鉄道による貨物輸送の形態についての基礎的調査

鉄道による貨物輸送の形態についての基礎的調査
Basic Investigation in Form of Bulk Shipment with Railway
中野
皓介 (慶應義塾大学 総合政策学部 1 年)
Kosuke Nakano
(Faculty of Policy Management, Keio University)
This research is the one that it was referred what policy only had to be taken to raise the
share of the bulk shipment that uses the train service. In the text,it is what investigated
about a current investigation as the assumption, that is, container, locomotive, and transit
system used.
The text can be roughly divided into three. Eyes are one investigations of the container. As
for the locomotive, the second investigation is. The third is an investigation of the transit
system.
キーワード:鉄道貨物,コンテナー,機関車,運輸システム,現状調査
Keywords: Rail cargo, Container, Locomotive, Transportation system, Current investigation
1.はじめに
2.背景
本研究では現在,モーダルシフトの考え方に
より推奨されるようになった鉄道を利用した貨
物輸送のシェアー向上についての技法を調査し
ている.
今回はシェアー向上のための分析の前提とな
る基礎的な研究として現在あるコンテナーと貨
車,さらには輸送形態についての調査について
纏める.
12−2 輸 送 機 関 別
年度
自動
車
総輸送量
輸送トン数(100 万 t)
1980
1990
2001
5,981
6,776
5,894
5,318
6,114
5,339
輸送トンキロ(10 億トンキロ)
1980
1990
2001
439
547
571
179
274
312
現在の日本の輸送の中心となっているのは,
なんといってもトラックに代表される自動車で
ある.
国土交通省発表の「日本の統計 2005 年度版」
(編集:総務省統計研修所 発行:総務省統計局)
によると,平成 14 年現在の日本の貨物輸送の
総貨物輸送トン数の中で自動車が占める割合は
90%にも達している.
さらに,一般的
輸送量
に自動車輸送は短
鉄 輸送量にお 輸送量におけ 距離輸送に特化し
道 ける鉄道の る自動車の占 ていると言われな
がらも,輸送トン
しめる割合
める割合(%)
キロ数に占める割
(%)
合も約 55%とな
っている.一方で
163
2.725
88.91
総貨物トンキロ数
87
1.283
90.23
に占める鉄道の割
57
0.967
90.58
合は僅か 2%程度,
輸送トンキロ数に
37
8.428
40.77
しめる割合も
27
4.936
50.09
3.8 %程度となっ
22
3.853
54.64
1) 平成 2 年度以降軽自動車を含む. 2) 超過手荷物・郵便物を含む. 3) 平成 2 年
度以降軽自動車及び自家用貨物車を含む. 4) 不定期を含む.
表 1 国土交通省総合政策局情報管理部交通調査統計課「
陸運統計要覧」
より
ていて,しかも年々減少傾向になっている.
ただ,減少率がピイクに達していたのは昭和
末期から平成のバブル崩壊ぐらいまでで,以降
は貨物総輸送量の横這い傾向と軌を一にしてな
だらかな減少傾向にある.
そして,最近では環境問題が深刻化し環境負
荷の大きい自動車による輸送をやめて,環境負
荷の少ない鉄道や海運に取り替えるという,い
わゆるモーダルシフトの考えが政府によって推
奨されることになった.地球規模での温室効果
ガスの増大に対しての歯止めとなるべく,考え
られたものである.そのため,最近では僅かな
がら鉄道を利用した貨物輸送のシェアーは向上
している.
しかし,鉄道輸送は拠点間直行輸送方式であ
るために貨物輸送の拠点とその周辺地域のみが
有利となり,鉄道の走っていない地域同士を結
ぶのが難しい点,中・短距離輸送では自動車に比
べコストが割高となる点,あらかじめ引いたダ
イヤにそって貨物列車が運行されるために緊急
輸送には適さない点,そして,中間に役が多い
ために積み替えなどで時間が掛かる点など課題
が多く,まだまだ普及には程遠い現状である.
そこで,そのような鉄道による貨物輸送のデ
メリットを可能な限り減らせれば,幾らか鉄道
における貨物輸送のシェアーは向上するのでは
ないかと考える.
3.コンテナーの種類
JR 貨物が現在所有しているコンテナーの種
類は 29 種類あるが,これらは大きさや仕組み
によって大きく 5 種類に分けられる.
まず大きさは 12 フィートのものと 15 フィー
トのものと 20 フィートのものがある.また 12
フィートのコンテナーは仕組みによって,一般
型,通風ンテナー,保冷コンテナーの 3 つに分
けられる.ここでは,以上 5 種類の代表的なコ
ンテナーについて纏めてみた.なおコンテナー
の大きさとトレーラーでない大型トラックとの
庫の大きさを比較するために,日本最大の貨物
用大型トラック,日野プロフィアカーゴ FW バ
ン架装の庫内容積が 65 立方メートルであるこ
とを明記しておく.
12 フィートコンテナー一般型
外法寸法 2450mm×3715mm×2500mm
内法寸法 2275mm×3647mm×2257mm,
容積 18.7 立方メートル
主な積載貨物 一般雑貨
特徴 内張りは耐水性のあるラワン合板でで
きている.隅金具が装備しており,ロープを使
い固定することによって荷崩れを防止すること
が可能.(写真は 19F 型)
写真 1 12 フィート
コンテナー(JR 貨物 HP より)
12 フィート通風コンテナー
外法寸法 2438mm×3715mm×2500mm,
内法寸法 2246mm×3635mm×2205mm,
容積 18.0 立方メートル
主な積載貨物 青果物,一般雑貨
特徴 両側面に開閉可能な通風孔がついてい
ることにより,庫内の風通りがよくなりトラン
クの欠点である空気の密閉や,内部が高温とな
るという心配が無い.
内張りがラワン材とアピトン合板でできてい
る.また,このコンテナーは天井と壁面に断熱
材を使っているため,簡易ながら保温・保冷機能
もある.
写真 2 12 フィート
通風コンテナー(JR 貨物 HP
より)
12 フィート保冷コンテナー
外法寸法 2438mm×3658mm×2350mm,
内法寸法 2250mm×3441mm×1945mm,
容積 15.0 立方メートル
主な積載貨物 生鮮食料品
特徴 内壁に断熱材が使われている.これによ
り外気による熱をかなり抑えることが可能.こ
のコンテナーにドライアイスなどの保冷剤を混
載することで,庫内を低温に保つことが可能で
ある.夏場に物を輸送する際にも,コンテナー
内を低温に保ち輸送することができる.
15 フィートコンテナー
外法寸法 2438mm×4650mm×2500mm
内法寸法 2318mm×4552mm×2236mm
容積 23.6 立方メートル
主な積載貨物 一般雑貨
特徴 12 フィートコンテナーと比べてパレッ
ト(注 1)がジャストフィットする.したがって,
単に輸送量が増えるだけではなく,輸送時に荷
崩れが起こりにくくなる.
積む際使われるのがこのパレットであるが,15
フィートコンテナーの方が 12 フィートコンテ
ナーと比較して,隙間が少なくなるのである.
)
図3 JPR の JIS T11 型パレット
(日本パレット会社 HP より)
20 フィートコンテナー
外法寸法 2490mm×6058mm×2500mm
内法寸法 2328mm×5960mm×2183mm
容積 30.3 立方メートル
主な積載貨物 一般雑貨(海上輸送用)
特徴 20 フィートコンテナーは海上コンテナ
ーの一部にも使われている,国際的に見て最も
一般的な大きさのコンテナーである.故に一番
大きな利点として海上コンテナーとの間に互換
性があるという点が上げられる.
図 1 15 フィートコンテナー内のパレットの配置
(JR 貨物 HP より)
写真 3 20 フィートコンテナー(JR 貨物 HP より)
図 2 12 フィート
コンテナー内のパレットの配置
(JR 貨物 HP より)
(注 1 パレット・・・荷物の保管,構内作業,輸
送のために使用される荷台のことで,すのこ状
で主に木製である.上に荷物を置いて,フォー
クリフトを使った荷物の移動を可能にする.一
度に約 1t の荷物の移動が可能.
コンテナーにフォークリフトを利用し荷物を
JR 貨物が所有しているコンテナーの種類は
以上 5 型計 29 種類であるが,他の運送会社や
一般企業がコンテナーを所有し,その上で鉄道
を利用したコンテナー輸送を JR 貨物に委託し
ている場合がある.
色々な運送会社がニーズに合ったコンテナー
を所有しているためその種類は多種多様である
が,ここではその中でも特殊なコンテナーにつ
いて説明を行う.
2t(6 フィート)コンテナー
外法寸法 1790mm×2420mm×2180mm
内法寸法 2282mm×1709mm×1989mm
容積 7.76 立方メートル
主な積載貨物 一般貨物
特徴 内容積が小さいことである.そのため,
個人でコンテナー一つを貸しきることも簡単で
あり,鉄道を利用した小口の貨物輸送に岐路を
見出したコンテナーである.
なお,鉄道を利用して輸送される際は 12 フ
ィートの専用コンテナーに 2 つ並べた状態で固
定され,貨車に積まれる.
内部構造は魔法瓶のような二重構造となって
おり,マイナス 162℃という超低温を維持する
ことを可能にしている.今後日本国内での利用
の増大が見込まれる LNG を安全に且つ高速で
輸送できる手段として注目されている.
写真 6 LNG 用コンテナー(JR 貨物 HP より)
4.機関車の種類
次に貨車を引っ張る機関車について,代表的
なものについて性能を調査してみた.
4.1 電気機関車
写真 4 6 フィートコンテナー(JR 貨物 HP より)
ISO20 フィートタンクコンテナー
コンテナー自体を容器として液体・粉粒品を
そのまま積載できる,タンクやバルク型のコン
テナーである.
タンクがコンテナーになることによって積み
替えの手間が大幅に省けた点が最大の利点であ
る.また,ISO(国際標準化規格)に基づく設計を
されている.その為に,海上輸送との相性もよ
い.
写真 5 ISO20 フィートタンクコンテナー(JR 貨
物 HP より)
LNG 用 30 フィートタンクコンテナー
マイナス 162℃という超低温の液化天然ガス
(LNG)を鉄道輸送するために開発されたタンク
コンテナー.
EF64 直流電気機関車
時間定格出力:
1
2550kW
最高運転速度:115km/h
JR 貨物所有台数:103 台(うち,1000 番台
45 台)(H15 年 8 月 1 日現在)
特徴:主に勾配線区用の機関車としてとして
1964 年に開発された.その後 1980 年に改良機
として 1000 番台の機関車が新造された.高速
で大量の貨車を引っ張る場合,重連されること
も多い.
2003 年になって後続の EH200 系が開発され
たため,現在廃車が進行中である.
EF65 直流電気機関車
1 時間定格出力:2550kW
最大運転速度:100km/h (500 番台以降は
110km/h)
JR 貨物保有台数:140 台(うち,500 番台 15
台,1000 番台 81 台) (H15 年 8 月 1 日現在)
特徴:主に平坦線区での大量・高速輸送用の機
関車として 1964 年に開発された.その後改良
機として 500 番台が 65 年,1000 番台が 69 年
に新造された.
こちらも重連運転を行うことで大量の荷物を
高速で運ぶことができる.ただ,今後有能な新
型電気機関車が新造されることでこちらも徐々
に廃車が進むものと思われる.
EF66 直流電気機関車
時間定格出力:
1
3900kW
最高運転速度:110km/h
JR 貨物保有台数:75 台(うち,100 番台 33
台) (H15 年 8 月 1 日現在)
特徴:従来 EF65 500 番台 F 形の重連で牽引
していた東海道本線・山陽本線系統の高速貨物
列車(1000t 級・最高速度 100km/h)を,単機
で牽引するために 1966 年に開発された.EF66
形の完成で,日本の電気機関車の出力・技術は
ようやくヨーロッパ並みになったと言われてい
る.1990 年に EF200 形が製造されるまでの間,
最高の機関車で,それまでの国鉄電気機関車の
イメージを打ち破る流線型のスマートさに力強
さを兼ね備えた独特のスタイルで異彩を放って
いた.
やや旧態化したとはいえ,現在も JR 貨物の
輸送の一翼を担っている.
写真 7 EF66 直流電気機関車(鉄道旅行に行こ
うよ!!HP より)
ED75 交流電気機関車
JR 貨物保有台数:72 台(うち,1000 番台
31 台) (H15 年 8 月 1 日現在)
1963 年に開発された機関車で,定期運用を持
つ電気機関車としては最も運用開始年が古い形
式となっている.周波数帯は 50Hz.東北線で
使用されることが多い.また,一部は青函トン
ネル専用機の ED79 系に改造された.
ただ,現在は EH500 交直流機関車が勢いを
伸ばしつつあり,廃車が徐々に進んでいる.
EF81 交直流電気機関車
時間定格出力
:2550kW(直流),2370kW(交
1
流)
最高運転速度:110km/h
JR 貨物保有台数:64 台(うち,400 番台 13
台 500 番台 3 台) (H15 年 8 月 1 日現在)
特徴:日本海縦貫線(北陸・信越・羽越・奥羽の
各線)の電化進展に伴い,50/60Hz 交流区間と直
流区間を直通して走行できる三電気方式の機関
車として 1968 年に開発された.その後,400
番台 500 番台と徐々にモデルチェンジを行って
いる.
システム自体は,当時の直流標準電気機関車
である EF65 形に交流用機器を追加したもので
基本性能は EF65 形に準ずる.後続機の配備が
遅れていることから,今後も EF81 形の活躍は
続くものと予想される.
以上が,国鉄期に開発された電気機関車であ
る.以降は JR 貨物になって新造された電気機
関車である.
EF210 直流電気機関車
1 時間定格出力:3390kW
最高運転速度:110km/h
JR 貨物保有台数:30 台(H15 年 8 月 1 日現
在)
特徴:直流区間の主力機関車である EF65 形
の後続機として 1998 年に新造された.新造価
格の低減,保守の容易化,運転操作性の向上を
図っている.また,EF66 形との協調運転も可
能.現在新たな直流機関車としての配備が進ん
でいる.
写真 8 EF210 直流電気機関車(鉄道旅行に行
こうよ!!HP より)
EH200 直流電気機関車
1 時間定格出力:4520kW
最高運転速度 110km/h
JR 貨物保有台数:2 台(H15 年 8 月 1 日現在)
特徴:中央線など勾配が続く線区で運用され
ている EF64 形の後継機として 2001 年に開発
された.現在 EF64 形は重連運転が基調とされ
ている.これを解消すべく生まれた.
2 連で 1 台の形状で急勾配での走行速度を発
揮することが可能.現在は勾配対策を終え,配
備が進みつつある.
EH500 交直流電気機関車
1 時 間 定 格 出 力 : 直 流 3400kw, 交 流
4000kW(50/60Hz)
最高運転速度 110km/h
JR 貨物保有台数:22 台(H15 年 8 月 1 日現
在)
特徴:従来,首都圏∼函館・五稜郭駅間は直
流機−交流機重連(一部単機)−青函用交流機
重連,と機関車の付け替えがあり,到達時間に
ロスが生じていた.これを解消して JR 貨物の
保有機関車数を削減する目的とともに,東北地
区の ED75 形,津軽海峡線の ED79 形老朽取替
え用として開発・製造されている.
写真 9 EH500 交直流電気機関車(鉄道旅行
に行こうよ!!HP より)
EF510 交直流電気機関車
時間定格出力:
1
3390kW
最高運転速度 110km/h
JR 貨物保有台数:1 台(H15 年 8 月 1 日現在)
特徴:日本海縦貫線や常磐線などの交直流線
区で活躍する EF81 形の後継機として 2001 年
に開発された.EF210 形電気機関車を基準に製
作されている.平坦区間では 1300t 列車の牽引
が可能で,今後本格的に EF81 形との世代交代
が起こるものと思われる.
以上が現在 JR 貨物で運転されている主な電
気機関車である.この他に“貨物電車”として
1 編成が配備されている M250 系特急コンテナ
ー電車がある.
M250 系貨物電車
時間定格出力:
1
3520kW
最高運転速度 130km/h
JR 貨物保有編成:1 編成(H15 年 8 月 1 日現
在)
特徴:2002 年に製造された世界初・JR 貨物
初の動力分散式コンテナー貨物電車である.宅
配便など小口積み合わせ貨物の高速輸送を目的
として開発された.
16 両編成で 31 フィートコンテナーを 28 個
搭載することができる.2004 年 3 月 13 日のダ
イヤ改正より東京貨物ターミナル∼大阪・安治
川口間で佐川急便が 1 列車を貸切輸送する臨時
高速貨物列車として営業運転を開始し,現在で
は定期列車となった.東京貨物ターミナルと安
治川口間を 6 時間 11 分で結ぶ.
ちなみにこれは現在この列車は東海道本線を
走行した全ての列車の中で歴代最速の営業速度
を誇っている.
愛称はスーパーレールカーゴ.
写真:10 M250 系貨物電車(T’s house!HP より)
4.2 ディーゼル機関車
次に主なディーゼル機関車についての調査で
ある.
DD51 ディーゼル機関車
JR 貨物保有台数:117 台(H15 年 8 月 1 日現
在)
特徴:1962 年に開発された.非電化区間の本
線で使われることが多い.
後継機の開発が進んでいないために更新工事
が行われ,当面は使われ続けると思われる.
DF200 形電気式ディーゼル機関車
1 時間定格出力:1900kW
最高運転速度 110km/h
JR 貨物保有台数:22 台(H15 年 8 月 1 日現
在)
特徴:幹線の電化の度合いが低い北海道地区
の輸送力の増強を図るべく,1992 年に開発され
た.
出力が DD51 形の約 1.5 倍であり,従来に比
べ,かなりの輸送力増強に繋がった.
ステムである.
物流センターや倉庫などから最寄りの貨物駅
にトラックなどを利用して輸送され,駅で行き
先別に仕分けされ貨車に積み込まれた後,鉄道
を利用して目的地最寄の貨物駅に輸送される.
ここで,目的地別に細かく分けられた後,物
流センターや倉庫などにトラックを利用して輸
送される.この時,トラック−貨車の積み替え
時にコンテナーが有効である.
また,コンテナーは簡易的な倉庫としての利
用も可能である.
5.2 鉄道輸送の環境効率
最初にも書いたが環境負荷が抑えられる点が
鉄道輸送の利点である.
図 3 を見ると明らかだが,鉄道の荷物 1t の輸
送での CO2 排出量は営業用の普通車の排出量
と比べて,約 1/8 に抑えられる.
例として 100t の荷物を東京から福岡まで運
んだ場合,トラック輸送では 20.8t の CO2 を排
出するが,鉄道輸送では僅か 2.9t(注 2)に抑えら
れる.
1年間では 6503.6t の違いが生まれることに
なる.
年間の CO2 排出量
トラック:7577.4t
鉄道 :1073.8t
写真 11 DF200 電気式ディーゼル機
関車(鉄道旅行に行こうよ!!HP より)
5.現在の輸送システム
最後に現在の鉄道を利用した輸送
システムについての調査である.
5.1 コンテナーを利用した輸送の
利点
図 3 1t の荷物を 1km 運ぶ際に排出する CO2 の比較
(平成 16 年度国土交通白書)
(注 2・・・駅からの集配距離をそれぞれ 10km
鉄道コンテナー輸送はオンレイルの JR 貨物
とし,東京∼福岡を 1200km としている.なお,
とオフレイル(集荷,配達等)の鉄道利用運送事
輸送機関別の CO2 排出原単位 (1トンの荷物
業者とが一体となって,届ける複合一環輸送シ
を 1km 運ぶのに排出する CO2 量)は,「国土
交通白書平成 16 年度版」 に基づき,トラック
=173(gCO2/トンキロ),鉄道=22(gCO2/トンキ
ロ)で算出している.)
その他,ドライバー効率の飛躍的な向上(注
3)道路渋滞の解消(注 4)エネルギーの節約(注 5)
などの利点が挙げられるが,これらは全て環境
効率の向上に貢献している.
注 3: 従業員一人あたりの年間貨物輸送量は
鉄道 200.7 万トンキロに対してトラック 23.9
万トンキロである.
注 4 : 一度に輸送可能な貨物量は鉄道
500~650 トンに対してトラック 5~15 トンであ
る.
注 5 :トンキロ当たりのエネルギー消費効率
においてトラックは鉄道のおよそ 6 倍である.
以下は,JR 貨物が行っている輸送サーヴィ
スの例である.
5.3 自動車代行便
JR 貨物が運行をおこなっていない地区のた
めに JR 貨物が最寄拠点駅との間を
列車輸送に替えてトラック輸送を行
うという仕組みである.
これにより,貨物の運行がない地
域でも鉄道を利用した貨物輸送が可
能となる.拠点駅とを結ぶ代行輸送
のトラック便は 1 日数本運行される
ので,輸送日数の短縮など多くのメ
リットがある.
ンを造ることができる.
最後に,鉄道輸送の弱点を補うべく誕生した
新しいサーヴィスを 2 つ紹介する.
5.5 E&S 方式
かつての貨物駅は着発線と荷役ホームが別に
設けられ広大なヤードが広がっていた.
しかし,この方式は着発線に列車を止めた後,
入れ替え用の機関車に付け替えて荷役ホームへ
と運び,荷役ホームで貨物の積み下ろしを行っ
た後にまた着発線に列車を移動させ,そこで本
線用の機関車に付け替えて,ようやく駅を発車
させるという,大変手間と時間の掛かる手法で
あった.
それに変わる形で現れたのがコンテナーを本
線上の列車から積卸しする「E&S 方式(着発線
荷役)」である.これは着発線上に荷役ホームが
あり,列車が駅に到着した直後に荷役作業を開
始し,そのまま発車できるというシステムであ
る.現在,この方式の貨物駅は全国に 26 駅あ
り,駅構内での複雑な入換作業が要らないため,
大幅なリードタイム短縮とコスト削減が図れる.
今後も積極的な採用が見込まれる.
5.4 スワップボディ輸送
脱着可能なトラックの荷台をそのまま鉄道貨
車に載せて輸送するシステム.ヨーロッパでは
環境対策や交通渋滞対策として普及している方
式で,国土交通省もモーダルシフト促進に有効
と評価している.
ボディが「薄く,軽い」構造のため,貨物の
積載重量や容積をより多く確保でき,加工も容
易で様々な用途にあわせたボディバリエーショ
図 4 E&S 荷役方式のモデル図(JR 貨物 HP よ
り)
5.6 IT フレンズ&TRACE システムの開発
2005 年 8 月から本格稼動を開始した.
フォーク作業管理の「TRACE システム」は,
フォークリフトに GPS と ID タグをつけること
で駅構内のコンテナーの留置位置,コンテナー
貨車や集配トラックへのコンテナー積載・取り
卸状況をリアルタイムで把握することできるシ
ステムである.
「IT−FRENS」は,利用運送事業者に負担と
なっていた予約にかかる作業が軽減され,利用
者への対応もスピーディになった.また,輸送
の平準化を促進し,平日輸送力の実質的な増強
を可能とした.
「ドライバーシステム」は,トラックの配車計
画・集配作業をサポートすることのできるシス
テムである.
本システムの完全稼動により,これまでの
「経
験と勘」に頼ってきた,人間系による古い仕事
のしくみを「システムによる自動化」へと抜本
的に改革していくことになった.
6.現状の問題と今後の展開
デイタ,システムを踏まえたところでいくつ
か問題をあげてみる.
6-1 現状の問題と対策についての考察
○ 機関車が旧態である.
現在,運行中の電気機関車の主流は 1960 年
台に基本設計されたものがほとんどである.
(モ
デルチェンジはあるものの)しかし,後続機の配
備が全体的に遅れており,結果旧型の機関車に
頼らざるを得ない状態になっている.物理的な
スピードアップには,機関車の性能向上が急務
である.
○ E&S 方式の普及がまだまだ足りない.
図:5 TRACE 構成 イメージ(JR 貨物 HP より)
主な効果として
・駅構内のコンテナーの位置,及び状態がリア
ルタイムで把握できる
・列車予約の際,適切な利用列車が自動的に選
ばれる
・列車予約や情報照会が便利になる
・コンテナーの伝票に基づいた作業が無くなる
現在,E&S 方式を採用している貨物駅は
26 駅である.JR グループ内での貨物駅は 69
駅あるのだから,そのうちの 1/3 に留まって
しまっているというわけである.確かに,東
京貨物ターミナル駅など,多くの列車の始発・
終着駅となるような駅は着発線上に貨車を残
すとすぐに容量が一杯になってしまうので,
そのような駅では従来の方式を採用せざるを
えないだろうが,その他のほとんどの駅では
採用できるのではないかと考える.
○ 個人向けへの宣伝が弱い
6 フィートコンテナーについても書いたと
おり,鉄道を利用した貨物輸送は企業向きだ
けではなく,
個人でも利用できるものである.
だが,実際のところ個人に対しての宣伝はほ
とんど行われていない.これはコンテナー一
台を満たすほどの荷物の輸送を個人で行う機
会が無いというのが理由だと思うが,個人で
も大量の荷物を一度に運ぶ必要があるときが
ある.
例えば,引越しをする場合を考えてみると,
12 フィートコンテナーの大きさは,床面積 8
平方メートル,容積 18 立方メートルである
から大体,4 畳半の部屋一杯の荷物が入る.
したがって家具の数にもよるが,12 フィート
コンテナー1 個に 1∼2 人分の荷物が入るこ
とになる.
このように,コンテナー及び鉄道を利用し
た貨物輸送は想像よりも気軽に行えるもので
ある.もちろん迅速性,定時性,環境効率,
掛かるコストの面から考えて鉄道を利用した
貨物輸送のメリットは存分にあるので,個人
利用の増大を図るべく大々的な宣伝を行えば,
需要は上がるであろう.
6.2 今後の展開
参考資料
[1]社団法人鉄道貨物協会,
『2003 JR 貨物時刻表』,
同出版,2003 年
[2] 日通総合研究所『輸送の知識』日本経済新聞社
1992 年
[3] 中島啓雄『現代の鉄道貨物輸送』交通研究協会
1995 年
[4]総務庁行政監査局『JR 貨物会社,国鉄清算事業団
の現状と課題』同出版 1993年
[5]日本貨物鉄道株式会社
http://www.jrfreight.co.jp/
[6] 総務省統計研修所『日本の統計 2005 年度版』総
務省統計局 2005 年
[7]Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki
[8]T’shouse(M250系電車の画像提供)
http://www.geocities.jp/noisettelover/env/takuhai/s
rc2.jpg
[9]国土交通省『平成 16 年度国土交通白書』
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h16/index.html
これらの基本的なデイタ及びシステムを踏ま
えたうえで今後は列車の運行状況,特にダイヤ
について調査を行う.
この 2 つの調査結果を組み合わせることで現
在の貨物輸送の現状と問題点が浮き彫りになる
ものと思われる.それらを分析し,問題の核心
となる点を発見する.最終的には鉄道を利用し
た貨物輸送の簡略化,スピードアップのための
新たな政策提言を行いたい.
[謝辞]
最後に,日頃の議論を通して貴重な意見を下
さった有澤誠教授を始め,有澤誠研究室 JRE
プロジェクトのメンバーの方々にこの場を借り
て厚く御礼を申し上げます.
[10] 鉄道旅行へ行こうよ!!
http://homepage1.nifty.com/ykatsuta/index.html