Ⅱ − 11 新しい添加剤 MS ライブラリーを用いたポリスチレン中 の添加剤

2008 年
Ⅱ − 11
第 13 回 高分子分析討論会
新 し い 添 加 剤 MS ラ イ ブ ラ リ ー を 用 い た ポ リ ス チ レ ン 中
の添加剤の分析
フロンティア・ラボ
お
だ ぎり
か
よ
ま つ い
か ず こ
わたなべ
ちゅういち
1)
、愛知工大
つ
げ
2)
しん
○ 小 田 桐 佳 代 1)、松 井 和 子 1)、渡 辺 忠 一 1)、柘 植 新 1),2)
[緒言]高分子材料には、機能性向上の目的で、酸化防止剤や紫外線吸収剤をはじめ
とする各種の添加剤が加えられている。これらの分析において、加熱炉型熱分解装置
を 用 い る 熱 脱 着 (T D ) - G C/ M S 法 は 煩 雑 な 前 処 理 を 必 要 と し な い こ と か ら 、近 年 、注 目 さ
れ て い る 。 こ の 際 、 GC/MS を 用 い て 検 出 さ れ た 化 合 物 は 、 質 量 ス ペ ク ト ル (MS)ラ イ ブ
ラ リ ー 検 索 に よ り 定 性 す る の が 一 般 的 で あ る が 、 汎 用 の W il e y や N I S T の よ う な M S ラ
イブラリーには、添加剤自身及び、その熱分解生成物に関する登録件数があまり多く
はないため、定性が困難な場合もある。そこで演者らは、これらのライブラリーを補
完 す る た め に 、 3 5 8 種 類 の 添 加 剤 を 60 0 ℃ で 瞬 間 熱 分 解 し て 得 ら れ る パ イ ロ グ ラ ム と 、
そ の 主 要 な 熱 分 解 生 成 物 の ス ペ ク ト ル を 含 む 、新 し い 添 加 剤 M S ラ イ ブ ラ リ ー を 構 築 し
た。この中には、添加剤自身のマススペクトルに加え、それら由来の熱分解生成物の
マ ス ス ペ ク ト ル も 含 ま れ て い る 。本 報 で は 、こ の 新 し い 添 加 剤 M S ラ イ ブ ラ リ ー を 用 い
て 、 ポ リ ス チ レ ン (PS)中 に 含 ま れ る 未 知 添 加 剤 の 分 析 を 試 み た 。
[ 実 験 ] 分 析 シ ス テ ム は 、 縦 型 加 熱 炉 型 の 熱 分 解 装 置 (ダ ブ ル シ ョ ッ ト ・ パ イ ロ ラ イ
ザ ー P Y- 20 2 0 iD 、 フ ロ ン テ ィ ア ・ ラ ボ 社 製 ) を G C/ M S の ス プ リ ッ ト / ス プ リ ッ ト レ ス 注
入 口 に 直 結 し 、 不 活 性 化 金 属 キ ャ ピ ラ リ ー 管 ( 長 さ 2 . 5 m 、 内 径 0 . 1 5 m m )、 ま た は 金 属
キ ャ ピ ラ リ ー 分 離 カ ラ ム ( Ul t r a AL L OY + - 5;5 % ジ フ ェ ニ ル 95 % ジ メ チ ル ポ リ シ ロ キ サ ン:
長 さ 3 0 m、 内 径 0 . 25 m m、 膜 厚 0 .2 5 μ m : 同 社 製 ) を 、 V en t- f r ee G C/ MS ア ダ プ タ ー (同
社 製 )を 介 し て MS に 接 続 し て 構 成 し た 。 試 料 は 、 未 知 添 加 剤 を 含 む PS を 20 mg/ml の
濃 度 の ジ ク ロ ロ メ タ ン 溶 液 と し 、不 活 性 化 試 料 カ ッ プ に 採 取・乾 燥 後 、測 定 に 供 し た 。
測 定 結 果 に つ い て は 、添 加 剤 M S ラ イ ブ ラ リ ー を 用 い て 、主 要 ピ ー ク の 質 量 ス ペ ク ト ル
を 検 索 し 、 PS 中 の 未 知 添 加 剤 の 分 析 を 試 み た 。
[ 結 果 と 考 察 ]ま ず 、揮 発 性 の 添 加 剤 の 熱 脱 着 温 度 を 検 討 す る た め に 、発 生 ガ ス ( E G A) - MS
分 析 を 用 い て 、P S 試 料 を 1 0 0 ∼ 7 0 0 ℃ ( 2 0 ℃ / m i n ) で 昇 温 加 熱 し 、そ の 加 熱 過 程 で 逐 次 発
生 す る ガ ス を オ ン ラ イ ン で M S 検 出 し て 、サ ー モ グ ラ ム を 測 定 し た 。こ の サ ー モ グ ラ ム
を 図 1 に 示 す が 、 100∼ 300℃ の 範 囲 に お い て 、 添 加 剤 の 溶 出 が 確 認 さ れ た 。
そ こ で 、 10 0 ∼ 3 0 0℃ ( 2 0 ℃ / m i n 、 5 m i n 保 持 ) で 熱 脱 着 し た フ ラ ク シ ョ ン に つ い て 、 分
離 カ ラ ム を 用 い る TD - G C/ M S 法 に よ り 、G C オ ー ブ ン 温 度 を 4 0℃ ( 2 m i n 保 持 )∼ 3 20 ℃ ( 20 ℃
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2008 年
第 13 回 高分子分析討論会
/ m i n、 14 m i n 保 持 )の 昇 温 条 件 下 で 本 分 析 を 行 っ た 。 こ の 測 定 結 果 を 図 2 に 示 す 。 各
ピ ー ク を 汎 用 の W i l e y 7 /N I ST 05 及 び 添 加 剤 MS ラ イ ブ ラ リ ー を 用 い て 検 索 し た と こ ろ 、
表 1 に 示 す よ う に 、添 加 剤 MS ラ イ ブ ラ リ ー の 保 持 指 標 及 び 、マ ス ス ペ ク ト ル の 類 似 度
から、9 種類の添加剤が推定できた。また、同定した各添加剤のピーク面積の再現性
( R S D% 、 n =5 ) は 、 10% 以 下 で あ っ た 。
以 上 の 結 果 か ら 、3 5 8 種 類 の 典 型 的 な ポ リ マ ー 用 添 加 剤 を 含 む 、添 加 剤 M S ラ イ ブ ラ
リ ー が 、 TD-GC/MS 法 を 用 い た 未 知 添 加 剤 の 同 定 に 非 常 に 有 効 で あ る こ と が 示 さ れ た 。
Zone B
(ポリマー)
図1 未知添加剤を含むPSのサーモグラム
Zone A
(添加剤)
x10
6
8
10
12
14
300
1
5
10
15
16
20
18
20 min
400
8) Irganox 1076
6) Paraffin oil
5) Tinuvin 770
200
500ºC
10) Brominated compound
4
9) Adecastab PEP- 36
2
100
7) Irgafos P- EPQ FF
TIC
Styrene trimer
3) Tunuvin P
4) Tri-phenyl phosphate (TPP)
2
Styrene dimer
x106
3
2) BHT
Styrene
1) 2,4-Dibromophenol
<分析条件>
サンプル量:0.1mg、 検出器:MS,
分離カラム:不活性化金属キャピラリー管(長さ 2.5 m, 内径 0.15 mm),
Vent-free GC/MSアダプター使用、
加熱炉温度:100→700℃(20℃/min), GCオーブン温度:300℃,
GC注入口温度:300℃, キャリヤーガス:He, スプリット比:1/50,
カラム流量:1.0 mL/min
25
30 min
図2 未知添加剤を含むPSのTD-GC/MS分析によるクロマトグラム
<分析条件>
サンプル量:1.0mg、 検出器:MS, 分離カラム:Ultra ALLOY+-5(5%ジフェニルジメチルポリシロキサン; 長さ 30 m, 内径 0.25 mm, 膜厚 0.25 μm),
Vent-free GC/MSアダプター使用、加熱炉温度:100→300℃(20℃/min), GCオーブン温度:40(2 min保持)-320℃(20℃/min、14 min保持),
GC注入口温度:300℃, キャリヤーガス:He, スプリット比:1/20, カラム流量:1.0 mL/min
表1 ライブラリーによる検索結果
化合物名
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2,4-Dibromophenol
BHT
Tinuvin P
Triphenylphosphate(TPP)
Tinuvin 770
Paraffin oil
Irgafos 168 or IrgafosP-RPQ FF
Irganox 1076
Adecastab PEP-36
Brominated compound
マスクロマトグラム
における各ピーク
面積の再現性
m/z
RSD(%)
実測値
250
205
225
326
342
4.4
10.0
3.8
1.8
7.8
1,366
1,524
2,123
2,447
3,128
※
57
530
57
720
※
4.7
3.5
3.7
6.5
マススペクトル
類似度(%)
保持指標
※
3,449
3,628
3,920
※
添加剤
添加剤
ライブラリー ライブラリー
1,397
95
1,526
92
2,106
86
2,428
96
3,117
99
※
99
3,451
78
3,629
86
3,903
95
※
※
Wiley/NIST
95
91
96
95
84
※
※
93
※
※
※登録なし