New York University( NYU) ニューヨーク大学 Ⅰ.大学の概要 ニ ュ ー ヨ ー ク 大 学 ( NYU) は 14 の ス ク ー ル ( School) で 構 成 さ れ て お り 、 う ち 7 つ が 学 部 に あ て ら れ て い る 。2500 以 上 の 学 科( 学 部 )が あ り 、160 プ ロ グ ラ ム が 提 供 さ れ て い る。 設立年 1831( 昭 和 6 ) 年 4 月 18 日 場所・住所 アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市 形態 私立大学 学科構成 学部(7学科) • College of Arts and Science 人 文 社 会 学 部 • Tisch School of the Arts • The Stern School of Business • The Steinhardt School of Education 学 校 教 育 学 部 • Gallatin School of Individualized Study • The School of Social Work 社 会 福 祉 学 部 • The School of Continuing and Professional Studies 専 門 性 養 成 学 部 メディア・芸能学部 ビジネス学部 個別研究 大学院(7研究科) • College of Dentistry 医 学 研 究 科 歯 学 部 • Graduate School of Arts Science 人 文 社 会 研 究 科 • The Steinhardt School of Education 教 育 学 研 究 科 • Leonard N. Stern School of Business ビ ジ ネ ス 研 究 科 • Professional Studies 専 門 職 研 究 • Public Service 公 共 福 祉 • Social Work 社 会 福 祉 • Gallatin School of Individualized Study 個人研究 他 に 、リ タ ー ニ ン グ 学 生( 卒 業 後 に ま た 勉 強 し に 戻 っ て く る 学 生 )も 受 け 入 れ て い る。 海外キャンパス • イ ギ リ ス( ロ ン ド ン ),フ ラ ン ス( パ リ ),ス ペ イ ン( マ ド リ ー ド ),ド イ ツ( ベ ル リ ン ), ガ ー ナ ( ア カ ラ ), ハ ン ガ リ ー ( プ ラ ハ ), イ タ リ ア ( フ ィ レ ン チ ェ ) 学年歴 二 学 期 制 ( 一 学 期 は 3 ヶ 月 半 = 15 週 ) 学費 一 年 に $ 30,000 前 後 。 Ⅱ.全体/聴覚障害学生の全学年在籍数 全体の学生総数 学 生 数 ( 2004 年 度 秋 学 期 ) 科目履修生も含めた学生総数 39,408 学士などの正規入学者 数 % 学部 20,212 51.30% 大 学 院 (修 士 課 程 , 博 士 課 程 , 専 修 免 許 ) 15,884 40.30% 職 業 教 育 (歯 科 医 師 , 法 律 ・ 哲 学 , 薬 学 ) 3,312 8.40% 合計 39,408 100.00% 障害学生数 • 障 害 学 生 全 体 : 755 名 • 聴 覚 障 害 学 生 12 名 ( ろ う 6 名 、 難 聴 6 名 ) 社会福祉学科に4人在籍しており、他の学生は一般教養などの学科に在籍して いる。 国際学を専攻する学生1人が必修科目を履修するため、一学期だけパリに留学 し た そ う で あ る 。パ リ へ の 留 学 生 に は 、パ リ の 手 話 通 訳 者 を つ け る 。ADA な ど の 障害者の権利を保障する法律はもちろん国外には効力がなく、国外での学生のサ ポートは受け入れ先の大学と相談して進めることになる。 ビジネス専攻にも聴覚障害学生が在籍している。うち1人はイタリアから留学 してきており、美術館の経営について学んでいる。その学生は学士を取得するこ とが目的ではなく資格を取得することが目的で留学してきている。 卒業率 1998 年 に 入 学 し た 学 生 で 、学 部 を 卒 業 し て 学 士 を 取 り 、大 学 院 ま で 進 ん だ 学 生 ( 6 年 間 在 籍 ) の 卒 業 率 は NYU 全 体 で 、 80.0%。 聴覚障害学生は、これまでに1人だけ卒業できない学生がいたが、その学生を 除き、全ての学生がスムーズに卒業している。 Ⅲ.NYUの学生への学内施設 寄宿舎 • 年 間 700~10000$ の 出 費 。 私 立 大 学 な の で 州 か ら の 援 助 は な し 。 図書館 地 上 階 12 階 、 地 下 階 2 階 。 大 学 図 書 館 は 3 つ あ り 、 学 部 生 対 象 の 図 書 館 、 大 学 院 生 対 象 の 図 書 館 、 そ の 他 の 図 書 館 が あ る 。 CD45,000 枚 、 ビ デ オ 18,000 本 を 所 蔵 。 最上階に学長のオフィスがあり、時々下に降りてきては学生と歓談されている。 • サービス ¾ ノ ー ト PC 貸 し 出 し サ ー ビ ス ¾ 年中無休で学生にのみ開放 ¾ ニューヨーク市の他大学とネットワークを通じて連携しており、借りたい 本が図書館にない場合は、ネットワークを通じて他大学から借りることが 可能 • 障害学生へのサービス ¾ 盲人学生に対しては代読サービスを提供 ¾ 点字本はおそらく所蔵していない模様 ¾ ほ と ん ど の CD に は 字 幕 が つ く が 、字 幕 つ き の ビ デ オ は 全 体 の 約 50%で あ る。字幕無しビデオを教材として使用するときには、通訳をつけて設置す る。また字幕つけに関しては、会社に依頼している キモセンター(生活支援センター) • 劇場をかねた講堂 • 学 生 用 ラ ウ ン ジ ( 2F) • ダ イ ニ ン グ ル ー ム ( 3F) 学生オリエンテーションは主にここで行われる。学生の講義シラバスやカリ キュラムなどのリソースは学部ごとに設置されており、センターにいけばリソ ースの場所を教えてくれる。リソースとは、学生生活を送る上での生活情報の ことである。リソースは学部毎に提供されているが、まずここを訪れると短時 間で、学部のどんな部門が担当なのかという的確な情報を得ることが出来る。 課外活動 280 種 類 の ク ラ ブ が あ る 。 自 分 自 身 で 設 立 が で き る 。 さ か ん な の は フ ェ ッ シ ン グ 、 女子バスケットボール。聴覚障害学生の団体が以前はあったが、現在は解散した。 Ⅳ.障害学生支援 障 害 学 生 支 援 セ ン タ ー ( CSD : Center of Student with Disability) 設 立 年 : 1978 年 。 障害学生支援センターが設立されてからも、聴覚障害学生の入学者数にとくに影響 はなく、入学者数は年々でまちまちである。 スタッフ 障 害 学 生 に は 、 LD や 身 体 的 障 害 、 精 神 障 害 も 含 ま れ る 。 コ ー デ ィ ネ ー ト を 担 当 す るスタッフは5人おり、うち2人が聴覚障害関係のコーディネートを担当している。 担当であるディナー氏はコーディネートを担当しており、またバードン氏はろう学生 に対するサービスを担当している。2人とも通訳士の資格を所有しており、業務の他 に通訳も兼ねている。 ガイドブック The Henry and Lucy Moses Center for Students with Disabilities ハ ン ド ブ ッ ク を そ れ ぞ れ の 障 害 ご と に 作 成 し 、ウ ェ ブ か ら 閲 覧 で き る よ う に し て い る 。 情報保障手段 • ノートテイク アメリカでいうノートテイクは、手話通訳をつけたときの補助的な役割を果た す。すなわち、日本のように授業内容を要約して書き留めるのではない。手話通 訳を見ることとノートに授業内容を書くことは同時にはできないからである。 カーボン紙は渡すがペンはノートテイカー自身が用意する。もしくは、コピー カードを渡しておき、ノートテイクした紙をコピーして渡すと言う方法も行われ ている。 謝礼の関係から、ノートテイクを利用できる時間には限度がある。ノートテ イクの謝礼として支出できる費用の金額を学生に伝え、学生がその金額内でや り く り す る 。ノ ー ト テ イ カ ー は 、ポ ス タ ー や 口 コ ミ で 呼 び か け て 募 集 し て い る 。 • 手話通訳 99.9% の 派 遣 率 。 27 人 が 登 録 さ れ て お り 、 27 人 / 週 の 派 遣 が あ る 。 通訳の派遣については、フリーランスで契約を結ぶのと、手話通訳者が登録 されている団体に派遣を依頼する。ニューヨーク市には手話通訳者が多く、彼 らの技術を見て、直接依頼して契約を結んでいる。 最終的に、手話通訳者はろう学生が選ぶことになっている。情報保障を受け る学生の不満は、特に通訳スキルに関する不満が多い。 • C-Print C-Print は 最 近 出 て き た 技 術 で あ り 、ソ フ ト の 使 い 方 な ど に 習 熟 し な け れ ば な ら な い た め 、人 材 の 養 成 が 急 務 で あ る 。実 際 に は 、C-Print と CART を 両 方 使 う こ と もある。 • CART( Communication Access Realtime Translation) CART サ ー ビ ス は 38 時 間 / 週 の 提 供 ( ろ う 学 生 か ら の 要 望 の 90%ぐ ら い は 派 遣 可 能 )。 CART の タ イ プ ラ イ タ ー は 7 人 。 CART の 入 力 者 は 昔 か ら お り 、 ベ テ ランの入力者を集めやすい。 CART は 特 殊 な キ ー ボ ー ド を 使 用 し て 、 講 義 の 発 言 内 容 を 正 確 に 逐 次 記 録 す る システムである。また国会や裁判所の速記者が入力にあたることが多い。タイプ ライターは教室内に持ち込まれて入力が行われる。基本的に機器(ディスプレイ と キ ー ボ ー ド )を 入 力 者 が 用 意 す る だ け で よ い 。デ ー タ は CD な ど に て 保 存 さ れ 、 電子データで受け取ることが出来る。 最 近 は 、 CART 利 用 の 要 望 が 増 え て き て い る の で 、 C A R T の 入 力 者 を 増 員 す ることが当面の課題である。 問題点 • 学生のモラル 例 え ば 、学 生 の 要 望 に 合 わ せ た 情 報 保 障 手 段 を 用 意 し た が 、直 前 に な っ て 他 の 情 報 保 障 手 段 が い い と 言 っ て く る 学 生 が い る 。こ の よ う な 場 合 、緊 急 で 調 整 す る が 、時 間 的 に 不 可 能 な 場 合 が 多 く 、情 報 保 障 を 利 用 す る 学 生 側 の モ ラ ル と 理解が求められる。 • 知的財産権 CART が つ け ら れ た 講 義 に は 、 講 義 で 話 さ れ た 音 声 情 報 が 文 字 と な っ て 残 る 。 知的財産権の観点から、自分の講義内容が逐次記録され、無償で聴覚障害学生に 提 供 さ れ る こ と に 抵 抗 を 感 じ る 教 官 も い る 。ま た CART の デ ー タ を 欲 し い と 希 望 する教官もいて、理解を求めるのが大変だということであった。知的財産権につ い て の 考 え 方 は 大 学 よ っ て 異 な り 、 RIT は 教 官 自 身 も 授 業 の 記 録 に 利 用 で き る よ うになっている。 謝金 ノ ー ト テ イ カ ー へ の 謝 礼 は セ ン タ ー が 負 担 し て い る 。 ま た 手 話 通 訳 、 C-Print、 CART へ の 謝 礼 は そ の 学 生 が 在 籍 す る 学 部 の 負 担 に よ っ て 支 払 わ れ て い る 。手 話 通 訳 者への謝礼はセンターを経由して、その聴覚障害学生が在籍する学部(大学)か ら支払われている。 • 企業からの寄付 大学で学ぶ聴覚障害学生に理解があり、資金援助をしてくれそうな見込みのあ る企業のリストを聴覚障害学生に教える。聴覚障害学生本人が企業のリストから 選び、直接礼状やメールで依頼させる。依頼する企業の数、依頼をする、しない は本人に一任されている。 州からの援助と企業からの寄付が、ノートテイクの実費にあてられることにな っているが、州からの援助だけでは資金的に苦しいので、このような方法をとっ ている。企業からの寄付がノートテイクの実費に活用されるが、残った場合は学 生の学費に回される。すなわち、奨学金とも言える。 企業からの資金は一年ごとにまとめて支給される。年度末に聴覚障害学生が、 資金援助をしてくれた企業へ一年間の学業報告をかねた手紙を書き、合わせて新 たに申請を行う。その申請を受けて、企業が引き続き寄付するという形である。 寄付金額と年数は決まっておらず、時には寄付が中止されることもある。 センターは、聴覚障害学生に企業から支給された資金総額を伝え、実際の資金 管理はセンターが行っている。実際に謝礼が支払われるのはセンターからであり、 学生が直接謝礼を渡すことはない。 デ フ ネ ス・リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン・プ ロ グ ラ ム( Deafness Rehabilitation Program) 以 前 は 、 教 育 学 研 究 科 ( The Steinhardt School of Education) の 「 カ ウ ン セ リ ン グ&学生サービス」コース内に、デフネス・リハビリテーションプログラムが以前は 設 立 さ れ て い た が 、2 年 前 の 2003 年 に 廃 止 さ れ た 。こ の コ ー ス が 廃 止 さ れ た 理 由 は お そらく大学上層部の政治的な理由によるもので、資金援助が減ったからではないかと いうことであった。 以前には、このコースに盲ろうの日本人(福島智さん?)がここに留学されていた らしい。 Ⅴ . NETAC と の 関 わ り 他 大 学 が 、 初 め て 聴 覚 障 害 学 生 へ の 支 援 に 取 り 組 む 場 合 に は 、 NETAC が 情 報 提 供 な ど の 援 助 を 行 う こ と が あ る が 、NYU は 、過 去 約 30 年 間 に わ た る 障 害 学 生 支 援 の 実 績 が あ り 、 こ れ ま で の 実 績 に 基 づ い て 情 報 な ど を NETAC に 提 供 す る こ と も あ る 。 TIP シ ー ト は NETAC 設 立 以 前 か ら NYU オ リ ジ ナ ル の も の を 独 自 で 作 成 し て い る た め 、 NETAC 作 成 の も の は 使 用 し て い な い が 、 内 容 的 に は NETAC の T I P シ ー ト と 似 通 っ た ものになっていると思う。 NETAC か ら の 援 助 0329 • C-Print の 人 材 養 成 の 費 用 • NETAC か ら の 資 源 ・ 資 金 提 供 • PEP-Net Conference へ の 参 加 費 用 C-Print の 人 材 に つ い て は オ ン ラ イ ン ト レ ー ニ ン グ で の 養 成 を 検 討 中 で あ り 、 衛 星 通 信 ( SCS) 会 議 で 各 地 と 通 信 し 、 情 報 や 意 見 交 換 を 進 め て い る 。
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