖尿病によるEDに対して鍼治療を
行った結果、早朝勃起や性交時の性機能に改善が
みられた。このことより、糖尿病性勃起障害に対
して鍼治療が有効であることが示された。
キーワード:勃起障害、糖尿病性神経障害、鍼治
療、IIEF5
357
2O-C-14:12
鍼治療により改善した糖尿病性胃運
動異常の1症例
− 111 −
2O-C-14:24
糖尿病に対する鍼治療の1症例
東洋医学研究所
明治鍼灸大学内科学教室
山田
篤、中村弘典、黒野保三
米田裕和、福井和佳子、小野公裕、山村義治
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅰ教室
今井賢治
石崎直人
【目的】1997年に厚生省が行った糖尿病実態調査
では、我が国の糖尿病患者は予備軍を含めると約
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
矢野
1370万人と言われている。このことから、鍼灸院
忠
に来院する糖尿病患者は増加するものと思われる。
【目的】糖尿病患者は胃運動異常を合併する場合
が多く、それが血糖コントロールの妨げになるこ
とがある。今回我々は、胃電図に異常を認めた2
型糖尿病の1例に対して鍼灸治療を施行し、症状
と胃電図所見に改善を認めたので報告する。
【症例】73歳、女性。1996年に糖尿病と診断され、
1999年より薬物療法を開始した。その後通院加療
していたが、2001年1月頃よりHbA1cが徐々に高値
を示し、14% 前後を示したため、2002 年8月当院
内科に教育入院となった。入院時に腹部膨満感が
あり、胃電図検査により、胃運動異常が疑われた
ため、鍼灸治療を試みた。
【結果】入院時の胃電図所見は、空腹時の律動異
常を認め、飲水負荷後に通常診られる周波数の徐
波化が欠如していた。6日間の経過観察後には、
飲水負荷に対し振幅は増大したものの、依然とし
て周波数の徐波化は認められなかった。しかし、
翌日に再度行った胃電図検査中に足三里の鍼刺激
を加えたところ、鍼刺激中に正常波成分が増大し、
その後の飲水負荷に対しては、周波数の徐波化を
認める反応を示した。その後、足三里、内関への
鍼治療を週2回の割合で継続したところ、治療4回
終了時(退院時)には、空腹時の正常波成分が鍼
灸開始時に比べて増大し、飲水負荷に対して周波
数の徐波化を認める反応を示し、腹部膨満感は消
失した。
【考察】約1週間の血糖コントロール行った限り
では、依然として腹部膨満感は改善しなかったが、
胃電図では若干の改善がみられた。しかし、翌日
の胃電図検査では鍼刺激中に改善を認め、飲水負
荷に対しても正常な反応を示した。さらに継続的
な鍼灸治療を施行したところ、腹部膨満感は消失
し、胃電図は正常波成分の増大及び周波数の飲水
負荷による徐波化が認められた。
【結語】鍼灸治療が糖尿病性胃運動異常を改善し
た可能性が示唆された。
今回の症例は、親戚から痩せたと指摘され心配に
キーワード:糖尿病、胃電図、胃運動、鍼治療
キーワード:糖尿病、血糖値、ヘモグロビンA1C、
なり、検査を受けたところ糖尿病と診断された患
者に対して鍼治療を行ったところ、血糖コントロー
ルが良好な状態に改善されたので報告する。
【症例】患者は82歳女性、主訴は糖尿病・痩せが
気になる。治療方法は全身の調整を目的とした太
極療法(黒野式全身調整基本穴)とした。鍼治療
期間は平成12年10月27日から平成13年5月1日まで
の188日間(42回)で、治療頻度は原則として週2
回とした。治療経過はヘモグロビンA1C と空腹時
血糖値から血糖コントロールの状態を検討すると
同時に、(社)全日本鍼灸学会愛知地方会研究部生
活習慣病班糖尿病カルテを使用して症状の推移を
客観的に検討した。
【結果】鍼治療直後のヘモグロビンA1C は10.0%、
空腹時血糖値は190mg/dl、糖尿病自覚症状点数は
16点だったのが、最終時のヘモグロビンA1C は5.9
%、空腹時血糖値は97mg/dlとなった。また、糖
尿病自覚症状点数は8点となり、効果判定は有効
だった。
【考察】鍼治療により全身を調整したことにより、
インスリン分泌率の低下であったものが改善され
て上昇したものと考えられ、糖尿病に伴う症状の
改善が見られた。
【結語】全身調整を目的とした太極療法としての
鍼治療を行った結果、血糖コントロールが良好な
状態になり、糖尿病自覚症状点数が減少した。こ
のことから、鍼治療が糖尿病に対して有効である
ことが示唆された。
太極療法(黒野式全身調整基本穴)、
糖尿病カルテ
− 112 −
358
2O-C-14:36
糖尿病モデル動物に対する鍼治療の
効果(IV)
2O-C-14:48
非代償性肝硬変症に対する鍼治療の
検討
−全身麻酔糖尿病ラットにおける検討−
東洋医学研究所 グループ
服部輝男
東洋医学研究所 グループ 、名古屋市立大学大
東洋医学研究所
黒野保三
学院医学研究科細胞機能制御学分野 2)
中村弘典1,2 )、黒野保三1,2 )、石神龍代1,2)
東京大学大学院情報学環
伊藤陽一
1)
堀
茂1,2 )、河瀬美之1,2 )、山田
篤1,2)
【目的】非代償性肝硬変症と診断され、腹水の貯
光
留、消化管出血、黄疸、肝性脳症などで入退院を
皆川宗徳 、鈴木
1)
2)
繰り返していた患者が腰痛を訴えて来院してきた。
【目的】我々は、第51回(社)全日本鍼灸学会学
術大会において、全身麻酔下では鍼治療効果を完
全には抑制できないことから、鍼治療効果には脳
を介さない機序の存在が推察されることを報告し
た。そこで、今回はSTZ糖尿病ラットに対する鍼
治療効果の機序が末梢に存在することを解明する
ため、全身麻酔糖尿病ラットに、さらに皮膚粘膜
の局所麻酔を加え鍼治療の有効性を検討したので
報告する。
【方法】実験には6週齢で体重約170gのWistar系
雄性ラットを用いた。ラットは9群に分け、Ⅰ群:
コントロール(3匹)、Ⅱ群:STZ糖尿病(7匹)、
Ⅲ群:STZ+鍼治療(8匹)、Ⅳ群:STZ+全身麻酔
+鍼治療、Ⅴ群:STZ+局所麻酔(皮膚粘膜)+
鍼治療(8匹)、Ⅵ群:STZ+全身麻酔+局所麻酔
+鍼治療(8匹)とした。糖尿病ラットは、STZ60
mg/kgを腹腔内に投与して作成した。全身麻酔は
ペントバルビタールを腹腔内に 50mg/kg 投与し、
皮膚粘膜の局所麻酔は鍼治療部位にキシロカイン
を塗布した。鍼治療は週2回、経穴は中 ・天枢・
気海・肝兪・脾兪・腎兪に切皮程度に治療を行っ
た。空腹時血糖値は、20時間絶食後簡易血糖測定
器で測定した。
【結果】鍼治療群は、前回の実験結果と異なり、
STZラット群、STZ+麻酔+鍼治療ラット群及びST
Z+全身麻酔+局所麻酔+鍼治療ラット群に比べ
空腹時血糖値の低下傾向が認められたものの有意
な差は認められなかった。また、体重においても、
鍼治療群は他の鍼治療ラット群と比べ体重の増加
傾向が認められたが、有意な差は認められなかっ
た。
【考察・結語】 今回の結果から、全身麻酔及び
局所麻酔により鍼治療効果が軽減し、さらに全身
麻酔と局所麻酔の両方を処置し鍼治療を行ったと
ころ、全身麻酔のみや局所麻酔のみに比べ、鍼治
療の効果が軽減傾向にあった。このことから鍼治
療効果の機序の存在が中枢と末梢の双方にあるこ
とが考えられる。
問診の結果、肝硬変症の治療が重要と考え腰痛と
キーワード:糖尿病、ストレプトゾトシン(STZ)
、
キーワード:肝硬変症、腹水、肝性脳症、血中ア
空腹時血糖値、ラット、鍼治療
並行して鍼治療を行ったところ興味ある結果が得
られたので報告する。
【症例】患者:69歳、女性。現病歴:近医よりK
病院に転院して汎血球減少、T.BiL、アンモニア
値の上昇、コレステロールの減少などが見られ非
代償性肝硬変症と診断された。治療方法:30mm、
16号ステンレスディスポ鍼を使用し単刺術及び置
鍼術にて、生体の総合的統御系の活性化を目的と
した太極療法(黒野式全身調整基本穴)と症状に
随った局所療法に基づいた鍼治療を行った。治療
期間:平成10年7月14日から平成14年11月27日ま
での1598日間(991回)。治療頻度:毎日とした。
評価方法:不定愁訴カルテ、血中アンモニア値、
出血時間、プロトロンビンについて観察した。
【結果】初診時の不定愁訴指数51点が3点に、血
中アンモニア値は240∼300 μg/dl が110∼160 μ
g/dl 程度で推移し、出血時間は正常範囲となり、
プロトロンビンに関しても正常値を示している。
【考察】鍼治療を施すことにより、免疫機能や再
生機能が賦活され、血中アンモニア値、出血時間、
プロトロンビン濃度などがほぼ正常範囲となり、
不定愁訴指数51点が3点と低下を示し、QOLの改
善が確認できたことなどにより肝臓機能が回復し
つつあると思われる。
【結語】今まで、肝硬変症に対して有効な治療法
がないとされてきたが、今回の非代償性肝硬変症
に対する鍼治療により部分的かつ僅かではあるが
治癒の方向に向かっていることが示唆された。
ンモニア値、黒野式全身調整基本穴
359
− 113 −
2O-C-15:00
脱毛を主訴とし、夜尿症、気管支喘息
及びアトピー性皮膚炎を合併した小
児患者に対する鍼治療の1例
2O-C-15:12
アトピー性皮膚炎の鍼灸治療と自己
免疫疾患への応用
明治鍼灸大学老年鍼灸医学教室
東京地方会
飯沼浩江
国立塩原視力障害センター
宮腰
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
明治鍼灸大学内科学教室
江川雅人
北小路博司
矢野 忠
治
【目的】脱毛を主訴とし、夜尿症、気管支喘息及
びアトピー性皮膚炎を合併した小児患者に鍼治療
が有効であった1例を報告する。
【症例】15歳男性。5歳頃から脱毛が始まり、近
医を受診するも原因不明であった。夜尿症は乳児
期から継続し、中学校入学頃より悪化した。気管
支喘息とアトピー性皮膚炎は3歳頃から認められ
た。いずれの疾患に対しても他に治療を受けてい
なかった。
【所見】①脱毛は、前頭部から頭頂部にかけて認
められ、頭頂部から後頭部には散在性にうぶ毛様
の発毛がみられた。②夜尿症は、自宅では週に3
∼4回認められたが、外泊時等には夜尿はなく、
心因性の関与も考えられた。③気管支喘息は、初
診時には、自覚・他覚的症状共に認められなかっ
たが、季節の変わり目に喘息発作がよく認められ
た。④アトピー性皮膚炎は、全身に皮膚の乾燥を
認め、後頚部と肘窩部に強く、軽度の紅斑がみら
れた。熱感、滲出液、丘疹、掻破痕は認めなかっ
た。掻痒は後頚部と肘部に認められたが、日常生
活が障害されるほどではなかった。
【治療方法】東洋医学的所見により腎精不足証、
血虚証と弁証し、証に基づいて治療した。脱毛に
対しては時に閻三針を行った。鍼治療は週1回、
36週に35回行った。
【結果】治療25回(5ヶ月後)には、後頭部から
頭頂部にかけて毛髪は明らかに増加した。夜尿症
は「1ヶ月に1∼2回」にまで改善した。気管支喘息
やアトピー性皮膚炎は、「前年の同時期よりも症
状悪化の程度が少ない」との患者のコメントが得
られた。アレルギーの状態を示す末梢血好酸球数
は22.9%→18.4%、血中IgE RIST値は304 IU/ml→
222 IU/mlと低下した。
【考察と結語】脱毛、夜尿症、気管支喘息、アト
ピー性皮膚炎を合併した1例に対し、東洋医学的
な観点から全身的に診断と治療を行い、症状の改
善が得られた。東洋医学的な治療方法が生かされ
た症例であったと考えられた。
【目的】本学会で1988年より表題に関して毎回発
表してきた結果、幼児のアトピー性皮膚炎及び気
管支喘息は全例治癒し、成人の(特異・非特異)
IgE 高値者や長期ステロイド使用者、SLE、潰瘍
性大腸炎等の自己免疫疾患罹患者、抗核抗体検出
者、肝・腎臓同時悪化を血液検査で確認した表題
疾病罹患者等の治癒への道程をそれぞれの切口で
発表してきた。旧文部省児童健康調査でアレルギー
関与の疾病は増加している、この状況に答える為
に幼児・児童のアレルギー疾病を早期治癒に至ら
せ健康に育てる治療手段として当該治療結果の精
査の緒についたが、今回も引き続き報告し併せてE
BM 評価作業への道程とした。
【対象者・治療方法】(I)幼児・児童で当該治療
を受けた患者群の、家族からの自筆自主記載方式
での結果を集計する。(II)免疫抑制薬使用による
局所リンパ節腫脹と全身性皮膚炎症へ移行した患
者2名。《治療方法》1)30mm14号ディスポ針で数
カ所の接触針、中級もぐさ少量を5秒∼30秒連続
燃焼38℃以下で熱感を与えない。2)皮膚温度の精
製水洗浄。3)植物多品目入りスープの飲用。《記
録方法》1)経過写真。2)IgE、好酸球、LDH、CH50、
抗核抗体、炎症反応、肝・腎機能検査。3)成長記
録。
【結果】1)長期・多量ステロイド塗布箇所に限定
した島状の皮膚炎悪化は、当該治療で前回発表後
4例増加、合計112例(男性42例、女性60例)全例
治癒。2)対象者(I)は健康状況向上が具体的に見
えた。(II)は7ヶ月間の治療で治癒したと判断し
たが、プロトピック軟膏(免疫抑制薬)塗布局所
のみ突然再発症した。3ヶ月間の当該治療で皮膚
症状は安定している。
【考察、結語】当該治療はアレルギー疾病を治癒
し、克つ健康増進作用があると証明できる。行政
が研究着手しているI型アレルギー遺伝子探査は
治らない理由づけや、優性学につながる危険があ
る。今、アトピー性皮膚炎の治療に免疫抑制薬使
用の安易な判断があり、本研究は未来への禍根を
断つ目的もある。
キーワード:脱毛、夜尿症、気管支喘息、アトピー
キーワード:アトピー性皮膚炎、ステロイド離脱、
性皮膚炎、鍼
苗村健治、山村義治
−表記疾病治療と予防を目的とするEBM評価作業−
プロトピック軟膏、鍼灸治療
− 114 −
360
2O-C-15:24
皮脂欠乏症に対する鍼治療効果の一
考察
2O-C-15:36
関節リウマチ患者の頚部痛に対する
鍼治療
−末梢血液像の変化−
明治鍼灸大学整形外科学教室
筑波技術短期大学鍼灸学科
鷹峰澄子、小嶋晃義、北條達也、勝見泰和
和久田哲司、柴崎正修
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
伊藤和憲、越智秀樹、北小路博司
【目的】皮脂欠乏症に対して鍼治療を2年余り行っ
てきたところ、一定の治療成績が得られた。そこ
で、鍼治療の作用機序を確認する一方法として、
治療効果の観察とともに白血球系の血液像の変化
を観察して、鍼刺激が惹起する影響について考察
した。
【方法】皮脂欠乏症、64歳、男、技師。9∼10年前よ
り本症を発症。2000年3月に本学診療所を受診。
初診時には背腰部から足指に至る下肢全体の強度
の掻痒と枯燥が見られた。
鍼治療:'00年6月より開始し、全身状態の改善の
ため難経に基づく本治と腹部刺鍼。局所刺鍼は
患部の数穴に置鍼し副刺激法を加えた。治療後
に円皮鍼をほぼ6ヶ所に添付した。
観察:治療成績は「掻痒・枯燥自覚評価表」
(自作)
を作成し症状の推移を改善率で評価した。(身
体を15区分し、それぞれに掻痒・枯燥の強度を2
∼0点に分け合計点が大きいと重症となる)。血
液像は、初診時('00年3月、評価点16、改善率0%)
、比較的改善時第10診('00年9月、評価点5、改善
率69%)、第43診再発傾向時('01年7月、評価点
7、改善率51%)及び完治第74診('02年8月、評価
点0点、改善率100%)を検討した。
【結果】①初診時に単球が正常値より高値にあっ
たもの、またリンパ球が低値であったものが、共に
正常値に復した。②好酸球は高値であったものが
完治状態には正常値に復元した。③好塩基球は初
診時正常値上限にあったものが、比較的改善時に
は半減した。④好中球は正常値にあったものが完
治状態でやや高値を示した。
【考察】①単球及びリンパ球が症状軽減に付随し
て正常値に復元したことは免疫能が高まったもの
と推測される。②好酸球の復元はアレルギー性炎
症が改善したものと思われる。③好中球の変化は
防衛の向上の現れと思われる。④生化学検査にお
いても微妙な変化が見られるため、更なる血液像
の影響とともに検討が必要である。
【目的】関節リウマチ(RA)による環軸関節亜脱
臼は頚部痛を引き起こすことが多く、これらの症
状は、RA患者のQOL低下をまねく一因となってい
る。そこで、今回、環軸関節亜脱臼による頚部痛
を訴えるRA患者に対して鍼治療を行い、 痛みと
QOLを指標として鍼治療の有用性を検討した。
【対象】RA専門外来に通院中の頚部症状を訴える
RA患者5例。X線動態撮影所見より環椎歯突起間距
離(以下ADI)は4mm以上であった。頚部症状は後
頭部痛、頚部痛、頚肩部痛であった。Larsen 分
類grade3∼4。class分類2∼3であった。神経症状
は1名に出現していた。
【方法】治療は1∼2週間に1回の頻度で2∼3ヶ月
間行った。治療終了時から3ヶ月後を経過観察期
間とした。治療部位は山本らが作成した「頚部関
節リウマチ病期別治療チャート」に基づいて、風
池穴、天柱穴、肩井穴などに行った。さらに治療
期 間 中 は 全 身 状 態 と 治 療 前 後 の 頚 部 痛 を VAS
(visual analogue scale;VAS)で評価した。QOL、
RA活動性は治療開始時、治療終了時、経過観察終
了時の合計3回調査した。QOLは旧厚生省リウマチ
研究班の作成したAIMS-2日本語版調査票を用いて
調査した。
【結果】5例中3例は、ADI5mm以下で軽度の患者で
あり、鍼灸治療によって頚部痛の直後効果がみら
れ、QOLも全身状態と共に改善傾向を示す項目が
多く見られた。しかし、2例は、ADI8mm以上と重
度の患者であり、治療回数を重ねても改善はあま
り見られなかった。
【考察】環軸関節亜脱臼による頚部痛に対しては、
有効な保存療法は確立されていない。そこで、今
回、鍼治療を行ったところ、ADIが軽度の患者で
は、 良好な結果を得ることができた。 しかし、
ADIが重度の患者では効果が見られなかった。よっ
て、RA患者の環軸関節亜脱臼による頚部痛に対す
る鍼治療は、適応期を考慮したうえで行うと有効
であると考えた。
キーワード:皮脂欠乏症、白血球、血液像、鍼治
キーワード:関節リウマチ、頚部痛、QOL、鍼治
療、掻痒・枯燥評価表
療
361
− 115 −
2O-C-15:48
喘息症状が灸療によって改善された
と思われる55才男性の1治験例
2O-F-14:00
肺癌の化学療法による副作用に対し
て鍼治療が有効であった1症例
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
明治鍼灸大学内科学教室
上郷樹夫、光藤英彦
【目的】気管支喘息は伝承東洋医術の比較的ポピュ
植松佑介、山村義治、苗村健治
明治鍼灸大学老年鍼灸医学教室
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
江川雅人
矢野 忠
ラーな適応対象であり、光藤の師匠達の豊かな治
験報告が残されている。このような治験の結果と
して発見された喘息兪と命名された穴位がある。
山本、深谷はそれぞれ別個に背中のTh6 棘突起両
側に位置する喘息兪の治効を確認した。私の担当
した一事例は病症が気管支喘息であり、この両先
生の指摘する穴位に特徴あるSignが穴位に認めら
れたのでこれらを含む穴位治療を施術したところ
主病に対して有効であったと判断されたので報告
する。
【症例】55才、男性、主病症は“気管支喘息”
(2次的病症は味覚障害)、副病症は偏頭痛、肩凝
り、耳鳴り、高血圧。〔現病歴〕H11年4月(53才
時)勤務先が障害者施設に、移動となる。母親
(DM、直腸ガン)死去。54才時2ヶ月間ほこりの
多い倉庫の整理をしたり、又夏にクーラーが入っ
てから喘息症状(咳、痰、のどがヒューヒューい
う)発症。喘息の薬(テオドール、オノン)の副
作用か分からないが、味覚障害になったと云う。
〔穴位治療〕施灸指導は、手足三里、陶道、霊台、
喘息兪。刺絡は、後頭部充血部位、或中、兪府。
(医師の指示により処置を行う)灸頭針は陶道、
霊台、腎兪付近。〔経過〕1クール終了時(1Wに1
回で6回の通院)の喘息症状に対する評価はA評
価(良くなっている)であった。
【考察と結語】
主病症に対する効果への考察:光藤の師伝であ
る灸療と刺絡法は共にその適応の所見があり運用
したがこの事例の有用性に寄与していると判断さ
れ た 。 主 病 症 以外 の 病 症 CHP (Cronic Health
Problems)の効果に対する考察:味覚障害及び偏
頭痛に対してはいずれの穴が有効に寄与したのか
は判断できない。
キーワード:喘息、お灸、喘息兪
【緒言】我々は肺癌の1症例において、化学療法
の副作用による症状の抑制を目的として鍼治療を
行ったので報告する。
【症例】65歳、男性。(1)診断名:肺扁平上皮癌
術後再発、(2)主訴:化学療法中の全身倦怠感、
頭痛、嘔気、(3)病歴:2001年7月に肺扁平上皮癌
に対する右肺上葉切除術が施行されたが、同年11
月に肺内転移による再発が確認され、点滴による
化学療法(CDDP 130mg(day1)+ MMC 13 mg(day1)
+VDS 5 mg(day1,8))が開始された。化学療法に
よる、全身倦怠感、頭痛、嘔気などの副作用の症状
に対して鍼治療を開始した。化学療法は1クール
約30日間の計9クール施行された。
【所見及び病態】全身倦怠感は日内変動なく、常
に認められた。頭痛は頭部全体が締め付けられる
ような重だるい痛み、嘔気は制吐薬でも改善しな
かった。胸部X線CTにて1.0∼1.5cm大の腫瘍影が
数ヶ所認められた。中医学的には脾胃湿熱証と肝
鬱気滞証と弁証した。
【治療・効果判定方法】治療は健脾と利湿、疏肝
理気を目的として百会、内関、足三里、太衝、内
庭、豊隆、陰陵泉、脾兪を基本穴とし、置鍼術 10
分間を行った。治療頻度は化学療法の各クールの
入院期間中、土日を除く毎日行った。全身倦怠感、
頭 痛、 嘔 気に つい ては Visual Analogue Scale
(VAS)法、気分も含めた全身的な体調については
フェイススケールにより評価した。
【結果とまとめ】化学療法9クールの入院治療中、
合計207日間に89回の鍼治療を行った。鍼治療の
効果は、短期的には鍼治療直後で各症状の軽減が
認められた。また、観察期間の前半4クールでは、
鍼治療による各症状の改善は緩やかであったが、
後半の5クールでは、鍼治療により、比較的速や
かな改善がみられた。これは、鍼治療の継続によ
る長期的効果と考えられた。また、副作用の症状
が軽減され、9クールという長期間に渡り化学療
法を継続することができ、胸部X線、CTにおいて、
腫瘍の縮小が確認された。鍼治療が副作用による
症状の抑制を目的とし、癌治療における補完医療
として位置づけられるものと考えられた。
キーワード:肺癌、鍼治療、化学療法、副作用
− 116 −
362
2O-F-14:12
不定愁訴に対する鍼治療の1症例
2O-F-14:24
手術後の健康障害・再発不安の解消と
QOL障害の改善に有用であった2症例
−大腸癌手術後に生じた不定愁訴−
東洋医学研究所 グループ絹田鍼灸院
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
絹田
章
村山
功、山岡傳一郎
【目的】近年、わが国において食生活が欧米化し、
生活習慣病ともいわれている大腸癌に罹患する人
が増加している。今回、大腸癌の手術を受け、種々
不定愁訴を訴えて来院した患者に対して鍼治療を
施し、症状の推移を客観的に検討する目的で(社)
全日本鍼灸学会研究部不定愁訴班作成の不定愁訴
カルテを使用して鍼治療の有効性を検討したとこ
ろ、1例ではあるが興味ある結果が得られたので
報告する。
【症例】患者:男性、69歳。現病歴:平成11年4
月8日に大腸癌の手術。その後排便過多(1日4∼5
回)に悩み、いつ便意をもよおすか不安になり、
頭痛、肩こり、たまに手足がしびれるなど種々の
不定愁訴を発症。現症:脉状診;浮・滑、脉差診;
肝虚証、血圧;146/86mmHg、脈拍;66回/分、腹
診;やや軟、背診;項背強、身長;162cm、体重;
69.3kg、BMI;26.4、不定愁訴指数;26点(重症
度判定中等症)。治療方法:随証療法(曲泉、太
衝)、太極療法(黒野式全身調整基本穴)、局所療
法(合谷)で30㎜18号鍼を用い、単刺術。評価法:
不定愁訴カルテ。治療期間:平成12年4月13日∼
平成12年6月26日まで75日間(14回)。
【結果】下痢便で1日4∼5回の排便が正常便で1日
2回に改善、頭痛は消失、肩こり及び手足のしび
れは軽減。初診時不定愁訴指数26点(中等症)が、
次回来院時26点、8回目来院時11点、15回目来院
時(最終時)では7点となり、不定愁訴指数減少
率73%で効果判定は著効。
【考察】鍼治療による種々の不定愁訴の改善に伴
い、大腸癌手術後の排便過多についても通常の経
過より早期に改善がみられたと考える。
【結語】大腸癌手術後に生じた不定愁訴に対して
14回の鍼治療を施し、不定愁訴カルテにより検討
したところ、鍼治療の有効性が客観的に証明され
た。また、大腸癌手術後の機能障害と思われる排
便過多も改善され、鍼治療が手術後のケアとして
有用である可能性が示唆された。
【はじめに】私どもの研究所では時系列分析法を
用いて、灸療を中心とした診療を続けている。今
回、子宮がん手術後および胃がん手術後の健康障
害の改善と再発不安の解消とともに、QOL障害の
改善に役立ったと思われる症例を得たので報告す
る。
【症例】症例1:69才の女性。平成12年10月、子
宮および付属器の全摘手術を受ける。その後腹部
の痛みが続き再発・転移の不安が募り、睡眠不良
となる。術後の体質改善、免疫力の向上を希望して
当研究所を受診。鍼灸治療は沢田流太極療法に則
り、灸点として曲池・足三里・三陰交・百会・身
柱・天 ・膈兪・腎兪等の要穴を取穴、自宅施灸
を指示。経過はアンケート方式の患者自己評価で
は、すべての項目で自覚症状の改善と不安感の解
消が認められ、QOLの向上に役立ったと思われる。
症例2:62才の女性。平成11年1月胃ガンの摘出手
術を受ける。その後肝機能障害を指摘され、胃痛・
食欲不振・易疲労などの健康障害を発症。家族歴
にもガンの人がいて再発不安をかかえ当研究所を
受診。鍼灸治療は前症例と同様に沢田流太極療法
に則り、灸点として曲池・足三里・附分・至陽・
肝兪・脾兪・腎兪等の要穴を取穴、自宅施灸を指
示。経過は順調で同前の評価法でも満足度は高く、
QOL障害の改善に役立ったと思われる。
【考察および結語】時系列分析法にはチーム医療
を行うスタッフが患者の生活背景や家族状況がよ
く理解できる利点があり、特に不安感を持つ患者
とのコミュニケーション上有用と思われる。また
私どもの研究所では家族間での灸療を推奨してお
り、家族による施灸で心の交流が図られ、苦痛の
軽減だけでなく精神的安定も得られたと推測する。
四国地方はお灸発祥の地であり、21世紀に向けて
その文化の継承・発展のために、私どもの研究所
に課せられた責務は大きいと思われる。
キーワード:生活習慣病、大腸癌、機能障害、不
キーワード:時系列分析、自宅施灸、QOL障害
定愁訴、太極療法
363
− 117 −
2O-F-14:36
当科における悪性腫瘍患者に対する
鍼灸臨床の実態分析(第2報)
2O-F-14:48
緩和ケア病棟における電子温灸器の
応用(第2報)
埼玉医科大学東洋医学科
東海大学医学部附属大磯病院鍼灸治療室
廣瀬賢一、山口
智、小俣
浩、新井千枝子
川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター
阿部洋二郎、浅香 隆、大野修嗣、藤岡正志
埼玉医科大学健康管理センター
土肥 豊
高士将典
【目的】我々は、第51回本学会において当科で取
り扱った悪性腫瘍患者の訴える疼痛や愁訴に対す
る鍼治療の実態を分析した結果、鍼治療は現代医
療に併療する治療法として、有用性の高いことが
わかった。そこで今回は、さらに症例を追加し、
鍼治療効果と患者の背景因子との関係についても
検討した。
【方法】対象は、過去5年間に当科を受診した悪
性腫瘍患者19例(男性10例・女性9例、9歳∼82歳、
平均年齢57.5歳±17.7歳 mean±S.D.)である。
方法は、依頼診療科、入院・外来の別、基礎疾患
及び合併疾患、鍼治療の対象となった症状、罹病
期間、鍼治療期間と治療回数、鍼治療成績につい
て検討し、鍼治療効果率と背景因子との関係につ
いて分析した。
【結果】①依頼診療科は、内科からの依頼が7割
を占め、基礎疾患は肝臓癌や前立腺癌、合併疾患
は腫瘍の原発巣に伴う疾患、治療方法では化学療
法と放射線療法の併用が多く、薬物療法は鎮痛剤
及び鎮痛補助薬が投与されていた。これら患者群
の症状は腰痛が最も多く、下肢痛・胸痛・背部痛・
顔面筋麻痺と続き、鍼治療期間・回数は1日∼738
日(平均132.6日±186.5)、1回から92回(平均22.8
回±22.2)であり、鍼治療成績は有効・やや有効
を併せて75.6%の有効率であった。②鍼治療効果
率と背景因子との関係では、基礎疾患が肝臓癌で
合併疾患に癌転移を有する患者群の効果率が高く、
罹病期間は1年以上で鍼治療回数が20回以上の患
者群で効果率が比較的高い傾向が認められた。
【考察および結語】以上の結果より、原発巣のも
つ要因や転移の有無、罹病期間、鍼治療回数等が
鍼治療効果率に影響を及ぼしている可能性が考え
られた。これらのことから、悪性腫瘍患者に対す
る鍼治療は、患者の背景因子を詳細に分析し、適
応や限界を検討することが臨床上極めて重要であ
ることが示唆された。
【はじめに】第20回全日本鍼灸学会関東甲信越支
部学術集会にて、緩和ケア病棟における電子温灸
器を用いた治療(以下温灸という)の成績を報告
した。今回は評価判定の改良を試み、00年度 31
症例も加えて報告する。
【対象】99年6月∼01年3月までに入院した癌患者
74例、平均年齢63.9歳、男性36例女性38例、温灸
治療期間は平均14.3日であった。
【方法】治療は電子温灸器(カナケン社製)を用
い経穴に温熱刺激を与えた。配穴は弁証に基づき
行った。その指示を受け看護師が1日に1∼3回施
行した。評価判定は、主訴の長期評価(治療開始・
終了時期に0∼5のフェイススケールで聴取、2段
階以上改善を2点、1段階の改善を1点、変化なし
を0点、1段階以上の悪化を-1点とした)と主訴の
直後評価(治療直前後で、上記と同様の評価)と
看護記録からの患者印象度(1点、0点、-1点)、
以上の3つの評価を合計して、4点以上を著効、2
∼3点を有効、1∼-1点を不変、-2点以下を悪化と
判定した。また聴取できないのを不明とした。
【結果】著効が17.6%、有効33.9%、不変40.5%、
悪化5.4%、不明2.7%であった。痛みを訴える症
例は、58症例と多く、有効以上が55.2%であった。
00年度の症例は温灸開始の時期が早くなり、有効
症例数も増加した。また看護記録からリラックス
していることが伺われた。
【考察】緩和ケアチームが容易に参加できる温灸
を行ってきた。そのため00年度になって、治療時
期の早期化や有効症例数の増加が見られた。これ
は無作為に治療を行うのではなく、治療時期と対
象患者の選択が向上した為と考えられる。また患
者にリラックスを与え、癒しにも貢献できた。ま
た増悪した症例から治療に適さない状態があるこ
とがわかった。
【まとめ】温灸はターミナルケアにおける代替医
療の1つとなることが示唆された。
キーワード:悪性腫瘍、癌性疼痛、鍼治療
キーワード:代替医療、チーム医療、電子温灸器
治療、痛み、癒し
− 118 −
364
2O-F-15:00
両側慢性硬膜下血腫が消失した患者
−予後観察−
(社)全日本鍼灸学会愛知地方会研究部頭鍼療法班
田中法一、田中喜浩、藤井良平、竹内昭夫
2O-F-15:12
脳梗塞後遺症に対し電気灸治療を試
みた1症例
財務省東京病院東洋医学センター
豊田陽子、坂井友実、安野富美子
筑波技術短期大学鍼灸学科
横川孝一
【目的】2002年の当学会第51回学術筑波大会でポ
スター発表した症例(両側慢性硬膜下血腫が頭鍼
瘤等吸収処理能力を活性化させる事が示唆された。
【目的】脳梗塞後遺症患者の上肢症状に対して、
電気灸治療を行い良好な結果を得たので報告する。
【症例・方法】73歳、男性。主訴:左上肢重苦感、
動かし難さ。現病歴:平成12年1月、両足の痺れ感
出現し、脳梗塞と診断され近医に2ケ月入院。平
成13年8月、左上下肢の麻痺出現し、当院内科入
院。現症:身長165cm、体重62kg、血圧 136/84 m
mHg、 脈拍 69拍 /分 、 肩ROM; 外転 右 180 ° 、 左
120°、屈曲右180°、左120°、深部反射;上・下
肢左亢進、触覚;左前腕C6領域鈍磨、左三角筋の
萎縮著明、左上肢の皮膚温低下、Brunnstrom Sta
ge;上肢5、MRI;放線冠・視床・大脳基底核に陳旧性
梗塞あり。方法:電気灸はソフコンMXA-8000(全
医療器社製)を用いた。治療穴は、左の合谷・手
三里・曲池・手五里・臂臑・肩 ・中府で、設定温度
はM(47.5度)、刺激時間は15分間とした。皮膚温
の変化は、施術前、施術中、施術終了15分後まで
サーモグラフィ(THERMOVIEWER JTG-3570JOEL製)
にて測定した。また、経過を追って上肢皮膚温を
測定した。
【結果】施術前後の皮膚温変化は、施術終了6分
後より左上肢全体の皮膚温の上昇がみられ、15分
後では手背、前腕部の平均皮膚温度が、施術前に
比し、1.3度上昇し、術前に見られた左右差が改
善された。又自覚的には、術後約30分で左手に力
が入る感覚がみられた。第3診で、術前の皮膚温
の左右差が2.3度から0.4度に改善され、第16診後
では重苦感も改善され自覚的に左手に力が入るよ
うになった。
【考察】電気灸施術直後には皮膚温の著明な上昇
と自覚症状の軽減がみられ、治療継続とともに上
肢皮膚温の左右差もなくなり、症状も消失した。
このことから、電気灸は脳梗塞後遺症の上肢症状
に対して症状を緩和させる可能性が示唆される。
キーワード:両側慢性硬膜下血腫、MRI検査、頭
キーワード:電気灸、脳梗塞後遺症、皮膚温、サー
療法で改善した1症例)の予後経過観察を報告す
る。
【方法】治療終了後の予後経過を1ヶ月に1∼2回
来院することとし、自・他覚所見及びMRI検査に
より追及して行くことにした。
【経過観察】(1回目来院)平成12年12月18日∼
22日まで、12月のMRI検査では両側慢性硬膜下血
腫(以後血腫と略す)が消失していた。(2回目来
院)平成13年1月20日、1月のMRI検査でも血腫は
消失していた。頚部MRI検査異常無しと診断され
た。(3回目来院)平成14年7月30日∼8月8日まで、
所見は右上肢挙上90°、三角筋萎縮、結髪障害陽
性、手指末端に痺れ感があり、圧痛は欠盆・天宗・
膏肓・脾臑・鎖骨肩峰直下・雲門等にあった。(4
回目来院)平成14年8月28日∼30日まで、今回は
頭部・頚部のMRI検査結果のフイルムを借用し持
参、血腫は完全に認められず神経症状もない、(5
回目来院)平成14年9月21日∼ 27 日まで、頸肩
腕の症状は徐々に亢進している。血圧は最高血圧
(119∼124mmHg)−最低血圧(62∼71mmHg)と正
常値を保っている。
【結果】本症例の経過観察の結果、治療終了後、
MRI検査を4回受けた。血腫の消失に付いては平成
12年12月のMRI検査に異常なし、平成14年8月9日
撮像のMRI検査で完全消失と診断された。
【考察・結語】MRI検査(8月9日撮像)で血腫の存
在は完全に否定されたことになった。頭鍼療法に
よる脳内賦活が起きて脳内血流が活性し血腫を溶
解吸収したものと考える。長い月日をかけて存在
していた血腫が、鍼灸治療により脳内の異物や腫
鍼療法(焦順発)
モグラム
365
− 119 −
2O-F-15:24
脳血管障害の片麻痺に伴う上肢浮腫
に対する灸療法の効果
2O-F-15:36
動作分析と東洋医学的観点から鍼治
療をおこなった書痙患者2症例
慶熙大学韓医学部附属韓方病院第2内科学教室
谷浦クリニック1 )
関西鍼灸短期大学神経病研究センター2)
基湖、鄭
宇相、崔
耀燮
慶山大学韓医学部鍼灸学科
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
徐
廷徹
井上博紀1,2)、谷万喜子2)、高田あや 2)
飯塚朋子 2)
篠原昭二、和辻直
鍋田理恵2)、鈴木俊明 2)、若山育郎2)、吉田宗平 2)
明治鍼灸大学大学院鍼灸学研究科
北出利勝
【目的】脳血管障害の症状として片麻痺とともに
同側の上肢に浮腫が16∼82%の比率で現れる。こ
の上肢浮腫は長くなると関節の線維化、強直、疼
痛が続き、麻痺治療を遅延させる。確実な治療法
はまだ見つかっていない。そこで、今回は脳血管
障害の片麻痺に伴う上肢浮腫に対する灸療法の効
果について検討した。
【方法】2001年5月から12カ月間、当韓方病院入
院患者の中で脳CTないしMRIで脳梗塞、脳出血が
確定診断され、発症日から2週間以上過ぎて、上
肢容積計(hand volumeter)を使い、患側の手部
容積が健側より30cc以上増加した患者42名を対象
として乱数表を使ったランダム化比較試験(RCT)
を行い、灸治療群20名、灸非治療群22名に分けた。
灸非治療群は標準治療、灸治療群は標準治療に灸
治療を加え、施灸は合谷、曲池、中渚、外関に直
接灸5壮(米粒大、韓国江華産艾葉)を毎日、1回
施行し、治療に係わっていない第三者がhand vol
umeterで上肢 浮腫容積 を、 巻 尺で第2指 の太さ
(Index Finger Circumference)、 運 動 指 数
(Motricityindex)を2週後にそれぞれ測定した。
統計学的な検定はchi-squaretest、Mann-Whitney
U testを用いた。
【結果】上肢浮腫容積の変化を観察したところ、
治療前後の比較で灸治療群は21.5±12.3(cc)の
減少、灸非治療群は12.3±13.4(cc)の減少で有
意な効果があった。第2指の太さでは、灸治療群
は0.15±0.11の減少、灸非治療群は0.07±0.10の
減少を示し、有意な効果があった。運動指数でも、
灸治療群は16.5±9.0の増加、灸非治療群は8.0±
6.5の増加で灸治療の有意な効果が認められた。
【考察と結語】上肢浮腫の治療は、灸治療が浮腫
の減少だけではなく運動機能回復にも有意な効果
が認められたことから、灸刺激による症状の変化
と血行の促進、組織の栄養状態改善、吸水機能の
活性が示唆された。
キーワード:脳血管障害、片麻痺、浮腫、灸療法、
脳梗塞
【目的】今回、ジストニアの一つである書痙患者
2症例に対して、動作分析と東洋医学的観点から
鍼治療を行い、その効果を書字評価テスト、自覚
的評価から検討した。
【症例】症例1:67歳、男性。平成8年頃より書字
動作に困難を認め、平成14年6月27日に本学附属
診療所神経内科を鍼治療目的で受診した。
症例2:67歳、女性。平成5年追突事故で右肩を強
打してから書痙を発症した。西洋医学的治療では
改善が認められなかったため、平成14年8月29日
に本学附属診療所神経内科を受診し鍼治療開始と
なった。
2症例ともに、鍼治療前後での書字評価テストを
実施した。書字評価テストの内容は、1)「1∼5」
までの数字、2)あ行のひらがな、3)あ行のカタ
カナ、3)4重の螺旋点線上をなぞるテストとした。
また、毎回治療後に書字動作の自覚的評価(最悪
を10点、正常を0点とする)を聴取し、検討した。
【鍼治療とその結果】鍼治療は週1回おこなった。
2症例ともに、動作分析と東洋医学的観点から、
書字動作の円滑化を目的に書字をおこなう上肢と
対側の上肢区、不随意運動の軽減を目的に同側の
風池穴、腕神経叢へのアプローチとして気舎穴に
置鍼を行った。また、症例2には、皮膚・筋短縮
および知覚・感覚入力の改善を目的に手掌部に集
毛鍼により刺激を加えた。鍼治療効果として、症
例1は鍼治療開始3回目、症例2は5回目で書字評価
テスト、自覚的評価に著明な改善を認めた。
【まとめ】我々は頸部ジストニアに対して動作分
析と東洋医学的観点から鍼治療をおこない75%程
度の改善を認めている。今回の書痙も頸部ジスト
ニアと同様にジストニアの一種である。そこで、
今回の2症例に対して動作分析と東洋医学的観点
から鍼治療をおこない短期間で改善した。本研究
で用いた鍼治療は、書痙に対する有効な治療法の
ひとつであることが示唆された。
キーワード:書痙、動作分析、東洋医学的観点、
鍼治療
− 120 −
366
2O-F-15:48
頸部・体幹への総合的なアプローチが
必要であった頸部左側屈偏倚を主症
状とする頸部ジストニア患者への動
作分析と鍼治療
2P-D-09:00
肝炎ウィルスの鍼体への付着性につ
いて
関西鍼灸短期大学神経病研究センター
飯塚朋子、谷万喜子、高田あや、井上博紀
関西鍼灸短期大学鍼灸学基礎教室
関西鍼灸短期大学免疫・病理学教室
大市三鈴、松尾貴子、笠原由紀、栗林恒一
鍋田理恵、鈴木俊明
若山育郎、吉田宗平
楳田高士
【目的】詳細な動作分析により体幹にも問題があっ
た頸部左側屈偏倚を呈する頸部ジストニア患者1
症例の鍼治療について報告する。
【症例】症例は68歳男性である。平成7年に頸部
ジストニアを発症し、平成13年8月23日、鍼治療
目的にて関西鍼灸短期大学附属診療所神経内科に
来院した。初診時の頸部姿勢は左側屈、屈曲、肩
甲帯左挙上でTsuiスコア14点であった。表面筋電
図評価に基づき循経取穴を基本とした鍼治療を行っ
た。9ヵ月後にはTsuiスコア8点に改善したが主な
偏倚である頸部左側屈は改善せず、立位、歩行で
は増悪した。そこで、立位、歩行における頸部肢
位の変化に関する動作分析が必要と考えた。
【立位、歩行の動作分析】安静立位では頸部左側
屈、肩甲帯左挙上だけでなく、著明な体幹右側屈
を認めた。これは、頸部左側屈によって左に偏る
重心を中心に保つための代償であると考えた。歩
行の右立脚期では、立位と同様に代償としての体
幹右側屈を認めた。また、歩行時に頸部を随意的
に正中位保持することは可能となったが、肩甲帯
左挙上および体幹右側屈が著明であった。この結
果、本症例は頸部に対する鍼治療だけでは肩甲帯・
体幹偏倚が改善しないことがわかり、頸部・肩甲
帯・体幹に総合的にアプローチする必要性を認め
た。
【鍼治療】今まで行っていた頸部左側屈の原因で
ある左側頸部皮膚短縮に対する散鍼、左僧帽筋上
部線維の筋活動亢進に対する左外関への置鍼に加
えて、体幹右側屈の原因である右腹筋群の筋緊張
低下に対して衝陽に置鍼した。また、鍼治療中に
座位・立位での側方移動を行わせ、動作時に頸部・
体幹偏倚が軽減することを確認した。
【結果および結語】未だ頸部・体幹に偏倚を認め
るものの、立位・歩行での偏倚の程度は軽減した。
頸部側屈偏倚を認める頸部ジストニア患者に対し
ての臨床症状評価は頸部だけでなく体幹も考慮し、
安静時および動作時に評価する必要性が示唆され
た。
【目的】肝炎ウィルス感染者に対し鍼治療を行っ
た際、抜鍼後の鍼体に付着したウィルスにより鍼
灸師の手指が汚染される可能性がある。このよう
なウィルスの鍼体への付着が、刺鍼部位を綿花で
押さえながら抜鍼するという操作によりどの程度
防ぎ得るかを検討するため、今回はまず、ウィル
スを含んだ血清を鍼体に直接塗布し、それを綿花
で拭うことにより、付着させたウィルスが除去で
きるか否かについてPCR法を用いて検索した。
【方法】HCV抗体陽性者3名、HBs抗原陽性者3名よ
り血清を採取し、それぞれについてPCR法により
ウィルス遺伝子の検出を行なった。それにより、
これらの血清の中からもっともウィルス量の多い
血清を選択し、それに鍼を浸漬して鍼体にウィル
スを付着させた。これらをエタノール綿花もしく
は乾綿にて拭い、その後の鍼体に残存したウィル
ス遺伝子を検出した。HCVの検出は、HCV 遺伝子
のUT領域に対するprimerを用いて nested PCR法
により行った。また、HBVについても同様に、S抗
原遺伝子の領域に対するprimerを用いたnested P
CR法により検出した。
【結果】いずれのウィルスについても、同じ塗布
実験を2回繰り返したが、HCVに関しては、一度目
の実験では、エタノール綿花で拭ったものも乾綿
で拭ったものもいずれもウィルス遺伝子を検出し
なかったが、二度目の実験ではエタノール綿花で
拭った鍼体からHCV遺伝子の残存が検出された。H
BVについても同様に実験を2回繰り返したが、ど
ちらの実験においてもエタノール綿花で拭った鍼
体と乾綿で拭った鍼体の両方からHBV遺伝子が検
出された。
【考察】抜鍼時に刺入部位を綿花で押さえるとい
う操作は、ウィルス量がそれほど多くない場合に
は、鍼体に付着したウィルスを除去するという点
である程度効果が認められる可能性が推察された。
現在さらに、実際に肝炎ウィルス感染者に対して
刺鍼した鍼体に、肝炎ウィルスがどの程度残存し
ているかについても検索を行っている。
キーワード:頸部ジストニア、動作分析、鍼治療
キーワード:HBV、HCV、nested-PCR
367
2P-D-09:14
鍼灸治療における感染防止について
2P-D-09:28
指サックが刺鍼手技に与える影響
−手指の細菌汚染と感染防止対策−
−継続的使用による痛みの変化−
関西鍼灸短期大学鍼灸学基礎教室
筑波大学理療科教員養成施設
楳田高士、宮崎浩一、山崎寿也、吉備
北村
− 121 −
登
半田美香子、徳竹忠司、宮本俊和
智、錦織綾彦
【目的】鍼灸臨床における感染防止対策の一環と
【目的】近年、鍼灸治療において、滅菌・消毒の
徹底が啓蒙され、感染に対する対策がなされつつ
ある。しかし、2001年に行われた鍼灸の安全性の
現状調査で「患者毎の手洗が徹底されていない、
交差感染の危険性がある」という報告がなされて
いる。そこで、手指の付着細菌検査を行い、感染
防止について検討した。
【方法】本学教職員14名について、手洗い後、臨
床中、速乾性消毒剤(ウエルパス)使用直後に、
パームスタンプ培地を用いて細菌を採取、培養し
た。さらに、手洗水の細菌検査、手洗石鹸(石鹸)
および環境の細菌調査についても調査を行った。
なお、手洗水の細菌検査はメンブレンフィルター
法を用い、環境の細菌についてはスタンプ法を用
いた。
【結果と考察】手指・手掌の平均コロニー数(右
手:左手)は手洗い後(263:255)、臨床中(308:
293)、速乾性消毒後(20:16)であった。速乾性
消毒剤の使用で付着細菌数が激減したが、手洗後、
臨床中には多数のコロニーが認められた。手洗後
に菌数が多く認められた理由については、毛嚢な
どに存在するレジデントフローラが手洗いにより
浮かび上がったためと考えられるが、手洗水、石
鹸表面、蛇口ノブからも細菌を検出し、これらも
その要因の一つであると考えられた。検出した菌
には日和見感染の原因菌として報告されているも
のも認められた。感染防止のためには、できるだ
け手の付着細菌数を減少させることが必要である。
今回の結果から、治療中の速乾性消毒剤の使用は
感染防止に有効であると考えられた。
【結語】手洗後および臨床中の手指・手掌に多く
の細菌が認められた。手洗後の菌数を減少させる
ためには、手洗い前に水をよく流す、液体薬用石
鹸を使用する、手洗後にも速乾性消毒剤を使用す
る等の対策が必要であり、臨床中の手指・手掌の
菌数を減少させるためには速乾性消毒剤の使用が
有効である。
して、施術時の指サック等の使用が推奨されてい
キーワード:感染防止、手洗い、付着細菌、速乾
キーワード:感染対策、指サック、刺鍼、VAS
性消毒剤
るが、日本国内の鍼治療施設においては、刺鍼操
作性の問題等から指サックが使用されていないこ
とが多い。前回我々は、刺鍼操作中に被験者の感
じる痛みが指サック使用により変化するかどうか
検討した。その結果、指サック使用によって、痛
みの傾向に変化が生じることがわかった。しかし、
前回の実験の施術者は日常の施術においては指サッ
クを使用しない者であった。そこで今回、日常の
施術において指サックを使用し続けた施術者を対
象に、指サックを使用した刺鍼操作時に生じる痛
みが使用しない刺鍼操作時の痛みの状態に近づく
か、その学習効果について検討した。
【方法】施術者は、実験前まで日常の鍼治療で指
サックを使用しない鍼灸師10名を対象とした。対
象となった施術者に実験開始から10週間後まで、
日常の臨床上で指サックを使用して刺鍼操作を行
わせ、2週間ごとに10週まで評価を行った。痛み
程度と種類は、切皮時・刺入時についての①100m
m VAS②30種類の痛み用語によって、 施術者が被
験者の腰部脊柱起立筋に左右一本ずつ刺鍼を行う
際に評価した。また、施術に所要した時間を計測
した。
【結果】痛み,施術時間とも指サックを継続的に
使用することによって、平均値では変化が見られ
たが,統計学的有意差は認められなかった。痛み
の質については相違が見られた。
【考察と結語】指サックの継続的使用によって、
各要素に若干の変化は見られたが、著しい学習効
果は認められなかった。今後、指サックを使用時
の刺鍼手技等を検討する必要もあると思われる。
− 122 −
368
2P-D-09:42
膏肓穴刺鍼の安全深度の検討(2)
2P-D-09:56
鍼の安全性に対する鍼関連業者の見
解に関する国際アンケート調査
森ノ宮医療学園専門学校
尾崎朋文、佐藤正人、坂本豊次
筑波技術短期大学附属診療所
川村病院小山田記念温泉病院
山下
仁、津嘉山洋
湯谷 達、米山 榮
徳島大学歯学部口腔解剖学第一講座 北村清一郎
【目的】鍼の安全性についての鍼関連業者の考え
大阪大学歯学部口腔解剖学第二講座
を知るため、6ヶ国におけるアンケート調査を行っ
吉田
篤
た。
【目的】前回、成人に対する検査ならびに遺体解
剖、CT画像から、膏肓穴刺鍼の安全深度を体型別
に報告した。今回はさらに被検査数を追加し、膏
肓穴刺鍼の安全深度を統計的に検討した。
【対象と方法】前回の成人104名での検査に、今
回さらに42名を追加し計146名を対象とした。方
法は、前回と同様に、伏臥位で肩関節を90度外転
し、左右いずれか一方で行った。鍼先が肋骨上面
に当たるように膏肓穴から頭尾方向に各10 mm 以
内の体表に刺入点を求め、体表に垂直にディスポ
鍼40mm18号を刺入した。鍼先が肋骨上面に当たっ
た時の、体表から出ている鍼体長を計測し、この
値から体表-肋骨間距離を求めた。平均値の差は
Mann-Whitney U-testを用い、有意水準5%で検定
した。
【結果】成人146例のBMI分類を用いた体型は、男
性100名では肥満型が25名、標準型が53名、痩せ
型が22名であり、女性46名では肥満型が12名、標
準型が17名、痩せ型が17名であった。肥満型、標
準型、痩せ型の体表-肋骨間距離の平均値は、男性
では各々24.7±4.5mm、20.2±3.6mm、19.1±2.5mm、
女性では各々20.8±3.2mm、17.9 ± 2.9mm、16.8
±2.5mmであり、膏肓穴への刺鍼時の安全深度の
平均値は、前回発表したように、これらの値に肋
骨の厚みの1/2である 5mm を足した値とした。体
表-肋骨間距離の平均値と安全深度の平均値はい
ずれも、男女ともに、肥満型は標準型および痩せ
型より有意に長く、標準型と痩せ型とでは差は認
められなかった。また、肥満型、標準型、痩せ型
の安全深度の最小値は、男性では各々20mm、19mm、
19mmであり、女性では各々21mm、19mm、18mmであっ
た。
【考察と結語】膏肓穴への刺鍼では、肋骨までの
距離および外傷性気胸に対する安全深度の平均値
は、男女ともに標準型と痩せ型では差がないが、
肥満型が他の型より有意に大きく、肥満型ではよ
り深くへの刺入が許される事を示している。しか
し、安全深度の最小値をみると、肥満型と標準型
および痩せ型とはそれほど差がないので、肥満型
患者への治療時でも注意が必要だと考えられる。
キーワード:膏肓穴、安全深度、外傷性気胸、肋
骨、体型
【方法】2000年9∼10月に、日本、イギリス、中
国、韓国、ドイツ、アメリカの60の鍼メーカーお
よび販売業者に、鍼の有害事象の知識、安全性向
上のための活動や意見などに関する質問紙を郵送
した。
【結果】回答したのは14業者で、国別の回答率は
日本64%、イギリス33%、中国14%、韓国13%、
ドイツとアメリカ8%であった。有害事象で興味
が持たれていたのは感染(5業者)、金属アレルギー
(3)、折鍼(2)の順であった。製品に記載してい
る情報は使用期限(10)、消毒・滅菌の必要性(10)、
鍼 の点検の必 要性(9)、 専門家以外 の使用禁 止
(8)の順であった。8業者は可能性のある有害事
象について製品に記載して伝える必要性があると
答え、5業者は必要ないと答えた。必要ない理由
は「鍼の専門家はそのような情報は当然知ってお
くべきだから」であった。社内外における安全性
関連活動に対して7業者が投資していた。
【考察と結語】鍼の安全性情報の普及に関して積
極的に役割を担うかどうかについては意見が分か
れていた。鍼製品のパッケージへの印刷または添
付文書が、鍼治療家に情報を与える効果的な手段
のひとつであると我々は考えている。
(謝辞)不躾な質問にもかかわらず丁寧に御回答
いただいた業者の方々、そして中国語版質問紙の
作成に御助力いただいた王財源、白錦棟、久下浩
史の諸先生方に心より感謝申し上げます。
(国際共同研究者)Jongbae Park、Adrian R Whit
e、Edzard Ernst
キーワード:鍼、安全性、業者、アンケート、調
査
369
2P-D-10:10
学生の高齢者に対する意識調査につ
いて(第2報)
− 123 −
2P-D-10:24
在宅ケアにおける鍼灸の役割
財務省東京病院東洋医学センター
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
水沼国男
明治鍼灸大学老年鍼灸医学教室
高橋則人、鶴 浩幸、江川雅人、松本 勅
特別養護老人ホームはぎの里
寺沢宗典
【目的】我々は、第50回大会において、学生の高
齢者に対する認識やイメージはマイナスのイメー
ジが強く、老人ホームなどに訪問経験のある者の
うちで、再度行きたいと考えている者は少なく、
実習の導入に当たって意識づけが大切であること
を報告した。そこで今回我々は、平成12年度4年
生を対象に老年ケア実習前後に高齢者のイメージ
や認識等について調査しそれらの変化の有無につ
いて検討した。
【方法】明治鍼灸大学平成12年度4年生 計118名
を対象に実習前後での学生の意識調査を行った。
実習開始前、実習終了後にアンケート調査を実施
した。調査内容は、高齢者のイメージ、介護保険、
高齢者への鍼灸治療、特別養護老人ホーム等の施
設に関する項目等について調査した。高齢者のイ
メージは、記述式を用い、その他の項目は、選択
肢からの選択法を用いた。
【結果】有効回答数は、実習開始時106名(有効
回答 率89.8%)、 実習 終了時56名 (有効 回答率
47.5%)であった。実習後、高齢者に接してみて、
「非常に楽しかった」
「多少楽しかった」を合わせ
ると70%であったが、「これから高齢者に接した
いか」では、
「積極的に」が33%、
「仕事等で必要
があれば」が58%であり、実習前と比べると「積
極的に」は39%から33%に減少し、「仕事等で∼」
は50%から58%に増加した。また、高齢者のイメー
ジが「変わった」 と考えた学生は、56 %と半数
を超えていた。さらに施設での鍼灸治療について
では、
「積極的に取り入れるべき」が55%、「可能
な限り取り入れるべき」が33%であった。また、
就職先としては、
「鍼灸を主とする仕事であれば」
と考えている学生が半数を超え、
「介護」
「鍼灸と
介護の兼任」は約2割であった。
【まとめ】実習により高齢者に対する認識が高ま
り、イメージが改善した者が多く見られたが、実
習終了後でも高齢者へのマイナスのイメージを抱
く者があり、これらを少なくするような働きかけ
が必要であると考える。また、今回は実習後の回
収率が悪かったが、今後回収率を高めるよう工夫
し、さらに検討したいと考える。
キーワード:意識調査、実習教育、イメージ、高
齢者、鍼灸治療
横川孝一、安野富美子
筑波技術短期大学鍼灸学科
坂井友実
【目的】超高齢社会の現実化に伴い、脳卒中後遺
症や虚弱老人など介護を要する老人が増加し、在
宅ケアの需要も急増が予想される。今回、要介護
者およびその介護者に鍼灸治療を行う機会を得た
ので、その概要を報告する。
【方法】対象は、平成14年4月から11月までの8ヶ
月間に、在宅治療を依頼された要介護者とその介
護者とした。在宅ケアは①紹介を受ける②訪問す
る③医師からの同意書をもらう④治療と評価を行
う⑤関係者へ報告するという手順で行った。治療
は、週1∼2回で1回30分程度とし、医療保険を適
用した。鍼灸治療は、局所への治療を中心に行い、
マッサージを併用した。
【結果】平成14年11月現在の患者内訳は、要介護
者16名(男性7名、女性9名)平均年齢は79.4歳±
7.7歳で、 60代1名、70代10名、80代3名、90 代2
名であった。介護者は11名(男性1名、女性10名)
平均年齢は63.3±11.5歳で、50代5名、60代1名、
70代4名、80代1名であった。介護度は要支援が1
名、介護度1が3名、2が5名、3が5名、5が2名であっ
た。要介護者の診断病名は脳梗塞後遺症3名、変
形性膝関節症3名、パーキンソン病2名、肺癌2名、
閉塞性動脈硬化症2名等で、愁訴としては膝痛6名、
腰下肢痛4名、全身倦怠感4名、関節拘縮4名等で
あった。一方、介護者の愁訴は腰痛7名、肩こり6
名、疲労感3名であった。紹介者は、訪問看護師7
件、ケアネージャー1件、医師6件、他2件であっ
た。尚、この8ヶ月間で鍼治療の脱落例は1例もな
かった。
【考察】今回取り扱った患者は全例とも一度治療
を受けると治療継続を希望した。介護する側も高
齢であり、腰痛、肩こり、介護疲労などを抱えて
おり、鍼灸やマッサージ治療が必要とされている
ことが痛感された。このことは、鍼灸師の増加が
見込まれ、新たな職域開拓が必要とされる中、新
分野になる可能性が示唆された。
キーワード:在宅ケア、要介護者、医療保険、介
護者、鍼灸治療
− 124 −
370
2P-D-10:38
老人保健施設における鍼灸治療(第1
報)
2P-D-14:00
脈診訓練法の開発(第3報)
日本鍼灸理療専門学校1)、
(財)東洋医学研究所2)
明治鍼灸大学老年鍼灸医学教室
高橋則人、江川雅人、鶴
特別養護老人ホームはぎの里
光澤
浩幸、松本
弘 1,2)、木戸正雄 1,2)、武藤厚子 1)
白石武昌 2)
勅
寺沢宗典
【目的】我々は平成13年1月より、高齢者医療施
設の一つである老人保健施設においても鍼灸治療
を実施しているので、その治療実績について報告
する。
【方法】治療対象は、平成13年1月∼平成14年3月
までの期間で老人保健施設「はぎの里」に入所中
で、施設長(医師)より鍼灸治療依頼のあった入
所者18名(年齢79.6±7.6歳)であった。対象者
には痴呆性疾患を有する者はいなかった。治療は
週に2回、専用の鍼灸治療室にて行い、医師から
依頼のあった愁訴に応じた治療を行った。治療評
価はそれぞれの愁訴にあわせ、ペインスケールや
入所者の主観的な改善度を指標とした。
【結果】治療対象となった愁訴は、肩こりが7例
と最も多く、次いで腰痛6例、膝痛4例、臀部痛お
よびリハビリ中の筋肉痛が3例で、疼痛が多く、
そのほかに半身不全麻痺2例などがあった。肩こ
りではペインスケールが治療後に平均3.7±2.0と
なり、症状の改善が認められた。またリハビリ中
の筋肉痛についても「リハビリ中の苦痛が軽減し
た」ことを3例全てが認めた。しかしながら、半
身不全麻痺などに対しては、主観的な改善度も低
く、入所中の短期間の鍼灸治療で改善を得ること
はできなかった。
【考察】老人保健施設の入所者では、身体的な愁
訴が多く、肩こりなどの症状に対し、鍼灸治療が
有効であることが示唆された。また半身不全麻痺
等に関しては、PTなどの他の医療スタッフとの連
携が必要で、長期的な治療を行わなければならな
いと考えられた。
【結語】老人保健施設での鍼灸治療により、入所
者の愁訴の一部が改善することが示唆された。ま
たリハビリ中の苦痛を取り除くなどの効果もある
【はじめに】訓練次第で精確な脈診を効果的に習
得 で きる “実 践的 な 脈診 習得 の ため の訓 練 法
Practical Method for Pulse Diagnosis(PMPD) ”
を構築し報告してきた。今回は、脈診部位を脈診
時の手関節・肘関節の位置の変化が表層・深部組
織にいかに反映するかを超音波画像より確認する
ことなどにより、安定性・再現性・客観性を持つ,
「正しい脈診法」を目指す上で興味ある知見が得
られたのでその一部を報告する。
【方法】本研究に同意を得た男性37名、女性36名
(平均年齢31.5歳)を被験者とし①第2∼4指爪甲
根部幅(3指幅)②尺沢∼太淵距離(前腕の長さ)
③手関節横紋∼高骨距離(高骨距離)④母指∼中
指尺を測定し,②と③においては肘伸展位と肘屈
曲位の2肢位で測定した。手関節・肘関節の角度
を変え、脈診右関上部における体表から骨までの
深さ、橈骨動脈の直径・深度を超音波画像で計測
した。
【結果】「前腕の長さ」は、肘伸展位(24.7±2.0
cm、n=60)は肘屈曲位(21.4±1.6cm)より有意(p<
0.001)に長かった。「母指∼中指尺」は20.2±1.6
cmであった。「母指∼中指尺」に対する前腕の割
合は肘伸展位1.23、肘屈曲位1.07であった。「前
腕の長さ」に対する3指幅(4.6±0.4cm)の割合は、
肘伸展位で0.19、肘屈曲位で0.22となった。「3指
幅」が4.6±0.4cm、
「高骨距離」は肘伸展位で1.25
±0.36cm、肘屈曲位で1.15±0.31cmであった。3指
幅に対する高骨距離の割合は、肘伸展位 0.27、
肘屈曲位0.25となり、高骨の位置と、実際に中指
が当たる位置とはすべての被験者で一致をみるこ
とがなかった。超音波画像による計測結果では右
関上部の骨までの深さと血管、それらと5段階の
浮・沈スケールの評価の変化との関連を認めた。
【結語】今回の実験から①被験者の尺沢∼太淵距
離により検者の指幅を調節する必要性②脈診で中
指の位置は高骨よりも近位となる③肢位の相違が,
脈診部位や橈骨動脈の位置と,脈位脈状に影響す
る可能性があることなどを確認した。この認識を
もって脈診を学べば,客観性と再現性のある精度
の高い判定が可能となり,同一被験者の脈に対し
て,検者間で統一された判定基準を持つことが可
能となる。
ことが示された。
キーワード:高齢者、老人保健施設、鍼灸治療、
肩こり、腰痛
キーワード:脈診トレーニング法、PMPD、超音波
画像、橈骨動脈
371
2P-D-14:14
橈骨動脈拍動部からの圧脈波検出方
法の検討
2P-D-14:28
難経腹診の研究
東京衛生学園臨床教育専攻科
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
−圧痛部位と症状との関連性について−
大久保淳子、會澤重勝
お茶の水女子大学ライフサイエンス専攻
− 125 −
山本晃久、篠原昭二
明治鍼灸大学大学院
森定
真、北出利勝
會川義寛
【目的】脈診は切診のなかでも重要な位置を占め、
臨床にこれを導入している治療家は少なくない。
しかしながら指頭感覚による判断であり、流派に
より指の当て方や、押さえる圧に違いが見られ、
再現性や客観性を問題視する向きもある。脈診を
客観化するためには、圧センサーを用いる方法が
ある。圧センサーの押圧方法は、固定された台か
ら伸ばした棒の先にセンサーを固定して行う方法
や、術者の指と拍動部間にセンサーをはさんで計
測する方法等が試みられている。いずれも外部の
振動や微細な体動が、測定波形に重なり易い。今
回、我々は軽量の計器を測定部に装着することで、
これらの影響を排除し、任意の圧で脈波の導出が
できる方法を考案し、若干の所見を得たので報告
する。
【方法】圧センサー(PM10ST研究所)を、アクリ
ル製の円筒内でネジにより上下に動く棒の先端に
固定し、外筒はマジックテープで脈診部に固定す
る構造とした。安静臥位の健常成人の橈骨動脈拍
動部にセンサー部を固定し、センサーが皮膚を押
す圧を0gから300gまで変化させた。センサーの出
力は歪アンプ(DPM-611A共和電業)で増幅後、押
圧を含む全成分と変動部を分離して記録し検討し
た。
【結果および考察】脈波は押圧が0のときは検出
できないが、押圧を増加すると共に波高が増し、
最大となり、その後再び小さくなった。脈波が最
大値の示す押圧の大きさは被験者により異なった
が、このときに脈波は最も鮮明であった。鮮明な
圧脈波を得るためには至適圧があると考えられる。
この圧は個人差があり、性別・年齢・体重等との
関係を現在検討中である。
【結語】新たに開発した脈波センサーにより、周
囲の振動を排除して鮮明な脈波を安定して導出で
きた。脈波の導出には至適圧が存在すると考えら
れた。
キーワード:脈診、橈骨動脈拍動部、圧脈波、開
発
【目的】難経の第十六難に記載されている腹診は、
東洋医学的な鍼灸診断法の一つとして活用されて
いる。しかし記載内容が漠然としており、腹診の
部位や症候との関係については明確にされていな
いことも多い。今回、難経腹診において、心・肝・
肺・腎の部における圧痛の有無と症状の調査を行
い、各部の圧痛出現と症状との関係について検討
をしたので報告する。
【方法】健常成人学生ボランティア40名を対象と
した。圧痛部位の調査は、臍を中心として、正中
線上は、胸骨体下端から臍上縁を心、臍下縁から
恥骨結合上縁を腎とし、横断線上は、右乳頭線と
の交点から臍右縁を肺、左乳頭線との交点から臍
右縁を肝として、それぞれを基準線とした。4直
線上を指頭にて按圧しながら圧痛の有無を確認し、
各配当の圧痛の出現状況を調査した。また臍から
圧痛点までの距離を測定し、基準線の距離に対す
る百分率を求めた。症状は、難経第十六難、五臓
に関係する症状等を基礎とした90項目の症状を聴
取し、症状の強さの程度を0∼3点で表現した。
【結果】各配当(心・肝・肺・腎)における圧痛
出現の部位は、臍から20∼50%の部位での出現が
多く見られた。圧痛と症状との関係では、各臓の
症状点数との間で相関は見られなかった。しかし、
肝と目の症状、肺と鼻の症状、肺と喫煙において
相関が見られた。
【考察】今回は健常者による調査であったが、難
経腹診の肝および肺の部位における圧痛が東洋医
学的な関連症状と関係のあること、肺の部位の圧
痛が喫煙と関係のあることが示唆された。
【結語】難経腹診における圧痛部位と症状との関
係を調査した。 その結果、圧痛部位は、臍から
20 ∼50%の部位での出現が多く見られ、肝と肺
の部位における圧痛と五官の症状および肺の部位
の圧痛と喫煙において相関が見られた。
キーワード:腹診、難経、五臓、五官
− 126 −
372
2P-D-15:00
腎不全患者と鍼灸外来患者における
音響学的音声解析
2P-D-15:14
舌診の色識別と証判断の検討
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
明治鍼灸大学大学院東洋医学基礎
和辻
関
真亮、北出利勝
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
篠原昭二
直、篠原昭二、山本晃久
渡邉勝之、水沼国男
【目的】東洋医学における診断法(四診)の一つ
に音声を聴覚的に診察する声診がある。しかし、
声診は他の診察法に比べ、臨床的意義などが明確
にされておらず、研究もほとんど行われていない
のが現状である。そこで今回、疾患に特異的な音
声指標を明らかにするため、慢性腎不全患者と鍼
灸外来患者の音声について音響学的検討を行った。
【方法】対象は本研究に同意した琵琶湖大橋病院
にて維持透析中の慢性腎不全患者35例(62±11歳)
。
対照群は明治鍼灸大学附属鍼灸センターに来院し
た患者40例(66±11歳)とした。音声標本は自然
な大きさ、高さで約2秒間発声された日本語母音
「あ」とし、DATレコーダーに録音後、音声解析ソ
フトにて基本周波数と音声スペクトルを求めた。
また、東洋医学の「腎」の状態について調査する
ため、10項目の問診票を用いた。
【結果】音声の高さを示す基本周波数について両
群に有意な差は認められなかった。音声の質を示
す音声スペクトルについては、2∼8kHz域のエネ
ルギーレベルが腎不全群では有意に高いことが認
められた。問診票の平均は腎不全群で5.6±2.0点、
鍼灸群では3.6±1.8点であり、項目別にみると尿
に関する項目で差が見られた。
【考察】基本周波数は声帯の振動数を示し、物理
的要因として声帯の長さや質量によって決定され
る。本研究では腎不全群と対照群に差が認められ
なかったことから、音声の高さによって慢性腎不
全を診断することは困難である可能性が示唆され
た。音声スペクトルにおいて2∼8kHzの高周波域
のエネルギーレベルが高いことは、聴覚的に雑音
が多いことを示し、臨床における声質の聴覚的評
価の必要性が示唆された。また、問診票の尿に関
する項目に差が見られたことから、慢性腎不全に
よる乏尿と声質が関連する可能性が示唆された。
【結語】 慢性腎不全患者を対象に音声を解析し
た結果、音声の高さに特徴はみられなかったが、
声質に雑音があることが示された。
【目的】舌診における舌の色判断は寒熱や血の状
態を診るのに活用され、証判断の重要な所見となっ
ている。舌の色判断は診察者個人の能力や臨床経
験による影響が大きいと考えられている。昨年、
我々が診察者の色識別能を調査したところ、舌写
真8枚の比較における色識別能検査では診察者個
人の臨床経験には差がないことが判った。そこで、
我々は診察者に舌写真を一枚ずつ提示し、色識別
能を調査した。また、同時に舌写真から舌証を判
断させ、その一致率を検討した。
【方法】対象は8例の健常成人(平均年齢;29歳)
とした。調査は舌写真6枚を用意し、色彩計の測
色で得た舌色・苔色の色分類の測定値を参考に、
舌写真を色分類した。また、その分類を基に舌証
を判断した。次に舌写真をコンピュータの画面上
に無作為に一枚ずつ出力し、対象者に舌色と苔色
の判断、寒熱の証判断を行ってもらった。色判断
と証判断はそれぞれ5段階のCategorical Sscale
(CS)とVisual Analogue Scale(VAS)を用いて
評価し、調査者による色分類及び舌証の判断との
一致率をみた。なお、調査環境は外光から遮光さ
れた一定光源下で行った。
【結果】舌色の判断ではCS評価の一致率35%、VA
S評価56%、苔色の判断ではCS評価の一致率54%、
VAS評価58%、証の判断ではCS評価の一致率40%、
VAS評価52%であった。舌色、苔色、証の判断は
調査者の解答との一致率が低かった。また、いず
れの判断もCS評価よりもVAS評価の方が一致率が
高かった。
【考察・結語】舌診を用いる上で舌の色識別は重
要な項目である、色識別は微妙な判断であり、特
に対照比較のない色識別では個人の主観によると
ころが大きい。本調査では舌色、苔色、証の判断
ともに一致率が低かった理由は舌写真の問題、調
査対象者の例数や臨床経験などが考えられた。今
後はこれらのことも検討を加えたい。
キーワード:聞診、音声、基本周波数、音声スペ
キーワード:舌診、舌色、苔色、色識別、証判断
クトル、血液透析
373
2P-D-15:28
内臓反応点を指標とした四肢刺激効
果の影響と機序
− 127 −
2P-E-09:00
鍼刺 激に伴う一過性心拍減 少反応
に関する検討
−仰臥位および坐位姿勢時における変化の比較−
神戸東洋医療学院
河村廣定
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
【目的】内臓疾患を対象とする鍼灸治療において
兪募穴や切診上の特異点(反応点など)を用いる
例は多いが、それらの報告では刺激法が多様であ
り刺激の質量と生体反応の関連が不明瞭である。
末梢神経を継続して刺激すると中枢において修飾
されることから、一過性の刺激と継続的刺激とで
は異なる生体反応を生ずる可能性が考えられる。
そこで、四肢、背部などに断続的に鋏刺激を加え、
刺激量依存性に影響される内臓の反応点領域を調
べ、鍼灸治療がどのような神経機序を介して、そ
の反応点に影響するのかについて検討した。
【方法】神戸東洋医療学院の学生28名を数名ずつ
のチームに分け、被験者はベットに仰臥位になっ
た。その他の者は各個に胸部、上腹部、および下
腹部に指先で触れ、反応点と思われる範囲をマジッ
クで記入し、足三里、合谷、大腸兪などの経穴を
選択して鍼灸刺激を加えた。刺激法は約1cm刺入
後、撚鍼30secを加え、3分間隔で3回繰り返して
抜鍼した。撚鍼の都度、反応点に触れ感覚的な変
化を10点法で記録した。刺激終了後3.6分時に同
様に反応点の変化を観察した。各自が記録した反
応点の変化を経時的に集計し、刺激部位の違いと
反応点改善率の違いから、鍼刺激がどのような神
経機序を介するのかについて検討した。
【結果および考察】上下肢の経穴刺激で下腹部、
上腹部、胸部反応点の変化を比較すると、下肢刺
激群では胸部反応点の変化率に比較して腹部の反
応点変化率が高かった。上肢刺激群では下肢刺激
群と反対に胸部反応点の変化率が高かった。また、
反応点は四肢刺激で充分には消失せず、反応点部
の直接刺激によって消失した。したがって内臓の
反応点に対する刺激効果は、刺激部位の脊髄神経
支配レベルの近位脊髄が強く影響され、体性自律
神経、あるいは体性内臓反射などを介して、それ
らに作用したと考えられる。
【結語】鍼灸刺激による内臓反応点の変化は、そ
の脊髄神経レベルに近隣する反射弓を介して影響
される。
キーワード:四肢、鍼刺激、反応点、内臓、脊髄
反射
妹尾千鶴子、香村真由、靫矢哲生
今井賢治、北小路博司
【目的】これまでに鍼刺激により心拍数の減少反
応が誘発されることが知られている。しかし、体
位変化に伴うその反応への影響は充分明らかには
なっていない。今回は、健常人を対象とし、安静
仰臥位および坐位時の鍼刺激に伴う心拍数減少反
応の出現動態の違いを観察した。
【対象および方法】健常人ボランティア20名(男
女各10名、平均年齢23才)を対象とした。測定用
電極を胸部に装着し、ポリグラフを使用して心電
図を記録した。得られた心電図のR-R間隔から瞬
時心拍数を算出した。10分間の安静の後、手三里
穴に1分間の雀啄を行い、これを坐位姿勢と臥位
姿勢で行った。尚、一被験者あたり両姿勢での刺
鍼をランダムに行い、それぞれの刺鍼による心拍
数の変化を比較した。
【結果】臥位に比べて坐位の方が、基準心拍数が
高くその差は約10拍程度であった。刺鍼に伴う心
拍数減少反応は、臥位での平均減少幅は3.6拍で
あったが、坐位では7.0拍であった。このことか
ら、坐位の方が刺鍼に伴う心拍数減少が大きく引
き起こされていることが判った。
【考察】今回、坐位により交感神経機能を亢進さ
せた状態での刺鍼時の反応と、安静臥位での反応
を比較したところ、坐位で心拍数の減少が大きく
認められた。すでに、刺鍼に伴う心拍数減少反応
の機序は、副交感神経を亢進させるという説、あ
るいは交感神経の抑制と副交感神経の亢進の両方
が関与しているという説などが報告されているが
いずれも安静臥位で確認された結果に過ぎない。
今回の結果からは少なくとも、坐位で基準心拍数
を高値にした際には刺鍼に伴い心拍数は大きく減
少するということが判り、今後その詳細な機序の
検討が必要であるものと思われた。
キーワード:鍼、瞬時心拍数、心電図R-R間
− 128 −
374
2P-E-09:14
鍼刺激が循 環系自律神経機能に及
ぼす影響
2P-E-09:28
手技別の鍼刺激による循環動態への
影響
−圧痛点への鍼刺激による検討−
中和医療専門学校
早稲田医療専門学校東洋医療鍼灸学科
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
二本松明、小岩信義、所 数樹、浅野貴之
坂本真紀、鈴木盛夫、町田雅秀
昭和大病院リハビリテーション科
久住
武
【目的】鍼灸の臨床では種々の疾患に対し圧痛、
硬結等の生体反応を重視し、施術を行う。その際、
刺激部位の状態の違いが生体に及ぼす影響を検討
することは、有効な施術を行う上で重要である。
今回は筋の伸張性収縮運動により圧痛点を作成し、
それに対する鍼刺激の影響を心拍とそこから得ら
れるパラメータを指標に検討した。
【対象及び方法】対象は健康成人7名(男3例、女4
例、28.0±8.6歳)とした。内訳は運動負荷約24
時間後に鍼刺激を行う鍼A群(男2例、女2例)、運
動負荷を行わず鍼刺激のみ行う鍼B群(男1例、女2
例)とした。圧痛点作成のための運動負荷は、非
利き手の前腕伸筋群に伸張性収縮運動を2セット
行わせた。鍼刺激の部位は非利き手の手三里穴
(手の陽明大腸経)とした。心拍測定は、非観血
的連続血圧測定装置BP-508(COLIN社)を用い仰
臥位で行い、28分間連続測定した。この間鍼は5分
目に刺入し、26分目に抜去した。刺鍼中、1回20
秒の旋撚術を5分おきに行った(計3回)
。鍼は50mm・
20号のディスポ鍼を20mm刺入した。心拍は、第Ⅱ
誘導より得られた心電図R-R間隔の値を用い、そ
の変動をスペクトル解析した。
【結果及び考察】鍼A群では運動負荷により手三
里部周辺に圧痛を認めた。3回の旋撚刺激により
鍼A群、鍼B群ともにR-R間隔が、刺鍼直前に比べ
延長する例を認めた。各旋撚終了後は鍼A群では
鍼B群に比べ延長する例を多く認め、延長した例
では心拍変動スペクトルHF成分が増加した。心拍
変動スペクトルHF成分は心臓迷走神経活動の指標
とされている。このことから鍼A群で各旋撚終了
後に認めたR-R間隔の延長は心臓迷走神経活動の
亢進により起きたものと考えられる。鍼刺激は刺
激部位の受容器の感受性の違い等により、循環系
自律神経機能に異なる影響を与える可能性が考え
られる。
キーワード:鍼刺激、循環系自律神経機能、R-R間
隔、心拍変動スペクトル解析、圧痛点
黒野由利子
矢野
忠
【目的】演者らは先の研究で、内関穴鍼刺激が狭
心症患者の冠動脈内径に影響を与え、また、自律
神経活動の異なった状態において健常者での循環
動 態の 変化 、 特に 心拍 出量 や筋 交感 神経 活 動
(MSNA)が有意に減少するとの結果を報告してき
た。今回、臨床で比較的使用頻度の高い手技と思
われる刺鍼手技を数種選択し、それらの鍼刺激が
自律神経活動の異なった状態での循環動態に与え
る影響に違いがあるかどうかついて検討したので
報告する。
【方法】健常成人ボランティア22名(男性14名、
女性8名、平均年齢27歳)を対象とした。測定項
目は血圧、心拍数、心拍出量で、刺激部位は内関
穴とした。鍼刺激は置鍼5分、雀啄2分、捻鍼2分、
鍼通電(1Hz、5V)10分とした。鍼は長さ 40 mm、
直径0.18mmのステンレスディスポーザブル鍼を使
用した。自律神経活動の異なる状態として、仰臥
位と立位を採用した。
【結果】鍼刺激前の安定している部分を100%と
し、各手技別の測定項目を変化率で表した。仰臥
位における各手技別の心拍出量の変化は、すべて
の測定項目において変化は見られなかった。一方、
立位における各手技別の心拍出量はいずれの手技
においても減少が見られ、特に置鍼5分、捻鍼2分、
鍼通電10分の刺激では有意な減少が観察された。
血圧及び心拍数はすべて有意な変化は見られなかっ
たが、立位においては心拍出量との反応と同様の
傾向を示した。
【考察と結語】仰臥位での鍼刺激はいずれの手技
においても心拍出量は変化せず、立位での鍼刺激
はいずれの手技においても心拍出量に変化が現れ、
なおかつ、血圧や心拍数の変化もそれぞれ同様の
変化を示したことから、今回選択した鍼刺激の種
類は同様の反応により心臓機能に影響を与えたと
考えられる。また、鍼刺激の手技により、反応の
大きさが異なったことから、各手技は生体に与え
る刺激量が異なることも示唆された。
キーワード:内関、心拍出量、鍼刺激、手技別、
体位変化
375
− 129 −
2P-E-09:42
鍼灸治療の血圧および脈拍に及ぼす
影響について
2P-E-10:00
ラットの末梢神経再生に及ぼす鍼通
電刺激の影響
関西鍼灸短期大学鍼灸学臨床教室
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
池藤仁美、坂口俊二、中吉隆之、川本正純
井上基浩、矢野
忠
明治鍼灸大学整形外科学教室
【目的】本態性高血圧症に対する鍼灸治療の血圧
調節については、一定の降圧効果が報告されてい
る。しかし、高血圧症以外の患者の鍼灸治療によ
る血圧・脈拍変動については報告が少なく、今回、
我々は治療前後の血圧・脈拍数を測定し、降圧剤
服用、非服用患者の変動について検討を行った。
【方法】対象者は、本学附属鍼灸治療所の患者で、
口頭にて同意の得られた18∼82歳の96名(男43名、
女53名、平均年齢54.1歳)であった。治療前、治
療後の血圧・脈拍を、左上腕部で2∼3回連続的に
測定した。測定には、オムロンデジタル自動血圧
計 HEM-907を使用した。
【結果】対象者を降圧剤を服用している群21名
(「服用群」)と、そうでない群99名(「非服用群」)
に分類した。「服用群」において治療後に有意な
血圧変化はみられなかったが、脈拍の有意な低下
がみられた(6.5拍、p<0.0001)。「非服用群」で
は治療後に収縮・拡張期血圧ともに有意な上昇
( 収 縮 期 3.1mmHg 、 p<0.05 、 拡 張 期 2.1mmHg 、
p<0.005)と脈拍の有意な低下がみられた(5.3拍、
p < 0.0001)。さ ら に、
「非 服 用群 」の 血 圧を WHO/
ISH(1999)の基準で分類し、検討した結果、「正
常血圧」の収縮期(3.8mmHg、p<0.05)と「至適
血圧」の収縮・拡張期血圧が有意に上昇していた
(収縮期4.1mmHg、p<0.05、拡張期 3.2 mmHg、p<0.
05)。
【考察】鍼灸治療後の脈拍減少と血圧上昇は、副
交感神経機能の亢進と、その変化に誘起された交
感神経機能の亢進によるものと考えられ、降圧剤
の服用者では、その作用により副交感神経機能亢
進に伴う交感神経機能の誘起現象が起こり難かっ
たと考えられる。
【結語】鍼灸治療により、降圧剤服用の有無に関
係なく、脈拍は減少するのに対し、血圧は降圧剤
を服用していないものでは若干上昇することが示
唆された。
キーワード:鍼灸治療、自律神経、血圧、脈拍
北條達也、勝見泰和
【目的】末梢神経の再生促進に対する鍼治療の臨
床的応用の基礎的研究として、ラットを用いて、
末梢神経の再生に及ぼす鍼および低周波鍼通電刺
激の影響を機能学的に検討した。
【方法】55匹の成熟ラットの坐骨神経に圧挫損傷
を与え、4つの実験群(Control群、Sham群、末梢
陰極群、末梢陽極群)に分けた。末梢陰極群は、
圧挫損傷部の近位側と遠位側に絶縁鍼を刺入し、
遠位側を陰極とした直流鍼通電刺激を毎日行った。
刺激条件は1Hz、10V、15分間とした。末梢陽極群
は末梢陰極群の極性を逆にし、遠位側を陽極とし
た。Control群は圧挫損傷後、処置を行わなかっ
た。Sham群は鍼の刺入のみ行い、電気刺激は行わ
なかった。神経再生の評価は、圧挫損傷後1週、2
週、3週、4週に行い、評価項目は足底部12部位に
お け る 誘 発 EMGの 出 現 率 、 潜 時 、 behavioural
test score、前脛骨筋の筋湿重量、組織学的評価
とした。
【結果】すべての評価項目において、Control群
とSham群の間に有意差は無かった。しかし、すべ
ての評価項目において、末梢陰極群はControl群
と比較して有意に良好な結果を示し、末梢陽極群
はControl群と比較して有意に劣悪な結果を示し
た。
【考察と結語】以上の結果から、鍼刺激のみでは
神経再生の促進に影響を及ぼさなかったが、低周
波鍼通電刺激は末梢神経再生に大きく影響するこ
とが明らかとなった。さらに、電極として使用し
た鍼の極性が重要な意義をもち、末梢を陰極とし
た直流鍼通電刺激は末梢神経の再生を促進し、末
梢を陽極とした直流鍼通電刺激は末梢神経の再生
を遅延することが明確となった。末梢陰極群が良
好な結果であった理由として、1)神経再生に必
要な神経栄養因子・接着因子等が陰極に向かって
電気泳動する性質、2)軸索損傷の二次損傷とし
て生じるCa2+ による近位断端の破壊の抑制等が考
えられた。鍼は深部組織への刺入が容易であり、
神経損傷後の神経再生の促進に有効な治療法とな
る可能性が考えられた。
キーワード:末梢神経、再生、低周波鍼通電刺激、
直流
− 130 −
376
2P-E-10:14
ラット阻血下肢への鍼刺激による筋
血流の変化
2P-E-10:28
数種の市販灸施灸時にみる皮膚局所
の微細構造特性
明治鍼灸大学外科学教室
関西鍼灸短期大学解剖学教室
小田
剛、咲田雅一
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
今井賢治
明治鍼灸大学基礎鍼灸医学教室
新原寿志
【目的】大腿動脈を切断した下肢阻血モデルラッ
トに鍼刺激を行い、筋血流の増加が得られるかど
うか、放射性マイクロスフィアー法を用いて検討
した。
【対象と方法】実験には体重320∼400gのSD系雄
性ラットを用いた。下肢の阻血は、麻酔下で右大
腿動脈を切断して作製した。鍼刺激は動脈切断後、
約24時間を経てから開始し、前脛骨筋に0.2mmの
ステンレス鍼を約3∼5mm刺入して行った。尚、鍼
刺激の方法は置鍼あるいは鍼通電(50Hz、0.1V、
0.3ms)とし、各種の刺激時間(5h/day、1h ×5/da
y、15min×5/day、1h/day、15min/day)で5日間
連続して行った。動脈切断7日後に放射性同位元
素を用いたマイクロスフィアー法で前脛骨筋の血
流量を測定し、無処置対照群、大腿動脈切断群、
切断+置鍼群、切断+各種の鍼通電群で比較した。
さらに筋萎縮の程度を比較するため、健側肢に対
する阻血肢の重量比を算出した。
【結果および考察】大腿動脈切断群では明らかな
筋血流の低下が認められた。一方、切断に鍼通電
を加 えた群では 血流量の 増加を確 認した。
5h/day、1h×5/dayといった長時間の鍼通電は血
流量の増加を引き起こす一方で、筋重量比は低下
していた。しかし15min×5/dayの刺激では、他群
に比べ顕著に筋血流量が増加し、さらに筋重量比
の変化はなく、筋萎縮を引き起こさないことが確
認された。
キーワード:鍼通電刺激、下肢阻血ラット、筋血
流量、放射性マイクロスフィアー法
五十嵐純、東家一雄、木村通郎
【目的】灸には様々な市販製品が用いられている
が、それらの施灸皮膚局所に与える影響について
は定かでない。本研究では数種の市販灸等を用い
施灸時における皮膚局所を微細構造レベルで調べ、
それぞれの灸による皮膚局所の微細構造変化の差
異を明らかにすることを目的とした。
【方法】実験動物:9週齢のWistar系雄性ラット
30匹(各群5匹)を用いた。施灸部位は前脛骨筋
の上三分の一の皮膚(足三里相当部位)に施灸し
た。A群;直接灸は約1mgの艾柱(山正)3壮の連
続施灸とし、1壮の艾柱が燃え尽きるごとに灰を
除去する群とB群;灰の上に重ねて行う群に分け
た。間接灸は、C群;灸熱緩和紙(灸点紙、大喜
多商会)を用いA群と同様の施灸を行う群、D群;
温筒灸(カマヤミニ(弱)、釜屋もぐさ本舗)を1
壮行う群、E群;台座灸(広重、亀屋佐京商店)
を1壮行う群とした。また無処置ラットを対照群
とした。組織学的検索:施灸48時間後に施灸皮膚
局所を採取、型の如くエポン樹脂包埋を行い、準
超薄切片および超薄切片をつくり、光学顕微鏡お
よび透過電子顕微鏡で観察した。
【結果と考察】A群:施灸直下中央の表皮および
真皮の浅層では上皮細胞や線維芽細胞の核および
膠原線維の走行が不明瞭となり、熱により強く破
壊されていた。しかし真皮の深層では膠原線維の
間に炎症性細胞が散在していた。B群もほぼ同様
の結果であった。C群:艾柱の中央直下の皮膚で
は、表皮の破壊やdermo-epidermal junctionの解
離による水疱の形成、真皮浅層から深層にわたる
炎症性細胞や線維芽細胞の散在が認められ、A群
およびB群に比べて弱い組織破壊像が認められた。
D群、E群共にほぼC群と同様の像を呈していた。
【結語】直接灸と間接灸では前者の施灸皮膚局所
に強い熱性の変性がみられた。また後者でも温筒
灸、灸熱緩和紙、台座灸いずれも程度に差はある
が皮膚組織に損傷がみられた。
キーワード:ラット、皮膚、直接灸、間接灸、微
細形態
377
2P-E-14:00
振動誘発指屈曲反射に及ぼす経皮的
通電刺激の影響
− 131 −
2P-E-14:14
屈曲反射を指標にした鍼刺激の響き
感覚の強さと鎮痛効果の関係につい
て
日本鍼灸理療専門学校1)、(財)東洋医学研究所2)、
昭和大学医学部第二生理学教室3)
矢嶌裕義1,2)、平川稚佳子2)、高倉伸有1,2、3)
白石武昌2 )、本間生夫2、3)
【目的】指尖掌側に振動刺激を与えて誘発される
振動誘発指屈曲反射(VFR)が、反射誘発側また
は対側の橈骨、正中、尺骨神経支配領域への鍼刺
激で抑制される事を報告した。今回は、橈骨(少
商穴)、正中(中衝穴)、尺骨(少沢穴)神経支配
領域それぞれに、侵害性(痛み刺激)、非侵害性
(非痛み刺激)経皮的通電刺激を与え、 VFR 抑制
効果について検討した。
【方法】被験者はインフォ−ムドコンセントを得
た健康成人5名とした。被験者の右中指指尖掌側
に周波数60Hz、振幅1mmの振動刺激を与え VFR を
誘発した。中指の屈曲力は振動端子に取り付けた
荷重変換器により検出し、増幅器を介しペンレコ−
ダ−にて記録した。経皮的通電刺激はSSP電極を
用い、持続時間1msの単一矩形波を右少商穴、中
衝穴、少沢穴のそれぞれに1Hz、5分間与えた。刺
激電圧の強度を、0Vを対照(cont)群、電気刺
激を感じ始める電圧の値をTouch Threshold(TT)
群、痛みを感じ始める電圧の値をPain Threshold
(PT)群と設定した。指屈曲力の測定は、各刺激
部位のそれぞれの刺激強度について刺激前、刺激
中、刺激後に行った。実験結果の解析は振動刺激
中に出現した中指の最大屈曲力をVFRの指標とし、
分散分析、Fisherの多群比較を用いて行った。
【結果及び考察】TT群においては、いずれの部位
でもVFRはcont群に対して有意な減少は認められ
なかった。一方、PT群における各部位の通電刺激
中のVFRはcont群に対して有意(P<0.05)に減少
し、各部位間での減少には有意な差は認められな
かった。VFRが侵害刺激によって抑制され、非侵
害刺激によって抑制されなかったことは、VFRの
抑制には侵害刺激の入力が重要であることを示し
ている。侵害刺激で起こる橈骨、正中、尺骨神経
のいずれの皮膚求心性神経線維の活動が指屈筋を
支配する遠心性線維に対して同程度の抑制効果を
示したことは興味深い結果である。
キーワード:振動誘発指屈曲反射、経皮的通電刺
激、橈骨神経、正中神経、尺骨神経
明治東洋医学院専門学校
角谷英治
【目的】鍼治療の効果発現には、響き感覚が重要
視されていが、響きの感覚の強さの差が鍼治療効
果に影響を与える可能性も考えられる。そこで、
痛みの程度の客観的指標として侵害刺激により誘
発される逃避性屈曲反射を用いて、鍼刺激の響き
感覚の強さと鎮痛効果の関係について調べた。
【方法】インフォームド・コンセントを得られた
健康成人8名(22-41歳)を対象とした。屈曲反射
の誘発刺激は右下肢外果後方を電気刺激すること
により行い、屈曲反射の記録は右大腿二頭筋外側
部から行った。電気刺激は反射筋電図の閾値の約
1.1倍の刺激強度とした(5trains、100Hz、2ms)。
鍼刺激前として10秒毎に10回の電気刺激を行った
後、鍼刺激中として同様の電気刺激に加えて、左
手三里穴へ、ほとんど響きを感じない鍼刺激、心
地よさを感じる中等度の響きを感じる鍼刺激、き
つさを感じる強い響きを感じる鍼刺激の3種類の
鍼刺激のいずれかを行った(40mm、20号鍼)。鍼
刺激の響き感は、鍼刺激中持続的に感じるように
維持した。鍼刺激前と鍼刺激中の誘発筋電図波形
をそれぞれ加算平均し、誘発筋電図波形が出現し
ている205msの期間の筋電図積算振幅値を算出し、
鍼刺激前と鍼刺激中で比較した。
【結果】ほとんど響きを感じない鍼刺激では、屈
曲反射の筋電図は312.6±147.2μV(mean±SD)か
ら295.4±151.3μVへとほとんど変化しなかった。
中等度の響きを感じる鍼刺激では 365.0 ± 185.6
μV から254.9±152.7μVへと屈曲反射の抑制が
見ら れた。 強い響きを感じる鍼 刺激では 267.1
±136.7μVから441.6±197.2μVへと屈曲反射の
増大が見られた。
【考察および結語】「心地よさ」を感じる強度の
鍼刺激では鎮痛効果がみられたが、「ほとんど感
じない」弱い鍼刺激および「きつさ」を感じる強
い響きの鍼刺激では鎮痛効果はみられなかった。
これの結果には、痛みに対する情動相が関与して
いるものと考えられる。
キーワード:鍼鎮痛、屈曲反射、響き感覚
− 132 −
378
2P-E-14:28
マニュアル鍼刺激がヒト運動誘発電
位に及ぼす影響
2P-E-15:00
白血球の自律神経における井穴(少
商、関衝)の反応について
明治鍼灸大学基礎鍼灸医学教室
NPO法人東洋医学研究所
仲原泉子、水嶋丈雄
村上高康、新原寿志、西村展幸、尾崎昭弘
明治鍼灸大学第一生理学教室
廖
埼玉東洋医療専門学校
登稔、西川弘恭
浦田
繁
【目的】五兪穴の井穴は心下満を主治すると『難
経』68難に記載がある。安保・福田理論では関衝
以外の手の井穴は副交感神経を優位にするとされ
ている。今回、我々は関衝と少商が自律神経に影
【目的】本研究は、鍼刺激がヒト運動機能に及ぼ
す影響を明らかにするために、種々のマニュアル
鍼刺激が、経頭蓋磁気刺激(TMS)により誘発さ
れるヒト運動誘発電位(MEP)に及ぼす影響につ
いて検討すると共に、α運動ニューロン及び筋の
興奮性を反映するF波とM波に及ぼす影響について
検討した。
【方法】対象は、インフォームド・コンセントを
得た健康成人男性7名(26±3歳)とした。第一背
側骨間筋(FDI)または小指外転筋(ADM)のMEP
は、それぞれTMS刺激装置付属の8の字コイルまた
は円形コイルを介して、任意の大脳皮質運動野を
磁気刺激することにより誘発した。鍼刺激は、
FDIへ雀啄術(刺激時間1分間、頻度1Hz、深度10mm)
、
回旋術(1分間、1Hz、3mm)、単刺術(10mm)のい
ずれかを与えることにより行った。FDIまたはADM
のF波とM波は、手関節上の尺骨神経に最大上電気
刺激を与えることにより誘発した。
【結果】FDIのMEP振幅比は、同筋への雀啄刺激後1
分と5分の時点で、それぞれ、70±7%( 平均±標準
誤差)、76±11%であり、対照群(無刺激)と比較し
て有意な抑制が観察された。
(p<0.05、p<0.05)。ま
た、同刺激によりADMのMEP振幅比も同等の抑制が
観察された。しかしながら、FDI への回旋術、単
刺術ともに有意な変化は観察されなかった。一方、
FDIへの雀啄術による同筋とADMのF/M振幅比とM波
振幅比の変化は観察されなかった。
【考察と結論】これらの結果から、雀啄術のよう
な侵害性の強い鍼刺激は、刺激筋のみならずその
周辺筋の運動路を抑制することが明らかとなった。
また、この抑制には、α運動ニューロンと筋の興
奮性はあまり関与しない可能性が示唆された。
キーワード:経頭蓋磁気刺激、運動誘発電位、F
波、M波
響を与えるか検討したのでここに報告する。
【方法】対象は患者35名のうち関衝に24名(男性
14名
女性10名
(男性7名
女性3名
平均年齢53.2歳) 少商に10名
平均年齢65.4歳)が長さ3cm、
0.14mmのセイリンディスポ鍼を用いて刺鍼した。
治療前と井穴治療後に血液検査を行いリンパ球
(以下Ly)顆粒球(以下Gr)の数値を測定した。
【結果】関衝群の平均値(Ly)前29.0±10.0%後
31.9±11.2%(Gr)前62.9±11.5%後61.4±12.1%。
少商群の平均値(Ly)前34.5±10.6%後30.4±10.6
%(Gr)前58.0±12.1%後61.2±8.3%。関衝は治療
後に(Ly)が増加(Gr)が減少した。少商は治療
後に(Ly)が減少(Gr)が増加したがこれらに有
意差は認められなかった。しかし関衝群を白血球
5000以 上 と以 下 で分 け ると 、 5000 以 上の 群 の
(Ly)の平均値が治療前27.6±9.7%後31.9±10.9%
で有意差をもって増加した。(P<0.1)
【考察と結語】白血球の自律神経支配においては
白 血球 数と 新陳 代 謝は 関係 する 。 白 血球 数 が
5000 以上は実証、以下は虚証であるため生体側
の虚実で反応が変わると考えられる。関衝と少商
の群を比較すると少商は治療後に顆粒球の増加傾
向を示したことから交感神経優位になったことが
推察される。顆粒球の増加が多く認められた少商
の反応は古典に矛盾していないが、同じ井穴であ
る関衝は生体側の虚実において効果が分かれた。
これは自律神経理論と合致するが三焦経は副交感
神経の作用が強いためと考えられる。
キーワード:自律神経、白血球、井穴、少商、関
衝
379
− 133 −
2P-E-15:14
鍼治療が尿中の過酸化脂質排泄量に
及ぼす影響
2P-E-15:28
レモンの精油によるアロマ吸入が自
律神経系に及ぼす効果の評価
中京女子大学大学院健康科学研究科
杏林大学保健学部生理学教室
加藤豊広
加藤幸子、秋元恵実、小林博子、嶋津秀昭
【目的】酸素を使用してエネルギーを産出してい
る生体には、常に酸化という危険性がつきまとう。
東海医療学園専門学校
生体はこれらの酸化系に対する防御系を有してい
【目的】アロマセラピーは近年、代替医療として
注目を集め臨床への応用が行われ始めている。ア
ロマセラピーで使用される精油は吸入、塗布、マッ
サージ等により生体内に吸収させることで効用が
あるとされており、その範囲は神経系、免疫系、
情動、内分泌等多岐にわたる。今回精油の吸入に
より生体の自律神経系が受ける影響に着目し、循
環動態の分析および瞳孔反射の分析を行った。さ
らに、血管平滑筋の応答を血管中膜の弾性特性を
数値化して評価した。
【方法】健康成人10名を対象として、レモンの精
油をアロマポットで炊き15分間吸入を行った。吸
入直後より5分ごとに手掌温、手掌血流量、血圧、
脈拍、血管弾性特性を計測し、吸入前と15分後に
体温と瞳孔径を計測した。瞳孔径の計測に際して
は頭部を固定し、デジタルカメラにて眼球部を記
録し、画像上で直径を計測した。また、コントロー
ル群は同様の項目を精油の吸入無しにて計測した。
【結果】アロマ吸入群の変化のうち最高血圧、最
低血圧、脈拍ではコントロール群よりやや低下す
る程度で有意差はほとんどみられなかった。上腕
動脈の弾性率も大きな変動は認められなかった。
さらに、体温、手掌温ではコントロール群、アロ
マ吸入群とも有意差はなかった。これに対し、手
掌血流量ではコントロール群に変化がみられなかっ
たが、アロマ吸入群は直後にやや低下し15分後に
は安静時の約20%増となった。また、瞳孔径はコ
ントロール群と比較して約7%小さかった。
【考察と結語】一般にレモンの精油に血行促進作
用があることが知られているが、末梢の血流量の
増加と同時に、瞳孔の縮小が認められたことから、
レモンの精油によるアロマ吸入には交感神経系の
抑制または副交感神経系の促進の効果が存在する
ことが示唆される。
るが、加齢に伴ってその作用が減弱し脂質過酸化
が亢進すると考えられている。鍼灸治療は、「足
の三里」の灸などで知られるように、古来より健
康寿命を延ばすといわれる。そこで今回、治療前
後の尿中過酸化脂質の量を指標にして、鍼治療の
抗老化作用を検討した。
【方法】対象者は50代と30代の男性2名及び40代
と30代の女性それぞれ1名と20代の女性3名で、そ
のうち2名は間隔をあけて2回実験を行った(延べ
人数9名)。治療は古典的な全身調整である「本治
法」と肩こりなどの主訴に対して「局所治療」を
トリガーポイント療法で行った。 尿は治療前日
(実験1日目)、治療日、治療の翌日5日、9日、13日
及び16日目とし、24時間尿を採取した。過酸化脂
質の測定はチオバルビツール酸法で、標準物質と
してマロンジアルデヒドを用いた。
【結果】治療前日の過酸化脂質量は、2086 ± 832
nmol/日であったのに対して、治療日1889±854、
3日目1880±680、5日目1832±6049日目1989±561、
13 日 目 1806 ± 439、 16 日 目 1510 ± 464nmol/日
(この日のみ被験者4名)となり、いずれも治療前
日より過酸化脂質排泄量は低下した。
【考察】鍼治療後の尿中過酸化脂質排泄量は低下
した。過酸化脂質生成量は日内変動が大きくかつ
日常生活活動強度によっても左右される。今後は
運動負荷などで過酸化脂質が大量に増加する条件
下で鍼治療を行い、脂質過酸化を抑制する効果の
有無を検討したい。
【結語】鍼治療の脂質過酸化抑制効果を検討した
結果、鍼治療は有効である可能性が示唆された。
キーワード:鍼治療、過酸化脂質、抗老化作用
谷
直樹
キーワード:アロマセラピー、血圧、血流、瞳孔
反射
− 134 −
380
3O-C-09:00
機能性不妊 に有効であったと考え
られる鍼灸治療(第2報)
3O-C-09:12
難治 性不妊症に対する鍼灸 治療の
検討(第4報)
−41歳で、鍼灸治療後に自覚症状及び他覚的身体
−子宮内膜形状不良患者にARTと鍼灸治療を併用
所見の改善が観察され妊娠に至った1症例−
藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院産婦人科1)
藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院 2)
した57名の追試−
東洋医学研究所 グループ・明生鍼灸院
小林美鈴、高橋順子、鈴木裕明
中和医療専門学校3 )
清水洋二 1,3)、山口陽子 1)、中沢和美1)
【目的】一般に女性の生殖能力は30歳前後を境に
年齢とともに低下し、40歳を過ぎると妊娠は困難
になることが多い。前回我々は、28歳と31歳の不
妊症患者について不妊治療と鍼灸治療を併用する
ことによりBBT、子宮内膜、卵胞直径等の改善が
確認され妊娠に至った症例を報告した。今回は41
歳不妊患者で鍼灸治療前後で一般不妊検査に変化
無く自覚症状及び他覚的身体所見に改善がみられ
妊娠に至った症例を報告する。
【症例】41歳、主婦、平成9年第1子出産。第2子
希望のため平成12年7月、当科に再来院。
続発性不妊症及び夫、無精子症にて再検査及び不
妊治療開始。月経は整25日∼30日、BBTは2相性、
排卵時の内分泌、卵胞直径及び子宮内膜厚は妊娠
可能レベルよりやや下であった。自覚症状及び他
覚的身体所見は、睡眠不足感・脱力感・イライラ・
手足の強い冷感(自・他覚的)及び下腹部の張り
軟弱、であった。不妊治療は、排卵誘発とAIDで
あった。平成13年8月より鍼灸治療開始。治療方
法は基本的に週1回で、三陰交に灸頭鍼、関元、
中極、子宮点、次 、腎兪に灸(温灸2∼3壮)を
行った。
【結果】不妊治療により排卵時の内分泌、卵胞直
径、子宮内膜厚は妊娠可能レベルの範囲内に入っ
た。更に鍼灸治療併用後4回目手足の強い冷えが
やや改善、10回目脱力感及びイライラ感改善、28
回目睡眠不足感改善、34回目下腹部の張り軟弱や
や改善し38回目終了後、平成14年6月に妊娠が確
認された。
【考察及び結語】今回の症例は不妊治療によりルー
チンの不妊検査で妊娠可能レベルを維持されたに
もかかわらず不妊状態が続き、鍼灸治療併用によ
り、自覚及び他覚的身体所見の変化が回数ととも
に明瞭となり妊娠に至ったものである。高齢不妊
の場合妊孕率は加齢とともに低下していく場合が
多いが、今回の結果より高齢の不妊症患者に対し
て鍼灸治療を併用する事により妊娠の可能性が上
がると考える。
【目的】第51回学術大会において「難治性不妊症
に対する鍼灸治療の検討(第1報)」と題して、ART
を繰り返し行うも子宮内膜形状不良にて胚移植に
至らなかった難治性不妊症患者に対し、鍼灸治療
後のART1周期における子宮内膜形状改善率と妊娠
率を報告した。今回、第1報での対象患者における2
周期・3周期の子宮内膜形状改善率と妊娠率を追試
検討したので報告する。
【方法】第1報における対象患者(子宮内膜形状
不良患者57名)の1周期における子宮内膜形状改
善群中、非妊娠群17名及び子宮内膜形状非改善群2
6名の計43名を対象に鍼灸治療を継続し、2周期・3
周期の各周期における子宮内膜形状改善率と妊娠
率、ならびに3周期終了時における累積した子宮内
膜形状改善率と妊娠率について調査検討した。
【結果】第1報の結果では、鍼灸治療併用後の1周
期における子宮内膜形状改善率及び妊娠率は54.4
%/45.1%であったが、今回の結果では、2周期で
は75.0%/44.4%、 3周期では60.0%/66.6%となっ
た。また、鍼灸治療開始から3周期までの累積し
た子宮内膜形状改善率は92.5%、妊娠率は 96.0 %
となった。
【考察と結語】ARTを繰り返し行うも、子宮内膜
形状不良にて胚移植に至らなかった対象患者が、
鍼灸治療併用にて胚移植可能な子宮内膜形状に改
善し、妊娠率においても高い結果が得られた。
ART における1周期妊娠率は約30%で、その後繰り
返す毎に妊娠率は低下し(4周期以降10%以下)、
厚生労働省研究班による累積妊娠率の報告でも、
ART5周期以降の1周期毎妊娠率が極端に低下して
いる。今回の対象患者の条件がART既往周期5周期
以上であることを考慮すると、鍼灸治療併用・継
続により5周期以上のARTを行っても、各周期の改
善率及び妊娠率が共に高かったことより、鍼灸治
療は子宮内膜形状不良の難治性不妊症患者に対し
効果があると示唆された。
キーワード:高齢不妊、自覚症状、他覚的身体所
キーワード:難治性不妊症、ART、子宮内膜改善
岩田治郎 2)、川瀬
見
馨2)
率、累積妊娠率、鍼灸治療
381
− 135 −
3O-C-09:24
不妊症患者 の不定愁訴に対する鍼
灸治療の検討(第1報)
3O-C-09:36
不妊 症患者の不定愁訴に対 する鍼
灸治療の検討(第2報)
−妊娠群・非妊娠群における
−不定愁訴指数の減少と妊娠との関係−
健康チェック表の分析−
東洋医学研究所 グループ・明生鍼灸院
東洋医学研究所 グループ・明生鍼灸院
北國善太、片岡泰弘、沓名勇典、鈴木裕明
【目的】演者らは第51回学術大会において「難治
性不妊症に対する鍼灸治療の検討(第3報)」と題
して一般患者と不妊症患者との初診時における不
定愁訴の状態を比較検討した。今回、不妊症患者3
77名を妊娠群(以下A群)、非妊娠群(以下B群)
に分類し、初診時における不定愁訴の状態を比較
検討したので報告する。
【方法】1996.1∼2001.10までの5年10ヶ月間に明
生鍼灸院に来院した不妊症新患患者377名(最少
年齢23歳、最高年齢50歳、平均年齢33.2±4.2歳、
平均不妊歴5.5±3.5年)を対象として(社)全日
本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班が作成した健康
チェック表を使用し、A群(142名)とB群(235
名)とに分け、以下の5項目において調査分類し
比較検討を行った。①重症度別分類②年齢別分類
③健康チェック表の層別分類④健康チェック表の
層別の各項目別分類⑤健康チェック表の各項目別
分類
【結果】①重症度別分類において健康チェック表
の合計点数の平均点及び重症度判定はA群におい
ては14.8±8.5点で軽症、B群においては17.0±
10.1点で中等症となりB群の方が重症度において
高かった。②A群は最少年齢23歳、最高年齢40歳、
平均年齢32.0±3.6歳となりB群は最少年齢 24歳、
最高年齢50歳、平均年齢34.0±4.4歳となった。
③層別分類において差はなかった。④健康チェッ
ク表の層別の各項目別分類において差はなかった。
⑤健康チェック表の各項目別分類において差はな
かった。
【考察と結語】結果より初診時の年齢が40歳以下
であれば妊娠の可能性があると考えられる。また、
不妊症患者が初診時に訴えている不定愁訴の項目
は妊娠の指標とはならなかったが、不定愁訴の重
症度が低いと妊娠に至り易かった。これより不妊
症患者の初診時における妊娠の指標が不定愁訴の
重症度判定と年齢から判別できる可能性が示唆さ
れた。
キーワード:妊娠群、非妊娠群、健康チェック表、
不定愁訴
片岡泰弘、北國善太、沓名勇典、鈴木裕明
【目的】演者らは第51回学術大会で「難治性不妊
症に対する鍼灸治療の検討(第3報)」にて初診時
における不妊症患者の不定愁訴に関する報告をし
た。臨床上、経験的に不定愁訴の減少が妊娠に関
与することが示唆されていたが、経時的に追跡調
査を行い定量的に見出すことは無かった。今回、
以下の方法で調査検討をしたので報告する。
【方法】明生鍼灸院に2001.5∼2002.6の約1年間
に来院した不妊症新患患者266名を対象に鍼灸治
療を行い、(社)全日本鍼灸学会研究委員会不定
愁訴班が作成した健康チェック表を3クール(1クー
ルは7回の治療とする)の期間使用して不定愁訴
指数減少率を算出し、妊娠群(以下A群)と非妊
娠群(以下B群)における以下の3項目について
比較検討した。
①重症度判定②初診時から3クール間の重症度判
定の推移③効果判定
【結果】有効回答数はA群56名中26名(平均年齢
32.8±3.1歳、平均不妊歴5.8±3.9年、平均治療
日数129.0±41.8日)、B群210名中87名(平均年
齢34.6±4.4歳、平均不妊歴6.1±3.5年、平均治
療 日 数 118.8 ± 45.5 日 ) で 合 計 266 名 中 113 名
(42.4%)であった。
①初診時はA群が軽症、B群では中等症が最も多
く、A群がB群より重症度は低かった。3クール時
は両群ともに軽症が最も多く差はなかった。②A
群・B群ともに不定愁訴指数は減少し、重症度は3
クール時で軽症は不変、中等症は軽症に、重症は中
等症に改善した。③A群は有効46.2%、著効30.8%、
B群は著効41.4%、有効29.9%の順であった。
【考察と結語】結果より、不定愁訴が少ないこと
は妊娠に至り易く、不定愁訴の減少が妊娠に関与
すると考えられた。なお、非妊娠群においても同
様に不定愁訴が減少したことからは、非妊娠群に
対する将来の妊娠の可能性があるとともに、妊娠
に至るには不定愁訴の減少以外の要因が存在する
ことも示唆された。
キーワード:不妊症、健康チェック表、不定愁訴
指数、重症度判定
− 136 −
382
3O-C-09:48
不妊症患者 の不定愁訴に対する鍼
灸治療の検討(第3報)
−明生鍼灸院における不妊症患者の動向調査−
東洋医学研究所 グループ・明生鍼灸院
木津正義、北國善太、片岡泰弘
沓名勇典、鈴木裕明
3O-C-10:00
不 育症 に対 する 鍼灸 治療 の検 討
(第1報)
−反復流産患者における流産率の検討−
東洋医学研究所 グループ・明生鍼灸院
鈴木裕明、高橋順子、木津正義、小林美鈴
【目的】演者らは第51回学術大会において「難治
性不妊症に対する鍼灸治療の検討(第3報)」にて
初診時における不妊症新患患者377名の不定愁訴
に関する報告をした。今回は、前回の対象患者の治
療経過と動向を調査したのでここに報告する。
【方法】前回の対象患者377名に鍼灸治療を行い、
妊娠に至った142名(平均年齢32.0±3.6歳、平均
妊娠クール数6.2±5.1クール)及び途中で鍼灸治
療を離脱した167名(平均年齢34.2±4.7歳)を対
象とし、以下の5項目において調査分類し検討を
行った。①不妊歴別妊娠方法②不妊歴別妊娠クー
ル数(1クールは鍼灸治療7回とし、7回に満たな
いものは0クールとした)③年齢別妊娠方法④年
齢別妊娠クール数⑤鍼灸治療離脱者の動向。なお、
妊娠方法を自然妊娠、一般不妊治療、高度生殖医
療(以下ART)と区分した。
【結果】①不妊歴5年未満における妊娠方法にお
いては 差が見られず 、 不妊歴5年以 上になると
ART による妊娠が最も多かった。②不妊歴2年未
満では6クールまでに6割が妊娠に至った。③ 30
歳以下では自然妊娠が最も多く、31∼40歳でのAR
Tによる妊娠は、自然妊娠や一般不妊治療の約3倍
であった。④30歳以下では6クールまでに5割以上
が妊娠に至った。36歳以上では3クール未満での
妊娠が最も多く、12クール以上は他の年齢層に比
べて少なかった。どの年齢層においても9クール
までに約7割が妊娠に至った。 ⑤ 2002.9 時点に
おいて69名が治療継続中であり、離脱者(167名)
の約5割は3クール未満で離脱していた。
【考察と結語】今回の結果より、不妊症治療に対
する鍼灸治療において、不妊原因や治療内容に関
わらず、9クール程度の鍼灸治療回数が必要であ
ると示唆された。また、鍼灸治療離脱者は3クー
ル未満までに多くみられたことより、鍼灸治療を
継続することの重要性が示唆された。
【目的】不育症の中でも、連続2回の流産を繰り返
す反復流産の原因は多岐に亘っており、西洋医学
においても解明が急がれているが、依然、原因不明
の流産を繰り返すものも多い。そこで今回、このよ
うな西洋医学的原因の不特定な反復流産患者に対
し鍼灸治療の効果を検討したので報告する。
【方法】1998.5∼2002.5までの4年間に明生鍼灸
院を来院した西洋医学的原因の不特定な反復流産
患者28名のうち、鍼灸治療を一定期間継続し妊娠
に至った18名(初診時の最少年齢26歳、最高年齢3
9歳、平均年齢31.0±2.8歳、平均不妊歴4.0±2.8年)
を対象とし、流産率及び生児獲得率について調査
検討した。
【 結果 】対 象患 者18 名中、 流 産群3 名( 流産 率
16.7%)、生児獲得群15名(生児獲得率83.3%)と
なった。
【考察と結語】一般に偶発的自然流産頻度は13.0
∼15.0%であるが、反復流産における3回目妊娠時
流産率は31.8∼43.7%と連続した流産は流産率が
高くなることは種々報告されている。しかし、今回
の結果より、対象患者は鍼灸治療を行うことで、偶
発的自然流産頻度と同様の低い流産率(16.7%)
が得られたことより、鍼灸治療は反復流産に対し
効果があったと示唆された。近年、反復した流産を
経験した者は医療機関を受診し、検査及び治療を
受けることを望む夫婦が増えてきており、また、専
門医療機関においても反復因子を究明する対象者
と考え、検査を進めることを妥当としている。今回
の結果より、鍼灸治療が反復流産に対して効果が
あったことから、鍼灸治療も一選択肢の可能性が
あると考えられる。さらに、胎児が拒絶されず妊娠
継続するには巧妙な免疫学的妊娠維持機構の関与
が容易に想像されること、生体における鍼灸治療
効果の免疫学的関与が多数報告されていることか
ら、不育分野における鍼灸作用機序の解明を今後
の課題としたい。
キーワード:不妊症、不妊歴、妊娠クール数、妊
キーワード:反復流産、不育症、流産率、生児獲
娠方法、鍼灸治療
得率、鍼灸治療
383
3O-C-10:12
不 育症 に対 する鍼 灸治 療の 検討
(第2報)
− 137 −
3O-C-10:24
妊娠中の腰痛に対する鍼灸治療効果
の検討
−習慣流産患者における流産率の検討−
筑波技術短期大学鍼灸学科
東洋医学研究所 グループ明生鍼灸院
筑波技術短期大学附属診療所
高橋順子、木津正義、小林美鈴、鈴木裕明
【目的】不育症の中でも、連続3回以上の流産を
繰り返す習慣流産は患者の認識も確立しており、
専門機関を受診し原因の究明を行うも、依然、原
因不明の流産を繰り返すものが半数である。そこ
で今回、このような西洋医学的原因の不特定な習
慣流産患者に対し鍼灸治療の効果を検討したので
報告する。
【方法】1998.5∼2002.5までの4年間に明生鍼灸
院を来院した西洋医学的原因の不特定な習慣流産
患者14名のうち、鍼灸治療を一定期間継続し妊娠
に至った7名(初診時の最少年齢29歳、最高年齢 3
9歳、 平均年齢 34.0±3.7歳、平均 流産回 数3.4±
0.5 回、平均不妊歴5.6±2.6年)を対象とし、流産
率及び生児獲得率について調査検討した。
【結果】対象患者7名中、流産群1名(流産率14.3%)
生児獲得群6名(生児獲得率85.7%)となった。
【考察と結語】一般に偶発的自然流産頻度は13.0
∼15.0%であるが、習慣流産における次回妊娠時流
産率は44.6∼60.0%と連続した流産は流産率が高
くなると種々報告されている。しかし、今回の結果
より対象患者は鍼灸治療を行うことで偶発的自然
流産頻度と同様の低い流産率(14.3%)を得たこ
とより、鍼灸治療は習慣流産に対し効果があった
と示唆された。鍼灸治療の不育症における作用機
序は不明であるが、不育原因の1つに子宮動脈の血
流不全がいわれており、鍼灸治療が血流改善に効
果があることから、子宮動脈における血流改善の
可能性が示唆される。また、胎児が拒絶されず妊娠
継続するには巧妙な免疫学的妊娠維持機構の関与
が容易に想像されるも未だ不明であり、これまで
にも鍼灸治療が内分泌・免疫系等に影響を与える
との報告が多数あることから、婦人科(不育)分
野でも何らかの関与が推察されることより、今後、
西洋医学的原因の不特定な不育症患者に対する鍼
灸治療による作用機序の解明を課題としたい。
キーワード:習慣流産、不育症、流産率、生児獲
得率、鍼灸治療
形井秀一
青田忠洋、村山武志
【目的】演者らは、1998年3月から2002年11月ま
での約4年8ヶ月の間に、妊娠中の腰痛の患者 55
名に対して鍼灸治療を行い、一定の効果を得るこ
とが出来たので報告する。
【対象と方法】対象は腰痛を訴える妊婦55例で、
平均年齢30.3±3.9歳、初産婦17例、経産婦38例
で あ った 。 平 均身 長 158.0 ±4.5cm 、 平均 体 重
56.6 ±6.7kg、妊娠前に比べた平均増加体重(29
例)7.3±9.0kg、平均血圧104.0/59.9mmHgであっ
た。平均罹病期間8.4±7.6週、平均治療日数30.0
±32.9日、平均治療回数4.0±2.8回であった。
刺鍼は、下腿か痛み局所の皮下に数ミリ刺入し、
単刺術や雀啄術を行った。また、棒灸を痛み局所
に行った例もあった。
治療の評価は、初診時の痛みの強さを10として、
スコアが5∼6となった場合をやや有効、3∼4となっ
た場合を有効、2以下となった場合を著効とした。
【結果】結果は終了34例、中断18例、継続3例で、
治 療 効 果 は 、 著 効 26 例 (47.3%)、 有 効 13 例
(23.6 %)、やや有効10例、無効1例であり、有効
以上が39例(70.9%)であった。
【考察と結語】一般的に、筋筋膜性の腰痛に対し
て鍼灸は効果が高いと報告されているが、妊娠中
の腰痛55例に対しても、70%以上と高い治療効果
を示した。
しかし、物理的な体重等の変化よりも、妊娠そ
のものや以前から有する腰痛の影響が強いと考え
られる妊娠早期に発症した症例に対しては、鍼灸
の治療効果は低かった。また、全例に有害な事象
の出現は見られなかった。
キーワード:妊娠、腰痛、鍼灸治療、温灸、有害
事象
− 138 −
384
3O-C-10:36
3O-C-10:48
子宮・卵巣点と婦人科疾患との関連
「演題取り消し」
岐阜地方会
松山幸枝、河村みゆき
神戸東洋医療学院
河村廣定
【目的】月経困難症、不妊症などの婦人科疾患に
は鍼灸治療が有効であるとされている。それらで
は生殖器の体表面に当たること、脊髄支配神経レ
ベルが隣接していることなどから、下腹部に治療
点を求める例も見られる。一方、婦人科疾患は、
風邪などの炎症性疾患や、心理的要因にも影響さ
れ、多くの要因によって、その病的状況は変化す
ることが知られている。そこで、婦人科疾患によ
く用いられる子宮・卵巣点の経穴反応と患者の愁
訴との経時的変化を調べ、それら治療点の診断的
あるいは治療的意義について検討した。
【方法】対象は平成14年1月から3月に来院した女
性患者7名(平均年齢33歳)に問診表の記入を依
頼し、月経周期、自律神経症状、頭痛などの身体
的症状、風邪の症状などについて調査した。通院
は週1回を原則とした。治療方法は中
、期門な
ど内臓器官の代表点、婦人科疾患の関連として子
宮・左右の卵巣点を触診し、反応が消失するまで
置鍼、撚鍼などの刺激を行った。施術者側の所見
として、子宮・卵巣点の反応出現範囲に印を付け、
その面積を測定した。また子宮・卵巣点の反応が
消失するまでに要した手技や時間を刺激量として
記録し、反応点面積や加えた刺激量の経時的変化、
問診表との関連を調べた。
【結果および考察】問診表における身体的症状―
風邪の症状・自律神経症状との間に相関が認めら
れた。しかし、それらと子宮点などとの関連は認
められなかった。また、子宮・卵巣点の面積と刺
激量は経時的に減少傾向を示し、それと同時に月
経周期も改善された。これらのことは、痛みや自
律神経症状が風邪によって誘発される可能性を示
唆している。同時に子宮・卵巣点の反応の大きさ
やその程度が、女性生殖器機能と密接であったこ
とから、それらの部位は婦人科疾患の診察や治療
に有用であることを示唆している。
キーワード:子宮点、生殖器機能、卵巣点、反応
点、風邪
385
3O-C-13:00
手術侵襲による免疫抑制に対する術
前鍼通電の影響
− 139 −
3O-C-13:12
体性 感覚刺激における腸管 神経系
とCD11b陽性細胞の変化
−神経系と免疫系の関連−
明治鍼灸大学外科学教室
田口辰樹、咲田雅一
横浜市立大学医学部解剖学第2講座
【目的】我々は昨年本学会において、術前鍼通電
が手術侵襲による術後の免疫抑制を防止すること
久島達也
富山国際伝統医学センター
上馬場和夫、田口裕紀子
ができたことから、そのメカニズムとして視床下
部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)および交感神経
系(SNS系)による免疫抑制経路を鍼通電が抑制
することにより術後の免疫抑制を防止する可能性
について報告した。そこで今回、手術侵襲および
術前通電が血中ACTH、コルチコステロン(HPA 系)
、
ノルアドレナリンおよびアドレナリン(SNS系)
に及ぼす影響について検討した。
【方法】動物はSD系雄性ラットを用いた。手術侵
襲ラットは背部の皮膚を6cm切開した後縫合して
閉創し、さらに腹部に5cmの正中切開を行い、腸
管を腹腔外に露出させ滅菌湿ガーゼで30分間被覆
後、腹腔内に還納、縫合閉腹して作成した。術後
24時間、72時間後に脾細胞を用いてNK細胞活性お
よびリンパ球芽球化反応を検討した。さらに術後
3時間、24時間、72時間後に血液を採取し血中ACT
H、コルチコステロン、ノルアドレナリンおよび
アドレナリン量をEIA法および ELISA 法にて測定
した。鍼通電は手術2日前から開始し手術当日ま
で連日で計3回、一側後肢前脛骨筋に2Hz、3mAで1
時間行った。
【結果・考察】手術侵襲によりNK細胞活性、リン
パ球芽球化反応共に抑制されたが、術前鍼通電は
それらの抑制を防止した。さらに手術侵襲により
非鍼通電群の血中ACTH、コルチコステロン、ノル
アドレナリンおよびアドレナリンは術後著明に増
加した。一方、鍼通電群は非鍼通電群に比べそれ
らの値が有意に低値を示した。以上の結果から、
術前鍼通電が手術侵襲による免疫抑制を防止する
メカニズムとして、HPA系およびSNS系による免疫
抑制系路を鍼通電が抑制した可能性が考えられた。
キーワード:手術侵襲、免疫抑制、鍼通電、視床
下部-下垂体-副腎皮質系、交感神経
系
【目的】体性-内蔵系に関する研究が多くある中、
鍼刺激による効果も基礎研究によって明らかにさ
れつつある。今回、鍼刺激が腹部消化器系に及ぼ
す影響のメカニズムを解明するため、腸管神経系
および免疫担当細胞などに着目し、免疫組織化学
的な検討を行った。
【方法】ネンブタール麻酔下ICRマウスの三叉神
経第1枝領域に刺鍼し、30分間捻鍼した。その後、
灌流固定し、結腸を剖出、10μmの凍結切片を作
成 し 、 Protein Gene Product (PGP) 9.5 、
Tyrosine Hydroxylase(TH)、Serotonin(5-HT)、
Neuropeptide
tyrosine (NPY)、 neuronal
NO-synthase (nNOS)、 Vasoactive Intestinal
Peptide(VIP)、Substance P(SP)、CD11b抗体を
用いて蛍光免疫組織化学重染色を行った。
【結果】鍼刺激群ではPGP9.5、TH、5-HT、NPY、VI
P、SP陽性反応の増加がみられた。VIP 陽性反応
は筋間神経叢、粘膜下神経叢および絨毛中に、SP
陽性反応は筋間神経叢中に多く確認した。一方、
nNOS陽性反応に顕著な変化は認められなかった。
CD11b陽性反応はコントロール群では、粘膜下神
経叢周囲、絨毛中の神経線維周囲に、鍼刺激群で
は、コントロール群に比べ減少し、絨毛先端部か
ら基部にかけて散在した。
【考察】神経系ではnNOS陽性反応以外すべてに変
化が認められた。TH陽性反応より特にVIPや SPが
顕著に増加したことから、交感神経系よりも副交
感、知覚神経系による腸管への影響が考えられる。
また今回の結果は鍼刺激による免疫担当細胞への
作用の可能性を示唆する。CD11b陽性細胞の一つ
で ある マク ロフ ァ ージ はNerve Growth Factor
(NGF)によって神経を活性させることなども知ら
れている。今後、体性感覚刺激によるCD11b陽性
細胞と神経活性との相互作用について検討する予
定である。
キーワード:鍼刺激、腸管、マクロファージ、自
律神経系、知覚神経
− 140 −
386
3O-C-13:24
卵巣摘出ラットの血中エストロゲン
濃度に対する鍼刺激の影響
3O-C-13:36
痛覚閾値に対する性ホルモンの影響
明治鍼灸大学生理学教室
明治鍼灸大学生理学教室
岡田
萩原裕子、金本貴行、岡田
薫、萩原裕子、木村美保、川喜田健司
薫、川喜田健司
【目的】女性は閉経後にエストロゲンの分泌が減
【目的】鍼鎮痛において鎮痛が起こりやすい人と
起こりにくい人がいるが、その詳細については不
少し、更年期障害と呼ばれる種々の症状が出現す
明である。近年、鎮痛効果には性差があり、モル
る。症状には個人差があるが、重症な場合はエス
ヒネ投与による鎮痛では雄ラットに比べ雌ラット
トロゲン補充療法(HRT)が用いられている。一
は8倍もの量を必要とすることが報告されており、
方、 日本女性が希望する 治療法の調査では HRT
痛覚には性ホルモンが関係している可能性が示唆
の他、鍼治療も挙げられている。しかし、鍼治療
されている。そこで、雄ラットを去勢し、痛覚閾
の更年期障害に対する影響については、ほとんど
値の変化について詳細に検討した。
明らかになっていない。そこで、卵巣を摘出した
【方法】Wistar系雄ラットをSham群(n=3)と去
更年期モデルラットを作成し、血中のエストロゲ
勢群(n=6)に分け、3ヶ月齢で必要な手術を行っ
ン濃度に対する鍼刺激の影響を検討した。
【方法】雌性Wistarラット(n=66)を用い12週齡
た。Tail-flick test(脊髄反射性痛覚テスト)、
Formalin test (上 脊 髄反 射 性痛 覚 テス ト )、
で必要な手術を行い、18週齡以降を実験に供した。
Jaw-opening test(三叉神経領域痛覚テスト)、
ラットはそれぞれ無処置群(intact;n=15)、偽手
Colorectal distention(内臓痛覚テスト)の各
術群(sham;n=16)、両側卵巣摘出群(OVX;n=17)、
種痛覚テストを行った。また、Tail-flicktestに
両側卵巣摘出後鍼施術群(OVX + ACU;n=18) に分
おいては、naloxone(1mg/kg、i.p.)を投与し、
け、鍼埋め込み刺激から10週間目に全てのラット
内因性オピオイドの関与についても調べた。実験
から血液を採取し、一部のラットからは副腎も採
終了時に麻酔下にて採血を行い、ELISA法を用い
取した。サンプル血液と副腎はエーテルを用いて
て血中テストステロン量を測定した。また、精嚢
精 製 し た 後 、
(enzyme-linked
を摘出・湿重量を測定し去勢の影響を確認した。
immunosorbentassay)により血中及び、副腎のエ
ストラジオール量を測定した。鍼刺激は、14号鍼
【結果】いずれの痛覚テストにおいても、去勢の
影 響 は認 めら れず sham 群 との 差は なか っ た。
に凹凸をつけた後1.5cmに切断して自家製皮内鍼
naloxone 投与によって、 tail-flick潜時に影響
を作成し、背部正中外方1cmで両側性にTh10からL
はなかった。血中のテストステロン量および精嚢
2の部位に埋め込んだ。
湿重量は、去勢群はsham群の約1/10量に減少して
【結果】血中のエストラジオール量はintact、
いた。
sham と比較してOVXでは減少傾向が認められ、鍼
【考察】今回、去勢群で痛覚閾値に変化が認めら
刺激を与えることにより、intact、shamと同様の
れなかったことから、男性ホルモンであるテスト
レベルにまで回復した。また、副腎のエストラジ
ステロンは痛覚閾値に直接関係していないことが
オール量も鍼刺激により増加傾向を示した。
明らかとなった。 また、 naloxone投与によって
【考察と結語】以上の結果から、鍼刺激は副腎の
エストラジオール分泌機能を亢進させ、それによっ
tail-flick 潜時に影響はなかったことから、 内
因性鎮痛が持続的に賦活されている可能性はない
て血中のエストラジオール量を増加させる可能性
と考えられる。痛覚には、女性ホルモンが影響し
が示唆された。現在、その基質であるテストステ
ている可能性が高いことが示唆された。
ELISA 法
ロン量についても検討中である。
キーワード:卵巣摘出、エストロゲン、ELISA
キーワード:ラット、痛覚閾値、鎮痛、性ホルモ
ン
387
− 141 −
3O-C-13:48
高血圧自然発症ラット(SHR)の循環
系に及ぼす鍼通電刺激の効果
3O-C-14:00
炎症動物における鍼鎮痛機序
筑波技術短期大学鍼灸学科生理学
大沢秀雄
明治鍼灸大学外科学教室
関戸玲奈、咲田雅一
筑波技術短期大学鍼灸学科
野口栄太郎
明治東洋医学院専門学校
石丸圭荘
筑波大学附属盲学校鍼灸手技療法科
志村まゆら
【目的】我々はWistar系麻酔ラットを用いて、皮
膚組織が多い足蹠の鍼通電刺激では血圧上昇反応
を、筋組織が多い足三里穴への同様の刺激では血
圧上昇あるいは降下反応を誘発することを報告し
てきた。そこで今回は、 高血圧自然発症ラット
(SHR)を用いて、足蹠及び足三里穴への鍼通電刺
激による血圧反応を観察し、Wistar系ラットの血
圧反応と比較したので報告する。
【 方 法 】 実 験 は 雄 性 SHR4匹 (3∼4 ヶ 月 齢 )、
Wistar 系ラット7匹(3∼4ヶ月齢)を用い、ウレ
タン麻酔、人工呼吸下で呼気CO2 濃度を一定に保
ち、直腸温を37∼38℃に維持しながら行った。血
圧は大腿動脈から導出し、心拍数は血圧波から心
拍タコメーターによって算出し、それぞれポリグ
ラフ上に連続記録した。鍼通電刺激は後肢足蹠
(第1第2中足骨間)と下腿外側部の足三里穴相当
部位に行った。16号ステンレス鍼を5mm間隔で深
さ5mm刺入し、これを刺激電極として、パルス幅0.
5msecの矩形波で、刺激頻度20Hz、刺激強度を0.5
mA、2mA、5mA、10mAと変えてそれぞれ30秒間刺激
した。
【結果と考察】①SHRの足蹠の刺激では刺激強度
依存性に血圧上昇反応がみられた。②後肢足蹠刺
激による血圧上昇反応は、Wistar系ラットに比べ
SHRの変化率の方が高かった。③SHRの足三里穴の
刺激では、ほぼ全例において、5mA、10mA 刺激の
直後に血圧降下反応がみられた。さらに10mA刺激
では血圧降下反応に続いて血圧上昇反応を伴う二
相性の反応が高率でみられた。
【結語】麻酔下の高血圧自然発症ラット(SHR)
への鍼通電刺激によって、後肢足蹠刺激によって
血圧上昇、足三里刺激によって血圧降下反応が認
−末梢性鎮痛の関わりについて(第2報)−
【目的】既に本学会において、カラゲニン炎症性
痛 覚過敏に 対する鍼 鎮痛が 炎症局所 へのCRF や
IL-1 受容体拮抗薬の投与により拮抗されたこと
から、免疫細胞に存在するCRFやIL-1受容体が鍼
鎮痛に関与する可能性を報告した。そこで本研究
では免疫抑制剤のシクロスポリンA(CsA)投与に
よる免疫細胞の機能抑制が鍼鎮痛に及ぼす影響を
検討した。また、鍼鎮痛における末梢のμオピオ
イド受容体の関与を調査するために、μオピオイ
ド受容体拮抗薬の足底内(ipl)投与が鍼鎮痛に
及ぼす影響を検討した。
【方法】実験はSD系雄性ラット(n=42)を用い、
炎症性痛覚過敏はカラゲニンの左後肢足底への皮
下注入により作成した。痛覚閾値の変化は加圧式
鎮痛効果測定装置(Randall Selitto Test)を用
いて経時的に測定した。鍼通電(EA)は左前脛骨
筋に3Hzで1時間行った。CsAはカラゲニン投与48
時間前と24時間前に腹腔内(ip)投与した。また、
μオピオイド受容体拮抗薬にはCTOPを使用し、EA
の1時間前に炎症局所にipl投与した。
【結果】カラゲニンのみを投与したコントロール
群では投与3時間後から痛覚過敏を生じ、投与24
時間後においても痛覚過敏が持続した。それに対
し、EA+Vehicleip投与群、EA+Vehicleipl投与群
で は 鍼鎮 痛 は長 時 間持 続 した 。 し か し、 EA +
CsAip 投与群ではEA終了1時間後から、 EA + CTOP
10μgipl投与群ではEA終了3時間後から鎮痛効果
は有意に抑制された。
【考察】CsA投与により炎症側の鍼鎮痛が消失し
た。このことは鍼鎮痛に免疫細胞の機能が関与し
ていることを示唆している。また、CTOPのipl投
与により鍼鎮痛が消失した結果は、末梢のμオピ
オイド受容体が鍼鎮痛に関与していると考えられ
る。これらのことからEAにより免疫細胞が活性化
され、免疫細胞から放出されたオピオイドペプチ
ドにより鎮痛効果が引き起こされたと考えられた。
められた。
キーワード:麻酔ラット、高血圧自然発症ラット、
鍼通電刺激、血圧
キーワード:カラゲニン、痛覚過敏、鍼鎮痛、免
疫系、μオピオイド受容体
− 142 −
388
3O-C-14:12
ヒト電気鍼の脊髄分節および内因性
鎮痛効果について
3O-C-14:24
通電鍼刺激により活性化される内因
性抗鎮痛機構
明治東洋医学院専門学校
石丸圭荘
和歌山県立医科大学薬理学教室
明治鍼灸大学外科学教室
咲田雅一
【目的】電気鍼鎮痛の作用機序は末梢経穴低頻度
刺激で内因性モルヒネ様物質が賦活され発現する
全身性鎮痛と脊髄分節領域を高頻度刺激にて発現
する脊髄分節性鎮痛がある。そこで二点識別法を
指標に、両者の鎮痛効果の発現を検討した。
【方法】学生250例(男性147例、女性103例、平
均年齢25.3歳)を対象に、全身性鎮痛を目的に合
谷、足三里に低頻度(3Hz)鍼通電および腹部に
脊髄分節鎮痛を目的に高頻度(100Hz)鍼通電を3
0分間行った。痛覚閾値の測定は、左右前腕、下
腿、腹部にて二点識別(ノギス)を用いて鍼通電
前、通電後10、20、30分に二点距離の変化を記録
した。
【結果】合谷、足三里に低頻度(3Hz)鍼通電で
は、左右前腕、下腿、腹部にて二点距離は平均
2.1cm に拡大し全身性鎮痛が確認された。また、
腹部 に脊髄 分節鎮 性痛を 目的 とした 高頻度
(100Hz)鍼通電では腹部のみ二点距離が1.9cmに
拡大した。
【 考察 およ び結 語】 合谷 、 足三 里へ の低 頻度
(3Hz)鍼通電は内因性鎮痛系を賦活させ全身性に
鎮痛が発現し、腹部高頻度(100Hz)鍼通電では
刺激を受けた神経分節の知覚遮断効果が発現した
ものと思われる。また、両者の鎮痛効果は簡便に
定量でき作用機序を明確に示すことができること
から教育の現場において活用できると思われる。
キーワード:鍼鎮痛、電気鍼、内因性鎮痛、脊髄
分節性鎮痛
深澤洋滋、岸岡史郎
【目的】オピオイドの鎮痛作用を減弱させる内因
性物質が存在することから、内因性抗鎮痛機構の
存在が示唆されている。一方、我々はこれまで、
電撃フットショックストレスによる鎮痛作用発現
後に内因性抗鎮痛機構が活性化され、モルヒネ鎮
痛が減弱されることを報告した。そこで今回、通
電鍼刺激(EA)による鎮痛作用発現後の内因性抗
鎮痛機構について検討した。
【 対 象 と 方 法 】 実 験 に は SD 系 雄 性 ラ ッ ト
(250∼350g)を用いた。ヒト足三里相当部位また
は非経穴部位に、3Hz、0.1msec durationの刺激
条件で45分間通電し、EAを行った。痛覚閾値の測
定は、後肢加圧法に従った。側脳室内投与は頭蓋
表面に固定したガイドカニューレを介し、また脊
髄くも膜下腔内投与は、椎間腔から挿入したカニュー
レを介して、術後1週間の回復期間の後に行った。
それぞれの投与液量は5μlおよび 20 μl とした。
【結果と考察】ヒト足三里相当部位へのEAにより、
抗侵害刺激作用が惹起され、その作用はEA終了後
15分以内に消失した。EA後、 皮下投与モルヒネ
(7mg/kg)の鎮痛作用は有意に減弱した。その減
弱の程度はEA後からモルヒネ投与までの時間に逆
相関し、EA終了120分後のモルヒネ投与では減弱
効果は認められなかった。一方、非経穴部位への
EAでは、抗侵害刺激作用およびモルヒネ鎮痛減弱
作用は惹起されなかった。モルヒネの側脳室内投
与(25μg)による鎮痛作用はEAの影響を受けな
かったが、脊髄くも膜下腔内投与(10μg)によ
る鎮痛作用は有意に減弱した。また、EA後のモル
ヒネ鎮痛減弱作用は、コレシストキニン(CCK)
受容 体拮抗薬 (proglumide ; 0.02 mg/kg,皮 下)
の併用処置により阻害された。以上の結果より、
EAにより一過性に活性化される内因性抗鎮痛機構
が脊髄に存在し、その機構にはCCKが関与する可
能性が示唆された。
キーワード:ラット、通電鍼刺激、モルヒネ、内
因性抗鎮痛機構、コレシストキニン
389
− 143 −
3O-C-14:36
筋ポリモーダル受容器の機械刺激に
対する反応
3O-C-14:48
透熱灸による瞬間的な痛みの記憶と
その定量評価
東洋医学研究所 ・愛知地方会
東海医療学園専門学校
甲田久士、黒野保三
【目的】鍼刺激は経穴部位に機械的な刺激を灸治
谷
直樹、杉山誠一
杏林大学保健学部生理学教室
加藤幸子、秋元恵実、小林博子、嶋津秀昭
療は熱刺激及び化学的な刺激を与える。その刺激
の性質から組織に侵害刺激を与えている。その情
報の入力系としての侵害受容器は機械刺激、化学
刺激及び熱刺激に反応するポリモーダル受容器が
関与していると推察される。今までにイヌ精巣ポ
リモーダル受容器の機械刺激に対する反応及び炎
症メディエーターを用いた反応について報告した
が、今回は筋ポリモーダル受容器の機械刺激に対
する反応について調べたので報告する。
【方法】麻酔下のラットより取り出した長指伸筋−
総腓骨神経標本を用い総腓骨神経より単一の筋ポ
リモーダル受容器活動をin vitroで記録しインパ
ルス数を計数した。刺激時間は立ち上がり1秒、
保持9秒の台形波で10秒間行った。刺激方法は1.
刺激強度依存的、2.2種類(20gと60g)刺激を連
続的に繰り返し機械刺激に対する反応を調べた。
【結果】1.刺激強度を上げた結果、刺激強度依存
的に反応は増強しなかった。2.2種類の連続的に
繰り返した機械刺激では、20gは反応が安定して
いた。60gでは反応が減少する傾向がみられた。
【考察】先に報告したイヌ精巣ポリモーダル受容
器の機械刺激の反応は、刺激強度依存的に反応が
増強したが、今回筋ポリモーダル受容器に対して
は異なる結果を得た。しかし連続刺激では同様な
傾向がみられた。強い刺激では一過性に反応は大
きいが経時的に観察すると反応が減弱することか
ら、生体への鍼刺激は弱い刺激が適量と推察され
る。今回の結果は標本の種差が考えられるが、両
者を詳細に比較検討しなければならない。
【結語】筋ポリモーダル受容器の機械刺激に対す
る受容特性を調べることにより、鍼刺激の作用機
序を解明する一助になると考えられる。
キーワード:筋ポリモーダル受容器、機械刺激、
鍼刺激
【目的】我々は痛みの大きさを異種感覚として電
気的な刺激量と比較して定量化する方法を考案し、
その評価を行ってきた。本法では痛み感覚を自分
自身で比較するので、痛みの大きさを記憶できる
ならば、過去の痛みについても記憶にある痛み感
覚と刺激量の比較が可能である。この観点から、
クリッピングにより作成した持続的な痛みの記憶
保持が、視覚の短期記憶と同程度の保持率である
ことを確認した。しかし、透熱灸などの瞬間的な
痛みを対象とした場合、痛みの把握と記憶の保持
は持続的刺激より困難であると考えられる。本研
究では透熱灸による瞬間的痛みの記憶について検
討した。
【方法】健康なボランティア(30人)に対して、
左前腕手三里穴周囲3カ所に成型器によって成型
された艾を用いて透熱灸による刺激を与え、最も
刺激を感じた部位の痛みを本法により測定した。
その後、2分後、4分後、8分後、16分後に施灸時
の記憶に基づいて、同様の計測を行った。
【結果】本法による測定値の平均は時間の経過に
関わらずほぼ正確に保持されたが、値のばらつき
が拡大し、標準偏差は2分後で20%、16分後で27%
に広がった。
【考察】瞬間的な刺激による痛みの記憶は、すで
に確認している持続的な刺激の記憶と同様に、時
間と共に正確度が減ずることが示された。また、
持続的な痛みに対する記憶が5分経過時に18%のば
らつきであるのに対し、瞬間的な記憶はより短時
間でばらつきがやや大きくなる傾向が認められ、
瞬間的な痛みの大きさを記憶することが持続的な
痛みに対する記憶より困難であることが示された。
【結語】瞬間的な痛みに対する記憶は、持続的な
刺激と同様にある程度の保持が可能であるが、そ
の保持は難しく、正確に痛みの評価を行うために
は刺激後短時間で測定することが必要である。
キーワード:痛み、記憶、定量評価、透熱灸
− 144 −
390
3P-D-09:00
肩こりに対 する鍼治療の臨床効果
について
3P-D-09:14
腰痛に対する鍼通電と経皮的末梢神
経電気刺激のランダム化比較試験
−Sham鍼による検討−
筑波技術短期大学附属診療所
1)
明治鍼灸大学附属鍼灸センター ・臨床鍼灸医学
Ⅱ教室2)・健康鍼灸医学教室3)
今井賢治 1)2 )、笹岡知子1)2)、田和宗徳 1)2)
北小路博司1)2)、矢野
津嘉山洋、山下
筑波技術短期大学鍼灸学科
慶友病院整形外科
仁
坂井友実
天貝 均
忠 1)3)
【目的】腰痛を対象とした鍼臨床試験の現実的な
【目的】肩こりに対する鍼治療の効果を臨床比較
試験から示す前段として、実際の患者における鍼
治療の効果を自作のsham鍼を使用してダブルブラ
インド法から評価したので報告する。
【対象および方法】肩こりを主訴に本学付属鍼灸
センターを受療した患者9名(男性3名、女性5名)
を対象とした。患者には本物の鍼と偽鍼のいずれ
かを行うことを説明し、書面で同意を得た。評価
に は 6 段 階 から 成 る face scale (FS) お よ び
visual analogue scale(VAS)を用いた。治療前
の肩こりの程度をFSおよびVASで評価し、その後、
腹臥位で頚・肩部にsham鍼を行った。刺激部位は
左右の風池、肩井、肩外兪、天宗として、各部位
共にsham鍼で20秒間刺激した。sham鍼終了後、肩
こりの程度をFSおよびVASで評価し、治療前の値
と比較した。尚、治療と評価は別の者が担当し、
特に評価者にはどのような治療をおこなっている
のかを伝えずにFSおよびVASを採取させた。そし
て当実験を行った後に、本物の鍼治療を行い、そ
の効果も同一の評価者がFSおよびVASで確認した。
【結果および考察】全例でsham鍼後にはFSおよび
VASの値は減少し、肩こりの軽減する傾向が認め
られ、プラセボ効果の存在することが判った。し
かし、本物の鍼治療後には、より大きくFSおよび
VASの値は減少した。また、試験終了後に偽鍼を
行ったのが判ったかどうかを患者に調査したとこ
ろ、治療経歴の長い5名の患者は見破っており、
その理由として、刺激時に得気感覚の無かった事
を上げていた。今回の検討から、肩こりに対する
鍼治療の効果には多少のプラセボ効果の含まれる
ことが判ったが、鍼治療自体の効果も充分にある
ものと思われた。今後、より詳細な臨床比較試験
を適用し検討を続ける。
キーワード:sham鍼、肩こり、visual analogue
scale、プラセボ効果
条件下での介入の適切さを評価するために探索的
な臨床試験を行った。
【方法】文書による同意の得られた発症より2週
間以上経過した下肢痛を伴わない脊椎性の腰痛患
者20名(女性17名、男性3名、平均年齢45歳)を
対象とし、無作為に低周波鍼通電(試験群)と経
皮的電気刺激法 (対照群)2群に割り付け2週間
(4回)の介入を行った。疼痛緩解スケール(VAS)、
日本整形外科学会腰痛治療成績判定基準(JOAス
コア)、有害事象を評価項目とした。JOA スコア
は自覚所見のうち下肢痛の項目と、他覚所見の項
目を除外して使用した。
【結果】試験期間全体の平均VASは試験群6.5±1.
6cm(平均±標準偏差)、対照群8.6±1.8cmと試験
群が良好な結果であった。JOAスコアの総合点は、
初診時には試験群16.3±2.4点、対照群 15.6±3.
7点であったが、試験終了時には、試験群18.6点、
対照群15.8点と試験群で良好な結果であった。重
篤な有害事象は記録されなかった。
【考察・結語】例数の少ない探索的な試験である
が群間の差を検証できる可能性が示された。介入
の設定により異なる結果が得られる可能性があり、
現実に行われている鍼治療と隔たりが少なく再現
性の良い介入方法の設定が、一般化可能性の高い
鍼臨床試験の重要な課題と考えられた。
(謝辞)本研究を助成していただいた東洋療法研
修試験財団および筑波技術短期大学に心より感謝
申し上げます。
キーワード:鍼、鍼通電、経皮的末梢神経電気刺
激、ランダム化比較試験
391
− 145 −
3P-D-09:28
腰痛に対する鍼治療の多施設による
ランダム化比較試験
3P-D-10:00
鼻腔内腫瘍手術後に発症した顔面の
しびれに対する鍼治療の1症例
愛知地方会研究部疼痛疾患班
埼玉医科大学東洋医学科
河瀬美之、石神龍代、堀
茂、中村弘典
服部輝男、皆川宗徳、甲田久士、井島晴彦
絹田 章、校條由紀、黒野保三
浅香
隆、山口
智、小俣
浩、新井千枝子
阿部洋二郎、廣瀬賢一、大野修嗣、藤岡正志
埼玉医科大学健康管理センター
土肥 豊
【目的】腰痛に対する鍼治療の有効性を客観的に
検討する目的で、多施設でのインターネットを用
い た中 央管 理 シス テム に よる 無作 為化 割 付法
(JAVA を利用した無作為化割付プログラム)によ
るランダム化比較試験を行って医学統計処理を行っ
た結果、興味ある結果が得られたので報告する。
【方法】平成14年8月より平成14年11月までの間
に11施設に来院した患者のうち、主訴が腰痛であっ
た患者64例に対し、中央管理システムによりA群
12例:太極療法+低周波通電、B群13例:太極療
法のみ、C群20例:低周波通電のみ、D群19例:偽
鍼(鍼管を叩打)の4群にランダムに割り付けて
鍼治療を行い、JOAスコアとVASを使用して評価し
た。その後、基本を太極療法+低周波通電として
再度鍼治療を行い再評価した。統計処理は符号順
位検定を用いた。
【結果】JOAスコアの治療前に対する割付治療後、
太極療法+低周波通電治療後の平均改善率(%)
はそれぞれA群:22.9、23.3、B群:29.5、41.4、
C群:18.7、36.9、D群:4.0、25.8となり、D群の
割付治療後の改善率のみ有意な差が認められなかっ
た。また、各群間に改善に対する有意な差は認め
られなかった。VASの治療前に対する割付治療後、
太極療法+低周波通電治療後の平均減少率(%)
はそれぞれA群:33.1、35.0、B群:30.0、50.2、
C群:27.2、46.9、D群:4.2、31.9となり、D群の
割付治療後の減少率のみ有意な差が認められなかっ
た。また、各群間に改善に対する有意な差が認め
られた。
【考察と結語】今回の結果より、偽鍼の有効性は
認められないこと、鍼治療の方法により成績が異
なることが認められた。
【目的】頭痛・顔面痛は,鍼灸臨床で取り扱う頻
度の高い症状である。今回我々は、鼻腔内腫瘍手
術後の難治性の顔面部のしびれに対し鍼治療を行
い、良好な成績が得られたので報告する。
【症例】52歳 女性 主婦
主訴)左顔面のしびれ
現病歴)平成11年7月、左鼻腔内腫瘍摘出手術。
同14年1月には顔面部の手術創部形成手術。そ
の後、三叉神経第2枝領域にしびれが出現し、
薬物療法行ったが著変なく当科受診。
既往歴)蓄膿症
現症)身長160cm、体重52kg、血圧154/98 mmHg 、
脈拍98回/分整
左三叉神経第2枝領域のしびれ(+)、手術痕部
の触・痛覚過敏(+)
、瞳孔の大きさ・眼球運動・
顔面筋運動は正常、飲水・洗顔・歯の擦り合わせ
にてしびれ(↑)
鍼治療方法)顔面手術創部周辺の疼痛閾値の上
昇と循環改善を目的に、左四白・下関にディス
ポ鍼40mm16号を用い週2回施術。
【結果】4診目でしびれの範囲が狭くなり、頬骨
部より外側のしびれは消失したが、さらに効果増
強 を 期待 して 6診 目 に1Hz で低 周 波鍼 通電 療 法
(AET)開始。耳鼻科で上顎洞術後嚢胞が指摘され
ていたが、頬骨部は徐々に改善。症状は安定し持
続効果が延長した為、週1回の間隔に変更。しか
し、22診目には睡眠不足と疲労にてしびれが増悪。
AETを60Hzに変更したところ、しびれは1日間消失
し顔面部皮膚温の自・他覚的な上昇。
【考察と結語】本症例のしびれは、手術による神
経の伸展によるものと推測される。長期の鍼治療
により、しびれの領域縮小・程度の軽減を認めた
ことは、三叉神経を介する鎮痛効果と、創傷部の
循環改善が考えられる。 症状増悪期に周波数を
60Hz に変えた結果、より改善が認められた事は、
比較的高頻度の刺激が多くの求心性神経繊維に影
響を与えるため有効であったと考える。以上より
鍼治療は現代医療において、有効な治療法の少な
い顔面のしびれに対し、有用性の高い治療法であ
る事が示された。
キーワード:ランダム化臨床比較試験、腰痛、JO
キーワード:鍼治療、鼻腔内腫瘍、顔面のしびれ
Aスコア、VAS、
− 146 −
392
3P-D-10:14
めまいに対する頸・肩部の鍼灸治療
の意義について
3P-D-10:28
鍼・温熱・振動の後頭部刺激による
視力回復の即時効果の検討
早稲田医療専門学校東洋医療鍼灸学科
日本理工医学研究所
古賀義久
群馬パース学園短期大学
栗田昌裕
小岩信義、所
数樹、浅野貴之、坂本真紀
二本松明、鈴木盛夫
昭和大病院リハビリテ−ション科
町田雅秀
久住 武
【目的】鍼灸の視力に対する長期効果はよく知ら
関東労災病院耳鼻咽喉科
渡辺尚彦
れている。今回は視力に及ぼす即時効果を置鍼、
電気温熱、振動の刺激で比較検討した。
【目的】めまいに対する鍼灸治療は、主に寛解期
のself-controlを良好に保ち、再発に対する不安
の解消と社会復帰の支援を目的に行うことが重要
と考える。この際、①どこに、②どのような治療
をするかが問題となるが、治療部位・方法の選択
は術者の治療体系によって異なる。今回は、めま
い患者の頸・肩部の筋に関する所見から、治療部
位としての頸部・肩部の意義を検討した。
【方法】対象は、関東労災病院耳鼻咽喉科めまい
外来を受診し、平衡機能検査を施行した患者とし
た。頸・肩部の筋について、①こりの頻度、程度、
部位、めまい発作との関連と(108例)、②圧痛箇
所(54例)を検討した(患者群)。この結果をめ
まいや頸部疾患等の既往がない健康成人(こり;
51例、圧痛;15例)と比較した(健常者群)。
【結果】患者群では、こりの頻度は健常者群と同
程度だったが、こりの程度が高い部位は健常者群
に比べて頸部下部、肩甲上部が多く、肩甲間部は
少ない傾向があった。圧痛でも、頸部下部、肩甲
上部は、頸椎X-P所見(頸椎の前弯減少、靭帯の
石灰化や椎間孔狭小等)との間に関連を認める傾
向があった。末梢性めまいの患者では、片側のこ
り、片側の項部・頸部下部・前頸部深層筋部の圧
痛はめまいの病側に多く認めた。
【考察と結語】めまいの随伴症状として頸肩部の
筋のこり・圧痛は、蝸牛症状と共に多く認める。
東洋医学は自覚症状を重視するが、めまいについ
ても随伴症状の特徴を捉えて治療に応用していた
と推察され、外耳の周囲を巡る経絡は頸部下部、
肩甲上部を循行しているものと考える。頸部下部、
肩甲上部の筋に関する症状は、頸椎の加齢的変化
が一因と考えられ、頸部交感神経の局所的な左右
差と内耳循環の異常にも関わる所見と考える。め
まいの鍼灸治療では、頸・肩部の筋・筋膜症状を
指標とした治療部位の選択が、こり等の随伴症状
の改善と頸部交感神経系の調節に重要と考える。
【方法】対象は鍼群が成人5名(平均年齢は38±
キーワード:めまい、鍼灸治療、頸肩のこり、圧
キーワード:視力回復、即時効果、置鍼、電気温
痛、経絡経穴
12歳)、電気温熱群が成人5名(平均年齢は32±15
歳)、振動群が成人5名(平均年齢は29±8歳)で
ある。刺激時間は3分間。鍼は1寸6分3番、電気温
熱と振動は振動式電子温熱灸(日本理工医学研究
所製)を使用。電気温熱刺激はタオルで覆い接触
皮膚温度を約41度に設定した。振動数は50Hzであっ
た。以下の順序で測定した。①刺激前に1回目の
視力を測定。②3分以上経過した後に2回目の視力
を測定。③鍼群では天柱穴に3分間置鍼。電気温
熱群、振動群では天柱、風池付近に3分間刺激。
④各群で3回目の視力を測定。
【結果】左右裸眼視力の平均値を示す。平均値の
差はpaired t-testを用いて検定した。鍼群では1
回目0.29、2回目0.31、両者の差は0.02で統計的
には上昇は認められなかった。3回目は0.43、1回
目との差は0.14。2回目との差は0.12でいずれも
統計的に有意な上昇だった(p<0.04、p<0.01)。
電気温熱群では1回目0.16。2回目0.16。両者の差
は0.00で、統計的には上昇は認められなかった。
3回目0.21。1回目との差は0.05、2回目との差は0.
05、でいずれも統計的に有意な差はなかった。振
動群では1回目0.41、2回目は0.44、両者の差は
0.03で統計的には上昇は認められなかった。3回
目 0.48 。 1 回目 との 差は 0.07 。 2回目 との 差 は
0.04 でいずれも統計的に有意な差はなかった。
【考察と結語】視力に対する鍼の即時効果が示さ
れた。電気温熱と振動には即時効果が認められな
かった。今後症例を増やして検討したい。
熱、振動
393
3P-D-10:42
顎関節症に対する鍼治療
−症型分類による治療効果の検討−
明治鍼灸大学歯科学教室
森西
誠、大藪秀昭
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
今井賢治
3P-D-13:00
女性鍼灸師フォーラムが受けた鍼灸
医療相談について
女性鍼灸師フォーラム
神奈川地方会
筑波技術短期大学鍼灸学科
【目的】顎関節症に対する鍼治療は、症型分類に
応じた治療や説明がされていない事が多く、治療
効果は不明確であった。そこで、今回我々は症型
分類(Ⅰ∼Ⅳ型)をし、それに応じた治療をする
事で一定の治療成績が得られたので報告する。
【症例】症例1は51歳女性で、咬合時痛、咀嚼筋
の緊張を有し顎関節症Ⅰ型と診断された。症例2
は73歳女性で、顎関節痛、関節雑音、咀嚼筋の緊
張を有し顎関節症Ⅲa型と診断された。症例3は33
歳女性で、顎関節痛、開口障害を有し顎関節症Ⅲ
b型と診断された。症例4は60歳女性で、顎関節痛、
開口障害、関節雑音、咀嚼筋の緊張を有し顎関節
症Ⅳ型と診断された。
治療方法は、顎関節症Ⅰ型には筋緊張緩和目的に
咀嚼筋圧痛部(下関、頬車、太陽穴)に、顎関節
症Ⅲ型には外側翼突筋に、顎関節症Ⅳ型には鎮痛
目的に合谷穴の刺鍼を行った。尚、症例2、4にお
いても筋緊張緩和目的の刺鍼をあわせて行った。
評価方法には、VAS、開口距離の測定などを用い
た。
【結果】症例1では鍼治療の効果が著明に現れ、
治療8回目で治癒となった。症例2でも鍼治療の効
果は得られ、症状は軽減した。症例3では症状は
殆ど変化せず、鍼治療の効果は認められなかった。
症例4では疼痛の緩和や開口距離の増加がみられ
た。
【考察】Ⅰ型では咀嚼筋の緊張を緩和すること、
Ⅲa型(復位性円板転位)では円板前方転位の原
因となる外側翼突筋の緊張を緩和すること、Ⅳ型
では骨変性により発生する疼痛を緩和することに
より、症状の改善を認めたと考えられる。しかし、
Ⅲb型(非復位性円板転位)は、外側翼突筋の刺
鍼だけでは円板の復位ができなかったと考えられ
る。症型によって鍼治療も効果が異なり、症型に
応じたアプローチをする必要性が示唆された。
キーワード:顎関節症、症型分類、鍼治療
− 147 −
辻内敬子
小井土善彦
形井秀一
【目的】21世紀に入りさまざまな分野で自己決定
と自己責任が求められ始めた。医療においてもイ
ンフォームドコンセントが不可欠となり正確な情
報を基にどのような治療を選択するかを患者自ら
が選ぶ時代になった。今回お産情報誌やインター
ネットを通じて、女性鍼灸師フォーラムに寄せら
れた2年間の相談について報告する。
【方法】これまで女性鍼灸師フォーラムに寄せら
れた相談件数は2000年10月から2002年10月までの
メール相談232件と、2001年7月から2002年7月ま
での電話相談72件の計304件であった。①性別、
②地域、③相談者、④相談内容、⑤主訴、⑥対応
に津いて検討した。
【結果】①性別は女性92.4%、男性7.6%、②相談
地 域は30都 道府県に 及び東 京都27.9%、 神奈 川
18.5 %、千葉11.8%、埼玉9.3%、愛知6.2%、 ③相
談者は本人84%、家族7%、団体/企業等5%、友人4%、
④相談内容は、妊娠中について82.2%、生活相談
等7.8%、婦人科疾患5.6%、産後3.4%、子どもの健
康1.0%であった。相談には同一人から数回に及ぶ
ものもあった。その他出産場所の選択、母乳育児
等があり他の医療機関や健康関連市民団体等への
紹介を行ったケースもあった。⑤主訴は逆子124
件、安産のため74件、不妊18件、切迫流早産12件、
腰痛7件、つわり5件、母乳分泌不足感3件、妊娠
中毒症2件等であった。逆子の問い合わせは妊娠3
2週時36件、34週時28件であった。⑥相談件数304
件中264件(86.8%)は治療院紹介を希望し、その
うち女性鍼灸師希望は19%であった。紹介先は全
日本鍼灸学会会員名簿等を参考にした。希望地域
への対応が困難な場合は電話帳等を参考にするよ
うお願いした。
【考察と結語】妊娠期の相談が多かった理由とし
ては、各種メディアにより情報を得た患者が身近
な鍼灸院に相談できない状況を反映していると考
えられた。今後も鍼灸治療相談に適切に応えるた
めには、女性鍼灸医学研究の深まりとその普及、
ネットワークの整備拡充が必要であると考えられ
た。
キーワード:健康相談、メール相談、電話相談、
産婦人科疾患、ネットワーク
− 148 −
394
3P-D-13:14
高校生にお ける肩こりの実態調査
(第5報)
京都府立医科大学老化研社会医学・人文科学部門
藤田麻里
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
矢野
3P-D-13:28
当研究所における失眠穴応用につい
ての調査
愛媛地方会
若松貴哉
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
光藤英彦
忠
【目的】当研究所では、灸療を中心的な治療とし
【目的】高校生を対象に肩こりについてのアンケー
ト調査を行い、単純集計、学年別・性別について
の比較、ストレスの原因や抑うつとの関連性、東
洋医学的所見との関連についての結果を第1報∼4
報で報告した。今回は、肩こりの発症に関連する
要因についての検討を行った。
【方法】京都府下にある12府立高校の協力を得て、
6,251名を対象にアンケート調査を行った。調査
期間は1997年10月23日∼12月2日であり、調査は
無記名、自記式、集合調査法で行った。第4報ま
での結果から肩こりの発症と関連する要因として
考えられる生活習慣、ストレスの原因、東洋医学
的所見などについての項目を選択した。解析は、
性別で分類し、年齢(学年)を考慮したうえで、
肩こりなし群をコントロール、肩こりあり群をケー
スとして、各要因が肩こりの発症に及ぼす影響を、
単変量のロジスティック解析を用いてオッズ比と
95%信頼区間で算出した。
【結果と考察】肩こりなし群1987名(34.7%)、
肩こりあり群3739名(65.3%)であった。要因の
一例として、東洋医学的所見との検討の一部を示
す。東洋医学的所見のうち、病症ありの多かった
陽虚(84.9%)では男女とも有意差を認め、オッ
ズ比 (95%信頼 区間) は男性 では1.68 (1.40 2.01)、女性では1.86(1.42-2.42)であった。ま
た肺の病症(病症ありは60.1%)でも有意差を認
め、 男性では1.91(1.64-2.23)、 女性では1.86
(1.57-2.20)であった。その他の全ての病症にお
いても有意差が認められた。高校生においては男
女共に東洋医学的な病症を有することが肩こりの
発症に強く関わることが示された。しかも高校生
の肩こりには単一の病症と関わるものではなく、
複数の病症が関与していることが示唆された。
キーワード:肩こり、高校生、アンケート調査、
要因
て位置付け応用している。奇穴失眠穴についても、
近年、種々の状況で応用している。その実態につ
いて、調査検討してみた。
【方法】平成13年度初診患者のうち、平成14年 1
1月末日の時点で通院を続けているもの307名を対
象とした。治療者は、のべ11名となっている。診
療録を調査して失眠穴の取穴の有無、取穴の理由
となる愁訴、透熱に要する壮数の変化、治療効果
について検討した。
【結果】失眠穴を治療に応用していたものは、全
体の約23%のものであった。取穴の理由では、37
%では膝症状が(膝疾患患者37%で失眠穴が取穴
されていた。)、31%では浮腫症状が目的であり、
その他は、不眠、足の冷え、皮膚疾患などであっ
た。透熱に要する壮数の変化では、半数の患者で
壮数の減少化が確認できた。
【考察】浮腫を理由に治療を行っている患者では、
浮腫の軽減とともに、透熱に要する壮数の減少が
確認できた。膝疾患患者においては、失眠穴のみ
ならず膝局所の経穴も取穴しており、失眠の効果
についてはさらに調査が必要となった。
【結語】現在の治療環境では、患者のうち灸療可
能なものの割合が減少していくことが予想される。
足底部は灸療を積極的に応用可能な部位であるこ
とから、今後は注目度が増すと考えられる。足底
部においては穴位反応と原因体質の関係を明らか
にすることができれば、いっそう応用の手がかり
が増すこととなり、経穴としての重要度も増して
いくはずである。
キーワード:失眠穴、灸治療、膝疾患、浮腫
395
− 149 −
3P-D-13:42
不定愁訴評価における健康チェック
表と良導絡チャートの検討
3P-D-14:00
明治東洋医科大学(米国)附属鍼診
療所の患者2967名の分析
鍼灸東洋院・東京地方会1)
明治鍼灸大学老年鍼灸医学教室
鶴
浩幸
2)
北海道ハイテクノロジー専門学校
時田茂生 1)、竹之内三志 1)2)
【目的】鍼灸治療院には、不定愁訴を訴え、ある
いは潜在的に不定愁訴を有して来院する患者が多
い。当院では、それらの不定愁訴評価を目的に、
初診患者に対して健康チェック表の記入をお願い
し、同時に良導絡の測定を行っている。今回、当
院に来院した初診患者40名に対する健康チェック
表の集計結果を種々分析するとともに、同時に測
定した良導絡チャートとの関連性を検討したので
報告する。
【方法】対象は、平成14年1月から同年10月まで
に当院に来院した初診患者40名(男18名、女22名)
、
年齢は7∼82才である。健康チェック表は、全日
本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班により作成され
たものを使用し、重症度別分類、層別分類、項目
別分類などの調査分類を行った。また、同時に測
定した良導絡チャートにおける異常良導絡の出現
傾向を観察し、更に健康チェック表の分析結果と、
異常良導絡の出現傾向との関連性について検討し
た。
【結果】重症度別分類では、中等症16名、重症8
名と中等症以上が24名(60%)であった。また、
層別分類では自律神経失調性項目26.5%、神経症
性項目19.1%、うつ状態性項目24.8%、その他の
項目29.6%であり、項目別分類では、項目No.43
「肩や首筋がこる」の合計点数が43点と最も高かっ
た。良導絡チャートの異常良導絡の出現傾向に関
しては、重症度別分類において中等症以上に分類
された24名のうち14名(58%)に、H系の2相性
パターンが出現し、また、層別に特異的な2相性
パターンが出現する傾向が観察された。
【考察と結語】健康チェック表の観察から、初診
患者の60%が中等症以上に分類され、不定愁訴を
有する患者が多いことが示唆された。また、自律
神経の変調を原因とする不定愁訴の診断に有効で
あるとされる良導絡測定との関連性に関しても、
興味ある知見が得られた。
キーワード:不定愁訴、健康チェック表、良導絡
チャート、2相性パターン
【目的】米国市民の東洋医学への関心が増加して
きているが、鍼・生薬治療を受ける患者の年齢層、
主訴、治療回数、治療期間などに関して不明な点
が多い。これらを知ることは米国における東洋医
学診療の実状を知る一助となると考えられる。
【方法】1996年1月から1999年12月の期間におけ
る明治東洋医科大学附属鍼診療所の初診患者で、
2000年11月までに最後の治療から6ヶ月以上再来
院がない2967名(男:1031名、女:1936名)の診
療録を用い、年齢、性別、主訴、鍼単独治療、鍼
と生薬の併用治療、鍼治療の回数と期間、生薬処
方回数と期間について調査した。なお、上記の調
査は初診時の主訴に対するものとした。
【 結 果 】 患 者の 年 齢 (mean ± S.D.) は37.6 ±
13.9 歳(男:38.0±13.3歳、女:37.3±14.1歳)
であった。男女の年齢間には有意差があったが、
男女共に20歳以上40歳未満の患者が多く、年齢層
の 分布 は類 似傾 向 を示 した 。 女 性が 全患 者 の
65.3 %、男性は34.7%であった。主訴は74.5%
が症状、21.7%が病名、3.8%は分類困難な訴え
であった。症状は筋骨格系の痛み(33.9%)・そ
の他の痛み(7.5%)・疲労(5.2%)、病名はア
レルギー性鼻炎(2.0%)・喘息(1.7%)・感冒
(1.4%)の順で多く、分類困難な群では、健康管
理(3.5%)が最も多かった。鍼・生薬併用治療
は、84.1%、鍼単独治療は15.9%であった。全患
者の鍼治療回数は4.6±7.1回(期間は50.9±99.9
日)、生薬処方回数は3.9±5.8回(期間は51.8 ±
102.0日)であった。同一の主訴における鍼単独
群と併用群の間には、鍼治療回数及び期間に有意
差が認められるものがあった。異なる主訴間にお
ける鍼治療または生薬処方の回数・期間等にも有
意差が認められるものがあった。
【考察】患者の大多数は、鍼と生薬の併用治療を
希望していることが示唆された。また病名より症
状を訴えて来院する患者が多く、不快な症状をい
かに軽減させるかということが重要であると考え
られた。主訴の相違によって治療回数や期間が異
なることが示唆された。
キーワード:米国における鍼治療、米国における
生薬治療、患者の実態調査
− 150 −
396
3P-D-14:14
埼玉医科大学総合医療センター麻酔
科における鍼治療の実態(第2報)
3P-D-14:28
えひめ東医研灸療普及啓蒙活動報告
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
埼玉医科大学総合医療センター麻酔科
光藤英彦、玉井弘文
阿部洋二郎、新井千枝子、宮尾秀樹
埼玉医科大学東洋医学科、健康管理センター
山口 智、小俣 浩、浅香 隆 廣瀬賢一
藤岡正志、土肥
豊
【目的】えひめ東医研のIdentityの一翼を担う灸
療普及啓蒙活動を報告する。
【方法】灸療普及啓蒙活動を8項目について具体
的に紹介する。①初診時灸療指導、②講演・講座・
【目的】われわれは、昨年の本学会において当科
鍼外来の実態と鍼治療成績について分析し、ペイ
ンクリニック領域における鍼治療の有用性が高い
ことを報告した。そこで今回はさらに症例を追加
し、また上位にランクされた顔面神経麻痺患者に
ついても詳細に分析し検討した。
【方法】対象は2000年9月から2002年11月までに
当外来で鍼治療を行った患者群から無作為抽出し
た143例である。これらの患者群の性別・年齢別
分布、紹介の有無、罹病期間、疾患別・症状別出
現頻度、鍼治療回数・期間、症状別治療成績につ
いて分析し、また顔面神経麻痺患者の治療成績等
についても検討した。
【結果】性別では、男性よりも女性の方が多く、
年齢別では50歳代、60歳代、30歳代の順であった。
紹介により受診した患者は82.5%で、当麻酔科次
いで整形外科、耳鼻科の順であった。罹病期間は
1ヶ月未満の急性期と1年以上のいわゆる慢性期の
患者が多く、疾患別ではBell麻痺(ベル群)
、Ram
sayHunt症候群(ラム群)
、糖尿病、変形性腰痛症、
高血圧症、帯状疱疹後神経痛が上位にランクされ、
症状別では顔面筋麻痺、腰痛、下肢痛、頸肩凝り、
上肢痛などが鍼治療の対象となり、鍼治療成績は
著効・有効・やや有効あわせて62.8%であった。
また顔面神経麻痺患者でベル群とラム群を比較す
ると初診時麻痺スコアーはほぼ同様の値であり、
鍼治療による効果率は House - Brackmann の分類
において2段階以上改善したものがベル群では66.
6%、ラム群では57.1%と、ややベル群の方が高値
であった。
【考察と結語】当外来では、顔面神経麻痺患者を
取り扱う頻度が高く、鍼治療は難治性の麻痺等に
対しても有効性の高いことが示唆された。また、
退行性病変や悪性腫瘍に起因する諸症状に対して
はその原因により有効率が一部異なるものの、ほ
ぼ期待すべき効果が得られた。以上より鍼治療は
麻酔科ペインクリニック領域において有用性の高
い治療法と考える。
健康まつり、③患者用リーフレット・お灸の友、
キーワード:鍼治療、ペインクリニック、顔面神
キーワード:コルク製コースター、私のカルテ、
経麻痺、実態分析
④愛媛新聞社カルチャースクール、⑤病院職員対
象灸療指導、⑥灸療モデル地区・西海町灸療活動、
⑦愛媛県立医療技術短期大学東洋医学講義、⑧ボ
ランティア施灸コーナーの設置。
【結果】迷信や旧来の悪しきイメージを取り払い、
主要なツボの効用と取穴のコツ、上手な据え方の
コツを習得し、本来の灸療の魅力に触れて頂くこ
と、また、高齢者の方々には、お灸を思い出して
頂き、お灸の再発見や新発見に出会って頂くこと
が、灸療再開のよき機縁となる。すなわち、掘り
起こしや継続施灸のアフターケアといった目的の
ために施してきた、普及のための数々の工夫と紹
介して、これまでの灸療普及啓蒙活動における成
果を確認し、課題を挙げた。
【考察】チリケに象徴されるように、子供の頃か
らの灸痕が多くの高齢者にみられるが、灸療の習
慣は希薄になりつつある。また、現代は皮膚の弱
い人が増え、火傷を形成するタイプの灸療は、一
般に受け入れにくい時代となっている。従って、
灸療普及の要諦としては、お灸のじょうずな据え
方のコツを体得し、実際の施灸で心地よさを体感
していただくことに重きを置いて、関心を持って
もらう工夫が大切である。
【結語】灸療の具体的な利点を、あらゆる機会・
場所において最大限アピールし、啓蒙に努めるこ
とにより、我が国の医療における伝承東洋医術の
有用性に、多くの人々が気づいてボランティア施
灸への参加を実践していただけるよう、一層の普
及啓蒙に努めたい。
お灸の手引き、お灸の友、ボランティ
ア施灸
397
− 151 −
3P-D-14:42
東京都情報サービス産業健康保険組
合東中野保健センターにおける活動
報告
3P-E-09:00
鍼灸院通院患者の施術者の技術評価
に関する疫学的研究
東京都情報サービス産業健康保険組合東中野保健
明治東洋医学院専門学校
センター1)、パテラ研究所 2)、筑波技術短期大学
附属診療所 3)、筑波技術短期大学鍼灸学科 4)
明治鍼灸大学健康医学教室
福田文彦、石崎直人、矢野
堀
紀子
、松本
1,3 )
釜中
高野道代、清藤昌平
忠
毅
1,4)
明 、森山朝正4)
2)
【目的】東京都情報サービス産業健康保険組合東
中野保健センターは1995年6月に開設され、組合
員およびその家族に対し人間ドックなどの専門検
診、フィットネスなどの場を提供している。今回
我々は専門検診の中の腰痛対策(マッサージ室)
として鍼治療などを行っているので受診者の実態
を紹介する。
【方法】1995年6月から2002年3月までにマッサー
ジ室を受診した初診受診者の性、年代、主訴、他
科受診、鍼治療経験などについて検討した。
【結果】期間内に受診した初診者は1,704名(男
性761名、女性943名)、年代は30代596名、20代43
3名、40代298名、50代222名の順で多かった。主
訴は腰下肢痛1,159名、頚肩背腰部のこり・痛み1,
008名、頭痛・頭重103名、眼精疲労69名などであっ
た。他科受診ではなし464名、病院 229 名、接骨
院・マッサージなど60名、薬局54名、鍼灸院7名
などであり、鍼治療経験はなし 897 名、あり446
名、不明361名であった。
【考察】我々の施設の受診者はほぼ全員がパソコ
ンを使用する事務職であり若い年代層が中心の業
種と考えられ、20∼30代が約60%を占めていた。
主訴では腰痛対策の専門検診であるため腰下肢痛
が大多数であるが、その他は肩こりなどの運動器
系や長時間のパソコン使用によると思われる眼精
疲労などの訴えが多かった。他科受診は合併症の
治療を含むため病院が比較的多かったが、鍼治療
経験者数に対して鍼灸院受診者は少なかった。保
険を使えないことや問診上、鍼に対する悪いイメー
ジを持つ受診者が多かったことも要因となってい
ると考えられる。
キーワード:企業内鍼治療、活動報告、パソコン
【目的】鍼灸院通院患者の満足度は、治療効果、
施術者の技術評価、施術者の信頼度、診療室の清
潔さ、施術者の理解度、施術者の説明度、説明の
分かりやすさ、尋ねやすさが関係していることが
示唆されたことを第50回の本学術大会で報告した。
そこで、今回我々は施術者の技術評価に関連する
要因について疫学的に検討したので報告する。
【方法】対象は、鍼灸院通院患者2210人とした。
これら対象は、明治鍼灸大学同窓会会員で開業し
ている鍼灸院からランダムに抽出された鍼灸院
(101件)に受診した患者であった。調査期間は平
成12年7月10日∼平成12年7月23日の2週間とし、
調査票は独自で作成したものを使用した。調査項
目 は 、 施 術 者 の 技 術 評 価 は Visual Analogue
Scale(VAS)
、その他の項目(QOL、治療効果、症
状、受診状況、環境、治療費、年齢等の基本情報
等)はVAS及び選択式回答法で評価した。調査は、
標本調査による配布郵送調査法にて実施した。な
お、統計解析には、患者の満足度と他の調査項目
との関係は、ピアソンの積率相関係数を使用し、
施術者の技術評価の要因となる項目は重回帰分析
(変数増加法)を使用した。
【結果】回収数は、1319通(59.7%)であった。
施術者の技術評価(有効回答数:1239人)は、平
均81.5±14.52であった。施術者の技術評価にお
いては年齢による有意な差は認められなかった。
施術者の評価と相関が認められたものは、施術
者の信頼度、患者の満足度、治療効果、訴えの理
解度、説明の分かりやすさ、施術者の説明度、尋
ねやすさ、訴えを聴く、丁寧さ、診療室の清潔さ、
妥当な治療費、最高に支払う治療費、治療費の感
想であった。
さらに、重回帰分析では、施術者の信頼度、患
者の満足度、治療効果、妥当な治療費、説明の分
かりやすさが抽出され、施術者の技術評価との重
相関係数及び決定係数は高値を示した。
【考察と結語】本調査の結果、鍼灸院通院患者の
施術者の技術評価は、高い値を示した。この施術
者の技術評価は、施術者の信頼度、患者の満足度、
治療効果、妥当な治療費、説明の分かりやすさの
要因が深く影響していることが示唆された。
キーワード:良質な医療、鍼灸医療、鍼灸院通院
患者、技術評価、調査
− 152 −
398
3P-E-09:14
企業内従業 員に対する鍼治療・手
技療法の効果
3P-E-09:28
鍼灸受診患者における健康関連QO
Lと気分の検討
−職業性ストレスとの関連性の検討−
東海医療学園専門学校
福岡県立福岡高等盲学校専攻科研修科
奥野友香、杉山誠一
財務省印刷局東京病院東洋医学センター
沢崎健太、石丸浩徳
筑波技術短期大学鍼灸学科
安野富美子
坂井友実
【目的】演者らは、平成11年より企業内従業員に
対して鍼治療・手技療法を行い、自覚症状及び職
場内健康管理室利用状況、診療報酬点数に及ぼす
効果を報告してきた。今回は、企業内従業員に対
して実施した鍼治療・手技療法と職業性ストレス
との関連性について検討したので報告する。
【方法】福岡市内のA工場(ビール製造)に所属
する従業員250名の内、労働省「作業関連疾患の
予防に関する研究班」ストレス測定研究グループ
の職業性ストレス簡易調査を行った228名を対象
とした。鍼治療・手技療法は、平成13年5月から
平成14年5月の期間に受療を希望した62名に実施
し、その効果を検討した。
【結果】職業性ストレス簡易調査の結果、全対象
について、職業性ストレス因子の項目では、コン
トロール度、対人関係、仕事の適合性に比して仕
事の負担度のストレス度が高い傾向を示した。受
療回数が10回以上の対象群では、その他の対象に
比し、ストレス反応の心理的・身体的ストレスの
程度が特に高い傾向を示し、「首肩がこる」、「目
が疲れる」の身体症状に関する質問項目が特に顕
著であった。同時に、他の対象に比し、仕事への
満足度が低い傾向も示した。健康管理室の月別利
用状況については、鍼治療・手技療法実施後に減
少を示した。
【考察】継続的な鍼治療・手技療法を希望した者
は、仕事の負担度が高いと感じ、心理的・身体的
ストレス反応の程度が高いと訴え、仕事への満足
度は低い傾向にあった。このような従業員にさら
に継続的に鍼治療・手技療法を行うことは、心理
的・身体的ストレス反応の程度を減少させて仕事
への満足度を高め、労働意欲を向上させるという、
産業衛生上有効な一手段となり得る可能性が示唆
された。また、鍼治療・手技療法実施後、健康管
理室の月別利用状況が減少したことから、職場に
おける鍼治療・手技療法は医療経済学上有効であ
ることが推測されたが、さらに継続的な検討が必
要である。
【目的】近年、医療行為によってもたらされるア
ウトカムの指標として、患者自身の健康感を評価
する健康関連QOLが注目されている。今回、著者
らは鍼灸受診患者のQOLを測定し、主訴と気分の
面から検討した。
【対象と方法】平成14年11月7日∼28日に財務省
印刷局東京病院東洋医学センターに来院した鍼灸
受診患者のうち調査の同意と協力を得た42名(男
性17名、女性25名、56±17歳)を対象とした。方
法は施術者が無記名式の質問紙を患者に配布し、
再来院時に回収した。QOLは(財)PHRC より供与
を受けたSF-36を用い、①身体機能、②日常役割
機能(身体)、③体の痛み、④全体的健康感、⑤
活力、⑥社会生活機能、⑦日常役割機能(精神)、
⑧心の健康を得点化し、主訴と気分(POMS 短縮
版)の面から分析した。
【 結果】 SF-36 による 鍼灸 受診患 者の QOL は ①
74.0 ±25.4、②57.7±42.2、③45.3±17.2、 ④
50.8 ±15.8、⑤63.8±25.5、⑥56.8±25.0、 ⑦
69.0 ±41.3、⑧61.9±18.1で国民標準値と比べ
⑤活力を除いた全ての項目において低下していた。
そして、運動器系を主訴とする者は②日常役割機
能(身体)が低く、頭痛やめまい感を主訴とする
者は②と共に⑥社会的機能や⑦日常役割機能(精
神)が低かった。また、気分とQOLとの間に相関
する項目が認められた。
【考察および結語】仕事や日常生活に運動器系疾
患が身体的問題を、頭痛やめまい感が身体的、心
理的問題を与えると患者自身が認識していること
から、鍼灸受診患者の健康関連QOLは身体的、心
理的健康があリ、QOLの向上には、症状の改善に
加えて心理的な援助も必要であると推測される。
これは、鍼灸治療において患者と施術者間に相互
交流の必要性を示唆するものと考える。
キーワード:産業衛生、鍼、手技療法、職業性ス
キーワード:健康関連、QOL、SF-36、POMS短縮版、
トレス簡易調査、医療経済
鍼灸
399
3P-E-09:42
鍼灸治療を 受療する患者の健康関
連QOL
− 153 −
3P-E-10:00
灸刺激がラット腹腔内マクロファー
ジに及ぼす影響の検討
−SF-36を用いて−
関西鍼灸短期大学免疫・病理学教室
筑波大学理療科教員養成施設
森戸麻美、菅原正秋、吉川恵士
松尾貴子、笠原由紀、栗林恒一、東家一雄
関西鍼灸短期大学解剖学教室
木村通郎
【目的】SF-36は健康関連QOL尺度として、最も一
般的な指標の一つである。鍼灸治療は慢性疾患を
中心に広く利用されており、健康関連QOLの向上
に貢献していると考えられる。今回SF-36を用い
て当施設にて鍼灸治療を受療した患者を対象に、
健康関連QOL調査を実施し、以下の2点について検
討した。
1) 鍼 灸治療を受 療する患者 における 健康関連
QOL 得点と国民標準値の比較。
2)一定期間鍼灸治療を受療した患者の健康関連Q
OL得点の推移。
【方法】調査対象は平成14年10月から当施設を受
療した患者である。調査方法は当日の外来におい
てSF-36(日本語版、Vol.2.0)を自己記入させた。
配布方法は、患者が受け付け終了した後、調査担
当者がSF-36を直接配布した。原則として患者が
治療を受ける前にSF-36に記入してもらった。こ
れは患者と担当鍼灸師とのやり取りが調査の回答
に影響することを避けるためである。回収方法は
記入が終了した後、調査担当者に直接手渡しても
らった。治療継続の患者においては、4週から5週
目に再びSF-36を自己記入させた。この尺度は36
個の質問項目より構成され、身体機能、身体の日
常役割機能、体の痛み、全体的健康観、活力、社
会機能の制限、精神機能の障害による役割機能、
精神状態の8つのサブスケールに分けて評価する。
各下位尺度得点は素点を0∼100点の範囲に換算さ
れ、得点が高いほど健康状態が優れている。
【結果】当施設を受療した患者のSF-36を各下位
尺度得点に変換し、日本人の国民標準値をもとに、
性別と年齢を調製した偏差得点を算出した。結果
は、全ての下位尺度得点が国民標準値よりも低値
を示した。中でも「体の痛み」は38.4±12.6と特
に低値を示した。
【考察】このことから鍼灸治療を受ける患者の健
康関連QOLは一般国民と比較して低いということ
が示唆された。
【目的】自然免疫の主要な細胞であるマクロファー
ジは、非特異的に細菌や微生物を細胞内に取り込
み、分解処理する。また取り込んだ物質を細胞表
面に提示し、T細胞を介して獲得免疫系を賦活す
る。今回、灸刺激がこのようなマクロファージの
性質に影響を及ぼすかどうかを調べるため、マク
ロファージの貪食能とMHCクラスⅡ分子の発現、
及びサイトカイン産生について検索した。
【対象と方法】対象には雌性Wistarラット(8週
令、n=20)を用い、灸刺激群と無刺激群の2つに
分けた。灸刺激群は背部を除毛し、ネンブタール
麻酔下で脾兪、腎兪相当部位に半米粒大の透熱灸
3壮を週2回、3ヶ月間行った。対照の無刺激群は
同様に背部を除毛し、麻酔のみを行った。灸刺激
終了後、生理食塩水で希釈した蛍光ラテックスビー
ズ(粒子径0.05μm)を腹腔内に注入し、18時間
後に腹腔内滲出細胞を回収した。それらの細胞を
PE標識抗ラットI-Aモノクローナル抗体で染色し
たものと染色してないものに分け、マクロファー
ジの細胞内ビーズ取り込みとMHCクラスⅡの発現
をFCMにて解析した。また残った細胞から RNA を
抽出し、RT-PCR法にてIL-1β、TNF-α、iNOSのmR
NA発現を検索した。
【結果】サイトカイン遺伝子の発現については、
灸刺激群においてIL-1βを除き、TNF-α、iNOSの
mRNAが減少を示していた。腹腔内滲出細胞の貪食
能についても、灸刺激群ではビーズを取り込んだ
細胞やクラスⅡを発現している細胞は減少してお
り、単核球分画におけるマクロファージの比率も
減少していた。
【考察】IL-1β、TNF-α、iNOSはマクロファージ
の活性化の指標である。それらのmRNA発現の減少
はマクロファージの活性化の低下が考えられるが、
FCMではマクロファージの領域が選択的に減少し
ていたため、それらから得られた mRNA の量に関
係すると思われる。今回の実験から灸刺激はマク
ロファージの遊走能に影響を及ぼした可能性が示
唆されるが、残念ながら遊走能、貪食能とも灸刺
激群では増強は見られなかった。
キーワード:SF-36、健康関連QOL、鍼治療
キーワード:マクロファージ、貪食能、iNOS
− 154 −
400
3P-E-10:14
3,5-ジカフェオイルキナ酸がラット
脾細胞サイトカイン産生能に及ぼす
影響
3P-E-10:28
鍼通電刺激がGABA・グリシンを介し
て脊髄後角での痛覚抑制作用を賦活
化する可能性についての電気生理学
的検討
関西鍼灸短期大学解剖学教室
東家一雄、五十嵐純、木村通郎
関西鍼灸短期大学東洋医学基礎教室
関西鍼灸短期大学生理学教室
武田大輔、内田靖之、樫葉
大西基代、戸田静男
均
錦織綾彦、上田至宏
関西鍼灸短期大学免疫病理学教室
松尾貴子、笠原由紀、栗林恒一
【目的】艾含有成分は施灸で熱変性を受けた皮膚
組織内へ浸透し、皮内で種々の生物活性を示すこ
とが推察されている。今回、それら含有成分のひ
とつである3,5-ジカフェオイルキナ酸(DCQA)が
免疫細胞へ及ぼす影響についてサイトカイン遺伝
子の発現様式を指標に検索を行った。
【対象と方法】対象には成獣Wistar系ラット(10
週齢、雌性、12匹)を用いた。それら動物の脾臓
から得た細胞浮遊液を6ウェル培養プレートに巻
き込み、高速液体クロマトグラフィーにてヨモギ
抽出液から分取した3,5-DCQA水溶液を 10-4 M、
10-5M、10-6M濃度で添加して培養し、脾細胞を
刺激した。培養開始後24、48時間で各ウェルより
細胞を回収し型の如くtotalRNAを抽出、逆転写酵
素でcDNAを合成した後にラットインターフェロンγ(IFN-γ)に対するプライマーを用いてrevers
e transcription-polymerase chain reaction
(RT-PCR)を行った。得られたPCR増幅産物はアガ
ロースゲル電気泳動にて展開し、IFN-γのmRNA発
現様式を解析した。
【結果】3,5-DCQA刺激脾細胞におけるIFN-γのmR
NA発現は培養時間の経過に伴い増加する傾向が見
られ、中でも10-5M3,5-DCQAを添加した48時間培
養群では、対照群に比べて有意に高い発現量が認
められた。10-6M添加群でも10-5M添加群にほぼ
匹敵する発現増加が示されたが、10-4 M添加群
ではその程度は低かった。
【考察】今回の検索から艾含有成分3,5-DCQAが免
疫細胞へ直接的に作用し、免疫賦活作用を持つサ
イトカインIFN-γの産生をmRNA発現レベルで促進
することが示された。このことは艾含有成分のも
つ生物活性が灸の免疫系への作用に関与する可能
性を示唆している。
キーワード:ラット、脾細胞、3,5-ジカフェオイ
ルキナ酸、IFN-γ、RT-PCR
【目的】疼痛緩和の目的に鍼通電刺激が臨床上の
一手段として良く用いられている。しかし、鍼通
電刺激が末梢もしくは中枢のどこで作用している
かは今のところ明らかではない。そこで今回、我々
はこの作用が中枢神経を介しているものではない
かと見込み、脊髄後角深層で中枢神経の主な抑制
性伝達物質であるGABA・グリシンのレセプターの
チャネルレベルでの応答を電気生理学的に検討し
た。
【方法】イソフルレン麻酔下に4週-6週令の成熟S
D系ラット5匹から脊髄を摘出し、マイクロスライ
サーを用い左右どちらか一方のL5神経根を付した
0.6mmの脊髄スライス標本を作成した。記録は人
工脳脊髄液還流下にブラインドパッチクランプ法
を用いて興奮性伝達物質であるグルタメートレセ
プターのブロッカー下で脊髄後角深層より行った。
刺激は神経根を吸引電極で保持しながら頻度20Hz、
C線維閾値以上の電流で3分間刺激した。また記録
はC-fiberの刺激に対する感度をあげる目的でC線
維に多く発現するVR1レセプターのアゴニストで
あるカプサイシンを神経活動が賦活化されうる閾
値以下の濃度(10nモル)の連続投与下で行った。
【結果と考察】20Hz、C線維閾値以上の刺激で脊
髄後角深層でのGABA、グリシンによる抑制性応答
の増大が観られた。これらの作用は中枢の主な興
奮性伝達物質グルタメートを介するものではなく
末梢神経刺激による中枢での未知の伝達物質放出
によるGABA、グリシン含有神経細胞への作用であ
る可能性が示唆された。末梢での鍼通電刺激は脊
髄レベルではC線維を介して抑制性伝達物質の遊
離を増大する事により鎮痛効果を示す可能性が示
唆された。今後、刺激閾値、頻度、間隔などを変
えての検討が必要であると考えられた。
【結語】鍼通電刺激は末梢神経を介して中枢に作
用し鎮痛を起こす事が示唆されたので、痛みに対
する臨床応用上有用であると考えられた。
キーワード:パッチクランプ、脊髄スライス、鍼
通電刺激
401
− 155 −
3P-E-10:42
鍼遺伝子AIG1の完全長決定の試み
3P-E-13:00
風池への鍼刺激による脳血流の変化
後藤学園ライフエンス総研情報科学研究部 1)
東京大学医学部生体防御機能学講座
岩手医科大学歯学部口腔生化学講座
2)
1)
東京大学医学部アレルギー・リウマチ内科
1)
尾西恭亮 、高松邦彦
大田美香1 )、高岡
秋山聡子
磯部秀之
裕1,2)
【目的】我々は、鍼刺激の中枢神経系への作用を
【目的】我々は鍼の治効メカニズムを分子レベル
検討してきているが、今回は、風池への鍼刺激が
で解明すべく、遺伝子発現を指標に生命情報科学
脳血流に及ぼす影響について観察した。
の手法で解析をおこなっている。これまでに、鍼
【方法】健常成人を対象に、両側の風池に鍼刺激
通電刺激が遺伝子発現変動を誘発すること、鍼刺
(雀啄1分、置鍼5分)を行い、脳血流の変化を観
激 で 発 見 し た 新 規 遺 伝 子 AIG1(Acupuncture
察した。方法は、網膜中心動脈・椎骨動脈・脳底
induced gene 1)のクローニングなどについて報
動脈 について、 汎用超音波画像 診断装置 LOGIQ
告してきた。最近、完全長cDNAの決定が可能なオ
500を用い、刺激前から刺激後60分までの血流速
リゴキャップcDNAライブラリー実用化と、マウス
度と血管抵抗を測定した。同時に、血圧モニタに
ゲノム解析の成果の情報公開により、生命情報科
学を用いた詳細な解析が可能になった。そこで、
より上肢の血圧と脈拍数の測定も行った。また、
問診表から自覚症状等についての検討を行い、測
我々が決定したcDNAが完全長かどうか検討を加え
定結果との関連性を考察した。
たので報告する。
【結果】網膜中心動脈及び脳底動脈は、風池への
【方法】AIG1遺伝子の解析は、(1)オリゴキャッ
鍼刺激により、血流速度の増大と血管抵抗の減少
プcDNAからのAIG1遺伝子増幅、マウスゲノムデー
が認められた。特に、眼の違和感・眩暈など、選
タ利用による(2)PCR法と(3)新規遺伝子発見プ
穴の目標となるような自覚症状が問診表に見られ
ログラム解析、の3種類の方法でおこなった。な
たものでは、血流増加の傾向が顕著であった。上
お新規遺伝子発見プログラムによる解析には、転
肢の血圧や脈拍数については、特徴的な変化は見
写/翻訳産物による遺伝子発見プログラムGENEWIS
られなかった。
E2(http : // www . sanger . ac . uk / Software /
Wise2/)や、ゲノム比較による遺伝子発見プログ
【考察】風池は、眼疾患の治療に使用頻度の高い
経穴の一つであり、脳血管障害にも多く使用され
ラ ム ROSETTA(http : // www . theory . lcs.mit.e
ている。一方、網膜中心動脈は眼底部、脳底動脈
du/crossspecies)に 加 え て 、FGENESH(http : //
は脳幹部を栄養する重要な血管である。今回の結
genomic . sanger . ac . uk / gf / gf . shtml)や GE
果から、風池への鍼刺激は、それらの血管の血行
NSCAN(http : // CCR - 081 . mit.edu/GENSCAN.ht
動態を改善したと考えられるが、このことは、風
ml)等の等のab initoプログラムも用いた。
池という経穴の適応や有効性を示唆するものとし
【結果・考察】我々が決定したcDNA配列はほぼ完
て興味深い。また、脳血流変化と上肢の血圧や脈
全長に近いことが明らかになった。今後更に詳細
拍数に関連性が見られなかったことからは、風池
な検討を加えた後、米国NIHのゲノムデータベー
への鍼刺激が、全身の循環動態とは異なる機序で
スのGenBankに登録しているAIG1遺伝子の配列情
報を更新する予定である。また、従来の実験的手
脳循環に影響を与えている可能性が推察される。
【結語】健常成人において、風池への鍼刺激によ
法に加えて、計算機利用の生物学的な解析手法の
り、網膜中心動脈及び脳底動脈の血流増加が認め
有効性も確認できた。
られた。
キ ー ワ ー ド : AIG1 遺 伝 子 、 完 全 長 cDNA 、 ab
キーワード:風池、脳循環、鍼刺激、超音波画像
initio 遺伝発見プログラム
診断装置
− 156 −
402
3P-E-13:14
合谷鍼刺激:正常人脳波の確立密度
関数、線形・非線形解析
3P-E-13:28
鍼による脳循環の変化(第2報)
千葉地方会
富山県国際伝統医学センター
−合谷への鍼と触圧刺激の比較−
木南真紀子、金井正博、酒井茂一、元吉正幸
森田和利、小林詔司、石原克巳、松下嘉一
千葉大学大学院医学研究院神経情報統合生理学
下山一郎
田口裕紀子、上馬場和夫
横浜市立大学医学部解剖学第2
久島達也
【目的】合谷への鍼と触圧刺激の脳循環への影響
を調査・比較した。
【目的】鍼灸治療は効果あるが、そのメカニズム
は解明されていない。鍼刺激で脳波α波増加によ
りリラックス度増加が報告されているが、逆の症
例の存在など、中枢神経系への影響は不明な点が
多い。鍼刺激の中枢神経系におよぼす短期効果を
しらべる目的で、健康人に合谷1分間置鍼の影響
を、脳波で確率過程解析・線形解析・非線形解析
にて、被験者の背景を考慮に入れて検討した。
【方法】被験者はボランティア9名(22∼30歳):
鍼未経験者4名、鍼経験者5名、験者1名(50歳)
刺激部位:左合谷 刺激は安静閉眼座位にて1)
安静1min(P0)
、2)浅部合谷置鍼1min(P1)
、3)
深部合谷置鍼1min(P2)
、脳波記録:両耳朶結合基
準にて、国際10/20法19部位から current source
derivation で導出し左右半球の各3部位(前頭:F
3/4、中心:C3/4、頭頂部:P3/4)について以下の
演算を施行した。解析は、1)確率密度関数の尖
度と歪度、2)パワースペクトルは対照を分母にl
og10にて基準化パワー、3)コヒーレンス、4)バ
イスペクトル、5)バイコヒーレンスの5項目検討
した。【結果】1)確率密度関数の尖度は刺激間
で有意、記録部位間でも有意であった。P0の尖度
が最も大きく、P1の尖度が小さかった。部位では
P3,C3,P4,F3,C4,F4の順であった。 歪度は有意で
なかった。2)パワースペクトルでは、未経験者4
名中3名がα波帯において減少であった。経験者5
名では全例にα波帯に増加と減少が混在し、かつ
β波帯に増加が見られた。3)コヒーレンス・バ
イスペクトル・バイコヒーレンスには一定の傾向
が見られなかった。
【考察】確率密度関数は刺激間に有意な差がめら
れP1-P2に脳波で差が認められた。パワーの結果
からは、未経験者4名ともにα遮断が観察された。
これに対して、5経験者からはα波帯増加が観察
されるが1Hz解像度で詳細に見ると、減少も見ら
れた(4/5例)
。今回はコヒーレンス、バイスペク
トル、バイコヒーレンスでは分類できなかったが、
これらを総合すると脳内信号処理がさらに詳細に
推測され、個人差による鍼刺激の脳内信号処理の
違いと推測した。鍼の中枢神経作用の個人差の解
析は、今後の課題である。【結語】鍼経験の有無
が脳波変化に関与することが推測され、被験者の
背景を考慮に入れて検討することが重要だろう。
症例を増やしさらに詳細な検討を要す。
【方法】健常成人9名(平均年齢:35±7歳)を対
キーワード:合谷、脳波、確率密度関数、線形・
キーワード:脳循環、鍼刺激、触圧刺激、TCD、
非線形解析
象に、同意の後、第1報の結果から脳循環の非特
異的変動がない閉眼後1分目以降の結果を解析し
た。安静座位で閉眼開始後2分目から1分間、鍼刺
激あるいは触 圧刺激を行う。鍼刺激は 、寸 3-2
で 同一鍼灸 師が旋捻 し、 触圧 刺激は 、 Digital
forcegauge を使い、 1.5kg/cm 2の 圧を4秒間隔 で
与えた。鍼と触圧刺激は、無作為の順序で行った。
呼吸制御はなし。室温24±1℃。測定項目は、TCD
により中大脳動脈のPulsatility index(PI:血管
抵抗の指標)を測定、Near Infrared Spectroscopy により、前頭葉表面の組織Hb濃度変化(前
額部にセンサー装着)、僧帽筋部Hb濃度変化(僧
帽筋部)を測定。さらに、連続血圧・ ECG 測定
装置により、一拍毎の血圧とRR変動を測定した。
【結果と考察】合谷への鍼刺激では、心拍数の減
少と前頭葉表面血液量の減少の傾向を認めた。前
頭葉表面と僧帽筋部の血液量の変化は相反する傾
向がみられた。また、触圧刺激による前頭葉表面
血液量とPI値とは、鍼刺激の場合と相反する傾向
を認めた。全身血圧の有意な変化は認めなかった。
【結語】合谷への鍼刺激では、前頭葉表面の循環
抑制を示唆する結果が得られた。健常人での脳循
環の部分的な変化であろうが、触圧刺激と相反す
る例があり、両者の作用機序の違いが示唆された。
組織Hb濃度
403
3P-E-13:42
自 律神 経と 血圧の 左右 同時 測定
(第13報)
−腕の血圧と比例しない脳の血流−
新潟地方会
3P-E-14:00
連続施灸刺激がハンドリングストレ
ス負荷ラット前頭前野皮質の細胞外
ドーパミンおよびセロトニン動態に
及ぼす影響
中村吉伸
【目的】これまで症状に伴う血圧変化は健康管理
の一つの目安とされてきて、腕の血圧は脳の血圧
と比例するものとして扱われてきたが、左右の血
圧と左右の内頸動脈の流量変化を測定してみると、
多くの場合は全く別個の変化を示すことが分かっ
たので症例をもって報告する。
[方法]脳血管に問題がある場合の症例1と、高
血圧症とされている症例2について、左右の内頚
動脈の血流変化を外耳道に於いて皮膚温度を測定
し、血圧は上腕部で測定しバランス変化を比較検
討した。(使用機器:テルモ耳式体温計M20一対、
0MURONデジタル自動血圧計一対で構成される機器)
【結果】症例1、脳底動脈硬化症と右肩の自発痛
を訴える74才男性の治療の前後
治療前:右耳35.6度
左耳34.8度
右腕128/85㎜Hg 左腕136/84㎜Hg
治療後:右耳35.2度
左耳35.2度
右腕106/70㎜Hg 左腕109/72㎜Hg
症例2、腰と右膝の運動時痛、右膝の伸展制限
を訴える60才女性
治療前:右耳 35.8度
左耳35.5度
右腕165/93㎜Hg 左腕161/99㎜Hg
治療後:右耳 35.8度
左耳35.8度
右腕133/84㎜Hg 左腕128/83㎜Hg
症例1では右肩の痛みの消失後、左右の耳の温
度は高かった側では下がり低かった側では高くなっ
て左右が等しくなった。症例2では明らかな血圧
変化と症状消失が有ったのに、耳での温度変化は
ほとんど認められなかった。
【考察及び結語】結果より、知覚神経への刺激で
片側の脳が活動しているときは、左右の脳の血流
バランスに影響がでる場合もあるので、症状の強
さを知るのには脳への血流量変化が重要な指標と
なるものと考えられる。また腕での血圧が大きく
変わっても、単位時間内に脳へ流込む血液量は安
定しているという周知の事実を再確認できた。腕
の血圧は個々の腕の血管の緊張に左右されるので、
現行の血圧測定方法や基準に基づく血圧の評価に
は再考が必要と考えられる。
キーワード:脳の血流量
− 157 −
明治鍼灸大学基礎鍼灸医学教室
新原寿志、尾崎昭弘
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
竹田太郎、福田文彦、矢野
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ教室
明治鍼灸大学薬理学教室
忠
北小路博司
栗山欣彌
【目的】灸刺激の抗ストレス作用を明らかにする
ために、ハンドリングストレス負荷によるラット
前頭前野皮質の細胞外ドーパミン量およびセロト
ニン量の経時的変化に及ぼす連続施灸刺激の影響
について検討した。
【 方 法 】 対 象 は Wister 系 ラ ッ ト 雄 (n=6 、
230-250g)とし、剃毛後、2mgのモグサを背部中
央に毎日10壮、連続14日間にわたり施灸した。細
胞外ドーパミン量およびセロトニン量の測定には
マイクロダイアリシス法を用い、透析液はPFC(A
P:3.2、L:0.8、D:5.3)に埋め込まれた透析プロー
ブ(AI-8-3、エイコム社)から連続回収し、リア
ルタイムでオートインジェクタに送られ、6分毎
にクロマトグラフィ装置(HTEC-500、エイコム社)
により分析された。ハンドリングストレスは、合
皮製の手袋をはめた掌でラットの背部全体を軽く
タッチすることにより18分間行った。
【結果】ハンドリングストレス負荷により、対照
群(n=3)のPFCの細胞外ドーパミン量は、刺激開
始後18分で最大232±22%(Mean±SE)と刺激前値
に比較して著明な増加が観察された。セロトニン
も同様に、刺激開始後30分で最大139± 19 %と著
明に増加した。一方、連続施灸群(n=3)の細胞
外ドーパミン量は、対照群に比較してハンドリン
グストレスによる増加量は、刺激開始後30分で最
大167±12%と低く、その増加開始時間も遅れる傾
向が示された。セロトニン量でも、増加開始が遅
れる傾向が観察されたが、刺激開始後24分で最大
166±27%と、増加量の程度に差は認められなかっ
た。
【考察とまとめ】連続施灸刺激により、ハンドリ
ングストレス負荷に対するPFCの反応は抑制され
る傾向が見られたことから、灸刺激による抗スト
レス作用の一端を示すことができた。今後、これ
ら反応の抑制のメカニズムおよびその生理学的意
義について検討を進める必要があると考えられた。
キーワード:連続施灸刺激、ハンドリングストレ
ス、マイクロダイアリシス法、ドー
パミン、セロトニン
− 158 −
404
3P-E-14:14
拘束ストレ スに対する鍼通電刺激
の影響(第4報)
3P-E-14:28
慢性 灸刺激の脳内モノアミ ンに及
ぼす影響
−下肢刺激によるセロトニン量の変化−
−刺激部位による比較−
国立身体障害者リハビリテーションセンター理療
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
教育部
京都府立医科大学法医学教室
加藤 麦
吉本寛司
福田文彦、矢野
国立身体障害者リハビリテーションセンター
忠
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
矢野
加藤
麦
忠
京都府立医科大学法医学教室
【目的】前回の本学会にて我々は下肢への鍼通電
刺激(EA)が拘束ストレスにより変動した脳内ド
パミン(DA)量を補完し、刺激頻度の違いにより
異なる反応を引き起こすことを明らかにした。今
回 脳 報 償 系 DA 系 と 共 役 す る 脳 内 セ ロ ト ニ ン
(5-HT)系に対する拘束ストレス状態下での下肢E
Aの作用について検討した。
【方法】雄性SD系ラットを無刺激コントロール群、
拘束ストレス群、拘束+低頻度EA群、拘束+高頻
度EA群に分けた。拘束ストレスは拘束帯を用いて
10分間固定し、EAはストレス負荷状態で足三里穴
相当部位へ低頻度では1Hz、高頻度では100Hz、10
分間行った。 脳報償系の側坐核 (ACC)、線条体
(C/P)、前頭前野皮質(FC)、中脳黒質・腹側被蓋
野(S/N)、背側縫線核(DRN)の5-HTと代謝産物5HIAA量を高速液体クロマトグラフィーにて定量し
た。
【結果】拘束ストレス群の5-HT量は無刺激コント
ロール群に比べてFC、ACC、C/Pで減少し、DRNで
増加した。[5-HIAA]/[5-HT]比はFCと ACC で増加
した。低頻度EA群の5-HT量は拘束ストレス群に比
べFC、ACC、C/Pで増加し、DRN では減少した。[5HIAA]/[5-HT]比はFCとC/Pで減少した。高頻度EA
群の5-HT量はACCとC/Pで拘束ストレス群に比べ増
加し、[5-HIAA]/[5-HT]比はFCとC/Pで減少した。
【考察】低頻度EAは、拘束ストレスにより変動し
た5-HT量をいずれの部位でも補完する作用がみら
れたが、高頻度EAではFCとDRNにおける補完作用
がみられなかった。5-HT系におけるこれらの相違
が、前回報告したDA系に対するEAの異なる反応を
引き起こす可能性が考えられる。
【結語】EAは拘束ストレスによる5-HT系の変動を
補完し、DA系に働きかけている可能性が示唆され
た。
【はじめに】我々は、既に鍼通電刺激がストレス
による脳内モノアミン変化を補完する作用を本学
会で報告した。今回は、慢性灸刺激の刺激部位の
違 い に よ る 脳 内 ド パ ミン (DA)、 セ ロ ト ニ ン
(5HT)
、それらの代謝産物(DOPAC、5HIAA)量変
化を指標に検討した。
【方法】雄性SD系ラットを用い、灸刺激群とコン
トロール群に分けた。灸刺激群は、頭頂部(天門
穴相当部位:n=5)
、体幹部(腎兪穴相当部位:n=
5)
、下肢部(足三里穴相当部位:n=5)に分けた。
1回5壮の施灸(重さ1mg、円錐状の艾)を 10日間
行った。コントロール群は、灸刺激と同部位に同
じ艾を置き線香にて点火したのちすぐに取り除い
た(n=3×3)
。10日目の施灸終了後1時間以内に断
頭した。速やかに脳を摘出し、側坐核、線条体、
前頭前野皮質、扁桃体、外側視床下部、背側縫線
核、中脳黒質・腹側皮蓋野、海馬の8領域に分画
した。脳内モノアミン含有量は、電気化学検出器
接続高速液体クロマトグラフィーで定量した。
【結果】体幹部灸刺激群では、側坐核DAが増加す
る傾向を示し、線条体DOPAC/DA比が有意に増加
した。下肢部灸刺激群では、前頭前野皮質DOPAC
/DA比が増加する傾向を示した。頭頂部灸刺激群
においては、有意な差は認められなかった。
【考察・結語】慢性灸刺激では、刺激部位による
脳内モノアミン量が変化する傾向を示した。慢性
体幹部灸刺激は、中脳辺縁系DA系、黒質線条体系
DA系、慢性下肢部灸刺激は、中脳皮質系DA系に対
して作用することが認められた。これらの部位は、
脳報償系に関与する部位である。慢性灸刺激は脳
報償系DA神経系に作用し、行動の動機付け、情動
変化に影響を与えることが示唆された。
キーワード:拘束ストレス、鍼通電刺激、セロト
キーワード:慢性灸刺激、ドパミン、セロトニン、
ニン、脳報償系
吉本寛司、安原正博
明治鍼灸大学薬理学教室
脳報償系、脳内モノアミン
栗山欣彌
405
− 159 −
(社)全日本鍼灸学会学術大会 抄録集キーワード用語解説
(社)全日本鍼灸学会学術部編集
平成15年5月
あ
【アレルギー】アレルギーの意味は変わった働き
【悪性腫瘍】悪性腫瘍とは大きく癌腫と肉腫に分
という二つの言葉からなっている。現在アレルギー
は4型に分類される。 1型アレルギーは IgE 抗体
けられる。癌腫とは上皮の細胞から発生した悪性
が関与する反応で、気管支喘息、アレルギー性鼻
腫瘍で、肉腫とは非上皮性の悪性腫瘍となる。癌
炎、アナフィラキシーが代表的な疾患である。2
腫と肉腫では圧倒的に癌腫が多い。(03)
型は細胞障害型の反応といわれ、自己免疫性溶血
【アジュ バント関節炎】 アジュバント
性貧血がこの反応によっておこる。3型は免疫複
(adjuvant)とは免疫学においては抗原と混合し
合体と補体が関与する反応で、糸球体腎炎やルー
たときに抗原性を高め、より高度な免疫応答を起
プ腎炎、過敏性肺臓炎を引き起こす。4型は抗原
こさせる物質である。これらの反応を利用しラッ
に感作されたTリンパ球による反応である。この
トなどの関節に adjuvant 液(結核抗体菌)を注
代表的な反応がツベルクリンである。その他とし
入し、急性の関節炎を起こさせ、慢性関節リウマ
チなどの実験研究に応用されている。(01)
て薬品による接触性皮膚炎が有名である。(03)
【アロディニア:allodynia】触・圧覚など、通
【圧弾性】生体は硬さの異なる層状の複合組織で
常では痛みを誘発しない非侵害性刺激によって誘
構成されているため、深さによって弾性率が異な
発される異常な痛みをアロディニアと定義されて
る。圧弾性値(dyne/cm )は、押し込み距離(深
いる。正常の人では痛みを感じない程度の刺激で
さ)別の硬さの評価を行う指標として定義された
も痛みを感じる状態をいう。アロディニアは、触
ものであり、皮膚表面から先端子を押し込む時の
刺激によって痛みが引き起こされ、痛覚閾値が低
応力(δ)−押し込み距離(L)関係から、傾き
下している点が特徴である。発症は神経傷害によ
Δδ/ΔLを各押し込み距離ΔL毎に求め、押し
り、C線維終末の萎縮や変性が生じて、本来C線維
込んだ距離で除算し求められる。(02)
が入力すべき脊髄後角の第Ⅱ層部に触覚に関わる
【圧痛閾値】圧痛を指標とし痛みを引き起こす最
小から最大値までの圧または痛みを測定するため
A線維が侵入することが原因とも考えられており、
臨 床的には 帯状疱疹後 神経痛に みられる 。
に用いる指標である。(01)
(99)(00)
【圧痛点】正常時には痛みを生じない強さで皮膚
【アロマテラピー】芳香療法のこと。主に植物精
表面を押すことで痛みが生じる部位。成因として、
油を用い、心身症や皮膚疾患などの病気を芳香で
痛覚受容器の感受性が高い(感作した)部位と考
治療する治療法。命名者はフランスのガットフォ
えられているが、中枢性の感作や触・圧入力が痛
セで、約100年前 (1897年) に命名された。(99)
3
覚情報として誤って伝わる(アロディニア)の可
能性なども示唆されている。(02)
い
【アトピー性皮膚炎】「増悪と緩解を繰り返す掻
痒のある湿疹病変を主体とする疾患であり、患者
の多くはアトピー素因をもつ」と定義されている。
【胃電図:Electrogastrography( EGG)】胃の電気
活動を表面電極を用いて経皮的に記録したもの。
Hanifin と Rajka の診断基準が世界で最も参考に
胃電図は胃の大弯側上部約1/3辺りに存在すると
されているが、本邦では日本皮膚科学会が 1994
されているペースメーカーから1分間に約3回の規
年に提唱した診断基準が広く用いられている。
則的な周期で出現する波形で示され、その周期は
(03)
胃運動の出現サイクルを調律しており、振幅は胃
− 160 −
406
キーワード用語解説
運動の強さを反映していることが判明している。
う
(00)
【伊東細胞】脂肪摂取細胞のこと。1904年に伊東
【うつ状態】うつ状態とは、うつ病の症状を生じ
俊夫が発見した。肝臓の Diss 腔内で脂質やビタ
ミンAを貯える性質を持つ細胞である。(01)
ている状態である。うつ状態の原因は、内因性の
うつ病(原因が明確でなくうつ病が発症する)や、
【医療経済学】様々な治療や処置が臨床医学にお
反応性うつ病(気分がゆうつになるような原因に
ける資源の消費に及ぼす影響を研究すること。単
より発症する)など多くの原因がある。高齢者の
に新しい治療の費用を評価するだけでなく包括的
場合、脳の器質的変化に加えて身体的変化や社会
に経済的、臨床的影響を評価する学問。医薬品に
環境的変化が原因となって発症する。うつ状態の
関する経済評価については、現在世界的な潮流と
症状の主体は、抑うつ気分や意欲の低下である。
なっている。(02)
精神症状としては、「気分が沈む」、「何をするの
【医療面接】医療面接とは、単に患者からの必要
もおっくう」、「仕事はもちろん今まで好きだった
な情報を聴き出すのみでなく、(1)良好な医療者患
こと(趣味)まで楽しめなくなる」、「イライラ」
者関係の構築、(2)患者からの必要な情報を聴き出
す、(3)患者に対しての説明や教育を行う、といっ
などの症状であり、身体症状としては、「睡眠障
害」、「食欲不振」などの症状が現れる。(00)
た3つの役割を持った面接方法である。(01)
【インピンジメント症候群:Impingement syund-
え
rome】野球や水泳、テニスなど上肢を挙上して過
度に使用したり、機能学的に不安定な動作を繰り
【エゴグラム】エゴグラムは、1970年代のはじめ
返すと慢性の使いすぎ症候群としてみられる。肩
にアメリカの Dusay が交流分析理論に基づいて
峰下関節あるいは、いわゆる第二関節といわれる
考案した「性格の肖像画」である。交流分析では、
機能関節は、肩峰前下面と烏口肩峰靭帯で作られ
自我状態を P(Parent : 親)、A(Adult:大人)、C
るアーチの下に大結節、棘上筋、肩甲下筋の腱板、
(Child:子ども)の3つに分け、さらに親の自我
二頭筋腱、小結節、肩峰下滑液包などが挙上する
際入り込んで関節の働きをしており、直達外力が
は CP (Critical Parent : 批 判 的 親 ) と NP
(Nurturing Parent : 養育的親)、子どもの自我は
かかったり、異常な使い方をした場合、あるいは
FC(Free Child : 自由な子ども)と AC(Adapted C
挙上位で繰り返しかかる内外旋のストレスが生理
hild:適応した子ども)に分けられる。これら5つ
的限界を越えると炎症肥厚が生じる。この関節の
の自我状態のどの部分が優勢であるかは個人によ
スムーズな動きが損なわれ、よりスペースが狭く
り異なり、これらの自我状態の関係により性格上
なると、impinge(衝突)するようになる。 (02)
の特性を知ることができる。臨床的には、これら
【陰部神経刺鍼点】陰部神経を選択的に鍼刺激す
の特性を用いて患者に対するアドバイスや生活指
るための皮膚上の鍼刺入点(実際はある領域を指
導などを行うためにも使用出来る。(02)
す)である。取穴方法は、上後腸骨棘と坐骨結節
【エストラジオール(血中):estradiol】ステロ
下端内側との線上で、上後腸骨棘の下50%∼60%の
領域である。この領域は仙棘靱帯上の陰部神経の
イド核をもつ天然のエストロゲンの一種。卵巣か
ら分泌される時は主にエストラジオールの形であ
位置を示す。現在、排尿障害(利尿筋外尿道括約
り、一部がエストロンになっている。血液中では
筋協調不全など)・勃起障害・脊柱管狭窄症など
エストラジオールはエストロンと平衡しており、
の疾病に対して臨床応用されている。(00)
代謝されるとエストリオールになる。作用が最も
強い(エストロンの10倍)。(02)
407
− 161 −
キーワード用語解説
【エストロゲン:estrogen(=卵胞ホルモン)】
モルヒネ様活性を有する内因性オピオイドの生体
卵巣からエストロン(estrone)、エストリオール
内における作用点である。オピオイド受容体には
(etriol)、エストラジオール(estradiol) など
μ、δ、κ受容体が存在し、β-エンドルフィン
の卵胞ホルモンが分泌され、これを総称してエス
トロゲンという。天然と合成とがあるが、天然エ
はμおよびδ受容体のそれぞれに対して親和性を
示す。エンケファリンはδ受容体に対する親和性
ストロゲンは、主として卵巣(卵胞、黄体)、胎
が特に強い。ダイノルフィンはκ受容体に選択的
盤などで合成・分泌され、少量が副腎皮質や精巣
に結合すると言われている。(03)
で合成・分泌される。(02)
【オープンフィールド法】動物の自発的活動性
【エピネフリン】カテコールアミン類に属し、チ
(spontaneous motor activity:SMA)を測定する
ロシンから生合成される。別名でアドレナリンと
方法のひとつで、観察項目を決め一定の観察容器
も呼ばれ、末梢血中に見られるものの由来は、ほ
の中での行動を記録する方法。例として、底面に
とんどが副腎髄質であることが知られている。ア
区画を引いた観察容器にラットを入れ、一定時間
ドレナリンβ受容体に対する作用が強く、心拍出
内に区画から区画へ移動した時の通過区画を累計
量の増加と血糖値上昇作用が著しく強い。その他、
胃腸運動の抑制、血圧上昇、気管の拡張など多く
して行動量を測定する。その他、立ち上がり回数、
身づくろい時間、脱糞・排尿数などを観察するこ
の生理作用を示す。ノルエピネフリンがフェニル
とにより、一般活動性、探索行動および情動性に
エタノールアミンN-メチルトランスフェラーゼに
ついて測定する。(01)
よりエピネフリンとなる。(99)
【音声スペクトル】音声波形も周期的な電圧の変
【エレノード鍼】エレノード鍼は絶縁鍼とも称さ
化を示すため、スペクトルとして周波数波形に変
れ 、 鍼 尖部 のみ に電 流 が流 れる よう 鍼尖 部を
換することができる。音声のスペクトルとは、特
0.3mm 残して鍼体部をアクリル樹脂で絶縁した鍼
定の時間における音の周波数と振幅との関係を表
灸鍼である。深部の痛みに対して直接通電を行う
示したもので、音声信号の周波数に対する音響エ
場合や、深部痛覚閾値の測定などで活用される。
ネルギーの分布、つまり周波数成分の分布である。
(00)
発音された言語音の特徴を示す共鳴特性、音源特
性が検出可能とされる。音声のスペクトルに時間
お
軸を加えたものが声紋で知られるスペクトログラ
ムである。(00)
【オピオイド:opioid】鎮痛を目的に麻薬として
【温冷刺激】加熱や冷却などの刺激。施灸は熱刺
投与されるオピオイド(opioid)と鍼鎮痛発現に
激に該当する。これらの刺激は温受容器や冷受容
関 与す ると さ れる 内因 性 オピ オイ ドペ プ チド
器で受容される。(03)
(endogenous opioid peptide)がある。また、内
因性オピオイドペプチドはアミノ酸配列により、
か
エンケファリン、エンドルフィン、ダイノルフィ
ンなどに区分され、通電周波数によって異なった
オピオイドが作用し鎮痛効果を発現させることな
【外傷性頚部症候群】追突事故・スポーツ外傷な
どで、生理的可動域を超えて負荷が頚椎に加わる
ども報告されている。(02)
ことにより生ずる椎間板、椎間関節、頚椎周囲の
【オピオイド受容体】モルヒネをはじめとするア
靱帯、筋肉などの障害。症状として後頭部から上
ヘンアルカロイドとその誘導体及びβ-エンドル
肢にかけての疼痛、上肢のしびれに加え、頭痛、
フィン、エンケファリン、ダイノルフィンなどの
めまい、嘔気、耳鳴、全身倦怠感、不眠などの不
− 162 −
408
キーワード用語解説
定愁訴も加わる。他覚的には頚椎の可動域制限や
脳中心灰白質、延髄縫線核・傍巨大細胞網様核な
軽度の知覚障害、筋力低下、反射異常などを呈す
どから起始しセロトニン、ノルアドレナリン作動
るが、神経学的には神経領域を特定できないこと
性ニューロンが脊髄後核で侵害性入力を抑制する
も多く、画像所見では固有の所見はない。(02)
【カオス解析】気象変動や脳波、心拍などは一見、
系。(02)
【過酸化脂質】不飽和脂肪酸が酸化されることに
不規則な動きをしているようであるが、長期的に
よって生成される物質で、過酸化脂質が分解され
展望するとある種の秩序(カオス的な振る舞い)
ると活性酸素が増加し、生体に対して様々な影響
を持っていることが判る。このような無秩序と秩
を与える。特に、近年の研究においてガン、老化、
序を合わせ持った複雑な現象を数学的にカオスと
動脈硬化、炎症などの病態を誘導することが知ら
呼び、カオス理論が適応される。カオス解析では、
れている。(03)
測定された一見でたらめなようなデータをもとに
【加速度脈波】指尖容積脈波の原波形を二次微分
アトラクターという図形を描き、その図形のふる
波形として表したもので、血流の速度あるいは加
まいから規則性を見つけ、予測や診断に役立てよ
速度とは直接関係しない。現在のところ、加速度
うとするものである。(99)
【過活動膀胱】過活動膀胱は膀胱にカテーテルを
脈波の成分として計測されているのは収縮初期陽
性波(a波)、収縮初期陰性波(b波)、収縮中期再
挿入し、水または炭酸ガスを注入して膀胱容量お
上昇波(c波)、収縮後期再下降波(d波)、拡張初
よび膀胱内圧を測定する膀胱内圧測定をおこない
期陽性波(e波)がある。a・b 波は収縮期前方成
不随意な膀胱の収縮(無抑制収縮)がみられる状
分と言われ、心臓が収縮した時の血液の駆出によっ
態をいう。最近、患者の QOL 改善を重視する治
て生じた駆動圧波を反映し、c・d 波は収縮期後方
療の観点から、尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁
成分と言われ、駆動圧波が末梢に伝搬し反射して
といった症状に着目した過活動膀胱(overactive
戻ってきた反射圧波を反映したものとされている。
bladder)の新しい概念が提唱されている。(03)
加齢、動脈硬化、高血圧などにより反射波が増大
【顎関節症】顎関節症とは、顎関節や咀嚼筋の疼
し収縮期後方成分上昇することが知られている。
痛、関節雑音、開口障害ないし顎運動異常を主要
症状とし、頭痛・肩凝り・後頚部痛を含む慢性疾
(02)
【肩関節周囲炎】肩関節周囲の組織において炎症
患群の総括的診断名である。その病態には、咀嚼
や損傷から発症する肩疾患を肩関節周囲炎と総称
筋障害(Ⅰ型)、関節包・靱帯障害(Ⅱ型)、関節
する。一方、いわゆる五十肩は滑液包炎、 腱板
円板障害(Ⅲ型)、変形性関節症(Ⅳ型)などが
炎などをベースにした症候群である。50∼60歳以
含まれている。歯科的対応として、薬物療法・ス
後にこれらの炎症が治癒しない状態が続いている
プリント療法・パンピングマニプレーション・咬
うちに退行変性が加わったものをいわゆる五十肩
合治療がある。その他、理学療法的対応、心理療
という。(03)
法的対応などで治療、管理する。(03)
【肩こり】首すじや首のつけ根から肩甲部の筋肉
【加減圧脈波】圧トランスジューサーなどのセン
が重だるく張った感じとなり、主観的にはきわめ
サーを動脈拍動部上に固定し、それに加える絶対
圧に対して得られる脈拍動の圧変化分を記録した
て不快な感覚をいう。時には頭痛や吐き気を合併
することもある。原因としては種々のものがある
ものを圧脈波というが、加える絶対圧を変化ある
が、過労、不良姿勢、精神的緊張などを誘因とし
いは変動させた際によって生じる圧脈波の変化を
て起こるほか、変形性頚椎症、胸郭出口症候群、
加減圧脈波という。(02)
高血圧、更年期障害などの疾患に伴って起こる二
【下行性抑制系】内因性痛覚抑制系の一つで、中
次的なものもある。発症メカニズムに関しては不
409
− 163 −
キーワード用語解説
明な点が多いが、神経の過剰興奮、筋疲労、自律
態を簡便、非侵襲的に観察できる。(00)
神経失調などが引き金で交感神経系の過剰興奮が
【カラードマイクロスフェア】プラスチック等を
起こり、その結果末梢血管の収縮、筋の血行障害、
基剤とする平均直径 15μm の微小球体であり、
うっ血、浮腫が起こることで、独特の肩こり症状
を起こすと考えられている。
表面に有機染料が塗布されている。カラードマイ
クロスフェア法による血流測定には、組織サンプ
【過 敏性腸症候 群:irritable bowel syndrome
ルに捕捉されたマイクロスフェアをカウントする
(IBS)】器質的異常が認められないにもかかわら
方法と染料を溶出させその吸光度を測定する方法
ず、腹痛や腹部膨満感などの腹部症状と、便通異
がある。また、異なる色(黄、青、赤、白等)を
常を呈する症候群である。本症の病態として、腸
使用することにより、同一個体の各種臓器・組織
管運動や分泌機能の異常、腸管痛覚の過敏性がそ
の局所血流量を経時的に繰り返し測定できるのが
の中核をなすと考えられており、これらの機能異
特徴である。(00)
常を引き起こす因子として、情動ストレスや、抑
【顆粒細胞腫:granulosa cell tumor】主に性熟
うつなど心理的・精神的な因子が重要視されてい
期に単側性に発生する。種々の大きさの蒼白で硬
る。便通異常の中核となる病型は、下痢と便秘を
繰り返すもので、不安定型もしくは下痢便秘交代
い、ほぼ小児頭大の結節性の腫瘍で、中心部に小
膿疱、出血、壊死をしばしば伴う。通常良性であ
型と呼ばれる。本症の多くは便意頻数、排便困難
るが、時に悪性で転移を起こす。組織学的には多
感、残便感を伴う。本症は、消化器専門外来を受
角形腫瘍細胞が充実性に、花冠様集合をもって、
診する患者の3∼5割を占めるともいわれている。
あるいは腺管状、濾胞状に、時に索状あるいは肉
(03)
芽状に配列して認められる。悪性度の予想は困難
【カプサイシン】唐辛子の刺激成分で、侵害受容
である。(01)
器の一次知覚ニューロンを選択的に興奮させる作
【カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)】カル
用がある。 ラットに投与すると、サブスタン P
シトニン遺伝子の解析から見つかった神経ペプチ
(SP)やカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)
ドの一つで、この遺伝子より甲状腺ではカルシト
を含む無髄の求心性神経が興奮し、続いて神経線
維に変性が生じる。その結果、SP やCGRP が産生
ニンが、神経組織では CGRP が産生される。神経
系には広く分布することが知られているが、その
されなくなり、枯渇する。このように神経毒の一
働きの一つに血管拡張作用がある。(99)
面を有する一方で、局所的に侵害受容性ニューロ
【肝硬変】強い肝細胞の壊死と続発する炎症の持
ンを変性させる働きがあることから、鎮痛剤とし
続により線維の増生が生じ、高度の血行障害によっ
ての効果も検討されている。(99)
て肝臓全体の機能(肝細胞機能総量)の減退を来
【カラゲニン】カラゲニンは紅藻類の細胞膜から
した状態。大部分は進行性、不可逆性の経過を呈
熱水抽出、アルコール沈殿を繰り返して得られる
し、終局的には死の転帰をとる。疫学的には飲酒
多糖類で、起炎物質として実験研究で用いられる。
量との関係が強く、アルコール消費量の多い国ほ
実験動物において、関節の炎症モデルや痛覚過敏
ど発生率が高い。(03)
のモデルなど、急性炎症モデルを作製するのに広
く用いられている。(00)(01)
【癌性疼痛】癌性疼痛の定義は、狭義では治癒の
見込みのなくなった末期癌の疼痛をいい、広義で
【カラードプラ法】超音波を投射後、血球から散
は癌患者の訴える全ての痛みをいう。(03)
乱された超音波の信号を受信し、これをカラー表
【肝性脳症】慢性あるいは急性の肝不全による不
示 する こと で 臓器 内血 流 動態 や血 管の 走 行を
随意運動を伴った意識障害(昏迷、昏睡)をいい、
real-time で描出する方法である。体内の血流動
血中アンモニア高値、ICG 高値、脳波の徐波化が
− 164 −
410
キーワード用語解説
認められる。開腹術後に肝外の門脈−全身循環側
き
副血行路を生じた場合には肝障害がなくても同様
の症状が現れる。特殊な脳症として、ライ様症候
【機械インピーダンス(Mechanical Impedance)】
群があり、本態は急性中毒性肝障害で、肝細胞内
に脂肪滴が貯留し、高アンモニア血症、トランス
二つの物体があり、一方が静止いているとき他方
を動かしたときに加わる機械抵抗の時間成分を配
アミナーゼ上昇、低血糖、白血球増多、代謝性ア
慮した値。鍼を刺鍼した時の機械抵抗値は鍼に加
シドーシスを呈し、脳浮腫と昏睡を生じて死亡率
わる力と鍼刺鍼方向変位の時間微分の比で表され
が高い。(03)
る。これが組織の張りや粘弾性を測定しているこ
【関節可動域テスト:range of motion (ROM)】
とが明らかとなっている。(99)
関節の動く範囲を計測し表示するもので、現在は
【機械刺激】圧、触、振動などの刺激。刺鍼は機
1995年に改訂された測定法を用いている。測定に
械刺激に該当する。これらの刺激は機械受容器で
当たっては、角度計を基本軸,移動軸に正しくあ
受容される。(03)
て、通常は5度きざみで測定する。また軸心は改
【気胸】胸腔内にガスが貯留した状態を気胸と言
定後には記載が無く、基本軸と移動軸の交点が軸
心となり、関節運動に応じて中心を移動させても
い、外傷に続発した気胸を外傷性気胸という。気
胸には、閉鎖性、開放性、緊張性の3タイプがあ
良く、必要に応じて移動軸を平行移動させても良
り、閉鎖性は肺の損傷部位を通じて、肺の空気が
い。(03)
胸腔内に漏れでた状態、開放性のうち内開放性は
【関節リウマチ】関節リウマチとは、多発性に関
肺、気管支、食道を介して外界と交通している状
節の炎症をおこして徐々に関節が破壊されていく
態、外開放性は胸壁を介して外界と交通している
慢性疾患で、全身の関節にひどい痛みを発するの
状態、緊張性気胸は胸壁、肺、気管支の損傷部の
が特徴である。自己免疫疾患の一つであり、特に
創口が一方通行弁となり、吸気時に外気が胸腔内
滑膜(関節の内張りの膜で関節液をつくっている
に入り呼気時に排出されないため胸腔内圧が異常
膜または腱のまわりにあって腱のすべりをよくし
に陽圧となった状態をいう。(03)
ている膜)で炎症反応がおこり、その結果、関節
炎と腱鞘炎となる疾患である。副腎皮質ホルモン
【機能性不妊】一般的な不妊検査(ホルモン分泌、
生殖器の器質的病変、免疫機能、精子因子など)
の投与と、併せて金製剤による変調療法や関節機
を行っても何の異常も無く、不妊の原因が不明な
能保全のためのマッサージや温熱療法が行われる。
ものを機能性不妊といい、原因不明不妊症とも言
(03)
われている。報告により異なるが、全不妊の約15
【眼底出血】眼底部における出血で、網膜から硝
%∼30%を占めるとされている。(02)
子体までの出血を広く差す。代表的な原因として
【 教 育 目 標 分 類 : Taxonomy 】 教 育 目 標 分 類
糖尿病や高血圧症が挙げられる。(01)
(Taxonomy of Ebucationnnal Objectives)とは、
【官能検査法】人間の感覚器官を使って、モノの
認知領域に示される視点から、どの様な能力を判
特性や好き嫌いというような嗜好を評価すること
定するために作成された問題であるかを分類する
を官能検査(Sensory Evaluation、Sensory Test、
Sensory Inspection、 Organoleptic Test) とい
方法である。Ⅰ型(想起レベル)、Ⅱ型(解釈レ
ベル)、Ⅲ型(問題解決レベル)、Ⅱ・Ⅲ連結型の
う。順位法、一対比較法、絶対判断法(格付け法、
4つに分類される。Ⅰ型とは、知識の想起レベル
採点法)、SD 法 (Semantic Differential法)な
どが含まれる。(99)
の問題で知っていれば簡単に答えられるが、記憶
(暗記)していなければまぐれ当たりを期待する
しかない問題である。Ⅱ型とは、分析・理解し解
411
− 165 −
キーワード用語解説
釈できる能力がないと答えられないレベルの問題
り、橋排尿中枢よりも上位にある大脳皮質からの
である。Ⅲ型とは、複数の解釈を必要とする問題
影響も大きく受け、排尿蓄尿を調整をしている。
で、一回の解釈(思考過程)では答えられない問
(02)
題である。Ⅱ・Ⅲ連結型とは、解釈を二回必要と
する点でⅢ型的であるが、実際はⅡ型問題に一つ
【胸部交感神経節切除】上肢における交感神経の
機能を外科的に消失さすため、胸部交感神経節切
の問題文と選択肢が加わったタイプの問題である。
除が行われる。通常では、第2∼4胸髄に相当する
(00)
上胸部交感神経節が切除される。上肢における閉
【胸郭出口症候群】胸郭から出た鎖骨下動脈は腕
塞性血栓血管炎や手掌多汗症などの外科的治療と
神経叢と平行して走行し上肢に向かうが、まず前・
して行われる。(00)
中斜角筋間隙、肋鎖間隙(第一肋骨と鎖骨の間)、
【局所脳血流量測定法】脳内における局所的な血
そして小胸筋直下を通過して腋窩に達する。この
流量を 測定する方法で、 ポジトロン CT (PET:
3部位は鎖骨下動脈と腕神経叢を解剖学的に圧迫・
Positron Emission Tomography)、磁気共鳴機能
絞扼しやすい。胸郭を出た鎖骨下動脈と腕神経叢
描 画 (fMRI : functional Magnetic Resonance
が圧迫・絞扼を受け上肢の循環障害・神経圧迫障
害を及ぼすものを胸郭出口症候群という。(02)
Imaging)などが用いられている。(00)
【筋・筋膜性疼痛症候群:myofascial pain synd-
【胸骨裂孔】剣状突起や胸骨体に孔や裂け目があ
rome(MPS)】限局した特定筋の疼痛を主訴とする
る場合を胸骨裂という。胸骨裂は胸骨櫛の癒合障
症候群で、その原因はトリガーポイントとされて
害であり、胸骨が欠損しているわけではない。胸
いる。トリガーポイントは患者が疼痛を訴えると
骨裂はその形態より完全胸骨裂と不完全胸骨裂に
ころから離れた部位に存在することが多いため見
分類され、また不完全胸骨裂はその部位より上部
逃されやすく、臨床上問題となる。血液検査やX
裂、中央部裂、下部裂に分けられる。一方、別の
線上に異常がないことも特徴の1つである。(03)
観点から Ravitch は合併奇型のない胸骨裂、真
【筋血流量】主に骨格筋の血流量のことを指す。
の心臓脱を合併する胸骨裂および Cantrell 症候
測定方法としては、水素クリアランス法、レーザー・
群に合併する胸骨裂の3群に大別している。(02)
【強直性脊椎炎:Ankylosing Spondylitis】脊柱
ドップラー血流計による記録、マイクロスフェアー
法などがある。また、その調節には液性調節と、
の骨性強直をきたす慢性、緩徐、進行性の多発性
筋交感神経による自律神経性の調節などがある。
関節炎。原因は不明であるが、本症の大多数は成
骨格筋の運動や、心血管系の動態に大きく影響さ
人男性で、赤沈値がしばしば亢進し、HLA-B27 が
れることが明らかになっている。(00)
高率に認められ、リウマトイド因子陰性である。
【近赤外線分光法】近赤外線分光法は物質による
四肢の関節痛や筋痛に始まり、腰仙部痛、脊柱の
近赤外線の吸収に基づいた非破壊、非侵襲の分光
強直による運動制限などを主症状とする。疼痛や
法である。物質をあるがままの状態で測定でき、
炎症症状には非ステロイド系抗炎症薬が用いられ
絶対定量法よりも相対定量法として用いられるこ
るが、根治的な治療法はない。(02)
とが多い。人体の場合、血中のヘモグロビン及び
【橋排尿中枢:pontine micturition center】排
尿の中枢は仙髄に存在する下位排尿中枢と、橋
筋肉中のミオグロビンが主な吸収物質であり、そ
れぞれの酸化状態において吸収スペクトルが変化
(脳幹)に存在する上位排尿中枢に分けられ、後
するので、虚血状態などのモニターとして有用性
者を橋排尿中枢と呼んでいる。脊髄に障害を受け
が高い。(99)
た場合でも仙髄の排尿中枢を介した反射で排尿は
【緊張性頚反射】仰臥位で頭部を回転させると、
起こる。また、排尿は意識下での調節が可能であ
顔が向いた側の上下肢は伸展位、反対側の上下肢
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412
キーワード用語解説
は屈曲位を示す。これを緊張性頚反射といい、生
く
後1∼2ヶ月でよくみられ、6ヶ月頃に消失する。
この反射がみられなかった場合は、脳障害が疑わ
【グアネチジン】交感神経ニューロン遮断薬の一
れる。(01)
【緊張性振動反射】骨格筋に高頻度の振動刺激を
つでシナプス前部に作用する薬物である。アドレ
ナリン作動性線維の伝達物質(ノルアドレナリン)
与えると、刺激された筋に持続性の反射収縮と、
の遊離を抑制する。臨床的にはノルアドレナリン
その拮抗筋に弛緩が引き起こされる。これを緊張
の枯渇による血圧低下を利用して、重症高血圧症
性振動反射という。(01)
の治療に利用する。その他には、起立性低血圧、
【緊張性頭痛】軽度∼中等度の両側性に締め付け
徐脈、消化管の運動亢進、下痢、鼻閉を引き起こ
られるような頭痛。後頚部の持続的な筋収縮によ
す。(00)
り起こると言われており、頭痛の中で最も頻度が
【屈曲反射】皮膚や筋、深部組織などを傷害する
高い。国際頭痛学会では緊張型頭痛と呼称してい
ような刺激が加わると反射的に屈筋を収縮し、関
る。(01)
節を屈曲させ、体を縮めて刺激から逃れようとす
【筋痛】筋肉の痛みは皮膚の痛みとは異なり、局
在のはっきりしない鈍く重だるい痛みを特徴とし、
る反射のことで、逃避反射または引っ込め反射と
も呼ばれる。この反射で得られる筋電図活動は痛
関連痛を伴うこともある。虚血下での筋収縮や不
みの客観的指標として用いられることもある。
慣れな運動後では一過性に筋痛が生じるのみであ
(03)
るが、筋・筋膜性疼痛症候群や線維性筋痛症など
【グリコーゲンエリア】グリコーゲンは特殊な細
の疾患では慢性的に筋痛が存在するため臨床上問
胞、例えば肝臓細胞や筋肉細胞などに、貯蔵栄養
題となる。(03)
物質として常時蓄えられている糖分の一種で、こ
【筋疲労】筋疲労とは生理学的には筋収縮時の筋
れが群をなして細胞内に分布している場合、この
張力が急激に低下する時期をいう。随意運動にお
細胞領域をグリコーゲンエリア(グリコーゲン領
いては、中枢神経系から筋にいたる多くの過程の
域)という。動物が飢餓などに陥れられると、肝
関与があり、それぞれの過程に疲労が生じる。疲
労は中枢神経性、末梢神経性および筋性疲労に分
臓細胞のグリコーゲンは分解して血中のグルコー
スとなり利用される。また逆に、過剰な栄養分の
けられ、このうち、特に筋疲労については、収縮
うち、糖分はこのグリコーゲンエリアに貯蔵され
からの回復過程における乳酸の蓄積によって生じ
る。(99)
る筋細胞内の酸性化、 および ATP 分解の進行に
【グリコーゲン顆粒】グリコーゲン顆粒は、特殊
よって生じる無機リン酸の蓄積の両者が、収縮張
な細胞の貯蔵栄養物質として常時蓄えられている
力を低下させることが明らかにされている。(01)
細胞成分で、特に目立つのは、肝臓細胞や筋肉細
【筋ポリモーダル受容器】ポリモーダル受容器の
胞などである。グリコーゲンエリアに分布してい
一部で、筋・筋膜に存在するものをいう。筋に存
るが、α、β、γの3種類の顆粒があり、最も小
在する細経線維受容器の大部分は、有髄・無髄の
さい顆粒をγ顆粒(大きさ3×20nm)、これが集まっ
区別がなく、機械・熱・化学刺激に反応するポリ
モーダルタイプの性質を持つとされているが、皮
た顆粒をβ顆粒、さらにこのβ顆粒が集まったロ
ゼット状の顆粒をα顆粒という。(99)
膚に比べて分布密度はきわめて低い。一方、この
受容器は様々な生理活性物質によって感作されや
け
すいため、侵害刺激に対する反応の再現性が悪く、
正確な痛覚情報を伝えるには適していない。(03)
【脛骨叩打テスト】脛骨叩打テストとは、特発性
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キーワード用語解説
骨壊死(脛骨内側顆骨壊死症)などの疾患が存在
【頚部ジストニア】ジストニアとは、遅く硬い不
しているときのテストで、患者をベット上に仰臥
随意運動である。ジストニアには全身に見られる
位で膝関節を完全伸展位にさせ、左右の脛骨粗面
場合と身体の一部に見られる場合が有り、頚部を
部をハンマーで叩打し、健側と患側のひびき感覚
や違和感の違いを確認する検査である。陽性所見
中心に出現するものを頚部ジストニアと呼ぶ。し
ばしば、引っ張られるような感覚で発症し、続い
は脛骨粗面部の叩打によって患側に明らかなひび
て頭部と頸部の持続的回転および偏位を生じる。
き感覚や違和感の違いを患者が訴えた時である。
(03)
骨内に壊死病巣があることにより骨伝導が変化し、
【経絡テスト】多関節・多軸にわたる人の動きと
上記のような陽性所見を示すものと考えられる。
経絡の流注とを同定させることにより、痛みを誘
(03)
発、ないし増悪させる動きの分析から治療すべき
【脛骨内側顆骨壊死症】膝関節特発性骨壊死は
経絡を判断するテスト法、及び鍼治療システムで
1968年に Ahlback ら によって膝関節特発性骨壊
ある。(99)
死が一つの疾患単位として報告されて以来注目さ
【血圧変動解析】心拍変動解析の項目を参照。
れるようになった。当初は骨壊死は大腿骨内顆に
発症すると思われていたが、次第に大腿骨外顆、
(01)
【血液量】血液量は生体に含まれる血液の量であ
脛骨内側顆部への発症も確認されだしたが現在に
り、血漿量と血球量の和を意味する。血液量の維
おいても未だ稀な疾患とされている。膝関節の疼
持は、血液による酸素、二酸化炭素、栄養素等の
痛が主訴であり変形性膝関節症との鑑別が必要で
運搬のためだけではなく、循環系が正常に機能す
ある。特発性骨壊死症の原因は不明であり、特に
るためにも不可欠である。通常、成人の血液量は
脛骨内顆部は主として内外側膝下動静脈より栄養
4∼6 lで、体重の約8%を占める。(03)
され血行が極めて豊富な場所であることから循環
【 血 清 反 応 陰 性 脊 椎 関 節 炎 : seronegative
阻害説は否定的であり、骨粗鬆症を基盤として軽
spondyloarthropathy 】 強 直 性 脊 椎 炎
微な外傷が繰り替えし加わって微少骨折が発生し、
(Anlylosing
Spondylitis)、乾 癬 性 関 節 炎
その結果形成される病巣であるという微少疲労骨
折説が現在のところ有力である。(02)
(psoriatic arthritis)、 ラ イ タ ー 症 候 群
(Reiter's Syndrome)は、お互いに共通する疾患
【形成的評価】形成的評価とは、学習者に学習行
であり、血清反応陰性脊椎関節炎と呼ばれる。す
動を改善することを目的として、学習過程の中で
なわちこれらのいずれにおいても血清リウマトイ
反復継続して行われる評価である。この評価は、
ド因子は陰性で、仙腸関節炎および脊椎炎が存在
学習の援助を目的としたものであり、学習の中で
し、HLA-B27 陽性者における発症頻度が高いとい
きわめて重要な役割を果たす。具体的には、授業
う共通の特徴を有する。(02)
の経過の中で OSCE などの評価を行い学生の到達
【血中アンモニア値】生体内でアンモニアの生成
度や誤った認識を学生にフィードバックして教育
もしくは肝および腎におけるアンモニアの代謝過
効果を高める評価方法である。(02)
程のいずれかにおいて異常がある場合に血中アン
【経直腸的超音波断層法:transrectal sonography(TRS)】1968年に開発された超音波診断法で、
モニア値の変動が認められる。先天性尿素サイク
ル酵素欠損症や、劇症肝炎などの重症肝障害によ
前立腺肥大症や前立腺癌などの前立腺疾患を診断
る処理能力の低下などにより高値を示す。正常値
するうえで欠かせない検査法の1つである。TRSに
は、イオン交換法による血漿値で20∼70μg/dl。
より、前立腺の形状や異常所見が MRI や CTより
(03)
も明らかに描出される。(00)
【血中好酸球数】好酸球はアレルギー反応のケミ
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414
キーワード用語解説
カルメディエーター(chemical mediator:化学
ある。慢性的な高血糖状態が持続した場合には糖
的原因体)であるヒスタミン、ロイコトリエンを
尿病と診断される。日本糖尿病学会の基準による
不活性化するためヒスタミンが遊離しているとこ
糖尿病型は、空腹時血糖値 126mg/dl 以上または
ろに集まる。そこで血液中に含まれる好酸球を測
定するとアレルギーの程度が判定できる。 (01)
75g 糖 負 荷 試 験 にお い て 負 荷 後2 時 間 の 値 が
200mg/dl 以上、 あるいは随時血糖値 200mg/dl以
【血中乳酸値】運動の開始からある程度の強度ま
上のいずれかの状態が、別の日に行われた検査に
では有酸素系でまかなわれ、生成した乳酸は速や
よ って2回以上確 認された場合 とされている 。
かにエネルギー源として再利用される。さらに運
(01)
動強度を上げていくと、有酸素系ではエネルギー
【ゲノムデータベース】ゲノム(genome)とは、
の供給が追いつかなくなり、無酸素系が主に働く。
生物が正常な生命活動を保持するために最低限必
その際、筋肉中の乳酸濃度が上昇し、乳酸イオン
要な染色体の一組、もしくは DNA の総体のこと
が蓄積すると筋肉内の酸性化により疲弊し、結果
をいう。通常ゲノム上の遺伝情報は DNA の4種類
として乳酸が蓄積した筋肉は運動の持続ができな
の塩基の配列で表現される。最近のヒトゲノム解
くなる。この乳酸が血中に漏出し血中乳酸値が上
昇する。この血中乳酸値を測定することで運動強
析計画の進展に伴い発生している大量の生物情報
を多くの研究者の共有財産とすることが重要であ
度がわかる。(01)
ることから、それらの塩基配列の情報をデータベー
【血中レプチン】レプチンは1994年に、遺伝性肥
スにすることでゲノム情報研究のインフラストラ
満マウス(ob/ob マウス)を用いて発見された肥
クチャーを形成している。 日本では国立遺伝研
満遺伝子(ob 遺伝子)によりコードされた新し
で運営されている DDBJ がその中心をなしている。
いホルモンで、摂食の抑制とエネルギー消費の増
その他に GenBank や EMBL といったDNAデータベー
大に関与する体重調節因子として考えられており、
スが公開されており、インターネット上から自由
特に肥満とインシュリン非依存型糖尿病(NIDDM)
に利用可能で ある。 ゲノムネットサー バ
の代謝異常の抑制に重要な役割を果たすといわれ
(http://www.genome.ad.jp) から各種サービスが
る。血中レプチン濃度は BMI(body mass index)
により評価される脂肪組織量と良く相関する。
利用できる。(99)
【腱板不全断裂】腱板断裂(rotator cuff tear)
(00)(01)
は完全断裂と不完全断裂に分けられるが、完全断
【結腸運動】結腸は結腸括約部を境界に近位結腸
裂とは肩峰側の表面から骨頭側の表面まで全層に
と遠位結腸に区別される。近位結腸の運動は胃、
わたる断裂が生じた場合をいい、関節腔と肩峰下
小腸の運動と同様に空腹期と食後期において運動
包とが交通する。不完全断裂の場合は断裂が全層
性に違いがある。しかし胃、小腸運動とは異なり
に及ばないので関節腔と肩峰下包との間の交通は
空腹期との運動パターンに著しい違いはなく、運
生じない。おかされる部位は棘上筋腱が最も多く、
動パターンの違いより収縮頻度間隔が短くなるこ
次いで棘下筋腱、肩甲下筋腱である。(00)
とによって運動亢進が発生する。近年、この摂食
による空腹期と食後期の運動性の違いに脳腸ペプ
チドの一つである CCK(コレシストキニン)が関
こ
与していることが多く報告されている。(01)
【交感神経遮断薬】アドレナリン作動性遮断薬、
【血糖値】血液中のグルコースの濃度。通常全血
抗アドレナリン作用薬に分けられる。交感神経の
または血漿中のグルコース濃度(mg/dl)で表さ
興奮による反応とアドレナリン作用薬による反応
れる。空腹時の正常血糖値は、110mg/dl 以下で
の両者を抑制する薬物である。前者は交感神経効
415
− 169 −
キーワード用語解説
果器に存在するα、β受容体と結合しこれを遮断
する作用をいう。(01)
し、後者は交感神経終末に働いて伝達ィ質である
【拘縮】関節包や靱帯を含めた軟部組織の収縮に
ノルアドレナリンの遊離の抑制や枯渇により興奮
よる関節の他動運動制限をいう。関節相対面の癒
伝達を遮断する。α受容体遮断薬(プラゾシン、
ヨヒンビン)、β受容体遮断薬(プロプラノロー
着により、他動的に関節が動かない強直と対比さ
れる。関節拘縮の原因には、先天性と後天性があ
ル、メトプロロール)、α・β受容体遮断薬(ラ
る。先天性関節拘縮には先天性多発性関節拘縮症、
ベタロール)、交感神経末梢遮断薬(グアネチジ
先天性内反足、剛直母指、先天性筋性斜頚が、一
ン、レセルピン)など。(00)
方、後天性関節拘縮には、熱傷や挫創後の皮膚性
【硬結】皮下組織・筋・筋膜・腱等に存在し、触
拘 縮 、 Dupuytren 拘 縮 な どの 結 合 織 性 拘 縮 、
知可能な限局した形を持つ部位。筋全体の緊張が
Volkmann 拘縮や長期固定後筋性拘縮、痙性・弛
高まっているものや外傷によるこぶ等は除かれる。
緩性麻痺およびSudeck骨萎縮などの反射性交感神
圧痛の有無により有痛性硬結、無痛性硬結と区別
経性萎縮症にみられる神経性拘縮、関節リウマチ
することもある。(03)
などの関節性拘縮があげられる。(03)
【高血圧 モデルラット】1934年に Goldblatt ら
がイヌの腎動脈にクリップをかけて狭窄をつくり
【高速液体クロマトグラフィー】液体クロマトグ
ラフィーはカラムを通すことにより混合物の中か
腎血管性高血圧モデルの作成に成功して以来、高
ら個々の成分を分離する方法であり、混合物を含
血圧モデル動物が数種類開発されてきた。高血圧
む移動相を固体粒子の詰まった固定相カラムに流
モデルとしては遺伝性高血圧モデルと実験的人工
すことにより、試料と2つの相との間の物理的・
高血圧モデルがある。前者はヒト本態性高血圧と
化学的相互作用によるカラムにおける試料の分離
同様に多因子遺伝であり、なかでも自然発症高血
時間の違いから個々の成分を短時間で分離・分取
圧ラット(SHR の項を参照)はヒト本態性高血圧
することができる。分析試料によって溶媒、充填
と非常によく似た臓器合併症を呈することなどか
剤、検出器などを適宜選択して用いる。(00)
ら、本態性高血圧に最も適したモデルであると評
【拘束ストレス】動物実験におけるストレス負荷
価されている。 後者では Goldblatt らの方法に
よるものが一般的に用いられている。(01)
法は大きく身体的ストレスと精神的ストレスの2
つに分けることができる。拘束ストレスは身体的
【膠原病】全身の膠原線維にフィブリノイド変性
ストレスの1つであり、簡便でマウスやラットの
という共通の病変がみられる疾患群の総称であり、
身体的ストレス負荷法として最もよく用いられて
1942年にアメリカの Klemperer、Bachr、Pollack
いる。布製ジャケットや金網、動物ホルダーなど
らによって提唱された。全身性エリテマトーデス、
を用いて動物が身動きできないように全身を拘束
強皮症、皮膚筋炎、関節リウマチ、リウマチ熱、
固定する。(01)
結節性多発動脈炎の6疾患は古典的膠原病であり、
【高度生殖医療】一般の不妊治療(タイミング治
シェーグレン症候群、ベーチェット病などはその
療や排卵誘発、人工授精など)では妊娠しなかっ
病態や病症が近似していることから膠原病近縁疾
た人を対象に行う体外授精や胚移植法による不妊
患と呼ばれる。(00)
【抗酸化作用】酸素なしでは人間は生きて行くこ
治療のこと。体外に取り出した精子と卵子を授精
させ、その後分割を始めた受精卵(胚)を専用の
とができないが、その酸素が体内で変質したもの
カテーテルで子宮内に移植する。高度生殖補助医
が活性酸素(フリーラジカル)である。過閧ネ活
療とも言う。(00)
性酸素は体内の物質を酸化させて細胞を傷つけ、
【更年期障害】更年期障害の定義や概念について
さまざまな疾患を誘因する。それらの現象を抑制
は未だに統一された見解は無く、「更年期(45歳
− 170 −
416
キーワード用語解説
∼55歳頃)に見られる不定愁訴であり、自律神経
る2種類のγ線などを利用した計測法で、計測部
失調症と酷似」や、「加齢に伴う身体機能の変化、
位を通過した透過量から骨の吸収量が測定でき、
女性ホルモンの減少、および心理・環境因子の変
これを骨密度(g/cm2)として表している。(01)
化に伴い発症する身体症状、精神症状である」、
「女性ホルモンの減少により引き起こされる急性
【固縮】伸張反射弓を制御している上位障害によっ
て引き起こされる筋緊張亢進が痙縮および固縮で
症状で、顔面紅潮、発汗、不眠、閉経の4つの症
あり、固縮は拮抗する伸展、屈曲両筋群のいずれ
状をいうべき。更年期に見られる精神症状は更年
にも筋緊張亢進が存在する場合で、随意運動に際
期心身症として区別する」など種々の説がある。
して自由でなめらかな動作が行い難くなる。動作
基本的な症状としては、血管運動神経症状(のぼ
の量的な減少と緩慢さが目立つようになる。固縮
せ、ほてり、発汗異常、冷え症)、自律神経症状
には他動運動中持続的な抵抗がある鉛管様固縮と
(動悸、めまい)、精神神経症状(頭痛、ゆううつ、
他動運動にて断続的な抵抗が生じる歯車様固縮が
イライラ、不眠)、運動器系症状(肩こり、腰痛)、
ある。(03)
知覚障害(蟻走感、手足のシビレ)などが出現す
【コヒーレンス解析】コヒーレンスとは、首尾一
る。(02)
【 広 汎 性 侵 害 抑 制 調 節 : diffuse
noxious
貫していてバラバラでない様子を意味しており、
光などの波が互いに助け合って大きくなったり小
inhibitory controls(DNIC)】脊髄後角あるいは
さくなったりする現象(干渉)のしやすさを表す
三叉神経脊髄路核にある痛みを伝達する侵害受容
言葉。コヒーレンス解析とは、それら複数の波
ニューロンの興奮性反応(侵害性入力)が、全身
(波形)の間での位相差やその程度を評価する解
の皮膚、筋、内臓などに加えられた侵害刺激(機
析法である。(01)
械、熱、化学刺激)によって抑制されるという現
【コレシストキニン:cholecystkinin(CCK)】脳
象である。鍼の手技による侵害受容ニューロンの
腸ペプチドで主に脳と腸管に広く分布している。
抑制と DNICの時間経過が類似していることから、
また中枢神経系では神経伝達物質として摂食行動
両者の機序に共通するものがあることが指摘され
や不安の調節に関与し、消化器系では胆嚢収縮お
ている。(99)
【骨盤位矯正】骨盤位を頭位へと胎位矯正するこ
よび膵酵素分泌刺激に関与しており、さらに膵内
分泌調節、消化管運動調節など多彩な作用を有し
と(逆子の項を参照)。骨盤位での分娩は、娩出
ている。近年、CCK の中枢神経作用および消化器
時に胎児の足や肩、顎などが産道に引っかかった
への作用に関する研究が数多く報告されている。
り、臍帯が胎児よりも先に娩出されてしまうこと
(03)
があるために、胎児死亡や産道損傷が起こるなど
【コンディショニング】スポーツの分野において
非常に危険が高い。そのため、妊娠7ヵ月半∼8ヵ
競技力向上のために、さまざまな努力がなされて
月頃になっても骨盤位である場合は頭位への胎位
おり、最高の状態で競技に望むため、身体の各器
矯正法を施行する。胎位矯正法としては、鍼灸で
官や組織を調整することをいう。具体的には実践
は至陰穴への施灸が有名である。産科では膝胸位
的な練習のみではなく、競技に応じた持久力、筋力、
といわれる自然転回を促す体操や、外回転法とい
う手技療法が行われている。(02)
瞬発力、柔軟性などの基礎的トレーニングと傷害
予防のための十分なウォームアップやクールダウ
【骨密度】骨粗鬆症の診断には臨床所見、骨量の
ン、さらに自己管理としてのアイシングやテーピ
測定、組織学的な検査などからなる。このうち骨量
ングなどが重要である。鍼灸は鎮痛や筋緊張の緩
の測定には骨密度(bone mineral density : BMD)
和、組織循環の改善、精神疲労、筋疲労の緩和など
として測定される。これは、153Gd から放出され
を目的に、多くの選手に広く用いられている。(01)
417
− 171 −
キーワード用語解説
【コンプライアンス】障害なしに圧力や力を許容
【酢酸クロミフェン療法】排卵誘発法の一つで、
する性質。またはその能力の計量表示。例えば、
不妊治療、無排卵などの治療に用いる。排卵は、
肺や膀胱のような空気や液体で満たされている器
視床下部から分泌された GnRH が下垂体を刺激し
官の伸展性を単位圧力当りの容量変化の単位で表
示する。(00)
FSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)
の分泌を促進させ、それらが卵巣を刺激すること
により起こるために、卵巣機能の障害はもちろん
さ
のこと、視床下部や下垂体からのホルモン分泌に
何らかの障害がある場合にも排卵が起こらなくな
【サイトカイン】免疫担当細胞は、抗原に対して
る。 酢酸クロミフェンは、 視床下部を刺激して
応答する際に種々の活性物質を産生するが、これ
GnRH の分泌を促進させることで、FSH とLH の分
らのうち免疫グロブリンを除く物質をサイトカイ
泌を高め排卵を促すように作用する。(02)
ンと総称する。サイトカイン全般に共通する性質
【坐骨神経痛】坐骨神経の走行に沿って、腰殿部
-10
から下肢に激しい疼痛をきたすものが坐骨神経痛
として、(1)糖蛋白質 である、(2)極微量 (10
-12
∼10 M)で効果を発揮する、(3)標的細胞特異性
と特異的なレセプターに結合して細胞内活性化機
とよばれる。原因として、従来より、アルコール、
ヒ素、鉛、糖尿病、痛風、梅毒などの中毒・代謝・
構を介し効果を発揮する、(4)産生細胞からの放
感染性過程、仙腸骨関節または脊椎の関節炎、股
出はフィードバック調節コントロール下にある、
関節炎、坐骨神経鞘を含む筋膜・筋に波及する線
などがあげられる。これらの点でホルモンと似て
維組織炎、変形性骨炎、第5腰椎の仙骨化、脊椎
いるが、相違点としてサイトカインは一般に血中
カリエス、腫瘍などがあげられていたが、最近で
あるいは血清中にはなく、主として局所で働く点
は腰椎の椎間板ヘルニアや腰椎の退行性変化が重
である。もちろん、大量に産生されれば血中にあ
要視されている。疼痛は殿部から大腿後面から下
ふれでて作用する場合もある。さらに重要な性状
腿にかけてみられ、神経の走行に沿って圧痛が見
として、(5)各サイトカインは一般に複数の作用
られることが多い。下肢の深部腱反射の減弱・消
を示す、(6)異なるサイトカインが同じ作用を示
すことが少なくない。サイトカイン関連のホーム
失や坐骨神経の伸展テストの陽性、下腿から足部
の知覚異常、坐骨神経支配筋の筋力の低下、萎縮
ペ ー ジ と し て www. lmb . unimuenchen . de /
がみられることもある。(03)
groups/ibelgaufts/cytokines. html が ある ので
【 サ ー チエ ン ジ ン】 サ ーチ エ ン ジン (Search
参照されたい。(02)
engine) とは、検索エンジンとも呼ばれており、
【逆子】骨盤位の俗称。胎位(胎児の縦軸と子宮
インターネット上に蓄えられている情報を分類・
の縦軸の関係)を示しており、他には頭位、横位、
整理し、どこに何があるのかを探し出してくれる
斜位がある。妊娠中期までは胎位は安定しないが、
検索サービスをさす。世界各国と繋がっているた
妊娠後期になると頭位となるのが正常であり、そ
め、日本語版のみでなく、他言語版などがある。
れ以外は異常胎位として胎位矯正治療の対象とな
(99)
る。頭位と骨盤位はいずれも胎児と子宮の縦軸が
一致している状態であるが、頭位は児頭が子宮の
【サブスタンスP:substance P(SP)】神経ペプ
チドの一つで、侵害受容性の無髄の求心性神経に
下方(膣方向)へ、骨盤位は児頭が子宮の上方
多く含まれている。侵害刺激により一次知覚ニュー
(母体の頭の方向)へ向いた状態である。横位は
ロン終末部より放出され、放出された SP は後角
胎児と子宮の縦軸が垂直に、斜位は斜めに交叉し
ニューロンの膜電位を脱分極させる作用がある。
た胎位である。(02)
一般には「痛みの伝達(修飾)物質」として広く
− 172 −
418
キーワード用語解説
知られているが、中枢神経系にも広く分布してい
以上の残尿は病的とみなされる。大量の残尿で膀
る。(99)
胱壁が過伸展された状態が続くと、膀胱筋層は栄
【サプリメント】サプリメント(栄養補助食品)
養障害で萎縮し、線維化する。(01)
とは、現代人に欠けている様々な栄養素を補うこ
とで、人間が本来持っている自然治癒力・免疫力
し
を高めて、病気に抵抗する体を作ろうとするもの。
アメリカでは、1994年に栄養補助食品法が制定さ
【ジアゼパム】ベンゾジアゼピン系薬物の一つで、
れビタミン、ミネラル、生薬または他の植物製品、
抗不安作用、鎮静・催眠作用、抗痙攣作用、筋弛
アミノ酸、栄養を強化する食物物質、それらの抽
緩作用がある。GABA ベンゾジアゼピン・レセプ
出物質などうち1つ以上を含むものと定義されて
ター複合体に働き、 GABA 抑制効果を増強するこ
いる。サプリメントは代替医療の1つとして認め
とにより、その効果を現しているものと考えられ
られ、その効果や有効性について世界各国で研究
る。副作用としては、眠気、脱力感、運動失調、
が進められている。(02)
めまいなどがあり、急性狭隅角緑内障、重症筋無
【サーモグラフィー】物体または生体表面の温度
分布を画像で表現する方法。サーモグラフィーは、
力症、ショック、昏睡、バイタルサインの悪い急
性アルコール中毒の患者には禁忌である。(02)
人体から自然に放射している赤外線を捕らえるだ
【シェーグレン症候群】外分泌腺の分泌液減少に
けで、体に触れることなく測定でき、連続した温
よる症状を有し、その原因は自己免疫性疾患であ
度分布像が得られる。この方法は、悪性腫瘍の診
ると考えられている。病名は本症を報告したスウェー
断、炎症の診断、血管系疾患など多方面で応用さ
デンの 眼科医 Sjogren の名による。 20∼50歳 の
れ、痛みの評価や健康管理などに広い応用が期待
女性に多い。唾液腺、涙腺の分泌能低下に伴う口
されている。(99)
腔内乾燥、虫歯、眼の灼熱感や異物感を訴えるば
【酸素飽和度】血液中の赤血球のヘモグロビンが
かりでなく、甲状腺疾患に代表される内分泌性疾
酸素と結合している割合。ヘモグロビンの酸素飽
患や多臓器障害、多関節炎を合併する特徴をもつ。
和度(%)と酸素分圧(PO2)との関係を示す曲線
を酸素解離曲線という。この曲線からみると、
(00)
【C型肝炎キャリア】C型肝炎ウィルス(HCV)の
760mmHg の PO 2 のもとで血液を純酸素と平衡させ
持続感染者のこと。HCV は我が国では B 型肝炎ウィ
たときに、正常ヘモグロビンの酸素飽和度は100%
ルスと共に慢性肝炎の原因となる。HCVは輸血や
となる。 この場合ヘモグロビン1g は 1.39 mL の
汚染した注射針の使用などにより血液を介して感
O2 と結合していることにもなる。また生体で肺
染し、年齢に関わりなく感染者の70%がキャリア
の毛細血管を通過した直後の血液では、ヘモグロ
となる。C 型肝炎キャリアの中には肝機能が正常
ビン の酸素飽 和度は97.5%であ る (PO2 を 97mmHg
の者がおり、これを無症候性キャリアと呼ぶ。日
とした場合)。(00)(01)
本 でのキャリ アは200万 人と推定 されている 。
【残尿量】排尿後、膀胱に残っている尿の量のこ
(00)
と。排尿困難が進行すると、膀胱内に貯留した尿
を全部排尿することができなくなり、膀胱に残存
【色彩計】色彩計は人間の目に対応する分光感度
とほぼ同一の感度を持つ三つのセンサー(光の三
するようになる。下部尿路機能を知る最も簡便な
原色に対応するセンサー)が備わっている機器で、
指標で、尿意を感じた後排尿し、カテーテル導尿
色を客観的に測定することができる。(99)
もしくは超音波計測で測定する。現在では、経腹
【子宮内膜症】子宮内膜あるいはそれと類似する
的超音波検査で検査するのが一般的である。30ml
組織が、子宮内腔以外の部位に発生し、増殖する
419
− 173 −
キーワード用語解説
疾患。但し、子宮体部筋層に発生する内性子宮内
ともない、その性質は持続性、発作性で焼けつく
膜症は、現在、子宮線筋症として区別されている。
ような耐え難い痛み(視床痛)である。治療は主
病理組織学的には良性だが、増殖・浸潤し周囲組
に抗てんかん薬、抗うつ薬の投与が行われるがあ
織との癒着を形成するため、卵管閉塞や卵巣子宮
内膜症、腹腔内臓器間の癒着を起こし、月経困難
まり効果の得られない場合もある。(02)
【 シ ス テ マ テ ィ ッ ク ・ レ ビ ュー : systematic
症や不妊症の原因の一つとなる疾患。(00)
review】一般的にはデータベースなどにより臨床
【軸索反射:Axon reflex】神経線維に発生した
試験論文を系統的に収集し、総括して評価するこ
活動電位(インパルス)が、その神経の他の分枝
とをいう。EBM(エビデンス[根拠]に基づく医
を逆方向性に伝わること。(例)皮膚を損傷すると、
療)の考えに基づいて、最新・最良のエビデンス
侵害性の求心性神経が興奮しその情報を中枢へ送
に関する情報を継続的に提供するために1992年に
る一方、その神経線維の分枝を逆行性に興奮させ、
スタートしたコクラン共同計画では、システマティッ
その終末から神経ペプチドが放出されることによ
ク・レビューを厳密に定義し、あらかじめ定めた
り損傷部位周囲の皮膚血管の拡張(フレアー)や、
方法で網羅的に論文を収集・評価・要約している。
血漿タンパク質の漏出(浮腫)が生じる。(99)
【時系列分析】時系列とはある変量を時間の順に
コクラン共同計画におけるシステマティック・レ
ビュー(コクラン・システマティック・レビュー)
並べたもので、ある変量の時間的推移を示してい
は、研究テーマ設定、結果収集、妥当性の評価、
る。これが与えられた場合、この変量についてど
要約、統計学的解析、結果の解釈、結果の編集と
のようなことが言えるかを分析するものを時系列
更新、の段階を経て行われる。(EBM の項を参照)
分析という。(00)
(03)
【自己免疫疾患】免疫とは「自己と非自己を区別
【指尖容積脈波】脈波とは心臓の収縮により大動
して、排斥するしくみ」で、自己、すなわち自分
脈に押し出された時に発生する血管内の圧力変化
が生まれつき持っている細胞に対しては反応しな
が末梢方向に伝達する時の波動のことをいう。こ
い。自己免疫疾患では、自己を非自己と間違って
の波動による血管の容積変化を検出するのが容積
認識し、抗体(自己抗体)をつくって生体自身に
攻撃を仕掛ける。自己免疫疾患の代表的なものが
脈波であり、指尖容積脈波は、ヘモグロビンの吸
光量を主体に血流変動をとらえたものである。
膠原病で、関節リウマチ、全身性エリテマトーテ
(02)
ス、皮膚筋炎、強皮症、重症筋無力症、インスリ
【時値】閾値電圧の強さと通電持続時間との間に
ン非依存性糖尿病など自己抗体が発病に関与して
は一定関係を求めることができる。ある通電持続
いる。(02)
時間において、電圧を次第に高くして閾値電位を
【脂質代謝】体内の脂質は食物から直接摂取され
求め、各通電持続時間における、閾値電圧と最小
た外因性脂肪と、ブドウ糖やアミノ酸から合成さ
必要時間との関係を強さ時間曲線という。通電持
れる内因性脂肪とがあり、血中ではコレステロー
続時間が十分長いときの強さの閾値電圧を基電圧、
ル、トリグリセリド、リン脂質、遊離脂肪酸など
基電圧に対する最小必要時間を利用時という。基
のかたちで存在する。内因性脂質の合成は肝臓で
行われ、ここでの代謝異常は高脂血症の原因とな
電圧を求めておき、その2倍の強さに対応する最
小必要時間を時値(クロナキー)という。(99)
る。(00)
【遮眼書字法】平衡機能検査の一つで椅子に姿勢
【視床痛】視床痛は脳の視床部(感覚の伝導路)
正しくかけ、普通に字を書く姿勢で、左手は左大
の病変、とくに脳血管障害によって引き起こされ
腿におき、右手でマジックペンを持ち、手や肘を
る。その特徴は、障害側の上下肢に不快な痛みを
触れずに開眼で一行、遮(閉)眼で4行ほど縦書
− 174 −
420
キーワード用語解説
きし、それらの文字の比較を行う検査法である。
通常では起こりえないと思われる条件のもとで臨
文字の方向・角度・文章に現れる所見を検討する。
床的に発汗を認める場合、および精神的、温度性
定方向性偏書は迷路障害に多く出現し、失調文字
刺激に反応する発汗が過剰と思われる場合をさす。
は共同運動障害で小脳障害、振戦文字は脳幹障害
に多くみられる。(01)
少し精神的に緊張しただけで手のひらから多量の
汗が噴き出す。いわゆる「汗かき」とは異なり、
【習慣流産】連続して3回以上の自然流産を繰り
人と話したり書き物をしているだけで突然泡のよ
返した既往のあるものをいい、全妊娠女性の1∼2
うに汗が湧き出し、みるみるうちに大粒になって
%に発生する。習慣流産の55%は胎児の染色体異
指先から滴り落ちる程の汗をかくものをいう。
常、40%は何らかの免疫異常が関係している。他
(00)
の原因には、性器の器質的異常、全身性疾患(陰
【出血傾向】止血機構に関与する基本的な因子と
部の感染症、全身性の疾患(癌や結核など)、内
して、血管、血小板、血液凝固、および線維素溶
分泌異常、外傷、精神情動、タバコ・アルコール
解の4つがあり、これらの因子が密接に関連しな
など)、高齢の父母などが挙げられる。(03)
がら血管の統合性を保っている。出血傾向とは、
【重症筋無力症】運動を繰り返すと筋力が次第に
減少し、休息によって随意筋の筋力が回復するの
この止血機構の異常のために生ずる出血症状であ
る。出血傾向を呈する疾患には、一次止血の障害
を特徴とする疾患。病変は神経筋接合部の神経終
として血小板減少(再生不良性貧血、急性白血病、
末におけるアセチルコリンの分泌異常と考えられ
DIC)、血小板機能異常、血管障害などがあり、二
ている。障害部位は、眼筋、顔面筋、口蓋、嚥下
次止血の障害として先天性凝固異常(血友病)、
筋のほか全身の筋のを侵すが、眼筋だけに限局す
後天性凝固異常(DIC、肝疾患)などがある。(00)
ることもある。胸腺腫の合併は20%に認められ、
【上肢ジストニア】ジストニアとは筋の緊張が異
胸腺の異常は大多数の例に認められる。小児から
常に亢進したり、低下することによって日常生活
高齢者まで罹患するが、発症は女性では20∼30歳
動作に支障をきたす姿勢や肢位が強いられること。
の若い人に多く、男性は50∼60歳に多い。患者数
また持続的な筋収縮によって引き起こされる体幹
は全国で、5000∼7000人程度と推定され、男女比
は1対2と女性にやや多い傾向がある。厚生省難病
部などの不随意運動を生じる疾患をさす。出現部
位別には全身性、局所性、節性などがあり、上肢
特定疾患。(00)
ジストニアとは上記症状が局所性として上肢に発
【周波数解析】周波数解析とは、 ある時系列値
症したものを意味する。(02)
(例えば音波や脳波)に含まれる様々な周波数成
【書痙】不随意運動であるジストニアの一種で、
分を調べること。代表的な周波数解析にフーリエ
書字を始めると手首の屈曲などの異常肢位が出現
解析がある。(FFT の項を参照)(02)
して書字が困難になる。(03)
【手根管症候群】手関節部の骨と横手根靱帯によっ
【シリコン枕】シリコンとは、シロキサン結合
て構成される空間、すなわち手根管内で正中神経
(-Si-O-)を骨格とし、ケイ素原子にアルキル基
がなんらかの原因によって圧迫障害され、末梢部
などが結合した構造をもつ高分子有機ケイ素化合
の神経障害を起こすものをいう。中年女性に比較
的よくみられ、手関節を反復して動かす職業に多
物の総称をいい、耐熱性、耐薬品性などが高い物
質。この物質を固形状にし、異なる硬度層で構成
い。進行すると短母指外転筋の萎縮をきたす。
された刺鍼練習台を、シリコン枕という。(00)
(02)
【自律神経】自律神経は意識と直接関係なく働き、
【手掌多汗症】エクリン汗腺の機能亢進の結果、
体液及び内臓各器官の状態を感受し、その情報を
皮表に放出される汗の量が増加することをいう。
求心性神経を介して中枢に送り、遠心性神経を介
421
− 175 −
キーワード用語解説
して心筋、平滑筋等の活動を微調整し、生体の恒
末梢神経損傷により起こる。(00)
常性維持に重要な役割を果たす。自律神経には交
【神経根症】脊髄神経根が腫瘍、靱帯骨化、硬膜
感神経と副交感神経とがあり、多くの器官はその
肥厚、軟骨変形、椎間板ヘルニア、外傷などで圧
両方の支配を受けている。その作用は多くは拮抗
性で、一方が促進的に働くと他方は抑制的に働く。
迫をうけて生ずる根症状で、前根あるいは後根の
両者、あるいはいずれかに限局する場合がある。
自律神経は意識的随意的な制御を受けないために
脊髄症状と異なり、原則として錐体路、後索、脊
植物神経とも呼ばれる。(03)
髄視床路などの long tract signs はない。後根
【侵害受容器:Nociceptor】生体の組織を傷害す
に限局する場合、分節性知覚障害が起こり、ある
るか、その可能性のある刺激(侵害刺激)を感受
分節に限局した知覚障害、根痛が生ずる。前根の
する受容器。代表的なものにAデルタ線維に支配
場合、その支配筋の脱力と萎縮、fasciculation
され機械的侵害刺激のみに応じる高閾値機械受容
がみられる。(02)
器と、C線維に支配され機械的・熱・化学的刺激
【腎血流】腎臓内の血流のこと。カラードプラ法
など多種類の侵害刺激に応じるポリモーダル受容
により描出された腎臓内血管にサンプリングポイ
器がある。その他、侵害的冷刺激、熱刺激のみに
反応するものも知られている。(99)
ントを求めることにより、収縮期最高流速(Vmax、
cm/s)、拡張期最低流速(Vmin、cm/s)が得られ
【侵害性熱受容体】熱刺激によって活性化する熱
る 。 血 管 抵 抗 の 指 標 と さ れ て い る Resistive
受容体で VR1 と VRL-1 がある。VR1 は痛み起こす
Index(RI) は以下の式により算出される。RI=
熱刺激(43度以上)や酸(プロトン)によっても
(Vmax-Vmin)/Vmax。(00)
活性化する。 また、 VRL-1 はより高温の熱刺激
【シンスプリント:Shin splints】硬い道路での
(52度以上)によって活性化される新たな痛みの
ランニングや、足の屈筋群を強く、過度に使う動
受容体である。(02)
作によって生じた下腿の疼痛と不快感であって、
【鍼灸モジュール】電子カルテはデータを電子化
筋腱の炎症に限局し、疲労骨折や阻血性障害は除
して所有するだけでなく、遠隔地の他の施設との
外されるものであるとも定義づけられる。近年、
データ交換を可能にする。異なるインタフェース
間でデータを的確にやりとりするため、医療情報
脛骨内側ストレス症候群、ヒラメ筋症候群などと
も呼ばれている。わが国では、脛骨疲労性骨膜炎
交換規約が定められている。医療情報交換規約は
という病名が用いられている。(99)
様々な情報をモジュールというセットとして扱っ
【伸張性収縮運動】筋がその長さが短くなりなが
ており、「鍼灸モジュール」は交換規約の中で、
ら収縮し、張力を発揮するのを短縮性収縮(コン
鍼灸情報を記録するための項目に相当する。これ
セントリック)といい、逆に外的な力によって筋
を実装した電子カルテを利用することにより将来
が伸ばされつつ収縮し、張力を発揮するのを伸張
的には鍼灸院間の情報交換だけでなく医療施設と
性収縮(エキセントリック)という。筋力は短縮
の情報交換が可能となる。(01)
性に比較して伸張性の収縮の場合に、より高い値
【神経因性膀胱】膀胱と大脳皮質との間の排尿に
を発揮できる。(01)
関わる神経経路のうちのどこかに器質的な障害が
発生したために、蓄尿・排尿が正常に行われなく
【心電図 R-R 間隔】2つの心電図波形が得られた
場合にそれぞれの R 波の間隔を算出することで
なり、尿失禁・排尿困難・頻尿などの排尿障害が
瞬時での心拍数の動態を現わすことができる。
生じた状態をいう。脳梗塞・脳腫瘍・パーキンソ
R-R 間隔の逆数が瞬時心拍数である。(01)
ン病などの脳疾患、脊髄損傷・腰部脊柱管狭窄症
【振動障害】振動工具の長年にわたる取扱いで発
などの脊髄疾患、骨盤内臓器手術や糖尿病などの
症する職業病として位置付けられている。その臨
− 176 −
422
キーワード用語解説
床症状は末梢循環障害(手指の冷感やしびれ、疼
大半はポリモーダルタイプの受容器と考えられて
痛など)を中心とするレイノー現象が典型的であ
いる。(02)
り、さらに末梢神経系、自律神経系の障害を伴う
症例もある。(01)
【振動誘発指屈曲反射】外受容性多シナプス反射。
す
人の手指指尖掌側に低周波の機械的振動刺激(周
【 睡 眠時 無呼 吸症 候 群】 睡眠 時 無呼 吸症 候 群
波数:約60-100Hz、振幅:約1mm)を与えると振
(sleep apnea syndrome)は、覚醒時の呼吸に異
動指の屈曲反射が誘発される。同反射の受容器は
常はなく睡眠に伴い無呼吸が起こる病態である。
皮膚の機械的受容器、効果器は指屈筋である。反
無呼吸には上気道の一過性の閉塞による閉塞型、
射弓は脊髄を介する短潜時と脊髄上位の中枢を介
呼吸中枢が一過性に停止する中枢型のほかに、中
している長潜時のものがあると推定されている。
枢型から始まって閉塞型に移行する混合型もみら
(99)
れる。症状は習慣性の強いいびき、異常な体動の
【心拍出量:cardiac output(CO)】分時拍出量
多い睡眠などのほかに、夜尿症、夜間頻尿、性的
とも言われ、心臓が1分間に拍出する血液量のこ
とで、一回拍出量 (stroke volume : SV)×心拍
能力の減退、倦怠感などがある。(00)
【ステロイド】正式名は副腎皮質ステロイドと呼
数で表される。健康成人の心拍出量は、基礎状態
ばれ、作用は、(1) 代謝に対する作用(脂肪分解
で 3.2∼4.5 l/min であり、労作、感情興奮、外
促進作用、蛋白異化作用など)、(2) 抗炎症作用、
気温の上昇、酸素欠乏時、疾患では貧血、発熱、
(3) 免疫抑制作用、(4) 他のホルモン作用発現・
バセドウ病時に上昇する。(02)
増強作用など様々な作用が知られている。ステロ
【 心 拍 変 動 解 析 】 通 常 、 HRV (heart
rate
イド薬の坑炎症作用は強力で、皮膚炎などの炎症
variability)と呼ばれることが多い。心拍数の
性疾患には有効である。一方、副作用もあるが、
解析に周波数解析を適用して、自律神経機能を評
使用方法を間違わなければ恐れることは無く、広
価する方法。心拍は随時変動しており、1990年代
範囲または長期間使用しなければ安全で有効な薬
からこの変動を周波数解析(フーリエ解析や最大
エントロピー法など)を用いて詳細に分析する試
剤である。(02)
【 ストレ インゲ ージ法 】スト レイン ゲー ジ
みが始まった。その結果、心拍変動は遅い周波数
(strain gauge force transducer)の医学への応
帯域の成分(LF)と速い周波数帯域の成分(HF)
用は、1950年に Walton らが心筋の収縮力を測定
から主に構成されており、さらに、LF は交感神
するのに用いたのが最初である。この方法の原理
経の活動性を反映し、HF は副交感神経の活動性
は金属の伸展時に発生する電気抵抗を収縮力とし
を反映するものとみなされている。LF は血圧の
てとらえようとすることにある。 まず、 金属板
変動に由来しており、いわゆる Mayer wave が現
(ストレインゲージ)を縫着した筋層が収縮する
れているとされ、HF は呼吸に基づく変動とされ
と同時に金属板にひずみが生じ、電気抵抗が発生
ている。血圧の変動からも類似の解析が可能であ
する。この時の電気抵抗を波形として記録する。
り、その場合を「血圧変動解析」という。(01)
【深部痛覚】深部組織(皮下組織、骨格筋、腱、
つまり、この方法で記録された波形はストレイン
ゲージが縫着された筋層の収縮運動を反映してい
骨膜、血管、関節など)から生じる痛みの総称。
る。近年では、消化管運動の測定などにも応用さ
皮膚の表在性痛覚とは異なり一般的に、局在性の
れている。(00)
悪さ、持続的な鈍痛、関連痛の発現が特徴として
【ストレプトゾトシン】Streptomyces achromo-g
あげられている。受容器は自由神経終末で、その
enesという細菌から初め抽出され、その後合成も
423
− 177 −
キーワード用語解説
されている抗生物質で、「抗腫瘍性物質」として、
胸部などの痛みや血行障害・多汗症など広い疾患
主として膵臓の島腫瘍のほか、ゾリンジャー・エ
に応用される。(99)
リソン症候群に関連するガストリン産生腫瘍など
【精神性発汗】発汗には、温熱性発汗と精神性発
の治療に用いられているが、動物実験では的確に
膵臓のランゲルハンス島のインスリン産生β細胞
汗とがある。精神性発汗は、精神的ないし情緒的
活動(情緒性発汗)によって発汗が増加する事を
を破壊し、糖尿病を発症せしめる化学物質である。
いう。発汗の出現部位は、全身的にも多少認めら
(99)
れるが、特に手掌、足底、腋窩、顔面に著明であ
【スプリント療法】スプリント療法とは、上下歯
る。精神性発汗の中枢は、大脳皮質の前運動領域
列のどちらか一方の歯列を全面的に被覆するアク
と視床にあるといわれる。(00)
リリックレジン製の装置で、上顎型と下顎型があ
【 生 体 イ ン ピ ー ダ ン ス 法 : bioelectrical
る。装置により2∼3mm の咬合が挙上されるが、
impedance analysis(BIA)】生体に微弱な交流電
対合歯に対して安定した同時咬合接触が得られ、
流を流したときに得られる電気抵抗を用いて、生
また、着脱可能であり、不可逆的な負荷を加えな
体の水分量や脂肪量等を推定する方法。1960年代
いので、患者にとって安心して使用できる特徴が
ある。したがって、いかなるタイプの顎関節症に
後半に測定原理が発表された。一般に生体組織の
水分が多ければ多いほど電気抵抗が低くなり、逆
おいても初期治療として応用される。(99)
に脂肪の量が多ければ電気抵抗が高くなる現象を
用いている。現在市販化されている「体脂肪計」
せ
の多くは同法を応用したもので、生体に与える侵
襲がほとんどないことが特徴である。(00)
【生活習慣病】主として、脳卒中、癌などの悪性
【生体CT像(CT scan)】X線装置とコンピューター
腫瘍、心臓病など40歳前後から急に死亡率が高く
を用いて目的とする身体の横断面の画像を撮影す
なり、しかも全死因の中でも高位を占め、40-60
る装置である。身体の周囲にX線を回転させなが
歳位の働き盛りに多い疾患を成人病と呼んできた。
ら照射して、断層内を通過するX線の透過率を対
しかし、生活習慣とこれらの疾患の発症との関係
が明らかになってきており、最近では健康的な生
向する検出器で多方向に測定し、その測定値をコ
ンピューターで数学的に処理して断層組織の吸収
活習慣を確立することにより、疾病の発症そのも
係数分布を断層画像として再構成してモニター上
のを予防する一次予防の考え方が重視されるよう
に表示する。(03)
になってきた。そこで国民に生活習慣の重要性を
【生体光情報】生物フォトンから得られる情報。
喚起し、健康に対する自発性を促し、生涯を通じ
(生物フォトンの項を参照)(00)
た生活習慣改善のための個人の努力を社会全体で
【生物フォトン】生物フォトン発光は、「生きて
支援する体制を整備するため「生活習慣病」とい
いる状態」にある生体系がきわめて微弱な光を自
う概念が提案された。(03)
発的に放つ現象の総称である。人体表面での生物
【生児獲得率】不育症や、流産、早産、死産など
フォトンの計測は、通常露出できる部位であれば、
で児の生命を失くすことなく無事に出産にまで至
り、生児を獲得した割合のことをいう。(03)
例えば額や顔面、背中、腹部、手足など、身体の
どの部位においても可能である。また、われわれ
【 星 状 神 経 節 ブ ロ ッ ク : stellate ganglion
の身近な蛍、夜光虫、発光バクテリヤ、キノコな
block(SGB)】第7頚椎横突起の基部に局所麻酔薬
どはその代表的なものといえる。(99)
を浸潤させ、頚部および上胸部の交感神経を遮断
【脊髄後索性失調症】脊髄後索性失調症としては
する方法である。頭痛、顔面痛、頚部、肩、上肢、
振動覚、運動覚、位置覚および深部痛覚を含む深
− 178 −
424
キーワード用語解説
部知覚が同側性に低下する。また二点識別覚、重
睡眠、体温調整、情緒・気分、食欲、嘔吐、性に
量覚、立体覚など深部知覚野情報が頭頂葉で統合
関係している。近年では、情緒や気分(不安やス
される識別覚も障害される。深部知覚障害は歩行
トレス)とセロトニンの関係に注目がされており、
の失調、指鼻試験、踵膝試験など運動失調をきた
す。運動失調は閉眼により増強する。(02)
不安は脳内のセロトニン濃度の減少と相関するこ
とが報告されている。セロトニンと関わる病態と
【脊髄反射】脊髄に反射中枢がある反射の総称で、
しては、うつ病、パニック障害、強迫性障害、片
運動反射と自律神経反射に大別される。正確には
頭痛、慢性疼痛障害、睡眠障害、摂食障害などが
体性−運動反射、内臓−自律反射、体性−自律反
報告されている。(02)
射、内臓−運動反射の4種類の反応がある。感覚
【 線 維 性 筋 痛 症 : fibromyalgia syndrome
情報を大脳で知覚・判断して反応するよりも遙か
(FMS)】広範囲にわたる筋骨格系の痛み、倦怠感
に早い潜時で反応ができ、刺激への素早い対応や
と睡眠障害、全身の圧痛点を特徴とする疾患。19
緊急の対応に適している。(03)
90年にアメリカリウマチ学会が作成した診断基準
【脊柱管狭窄症】脊柱管が何らかの原因で狭くな
では、広範囲に及ぶ疼痛が3ヶ月以上持続し、全
り、中に存在する脊髄や馬尾、神経根が慢性的に
絞扼された状態を指す。その特徴的な所見は馬尾
身18箇所に存在する圧痛点のうち4kg 以下の圧力
で11箇所に疼痛が存在することに加えて、全身倦
性間欠跛行である。(02)
怠感や睡眠障害・慢性頭痛や過敏性腸症候群など
【脊椎圧迫骨折】圧迫力による介達性骨折。長管
の随伴症状を呈するものとされている。血液検査
骨の長軸方向に圧迫力が作用すると、骨軸と平行
やX線検査などで特別な異常が見つからないこと
した縦骨折線や、竹のふし状に膨隆した輪状の骨
も特徴の1つである。(03)
折線をとることがある。一方の骨片が他方の骨片
【喘息(気管支喘息)】発作性の呼吸困難、咳嗽、
に嵌入する(嵌入骨折)こともある。脊柱に上下
喘鳴等を自覚症状とする疾患で、可逆的な気道閉
方向の力または屈曲力が加わり、椎体の上下方向
塞、気道過敏性、慢性(好酸球性)気道炎症によ
に圧迫力が作用すると椎体は圧迫骨折の形をとる。
り特徴づけられる疾患であり、発症には更に自律
通常は椎体上、下面および後部は無傷であり、前
方が圧潰されて楔状椎となる。胸椎および胸腰椎
神経の失調や心因性の要因などが関与していると
考えられている。本疾患における、吸入ステロイ
移行部に後発する。(03)
ド薬を柱とする治療法の確立は、喘息を長期にコ
【絶縁鍼(絶縁電気鍼)】鍼灸針の針体部分を絶縁
ントロールし、患者 QOL の改善や喘息死の減少
塗料にて絶縁したもの。尖端部分の被膜をわずか
をもたらしている。(03)
に剥離させ、局所的な電気刺激用電極または、記
【前庭頸反射】前庭迷路(耳石器、半規管)から
録用電極として使用する。(エレノード鍼の項を
の情報は、前庭神経を通り延髄の前庭神経核群に
参照)(002)
送られる。前庭神経核からの出力のうち、内側前
【セロトニン:serotonin・5-hydroxytryptamine
庭核からは脊髄を両側性に下降し頸筋・固有背筋
(5-HT)】セロトニンは生理活性アミンの一種で
を支配する運動ニューロンに投射する経路(内側
インドールアミンに属する。消化管粘膜に約90%、
血小板に約8%、中枢神経系に約2%存在している。
前庭脊髄路:MVST)が存在する。この経路は主に
半規管からの入力よって頭位の保持に関与する頸
消化管では腸の蠕動運動の促進、血液凝固、血管
部の筋のトーヌスを反射性に調節しているとされ
収縮に関与している。中枢神経系では神経伝達物
る。(99)
質として作用し、疼痛閾値の調節(末梢では痛み
【前立腺肥大症】膀胱の出口にあって尿管を取り
を増強、中枢では下行性抑制により痛みを抑制)、
巻くようにして存在する前立腺は、50歳代になる
425
− 179 −
キーワード用語解説
と肥大し始め、次第に尿道を圧迫し、様々な症状
られる。(00)
を呈する。初期では夜間頻尿、会陰部の不快感な
【総ヘモグロビン量】ヘモグロビンは赤血球中の
どが生じ、それが進むと排尿困難、残尿感、残尿
酸素運搬色素で、酸素分子が結合した酸化型ヘモ
などが生じ、排尿困難の症状が進行すると尿閉か
ら膀胱尿管逆流が起こり、腎機能が低下して尿毒
グロビンと酸素分子が解離した還元型ヘモグロビ
ンに分けられる。総ヘモグロビン量は、これら双
症が起こる。初期には薬物療法を行うが、手術で
方の総和。(00)
切除、摘出を行うこともある。(01)
【促通効果】複数の刺激を同時に加えたり、短い
【前立腺皮膜下摘除術】前立腺肥大症に対する手
時間間隔で反復して加えた時、その刺激効果が個々
術療法の1つで、開腹術により前立腺腫だけを摘
の刺激による効果の和より大きい場合、その現象
出する方法である。腺腫への到達法により恥骨上
を促通という。またそのような現象が引き起こさ
式、恥骨後式、会陰式に分けられる。恥骨上式お
れた結果を促通効果という。(01)
よび恥骨後式は我が国において現在最も広く用い
られている。会陰式は会陰部横切開で下方から前
た
立腺到達する方法であるが、我が国ではあまり施
行されていない。これらの開腹術は根治的に腺腫
【体脂肪量:body fat】個体に含まれている脂肪
の摘出が可能であるが、リスクの高い患者や腺腫
の量。一般的には体脂肪量を体重で除した体脂肪
の小さな患者には不向きである。(01)
率(% body fat)で表されることが多い。体脂
肪量は単に重量で表す。(00)
そ
【体性―自律神経反射】体性神経の興奮によるイ
ンパルスの増大が、脊髄・延髄を介して自律神経
【双管脈】橈骨動脈拍動部の脈診(寸口脈)にお
遠心路に伝導し臓器や器官の変化を引き起こす反
いて、橈骨動脈の走行上で、脈が2本に分岐し、
射。体性−心臓反射、体性−胃反射、体性−膀胱
しかも2本ともに拍動を感覚し得るものを双管脈
反射などのように臓器ごとに区分した表現を用い
という。双弦脈、二線脈ともいわれ、橈骨動脈の
形態異常と考えられている。臨床的には特殊な意
ることがある。(00)
【体組成:body composition】生体がどの様な物
義はないとされている。(01)
質(分画)で構成されているかということ。一般
【相似理論】発生学的にはその起源を異にするが、
的には体脂肪量、除脂肪体重、総体液量のように
機能を等しくするため形状が類似する現象。大橋
マクロレベルでの分画を指す。(00)
正雄は著書「新波動性科学入門」で、「一つの現
【代替医療】定義では大学の医学部で教育されて
象を追い求めて解決が得られないときには、既に
いる主流の現代西洋医学以外の医療のこと。代替
理解済みの相似の現象を捜し、そのメカニズムを
医療(alternative medicine)という言葉は主に
参考にして新しい現象を理解しようとした。これ
アメリカで使われているもので、欧州では補完あ
により研究は急速に進んだのであった。」として
るいは相補医療(complementary medicine ) と
いる。(99)
【総体液量:total body water】生体に含まれて
呼ぶことが多い。この中には漢方・鍼灸などの東
洋医学、伝統医療であるアーユルベーダやユナニ、
いる水分の総量。成人では体の約60%が水分であ
ハーブ・ホメオパシー・カイロプラクティック・
る。総体液量は更に細胞内に含まれる水分(細胞
バイオフィードバック療法など様々な療法が含ま
内 液: intracellular water) と 細胞 外 の 水分
れている。(02)
(細胞外液:extracellular water)の二つに分け
【大腸癌】大腸は長さ約1.8m、直径 3∼5cm の管
− 180 −
426
キーワード用語解説
状構造で、小腸に近い部位から肛門側にかけて、
ち
上行結腸、横行結腸、下行結腸、S 状結腸と呼ぶ。
この部位に癌が発生した場合を大腸癌と呼ぶ。大
【知覚神経(感覚神経)】求心性神経線維のうち知
腸癌には、ポリープ型から癌化する場合と粘膜か
ら直接癌が発生してくる場合の2種類がある。現
覚(感覚)に関連する神経線維の総称。神経線維
は直径により分類され、最も太いI群(Aα)は筋
在、大腸癌の死亡者数は年間約35,000人で、大腸
や腱の伸張、II群(Aβ)は触・圧・振動覚、III
癌は全癌の12.2%を占めている。近年、大腸癌が
群(Aδ)は痛覚・冷覚、最も細いIV群(C)は痛
著しく増加して今後、大腸癌は罹患率や死亡率で
覚・温度覚をそれぞれ適刺激とするB直径は伝導
胃癌を追い抜くとされている。大腸癌の治療は一
速度と相関し、直径が太いものほど伝導速度が速
般的に、外科手術と化学療法(抗がん剤)で行わ
い。(03)
れる。癌が粘膜にとどまっている早期大腸癌の場
【遅発性筋痛】スポーツ活動や運動を行った後に
合は内視鏡的粘膜切除術が行われる。(03)
1日または2日遅れて自覚する筋痛を遅発性筋痛
【単純性肥満モデル動物】肥満モデル動物として
(delayed
onset muscle soreness)という。 日
VMH(視床下部腹内側核)の満腹中枢破壊により
過食を起こし肥満させたラットや、遺伝的に肥満
常運動習慣のない者がスポーツ活動を行うと特に
起こりやすく、また加齢により疼痛の発生のピー
を起こす Zucker fatty ラット、ob/ob マウスな
クが遅延する現象をよく経験するが、遅発性筋痛
どが知られているが、通常のラットに高栄養食を
は伸張性収縮運動(遠心性収縮運動:eccentric
与えることで肥満を引き起こし、主に過食と運動
exercise)によって起こりやすく、その機序とし
不足によるといわれる単純性肥満症のモデルとす
て筋組織の破壊が起こるためとされている。(99)
ることがある。(00)
【超音波】周波数が高くてヒトの耳では聞こえな
【男性更年期】女性にだけとされていた更年期障
い音のこと。この超音波を利用した超音波診断装
害 は 男 性 に も存 在 す る 。 男 性更 年 期
置は画像診断の一つであり、簡便で非侵襲的に行
(andropause)の症状は、女性と同様に様々な身
える検査である。(00)
体症状(肩凝り、不眠、下肢の冷え、疲労感、勃
起障害など)を有する。加齢と共に男性ホルモン
【直線偏向近赤外線照射療法】直線偏向近赤外線
照射は低出力レーザー治療器開発の中で誕生し、
が低下すると共に、50歳前後となると家庭や仕事
光線の最も生体深達性の高い波長(0.6∼1.6μm)
のストレスでテストステロンも急激に低下するこ
と最高出力 1800mw でスポット状に照射すること
とも関連して、様々な身体症状が発現するものと
を可能にした初めての光線治療器(スーパーライ
考えられている(Heller、C JAMA、1944)。(02)
ザー)である。従来の光線療法が、赤外線の輻射
【弾性と弾性係数】対象に加えた荷重を取り除い
熱により体表を広く暖める温熱効果を目的に利用
た場合に、その対象の変形が回復する性質を弾性
されているのに対し、ピンスポット的に圧痛点、
と呼ぶ。このとき、荷重と変位の間に比例関係が
炎症部位、経穴、神経の走行などに照射し慢性疼
ある場合にその比例係数を弾性係数と呼ぶ。(02)
痛などの緩和を目的とした治療方法である。(02)
つ
【痛覚過敏】痛覚過敏とは痛み刺激に対する反応
の亢進で、一次性痛覚過敏と二次性痛覚過敏に分
類される。前者は損傷部位の疼痛閾値の低下で、
427
− 181 −
キーワード用語解説
炎症メディエータの産生による痛覚線維の反応性
【電子カルテ】紙のカルテに代わって、診療情報
の増強が関与する。後者は損傷部位周囲や離れた
を電子的に記録するための技術・環境を指す。紙
部位での疼痛閾値の低下で、二次ニューロンの感
のカルテでは、診療経過を効率的に表現すること
作などが関与している。(00)(01)
【椎間板ヘルニア】椎間板の線維輪の変性などの
が非常に困難であるが、コンピュータを使うと容
易になる。その他レントゲン写真などの静止画や、
原因により、髄核が線維輪と後縦靱帯を突き破っ
音声などのマルチメディア情報を収録することが
て後方へ脱出し、脊髄や神経根を圧迫して神経症
可能になる。また通信技術を使って、病院内外と
状を引き起こしたものをいう。部位は、下位腰椎
の情報の共有、データベースを利用した文献デー
が90%以上で最も多く、下位頚椎にもあるが、胸
タの検索などが可能になる。(00)
椎は稀である。下位腰椎では坐骨神経痛の症状を
呈する。治療は初期にはまず安静、牽引などが行
と
われるが、症状が持続する場合は髄核摘出術や椎
体固定術などの手術療法が選択される場合がある。
【凍結融解胚移植】体外受精や卵細胞質内精子注
(02)
【爪白癬】白癬とは白癬菌、小胞子菌、表皮菌な
入のために採卵・媒精した際、多数の良質受精卵
が得られた時は、通常そのうちの2個を胚移植し
どの皮膚糸状菌によって起こる皮膚疾患で、皮膚、
て、余った受精卵(胚)は凍結保存しておく。も
毛髪、爪を侵す。菌の侵襲が浅く角層に寄生する
しも妊娠が成立しながった場合には、以後の月経
浅在性白癬、毛包から菌が侵入して真皮に強い炎
周期において、凍結保存していた受精卵を融解・
症反応を伴う深在性白癬とアレルギー疹である白
培養して胚移植に使用する。これを凍結融解胚移
癬疹の3型がある。爪白癬は、爪甲は混濁肥厚し、
植と言う。(02)
凹凸不平となり、爪質がもろく破壊される。(00)
【瞳孔反射】強い光が眼内に入ると光を受けた側
が縮瞳する直接対光反射、反対側眼も縮瞳する間
て
接対光反射、急に近い物体を注視すると縮瞳する
【テュートリアル教育】テュートリアル教育とは、
調節性瞳孔反射がある。以上は動眼神経、毛様体
神経節などを経由し虹彩の瞳孔括約筋収縮による
テューター(学生一人ひとりに対する個別的指導
副交感神経性の自律神経反射である。その他、閉
を行う教員)による少人数教育の総称である。テュー
眼反応(眼瞼を強く閉じると閉眼側の縮瞳)、三
トリアル教育では少人数教育、個別指導が特徴と
叉神経反射(角膜、結膜など三叉神経支配領域の
なり、問題解決型学習、学生自身が自発的に方向
持続的刺激時の縮瞳)、精神性反応(精神的興奮
づけを行う学習、討論形式の相互教育的な学習な
時の散瞳)などがある。(03)
どで用いられている。21世紀医学・医療懇談会の
【等尺性最大随意収縮】筋の両端を固定して刺激
答申でもその必要性が報告されている。(01)
すると、収縮中に筋の長さは変化しない。このよ
【電気泳動】蛋白質は分子の表面にあるアミノ酸
うな収縮を等尺性収縮といい、動かない物を押し
の種類により、正または負の電荷を帯びている。
これを適当な電解質溶液に溶かし、一対の電極間
たり引いたりするときに起こる。このような動作
を意識下にて最大限努力する運動を等尺性最大随
に直流電圧をかけると、蛋白質はそれ自身の電荷
意収縮という。(00)
の符号と反対の極に向かって移動する。この様な
【等速性運動】筋の収縮の速度を一定状態にして
現象は、イオン、蛋白質、核酸、細胞など生化学
トレーニングする時に使う用語で、この等速性運
が対象とする粒子において観察される。(02)
動を行うには特別な装置が必要である。装置に規
− 182 −
428
キーワード用語解説
定した速度より速く運動を行おうとすれば、その
施術者が感じる得気もあり、鍼の刺手に感じる得
力がトルクとして記録される。よく知られている
気(重くなる様な、締め付けられる様な感覚)と
のがサイベックスである。(00)
押手に感じる得気(水流感)がある。(03)
【糖尿病:Diabetes Mellitus】膵臓のランゲル
ハンス島β細胞で産生されるホルモンであるイン
【ドーパミン】チロシン、L-ドーパを経て最初に
生成するカテコールアミン。それ自身で神経伝達
スリンの分泌不足もしくは標的細胞における作用
物質としての作用を持つ。ドーパミン作動性ニュー
不足の結果生じる、糖、蛋白、脂質の代謝異常を
ロンは黒質と被蓋に特徴的に存在し、線状体へ投
いう。本症は、遺伝的素因に、肥満、運動不足な
射している。パーキンソン病は黒質に変性があり、
どの環境因子が加わり発症すると考えられている。
前駆物質 L-ドーパの投与が治療に有効である。
1999年の日本糖尿病学会の分類では、(1) 膵β細
大脳辺縁系におけるドーパミンは情動行動に関連
胞破壊を特徴とする1型と、(2) インスリン分泌
し、精神分裂病との密接な関係が注目されている。
低下とインスリン感受性の低下(インスリン抵抗
(99)
性)を特徴とする2型、(3) その他の特定の機序
【トポロジー】伸び縮みして重ね合わせできる図
や疾患によるもの、(4) 妊娠糖尿病に分類される。
本症では、慢性的な高血糖を呈し、その結果、腎
経を等しい(相同)と考える、図形の性質っを研
究する幾何学。人体をトポロジー的に見ると、口
症、網膜症、末梢神経障害、心筋梗塞、脳梗塞な
や鼻から肛門をゥ通すと、3本のパイプ状の3穴ドー
どさまざまな合併症を生じる。(血糖値の項を参
ナッツに表現され、更に、口や鼻を呼吸器官の概
照)(03)
念で一つにまとめると、口と鼻から肛門を見通す
【糖尿病性神経障害】糖尿病患者において高血糖
1本のパイプ状となり、人体を1穴ドーナッツに表
状態が持続すると、脳神経および自律神経を含む
現できる。(99)
末梢の神経線維が障害され、四肢の痛みやしびれ
【トランスアミナーゼ】細胞内に存在し、アミノ
などの知覚異常や内臓機能の障害などが引き起こ
酸の合成や分解、作り替えなど代謝上、重要な働
される。糖尿病性知覚神経障害による痛みやしび
きをもつ酵素群の総称である。これらの酵素はあ
れはしばしば激烈で患者の QOL を著しく障害す
る。また糖尿病性自律神経障害は、消化器系や循
らゆる組織中に存在するが、主なトランスアミナー
ゼとして、アスパラギン酸アミノトランスフェラー
環器系に広く影響を及ぼすなど多彩な症状を呈し、
ゼ(aspartate aminotransferaseFAST)とアラニ
直接あるいは間接的に死因に影響を及ぼす点で重
ンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotra
要である。糖尿病性神経障害の治療としてはプロ
nsferase:ALT)が知られている。GOT と GPT は、
スタグランジンやビタミンB12、 アルドース還元
各々 AST と ALT に対する慣用名である。(関連用
酵素阻害剤などが使用されるが、決定的な治療法
語:GOT、GPT)(02)
はなく厳格な血糖コントロールが基本である。末
【トリガーポイント】「痛みの引き金点」のこと。
梢神経障害は糖尿病の3大合併症。(01)
トリガーポイントを内包する筋は、(1)短縮する
【得気】得気は鍼刺激の際に感じる特有な感覚を
痛みを再現する。(2)トリガーポイント部を圧す
いい、「鍼感」、「気至」、「ひびき」等と表現され
ている。得気には種類があり、鍼を施術された者
ると他部位(遠隔部位)に関連痛が出る。この2
つがトリガーポイント検索のkeyとなる。トリガー
が感じる得気には「だるい(酸)、腫れぼったい
ポイントがあると、局所的な交感神経亢進状態が
(脹)、おもだるい(重)、しびれる(麻)、皮下深
引き起こされ、自律神経の支配を受けている様々
部に感じる痛み(痛)」等が り、刺鍼部位に感じ
な器官に影響が出る。逆に言えば、トリガーポイ
たり、それ以外の部位に放散したりする。また、
ントを処理すれば、自律神経が関与していると思
429
− 183 −
キーワード用語解説
われる諸症状も取り除くことができるとみなされ
卵管狭窄症、免疫性不妊症(抗精子抗体陽性)、
ている。(00)
子宮内膜症、男性側因子としては、乏精子症や精
【貪食能】好中球やマクロファージなどの食細胞
子無力症がある。この場合は高度生殖医療(体外
が微生物や粒子を細胞中に取り込む現象を貪食作
用、あるいは食作用と呼ぶ。貪食能の評価は食細
受精、胚移植など)が適応となる。(02)
胞のカーボン粒子の取り込み量あるいは、静注後
に
の血中消失量などによるが、最近では、蛍光物質
を標識したビーズを細胞内に取り込ませて、フロー
【尿中NTx】骨吸収マーカー(骨代謝マーカー)
サイトメトリーにより、取り込んだビーズの数を
の一つ。骨基質のコラーゲン(Ⅰ型)は破骨細胞
定量する方法に変わりつつある。(03)
により分解され、血中に放出され、腎から尿中へ
排出されるが、そのコラーゲンを構成しているア
な
ミ ノ酸鎖の端 にあった N末端を測定 する抗体 が
NTx である。骨代謝マーカーは、骨の代謝状況を
【内因性高脂血症ラット】体内の脂質は食物から
余分に摂取された食事性(外因性)の脂肪と肝臓
リアルタイムに表現し、骨の構造と量が今後どの
ように変化するかを予測することができる。骨粗
で合成された内因性脂肪に分類されるが、内因性
鬆症では骨代謝は亢進状態にあり、尿中NTxは高
高脂血症ラットは、特に肝臓における内因性の脂
値を示す。(01)
質代謝を観察する目的でコレステロールフリー高
【尿噴流:Jet Phenomenon】尿管口より膀胱内に
フルクトース食を与えて内因性の高脂血症を引き
尿が噴出する現象(Jet Phenomenon)をいう。超
起こしたものをいう。(00)
音波カラードプラ(Color Doppler)装置により尿
【内因性鎮痛機構】疼痛情報が入力され、末梢か
噴流の回数、最大流速を観察することにより、腎
ら脊髄そして上行性に脳幹部、大脳皮質へと伝達
臓から膀胱への尿輸送に及ぼす影響について非侵
されるが、この侵害情報に対して内因性の調節機
襲的に評価することができる。刺激が尿輸送に影
構が働く。この内因性鎮痛機構として代表的なも
のが下行性抑制系であり、また脊髄内においても
響をあたえることができれば、尿管結石の排石促
進に有効な手段となると考えられる。(03)
介在性ニューロンによる内因性鎮痛機構が作動す
【妊娠悪阻】妊娠嘔吐(つわり)が悪化し、妊娠
る。下行性抑制系にはβ-エンドルフィンが中脳
嘔吐の症状に加え全身の栄養障害を伴ったものを
中心灰白質に放出されて作動する系と橋の青斑核
いう。重症になると、胎児、母体ともに死に至る
から脊髄に下行する系がある。また、近年では免
こともあるため、早期改善が必要な疾患である。
疫系細胞から放出されたオピオイドによる末梢性
その成因はホルモン説、中毒説など諸説あるが不
の鎮痛機構も内因性鎮痛機構に含まれつつある。
明である。妊娠嘔吐は全妊娠女性の約70%と多い
(03)
が、妊娠悪阻は約0.02∼0.3%と少ない。経産婦
【ナロキソン】代表的オピオイド拮抗薬。μ受容
よりも初産婦に多くみられるのが特長である。
体に対する親和性が若干高いが、サブタイプ選択
性は低い。(00)(01)
(補足:妊娠嘔吐(つわり)は、妊娠初期(妊娠5
∼16週頃)に“生理的に現れる”消化器症状であ
【難治性不妊症】一般的な不妊治療(タイミング
り、早朝空腹時に多く起こり、悪心、嘔吐、胸焼
治療、排卵誘発治療、人工受精など)を行ったが
け、嗜好の変化、唾液の過剰分泌、便秘などが現
妊娠に至らなかった不妊症を難治性不妊症と称し
れる。)(03)
ている。主な原因としては、女性側因子として、
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430
キーワード用語解説
ぬ
脳梗塞後遺症として、最も多いのは運動麻痺であ
り、なかでも片麻痺は体の半身に障害が出て体が
ね
動かしにくくなり日常生活の食事や、着替えなど
【熱電対温度計】異種の伝導体を対状接合したも
が不自由となる。運動麻痺以外では感覚障害が多
い。物が二重に見えたり、視野が狭くなる視覚障
ので、接合部の温度が異なると熱電気効果により
害や、言葉がうまく話せなくなるといった言語障
起電流を生じることにとって、温度の差を測定す
害を見ることがある。(03)
る。(01)
【脳内モノアミン】アンモニアNH3のHを炭化水素
【熱流計】熱流計とは、熱流束を測る機械のこと
基で置換した化合物の中で、1つの分子中にある
で、板状になった熱電対の表と裏の温度差が熱流
アミノ基の数が1つのものをモノアミンという。
束値に比例するシュミットボエルダー式と円筒薄
脳内にあるモノアミンとしてはノルアドレナリン、
膜の中央と円周の温度差により熱流束を得るガー
ヒスタミン、セロトニン、ドパミンなどがあり、
ドン式の2種類が一般的によく用いられている。
神経伝達物質としてはたらいている。最近では学
(02)
【熱流束】エネルギーは高密度から低密度へと流
習記憶、老化、精神疾患、変性疾患および薬物依
存症などとの関連が注目されている。(00)
れる。熱伝達に関しても原理は同じで高温から低
【脳報償系】脳報償系は1953年に Olds とMilner
温へと流れる。熱流束とは、単位面積(cm )を
により発見され、報償効果のある部位は腹側被蓋
流れるエネルギー(熱流量)の量の事で、W/cm を
野から外側視床下部を貫く内側前脳束を中心とし
単位とし、温度変化はこのエネルギー流の結果に
た領域であることが明らかになった。報償効果に
よるもので、熱流束がわかれば温度の予測もでき
作用する物質としてはノルアドレナリンやドーパ
る。(02)
ミンなどが考えられているが、最近では 側被蓋
【粘性と粘性係数】流動において生じる摩擦抵抗
野から側坐核や前頭前野皮質へ投射するドーパミ
を粘性と呼ぶ。液体に対して流動をおこさしめた
ン神経系である A10 系が脳報償系の中心である
力と変形速度との間に直線関係が成り立つ場合に
その比例計数を粘性係数と呼ぶ。(02)
とされている。(01)
【ノルエピネフリン】カテコールアミン類に属し、
【粘弾性】粘性と弾性の性質の両方を併せて持つ
チロシンから生合成される。別名でノルアドレナ
力学的性質を粘弾性と呼ぶ。粘弾性の単純化モデ
リンとも呼ばれ、末梢血中に見られるもは、ほと
ルとしては弾性をバネで粘性をダッシュポットで
んどが交感神経節後線維に由来するものである。
表し直列に結合させたマックスウェル模型や並列
アドレナリンα受容体に対する作用が強く、末梢
に結合させたフォークトモデルがある。しかし、
血管収縮による血圧上昇作用を持つ。ノルエピネ
このような単純なモデルでは現実の材料の挙動は
フリンがフェニルエタノールアミンN-メチルトラ
表現しきれず、これらの要素を複数個組み合わせ
ンスフェラーゼによりエピネフリンとなる。(99)
2
2
たモデルや非線形大変形を考慮したモデルが考案
されている。(02)
は
の
【バイオインフォマティクス:Bioinformatics】
生命情報学のこと。近年急速に進歩している遺伝
【脳梗塞後遺症】脳梗塞は脳血管が閉塞し、その
子(ゲノム)解析から、細胞、ひいては生物個体
灌流領域にある脳組織が壊死に陥った病態である。
まで包括して、「生命のはたらきをシステムのは
431
− 185 −
キーワード用語解説
たらきとして理解する」という視点での広い視野
じまり、中心症状は激しい理由のない不安、発作
に立っての「生命情報学」を意味する言葉。また、
が過ぎると次の発作が来るのではないかという不
ゲノム解析などはコンピュータによる情報処理技
安など、発作を説明できる臨床検査所見がないこ
術の進歩に依るところも大きく生命科学と情報科
学とが融合することが必然でもあり、それ故、バ
とである。ひとたび発症すると、発作が発作を呼
び、また小さな発作でも不安が続いてしまう。治
イオインフォマティクスと呼ばれる分野が21世紀
療としては、発作を完全に押さえる事が重要で、
では急速に発展していくことが推定されている。
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬はおもにパニック
(00)
発作と予期不安に効果があり、三環系抗うつ薬は、
【 背 外 側 被 蓋 核 : laterodorsal
tegmental
パニック発作に効果があるとされている。(00)
nucleus(LDT)】橋排尿中枢内に存在するニュー
【鍼レオメーター:Acupuncture Rheometer】鍼
ロン群の一つで、他に青斑核(locus coeruleus:
刺入時、及び抜鍼時に鍼に加わる抵抗力を測定す
LC)やBarrington 核(Barrington's nucleus:B
る装置。鍼レオメータは鍼を一定振幅、等速度で
ar)があげられる。背外側被蓋核は組織学的にコ
上下させる鍼駆動装置と駆動部分に取り付けた鍼
リン作動性ニューロンの集合体とされてきたが、
近年、非コリン作動性ニューロンの存在が明らか
センサーから構成される。鍼センサーは鍼体の軸
方向に加わる張力・圧縮力・加速度を高精度で検
になり、そのニューロンが、膀胱からの情報を反
出できる。(99)
映していることが明らかになった。又、背外側被
【パルスアルゴメータ:Pulse algometer】電気
蓋核のコリン作動性ニューロンは睡眠・覚醒調節
刺激を用いて各種の閾値を測定する装置。電流パ
の内、覚醒調節を行うニューロンとして注目され
ルスの出力が漸増しながら連続的に与えられ、そ
ている。(02)
の時の電流量がデジタル表示されると共にペンレ
【パッチクランプ法】細胞膜の微細な領域を電気
コーダにも出力される。被験者はリモートスイッ
的に隔絶して、単一のイオンチャネルを流れる電
チによって、マークを入れたり、刺激を止めるこ
流を記録する方法である。(03)
とが出来る。その結果、検出閾値、痛覚閾値、耐
【波動理論】空間的にも時間的にも変動する場の
運動。数学的にはド・ブローイの物質波の考えを
痛閾値等の電流値を知ることができる。(02)
【パルスドプラ法】心臓超音波検査は、超音波の
発展させて、シュレーディンガーが確立した波動
細いビームを体表から心臓に向かって入射し、心
方程式があり、全ての物質は電子の回転する固有
臓の各組織や血球からの反射を捉えて記録(心エ
の振動(波動)を持つ考え。人体においては、臓
コー図)し、心壁の厚さや弁の運動を知る検査法
器毎に固有の波動を持ち、その波動を用いて、健
である。パルスドプラ法は、心臓内の駆出、流入
康状態の把握・回復に関与する考えが基本の欧米
の血流から反射された超音波の波型を描出する方
由来の研究。(99)
法であり、心臓の拡張および収縮機能の測定や、
【パニック障害】1980年以前は不安神経症と言わ
逆流の存在による心房中隔欠損、僧帽弁閉鎖不全
れていたが、以降はパニック障害と言われるよう
症、ファロー四徴等の診断と重症度判定が可能で
になった。パニック障害の中心症状は「パニック
発作」であり、その発作は誘因のない激しい不安
ある。(関連用語:Eg、A 波、A/E)(02)
【半規管温度刺激】体温とは異なる温水または冷
感とともに、「心臓がどきどきする」
、「汗をかく」、
水を外耳道に注入するとめまいとともに眼振が誘
「身体や手がふるえる」、「呼吸が早くなる、息苦
発される。この為、平衡機能検査では一側の前庭
しい」、「死ぬのではないかとの恐怖感」などの症
機能の低下の有無をみる方法として広く利用され
状を伴う。特徴としては、発作は誘因なく突然は
ている。従来、温度刺激によって外耳道に最も近
− 186 −
432
キーワード用語解説
い外側半規管の内リンパ液に対流を起こし眼振が
ングを行う。光ファイバーの設置部位により筋組
誘発されると考えられていた。しかし、スペース
織での応用も可能である。(01)
シャトルにおける宇宙実験で無重力状態でも地上
【ピッチマッチテスト】耳鳴に類似する周波数を
と同様に発現することが報告されている。(99)
【反復流産】連続して2回の自然流産を繰り返し
求めるテストである。検査音は125・250・500・
1000・2000・3000・4000・6000・8000・10000・
たものをいい、全妊娠女性の2∼5%に発生する。
12000Hzの純音とバンドノイズ、ホワイトノイズ
反復流産した者の中には習慣流産を起こす者も多
を使用する。最初に125Hz と 12000Hz 純音を交互
く、反復流産した時点で、詳細な原因追及と、予
に聞かせ、どちらの検査音が耳鳴に似ているかを
防的治療が行われることがある。一方で、反復流
解答させ、似ていないほうの検査音を1段階ずつ
産、習慣流産を起こした者であっても、無治療の
変えて同じ質問を繰り返し最後に残った検査音を
まま生児を出産する確立が高いことも事実である。
耳鳴のピッチとする。(02)
(03)
【鼻腔内腫瘍】良性腫瘍と悪性腫瘍に分類され、
良性腫瘍は鼻腔に多く、乳頭腫、血管腫が多い。
ひ
その他として鼻前庭嚢胞、骨腫、軟骨腫、線種な
どがある。悪性腫瘍は副鼻腔に多く見られ、特に
【光てんかん】一般に10-20Hz の閃光によってて
上顎洞癌が多い。(03)
んかん発作を起こすものをいう。 発作を起こす
【脾細胞】脾臓はリンパ系器官のひとつで、免疫
のは強い閃光である。ネオンサインや映画は 通
反応の起こる場である。脾臓内の細胞成分は、赤
常無害で、テレビも近づき過ぎていない限り通常
血球、リンパ球、マクロファージ、顆粒球(好中
は安全である。しかし画面が調整されていなかっ
球、好塩基球、好酸球)などからなり、免疫応答
たり、 ある速度で垂直に画面が流れたりすると
に必要な細胞のすべての種類が含まれていると考
発作を引き起こす事がある。また、 ロックコン
えられている。赤血球を除く白血球成分(リンパ
サートなどで、ある速度とリズムで強い明かりの
球、マクロファージ、顆粒球)を一般に脾細胞と
ストロボが点滅を繰り返す場合や、影とひなたが
交互になっている所をオートバイや自動車の運転
呼ぶ。(03)
【皮脂欠乏症】皮脂分泌の低下によって、皮膚が
時に通り抜けることでも遭遇する点滅効果により
外的刺激を受けやすくなり、乾燥、粗造化し、粃
発作を引き起こすことがある。ごく希なケースで
糠様落屑を生じるにいたった状態。初期には落屑
は、混雑した道路で、向かってくるヘッドライト
のみであるが、やがて亀裂を生じ、掻破を繰り返
が発作を引き起こす場合や、ブラインド越しの光
すうちに湿疹性変化を伴うようになる。老化現象、
に反応したり、水面のさざなみによる光の反射
石鹸の使いすぎ、低湿度、過剰な摩擦刺激などが
で発作を引き起こす場合もある。(00)
原因となる。治療は保湿を行うが、湿疹化が高度
【光トポグラフィ:optical topography】光トポ
で掻痒を伴う場合には、ステロイド軟膏を外用し、
グラフィは近赤外光を用いて非侵襲的に脳機能の
抗ヒスタミン剤の内服を行う。(03)
活動を画像化する方法で、患者負担の少ない自然
な環境での検査が可能である。脳が活動すると活
【鼻汁好酸球数】好酸球はアレルギー反応のケミ
カルメディエーター(chemical mediator:化学
動部位の血液酸素飽和度と血流に変化をきたす。
的原因体)であるヒスタミン、ロイコトリエンを
その血液変化像(各種ヘモグロビンの近赤外吸収
不活性化するためヒスタミンが遊離しているとこ
変化量)を電極の変わりに光ファイバーを用いて
ろに集まる。そこで鼻汁に含まれる好酸球を測定
モニターし、ほぼリアルタイムに脳機能のマッピ
するとアレルギーの程度が判定できる。(01)
433
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キーワード用語解説
【皮膚血流量】皮内および皮下の血流を皮膚血流
【封筒法】封筒法は無作為化比較でランダムに治
と呼ぶ。この血流量を測定する機器としてレーザー・
療法を割り付ける際に用いる一手法である。これ
ドップラー血流計が多く使われており、組織 100
は治療法の割り付けを記載した紙が入った封筒
g 当 たりに 1分間 に流 れる血 液の 量 (ml / min /
100g)を経時的に計測できる。また、皮膚血流の
(中身が見えない物で表に番号がついている)を
あらかじめ用意しておき、そして患者を登録する
調節には神経ペプチド(CGRP やサブタンスPなど)
際に番号順に開封するものである。(99)
による液性調節と、自律神経である皮膚交感神経
【フェイススケール】フェイススケールとは、顔
の調節がある。CGRP やサブスタンスPなどの神経
の表情をカテゴリー化して患者の状態に応じた表
ペプチドの作用により血流量は増加し、皮膚交感
情を選ばせる方法である。痛みの評価に用いられ
神 経 活 動 (skin sympathetic nerve activity :
る以外も気分や全身状態の評価に用いられるカテ
SSNA) の亢進により皮膚血流量は減少する事が知
ゴリカルスケールの1つである。(02)
られている。(00)
【副交感神経遮断薬】抗コリン作用薬、抗ムスカ
【皮膚交感神経】ヒトの遠心性交感神経活動には、
リン様作用薬に分けられる。抗ムスカリン様作用
皮膚または筋へ分布するものに分けられ、それぞ
れ 皮膚交 感神 経活 動 (skin sympathetic nerve
薬は副交感神経支配効果器においてアセチルコリ
ンの作用を競合的に遮断する薬物である。また、
activity : SSNA) と 筋 交 感 神経 活 動 (muscle
ムスカリン受容体に働いて、この受容体を不活性
sympathetic nerve activity:MSNA) とに分類さ
化することで副交感神経の興奮伝達を遮断するこ
れている。皮膚交感神経活動の効果器は皮膚血管
とから、別名、抗コリン作用薬ともいう。アトロ
と汗腺で、皮膚血流減少や発汗波のそれぞれに先
ピン、スコポラミン、臭化ブチルスコポラミン、
行して皮膚交感神経活動の亢進が観察される。
塩酸トリヘキシフェニジルなど。(00)
(00)
【複 合性局所性疼痛症候 群:Complex Regional
【肥満細胞】免疫系細胞の一種で、粘膜組織や皮
Pain Syndrome(CRPS)】1994年、 世 界疼 痛学 会
膚などの結合組織内に存在する。体内に抗原が侵
(IASP) は 反 射 性 交 感 神 経 性 ジ ス ト ロ フ ィ ー
入してくると、細胞膜表面のIgE抗体と結合し、
細胞質内に持つ顆粒(ヒスタミン・ロイコトリエ
(Reflex Sympathetic Dystrophy:RSD)とされて
いたものを CRPS の Type-I とし、カウザルギー
ンなどの炎症メディエーター)を細胞外に放出す
(causalgia) とされ ていたも のを CRPS のType-
ることで、炎症反応を起こす。アレルギー性鼻炎、
Ⅱ と分類した。このCRPSを生じる原因として外
花粉症、じん麻疹といった、1型アレルギー反応
傷や手術後の発症の他に、採血や点滴時に当該静
の主役である。(00)
脈 に沿って走る神 経浅枝が損傷さ れ Type-Ⅱ の
CRPS を発症する例など報告されている。(02)
ふ
【副腎皮質刺激ホルモン:Adrenocorticotropic
hormone(ACTH)】アミノ酸39個からなるポリペプ
【不育症】受胎(受精・着床)はするものの、胎
チドで、下垂体で産生分泌されるが、脳(弓状核
児を宿し、児が体外生活可能となる妊娠末期まで
妊娠を維持できないことを言う。狭義では不妊症
底部と周辺領域)、副腎、消化管、膵、甲状腺、
胎盤などにも存在し、ストレス誘発鎮痛を引き起
と区別されるが、広義では不妊症に含まれる場合
こすストレスホルモンとしても作用する。(00)
もある。(補足:死産は妊娠満12週以後の“死児
【腹水】腹水とは腹腔内に液体が溜まることで、
の出産”をいい、自然死産と人工死産がある。)
炎症性腹水(滲出液)と漏出性腹水(漏出液)が
(03)
ある。滲出液の場合、卵性腹膜炎が考えられ、漏
− 188 −
434
キーワード用語解説
出液の場合、肝疾患や心疾患が考えられる。また
波山系の土中の菌から開発したものである。(03)
腹腔内腫瘍では滲出液と漏出液の中間性の腹水が
貯留する。(03)
へ
【不定愁訴】全身倦怠感、めまい、頭痛、動悸、
下痢など自律神経系の関与が強く考えられる身体
【閉眼片脚立位法】平衡機能検査の一つで直立検
的愁訴で、不安定で消長しやすく客観的所見に乏
査に属し、片足を上げ開眼と閉眼のそれぞれを行
しい。不安神経症、身体化障害、起立性低血圧、
い、個々の時間と身体の動揺を比較する検査。開
仮面うつ病、本態性自律神経失調症、精神科疾患
眼30秒で接床するもの、閉眼30秒で3回以上接床
などで不定愁訴を示しやすい。(03)
するものを以上とする。(01)
【不妊症】健康な夫婦が、避妊せず、正常な夫婦
【ペインスケール】痛みの程度を評価する指標の
生活を営んでいるにも関わらず、 一定期間以上
総称である。良く用いられる痛みの測定法として
(日本では2年以上、アメリカでは1年以上)妊娠
Visual analogue scale(VAS)などがあり、これ
しない状態をいう。日本では、不妊症(および不
は患者の経験した「最大の痛み」を100、「痛みな
育症)により子供の居ない夫婦が約10%いる。
(03)
し」を0とした100mm の直線からなるスケールを
用意し、その時の痛みの程度を患者自身に指示さ
【プラセボ効果】評価しようとする状態に対して
せ 評 価 する も の であ る 。そ の他 に 、numerical
何ら特別の作用のない物質ないし処方をプラセボ
scale( 数値 に よる 評 価)や 、 場合 に よっ て は
(プラシーボ)といい、それらによって惹起され
face scale なども含まれる。(00)
た精神的ないし精神生理学的効果のことをいう。
【ベースン法】浸漬法とも呼ばれる手指の消毒方
(01)
法のこと。洗面器(Basin)に入れた消毒液に手
【プロスタグランディン:prostaglandin(PG)】
指を浸漬して手指消毒をする。この方法は、消毒
組織が傷害されると産生される物質のひとつ。細
剤の濃度低下や耐性細菌の生息などが起こるため
胞膜から遊離されたアラキドン酸がシクロオキシ
に、交差感染の危険性が大きいとされる。(02)
ゲナーゼ(COX:cyclooxygenase)の作用を受け、
PGG2 と PGH2 を経てさまざまな PG が産生される。
【ヘモグロビンA1c (HbA1c)】ヘモグロビンの分
画のうちヘモグロビンA1は、血液中のグルコース
PG は直接的な発痛作用はないが、 侵害受容器の
と結合し糖化ヘモグロビン(グリコヘモグロビン)
感受性を高めたり、発痛物質であるブラジキニン
と呼ばれる。ヘモグロビンA1はさらにA1a、A1b,
の作用を増強するなど種々の情報伝達物質の作用
A1cに細分画されるが、なかでもヘモグロビン
を媒介する。アスピリンに代表される非ステロイ
A1cは、安定的にグルコースと結合し、一旦生成
ド性抗炎症薬は、 COX を阻害することにより PG
されると赤血球の寿命(120日)まで徐々に増加
の産生を抑制する。(01)
する。糖尿病ではヘモグロビンA1cの全ヘモグロ
【プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)】アト
ビンに占める率は高値を示し、特に過去1∼3ヶ月
ピー性皮膚炎の新たな治療薬として1999年より市
の平均血糖値をよく反映する。ヘモグロビンA1c
販された外用薬で、免疫抑制作用のあるタクロリ
ムス水和物を含み、これにより炎症抑制作用を有
の正常値は4∼6%で、糖尿病患者のコントロール
目標は6∼9%といわれている。(01)
する。ステロイド剤のような皮膚萎縮作用や血管
【ベル(Bell)麻痺】末梢性顔面神経麻痺のこと。
拡張作用が無く、長期の使用が可能で、ステロイ
側頭骨内での顔面神経の障害によって起こる片側
ドの連用が困難な顔面や頚部の皮疹に有効である。
の末梢性の麻痺を言い。その原因は不明とされて
なお、タクロリムス水和物は日本の製薬会社が筑
いるが、ウイルス説や神経の乏血説が言われてい
435
− 189 −
キーワード用語解説
る。多くは、前駆症状なしに突然出現する麻痺で、
の容量を求める。ちなみに、1日の自然排尿を記
その麻痺の程度は様々である。主な症状は片側の
録した排尿記録の最大量は機能的膀胱容量と定義
顔面神経の運動枝の麻痺(表情筋)が前面に現れ、
され、通常、膀胱内圧測定による膀胱容量よりも
その他として障害部位によって聴覚過敏、味覚障
害、唾液分泌の低下などが起こる。診断基準とし
大きいとされている。(02)
【勃起障害】勃起障害は「性交時に有効な勃起が
て(1)急性発症で一側の全顔面表情筋の完全又
得られないため満足な性交が行なえない状態で、
は不全麻痺、(2)いかなる中枢神経疾患の徴候も
通常性交のチャンスがあっても75%以上で性交が
ない、(3)耳疾患や後頭蓋窩疾患の徴候を欠く、
行なえない場合」(日本性機能学会)と定義され
が挙げられている。(00)
ている。勃起障害は機能性と器質性に大別され、
【変形性膝関節症】変形性膝関節症は中高年に好
機能性は心因性要因によって発症し、器質性は陰
発し、その原因は明らかではないが加齢を基盤と
茎性、神経性、血管性、内分泌性、混合性要因に
した骨・関節軟骨の退行変性の結果とされている。
よって発症する。(03)
変形性膝関節症患者は内反膝で肥満であることが
【ポリモーダル受容器】侵害受容器の一種。機械
多く、関節にかかる異常負荷が軟骨病変の進行に
関与していると推察される。この軟骨の退行変性
刺激、熱刺激、化学刺激(発痛物質)のいずれに
も反応し、全身に広く分布する。(01)
は進行性であり、加齢とともに高度の変化を膝関
【ホール効果様作用】ホール効果は1879年に E.
節にもたらす。典型的な初期症状は動作開始時痛
H. Hall が、一定電流を流している半導体に磁場
であり、病変の進行に伴い歩行時痛や階段昇降時
を掛けた時、電流と直角方向に電圧を発生する現
痛、可動域制限、変形、腫脹、関節周囲筋の萎縮
象。現在、カセットテープレコーダーや CD 等の
などが見られるようになる。また典型的なX線像
直流モータの、磁気センサ素子として広く使われ
では骨棘形成や関節裂隙の狭小化がみられる。
ている。この現象を体内に求めると、血液やイオ
(03)
ンの流れが電流に相当し、気の場を掛けた時に発
生する電圧をホール効果様電圧と呼び、発生した
ほ
電圧で mRNA の変性を行い、DNA の修復を介して、
病状の回復に至ると仮説した作用。この作用から
【膀胱内圧測定:cystometrograms】膀胱内に生
内気をたかめて身体の恒常性が得られる事の解釈
理食塩水もしくは炭酸ガスを注入し、膀胱容量の
ができる。(99)
増大にともなう膀胱内圧の変化を記録するもので、
尿流動態検査の一つである。膀胱内圧は排尿筋だ
ま
けでなく、腹圧が含まれているため、直腸内圧を
同時測定し、膀胱内圧から直腸内圧を減じたもの
【マイクロスフェア法】マイクロスフェアとは、
が排尿筋圧とされる。初発尿意・最大尿意(最大
プラスチックを基剤とするラジオアイソトープ
膀胱容量)、排尿筋圧の測定および無抑制収縮の
(RI)で標識された均一なサイズの微小球体であ
有無を観察する。(02)
【膀胱容量】膀胱容量とは最大尿意を感じる容量
る。現在は直径15μm のマイクロスフェアが一般
的に使用されている。この微小球体を使用するこ
であり、日本人成人の平均は300∼400ml 程度で
とにより各種臓器、組織への血流分布動態を測定
ある。膀胱容量の測定は通常、膀胱内圧測定によっ
する方法をマイクロスフェア法と呼ぶ。近年、マ
て行なわれ、経尿道カテーテルを用いて水あるい
イクロスフェアの表面に有機染料を塗布した非放
は炭酸ガスを注入し、排尿を我慢できる最大尿意
射のものが開発された。(03)
− 190 −
436
キーワード用語解説
【マクギル・メルザック式疼痛問診表】マクギル・
発症する。通常穿頭術により血腫内容を洗浄・除
メルザック式疼痛問診表とは、1975年に Melzack
去する。(03)
により、様々な痛みを有する疾患(分娩なども含
む)の性質を決定するためのアンケートとして作
成された。この問診表は、痛みを感覚的表現、感
み
情的表現、評価的表現、種々雑多な表現(その他
【脈絡膜血流】脈絡膜血流は、網膜と強膜にはさ
の表現)の大きく4つに分類し、各分類はさらに
まれた部分を脈絡膜といい、血管と色素に富んだ
痛みを表現する単語(ひりひりする様な痛み、し
膜用構造の中を流れる血流のことである。眼内循
びれた様な痛みなど)から構成されている。各分
環の90%以上が脈絡膜血管を通過し、網膜の栄養
類において自分の痛みと当てはまる単語の数が痛
や遮光などに働く。最近では、脈絡膜血流を定量
みの評価指数である。また現在の痛みの程度も別
的に測定できる方法としてレーザードップラー眼
の項目として含まれている。本問診表を用いるこ
底血流計が開発され、脈絡膜血流速度と血管径の
とにより、痛みを有する疾患の性質と傾向を見い
計測を組み合わせることにより脈絡膜血流量を算
だすことが可能とされている。(00)
【マクロファージ】単球由来で自然免疫(非特異
出することが可能になった。糖尿病性網膜症など
の血流不全が原因として起こる眼疾患の測定に有
的免疫)反応の中心となる細胞成分のひとつ。異
効とされている。(02)
物を排除する機能(貪食能)を持つだけでなく、
抗原提示細胞(マクロファージ、樹状細胞、ラン
む
ゲルハンス細胞、B細胞)としてリンパ球への抗
原提示を行う。(03)
【無作為化比較試験(RCT)】一般的に臨床研究に
【末梢性鎮痛機構】炎症を起こした組織ではエン
用いられる実験的研究は、実験対象の抽出をラン
ドルフィンやエンケファリンなどの内因性オピオ
ダム化する事で、実験群と対照群の背景因子を同
イドが種々の免疫細胞、T細胞、B細胞、単球、マ
等にし、治療や検査などの介入を実験群に加える
クロファージで産生される。そこに種々の刺激が
加わると、これらの細胞から内因性オピオイドが
ことによって、介入(治療・検査)の効果のみを明ら
かにすることができる。 このような研究手法を
放出され、放出されたオピオイドが末梢神経に存
randomized controlled trial あるいは randomi-
在するオピオイド受容体に結合し、末梢からの侵
zed clinical trial(RCT)、無作為対照試験とい
害入力をブロックする。このような機構を末梢性
う。母集団から標本を抽出して調査を行う際、母
鎮痛機構と言う。(03)
集団の構成単位に通し番号をつけ、乱数表などを
【慢性関節リウマチ】日本リウマチ学会は、第46
用いて標本を抽出する方法が用いられる。(00)
回日本リウマチ学会総会(2002年4月23日)にお
【無嗅覚症】無嗅覚を臨床的に分類すると、呼吸
いて、診断名である“慢性関節リウマチ”を“関
性嗅覚障害・末梢性嗅覚障害・混合性嗅覚障害・
節リウマチ”に変更した。関節リウマチの項を参
中枢性嗅覚障害がある。呼吸性嗅覚障害は、嗅素
照。(03)
【慢性硬膜下血腫】頭蓋内血腫の一型で、硬膜下
が嗅裂の閉鎖のために嗅上皮に到達しない状態で
一般的に副鼻腔炎とかアレルギー性鼻炎などによっ
に徐々に血液が貯留してきた状態をいう。急性と
て起こる。末梢性嗅覚障害は嗅細胞の障害による
は異なり必ずしも外傷に基づくものではないが、
もので副鼻腔炎、ウイルス感染、老人性変性など
受傷3週から数ヶ月経過してから頭痛などの慢性
による。混合性嗅覚障害は呼吸性嗅覚障害と末梢
頭蓋内圧亢進症状、時に片麻痺、精神症状などを
性嗅覚障害が合併した場合におこり、中枢性嗅覚
437
− 191 −
キーワード用語解説
障害は嗅球およびそれよりの中枢で障害される。
や
これは、頭部外傷、腫瘍、発育障害、加齢による
ものや機能的にはヒステリー、神経衰弱でも起こ
【夜間頻尿】夜間頻尿とは「夜間睡眠中に覚醒し
る。(00)
て2回以上の排尿をすること」とされる。夜間頻
尿は60歳以上の約1/4にみられるとされ、加齢に
め
伴って夜間排尿回数が増加することも報告されて
いる。夜間頻尿の原因として、前立腺肥大症など
【滅菌率】すべての微生物を対象として、それら
による膀胱機能障害、原因疾患のない機能的低容
の殺滅または除去することを滅菌と定義し、それ
量膀胱、多尿、夜間多尿、心理的要因や睡眠障害
ら微生物の総数に対して殺滅または除去できた数
による排尿のための夜間覚醒の5つに大別される。
に対する百分率をいう。(01)
いずれにしても排尿記録によって、排尿時間およ
【メビウス(メビウスの帯)】単側曲面と言われ、
び排尿量を検討することが原因の検索において重
表裏のない曲面。細長い帯をひねって両端を逆さ
要である。(02)
向きに貼付けた形状で、この性質を指摘したメビ
ウスにちなんで呼ばれている。経絡の正経12脈も、
【夜間膀胱容量】正常児の場合は朝起床時の膀胱
容量を、夜尿症児の場合は夜尿をする瞬間の膀胱
表裏・陰陽が自然に移り変わり、あたかもメビウ
容量をさす。正常時と夜尿症児では、昼間の機能
スの帯状に見られることから、 経絡はメビウス
的膀胱容量に有意な差はないが、正常児では夜間
(メビウスの帯)に例えられている。(99)
睡眠時の膀胱容量は昼間の機能的膀胱容量の約
【免疫グロブリン】抗体および、抗体のように反
1.5倍であるのに対して、夜尿症児は約0.7∼0.9
応する抗原が明らかでないがそれに関連した働き
倍と小さいとの報告があり、夜尿症児の睡眠時の
を持つタンパク質の総称。B細胞の分化型である
膀胱容量は、器質的ではなく機能的に小さいと考
形 質細 胞か ら産 生さ れる 。 イム ノグ ロブ リン
えられている。(01)
(Immunoglobulin)とも称し、「Ig」と略される。構
【夜尿症】夜尿とは夜間睡眠中に無意識に排尿を
造や働きの違いから、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM
に大別される。(01)
きたす現象である。この現象は、膀胱に尿をため
る排尿機構と覚醒させる睡眠機構がうまく結びつ
かないことにより起こるとされ、排尿機構と睡眠
も
機構のどちらかに原因があると考えられている。
(03)
【問題解決型学習】問題解決型学習とは、大教室
における一斉講義に代表される知識伝達教育の対
ゆ
極にある。すなわち、教員中心の授業ではなく、
学生が主体的に運営する学習の場である。知識そ
【有害事象】全日本鍼灸学会研究部安全性検討委
のものの修得よりも、自分に必要な知識や技術を
員会の報告では、「有害事象とは臨床上発生した
自発的に修得するプロセスが重要であり、自己学
習能力の育成こそが第一義的な目的とされる教育
事故や過誤、副作用など鍼灸臨床上の有害とされ
る出来事」としている。なお、折鍼、気胸、感染、
技法である (01)。
神経障害、灸による火傷などは「治療過誤・事故」、
患者の反応が結果として有害であった場合は「副
作用」、水銀塗布、内臓刺鍼、埋没鍼などは「非
通常の治療行為」とし、3分類を行っている(全
− 192 −
438
キーワード用語解説
日本鍼灸学会雑誌50 (4)680∼718)。(02)
差感染の心配もない。(02)
【ラムゼイ-ハント(ramsay-Hunt)症候群:耳性
よ
帯状ヘルペス】帯状 ヘルペスウイルス(herpes-
ら
zoster oticus)の感染によって出現する顔面神
経麻痺を指し、三叉神経、内耳神経、舌咽神経も
冒される。特徴は外耳道、耳介周囲のヘルペスと
【ライソゾーム】細胞内小器官の一つで、ゴルジ
顔面神経の麻痺で、顔面痛、眩暈、難聴などの神
装置の部分から形成される酸ホスファターゼ活性
経症状も出現する。予後は、Bell 麻痺に比べて
をマーカーとして持つ。ライソゾームは細胞の中
悪い。(00)
に出現した異物や病的産物を溶解して処理する小
体で、ゴルジ装置で合成されたばかりのものを、
り
一次ライソゾームと呼び、異物などを処理する過
程にあるライソゾームを二次ライソゾームと呼ぶ。
【理療】理療とは、はり・きゅう・あん摩・マッ
アルツハイマー病患者の脳の神経細胞中にはこれ
が増加するという。(99)
サージ・指圧などの施術を主要な治療手段とする
臨床医学で、健康保持と増進、疾病の予防、治療
【ライター症候群:Reiter's Syndrome】1916年
ならびにリハビリテーションを行う行為の総称。
に Hans Reiter により報告された症候群。関節
整形外科をはじめ各科の領域、スポーツ医学、老
炎、尿道炎、結膜炎の3徴に加えて、亀頭炎、手
年医学、産業医学、美容などの分野に広がってい
掌、足底の膿漏性皮膚角化症などを特徴とする。
る。(03)
本邦ではまれな疾患で原因不明であるが、男性に
【流産】流産とは、妊娠22週未満で妊娠が中絶さ
多く、HLA-B27 陽性頻度は 63-76%と高い。関節
れた状態を言い、自然流産、人工流産(=人工妊
炎は、膝関節、足関節をはじめ、仙腸関節や脊椎
娠中絶)がある。(03)
にも認められることがあり、非ステロイド抗炎症
【硫酸アトロピン】自律神経遮断薬の一つで、ア
薬が治療の中心となる。(02)
【ラウドネスバランステスト】耳鳴の大きさを客
セチルコリン受容体の拮抗薬の一つ。副交感神経
のムスカリン様作用を遮断する。(99)
観的に評価するテストである。検査はピッチマッ
【量子力学】ニュートン力学を変革させた理論で、
チテストで得られた周波数の音を用いる。検査音
光や原子のミクロの世界の力学として、アインシュ
を聞かせる耳は原則として耳鳴側とするが、耳鳴
タインが提唱した理論。この理論は、分子の結合
側の聴力が高度に障害されている場合は反対側で
や固体内での電子、原子核や素粒子等のふるまい
検査をする。検査は聴力閾値から 5dB ステップ
を明らかにした。現在、生体を構成している細胞
で上昇・下降を繰り返し、耳鳴の大きさとバラン
やDNA、時空の力学への適用等が試みられている。
スする強さを耳鳴のラウドネスとする。また耳鳴
(99)
周波数がバンドノイズもしくはホワイトノイズで
【リンパ球芽球化反応】リンパ球にマイトゲンや
あった場合はその聴力閾値を測定する。(02)
【ラビング法】擦式法とも呼ばれる手指の消毒方
抗原を加えて培養すると,リンパ球が増殖反応を
起こし,形態的に大型化し芽球状になる反応をい
法のこと。手指を石鹸や手洗い用消毒液などでよ
う。培養液中に加えた3H(トリチウム)チミジ
く洗ってから、乾燥性擦式消毒液を手に受け、皮
ンの取り込みによって測定することが出来るが、
膚に擦り込むようにして消毒する。タオルの手拭
インターロイキン2が主役を果たしている。マイ
きやエアタオルなどによる乾燥を必要とせず、交
トゲンとしては、T細胞刺激としてはフィトヘマ
439
− 193 −
キーワード用語解説
グルチニン(PHA)、コンカナバリンA(Con-A)、
ノー病)と言い、後者の場合を二次性レイノー症
B細胞刺激としてはグラム陰性菌由来のリポポリ
状(レイノー症候群)と表現している。(02)
サッカライド(LPS)などが良く知られている。
【レーザードップラー眼底血流計】網膜および脈
芽球化反応を鍼灸治療前後で比較することによっ
てリンパ球の反応性がどうなるかを比較すること
絡膜の微小血管にレーザー光を直接照射し、血管
中を流れる赤血球の速度を直接測定する非侵襲的
が出来る。(02)
直接血流法の1つである。測定項目として、網膜
血流・赤血球平均濃度・赤血球平均速度の情報が
る
短時間で得られる一方、眼球を固視することが難
しい患者に対しては、測定不能になる場合が多い。
【累積妊娠率】一定期間内に何人妊娠するかを示
臨床応用としては、一般的に網脈絡膜の血流循環
す数値をいう。(例えば、妊娠する能力がある普
不良が原因とされている緑内障疾患に対して広く
通のカップルが1か月で20%妊娠すると累積妊娠
用いられている。(99)
率0.2と表現される。)不妊治療である体外受精や
【レーザードップラー皮膚血流計】レーザー管よ
人工受精では、治療周期(治療回数)当たりの妊
娠率のことを指しており、治療効果の指標として
り発生したレーザー光が送信ファイバーを介して
生体組織に照射される。静止組織に反射されたも
いる。(03)
のは周波数変調をきたさず受信ファイバーに戻っ
【ルーステスト:Roos's test】3分間上肢挙上負
てくるが、組織内の運動粒子に反射されたものは
荷試験のこと。胸郭出口症候群の診断テストであ
ドップラー効果を受け周波数変調をきたして受信
る。Adoson テスト、Wright テスト、鎖骨圧迫テ
される。レーザードップラー皮膚血流計は組織内
ストなどの脈管圧迫テストは正常者にも陽性が多
での周波数変動が主に赤血球の早さならびに数の
いことから、Roos は胸郭出口症候群の診断にこ
変動によって生じることを利用して血流変化を求
のテストを行うことを推奨している。方法は被検
めるもので、血流の方向性に関係なく測定される
者は座位で両上肢を90度外転させ、その肢位を保
という特徴がある。(03)
持しながら手指を開いたり、握ったりの動作を3
分間続けさせる。胸郭出口症候群の患者では、上
【レフ値】レフ値は、レフラクトメーター(光標
が被験眼の眼底に結像したか否かを他覚的に判定
肢のだるさ、痛み、しびれなどのために3分間の
し、眼の屈折度を測定する装置)により得られる
持続が困難で途中で中止せざるを得ないか、耐え
値で、眼の屈折度をあらわす。(00)
られてもかなりの苦痛を訴える。(01)
【攣縮性斜頸】ジストニアの一種で痙性斜頚とも
いう。胸鎖乳突筋、僧帽筋などの頚の筋肉が意志
れ
に反して収縮し、頭部の異常運動や位置異常を呈
する。大脳基底核や副神経の異常を主な原因とす
【レイノー症状(現象)】発作性に四肢末梢に乏血
る神経疾患と考えられている。しかしながら、心
を起こし、皮膚の蒼白やチアノーゼをきたし、冷
理的な要因が重要な位置を占める患者も存在し、
感・疼痛を訴え、回復すると逆に充血や発赤が起
こる現象を、レイノー症状あるいはレイノー現象
心療内科的な治療で症状の改善を認めることもあ
る。障害された筋肉と攣縮の程度により、頭の向
(Raynaud's phenomenon)と定義している。レイ
く方向と顔面の向く方向が決まり、頭部が左右ど
ノー症状(現象)を起こすものには、原因不明のも
ちらかへ回転し、顔面が上方か水平を向いている
のと、何らかの明らかな原疾患に起因するものと
ことが多い。タイプとしては、比較的持続的なジ
がある。前者の場合を一次性レイノー症状(レイ
ストニア型と、不規則な斜頚運動を繰り返すチッ
− 194 −
440
キーワード用語解説
ク型がり、特徴的なことは、睡眠中にはこの異常
の全般的な評価を多く含んでいる点である。(02)
運動が消失する。発症年齢は20∼40歳代に多く、
【ACTH】adrenocorticotropic hormone (副腎皮
男女差はない。(02)
質刺激ホルモン)の略。アミノ酸39個からなるポ
リペプチドで、 下垂体で産生分泌されるが、 脳
(弓状核底部と周辺領域)、副腎、消化管、膵、甲状腺、
ろ
胎盤などにも存在し、ストレス誘発鎮痛を引き起
【ロール・プレイング】ロール・プレイングとは、
こすストレスホルモンとしても作用する。(00)
実際の場面を想定し、さまざまな役割を演じさせ
【 AIMS-2 】 arthritis
impact
measurement
て、問題の解決法を会得させる体験学習法である。
scales, version2 の 略 。 関 節 リ ウ マ チ の QOL
医療教育では、医療者役、患者役による医療面接
(quality of life)の標準測定法の一つである改
や身体診察などのロールプレイングが行われてい
訂版 AIMS の日本語版。改版された AIMS は初版
る。(01)
の9尺度(移動能・歩行能・手指機能・身辺機能・
家事遂行能・社交・痛み・緊張・不安)に上肢の
わ
機能・仕事遂行能・社会的支援を加えた12尺度よ
り成り、新たに健康状態への満足度・障害の疾患
【ワゴスチグミン:Vagostigmin】副交感神経興
起因度・障害の改善優先度に関する質問を備えて
奮剤。シナプス間隙に放出されたアセチルコリン
いる。(00)
の分解を抑制し、副交感神経興奮様作用を示すコ
【AMI】経絡機能測定器のこと。皮膚の二箇所に
リンエステラーゼ阻害剤。(99)
電極を置き、3V の DC 電圧を炬形波で負荷すると、
初めの一瞬に大きな電流が流れ、直後に電流が減
ん
少し始め、約 300μsec 前後で減少が止まり、一
定の電流値(最小電流値)を示す。経絡機能の診
ローマ字順
(A−Z)
断には、始めの一瞬に流れる大きな電流量(BP
【ACR・コア・セット】関節リウマチ(RA)の薬
値、BP 値の項を参照)を指標にする。(99)
【API】ankle pressure index の略。下肢の血圧
効評価法としてアメリカ・リウマチ協会(ACR)
を意味する場合と、下肢と上肢収縮期血圧の比率
が作成した評価基準。 コアセットとは、RA の臨
を意味する場合がある。臨床的には後者の意味を
床評価に最低限必要な項目を定めたものであり(1)
一般に指している。下肢の収縮期血圧を上肢の収
疼痛関節数 、(2) 腫脹関節数、(3) 患者による
縮期血圧で除して API 値を算出し、この値が0.8
疼痛の評価、(4) 患者による全般的活動性の評価、
未満の場合には下肢の動脈閉塞が強く疑われる。
(5) 医師による全般的活動性の評価、(6) 患者に
(99)
よる運動機能の評価、(7) 血沈 CRP の値、(8)
【BLAST】NCBI(米国バイオテクノロジー情報セ
レントゲン所見の8項目でリウマチの活動性の評
ンター)で公開しているゲノム情報を中心とする
価を行う。(1)と(2)の項目で20%以上の改善があ
り、(3)∼(7)のうち、3項目で20%以上の改善が
バイオ情報の検索システムのこと。文献情報と塩
基の配列情報などを以下のホームページアドレス
認めれる場合、「ACR 基準20%の改善ありと判定
で入手することができる。
され る。 (3)∼(5) は Visual analogue scale を
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)(01)
用いて判定する。このコアセットに特徴的なこと
【BMI】body mass index の略。 和訳では体格指
は、患者自身および医師による主観的なRA活動性
数という。体重(kg)÷身長(m 2)=BMI(kg/m2 )で求
441
− 195 −
キーワード用語解説
められる。日本肥満学会で定めた肥満を判定する
情報を限りなく全て含んでいるいわばcDNAの図書
指数で体脂肪量とよく相関する。日本人ではBMI
館であり、一つの cDNA が一冊の書物に例えるこ
22(正確には22.2)が最も有病率が少ないことが
とができる。(00)
判明しているので、有病率の最も少ない理想体重
は身長(m2)×22で算出される。(99)
【c-Fos】c-Fos (或いは c-Fos 遺伝子) は、 刺
激に より早期に一過性に転 写が活性化され Fos
【BP値】before polarization current の略。皮
蛋白を産生し、同様に産生された Jun 蛋白と結
膚に直流通電を行った際に、表皮基底膜の上下に
合し、これが標的遺伝子(その細胞が産生する物
分極が生じる前に真皮結合織多水層内を流れる大
質の遺伝子)の調整領域(AP-1 結合部位)に結
電流である。BP 値は経絡の虚実を反映する値と
合して転写調節因子として働く遺伝子の1つであ
して用いられている。(99)
る。 よって Fos 蛋白がどこで発現しているかを
【CCK】コレシストキニンの項を参照。(03)
調べることにより刺激に反応するニューロンを可
【CCT:controlled clinical trial】比較臨床試
視化することができ、Fos 陽性細胞の数を数えた
験。RCT(rondomized controlled trial:ランダ
り蛋白量を測定することにより、刺激の定量的解
ム化比較試験)では、医学的介入群(鍼灸治療群
等)と対照群を割り付ける際に、乱数表やコンピュー
析が可能になる。(00)
【CMCT】central motor conduction time(中枢
タ演算によるランダムな順序を用いるのに対し、
運動伝導時間)の略。大脳皮質運動野から脊髄ま
CCTでは、生年月日、曜日、カルテ番号などの準
での運動神経伝導時間。(01)
ランダム割付(quasi-rondomization)を用いる。
【CRF】corticotropin-releasing factor (副腎
エビデンスの力としては RCT のメタアナリシス、
皮質刺激ホルモン放出ホルモン)の略。ACTH の
RCT、CCT の順で強い。(03)
分泌を調節する視床下部ホルモンで、視床下部室
【CD4】白血球の機能分化に伴って発現する膜分
傍核に存在し、下垂体−門脈系に分泌され、下垂
子(膜抗原)のひとつ。リンパ球の場合、細胞性
体前葉細胞の ACTH 分泌を刺激する。(02)
免疫機能の亢進や抗体産生を増強させる「ヘルパー
【CRP:C-reactive protein test(C反応性蛋 白
機能」をもつT細胞(ヘルパーT 細胞)を識別
するマーカーとなる。ヘルパーT 細胞の CD4 は
試験)】ヒト血清中に存在し、肺炎双球菌菌体多
糖類(C 物質)に反応し、結合する C 反応性蛋白
HIV(エイズウイルス)感染のターゲット分子で
を検出する試験。C 反応性蛋白は、肺炎菌感染症以
あるが、最近、艾の含有成分でもあるジカフェオ
外にも多くの炎症性疾患や体内組織の壊死などの
イルキナ酸が CD4 と直接結合して HIV の感染を
急性期に出現し、これらの疾患の変化や重傷度の
阻害したり、その複製過程を阻害することが報告
判定に有用である。急性期反応物質の代表的なも
され、注目されている。(99)
のであり、日常臨床検査によく用いられる。(02)
【cDNAライブラリー】真核生物の機能は様々な蛋
【 differential
白分子の相互作用により調節されているが、この
display(DD)法は、1992年 Liang と Pardee(Sci
蛋白分子に関する情報は染色体上の遺伝子に刻み
ence、257、p967-971 掲載)により開発され、異
込まれており、そこから伝令 RNA(mRNA)が転写
され、蛋白分子が翻訳され、その後、様々な修飾
なる条件下の細胞の発現している poly(A)tail
をもつ mRNA の差異を簡単に見つけられる方法と
を受けて、最終的に機能的な蛋白分子が作り出さ
して、近年注目されている。一般に、高等生物の
display 法 】 differential
れる 。 cDNA とは mRNA を鋳型 とした 相補 的 DNA
細胞中には約15000種の転写物が発現していると
(complementaly DNA)であり、cDNA ライブラリー
いわれており、それらの転写物を、アンカープラ
は、ある組織、あるいは細胞が発現している遺伝
イマーとなる oligo(dT)プライマーで逆転写後、
− 196 −
442
キーワード用語解説
種々の任意プライマーと組み合わせて PCR で増
(02)
幅し、ポリアクリルアミド電気泳動のバンドパター
【EBM】evidence based medicine(エビデンス・
ンを検体間で比較する。特異的なバンドを見つけ
ベースド・メディスン)の略。1996年に Sackett
だし、これを手掛かりに特異的遺伝子を同定する。
従来、組織特異的な発現を示す遺伝子のクローニ
らによって紹介された概念で、「証拠に基づいた
医学」と訳されている。その定義は、「個々の患
ングにはサブトラクション法などが用いられてき
者の診療について決定をくだすために、最新で最
たが、DD 法では2種類以上のサンプルを同時に比
良の証拠(evidence)を、良く考えて誰からも納
較できることや発現量の非常に少ない遺伝子でも
得できるように、うまく利用すること」とされて
検出可能である点が優れている。(99)
いる。実際には、信頼性の高い最新の文献などに
【DNIC】diffuse noxious inhibitory controls
基づいて患者にとって最も適切な医療を行うこと
(広汎性侵害抑制調節)の略。脊髄後角あるいは
を意味する。(00)
三叉神経脊髄路核にある痛みを伝達する侵害受容
【EEG:electroencephalogram】いわゆる脳波の
ニューロンの興奮性反応(侵害性入力)が、全身
こと。活動している脳の電気変動を脳波計にて増
の皮膚、筋、内臓などに加えられた侵害刺激(機
械、熱、化学刺激)によって抑制されるという現
幅記録したもの。通常は頭皮上に配置した電極よ
り記録し、律動的な波形を示す。また、その律動
象である。鍼の手技による侵害受容ニューロンの
性よりδ波(∼4Hz)、θ波(4∼8Hz)、α波(8∼13
抑制と DNIC の時間経過が類似していることから、
Hz)、β波(13∼30Hz)などに分けられる。(01)
両者の機序に共通するものがあることが指摘され
【ELISA】enzyme-linked immunosorbent assay の
ている。(99)
略。酵素免疫測定法のこと。抗原抗体反応を利用
【dry score 表:ドライ・スコア】本スコア表は、
し、定量的に抗体やペプチド、ハプテンなどを測
シェーグレン病調査研究班:シェーグレン病診断
定する方法である。最も広く普及している方法と
基準、厚生省特定疾患シェーグレン病調査研究班
しては、抗原(測定したい物質)対する特異抗体
研究業績(1978)の診断基準の内、特にその参考
を予め測定用プレートに塗布しておいたところに
事項をもとに作成され、埼玉医科大学小俣・鈴木
等が口腔乾燥や眼球乾燥等の自覚症状評価の為に
(固層化)、抗原(測定したい抗原が含まれる液性の
サンプル、血清など)を加え、さらに発色用酵素を
考案した。(実際の評価方法は、乾燥症状の強度
標識した特異抗体を加えて抗原抗体反応を起こさ
を0∼4点に分け眼・口・鼻等についてそれぞれ点
せる。反応を起こさなかった余分な抗体を除いた
数 化し、 合 計点が 高い ほど 強度 が高 くな る。)
後、酵素を基質により発色させ、その色素濃度を
(01)
抗原量として検出するという方法。(01)
【E波】左心拡張時の左心室内への血液流入は、
【Fontaine 分類】閉塞性動脈硬化症や、バージャー
拡張早期の急速流入と拡張後期の心房収縮による
病などの慢性動脈閉塞疾患における臨床症状から
流入に分けられ、パルスドプラ法で描出される波
の重症度分類。Ⅰ度は冷感・しびれ・色調の変化、
形では、 各々、E 波(early filling phase)と A
Ⅱ度は間歇性跛行、Ⅲ度は安静時痛、Ⅳ度は潰瘍、
波(atrial contraction phase)に表される。拡
張 早 期 の 急 速 流 入 を 示 す E 波 は R 波 (rapid
壊死に分類される。臨床的にもよく用いられてい
る分類法である。(02)
filling phase)と称されることもある。また、
【ESR:erythrocyte sedimentation rate】赤血
急速流入および心房収縮による流入の Peak 速度
球沈降速度(赤沈)。抗凝固剤を加えた血液をガ
の比 A/E(あるいは A/R)は左室拡張動態の指標と
ラス管に入れて立て、赤血球が沈む速度を測定す
して用いられる。(関連用語:パルスドプラ法)
るもの。1918年スウェーデンの Fahraeus の創案
443
− 197 −
キーワード用語解説
による検査法で、現在も汎用されている。赤沈を
立っているかを知ることができる。そして演算方
促進させる因子としてはフィブリノーゲン増加、
法を短縮した解法を用いたものが、高速フーリエ
グロブリン増加、赤血球の高度減少(貧血)など
変換である。(02)
があり、遅延させる因子としては、アルブミン増
加、胆汁酸増加、水分増加、赤血球の増加(多血
【fMRI】functional magnetic resonance image
の略。磁気共鳴画像法(MRI)を利用した機能的
症)などがある。炎症性疾患や悪性腫瘍、妊娠、
画像法。現在は脳神経系への応用が主流である。
膠原病などで増加し、真性赤血球増加症などで遅
脳活動に伴う局所血流変化を MRI 画像上の信号
延する。(02)
変化としてとらえ、脳賦活部位を間接的に測定し、
【Euro-Qol】「ユーロ・クォル」と発音する。主
画像化する方法。 fMRI は、 同様の脳機能画像法
に欧州で普及している健康調査票で、対象者の健
である PET に比較し、放射性同位元素などは使
康状態に加え社会的地位や学歴などの質問項目を
用しないため被爆の問題はない。(01)
含む。とくに健康状態については移動能力や自己
【freezing type】五十肩の原因の大半は腱板の
管理能力、活動能力、痛み、不安などの5項目に
退行性変化を基盤とした肩峰下滑液包炎であり、
ついて3段階で評価し、回答の組み合わせによっ
て−0.594(最低)から+1(最高)の間で得点を
残りは上腕二頭筋長頭腱炎である。両者とも初期
は滑液包内および腱鞘内の癒着がほとんどなく運
与え 数値化 した HRQOL ス コア (health-related
動障害は疼痛による muscle spasm と考えられ、
quality of life スコア、健康関連 QOL スコア)
この時期が freezing type である。(00)
として表している。また、0から100までの目盛を
【frozen type】五十肩の病態で freezing type
つけた縦型の直線スケールを用い、対象自身の主
の病状が進み、滑液包の癒着が進むと拘縮がおこ
観による健康状態についても評価できる。(01)
り、この時期が frozen type である。(00)
【F波】末梢混合神経に強い電気刺激(M 波の最
【GDS】geriatric depression scal の略。 高齢
大の反応を得る以上の強さでの刺激)を行うと、
者の情緒(うつ状態)に関する評価表である。5
H 反射と同じ潜時の活動電位が出現する。これを
点以上が軽度うつ状態、10点以上が高度うつ状態
F波という。α運動線維の逆行性インパルスによ
り引き起こされる運動細胞の発火であり、刺激部
とされている。(00)
【GOT、GPT】グルタミン酸オキザロ酢酸トランス
位より近位のα運動線維の伝導速度の測定に用い
ア ミ ナ ー ゼ (glutamic
られる。(01)
aminase : GOT) は心筋、 肝臓、腎臓などあ らゆ
【FFD:finger-floor distance】指床間距離のこ
る組織中に、グルタミン酸ピルビン酸トランスア
と。膝を曲げないようにして、体幹を前屈させ、
ミ ナ ー ゼ (glutamic pyruvic transaminase :
下垂した指先と床および台の距離をメジャーで測
GPT)は肝細胞に特異的に存在するトランスアミ
定する。床まで届かない場合をマイナスで評価す
ナーゼであり、細胞が傷害されると血液中に逸脱
る。ハムストリングの短縮や腰背筋の緊張がある
し、高値となる。 正常値は、GOT : 5∼30 IU/l、
とマイナスになる。(01)
GPT : 0∼25 IU/l、また、GOT/GPT>1 である。急
【FFT】fast Fourier transformation(高速フー
リエ変換)の略。フーリエ変換とは、フランスの
性肝炎では、500単位以上となり、慢性肝炎や脂
肪肝などでは50∼300の中等度上昇を示す。また、
数学者フーリエが発見したフーリエ積分を利用し、
アルコール性肝炎や肝硬変を除くほとんどの肝疾
時間領域を周波数領域に変換する公式のこと。こ
患では GOT/GPT<1 となるが、肝以外の臓器傷害
れにより、解析したい波形(音波や脳波など)が
では GOT/GPT>1 となる。(関連用語:トラ ンス
どのような周波数と振幅を持つ波形の合成で成り
アミナーゼ)(02)
oxaloacetic
trans-
− 198 −
444
キーワード用語解説
【 HAD 尺 度 】 HAD 尺 度 (hospital anxiety and
引き起こすことができる。とくにコレステロール
depression scale)は、身体疾患を有する患者の
を含まない高フルクトース食(コレステロールフ
精神症状(抑うつと不安)を測定する自己記入式
リー)を与えることで、肝臓でのコレステロール
質問票として1983年に Zigmond らが開発したも
ので、世界的に汎用されている。(02)
やトリグリセリドの合成促進を中心とした内因性
高脂血症のモデル動物を作成できる。(00)
【HBs 抗原、 HBs 抗体】B型肝炎ウィルス (HBV)
【HPLC】high pressure liquid chromatography
は直径27nm の芯 (core)とそれをとりまく外被
(高圧液体クロマトグラフィ)の略。液体を移動
からなる直径42nm の球形粒子である。HBs 抗原
相とし、個体または個体に保持された液体の固体
とは、 外被における抗原であり、 HBs 抗体とは
相との間の物質の分配の差を利用したクロマトグ
HBs 抗原に対する抗体で、HBV の中和抗体である。
ラフィ。(クロマトグラフィ:試料混合物から各
血中マーカーの意義としては、HBs 抗原が陽性で
成分を分離する方法)(01)
あれば、現在 HBV に感染している事を表す。ま
【 ICAM-1】intercellular adhesion molecule-1
た、HBs 抗体陽性であれば、既往に HBV に感染が
の略。生体内で細胞間(intercellular)の接着
あることを示している。HBs 抗体陽性者は HBV に
再感染することはない。(02)
現象を調節する接着分子 (adhesion molecule)
のひとつ。ある種のリンパ球やマクロファージの
【HCV-RNA】C型肝炎ウィルス(HCV)の核酸で、
膜表面に発現して抗原情報の提示などの免疫細胞
一本鎖の RNA である。すなわち HCV の遺伝形質
応答に関わるほか、炎症時には血管内皮細胞や上
の担体であり同時に伝達体である。HCV 感染後ま
皮にも発現することが知られている。リンパ節の
もなく HCV-RNA が血中に出現し、肝炎発症後や
高内皮細静脈の膜表面にも強く発現しており、リ
や 遅 れ て HCV 抗 体 が 出 現 す る 。 し た が っ て
ンパ球の血管外遊走を誘導する分子として重要な
HCV-RNA 定性試験は HCV 感染の早期且つ直接的診
役割を担う。(99)
断に用いられる。同時に一過性感染と持続感染の
【IFN-γ】IFN-γは、NK(ナチュラルキラー)細
鑑別にも有用である。(00)
胞や抗原刺激を受けた1型ヘルパーT細胞(Th1 細
【HDS-R】Hasegawa's dementia scale(改訂長谷
川式簡易知能評価スケール)の略。痴呆のスクリー
胞)が産生するサイトカインである。このサイト
カインの機能として、(1) MHC クラスⅠ抗原やク
ニングテストであり MMSE などの他のテストと比
ラスⅡ抗原の発現の上昇、(2) マクロファージの
較すると見当識や記名力の項目が多いのが特徴で
活性化、 (3) 細胞傷害性 T 細胞(Tc 細胞)賦活
ある。そのため簡便で短時間で行えるため我が国
性化、(4) NK 細胞の活性化、 などが知られてい
では広く使用されてる。最高得点は30点であり、
る。(03)
20点以下の場合は痴呆を疑う。(99)
【IgA腎症】軽度の蛋白尿と持続性の顕微鏡的血
【HE(hematoxylin eosin)染色】HE染色とは、
尿を主症状とし、ネフローゼ症候群などを呈さず、
細胞核および軟骨は青く、他の組織成分はいろい
非常に緩慢な経過をとる腎炎の中で、腎生検を行
ろの濃さの紅色に染まり筋線維や結合組織などの
いその組織中に IgA が認められるものをいう。
濃淡の染めわけが可能な染色法である。切片内に
ある情報が過不足なく染め出され、単純ではある
IgA 腎症は日本においての原発性慢性糸球体腎炎
の中の30∼40%を占めており、10 歳代後半から 40
が情報量の最も多い染色法である。(01)
歳までの成人に多い。 また、男女比は 3 ∼ 6 : 1
【HFD】high fructose diet の略。肝で脂質が合
である。(01)
成される過程で必要とされるフルクトースを多く
【IgE】immunoglobulin E (免疫グロブリン E)
含む食事をラットに与えることにより高脂血症を
の略。免疫グロブリンの一つのクラスで半減期は
445
− 199 −
キーワード用語解説
2∼3日。気道、消化管の粘膜下の形質細胞から産
反応過程を指す。関連する語句として、「生体内
生され、その Fc 部分を介して好塩基球・肥満細
で」を意味する「in vivo(イン・ビボ)」や「本
胞と結合し、アレルゲンとの反応によってケミカ
来の位置で」を意味する「in situ(イン・サイ
ルメディエーターを遊離しⅠ型アレルギー反応を
惹起させる。Ⅰ型アレルギー反応に密接に関係を
チュ)」などがある。(99)
【JAVA】1995年に Sun Microsystems 社が発表し
有するのが IgE である。(01)
たネットワークを意識したオブジェクト指向プロ
【IgG】immunoglobulin G(免疫グロブリン G)
グラミング言語。機種や OS(operating system)
の略。免疫グロブリンのクラスの1つで半減期は
に依存しない動作環境を持ち、インターネット・
約3週間。免疫グロブリンの5つのクラスの中で、
ブラウザ上で動作させることも出来る。最近では
最も量的に多く存在しており、血清や組織に平均
ホームページの装飾に留まらず、ネットワーク経
して分布している。主に二次免疫応答で主要な役
由でデータベースを使用するプログラム等もある。
割を果たしており、体内に侵入してきた細菌の表
(00)
面に結合し補体型の活性化と好中球の食菌作用を
【JOAスコア】腰痛疾患治療成績判定基準のこと。
助けたり、細菌の産生する毒素を中和する中和抗
体として働いている。(01)
この判定基準は日本整形外科学会(JOA)が腰痛
疾患全般(椎間板ヘルニア、分離・すべり症、脊
【IL-1】マクロファージをはじめとする多種多様
柱管狭窄症など)に応用可能な案として作成した
の細胞から産生される糖蛋白の一つで、主な作用
ものである.次の項目について得点数をもって判
はヘルパー T 細胞からの IL-2 産生の誘導で、こ
定する。Ⅰ.自覚症状に関して3項目、各3点、計
の IL-2 を介して T 細胞の分化・増殖を促進する。
9点。Ⅱ.他覚所見に関して3項目、各2点、計6点。
免疫担当細胞ばかりでなく、様々な臓器に対して
Ⅲ.日常生活動作に関して7項目、各2点、計14点。
も働き、脳に作用して発熱や徐波睡眠を誘発し、
その他膀胱機能、満足度、精神状態などを参考に
ACTH の分泌を促進したり、肝細胞に働いて、急
する。(日本整形外科学会誌60 (3) 1986 参照)
性期反応蛋白(CRP、フィブリノーゲンなど)の
(99)
産生を促し、滑膜細胞を刺激してコラゲナーゼや
プロスタグランジンの産生、線維芽細胞に作用し、
【LAN】local area network の略。コンピュータ
同士を接続し、お互いの持つハードディスクやプ
増殖を促進する。局所の炎症反応や創傷治癒に関
リンタなどを共有して利用する技術。1つのフロ
与すると考えられている。(02)
アや建物内など、 比較的限られたエリアに設置
【IMC】interdigestive
myoelectric
complex
されているコンピュータと、プリンタなどの周辺
(空腹期強収縮運動)の略。消化管運動は空腹期
機器を相互に接続し、各機器やファイルの共有な
と食後期の運動に分けられる。空腹期においては
どを行えるようにするシステム。(00)
周期的に出現し、 肛門側に伝播する強収縮波群
【LSB:long spike bursts】消化管平滑筋細胞は
(IMC)が存在し、phase1∼4の4つのステージに分
消化管の各部位に固有のリズムで脱分極を繰り返
類される。ヒトやイヌにおいては、この周期が約
している。これを electrical control activity
100分とされている。(99)
【in vitro】「イン・ビトロ」と読み、もともと
(ECA) と呼ぶが、 この ECA だけでは収縮運動は
起こらず、ECA とバースト状の活動電位が同時に
は「試験管内で」を意味するラテン語。生命科学
発生した時にのみ収縮運動が発生する。この収縮
分野において、生体の一部を細胞・組織培養系や
を発生させる電気活動の中で結腸に特有の周期的
試験管内などの人工環境下で再構築して機能解析
に出現する電気活動が LSB(long spike bursts)
の研究対象とする場合に、その実験系、あるいは
と呼ばれる。(03)
− 200 −
446
キーワード用語解説
【M波】末梢混合神経を電気刺激する事で得られ
【motion sickness】いわゆる動揺病のことで、
る筋電図波形。混合神経を電気刺激すると、両方
乗り物酔いもこれに含まれる。実験的には視覚性
向性に活動電位が発生するが、M 波は運動神経で
の動揺病を誘発することが可能であり、これは黒
生じた遠心性活動電位で生じる、支配筋肉の非反
射性の活動電位で、H 波と比べて潜時が短く、閾
と白の縦ストライブを一定速度で被験者に注視さ
すことで引き起こすことができる。視覚性動揺病
値が高いのが特徴である。(01)
の こと を optokinetic motion sickness と英 訳
【MEP】motor evoked potential(運動誘発電位)
する。(02)
の略。ヒトに随意運動を何回も行わせ、運動を開
【
始する時点に合わせて頭皮上より記録される脳波
tetrahydro pyridine の略。実験動物に投与する
を加算平均すると、運動開始以前から運動直後ま
ことで、パーキンソン病の動物モデルを作製でき
での間にいくつかの電位が記録される。これを運
ること等が知られている。(00)
動誘発電位という。(01)
【MRI】magnetic resonance image(磁気共鳴画
【microneurography】タングステンなどの金属微
像)の略。一定の磁場の中に生体を置き、一定の
小電極を用いてヒトの末梢神経からインパルス活
動を測定する電気生理学的検査法である。本法に
電磁波を照射し、生体内の水素原子に核磁気共鳴
を起こし、得られる体内の水分布と水素の化学的
よりヒトの骨格筋、皮膚などからの感覚神経線維
結合状態についての情報から構成される人体の断
のインパルス活動や骨格筋と皮膚を支配する交感
層画像。(99)
神経節後遠心線維の活動を測定することができる。
【 NCBI 】 National center for biotechnology
従来の自律神経機能検査の多くが効果器活動から
information(米国バイオテクノロジー情報セン
間接的に自律神経機能を評価する方法であったの
ター)のこと。生命科学に関する各種の情報を公
に対し、本法はヒトの交感神経活動を直接的に評
開 し て い る 。(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)
価できるという利点がある。(03)
(01)
【 MML 】 医 療 情 報 交 換 規 約 (medical markup
【NK細胞活性】ナチュラルキラー(NK)細胞はあ
language)のこと。異なる医療機関(電子カルテ
システム)の間で、診療データを正しく交換する
る種の標的細胞(腫瘍細胞やウイルス感染細胞)
を非特異的に認識して傷害する。通常、標的細胞
為に考えられた規格。次世代のインターネット標
を51Crで標識し、その 51Cr の細胞外遊離から活
準 言 語 と 言 わ れ る 、 XML (eXtensive Markup
性を測定し、NK 細胞活性とする。(00)
Language)技術に基づいて開発され、多数の電子
【NNT】治療必要数(number needed to treat)
カルテシステムの多様性を保証した上で、他の施
のこと 。近年、evidence-based medicine (EBM :
設と整合性を保った形でのデータ交換が可能とな
根拠に基づいた医療)を行うために、臨床研究に
る。(00)
おいて、治療効果を表現する指標のひとつとして
【MMSE】mini mental state examination の略。
用いられている。1例の発症を防ぐために何例治
痴呆のスクリーニングテストであり HDS-R と比
療する必要があるかを計算した値。NNT=4の場合
較すると見当識や記名力のみでなく言語性ならび
に動作性検査から構成されているため、やや時間
は、4人治療すればそのうちの1人は発症しないと
いう治療効果の程度を意味している。NNT の値は
がかかかり、特別な検査用紙が必要である。しか
小さいほど治療効果が高いことを示している。
し国際的に広く使用されている。最高得点は30点
【OSCE】通常、オスキーと発音する。objective
であり、23点以下の場合は痴呆(認知傷害)を疑
structured clinical examination の 略 。 OSCE
う。(99)
とは、客観的臨床能力試験といわれ臨床能力を客
MPT P
】
1-methy l-4-pheny l-1,2,3,6-
447
− 201 −
キーワード用語解説
観的に評価する方法である。OSCE では、身体診
する能力・身体的快不快の程度といわれている。
察、医療面接などのいくつかのステーションと呼
ホスピスでは、宗教的な要素・家族との死別の問
ばれる部屋が用意され、それぞれの臨床能力を評
題などが加わり、患者の置かれている状況で要素
価するための課題が用意されている。そのなかで
も医療面接などの認知領域、精神運動領域、情意
も変化する。(01)
【RAST】radioallergosorbent test の略。 特 定
領域の評価法としては画期的な方法である。教育
のアレルゲンに対する特異的IgE抗体を測定し病
のなかでは、評価結果をフィードバックして能力
因アレルゲンを検索するラジオイムノアッセイ。
を向上させる形成的評価と評定尺度に従って評価
測定結果を5段階に分類し(RAST スコアー0、1、
する定量的評価が可能である。(01)
2、3、4)、RAST スコアーが2、3、4が陽性、1を
【PMCT】peripheral motor conduction time(末
疑陽性、0を陰性と判定する。(01)
梢運動伝導時間)の略。脊髄から筋までの運動神
【RBC:red blood cell(赤血球)】血液の細胞成
経伝導時間。(01)
分のひとつ。血液容量の約半分を占め、酸素およ
【 POS 】 問 題 志 向 型 診 療 シ ス テ ム (problem
び炭酸ガスの運搬を主な機能とする。ポルフィリ
oriented system)のこと。患者が持っている医
療上の問題点を1つ1つ具体的に取り上げ、問題点
ンを配位した2価鉄と、それを担う蛋白質(グロ
ビン)からなるヘモグロビン分子を大量に含むた
ごとに対応(病態把握、治療方針、患者教育など)
め赤色を呈する。平均直径7.2∼7.8μm、平均厚
する系統的方法をいう。個々の症状を対症的に検
径1.7∼2.2μm。成人では骨髄で産生され、ヒト
討するのではなく、患者全体像の中で個々の症状
の循環血液中の平均寿命は約120日である。(02)
について検討を行い、診断、治療方法を決定して
【RIST】radioimmunosorbent test(ラジオイム
いく。1. 問題リスト
3. 診断計画
ノソルベント試験) の略。総 IgE の測定に用い
6. 経 過 記 録
るラジオイムノアッセイの方法。(注)ラジオイム
(SOAP)7. 退院時要約の項目で構成される。(02)
ノアッセイとは放射免疫測定法と言い、 125I の放
【prostatodynia】下部尿路に異常がなく、 前立
射性同位元素を用いて、抗原抗体反応を利用し物
腺の細菌感染が証明されない男性で排尿時痛、下
腹部痛、会陰部痛といった前立腺炎類似症状を訴
資の微量測定法を行うこと。(01)
【RSD】reflex sympathetic dystrophy(反射性
える患者の症状をいい、前立腺症あるいは前立腺
交感神経ジストロフィー)の略。外傷による軽度
痛ともよばれる。これまで原因について明確な定
の神経損傷を契機として生じるとされるが、発症
義がなされていなかったが、近年、渡辺らによっ
機序は明らかではない。世界疼痛学会(IASP)で
て prostatodynia 患者 の多くに骨盤 内静脈血流
は complex regional pain syndromes(CRPS) と
のうっ滞を示唆する所見の存在が明らかにされた。
して分類されている。CRPS とは、局所Ⅰに起こっ
(00)
た損傷に引き続いて発症する 疼痛性の病態であ
【QOL】quality of life の略。QOL とは、「生命
り、通常の創傷治癒の経過を越えて続き、運動機
の質」または「生活の質」を意味する。すなわち
能の減退を伴い時間とともにさまざまに進行する
医療側からみた身体所見、検査所見などの客観的
な面からだけでなく、患者側からみた自覚的な身
症候群をいう。(00)
【RT-PCR】DNA 分子の特定領域を指数関数的に増
体症状、さらに精神的、心理的、社会的活動など
幅する方法を PCR(polymerase chain reaction)
を含めた総合的な活力、生きがい、満足度などを
という。RT-PCR は PCR 反応を行う前に、逆転写
意味する。QOL の構成要素の基本は、日常生活活
酵 素 (reverse transcriptase) を 用 いて mRNA
動などの作業能力・心理的状態・人間関係を維持
を cDNA に置き換え、これを鋳型として DNA を増
4. 治 療 計 画
2. 初期計画
5. 教 育 計 画
− 202 −
448
キーワード用語解説
幅する方法である。Nothern blot(RNA blot)法
(spontaneously hypertensive rat:SHR)から選
では検出不可能な極微量の mRNA の発現を解析し
択交配によって分離された近交系であり、SHR 同
たいときに有効な方法の一つである。(02)
様人為的処置なしに加齢と共に高血圧を発症(そ
【 SDS-PAGE 】 sodium
dodecyl
sulfate
polyacrylamide gel electrophoresis の略。ドデ
の程度は SHR に比べ重症) し、全例が脳血管障
害をおこすので、脳血管障害を自然に発症する唯
シル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気
一のモデル動物として世界で広く用いられている。
泳動法のこと。主に蛋白質単量体の分子量を決定
(01)
する為に用いられる方法である。まず分子量既知
【 SSMS 】 subjective
の蛋白質の電気泳動度を測定し基準検量線を作成
sickness の略。動揺病(motion sickness)に関
する。次ぎに測定したい分子量未知の蛋白質の電
する患者自身の訴えから、その症状の程度を評価
気泳動度を基準検量線と照らし合わせて、そこか
するための方法。通常は評価用紙が用いられてい
ら分子量を決定する。(01)
る。(02)
【SFR】sympathetic flow response (交感神経
【SSP】silver spike point の略。経皮的電気刺激
性皮膚血流反応)の略。SFR は血管収縮神経活動
が精神的刺激、覚醒刺激や肺胞拡張性刺激に反応
法(transcutaneous electrical nerve stimulation : TENS)の一つとして臨床応用されている。
してバースト発射されることを応用した検査で、
また、 この SSP 療法は低周波表面ツボ療法とし
測定方法としてリアルタイムに皮膚血流変化が観
て大阪医科大学麻酔科兵頭正義氏によって考案さ
察できるレーザードップラー血流計などが用いら
れたものである。(01)
れる。通常の検査では誘発刺激として深呼吸負荷、
【SSR】SSR (交感神経性発汗反応)は精神性・
音刺激、痛み刺激、冷水負荷などが用いられ、こ
情動性ストレスによる精神性・情動性発汗と触覚
れらの誘発刺激に対する血流減少率を評価する。
刺激や深吸気刺激などの求心性刺激による体性交
本法は血管収縮神経活動の機能を間接的に測定で
感神経反射性発汗を換気カプセル法を利用した発
きる簡便な検査方法である。(03)
汗計(局所発汗量連続記録装置)によって連続測
【SGB】stellate ganglionblock(星状神経節ブ
ロック)の略。星状神経節ブロックの項を参照。
定すると、手掌足底領域で観察されるスパイク状
の発汗波を指す。定量的分析として波形面積を指
(99)
標した発汗量や最大発汗速度などが評価される。
【sham 鍼 (偽鍼)】sham とは偽物、 見せかけ等
本法の臨床応用として発汗障害のスクリーニング
の意味で、sham 鍼とは実際には鍼を身体に刺入
や発汗運動神経機能の評価に用いられる。(03)
せず、刺入したふりをして、実際に刺入した場合
【 TEAS 】 transcutaneous electrical acupunc-
との治療効果の差を明確にするための比較研究に
ture
point
symptom
stimulation
of
の 略 で
motion
TENS
利用される。鍼治療における臨床研究のレベルを
(transcutaneous electrical nerve stimulation
飛躍的に向上させることにおいては非常に有用と
: 経皮的神経電気刺激)を経穴に用いた時に使用
思われるが、一方で接触鍼との言葉の差を明確に
する言葉であり、経皮的経穴電気刺激の略である。
することが難しく、sham 鍼(偽鍼)という言葉
そのものに議論のあるところである。(01)
(99)
【 TENS 】 transcutaneous
【 SHRSP 】 脳卒 中 易発 症 ラ ット (stroke-prone
stimulation の略。経皮的神経電気刺激と訳され
spontaneously hypertensive rat:SHRSP)は高
る。表面電極を用いて通電刺激を行い治療に応用
血圧および脳血管障害の自然発症モデルラットで
する手法。臨床的には鎮痛効果をはじめ、筋ポン
あ る 。 SHRSP は 自 然 発 症 高 血 圧 ラ ッ ト
プ作用の促進、皮膚潰瘍周囲の微小循環や四肢末
electrical
nerve
449
− 203 −
キーワード用語解説
梢の血流改善、廃用性筋萎縮に対する筋力訓練な
と鍼の安全性、の2節からなる。このガイドライ
ど広く活用されている。(99)
ンの和訳は、全日本鍼灸学会雑誌50巻3号に報告
【Th1 細胞、 Th2 細胞】T 細胞は免疫機構をつか
されている。(02)
さどるリンパ球の一種である。Th1 細胞と Th2 細
胞はいずれも CD4 抗原をもつ T 細胞に含まれる。
【X-energy】これ は X-ray の故事に 倣い、存 在
なり作用が判っていながら、その実態が不明な、
Th1 細胞は炎症性 T 細胞と呼ばれ、IFN-γ、IL-2
と言う意味で命名した。特に、「気」と表現する
といったサイトカインを産生してキラー T細胞や
と実に多概念が含まれ、鍼灸の作用機序としての
マクロファージに作用し、これを活性化したり
「気」に限定されない面が危惧された。初出は第4
IgG 抗体を産生させたりする。一方、Th2 細胞は、
回世界鍼灸学会の、花輪貞良の Poster session
いわゆるヘルパー T 細胞と呼ばれるもので、IL4、
であり、それは次の様に表示された。I
5、6、10、13 を介して B 細胞に働きかけて IgE
like to call it
抗体産生を行わせる。また、Th1細胞と Th2 細胞
after
は各々が産生するサイトカインによって互いに拮
【Xenon CT】キセノン(Xenon)CT は主として脳
抗し、過剰な免疫反応を抑制している。(01)
【Transcranial doppler】経頭蓋ドップラー血流
血 流 の 測 定 に 使 用 さ れ、 高 精 度 の CT 装 置 に
Xenon ガスの供給装置が必要となる。吸気により
計のこと。経頭蓋的に超音波ドップラー法を用い
肺から吸収された Xenon ガスは、 血液を介して
て脳血流(局所的な脳循環)を測定する。側頭部
脳に達する。Xenon ガスは神経組織に多い脂肪成
より中大脳動脈領域の血流測定がよく行われる。
分に溶解しやすく、CT 画像で造影効果があり脳
(02)
血流量を反映する画像を測定することが出来る。
【VAS】visual analogue scale の略。視覚的ア
この方法では、原理的に脳血流量を求めることが
ナログ尺度と訳され、痛みなどを客観的に評価す
出来る。(01)
"X-Energy"
would
by naming
it
"X-ray".(99)
るために無痛から最強の苦痛までの表現を0から1
00mm の線上に表示する方法。(99)
ギリシャ字、数字
【VR1】トウガラシの主成分であるカプサイシン
の受容体で、熱や酸などの痛刺激に対して反応す
【α運動ニューロン】神経線維には、軸索の直径
る。(侵害性熱受容体の項目を参照)(02)
の太い順に、また興奮伝導速度の速い順にA線維、
【WBC:white blood cell, leukocyte(白血球)
B線維、C線維の3種類に分類され、A線維はα、β、
】赤血球、血小板とともに末梢血中にみられる血
γ、δに分類される。α運動ニューロンは脊髄の
球のひとつ。生後は主として骨髄で産生される幹
前角に始まり、運動に関する全ての神経情報(筋
細胞由来の血球で、大きく骨髄系とリンパ系に分
肉の収縮等)に関与する。(01)
けられる。前者はさらに顆粒球(好中球、好酸球、
【β-エンドルフィン】内因性オピエイトペプタ
好塩基球) と単球に分けられる。正常では総数
イドの一つであり、下垂体前葉、中葉、視床下部、
3
4,500 ∼ 9,500 個/mm で、種々の生理的、病理的
中脳、副腎髄質、精巣、卵巣、胎盤、膵臓、腸管
条件下で変化する。(02)
【WHOガイド ライン】 1999年に 、 世界保 健機関
にβ-エンドルフィン様物質が分布する。β-エン
ドルフィンは鎮痛作用をはじめB細胞の抗体産生
(World Health Organization : WHO) は 「鍼の基
能を増加、単球、好中球の走化因子作用を有する。
礎教 育と 安全 性に 関する ガイ ドラ イン Guide-
(00)
lines
in
【3、5-ジカフェオイルキナ酸】キナ酸に2分子の
acupuncture 」を定めた。内容は、鍼の基礎教育
カフェオイル基が結合して形成されるカフェタン
on
basic
training
and
safety
− 204 −
450
キーワード用語解説
ニン(ポリフェノール類)の一種。ヨモギや艾に
【4分割バランサー】足底圧を左右前後に配置さ
おける含有比は比較的高い。薬理学的に脂質過酸
れた4つのセンサーにより測定し,重心と体重に
化抑制やラジカル除去作用、肥満細胞によるヒス
占める各部位の圧を%に換算し表示する装置。20
タミン遊離の抑制効果などが認められている。施
灸後、灸痕からタール成分として皮下浸透するこ
秒間の連続測定が可能で,その間のバランスや重
心の経時的変動を動画として記録することもでき
とが推測されることから、灸治療にみる抗菌、抗
る。(02)
炎症作用などに関与する有効成分のひとつと考え
【17-OHCS】17-ヒドロキシコルチコイドの略。副
られている。(99)
腎皮質ホルモンの分解産物でストレスによりその
尿中値が上昇する。(99)
【17-KS】17-ケトステロイドの略。男性ホルモン
の分解産物でストレスによりその尿中値が上昇す
る。(99)
抄録集キーワード用語解説にあたって
年々学会発表は専門的になり、聞き慣れない用語が飛びかうようになりました。そこで学術部では、
少しでも発表が聞き易く、分かりやすいものになればと思い、現代医学及び科学分野のキーワード用
語の解説を企画しました。用語解説に当たっては、発表者或いは関連領域を専門とする先生方のご理
解と協力を得ました。ここに心から感謝申し上げます。なお、用語の解説上における諸問題はすべて
学術部事務局の責任であります。
付記:各項目の末端に記した(**)は、その用語解説を行った年号を示しています。(03)は2003年の略
で、今回の大会で用いられている用語です。1999年度から2002年度までに編集した用語も発表を聞く
上で役立つことと思い、掲載しています。
編集:(社)全日本鍼灸学会学術部事務局
尾崎昭弘(学術部部長)
北小路博司(副部長)、福田文彦、今井賢治、本城久司、新原寿志
(編集協力者:伊藤和憲、関戸玲奈)
451
− 205 −
キーワード索引
キーワード
Scaption …………………… 97
医療保険 ……………………123
2相性パターン …………… 149
3,5-ジカフェオイルキナ酸
SF-36 …………………152,153
SFR …………………………… 87
医療面接 …………………93,94
色識別 ………………………126
…………………………… 154
sham鍼 ……………………… 144
インターネット …………… 89
ab initio 遺伝発見プログラム
SSNA ………………………… 87
運動誘発電位 ………………132
…………………………… 155
SSP療法 …………………… 104
易 …………………………… 80
Agscop DT …………………… 83
SSR …………………………… 87
エストロゲン ………………140
AIG1遺伝子 ………………… 155
TCD ………………………… 156
遠位経穴刺激 ………………102
ART ………………………… 134
VAS ……………95,98,121,145
円皮針 ………………………106
BOFCOORT …………………… 86
visual analogue scale…… 144
円皮鍼 ……………104,105,108
CCK ………………………… 107
www …………………………… 89
血 ………………………… 80
ELISA ……………………… 140
evidence-based …………… 81
μオピオイド受容体 ……… 141
温灸 …………………………137
音声 …………………………126
FFD …………………………… 98
【あ】
音声スペクトル ……………126
F波 ………………………… 132
悪性腫瘍 …………………… 117
音声認識 …………………… 90
habituation ………………… 87
足三里 ……………………… 105
温冷刺激 …………………… 86
HBV ………………………… 120
足臨泣 ……………………… 95
お灸 …………………………115
HCV ………………………… 120
圧痛閾値 …………………… 95
お灸の手引き ………………150
IFN-γ ……………………… 154
圧痛点 ……………………… 128
お灸の友 ……………………150
IIEF5 ……………………… 110
圧痛 ………………………… 146
iNOS ………………………… 153
圧脈波 ……………………… 125
【か】
JOAスコア ………… 90,98,145
LSB ………………………… 107
アトピー性皮膚炎 ……113,113
アレルギー ………………… 83
介護者 ………………………123
外傷 ………………………… 99
microneurography ………… 87
アロマセラピー …………… 133
外傷性気胸 …………………122
MRI検査 …………………… 118
アンケート ……………87,122
外側部 ……………………… 85
M波 ………………………… 132
アンケート調査
回腸運動 ……………………107
nested-PCR ………………… 120
………………88,94,95,148
解答方法 …………………… 91
OSCE ………………………93,93
安全深度 …………………… 122
開発 ……………………92,125
Paul Nogier ………………… 83
安全性 ……………………… 122
開腹外科手術 ………………106
PMPD ………………………… 124
あん摩鍼灸教育 …………… 92
化学療法 ……………………115
POMS短縮版 ………………… 152
胃運動 ……………………… 111
過活動膀胱 …………… 108,110
QOL ………………… 98,114,152
QOL障害 …………………… 116
意識調査 …………………… 123
痛み ……………………117,143
顎関節症 ……………………147
学生の積極性 ……………… 95
RCT(ランダム化比較試験)
胃電図 …………………108,111
覚醒下 ………………………110
…………………………… 104
イメージ …………………… 123
確率密度関数 ………………156
R-R間隔 …………………… 128
癒し ………………………… 117
過酸化脂質 …………………133
RT-PCR ……………………… 154
医療経済 …………………… 152
下肢阻血ラット ……………130
− 206 −
( 452 )
キーワード索引
加速度脈波 ………………… 86
灸療法 …………………97,119
高血圧自然発症ラット ……141
肩関節周囲炎 ……………… 97
胸郭出口症候群 …………… 96
膏肓穴 ………………………122
肩こり ………88,124,144,148
業者 ………………………… 122
高校生 ………………………148
肩凝り ……………………… 101
硬さ ………………………… 101
筋血流量 …………………… 130
筋硬結 ……………………… 100
合谷 …………………………156
拘縮 ………………………… 97
片麻痺 ……………………… 119
近赤外線分光法 …………… 85
拘束ストレス ………………158
活動報告 …………………… 151
近赤外分光法 ……………… 85
高齢者 ………………… 123,124
過敏性腸症候群 …………… 106
筋痛 ………………………… 104
高齢不妊 ……………………134
カラードプラ法 …………… 109
筋ポリモーダル受容器 …… 143
抗老化作用 …………………133
カラゲニン ………………… 141
筋膜 ………………………… 100
五官 …………………………125
簡易鍼 ……………………… 88
空腸運動
………………… 107
五臓 …………………………125
肝硬変症 …………………… 112
空腹時血糖値 ……………… 112
骨壊死 ………………………102
患者の実態調査 …………… 149
屈曲反射 …………………… 131
コミュニケーション技法 … 94
関衝 ………………………… 132
癌性疼痛 …………………… 117
黒野式全身調整基本穴 …… 112
経穴 ………………… 81,82,83
コルク製コースター ………150
コレシストキニン …………142
肝性脳症 …………………… 112
頸肩のこり ………………… 146
コンディショニング
間接灸 ……………………… 130
脛骨叩打テスト …………… 102
関節構成要素 ……………… 97
脛骨内側顆骨壊死症 ……… 102
関節リウマチ ……………… 114
経頭蓋磁気刺激 …………… 132
【さ】
関節可動域テスト ………… 97
経皮的通電刺激 …………… 131
サ−モグラフィ …………… 96
感染対策 …………………… 121
経皮的末梢神経電気刺激 … 144
サーモグラム ………………118
完全長cDNA ………………… 155
頸部ジストニア
………… 120
再生 …………………………129
感染防止 …………………… 121
頸部圧痛 …………………… 95
在宅ケア ……………………123
低周波鍼通電療法 ………… 100
顔面神経麻痺 ……………… 150
頚部痛 ……………………… 114
経絡経穴 …………………… 146
坐骨神経痛 …………………100
左右圧 ……………………… 81
顔面のしびれ ……………… 145
血圧 ………84,86,129,133,141
産業衛生 ……………………152
気 …………………………… 83
血液像 ……………………… 114
産婦人科疾患 ………………147
記憶 ………………………… 143
血液透析 …………………… 126
視覚障害教育 ……………… 93
機械刺激 …………………… 143
血液量 ……………………… 85
自覚症状 ……………………134
気管支喘息 ………………… 113
血診 ………………………… 84
子宮点 ………………………138
企業内鍼治療 ……………… 151
血中アンモニア値 ………… 112
時系列分析 …………………116
起始停止部 ………………… 100
結腸運動 …………………… 107
時系列分析法 ……………… 89
技術教育 …………………… 94
血糖値 ……………………… 111
四肢 …………………………127
技術評価 …………………… 151
機能障害 …………………… 116
血流 ……………………85,133
健康関連 …………………… 152
四肢択一問題 ……………… 91
四象 ………………………… 80
基本周波数 ………………… 126
健康関連QOL ……………… 153
視床下部-下垂体-副腎皮質系
灸 …………………………… 92
健康相談 …………………… 147
……………………………139
急性頚部痛 ………………… 96
健康チェック表 …135,135,149
刺鍼 …………………………121
灸治療 ……………………… 148
交感神経系 ………………… 139
刺鍼手技 …………………… 85
…………………103,104,105
453
− 207 −
キーワード索引
刺鍼深度 …………………… 99
鍼灸受療経験 ……………… 88
舌診 …………………………126
自宅施灸 …………………… 116
鍼灸臨床 …………………… 94
セロトニン ………157,158,158
実験条件 …………………… 91
鍼灸治療
セロトニン:5-HT …………100
実習教育 …………………… 123
実習中の事故 ……………… 92
86,106,113,123,123,124
129,134,136,136,137,137
線形・非線形解析 …………156
喘息 …………………………115
実態分析 …………………… 150
146
喘息兪 ………………………115
失眠穴 ……………………… 148
鍼口 ………………………… 81
前立腺肥大症 ………………109
自転車競技 ………………… 103
診察法 ……………………… 81
蔵書検索 …………………… 89
子宮内膜改善率 …………… 134
人中診法 …………………… 81
僧帽筋 ……………………… 85
尺骨神経 …………………… 131
心電図R-R間 ……………… 127
掻痒・枯燥評価表 …………114
シャム鍼 …………………… 105
振動 ………………………… 146
即時効果 ……………………146
習慣流産 …………………… 137
振動誘発指屈曲反射 ……… 131
組織Hb濃度 …………………156
重症度判定 ………………… 135
心拍出量 …………………… 128
速乾性消毒剤 ………………121
手技別 ……………………… 128
授業評価 …………………94,95
心拍変動スペクトル解析 … 128
腎兪 ………………………… 86
卒業試験 …………………… 93
【た】
手技療法 …………………… 152
腎兪-委中・承山・飛陽・崑崙
体位変化 ……………………128
手術侵襲 …………………… 139
…………………………… 102
大学院教育 ………………… 90
術後腸管機能 ……………… 106
数値スケール ……………… 88
太極 ………………………… 80
受療経験 …………………… 87
ステロイド離脱 …………… 113
太極療法 ……………………116
循環系自律神経機能 ……… 128
ストレプトゾトシン(STZ)
太極療法(黒野式全身調整基
瞬時心拍数 ………………… 127
…………………………… 112
本穴) ………………………111
症型分類 …………………… 147
スポーツ選手 ……………… 104
体型 …………………………122
少商 ………………………… 132
スポーツ鍼灸 ……97,103,105
苔色 …………………………126
証判断 ……………………… 126
小腹急結 …………………… 80
生活習慣病 ………………… 116
井穴 ………………………… 132
代謝 ………………………… 83
代替医療 ……………………117
触圧刺激 …………………… 156
生児獲得率 ……………136,137
大腸癌 ………………………116
職業性ストレス簡易調査 … 152
生殖器機能 ………………… 138
対話型 ……………………… 90
触診 ………………………… 101
精神的ストレス …………… 101
他覚的身体所見 ……………134
書痙 ………………………… 119
成績 ………………………… 91
脱毛 …………………………113
自律神経 ………… 86,129,132
正中神経 …………………… 131
チーム医療 ……………89,117
自律神経系 ………………… 139
正答率 ……………………… 91
知覚神経 ……………………139
視力回復 …………………… 146
生物フォトン発光 ………… 82
置鍼 …………………………146
鍼感 ………………………… 82
性ホルモン ………………… 140
中医文献システマティック・
鍼灸 ………………… 91,94,152
鍼灸医療 …………………… 151
脊髄スライス ……………… 154
脊髄反射 …………………… 127
レビュー …………………… 81
中央部 ……………………… 85
鍼灸院通院患者 …………… 151
脊髄分節性鎮痛 …………… 142
超音波 ………………………109
鍼灸学博士 ………………… 90
脊椎圧迫骨折 ……………… 99
超音波画像 …………………124
鍼灸技術研修 ……………… 89
施灸温度 …………………… 92
超音波画像診断装置 ………155
鍼灸高等教育機関 ………… 90
舌色 ………………………… 126
腸管 …………………………139
− 208 −
( 454 )
キーワード索引
調査 ……………… 90,122,151
【な】
143,155,156
直接灸 ……………………… 130
内因性抗鎮痛機構 ………… 142
鍼治療 …96,96,97,99,101,103
直流 ………………………… 129
内関 ………………………… 128
104,105,106,108,109,110
鎮痛 ………………………… 140
痛覚閾値 …………………… 140
内因性鎮痛 ………………… 142
内臓 ………………………… 127
111,112,114,114,115,117
119,120,133,145,147,150
痛覚過敏 …………………… 141
難経 ………………………… 125
153
通電鍼刺激 ………………… 142
難治性不妊症 ……………… 134
鍼鎮痛 ……………131,141,142
手洗い ……………………… 121
偽鍼 ………………………… 96
鍼通電 ………………… 139,144
低周波鍼通電刺激 ………… 129
尿失禁 ……………………… 108
鍼通電刺激 ………107,107,130
鍼 ………………………… 99
尿噴流 ……………………… 109
141,154,158
定量評価 …………………… 143
妊娠 ………………………… 137
反転法 ………………………106
電気温熱 …………………… 146
妊娠クール数 ……………… 136
ハンドリングストレス ……157
電気灸 ……………………… 118
妊娠群 ……………………… 135
反応点 ………………… 127,138
電気鍼 ……………………… 142
電子温灸器治療 …………… 117
妊娠方法 …………………… 136
ネットワーク ……………… 147
反復流産 ……………………136
皮下組織 ……………………101
電子カルテ ………………… 90
熱流量 ……………………… 86
鼻腔内腫瘍 …………………145
電話相談 …………………… 147
脳血管障害 ………………… 119
非経穴 ……………………… 82
瞳孔反射 …………………… 133
脳梗塞 ……………………… 119
微細形態 ……………………130
橈骨神経 …………………… 131
脳梗塞後遺症 ……………… 118
脾細胞 ………………………154
橈骨動脈 …………………… 124
脳梗塞モデル ……………… 110
膝疾患 ………………………148
橈骨動脈波 ………………… 83
脳循環 …………………155,156
皮脂欠乏症 …………………114
橈骨動脈拍動部 …………… 125
脳脊髄液 …………………… 107
非侵襲的施術 ………………105
動作分析 ………………119,120
脳内モノアミン …………… 158
非妊娠群 ……………………135
頭鍼療法(焦順発) ……… 118
糖尿病カルテ ……………… 111
脳の血流量 ………………… 157
脳波 ………………………… 156
響き感覚 ……………………131
皮膚 …………………………130
糖尿病性神経障害 ………… 110
脳報償系 ………………158,158
皮膚温 …………………86,118
透熱灸 ……………………… 143
皮膚接触鍼法 ……………… 99
動物実験 …………………… 91
【は】
皮膚通電抵抗 ……………… 86
東洋医学的観点 …………… 119
肺癌 ………………………… 115
病院勤務看護師 …………… 88
ドーゼ ……………………… 82
賠償責任保険 ……………… 92
評価 ………………… 92,93,93
ドーパミン ………………… 157
パソコン ………………92,151
標準化 ……………………… 82
得気 ………………………… 82
八卦 ………………………… 80
不育症 ………………… 136,137
糖尿病 ……………111,111,112
白血球 …………………114,132
風邪 …………………………138
ドパミン …………………… 158
トライアスロン …………… 104
発光強度 …………………… 82
パッチクランプ …………… 154
風池 …………………………155
フォトン …………………… 83
トリガーポイント治療 …… 98
鍼 ……………85,110,113,122
副交感神経系 ………………105
トレーニング ……………… 104
127,144,152
副作用 ………………………115
貪食能 ……………………… 153
鍼経験の有無 ……………… 95
腹診 …………………………125
鍼刺激 …109,127,128,128,139
腹水 …………………………112
455
− 209 −
キーワード索引
腹痛 ………………………… 106
脉診 ………………………… 81
レーザードプラー血流計 … 96
腹部外科手術後 …………… 108
脈診トレーニング法 ……… 124
連続施灸刺激 ………………157
浮腫 ……………………119,148
脈拍 ………………………… 129
老人保健施設 ………………124
婦人科疾患 ………………… 80
付着細菌 …………………… 121
迷走神経 …………………… 107
メール相談 ………………… 147
ローラー鍼(擦過鍼) ……103
六祖脈 ……………………… 84
不定愁訴 …………116,135,149
めまい ……………………… 146
肋骨 …………………………122
不定愁訴指数 ……………… 135
免疫系 ……………………… 141
論文博士 …………………… 90
不妊症 …………………135,136
免疫抑制 …………………… 139
不妊歴 ……………………… 136
モルヒネ …………………… 142
プラセボ効果 …………96,144
【わ】
私のカルテ …………………150
ブラッドフォード末梢血液評
【や】
価システム ………………… 84
夜尿症 ……………………… 113
プロトピック軟膏 ………… 113
有害事象 …………………… 137
文献 ………………………… 91
聞診 ………………………… 126
ユーザーインターフェース
…………………………… 90
米国における生薬治療 …… 149
指サック …………………… 121
米国における鍼治療 ……… 149
要因 ………………………… 148
ペインクリニック ………… 150
要介護者 …………………… 123
ヘモグロビンA1C ………… 111
腰痛 ……98,101,102,103,124
変形性膝関節症 …………… 102
137,145
弁証 ………………………… 84
ヨット競技 ………………… 103
便通異常 ………………105,106
ラット ……… 107,110,112,130
放射性マイクロスフィアー法
140,142,154
…………………………… 130
望診 ………………………… 81
【ら】
補瀉 ………………………… 81
卵巣摘出 …………………… 140
勃起障害 …………………… 110
卵巣点 ……………………… 138
ボランティア施灸 ………… 150
ランダム化比較試験 ……… 144
ランダム化臨床比較試験 … 145
【ま】
流産率 …………………136,137
マイクロダイアリシス法 … 157
両儀 ………………………… 80
マクロファージ ………139,153
良質な医療 ………………… 151
麻酔ラット ………………… 141
両側慢性硬膜下血腫 ……… 118
末梢血液像 ………………… 84
末梢神経 …………………… 129
良導絡チャート …………… 149
理療 ………………………… 87
慢性灸刺激 ………………… 158
臨床実習 …………………92,93
慢性腰痛 …………………… 98
臨床能力 …………………… 94
脉状診 ……………………… 84
累積妊娠率 ………………… 134
脈診 ………………… 83,84,125
ルーステスト ……………… 96
− 210 −
456
演者索引(敬称略)
【あ】
井上基浩 …………………………………… 104,129
會川義寛 …………………………………………125
今井賢治
會澤重勝
……74,105,108,111,127,130,144,147
…………………………… 49,69,92,125
岩田治郎 …………………………………………134
青田忠洋 …………………………………………137
赤尾清剛 …………………………………………65
岩昌 宏 ………………………………105,106,107
上郷樹夫 …………………………………………115
秋元恵実 ……………………………………133,143
植田英子 ………………………………………88,88
秋山聡子 …………………………………………155
上田至宏 …………………………………………154
浅香
上馬場和夫 ………………………………… 139,156
隆 ………………………………117,145,150
浅野貴之
………………………………93,128,146
植松佑介 …………………………………………115
阿部洋二郎 ……………………………117,145,150
浮村
天貝
理 …………………………………………108
均 …………………………………………144
内田さえ
………………………………………… 72
新井千枝子 ……………………………117,145,150
内田靖之
……………………………………91,154
有馬靖子
…………………………………………54
靫矢哲生 …………………………………………127
有馬義貴 …………………………………………101
安藤文紀 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥91
楳田高士 ……………………………69,91,120,121
浦田 繁 ……………………………………74,132
飯塚朋子 ……………………………………119,120
江川雅人 ………………………… 113,115,123,124
飯沼浩江 …………………………………………113
江藤文夫 ………………………………………96,97
五十嵐純 ……………………………………130,154
大市三鈴 …………………………………………120
池園悦太郎
大久保淳子 ………………………………………125
………………………………………83
池田啓二
…………………………………………56
大久保正樹
池藤仁美
…………………………………… 86,129
大沢秀雄 …………………………………… 107,141
……………………………………… 85
石神龍代 …………………………… 84,98,112,145
大嶋小和子
石川慎太郎 ………………………………………103
大田美香 …………………………………………155
石川 亨 ……………………………………… 88,88
石崎直人 …………………………94,106,111,151
大西基代 …………………………………………154
大野修嗣 …………………………………… 117,145
石谷明子 ……………………………………… 88,88
大場雄二
石原克巳 …………………………………………156
大淵千尋 …………………………………………100
井島晴彦
…………………………………… 98,145
大藪秀昭 …………………………………………147
石丸圭荘 ……………………………………141,142
小笠原望 ………………………………………42,43
石丸浩徳 …………………………………………152
岡田
泉
重樹
……………………………………… 55
……………………………………47,102
薫 …………………………………… 140,140
…………………………………………93
岡部博之
………………………………………… 93
磯部秀之 …………………………………………155
小川卓良
………………………………………… 46
市川由美子 ………………………………………108
小川
………………………………………… 86
一の瀬宏 …………………………………97,99,105
伊藤和憲 ………………………………98,102,114
小川裕雄 …………………………………………103
奥野友香 …………………………………………152
伊藤陽一 …………………………………………112
尾崎昭弘 …………………………………… 132,157
稲木雅人
…………………………………………89
尾崎朋文 …………………………………… 100,122
井上悦子
…………………………………………69
小澤庸宏
井上博紀 ……………………………………119,120
小田
一
………………………………………… 96
剛 …………………………………………130
457
− 211 −
演者索引
越智秀樹 …………………………… 69,98,102,114
絹田
章 ……………………………84,98,116,145
尾西恭亮 …………………………………………155
吉備
登
……………………………………91,121
小野公裕 ……………………………………106,111
木村博吉
………………………………………… 58
小比賀黎子 ………………………………97,99,105
小俣 浩 …………………………68,117,145,150
木村研一
木村友昭
………………………………………… 87
………………………………………… 90
木村通郎 ………………………………130,153,154
【か】
木村美保 …………………………………………140
笠原由紀 ………………………………120,153,154
清藤昌平 …………………………………………151
樫葉
久住
均 …………………………………………154
武
………………………………93,128,146
梶間育郎
………………………………………101
沓名勇典 ………………………………135,135,136
粕谷大智
…………………………………66,96,97
栗田昌裕 …………………………………………146
形井秀一 …………………………… 46,92,137,147
栗林恒一 ………………………………120,153,154
片岡泰弘 ………………………………135,135,136
栗山欣彌 ………………………………110,157,158
片山憲史 …………………………………………104
勝又隆弘 …………………………………………92
黒岩共一 ………………………………………… 87
黒野保三 ……………84,98,112,112,143,145,111
勝見泰和
……………………98,102,104,114,129
黒野由利子 ………………………………………128
勝村俊仁
…………………………………………85
桑野素子
………………………………………… 95
加藤幸子 ……………………………………133,143
小糸康治 ………………………………………96,97
加藤豊広 …………………………………………133
小井土善彦 ………………………………………147
加藤
麦 ……………………………………158,158
小岩信義
………………………………93,128,146
金井正博 …………………………………………156
甲田久士
………………………………98,143,145
金子泰久 ……………………………………103,104
香村真由 …………………………………………127
金本貴行 …………………………………………140
古賀義久 …………………………………………146
釜中 明 …………………………………………151
河井正隆 …………………………………………94
小島孝昭
小島賢久
………………………………………… 47
………………………………………… 59
川喜田健司 ……………………………110,140,140
小嶋晃義
………………………… 98,102,104,114
川瀬
小島孝昭
………………………………………… 86
馨 …………………………………………134
河瀬美之 …………………………… 84,98,112,145
小島宗門 …………………………………………108
河村廣定 ……………………………………127,138
古東司朗
河村みゆき ………………………………………138
小林詔司 …………………………………………156
川本正純
………………………………………… 96
…………………………………… 86,129
小林博子 …………………………………… 133,143
岸岡史郎 …………………………………………142
小林美鈴 ………………………………134,136,137
北小路博司
…………69,85,98,102,108,109,109
木南真紀子 ………………………………………156
北出利勝
110,110,113,114,127,144,157
……………………90,104,119,125,126
今田開久 ………………………………………… 99
近藤優子 ………………………………………88,88
北村
…………………………………… 91,121
智
北村清一郎 ………………………………………122
【さ】
木津正義 ………………………………136,136,137
斉藤秀樹
木戸正雄 …………………………………………124
斉藤雅人 …………………………………… 108,109
………………………………………… 85
− 212 −
458
演者索引
酒井茂一 …………………………………………156
曽
炳文 ………………………………………88,88
坂井友実
……………………85,118,123,144,152
外間宏昌 ………………………………………88,88
坂口俊二
…………………………………… 86,129
坂本 歩 ………………………………85,103,104
坂本豊次 …………………………………………122
【た】
高岡 裕
坂本真紀
………………………………93,128,146
高倉伸有 …………………………………………131
咲田雅一 ……105,106,107,108,130,139,141,142
高士将典 …………………………………………117
笹岡知子
…………………………………… 94,144
高田あや …………………………………… 119,120
………………………………………94
高野道代 …………………………………… 101,151
佐々木和郎
……………………………………89,155
佐藤正人 …………………………………………122
高橋
沢崎健太 …………………………………………152
高橋順子 ………………………………134,136,137
塩見真由美 ………………………………………108
高橋則人
………………………………69,123,124
篠原昭二
高松邦彦
……………………………………89,155
……………………46,119,125,126,126
徳 ………………………………………36,37
柴崎正修 …………………………………………114
嶋津秀昭 ……………………………………133,143
鷹峰澄子 …………………………………………114
田口辰樹 …………………………………………139
清水洋二 …………………………………………134
田口裕紀子 ………………………………… 139,156
志村まゆら …………………………………107,141
竹内昭夫 …………………………………………118
下光輝一
…………………………………………85
竹内京子 …………………………………97,99,105
下村壯介
…………………………………………83
竹下文朗
………………………………………… 83
下山一郎 …………………………………………156
武田大輔 …………………………………………154
白石武昌 ………………………47,86,102,124,131
竹田太郎 …………………………………………157
進藤正雄 …………………………………………105
竹田博文 …………………………………………100
新原寿志 ………………………………130,132,157
竹之内三志 ………………………………………149
神 正照
菅原之人
竹村千冬 ………………………………………… 83
伊達敬太郎 ……………………………………88,88
…………………………………………82
…………………………………………60
菅原正秋 …………………………………………153
舘田美保
……………………………………97,105
杉田正道 ……………………………………… 96,97
田中重喜
………………………………………… 82
杉山誠一 ……………………………………143,152
田中法一
……………………………………84,118
鈴木
田中
………………………………………… 91
信 …………………………………………100
博
鈴木俊明 ……………………………………119,120
田中喜浩 …………………………………………118
鈴木
谷口和久
………………………………………… 91
谷口一也
………………………………………… 89
光 …………………………………………112
鈴木裕明
………… 75,134,135,135,136,136,137
鈴木盛夫 …………………………… 61,93,128,146
谷口博志 ………………………………109,110,110
徐 廷徹 …………………………………………119
角谷英治 …………………………………… 69,131
谷 直樹 …………………………………… 133,143
谷万喜子 …………………………………… 119,120
清野充典 ……………………………………… 80,99
玉井弘文 …………………………………………150
関戸玲奈 …………………………………………141
田村隆朗 ………………………………105,106,108
関
田和宗徳
真亮 …………………………………………126
妹尾千鶴子 ………………………………………127
崔
……………………………………85,144
耀燮 …………………………………………119
459
− 213 −
演者索引
鄭
基湖 …………………………………………119
二本松明
宇相 …………………………………………119
野口栄太郎 ………………………………… 107,141
津嘉山洋
………………………………93,128,146
………………………………90,122,144
辻内敬子 …………………………………………147
辻田純三 …………………………………………103
【は】
萩原裕子 …………………………………… 140,140
筒井宏史
…………………………………… 47,102
箱嶌大昭 …………………………………………100
浩幸 ………………………………123,124,149
服部輝男 ……………………………84,98,112,145
鶴
手塚清恵 ……………………………………109,109
花輪貞良
………………………………………… 81
寺沢宗典 ……………………………………123,124
浜岡隆文
………………………………………… 85
土肥康子
…………………………………………99
半田美香子 ………………………………………121
東郷俊宏
…………………………………………45
久島達也 …………………………………… 139,156
東家一雄
…………………………51,130,153,154
七堂利幸
………………………………………… 69
時田茂生 …………………………………………149
平川稚佳子 ………………………………………131
徳竹忠司 …………………………………………121
所 数樹 ………………………………93,128,146
平澤泰介 ………………………………………… 90
廣瀬賢一 ………………………………117,145,150
戸田静男
…………………………………… 80,154
深澤洋滋 …………………………………………142
豊 ………………………………117,145,150
福井和佳子 ………………………………………111
土肥
冨田賢一 …………………………109,109,110,110
福田文彦
豊田陽子 …………………………………………118
藤井良平 …………………………………………118
………………………… 95,151,157,158
藤岡正志 ………………………………117,145,150
【な】
藤田麻里 …………………………………………148
中沢和美 …………………………………………134
舟崎
中城基雄
…………………………………………84
古田高征 …………………………………………103
仲西宏元 …………………………………………52
中西博文 …………………………………………106
古屋英治 …………………………………… 103,104
北條達也 ………………………… 98,102,114,129
長野
仁
隆
………………………………………… 93
…………………………………………53
星野良和 …………………………………………100
仲原泉子 …………………………………………132
北國善太 ………………………………135,135,136
中村高行 ……………………………………… 84,98
堀
茂 ……………………………84,98,112,145
中村弘典 ………………………84,98,111,112,145
堀
紀子 …………………………………………151
中村吉伸 …………………………………………157
堀場久司 …………………………………………104
中吉隆之
…………………………………… 86,129
本城久司 ……………………108,109,109,110,110
………………………………………95
本間生夫 …………………………………………131
南雲三枝子
鍋田智之
…………………………………………69
鍋田理恵 ……………………………………119,120
苗村健治 ………………………………106,113,115
【ま】
前原伸二郎 ………………………………………107
西川弘恭 …………………………………………132
増田研一
………………………………………… 87
錦織綾彦
………………………………91,121,154
町田雅秀
………………………………93,128,146
西田
…………………………………………69
松尾貴子 ………………………………120,153,154
西村展幸 …………………………………………132
松下嘉一 …………………………………………156
篤
− 214 −
460
演者索引
松本
淳 …………………………………………106
111,113,115,128,129,144
松本
勅 ……………………………………123,124
148,151,157,158,158
松本
毅 …………………………………………151
山岡傳一郎
…………………………………89,116
松山幸枝 …………………………………………138
真鍋立夫 …………………………………………44
山口 智 ………………………………117,145,150
山口陽子 …………………………………………134
三木恒治 …………………………………………108
山崎寿也
……………………………………91,121
水嶋丈雄 …………………………………………132
山下典秀
………………………………………… 83
水沼国男 ……………………………………123,126
山下
仁 …………………………………… 122,144
光澤
山田
篤 …………………………………… 111,112
弘 …………………………………………124
光藤英彦
………………… 38,39,89,115,148,150
山田伸之 ………………………………………74,94
皆川宗徳 …………………………… 84,98,112,145
山野員子
………………………………………… 54
美根大介 ……………………………………… 96,97
山見
………………………………………… 89
箕輪政博
…………………………………………92
山村義治 ………………………… 106,111,113,115
三村俊英 …………………………………………64
宮尾秀樹 …………………………………………150
山本一彦 ………………………………………… 63
山本晃久 …………………………………… 125,126
宮腰
湯谷
治 …………………………………………113
宝
達 …………………………………… 100,122
宮崎浩一 …………………………………………121
横川孝一 …………………………………… 118,123
宮村大地
吉川
…………………………………………87
信
………………………………………… 67
宮本俊和 …………………………………………121
吉川恵士 …………………………………………153
武藤永治
吉田
…………………………………………62
篤 …………………………………………122
武藤厚子 …………………………………………124
吉田宗平 …………………………………… 119,120
村居眞琴
…………………………………………85
吉田剛典 ………………………………………88,88
村上高康 …………………………………………132
吉本寛司 …………………………………… 158,158
村山 功 …………………………………………116
村山武志 …………………………………………137
米田裕和 …………………………………………111
米山 榮 …………………………………… 100,122
校條由紀 …………………………………50,98,145
元吉正幸 …………………………………………156
【ら】
森
定真 …………………………………………125
李
森下敬一 ……………………………………… 40,41
廖
森田和利 …………………………………………156
林
強
………………………………………… 81
登稔 …………………………………………132
昇
………………………………………… 83
森戸麻美 …………………………………………153
森西
誠 …………………………………………147
森山朝正
…………………………………… 48,151
【わ】
若松貴哉 …………………………………………148
【や】
若山育郎 ………………………………87,119,120
和久田哲司 ………………………………………114
矢嶌裕義 …………………………………………131
渡邊一平
安野富美子 ……………………………118,123,152
渡邉勝之 …………………………………………126
安原正博 …………………………………………158
渡辺尚彦 …………………………………………146
矢野
渡辺雅彦
忠 …………………74,85,104,106,109,110
………………………………………… 73
………………………………………… 62
461
演者索引
渡邉
泱
…………………………………… 90,110
渡辺康晴
…………………………………………91
和辻
直 ……………………………………119,126
− 215 −
− 216 −
462
第52回(社)全日本鍼灸学会学術大会役員・実行委員
学会会長
丹澤
章八
学術大会会長
大麻
悦治
大会副会長
尾崎
昭弘
大会副会長
実行委員長
真鍋
越智
立夫
久男
(社)香川県鍼灸師会会長
(社)香川地方会会長
実行副委員長
吉田
和修
(社)香川地方会
大会事務局長
越智
久男
(社)香川地方会会長
広報委員長
國宗
尚民
(社)香川地方会
財務委員長
月本
郁代
(社)香川地方会
設営委員長
藤原勇次郎
(社)香川地方会
設営副委員長
宮武
功哲
(社)香川地方会
接遇委員長
今田
孝子
(社)香川地方会
受付委員長
佐々木
大会監事
大会監事
齋藤
渡邊
竜太
裕
(社)全日本鍼灸学会監事
(社)全日本鍼灸学会監事
大会監事
矢野
雅子
(社)香川地方会監事
勝
(社)全日本鍼灸学会会長
大麻学園理事長・四国医療専門学校長
(社)全日本鍼灸学会学術部長
(社)香川地方会
抄録集編集後記
今年度の学術大会は四国の地で初めて開催されます。当然、私どももすべてが初めての経験であ
り、最初は「不慣れなものですから…」という言い訳がすぐに思い浮かんできましたが、学術大会
の期日が迫ってくるにつれ、そういった言い訳すら思い浮かばないほど目のまわるような忙しさで
した。正直、「学術大会を準備することがこれほど大変であったのか」ということを痛感した次第
です。これまでも学術大会に参加しておりましたが、実行委員の諸先生方のご苦労に思いを寄せる
ことはありませんでした。自らが気付かなかったことに加えて、おそらく、参加される先生方にそ
んな姿を微塵も見せずご尽力されてこられたためと察します。私どもも今学術大会が成功裏に終わ
るよう、最後まで努力して参ります。こうした決意を支えていただいたのは、香川地方会を応援し
て下さった数多くの方々のご尽力をいただいたおかげであり、感謝の言葉もありません。また、貴
重なご助言を賜りました神奈川大会実行委員の諸先生方に深謝いたします。
今、「讃岐うどん」がブームになり、多くの方が香川まで来訪され本場の味を堪能しておられま
す。今回ご参加される先生方にも是非、本場の「讃岐うどん」の味をご賞味いただき、香川での思
い出の一つにしていただければ幸いです。それにもまして、今大会においても150を超える一般演
題の発表があり、実行委員の一人としましても活発な討論が行われる学術大会になるものと期待し
ております。この学術大会での発表・討論が、今学術大会のテーマである「国民に愛される鍼灸」
につながり、国民の健康増進に還元されることを祈念してやみません。
吉田和修
463
編
集
後
記
第52回全日本鍼灸学会学術大会の香川県での開催まことにおめでとうございます。
この抄録号を会員の皆様方にお届け出来ますのは、香川大会本部および学会学術部の
スタッフのご努力の賜物です。ここに至るまではそれぞれ大変なご苦労があったと思
いますが、心から感謝とお礼を申し上げます。
さて、弘法大師はその著書『秘密曼荼羅十住心論』の中で、人の心をその本能のま
まに生きる「第一住心」から、悟りを開いた最高の普遍的な心である「第十住心」ま
での十段階に分類し、その階段をすこしずつ登っていくのが「精進」であると説きま
した。人の役に立って喜んでもらうことが「精進」であるとも説かれています。その
同じ著書のなかで、弘法大師は治病に鍼灸が絶対に必要であると言われていますが、
鍼灸師はまさに鍼灸を施すことにより、人の役に立って喜んでもらうことができ、自
らも精進できる職業です。弘法大師にゆかりの深い香川県で、「精進」の階段を一段登
りませんか。
若山育郎
委
委
員
([email protected])
編集委員
長:若山育郎
員:形井秀一(副委員長)、會澤重勝、石崎直人、粕谷大智、志村まゆら、東家一雄
全日本鍼灸学会雑誌 第53巻3号、平成15年5月10日発行
Journal of the Japan Society of Acupuncture and Moxibustion, Vol.53, No.3, May 2003
編集:『全日本鍼灸学会雑誌』編集委員会 〒590-0482 大阪府泉南郡熊取町若葉2-11-1
関西鍼灸大学内(若山育郎) Tel & Fax 0724-53-8278
発行:(社)全日本鍼灸学会 〒170-0005東京都豊島区南大塚3-44-14 日本鍼灸会館
TEL 03-3985-6188 FAX 03-3985-6135 e-mail:[email protected] http://www.jsam.jp/
印刷:(株)彩成社
− 217 −
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