出発以前に行先を知っているもので

総集編
成功する人というのは、自分の意思で行動するが、
出発以前に行先を知っているものである。
総集編
積極的心構えで成功を
(ナレーター)
PMAすなわちポジティヴ・メンタル・アティテュードの持つ力を体験してみましょう。
あなたはすでにもう、PMAつまり積極的心構えの発揮する力について、ご存知でしょう。このダイナミックな力は、多くの分野で成功をおさめた
億万長者、W・クレメント・ストーンに、全米最大のコンバインド・インシュアランス・カンパニー・オブ・アメリカを創立させ、現在最大の、エイオン・コ
ーポレーションにさせた原動力です。
胸を躍らせるカセットプログラムを通し、ストーンの成功の裏に秘められた貴重なメソッドが手にとるようにわかるようになるでしょう。初めて収録
されたストーンの話とともに、PMAプログラムのエッセンスを収録してあります。
あなたの願望や目標を追及し、達成するための、本プログラムに収めたノウハウをすぐにお役立て下さい。もはや伝説ともなった自己実現のエ
キスパートが送るユニークな発想に耳を傾け、ご自分のキャリア・社会生活を正しい方向にむける術を学んでください。
積極的心構えで成功を……
(ナレーター)
自己訓練の欠けている人の中には、懐かしさにおぼれて扉を思い切って閉められず、過去への戸口で佇んだまま未来を見つめられない人が
います。「過去への扉」を閉めるか、閉めないか、この選択には曖昧さは許されません。マイナスのものごとが詰まった過去のことを忘れ去るため
の扉を閉める意思の力を持たなければ、成功などとてもおぼつかないでしょう。
あなたは、今ナポレオン・ヒル博士の1950年代の講演をお聞きになっています。ヒル博士は、歴史的な名著『思考は現実化する』の出版に先
だつ何年も前から、一世を風靡していました。
1920年代のことです。当時、彼は初期ナポレオン・ヒル・プログラムを完成させていました。その後、1960年代になって、全米でも有数の億万
長者であり、1981年にはノーベル平和賞候補にもなったW・クレメント・ストーンがヒル博士の事業に参加しました。ストーンはナポレオン・ヒル・
プログラムによって大成功者になった1人です。そして、また彼独自の成功の哲学も持っています。これはヒル博士の哲学と矛盾するものではあ
りません。むしろ、両者をブレンドさせることにより、より素晴らしいものができあがるでしょう。
(ストーン)
さてみなさん、この世の人はすべて悩みを持っています。これは良い事なのです。なぜでしょうか?あなたが悩みを持ち、PMA、つまり積極的
な心構えがあれば、これは形を変えた祝福を受けているようなものだからです。
悩みを持てば、まずどうしてだろうと考えるでしょう。私から言わせてもらえば、これは喜ぶべきことです。
一体何が喜ばしいのでしょうか?悩みという短所をどうすれば利点に変えることができるのでしょうか?
このテープをお聞きのあなたの中には、様々な年齢の方もいらっしゃるでしょうが、悩みを一転して利点に変えられない人など、1人としていな
いはずなのです。特に、意欲に満ちたポジティヴな人間ならばなおさらです。
1939年に、私はある深刻な問題につき当たりました。当時、私共の会社は、損害保険を販売しており、私は、「コマーシャル・カジュアルティー
社」の代理店店長だったのです。
問題というのは、当時、代理店の一つが本社に対して私共の勧誘活動に文句をつけたのです。まず、テキサス州での現状に不平をタラタラと
述べ始めたかと思うと、他の代理店も次々と文句を出だす始末です。我々の商売が大々的にうまく展開しているのに、彼は私共から仕事をとら
れて、あがったりだ、というのです。
ちょうどその時、私は家族とマイアミでのバケーションを楽しんでいました。会社の秘書から電話を受けとると、本部において、私の販売代理権
契約のみならず、私の管理下にあったすべての販売契約も全部取り消すことが決定された、というのです。その理由たるや、苦情を申請した他
の代理店がたまたまその保険会社の元からレギュラー・メンバーであったという理由だけだったのです!
さて、皆さん、やっていることが何もかも、うまく行かなくなってしまったら一体どうすればいいのでしょう。まず、初めに啓示、つまりインスピレー
ションを求めるべきでしょう。
私はインスピレーションを求めるために祈りました。その後、私は家を出て―妻に心配をかけたくなかったからですが―電話をかけにいきまし
た。本社の社長に電話をし、とにかくニューヨークにある本社に出頭するまで、何とか決定を保留にしてほしいと頼みこんだのです。
社長に会う約束をとりつけると、早速、ニューヨークに飛びました。その結果、他の有効を策を講じるまでは、今のまま商売を続けてもよいという
決定が出されたのです。
この事件を通して不利な状況をいかに有利なものに変えるかを体験でき、まったく素晴らしいことだったと思っています。というのは、これがきっ
かけで、自分自身の保険会社を設立する気になったからです。
今や、国際的な資産も含めた資産総額は、ゆうに70億ドルを超えるようになり、私の会社エイオン・コーポレーションはあらゆる種類の保険を
扱う超一流企業にまで成長したのです。本社の社員は1万4500人、代理店は3万5000店に及びます。もちろん、私はこのことを自慢するため
に言っているのではありません。人間の心のエネルギーというものが、いかに素晴らしい作用をするものか、知っていただきたいからです。
このようにして、PMAを持ち、それを利用できる人にとっては、逆境というものはたとえどんなものであろうと、それと同じくらいか、あるいは、そ
れ以上の利益を生み出す芽があるのだということができるのです。助力を必要とする者に手を差し伸べられる時、それこそがまさに神聖なる力な
のです。
(ナレーター)
そうです。皆さん、悩みを持つということは喜ぶべきことなのです。次々と、問題の克服の経験と積み重ねていくことが、成功への階段を一歩一
歩と登っていくことになるのですから。
一つひとつ、勝利の栄光を勝ち取るごとに、知恵や心の成長、経験に輝きが増していくのです。より良く、より大きく、より成功に近づいた人間、
それこそがPMAで悩みに向き会い、押さえ込み、克服した人のみが享受できる成果なのです。
ここで、ちょっとあなたにも考えてもらいたいのですが、あなたの人生、あるいは歴史上の人物の中に、真の願望や目標を達成した人で、その
成功の原因が当人が直面した問題に端を発していなかったという例など、たった一つでもあるでしょうか?ヒル博士に語っていただきます。
(ナポレオン・ヒル)
ある失敗や敗北、あるいは不愉快な状況に出くわした人は、まず、何よりもそのような経験の裏に隠されている同じくらい大きな利益の芽を探し
始めるべきです。同等の価値をもった利点のない不運などは、これまで一度もなかったし、将来もきっとないはずです。
しかしながら、失敗や敗北に対する私たちの反応は、ふつう否定的なものになりがちです。私たちは、自分の経験を思い起こして、もしかしたら
何かの利益を引き出せるかもしれないと考える代わりに、臆病になり、勇気をくじかれ、1人でウジウジと悩むことがおおいのです。
あのトーマス・エジソンはたった3ヶ月の学校教育しか受けられなかったということを考えてみて下さい。
または、ヘレン・ケラーの三重苦のことも考えて下さい。
あるいは、二重の麻痺で身体の自由を奪われながらも、それをきっかけに旺盛なクリエイティヴ・ヴィジョンを発揮し、今ではアメリカでよく知ら
れている子ブタのソーセージを開発したマイロ・C・ジョーンズはどうでしょうか?
また、わずかな学校教育しか得られず、しかも精神のバランスを欠いていると親戚や近所にあざけられたヘンリー・フォードはどうですか?彼は
アメリカ人の生活様式を変え、現在あるようなフォード帝国を築きあげようという大きな野心を持っていたため、嘲笑を買ってでたのです!
(ナレーター)
人は皆、悩みを持っています。なぜなら、あなたも、また宇宙の万物も変転し続けているからです。このような変転は、動かしようのない自然の
法則です。
大切なのは、変化の訓練にあって成功を勝ち取るか、反対に失敗を被るかの分かれ目は、あなたの心構えいかんということです。あなただけ
が自分の心構えを積極的にするか消極的にするかの鍵を握っているのです。自分の変化や、周りを取り囲む環境の変化に影響を与え、利用し、
コントロールして、そして、調和を図ろうと決めるのは、あなた自身なのです。あなた自身が自分の運命の手綱を握っているのです。
PMAを使って、変化という試練に対峙する時、私たちは直面するそれぞれの悩みに、理性的に対応できるようになります。
たとえ、その悩みがどんなに途方に暮れるようなものであっても、どうしても解決しなくてはならない問題なら、次に述べるステップを一つずつ実
行してみましょう。
1.まず、インスピレーションを求めること。それはあなたの潜在脳力の中から、正しい解決策を発見するための助力をあおぐことです。
2.悩みを解決するために、じっくり考える時間を作って下さい。PMAの備わった人にとっては、どんな逆境でも同じくらいの価値か、あるいは、
それを凌ぐだけの利益を秘めていることを、決して忘れてはい
けません。
3.悩みを明確に記述してみましょう。そして分析して定義してみるのです。
4.次に自分自身に「これでO.K.だ!」と言いきかせることです。
5.抱えている悩みのどんな点が喜ばしいのか考えてみて、その不利をどうすれば大きな強みに変えられるかを研究してみて下さい。
6.少なくとも一つくらいは、実現可能な答えを見出すまで、努力をし続けることです。しかし、誠心誠意の努力を続けたにも関わらず、問題解決
が計れない場合はどうしたら良いでしょうか?そのような場合
には、何かまだ足りない要素があるのです。決してあきらめてはいけません。必ず解決方法はみつかります。それは思いもよらない方法で
解決されるかも知れません。その問題は解決しないまま、そ
れ以上の素晴らしいことが生じて、問題が問題でなくなってしまうこともあるのです。
失敗の第1の原因としてまずあげられるのは、消極的な心構えです。
たぶん、事実や普遍の真理や力というものを知ろうとしないのかも知れません。
あるいは、本当は良くわかっているのに、具体的な事態に適用できないのかもしれません。つまり手を抜いているのです。
それとも、目に見えるものや見えないものに影響を与え、利用し、コントロールして、調和を図る方法がわかってないのでしょうか。
PMAによって成功への道を探り続けるということは、とりも直さず、より良い何かを見出すまで努力し続けることです。
失敗とは、敗北を経験したときに、より良いものを見出す努力を諦めた人だけに起こるのです。
例えば、子供にパズルを与えると、すぐに、その場では解けないでしょう。でも、その子が努力を続ければ、解決法を身につけ、アッという間に
解けるようになるはずです。しかも、あなたはもう子供ではないのです。
たぶん、大人であるあなたには、解明したい人生のパズルがいくつかあることでしょう。PMAこそは、それをもっとも簡単に、やすやすと解決で
きる方法なのです。
(ナポレオン・ヒル)
エジソンの場合、入学してたった3ヶ月後に、受け持ちの先生は、両親へのメモを持たせてエジソンを家に返しました。「この子は、頭が混乱して
いるため、教育を受けることができません」と書いてあったのです。
このような恥ずかしい経験は、エジソンに深い影響を与えました。先生の言った「混乱した」という言葉の意味をつきつめようと、幼いエジソン
は、自分というものを良く見つけるようになったのです。
学校生活のチャンスを奪ってしまった苦悩の原因を追究する過程で、エジソンは全歴史を通して、偉大な発明家の1人になる力の源を見出した
のです。
エジソンは学校教育を欠き、何の知識も持ち合わせていなかったのですが、あえて、いろいろな分野の学問を利用しなければならない職業を選
んでいます。
自分のハンディーを、頭と、科学者としてのトレーニングを受けた他の人たちの教育を利用して克服したのです。このような方法は、職業の種類
に関係なく、偉大な成功を成し遂げたすべての人が行なっています。
例えば、ヘンリー・フォードは小学校教育しか受けていません。ですから、どうしても達成したいが、自分1人ではできそうもなかったことは、それ
が出来る人間を周りに集めることで穴うめをしたのです。
フォード氏の大きな強みは、自分の欲しい事が何かをしっかりとつかむ脳力と、成功するまで、失敗を乗り越えて目標にしがみつく執念でした。
もう昔のことですが、ヘンリー・フォードは、自分を無知無学だと誹謗した新聞社を相手どって名誉毀損の裁判を起こし、証人として喚問されたこ
とがあります。彼の無知を証明しようとする新聞社の弁護士に、とても答えられないような質問を次々とぶつけられ、彼は証人席で立ち往生して
いました。ついに、公衆の面前での恥ずかしめに苛立ったフォード氏は、身を乗り出し、弁護士を指差し、こう怒鳴ったのです。
「たった今、君の言った馬鹿げた質問や、事業の運営上解決すべき問題に、どうしても答える必要があれば、私はこの指でボタンを押すだけ
で、即座に答えを出せる人間を呼び出せるんだ!周りに大学出や、私の代わりに答えを出してくれる人間が何人もいるというのに、なぜ、この私
がわざわざ、どう答えようかなどと頭を悩ます必要があるのかね?」
(ナレーター)
歴史を振り返って見ますと、独創的な思索者が、数々のアイディアを現実のものとするために、どんなに努力したか、そして、努力以上の何かを
つけ加えていた、ということにも気づかれるでしょう。それが、PMAなのです。
ライト兄弟以前に、飛行機の発明をしかけた発明家は大勢いました。ライト兄弟は、他の大勢の人たちが使ったのと同じ原理を利用したにすぎ
ないのです。ところが、彼らは、一般の原理にそれ以上のものをつけ加え、他の人がすべてに失敗した後に、成功を得たのです。
ここでいう「それ以上のもの」とは、かなり単純なものでした。つまり、翼の端に可動フラップを取り付けたのです。このために、パイロットが飛行
機をコントロールできるようになり、平衡を保つことができるようになったわけです。このフラップこそ、現代の補助翼の先駆けとなりました。
このような成功物語には、ある一つの共通な要素があるということに気づかれませんか?
どのケースを見ても、秘密の要因は、「それ以前には利用されなかった普遍の真理の活用」です。これこそが分かれ目なのです。
もしあなたが成功の戸口に立っているならば、ただいたずらにやり過ごすのではなく、何かをつけ加えるようにして下さい。
アメリカの最高裁は、なぜ、アレキサンダー・グラハム・ベルが電話の発明者であると判断したのでしょうか?
ベルの前に、自分こそ電話の発明者だと名のりをあげた人は何人もいましたが、成功の入口まで行ったのは、たった1人、フィリップ・ライスとい
う男性でした。
ライスとベルトの間に大きな分かれ道につながったほんの小さな岐路は、たった一つのネジでした。そのネジをほんの4分の1だけ回転させれ
ば断続電流を持続電流に変化させられるということをライスは知りませんでした。そうすれば、彼は電話の発明者として栄光に輝いたはずです。
この発明の件は、アメリカの最高裁まで上告され、裁判では、ライスは音楽を再生するのには成功したが、そこまでであった、という判断が下さ
れました。ライスの装置では、歌うことはできても、話すことはできなかったのです。
ライト兄弟の例を見てもわかるように、またベルが付け加えた「それ以上の何か」とは、かなり単純なものです。それは、断続電流を持続電流に
変える工夫をしたのですが、人の声を再生できる方式は、それしかなかったのです。ベルは、ライスのように回路を断続的に開閉させるのではな
く、オープンのままにしただけなのですが、最高裁は、ベルが声を電信的に発信することに成功したのに対し、ライスは失敗した、このために、ベ
ルこそが電話の発明者であるという決定を下したのです。
最高裁の判決は、つまりこういうことでした。「この2人の発明家の間にある違いは、成功と失敗を分ける違いである。ライスが努力を続けてい
れば、成功への道を発見できたかもしれないが、彼はその前に諦めてしまい、結局、失敗した。ベルは、ライスの仕事を受けつぎ、止むことなき
努力を続け、ついに成功にまでこぎつけた。
アルバート・アインシュタインは、難解で深遠な宇宙とそれを司る大自然の法則の理論を創り上げました。けれども、彼が使ったのはかつて発明
された中でも、もっとも簡単で、しかも、もっとも大切な道具だけでした。鉛筆と紙です。これで、心に浮かぶいろいろな疑問と答えを書きとめたの
です。
自分に問いかける習慣を身につけて初めて、あなたは、成功に至る脳力を開発できるのです。それは、その疑問やアイディア、そして答えを紙
と鉛筆で書きとめる習慣を身につけた時なのです。
アインシュタインや他の科学者は、彼らに先立つ数学者や科学者の積み重ねた知識を学ばなければ、輝かしい業績をあげられなかったはずで
す。また、アインシュタインも考える習慣をつけ、行動に移す習慣を身につけていなければ、普遍の原理を求めようなどとは考えもせずに、努力を
積み重ねることなどしなかったはずです。
偉大な思想家や成功者で、自分の思いついたアイディアを書きとめようとしなかった人など、思い浮かべることができるでしょうか?
(ストーン)
PMAにより動機づけのテクニックを学んだ人であれば、どんな悲惨な状況や粗末な環境であっても、まったく関係ありません。これは、私が保
証します。心から成功したい、不可能だと思えることを実現したいと思ったら、次のように実行して下さい。
まず、誰にも邪魔されないような部屋で、机かテーブルの前に座り、目の前にゴールデン・ゴールデックスノートを用意し、第1行目に「どのよう
な目標でも達成できる方法―それは、普遍の真理を犯さず、正義と良心にもとづき、他人の権利を侵害しないこと」と書いて下さい。
2行目からは、自分ではとても不可能だと思われる願望や目標をリストアップします。普遍の真理を犯さないかぎり、どんな途方もないと思える
ものでもかまいません。
そして、30分かそれ以上の時間をかけて、じっくりと熟考するのです。私は毎晩、寝る前の45分間をこのための時間としています。この習慣
は、どんなに遅くなっても変わりません。しかも私は、普通は深夜2時以前に眠ることはありません。
とにかく、机の前に座り、思考にいそしむのです。そして書かれた願望一つひとつに対して役に立ちそうなアイディアが湧き起これば、右欄に書
きとめます。ネガティヴな考えは左手です。そして、後は同じプロセスの反復です。そうすれば、その答えとともに、潜在意識にヤル気が形成され
てくるのです。ちょうど、子供が歩くのを学ぶように。
あなたの願望や目標が健康面であれ、精神面であれ、これらの願望や目標のことについて様々に頭を使うと、脳神経細胞同士のつながり合い
は密になっていきます。
もう一度強調しますが、この簡単な手順に従うだけで、誰でも例外なく、どんな願望や目標でも達成できるのです。
(ナレーター)
百科事典を開けて、クリストファー・コロンブスの波乱万丈の人生の物語を読んでみて下さい。
コロンブスは、天文学、地理学、そして宇宙の創造論、自然の諸法則を現在のイタリアのパヴィア大学で研究していました。
そして、何年にもわたって、少しずつ世界は球形であるという堅い確信に至ったのです。ひとたびこの結論に達すると、コロンブスは、論理的な
帰結として、スペインから西方に向かって船出すれば、必ず日本にたどり着くと信じたのです。
マルコ・ポーロが昔、東方に旅してたどり着いたように。コロンブスは、自らの理論を証明したいという焼け付くようなパッションを抱き、行動に移
しました。そして、その目標を達成するために、精神を集中し、ためらうことはありませんでした。
10年を越える年月、何度か必要な助力を得られる寸前までいったのですが、君主の裏切り、宮廷官吏の無知や恐怖、助力を与えようと思いな
がらも周りの科学者たちの懐疑主義を受け入れ、結局取りやめてしまった人々の背信などから、失敗につぐ失敗を重ねました。
しかし、彼は諦めませんでした。1492年、求めていた助力を遂に手に入れたのです。その年の8月、コロンブスは西方へインド、中国、そして
日本に向けて旅立ちました。そして、正しいコースをたどり、正しい方向に向かいました。その後の話は、あなたも良くご存知でしょう。カリブ諸島
の一つに上陸した後、スペインに戻り、金、綿、オウム、奇妙な武器、神秘的な植物、知られざる鳥、けもの、そして幾人かの島民をヨーロッパに
もたらしたのです。
コロンブスは、目標を達成し、インドの近くの島にたどり着いたのだと信じていました。それは間違いでしたが、それでもなお、コロンブスはそれ
以上のもの、いえ、途方もないものを見出したのです。
あなたもクリストファー・コロンブスのように、自分の願望や目標そして偉大な観念にたどり着けないかもしれません。また、未知の王国を求め
て、はるかな目的地に達しようと、無駄な努力をしてしまうかもしれません。しかし、結果に関わらず、あなたはきっと、それ以上の何かを必ず見
出すはずです。コロンブスのように、つき従っている部下を鼓舞し、正しく導き―抱いていた目標に匹敵する成果に到達するまで、未知の国へと
入らせるでしょう。
あなたには、時間、そして思考力があります。目標を獲得し、それ以上の何かを見出すために、積極的な心構えで絶えることなく努力することが
できるのです。ですから、クリストファー・コロンブスを見習い、何かに失敗したからといって恥じることはありません。
(ナポレオン・ヒル)
あなたが求めているものを獲得するのに役に立つのなら、事実や経験、論理に頼ってもかまいません。しかし、それが願望や目標の実現のた
めに役不足であったら、このようなオーソドックスな手法は補助的に用いることにして、運命の星に導きを求め、奇跡を演じる一見、神秘的な力に
身をゆだねることに躊躇してはいけません。
信念は深層心理を通じて力を発揮し、潜在意識の力が心の中にある信念を通して、インスピレーション論理的な結論まで押し進めてくれるでし
ょう。そのインスピレーションを与えてくれる心こそが、のちに起こる事を左右する大きな決定要因なのです。
ご存知でしょうが、潜在意識はあなたの言葉や考えすべて、一挙手一投足も逃さずに見つめています。人がまったく見込みののい目標を掲げ
ても、その人に信念を持たせ続けてくれるのは、その目標を絶対に手に入れるという燃えるようなエンスージアズムの他には無いのです。
欲する目標のすべてに対して、大自然は、欲望の主人は本人自身だ、という特典を与えてくれています。そしてまた、その欲望を現実の成果と
して実らせるための神秘的な力もあなた自身のものなのです。この力は全宇宙を律する習慣形成力にもとづくものであり、行動も思考もあなたの
習慣を通して実行され、明らかな成果として実るのです。
(ナレーター)
ここで、宇宙を律する習慣形成力について述べておかなければ、片手落ちになるでしょう。宇宙の習慣形成力を用いるということは、「普遍の真
理の利用」そのものです。今まで知られたものでも、未知のものでも関係ありません。
例としてわかりやすく述べれば、物体の落下が重力の法則で説明されるように、もしあなたがある高みにある目標を落とそうと思えば、宇宙の
習慣形成力を使えばいいのです。この例に沿って言えば、重力の法則です。
従って、間違ってはいけないのは、重力の法則そのものが力ではないのです。もし、あなたがこの原理を正しく理解していれば、普遍の真理に
従って、その力が発揮されるのです。原子の分裂から、すべての発明発見、化学反応、物理現象、そして、物理的、精神的なすべての個人の行
動や反応。これらすべてが、自然の法則の一部が利用されたり、現れたりしているにすぎません。
結果には必ず原因があり、結果は宇宙の調和を通して具体化されているのです。人間は身体を持った心です。ですから、考えることができ、そ
れを通して宇宙の調和力の役立て方を学べます。そして―この時初めて、その思想を現実に具体化できるのです。
(ストーン)
創造的なすなわちクリエイティヴな思考をしている間、私は、この宇宙のことをよく考えます。その中で神というもの、またはその姿などを期待し
ても無駄なことです。ただ、人間にとって、始まりも終わりもないのだということを理解すればいいのです。普遍の力というものは、この世のすべて
に存在しているということをぼんやりと知覚はできても、より良い言語がないので、この普遍の力を神と呼ぶしか術がありません。
私は、人にこの普遍的な力を認識するように訓練させます。その人がどのような宗教的信条を持っていても、難しいことは何もありません。あな
たの中にある神の力を、神の名に恥じないような事に使うのです。大自然は、私にも、あなたにも、この肉体に、脳神経細胞と呼ばれるコンピュー
タを備えつけ、利用することを可能にしたのですから。
クリエイティヴな思考状態にいる時には、私のように普遍的力について考え、ことに、あなたの中には未だに使われていない途方もない積極的
な力が秘められているのだということを理解しようとつとめて下さい。
だからこそ、毎日、とどまることなしに、クリエイティヴな思考を続けることが重要なのです。
その中で普遍的な真理を犯さない限り、どんな目標でも、私たちの中に秘められた力で達成できるのだということを考えて下さい。
ですからまず、行動、欲望、すべてに高い目標を掲げることです。仕事でも、家庭生活でも、家族にも、そしてあなた自身の性格の開発にも。あ
なたが望んでいるものが何であれ、それは問題ではありません。
(ナレーター)
このプログラムのエピソードを通して、悩むことは喜ばしいことがおわかりになったと思います。それは良いことなのです。そのとき初めて、その逆
境から利益の芽を見出せるのですから。
■積極的心構えで成功を
(ナレーター)
「モティベーション」とはどういう意味でしょうか?
「動機づけ」とは行動を引き起こし、選択を行なわせ、目標へ進む力、つまり、ヤル気を起こさせてくれるものを指す言葉なのです。動機とは個
人を行動に駆り立てる体の奥からつきあげてくる衝動です。本能、情熱、感情、習慣、気分、欲望、アイディア…これらすべてが動機といって良い
でしょう。動機とは希望であり、具体的な成果を得ようとして行動に移るための力のことなのです。
自分を動機づけられる原理さえ手に入れることができれば、他人をヤル気にさせることもできるでしょう。また逆に、他人の動機づけの原理が
わかれば、自分にヤル気を起こさせることもできるのです。
積極的心構え、すなわちPMAを使って、意のままに自分を動機づける習慣をつけて下さい。そうすれば、あなたは自分の考えの主導権を握
り、感情をコントロールする術を手に入れ、自分の運命を自分で決定することができるようになるのです。そして、あたかも「魔法の杖」のように自
分にも周りの人にも、ヤル気を起こさせるようになるでしょう。
「希望」こそが秘密の材料なのです。希望とは、欲しいものが手に入るだろうという望みであり、実現できるはずだと信ずる気持ちです。人間は、
意識的には、欲しいもの、手に入れられそうなものを我が物にしようと努力します。一方、潜在意識では、身の周りの環境からの指示や深層自己
説得で意識下の心の圧力が解き放たれて初めて、行動したいという衝動的な強い欲求が生まれるのです。
このような指示に対する反応は、時がたつにつれて、ある特定の記号が与えられ、それに反応して直接的な行動に移ったり、あいまいな態度に
出たり、かえって反発的な行動を取ると言った、その人特有の決まった行動パターンに発展していきます。言葉を変えれば、動機づけの要因に
は、様々なタイプや強さがあるということなのです。
結果には必ず原因があります。あなたの行動はすべて何らかの原因の結果にすぎません。―つまり動機です。あなたの考え、自発的な行動
は、ある特定の動機か、あるいは、いろいろな動機が組み合わさったものの結果なのです。
すべての考えや、自分から始めた行動は、それをうながす四つの基本的な動機に分類できるでしょう。
(ナポレオン・ヒル)
その1.人が何かを達成するためのスタートには、必ずある具体的な願望や目標を作らなければいけません。しかも、目標達成のための具体
的なプランをそなえ、プランに従った行動を取らなくてはならないのです。
目標達成とは、ある動機やいくつかの動機の組み合わせの結果です。以下の述べるのが、自発的な行動を起こさせる基本的な動機です。
愛情、セックスの衝動、物質的な富への欲求、自己保存の欲求、体や心の自由への欲求、自己表現をして他人から認めてもらいたい気持ち、
死を超えた不老不死への希求、そして、最後に二つのネガティヴな欲求があります。この二つは上述の七つの動機を合わせたより強い行動の原
動力と言われているようです。
つまり、現実の、あるいは、想像上の不平不満のために復讐したいという欲求。そして、すべての動機の祖先、恐怖です。
その2.心の中で、繰り返し考え、練り上げた計画や目標は、信念や燃えるような願望に裏打ちされ、次に潜在意識に引き継がれます。そうなる
と、あらゆる機会に、自然で論理的な手段で行動となって出てくるのです。
その3.信念に裏打ちされた心の中の有力な欲求や目標は、もっと速やかに潜在意識に引き継がれ、論理的に結論づけられることになります。
思考力は、人類がたった一つ完全に、間違いなく扱える手段で、大変大きな意味を持っています。世の中すべてのものの源―すなわち、無限の
叡智と精神が実は、親しく結びついていることを暗示しています。
その4.潜在意識だけが、無限の叡智を開く唯一の扉で、しかも、潜在意識に働きかけるものは、固い信念に支えられた確固とした目標だけな
のです。
(ナレーター)
人類は自分で感情をコントロールできる唯一の動物です。人類だけが感情の発露の仕方を変えられるのです。そして、この感情は理性と行動
のコンビネーションによって操られます。私たちの良く知っている感情は、怖れです。そして、この感情は将来も消滅することはないでしょう。新し
い経験に直面するたびに、また、見たこともない環境へ投げこまれるたびに、あなたは恐怖という感情を通して、未知の危険に備え、身構えるこ
とができるわけです。恐怖を抱いたからといって恥じることはありません。どんな勇敢な人でも、当人が気がついていようといまいと、新しい環境
に遭遇すると最初のうちは、ビクビクし、怖いと感じるものです。しかしPMAが身についている人は、いったん、その恐怖が見のためにならないと
気がつけば、無駄でネガティヴな感情をサッサとポジティヴなものに変えることでしょう。
(ストーン)
恐怖の感情は人類にとって、他の感情と同じように大事なものです。洞窟に住んでいた原始人に、もし恐怖がなかったら、無防備に外へ出て野
獣の餌食になってしまったでしょう。怖れるのは大事なことなのです。
感情はすべて大切です。わがアメリカ社会や他の国々では、ある種の恐怖はなくても良いものです。他方、望ましいとみなされる怖れもあるの
です。
ところで、私の場合、怖いということはまったくありません。この理由としては、おそらく3歳のときの事件をあげることができるでしょう。幼い頃、
私は稲妻や雷が怖ろしく、嵐が来ると慌ててベッドの下にもぐり込むほどでしたが、ある日、雷が家に落ちれば、当然自分のベッドルームも無事
ではないのだと気が付いたのです。そこで、決心して窓辺に近づき、外を眺めてみました。
そのときの感動はとても言葉では言い表せるようなものではありません。きっと、あの時の私ほど心から、嵐の訪れを享受した人間はいなかっ
たのではないでしょうか。あの天地を揺るがす雷鳴の響きを!
その時以来、私は恐怖心を克服できるようになり、今日では、まったく恐怖を経験する事はありません。ある日、私の車に飛び乗ってきた1人の
男がいました。そして、私の頭に銃を突きつけ、次のように宣言したのです。「お前には、持っていないものは無いのだろうが、俺には何もない。こ
れがその報いだ。死んでもらおう!」でも、私は恐くありませんでした。心の平静を保ちながら、その男に話しかけ、彼の興味をそそり、ほどなくうま
く男を車から降ろしてやったのです。
もちろん、その男が数メートル離れるやいなや、後も見ずに猛スピードで逃げ出しましたが……。
確かに、恐怖の感情はその人を守る盾になります。ところが一方、正当な理由のない怖れは、精神的、肉体的な害を及ぼします。このような恐
怖を克服するには、深層自己説得がもっとも良い手段です。私がいつも使っている深層自己説得の文句は「私は健康だ」「私は幸せだ」「私は素
晴らしい」などです。あなたにも気に入ったポジティヴな深層自己説得の言葉があれば、繰り返し、繰り返し、それを暗証してみることです。
自己の動機づけも、一種の深層自己説得です。自分に対する甘えや、優柔不断を克服したければ、まず「今すぐ、行動を!」という短いスロー
ガンを頭にたたきこんで下さい。この言葉を、何度も、何度も繰り返すのです。反復の良いところは、これがあなたの潜在意識に働きかけ、自分
の動機づけにつながるからです。こうした潜在意識を通じて、自分自身に働きかけるようにできるのです。
(ナレーター)
あなたの感情は、必ずしも、年から年中、理性とうまく折り合っているとは言えないでしょうが、行動とは大変にうまが合うのです。ネガティヴな
感情がいかに不必要か、理性的に認められれば、これは行動への動機づけに直結することができます。このようにして、恐怖もポジティヴな感情
に変えることができるのです。
いわゆる精神の第2の部門とも呼ばれる、感情が大変大事なわけは、心の内にある感情と頭脳で判断される理性を、うまくバランスさせなくて
はならないからです。何かの悩みにつきあたった時、この感情と理性のバランスを取りながら臨めば、満足のいく結果が出せるはずです。
感情にはもう一つ見逃してはならない側面があります。それは、目に見える損失、例えば、友人や恋人などを失った時の失望や絶望の感情に
結びついた、精神的な問題のことです。自己訓練だけがこの場合の対応策です。私たちは何より、この世の中にはたった二つの種類しか悩みは
ないと認識しなければなりません。解決できるものとできないもの―この二つだけです。解決できる悩みは、あらゆる実際的な手段を駆使して一
掃してしまいましょう。一方、考えても仕様のないものは心から追い出し、忘れてしまうことです。
自己訓練―これは、あなた自身が、自分を司り、過去の不愉快な思い出の扉を閉め切ってしまうことなのです。この扉には安全のために鍵を
かけておき、過去の不愉快な出来事から訣別してしまうことです。
自己訓練の欠けている人の中には、懐かしさにおぼれて扉を思い切って閉められず、過去への戸口で佇んだまま未来を見つめられない人が
います。「過去への扉を閉めるか、閉めないか―この選択には曖昧さは許されません。
過去のことを忘れ去るための扉を閉める意思の力を持たなければ、自己訓練などとてもおぼつかないでしょう。
自分の感情をコントロールする術は深層自己説得と自制によって得られます。深層自己説得は実現したいことを象徴する簡単な言葉でいいの
です。
恐怖を克服して勇敢になりたいと思えば、その怖れに打ち勝つために、「勇気を持て」と何度も自分自身に言い聞かせることです。
そして、その次には、思い切ってこの言葉に従い、実行してみることです。勇敢になりたければ、勇気を持って行動するのが一番です。やるべき
事、やりたい事に心を集中し、避けるべき事、やむをえない事などを心から追い出すのが、まず第一のステップなのです。
PMAという言語が一般化する前から、これをずっと役に立てている人もいました。その1人に、発明家、そして、合衆国建国の父、ベンジャミン・
フランクリンがいます。自叙伝によると、フランクリンは13の美徳を設定し、それを自分のうちに習慣づけようと努力したことがわかります。しか
し、一度に全部を自分のものにしようとするのは、かえって集中をそぐことになるので、フランクリンは1回に、一つの美徳をマスターするよう集中
したようです。
これから述べるのが、ベンジャミン・フランクリンの13の美徳です。これこそ、フランクリンが自分のために創った自己への動機づけでした。
1.節制―満腹するまで食べるな。酔うまで飲むな。
2.沈黙―沈黙は金。ただし、他人や自分の利益をもたらす場合は、この限りではない。特に無駄話は避けろ。
3.秩序―物事にはそれに合った場所がある。務めには、それぞれあった時がある。
4.決断力―するべき事をする決断力を持て。決断したことは必ず実行。
5.倹約―無駄使いは禁物。しかし、人や自分の利になるために使うのは、無駄ではない。
6.勤勉―時は金なり。常に有益なことにいそしめ。不必要な行動は慎むこと。
7.誠実―人を欺くな。悪意なく正直に考え、そのように話せ。
8.正義―人を傷つけたり、義務を怠ることで不正をしてはならない。
9.穏和―極端は避けよ。怒る前に自分のした事を省みよ。
10.清潔―身体、衣服、そして住居を清潔に保て。
11.落ち着き―細かい事、よくある災難、避けえない災害に心を動かされるな。
12.貞節―健全で、子孫のため以外に、欲情に走ってはならない。怠惰、弱さ、自分自身や他人の平和や評判を傷つけることをしてはならな
い。
13.謙虚―キリストとソクラテスを見習え。
さて、これがベンジャミン・フランクリンの自己啓発の信条です。ここで、誤解してはいけないのは、信条をどう役立てるかを理解することも、信条
をたてるのと同じくらい大事だということです。この知識を役立てるために必要な方法は以下の通りです。
1. 1週間の間欠かすことなく、ただ一つの信条に集中すること。何か事が起こったら忘れずに、その一つの信条に従って行動します。
2. 2週目には、その次の信条に集中する。最初に学んだ原則は、潜在意識に引き受けてもらいます。生活の中で何か、心の前面にこの信条
が浮かぶような出来事に出会ったら、迷うことなく、すぐに行動に移すこと。こうして、1週ずつ、ひとつの信条に集中していき、その間、他の信条
は潜在意識にまかせて、自分では意識しないようにすること。
3. 1回目のサイクルが終わったら、もう一度、初めから繰り返す。こうして、1年を過ぎるころには、このサイクルを4回、反復できるでしょう。
4.望ましいパースナリティになるには、また新しく開発したい信条、態度、性格へ目標を変えること。ベンジャミン・フランクリンは、自分の役に立
つ信条を作ったわけですが、あなたも自分自身にもっと適した信条をご存知でしょう。いずれにしても、あなたとフランクリンとの間の共通点は、2
人とも自己訓練を求めている点です。
自己訓練のための信条ほど、成功にとって重要な条件は、他にありません。しかも、きっと報酬をもたらしてくれるのです。
(ナポレオン・ヒル)
自己訓練とは、建設的な習慣を自分のものにすることです。現実の自分や、実際の行動は、失敗、成功に関わらず、あなた自身の習慣の結果
です。この習慣を自分で作り上げることができ、しかも考える習慣が一番大事だというのは、とりも直さず、我々人類にとって幸運なことではない
でしょうか?
人の行動には、習慣となったその人の考え方が、はっきり現れてしまいます。ですから、自分の考え方をコントロールでき、習慣化できるように
なれば、自己訓練への大きな一歩を踏み出したことになります。
確固とした動機こそ、思考習慣を身につける第一歩です。確かな動機のない自己訓練などは、机上の空論であるばかりでなく、何の価値もあり
ません。動機なしで物事を成し遂げた人間などいないのです。
この原則さえ自分のものとすれば、測り知れないほどの利益を享受することになるでしょう。第1に、鋭敏なイマジネーションとエネルギッシュな
エンスージアズムがつき、イニシアティヴが増し、率先して物事をやり始めるはずです。自分を信頼できるようになり、視野が広がり、まったく違っ
た視点から世界を眺めるようになるでしょう。
人を引きつけるパースナリティ、高い望みと野心、力強い信念があなたのものになるのです。
これから述べるリストには、四つの項目があります。
まず、本能。食べること、飲むことへの本能、心理的な態度、そして、時間の使い方への欲求。最後に、確固とした目標への望み、しかも、どれ
にも自己訓練が不可欠なのです。
食べ物、飲み物に関してはどうでしょうか?体にとりこむ食物の種類、量に関して、節制の足りない人がいかに多いかもうおわかりでしょう。実
際に必要な栄養は体内に蓄えられ、肉体や精神の働きで消耗されますが、それにも限界があり、後はいたずらに臓器に負担をかけ、余分な脂
肪として蓄えられるだけです。無駄についた脂肪は、効率を下げ、命を短くするのです。同じことが飲酒についてもいえるでしょう。飲酒を節制で
きなければ、待ち受けているのは悲惨と失敗の人生です。
一生を通じて積極的な心構えを持つだけで、私たちの目標が確固としたものとなり、人々を共鳴させられる心の持ち主となるのです。
一つ、重要なことを述べておきましょう。それは、人間はこの世でたった一つだけ自分の力でコントロールできるものを与えられているという点で
す。それは、あなたの心の持ち方です。消極的心構えで、望みもしない失敗に落ち込んでしまったり、放っておいたまま顧みず、心の中に雑草を
生い繁らせてしまうのも確かに個人の自由です。しかし、手入れをし、その方法に磨きをかけ、努力を惜しまず、人生の実りを手に入れるのも、個
人次第なのです。
他人とうまくやっていく脳力、これは私たちの生活では一番大きな部分をなしていますが、これも心の持ち方や態度、つまり積極的心構えを持っ
ているかいないかにかかっているのです。
積極的な心構えを持てれば、自分と異なっているというただそれだけの理由で、人を嫌いになることもなくなるでしょう。そうなれば、周りの世界
と友好的な関係を持ち始めたことなのです。人を自分の意見に同調させ、強力してもらうには、まず、あなた自身の心構えを人を引きつけるよう
に変えることです。そうすれば、他人のあなたに対する態度が変化する速さにきっと驚かされるでしょう。
昔のいいぐさに、時の浪費はバチあたりだとあります。悲しいことに、これは真実です。
私にはあなたの時間の使い方に文句をつける筋合いはありませんので、次のように指摘する事にしておきましょう。
時間とは、あなたの持っている資産の中で、一番高価なものだということを。
正しく使えば、銀行に資産を預けておくようなものでしょうが、また、そのように厳しい自己コントロールのもとで使わなければいけません。時間
とはおかしなもので、賢く使う以外に、これを蓄えてとっておく術はないのですから。
普通、人は8時間働き、大体8時間の睡眠が必要ですから、自由に使える時間が約8時間残ります。
人生の成功と失敗を分ける自由な時間が人の一生を決めるので、特定の目標や、それを達成するための手段を持たなかったら、人はいつも、
どうしようかという問題を胸に抱いているままです。
おもしろいことに、自分の脳力を分析し、その開発方法やプランを書きとめるという自己訓練を行なうには、十分に考え、多大のエネルギーを費
やさなくてはなりません。
しかし、それは同時に、人生から得たいものを整理させてもくれるのです。すべての力の源である、限りない人類の叡智も、あなた自身が何を
望み、何をどうしたいのかを決めない限り、手の下しようがありません。
私が育ってきた環境では、継母以外には、ただ1人の友人もいない時がありました。
もし、継母が私を勇気づけてくれなかったら、一体どうなっていただろうと思ってしまいます。
私のライバルは、よくこう言って悪態をついたものです。「あいつは成功の話を口にしているわりには、貧乏じゃないか!」と。
これで一番、傷ついたのは、それが本当だったからです。私は20年の間、自己訓練に励んでいたのですが、この哲学に対して世間がまるで無
関心であったため、自分自身で訓練を実行する以外になかったのです。この厳しい時期を乗り切るには、自分の内面と向き会い、自己訓練を尽
くすしかなかったのです。
どこの誰であれ、何かを始めようと思ったら、必ずや大きな試練にぶつかる事をまず、覚悟しておきましょう。私がこの哲学を教え始めた最初の
学生たちのことを、今だに忘れる事はありません。私のクラスには6人の学生がいましたが、授業が終わる前に、4人が出て行き、残りの1人は
授業料を払うのを拒みました。支払うだけの価値のある授業を受けていないという理由です。実は、私も内心、彼の言うとおりだと思っていまし
た。
あなたも最初のうちは、こういう難関を乗り越えて自己訓練に励まなければなりません。
自分の好みや生活水準を整理し、自分が今本当に持っているものに適合させ、将来、もっと素晴らしい収穫を手にする時まで、じっと我慢する
のです。
このような苦難を乗り切るためには、あなたの動機やポテンシャルを理解でき、本当に共鳴を示してくれる人に相談し、理解を得ることも必要で
す。そうでなければ、意思を自分の心の内に秘め、代わりに行動で示しましょう。
「言葉より行い」この格言は私たちみんなにあてはまるのです。
(ナレーター)
アルフレッド・C・フラーは、ノバ・スコティアの貧しい農家の家族に生まれ育ちました。
彼は、1人で生計を立てることになってから最初の2年の間に三つもの職を失いました。しかし、その後、彼の人生が大きく変わっています。
ブラシのセールスを始めたのです。しかも、その時初めて、仕事に対する興味がフツフツと湧き出すのを感じたのです。失った最初の三つの仕
事は、もともと自分に合っていなかったのだと気づき、ついに自分にピッタリの職、つまり、セールスならうまくやっていけることというのがわかった
のです。
アル・フラーは、セールスが何より好きでしたから、その分野では最高の業績をあげてやろうと決心したのです。
抜群の業績をあげ、セールスパースンとして成功を獲得し、成功への階段を登るため、少しずつ高い位置に目標を設定して行きました。そのう
ちフラーは、自主的な営業活動を始め、さらに、ブラシを売るだけでなく、ブラシの製造も始めました。
営業成績が伸びて行くと、古い物置を月11ドルで借りて、アシスタントを雇い、ブラシを製造させる一方で、また彼は、セールスに集中しました。
社会に出てすぐに三つの職を失った若者の到達した結果は、というと、数千人にも及ぶ個別訪問のセールスパースンをかかえ、数百万ドルに及
ぶ年収をあげるフラー・ブラシ会社なのです。皆さん、自分に向いている事に集中すれば、いかにたやすく成功できるか、おわかりいただけたでし
ょうか。
(ストーン)
たとえ失敗をしても、私たちはそれを長所に変えることができます。製品やサービスの研究に時間を割かなかったり、怠惰のせいで失敗したの
なら恥ずべきでしょう。しかし、積極的心構えを失わなければ、どんな不運に遭遇しても、それと同等の、あるいはそれ以上の利益に変わる芽が
あるということを忘れないで下さい。
実際、驚くような成功を収めた人物の経歴を見てみれば、彼らの多くがいかに手ひどい失敗を経験してきたか、一目瞭然です。この失敗をバネ
にし―クリエイティヴな思考を通じて、利益を見出し、同じ製品や、もっと新しい製品、あるいは今まで考えたこともない新しい事業に乗り出して行
ったのです。
もし、彼らが失敗などせずに、従って、不利な状況を好転させる正しい態度がなかったら、成功は考えられなかったでしょう。
(ナレーター)
しかし世の中には、職についたり、お金を儲けたり、事業で成功したいという動機よりもっと切実なものがあります。
欲求の中で、最大で、最強のもの―それは生存への欲求です。
エドワード・V・リッケンバッカー機長は、アメリカで最も尊敬を集めている人物の1人で、「キャプテン・エディー」というニックネームで親しまれて
います。この名前は、信頼、高潔、仕事への忠誠心、そして良識のシンボルとさえなっているのです。
彼の人生は、操縦する飛行機が太平洋上に墜落した時以来、まったく変わってしまいました。墜落後、残骸も遺体も確認されずに、1週間が過
ぎ、2週間がたちました。そしてとうとう、21日目にキャプテン・エディーとそのクルーが救助されたというニュースが世界中を沸き返らせたので
す。見渡す限り、空と水平線しかない太平洋の真ん中に漂う、キャプテン・エディーとクルーを乗せた3そうのいかだ。着水した時の負傷や灼熱の
太陽と飢えや渇きにあえぐ男たち。つなぎ合わされた3そうのいかだにつめこまれた瀕死の男たちが、毎朝、毎夕、ぬかずき、祈った姿は、想像
に難しくありません。
(ストーン)
この世のひとりとして、今まで神を見たことのある日とはいないし、これからも神を見ることはないでしょう。私は、思索を始める時にはまず、宇
宙について考えます。人類には、神を描いたり、理解する脳力はありません。神は人間ではないのですから。しかし、神の存在は、時が始まって
以来の宇宙的な力として現にあります。この普遍の力は、生物、無生物を問わず、すべての内に存在します。そう、あなた自身の中にも神がいる
のです。