1.背景 2.目的 - 日本建設情報総合センター

財団法人 日本建設情報総合センター
1.背景
地理情報システム(GIS)の進歩に従って様々な電子地図が登場している。多くの電子
地図は、表示対象の大きさや表示範囲を自由に定めて、滑らかに表示できるようにベク
トルデータによってシステム化されている。
近年では複数の地図情報を利用する機会も増え、1つの地図情報を別の地図で利用した
いという状況が生じている。それに伴い、利用者のニーズは多様化している。複数の
GIS情報から、必要情報だけを取得し、広域的な情報収集や複合的な情報把握を単一地
図(以後基盤地図と呼ぶ)で表示したいと言う要望が出てきているのが現状である。
しかし、GISシステムの複雑化・多様化に従って、地図データに盛り込まれるデータ
の互換性が確保しにくいので、任意の地図を自由に結合することはまだまだ困難である。
この場合、最終的に表現された地図画像をラスター画像で交換できれば、目的を果た
すことができる。複数の地図があったとき、画面上に表示されている一方の地図画像か
ら目的範囲をラスター画像で切り出し、基盤地図に重ね合わせることができれば簡単で
ある。
2.目的
研究第一部は、先の問題点を解決するために、汎用GIS表示システムを開発した。
汎用GIS表示システム「(仮称)切り絵システム」(以後切り絵システムと呼ぶ)は、
それぞれ独立して運営されているGISから必要な地図画像を生成させ、画像情報をラス
ター画像で必要な部分だけ切り取り、切り絵システムの地図表示サーバに送信し、縮尺
補正、色補正、座標変換、表示に必要な大きさに拡大・縮小を行った上で、ラスター画
像として基盤地図にそのまま貼り付ける。これにより、リアルタイムに基盤地図上に対
しての表示を可能に出来るシステムを開発した。
切り絵システムの目的は、主に次の項目に集約できる。
① 個別のGIS毎に整備された地図情報の相互表示
② 地図の重ね合わせ、地図情報の集約
③ 地図情報の共有による地図データの整備、運用コストの削減
−39−
財団法人 日本建設情報総合センター
3.切り絵システムの基本機能
・
切り絵システムの概要
切り絵システムは、画像データで処理を行い、異なる複数のGISで生成された必要
画像だけを切り取り、地図表示サーバにて集約及び加工を行い、それを地図表示ク
ライアントの基盤地図に表示を行うことにより、今までの基盤地図で、必要画像を
同時表示が出来ない問題点を解決する事が可能となった。つまり、切り絵システム
は、地図表示サーバを中心とした、情報を持った画像を処理するGISコネクターとし
ての位置づけと見なす物である。
河川GIS
道路GIS
自治体GIS
切り絵システ
その他GIS
ム
地図表示クライアン
汎用 GIS 表示システ
図−1
・
【
概念図
】
切り絵システムの特徴
切り絵システムの優れた特徴を以下に示す。
1)切り絵システムは、地図取得エンジンである。
独立して運営されている複数のGISから生成された画像情報を、ラスター画像で
必要な部分だけ取得し、切り絵システムの地図表示サーバに集約し(取得元のオリ
ジナルデータに影響を与えない)、縮尺補正、色補正、座標変換等を行い、切り絵
システムの地図表示サーバを経由し、表示クライアントに送信を行い基盤地図に貼
り付ける。
2)ラスター画像の使用
ベクトルデータを使用すると、広範囲の情報まで一緒に取得しなければならず、
やり取りするデータ量が多くなってしまうと言った問題が出てくる。そのため切り
絵システムは、必要画像だけをラスター画像で切り取り使用している。
3)ラスター画像の高速表示を行っている。
同じ図形を表示するとしたら、ベクトルデータとラスター画像を、比較するとラ
スター画像の方が、データ量が多く処理時間も多くかかる。そのため表示画面の細
分化を行い、データ転送時やスクロール時の新たな取得情報の軽量化を図ることで
表示画面スクロール時の迅速化を実現又、地図表示を行っている間他の処理をバッ
クグラウンドで行い、高速処理を実現可能である。
−40−
財団法人 日本建設情報総合センター
4)Javaで開発を行っているので、OSには依存しない。
プログラム言語にJavaを採用することでWindows、Linux、UNIX,Mac OS等のオペ
レーションシステムに依存しない動作を実現し、各OSが個々にバージョンアップを
行っても対応可能である。GISが動作しているOSに依存せず動作可能である。
・
システム構成
切り絵システムのシステム構成は、GISにダウンロードした地図画像取得エンジン
と、地図表示サーバ、地図表示クライアント(担当者のPC)の3つから構成される。
情報の流れは以下のようになる。
① GISが地図及び画像情報の表示を行う。
② 地図画像取得アプリケーションが必要画像を切り取る。
③ 切り取った地図画像を、地図表示サーバに送信。
④ 編集対象画像を作成
⑤ 地図表示クライアントに送信。
⑥ 仮想地図に貼り付ける。
地図表示クライアント
他のGISクライアント
地図表示サーバ
④ 編集対象画像を作成
⑥ 仮想地図に貼り付け
基盤地図管理
る
編集対象図形作成
基盤地図表示
画像の貼り付け
編集対象図形管理
⑤
既存のGIS
①地図及び画像情報の表
示を行う。
地図属性表示
③
地図画像取得エンジン
②必要画像を切り取る。
地図表示クライアン
トに送信。
地図表示サーバに送信。
切り絵システム
図−2
【
切り絵システムの構成図とデータの流れ
−41−
】
財団法人 日本建設情報総合センター
・
切り絵システムの内部処理
切り絵システムの概略内部処理を、下記の図に示して説明を行う。
1)縮尺調整
地図縮尺は1/20万から1/2万5千迄を対象にしている。
縮尺の違う地図の切り取りの例を上げ画像の貼り付けの説明を行う。GIS−Aは
1/20万の縮尺・GIS−Bは1/2万5千の縮尺であると想定する、このように縮尺
の違うGISから必要画像を切り取って下記の図のように、地図表示サーバで、画像
の大きさの調整を行う。
2)透過処理
その後、大きさを調整した地図画像を基盤地図を透けて見えるように透過度の調
整を行い、仮想地図に貼り付け、透過度の調整を行った後、編集対象図形を地図表
示クライアントの仮想地図に貼り付けを行う。その様にして、あたかも基盤地図に
切り取られた画像が貼り付けられているように見せることができる。
GIS-A 1/20 万の縮尺
地図表示クライアント
地図表示サーバ
仮想地図
透過処理
100m
縮尺調整
編集対象図形を貼り付け
る
GIS-B 1/2 万 5 千の縮尺
100m
基盤地図
図−3
【
切り絵システムの内部処理
−42−
】
財団法人 日本建設情報総合センター
4.切り絵システムの利用効果
・
切り絵システムの表示方法
一例として、切り絵システムの表示方法を災害時の運用で説明を行う。
河川GIS、道路GISから必要画像を切取り、切り絵システムを使い災害対策本部室
の総括机上のPCに統合表示を行うと想定する。
① 河川GISで洪水情報が表示されていると想定する。
② 道路GISで土砂崩れ情報が表示されていると想定する。
③ 洪水情報・土砂崩れ情報だけをラスター画像で切り取り、地図表示サーバに取り
込み編集処理を行う。
④ 編集画像を災害対策本部室の総括机上のPC(地図表示クライアント)に送信して、
基盤地図上に貼り付け表示を行う。
切り絵システ
ム
河川 GIS の地図表示
道路 GIS の地図表示
災害対策本部室の総括机上の PC
図−4
【
切り絵システムでの地図表示
−43−
】
財団法人 日本建設情報総合センター
・
切り絵システムの利用による期待できる効果
1)異なるシステムで把握している情報
(例えば、災害時における通行止め区間、浸水区域、施設被害等)を一つの画面
で集約表示することによる情報の一元的な把握。
2)複数の機関(例えば、府県間、市町村間)の近傍情報を統一的に表示すること
による情報の共有化を実現
3)必要な情報のみを取得・表示することによる、情報伝達の迅速化や取得作業の
簡素化、情報表示の的確化
これらの効果を発揮できる場面の例として、災害緊急時の情報集約支援作業で
の利用が考えられる。
こうした場面では、大規模災害時に行政部門や機関、さらにそれらのGISに集約
されている施設被災状況、道路の通行止め区間、浸水区域、土砂崩れ地域、避難
場所等の情報を一つの画面に集約し一元的に把握する場合や、複数の府県や市町
村にまたがる広域的な情報を統合的に表示することによる情報の共有化といった
場面での利用が想定される。こうした場面で、このシステムが威力を発揮すると
考える。
5.切り絵システムの応用
切り絵システムは、エンジンとしての位置づけとし、以下に示すいろいろなアプリケ
ーションの作成や、完成された複数の他のGISシステムとの連動が可能である。それに
より、国土交通省の地方整備局や各自治体の、色々な業務に役に立つ可能性を模索
している。
① 新アプリケーションの開発
② 災害支援システムとの連動
③ 平常時システムとの連動
④ 地方自治体システムとの連動
⑤ 他省庁のシステムとの連動
等、幅広く連動を行い、横展開を広げていくことが可能です。
−44−