PARTNER ニュース 6 月のコラム

PARTNER ニュース 6 月のコラム
第 198 号
「現場が大事」実践のススメ ― まちを観察しよう
第 199 号
F国にて
第 200 号
休日出勤の出来事
第 201 号
仏語圏へのいざない
第 198 号
「現場が大事」実践のススメ ― まちを観察しよう
国際協力の仕事をしていると、「現場」という言葉があちらこちらに登場します。国際協力の仕事を一言
で表わすならば「途上国に住む人たちの生活を改善すること」。つまり途上国に住む人たちの暮らしの中
に私たちの仕事の現場は存在します。そして、「現場にある課題を解決するための答えは、必ず現場にあ
る」と思うのです。生活のサイクルはどうか、そこで消費される物はどこから運ばれてくるか、情報が集まっ
てくる場所はどこか、現場をよく観察すると答えはおのずと見つけやすくなります。
ではどうやって、「途上国に住む人たちの暮らしの現場に身を置くか」。私は、まち歩きをお勧めします。
途上国での出張や滞在時は、出発地から目的地まで車で移動することが多いと思います。そこを、あえて
車を降りてまちを歩いてみるのです。
まちには何が売られていますか? 働いているのは男性が多いですか? 女性が多いですか? 道は
舗装されていますか? ごみはどのように捨てられていますか? 自分が従事するプロジェクトや仕事を
頭の片隅に置きながらまちを歩いたり、ちょっと立ち止まって観察してみてはいかがでしょうか。車の中か
らも景色は見えますが、自分の足で歩くとまちは違って見えるものです。
以前出張で行ったフィリピンのとある島でのことです。出張中、移動のほとんどに車を使い、まちの様子
を見る時間と心の余裕さえなかったのですが、最終日、州都のメインストリートを歩いて散策する時間があ
りました。短い時間でしたが、交通のプロジェクトのためフィリピンを訪れていた私にとって、道行く人が必
ず横断する横断歩道以外の場所、車・自転車・通行人の往来の割合、信号の変わるタイミングの速さなど
データだけでは分からなかった、そのまちの動きを“体感”として感じることができたのです。
もちろん、まちを歩いて観察して得た“体感”では客観的なデータにはならず、報告書には使えないかも
しれません。ただ、その場で得た現場の空気などの触覚情報は、無機質なデータや理論をつなぐ役目を
果たします。
データは人を説得することはできますが、心を動かし納得させる力は弱いものです。プロジェクトの妥当
性を説明するとき、助成金を獲得するとき、カウンターパートと事業内容を議論するときは、客観的データ
だけに頼りすぎず、現場で得た人の血の通った肌感覚・センスを持って関係者の納得を引き出すことが仕
事を成功に導く要素なのではないかと思っています。
第 199 号
F 国にて
日本人は、朝から晩までよく働く。
在外から帰国し、本部で勤務していると特に感じます。在外事務所においても、朝 8 時半より勤務し、終
業の午後 4 時半になると、National Staff は潮が引くように帰宅しますが、そのあと日本人所員がひたすら
夜 9 時、10 時まで仕事をしていることは度々ありました。
ただ、労働時間さておき、自分を含め、果たして日本人の労働生産性は高いのか日々疑問に思ってい
ました。かつて 2 年ほど滞在した欧州大陸に位置するF国での経験からも、日本人のそれは、非常に低い
のではないかと…。
バカンスの時期など、F国人は本当に働きません。階級社会のF国で幹部社員と一般社員では多少の
差はあるものの、バカンスの時期になると、話題と言えば、今年はどこでどう過ごそうかそれ一色です。30
日ぐらい夏休みをまとめて取るのはざらで、仕事は全部バカンス明け、御用の方は 9 月以降にどうぞと言
う感じです。
実感値ではなく客観的にはどうなのかと思い、OECD のFact book で年間の実労働時間を調べてみると、
参考値ではありますが、日本の 1,772 時間に対し、F国は 1,544 時間です。
一方、2008 年 IMF レポートによると、F国の GNP は、世界第 5 位 2,865(単位 10 億 US$)で、世界第 2
位の日本の 60%に迫る勢いです。30 日も 40 日もバカンスを過ごし人生を謳歌しつつ、これだけの経済力
をたたき出すF国人に、私など尊敬の念以外のなにものもありません。
ちなみに、労働生産性については、日本は、OECD30 ヵ国中 20 位である一方、人生楽しみながら仕事も
程々に?と言うF国は堂々6 位*と、実生活で実感した通りのものでした。なお、日本は先進7ヵ国中最下
位です。
F国にいた当時、労働者と言えば権利ばかり主張して、聞いてもらえなければ、即座にストライキ!この
人たち、さっぱり働きゃあしないとぼやいていた自分を反省しています。
ワークライフバランスを考えるうえで、F国人の生き方は大変参考になるかと思います。
一方、日本人でも平成の名経営者 100 人(日本経済新聞)にも選出された吉越浩一郎氏(元トリンプ・イ
ンターナショナル・ジャパン社長)などは、スピードと効率を重視し、次々にユニークな制度を取り入れ、F
国人に負けない生産性と社員の能力向上、充実した生活を可能にしました。結果的に、全社残業 0 時間
&19 期連続増収増益を達成したことは、賞賛に値することかと思います。著作「残業ゼロの仕事力」は、
経営トップのイニシアティブで、こうも組織は劇的に変わるものかと大いに参考になりました。
人間、生きている時間が限られるなか、どういう人生が自分にとって最も幸せなのか、ふと再考するの
もいいことかもしれません。
*2007 年版 労働生産性の国際比較 (財)社会経済生産性本部 より
第 200 号
休日出勤の出来事
現在の職場に引っ越してきて、早くも 8 ヶ月が過ぎようとしています。この間、私は JR の駅から職場まで、
朝晩徒歩で通っていますが、人ごみを避けつつもなるべく最短ルートを取るようにしていました。ところが、
先日、たまたま休日出勤をしなければいけなくなり、駅からいつものルートを歩こうとしたところ、天気も良
かったので、前々から気になっていた桜が咲いていた近くの公園を思い出し、ちょっと歩いてみようと思い
ました。
階段を昇って公園に入ると、青々とした桜の木の並木道があり、手入れが行き届いた遊歩道のような公
園になっていました。都会の真ん中に、しかも、それほど広くないスペースに、こんな公園があるのだと思
いながら歩いていると、あまり人がいないものの、ベンチに座ってビールを飲みながら談笑しているグルー
プや、ウォーキングの途中で休んでいると思われる夫妻が目に入りました。歩いているうちに、やはり小さ
くても自然に触れるのはいいなと爽快な気分になりました。
公園から出て、必然的に遠回りとなる道を歩きながら、オフィスに向いました。その途中で、近所に住ん
でいると思われる車椅子に乗ったお婆さんと、その車椅子を押している娘さんらしい人に出会いました。い
つもの日課の散歩なのか、お婆さんは、近くの家の小さな植え込みに咲いている赤いバラの花を見つける
と、「やっと咲いたね。バーラが咲いた、バーラが咲いた ~♪」と歌いだしました。この都会の真ん中にも
小さいにせよ、植え込みがたくさんあり、そして色々な花が咲き出している事に気付きました。
いつもと違った感じで街の景色を眺めながら、心が豊かになったような気がして、会社に着きました。そ
の日は、休日の仕事とは言え、何か心に余裕を持った感じで仕事をする事が出来ました。私にとっては、
仕事をする会社のある場所は、他の人々が日常の生活を営む場所でもあるとの当たり前の認識を新たに
すると同時に、これからの通勤をより楽しいものにしてくれるきっかけを与えてくれた出来事でした。日常
の通勤ルートではないルートを取る事によって、日常の通勤ルートを地域的な視点で捉えるとともに、その
日常通勤ルートで気付かなかったことに気付く楽しみが増えたわけです。
私たちの仕事に関しても同じような事がいえるのではと思います。在外事務所の職員によれば、在外で
は近年一段と、日本では感じられないほどのグローバル化が進んでいるとのこと。ODA を語るには、これ
も当然ですが、グローバル化を意識した視点でないと、物事の本質を見誤ってしまう可能性があると思い
ます。
欧米はもとより、かつて我々の ODA の受け手であった国々の政府援助機関、企業や NGO が今まで以
上にどんどん途上国に進出しています。また、飽和状態の日本市場を後に、「日本のベンチャー企業が途
上国に進出している、また途上国の人々も海外に職住をもとめて他の国に出かけている」等を聞くと、これ
も当たり前ですが、ODA 関係の情報だけでなく、広く世界の動きを知る必要があるなと改めて思いました。
そのためには、もっと幅広い交流を心がけようと思います。
また、仕事の関係上、ODA 関係の本はたくさん読むのですが、もっと大局的な観点を掴むために、世界
の動きを知るための本も読まなければと思います。政治・経済関係の書物だけでなく、違った環境で暮ら
す人達の心の動きを知るためには、文学作品等も読む必要がある等々、日々の自分の生活態度が、自
分自身の活動や視野に幅をもたせることが出来るのだと改めて実感したのが、この休日出勤をした日の
出来事でした。
第 201 号
仏語圏へのいざない
私がフランス語学校に通い始めて、ふと驚いたことがある。それは受講生のほとんどが女性であるこ
と、そしてそのほとんどがフランスの映画やファッション、芸術などに興味を持っていることだった。男性で
ある自分にとって、学習継続の大きなモチベーションとなったことが恥ずかしくも思い出される。
世界でフランス語が話されている国は 50 カ国以上あるが、その約半数がアフリカの国である。また人
口をベースに見ると、約 3 分の 2 がアフリカ人であり、フランス語圏で人口が最も多い国は、フランスではな
く、アフリカのコンゴ民主共和国である。サブサハラ 48 カ国のうち、実に半数の国でフランス語が話される。
さながらアフリカは仏語大陸だ。
そこで語られるフランス語は、植民地の歴史であり、アフリカの真の独立と自立的発展であり、貧困や
紛争の問題である。仏語圏国際機構(OIF)の総会では、文化・言語的側面以上に、政治・経済や平和構
築が議題の主役であり、彼らなりの解決の糸口を探る。連帯感(Soridarité)をもったコンテクスト共同体
だ。
かくいう私にとっても、仏語への興味は、フランスのアルジェリア介入だったり、ザイールのモブツの独
裁だったりした。そしてその後、幸運にも仏語圏のセネガルに赴任の機会を得る。
言語は人メディアの最重要な媒体手段だ。アフリカ大陸の西端にいても、フランス語を解して、遠く大
湖地方の紛争を知り、マダガスカルの大統領選挙を知り、ハイチの政変を知る。これに対し、ガーナやケ
ニアなど、異言語圏の情報密度は、圧倒的に薄かった。
ダカールでの任務を終えたあと、私は紛争をやっと抜け出そうかというコンゴ民主共和国に、新たに
JICA 拠点・事業を立ち上げるマンデートを負い、かばんひとつで赴任した。そこでもうひとつ気付かされる
ことがあった。同じ史実や、同じ事件について、英・仏、両言語で、まったく異なった報道がなされることが
しばしばあったことだ。残念ながらこの国にはまだ多くの干渉や介入が続いている。何が起きているのか、
誰がどんな視点でこの国にかかわろうとしているのか、つたない 2 言語でも、立体的に捉える必要に迫ら
れた。
サブサハラのアフリカで仏語が話される国は、中西部に集中する。日本から見れば、物理的にも、心
理的にも距離が遠い。いわば裏アフリカだ。しかしこの裏アフリカにこそ、人間開発指数の低い国が集中
する。紛争・政変が耐えない。またすばらしい文化・芸術・音楽の震源地でもある。言葉のカーテンを開か
なければ見ることができない世界がそこにある。
グローバリゼーションが進行する中、世界が共通言語で結ばれる運命に帰結するとの意見を耳にす
ることがある。フランス語がアフリカの固有語ではないという議論はさておき、私は、世界は多様性を維持
すべきであるし、多極化されていることが大切だと思う。カーテンの向こうに身を置くと、そんな風にも思え
てくる。仏語圏へのいざないである。
(派遣前仏語集中研修制度のおしらせ)
JICA では、仏語圏諸国におけるポストを多数募集しています。応募の間口を広げるため、このたび、派遣前の仏語強化研修
制度を設けました。応募のタイミングで、現地での業務遂行に必要な仏語レベルが不足している方を対象としており、選考合格後、
約 2 ヶ月、全日制の集中トレーニングを東京で実施します。原則としてフランス語の素養(仏検 4~3 級程度以上)をもった方が対
象となりますが、以前、大学で第二外国語として学習された方、学習を開始したけれどモノになっていないという方、またしばらく
使っていなかったのでさび付いている、とお考えの方にも適用の可能性があります。研修の要否は、選考・派遣手続きの際に、お
持ちの公的資格や語学テスト結果等を勘案し、JICA 側で決定します。フランス語圏にキャリアを広げたいとお考えの皆様の積極
的なご応募をお待ちしております。