即戦力になる!! ビジネス実務と PC 活用 経理入門編 第 2

即戦力になる!! ビジネス実務と PC 活用 経理入門編
第2版
講習の手引き
この手引きは、『即戦力になる!! ビジネス実務と PC 活用 経理入門編 第 2 版』を使って研修や授業を
実施される講師の方に、ご参考にしていただきたい各情報(実施時の注意事項、所要時間、本文内容
の補足)をまとめたものです。
よりよい研修や授業を行うために、この手引きがお役に立てば幸いです。
日経 BP 社
 実施時の注意
以下の点に注意して、研修や授業を実施しましょう。

学生は社会人としての仕事の経験がなく、特に経理について知らない点も多いので、講師の体験
談や社会一般常識などを交えて講義するとよいでしょう。

受講者からの質問に対して自信のないことは即答を避け、調査後に折り返し回答をすることを徹底
してください。

コンピューターにおいては、テキストに記載されている名称で説明してください。講師がテキストに記
載されている名称と異なる名称で説明すると受講者は混乱します。
研修や授業の実施前に、次の環境を確認しておきましょう。

Microsoft Office Professional Plus 2013 または Microsoft Office Professional Plus 2010 を完全イン
ストールし、ライセンス認証手続きを完了させた状態

インターネットに接続できる環境

プリンターがセットアップされている状態

リボンとコマンドを常に表示した状態
アプリケーションウィンドウ右上の[リボンの表示オプション]で[タブとコマンドの表示]を選択しま
す。
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 研修や授業の所用時間
本書を研修や授業でお使いいただく場合の学習時間は 25 時間程度を想定しています。コンピューターを
使わずに本書を読む場合は、より短時間で学習することも可能です。
第1章
経理の仕事とは ~会社のお金の流れを知ろう~
第2章
現金出納 ~お金の出入りを管理しよう~
210 分
第3章
支払業務 ~請求内容を確認し、支払うまで~
200 分
第4章
請求業務 ~請求書を発行し、集金するまで~
220 分
第5章
記帳業務 ~取引を帳簿にまとめよう~
300 分
第6章
決算業務 ~決算をして経営結果を知ろう~
330 分
総合問題
40 分
200 分
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 本文の注意点と参考情報
本文の章立てに沿って、主な注意点や参考情報をまとめました。研修や授業を実施する際の参考にして
ください。
第 1 章 経理の仕事とは ~会社のお金の流れを知ろう~
1-1 経理業務とは
1-1-1 経理の仕事と役割
p.2 経理業務について
支払や入金など、お金そのものを扱う仕事(出納業務)、それを簿記のルールに従って記録する仕事(記
帳業務)、そして、その結果をまとめて決算書を作成する仕事(決算業務)という個々の業務だけでなく、
経理が会社内のさまざまな業務とどのように関わりがあるかを理解することが大切です。
p.2 ◆経理の仕事
経理の仕事の既成概念として、まじめに、こつこつと、毎日決まりきった仕事を行うというイメージがあり
ます。しかし、会社全体の仕事の流れを把握していないと、自分の記録している数字の意味もわからな
いまま、とんでもない間違いをしてしまうこともあります。最終的には、会社の経営成績や財政状態を明
らかにすることが目的であることをしっかり意識して仕事をしていくことが大切です。
1-2 経理業務の流れ
p.3 経理業務の流れをつかむ
経理の仕事には、日次、月次、年次という単位で、確実に行わなければならない仕事があります。実際
には、月次や年次の決算業務などを会計事務所などの外部業者に委託することもありますが、経理業
務の全体像をつかめるよう、業務の流れ全体を生徒に理解させましょう。
1-2-1 1 日の経理業務の流れ
p.3 経理の仕事の基本
経理の仕事というと、仕訳や決算をするだけだと思っている人がいるかもしれません。しかし、日々の入
出金を間違いなく処理し、現預金の残高や得意先・仕入先ごとの掛代金の残高などを日々正確に記録
していなければ、仕訳の内容もそれにもとづいて作成される帳簿や決算も信頼できないものになってし
まいます。日々、正確に売上や仕入、入出金、残高を管理することが経理業務の基本です。
1-2-2 1 ヶ月の経理業務の流れ
p.4 締め日と支払について
日本の商慣習として、「締支払」というものがあります。得意先や仕入先と、たとえば毎月 20 日を締め日
と決めて、前月の 21 日から今月の 20 日までの 1 ヶ月分の納品書を合計して請求し、やはり、あらかじ
め決めてある支払日にまとめて支払います(一括振込や現金払い、手形払い)。1 ヶ月の経理業務はこ
の流れに合わせて行うことになります。
1-2-3 1 年間の経理業務の流れ
p.5 決算業務について
日次、月次の仕事を積み重ねていくことで、自動的に決算の準備ができているということになります。決
算日が 3 月 31 日なら、3 月 31 日付の伝票処理などが、年次決算の仕事になりますが、実際には、「決
算日付」の処理を 2 ヶ月程度かけて行っていきます。3 月決算の中小企業なら、5 月 31 日の税金の申告
までが年次決算業務の期間です。
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第 2 章 出納業務 ~お金の出入りを管理しよう~
2-1 出納業務とは
2-1-1 出納業務とはどのような仕事か
p.8 出納業務について
出納業務とは、会社のお金を預かり、そこから、必要な場合に支払をするというだけではありません。お
金の出入りを出納帳という帳簿に記録し、記録による残高と、実際残高の正確性を証明するということ
が、経理の最も基本となる重要な業務であることを理解させましょう。
2-1-2 出納業務の流れ
p.9 出納業務の決まり
出納を行う場合、お金の出し入れは、必ず証拠となる書類とセットにして行います。支払の場合には、そ
の支払があったことだけでなく、支払先や内容も証明できる書類が必要です。現金支払なら領収書(領
収証とも言います)を証拠として保存します。
2-1-3 簿記のルールに従った記帳とは
p.9 記帳について
いつ、何のために、いくら入金・出金したかを、日付順に記録していきます。1 回の取引(入出金)を 1 行
に記録し、内容はその会社で決めている「勘定科目」の何に該当するかで記録します。この勘定科目を
もとにして、科目ごとに分類、集計して、勘定元帳や試算表、決算書などを作成します。
2-1-4 Excel で現金出納帳を作成する
p.12 現金出納帳について
実際の業務では、会計ソフトなどに用意された現金出納帳に入力していくことが多いため、Excel を使っ
て、自分で出納帳を設計するようなことはあまりありません。ここでは、Excel を使って、出納帳に必要な
項目とその順番や残高の関係を理解させましょう。
2-2 領収書の確認と整理、保存
p.19 領収書について
領収書とは、支払先が発行する証明書で、会社の経費で支払われたこと、消費税を払ったことを証明す
るのに必要な証拠です。
2-2-1 領収書の記載内容の確認
p.19 記載内容の確認
領収書に記載された、日付や宛名、金額、摘要、発行者の住所や氏名(会社名)、印などがもれていたり、
訂正されていたりしたら、証拠としての価値がなくなります。これらのポイントをしっかり理解することが大
切です。
2-2-2 領収書の整理、保存
p.20 ◆領収書を管理する目的
領収書を保存するのは、帳簿等が証拠にもとづいて正しく記載されているかどうかを、社内や社外の関
係者がいつでも確認できるということが目的です。ただ単にクリップでとめたり、箱に入れただけでは、必
要なときに必要な領収書をすぐに確認することができません。実務においてよく行われている保存、管
理の方法を知っておくことが大切です。
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2-3 現金の残高確認
2-3-1 現金の残高を確認する流れ
p.25 出納業務の完了
1 日の出納の仕事は、現金残高の一致を確認することで終わります。金種(お札や硬貨の種類) ごとに
お金を数え、現金出納帳の残高との一致を確認し、現金残高確認表を作成します。これに上司の確認
を受けて、初めてその日の出納業務を完了することができます。
2-3-2 Excel で現金残高確認表を作成する
p.26 ひな型の作成
現金残高確認表のように、毎日使用する書式は、Excel でひな型を作成しておけば、毎日、入力後にプリ
ンターで印刷できるので便利です。
第 3 章 支払業務 ~請求内容を確認し、支払うまで~
3-1 支払業務とは
p.38 支払業務の注意点
日々の現金での支払は、どうしても現金で支払わなければならないものに限定します。つまり、現金をた
くさん持っていると、その管理も大変になり、間違って多く支払ったり、おつりをもらい過ぎたりという現金
の過不足も起こりがちです。また、仕入代金などは、締め日と支払日を決めて、1 ヶ月に 1 回、特定の日
に締め切りと支払を行うのが日本の商慣習です。そのために、仕入先ごとに 1 ヶ月の納品書や仕入先元
帳と、先方の請求書をチェックするという業務が必要になります。
3-1-1 支払業務とはどのような仕事か
p.38 支払業務の重要点
支払業務は、仕入先にとっては、売上代金の回収になります。本来支払うべき金額を支払日に払わな
ければ、その回収をあてにしていた仕入先では、資金繰りができなくなって、最悪の場合、倒産のきっか
けになってしまうかも知れません。社内だけでなく、他の会社にも大きな影響がある仕事だということを
理解させましょう。
3-1-2 支払業務の流れ
p.38 担当業務について
実際には、商品の発注や受入検収(納入してもらうこと)、納品書の受領、仕入先元帳の記入などは、資
材部など経理とは別の部署で行う場合もあります。経理の業務としては、資材部などで保管している納
品書や仕入先元帳の記録と、仕入先から届いた請求書の不一致などの原因を確認し、支払額を確定さ
せ、銀行振込や手形の準備をすることが中心になります。
3-1-3 請求内容の確認
p.41 確認業務の大切さ
請求書には、当月の請求合計だけでなく、前月からの繰越残高も記入されている場合もあります。前月
の支払時に不良品などの返品を確認して、支払をストップしているものなどが、そのまま前月繰越の残
高に入ったままになっていることもあります。それらのマイナス処理が、仕入先でも正しく処理されている
かどうかも請求書の確認事項です。不一致が残ったまま、時間が経つと、原因がわからなくなることもあ
ります。毎月の請求書確認業務をしっかり行うことが大切です。
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3-2 仕入先ごとの取引の記入
p.43 仕入先元帳について
試算表や決算書では、すべての仕入先からの合計で買掛金の残高は表示されますが、仕入先ごとの内
訳はわかりません。もし、仕入先ごとの買掛金の残高の合計が、試算表の残高と一致していないという
ことになれば、決算書の残高も信頼できないことになります。仕入先ごとに取引を記録しておく仕入先元
帳は、現金出納帳や得意先元帳と同様に、最も大切な補助簿(会計上の勘定科目が同じでも相手先な
どの内訳ごとに記録する帳簿)の一つです。
3-2-1 仕入先元帳とは
p.43 仕入先元帳への記帳について
仕入先との取引には、仕入や支払以外にも返品や値引などの取引があります。最近の会計ソフトなどで
は、仕入先元帳に記録すると、そのまま仕訳として仕訳帳(伝票)や勘定元帳に反映するものもあります。
仕入取引を経理以外の部署で行っている場合には、仕入先元帳の仕入先ごとの、1 ヶ月分の合計で仕
訳をするという方法をとる場合もあります。
p.44 ヒント:仕入先元帳の様式
仕入先元帳は、簿記の考え方からすれば、買掛金という勘定科目の相手先別内訳を記録する補助簿で
す。買掛金は、貸借対照表の右側つまり貸方の科目なので、仕訳のときにも、買掛金が増加したときに
「貸方」(右側)に記入し、減少したときに「借方」(左側)に記入します。そこで、補助簿である仕入先元帳
でも、仕入は買掛金の増加と考えて右側の列に記録し、支払は左側の列に記録するのが一般的です。
しかし、簿記の理屈を考えなければ、仕入は左側、支払は右側の列に記録したほうが、感覚的にはわか
りやすいという利点があります。市販の様式や会計ソフトの画面でも左右が逆のものもあるので、間違っ
て逆に記入することのないように注意が必要です。
3-2-2 Excel で仕入先元帳を作成する
p.45 Excel を利用する利点
仕入先元帳は、仕入先別にその取引を順に記録していくカードだと考えればいいでしょう。1 件の仕入先
について、カードが 2 枚以上になることもありますが、同じカードに複数の仕入先との取引を記入するこ
とはありません(ただし、例外として何件かの仕入先をまとめて「その他の仕入先」という名前で 1 件の仕
入先として扱うことはあります)。そこで、1 件分のカードを Excel で作って、これをひな型として保存してお
けば他の仕入先のカードもすぐに作成できます。
3-3 支払一覧表とは
3-3-1 支払一覧表の役割
p.53 支払状況をまとめる
支払の締め日が過ぎると、各仕入先から請求書が届きます。こちらに保管している納品書と、届いた請
求書をつき合わせてチェックをしたら、納品書と請求書をひもやホチキスで綴じこみます。ただし、これだ
けでは紙の束になってしまうため、一覧性がありません。支払合計や振込手数料などを計算し、チェック
するためには、一覧表にまとめる必要があります。最近では、ファームバンキングやインターネットバン
キングが広く利用されています。これらは、パソコンを使って操作することで銀行へ行かなくても振込など
を行えるシステムです。銀行と契約をし、銀行所定のソフトや Web ブラウザなどで振込一覧を作成し、こ
れをそのまま支払一覧表として活用することもあります。ただし、このシステムを上手く活用するには、こ
の振込一覧を紙に打ち出して、上司の確認印をもらい、振込依頼の伝送処理をする場合には、上司し
か知らないパスワードを上司に入力してもらうなど、社内でのチェック体制が必要です。
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3-3-2 Excel で支払一覧表を作成する
p.54 ひな型の作成
支払一覧表も一度 Excel で作成し、ひな型として保存しておけば、毎月利用することができます。
3-4 請求書の整理と保存
3-4-1 仕入先別に請求書を整理、保存する
p.59 仕入先別の保存
仕入先からの請求書は、仕入先ごとに用紙の大きさが違っていたりします。また、過去の請求書を調べ
る場合には、仕入先ごとに綴じられているほうが調べやすいということもあり、仕入先別のファイリングが
一般的です。
3-4-2 支払月別に請求書を整理、保存する
p.60 月別の保存
会社によっては、商品などの仕入先に対する締・支払日と、その他の経費(社内で使う文房具や備品な
ど)の締・支払日が異なる場合があります。商品の仕入先と違い、毎月定期的に仕入れることが少ない
ことや、月ごとの経費の計上額を確認する目的もあることから、その他の経費で仕入れた備品等の請求
書は月別にファイリングするのが一般的です。
第 4 章 請求業務 ~請求書を発行し、集金するまで~
4-1 請求業務とは
4-1-1 請求業務とはどのような仕事か
p.64 請求業務の大切さ
請求業務とは、商品の受注や販売、請求、集金までの業務です。経理担当者が行うのは、請求書発行
などの事務的な部分です。しかし、営業担当者が「代金はいつでも結構ですから」などと、代金の回収を
あまり重視せずに、目先の販売ばかりを追いかけていると、代金の回収は遅れがちになり、最悪、支払
資金がなくなって資金繰りに困って倒産するという事態にもなりかねません。営業担当者とのコミュニ
ケーションを通じた意識付けも経理担当者の仕事であると考えるべきでしょう。
4-1-2 請求業務の流れ
p.65 請求までの流れを理解する
顧客から注文を受け、商品を発送し、納品書に受領印をもらうまでの流れは、実際には営業や配送の担
当者が行う仕事です。しかし、その流れをよく理解していないと、経理担当者が行わなければならない請
求書の発行・送付や代金回収の流れが理解できません。本来の集金日に入金してもらえなかったもの
は、経理担当が直接得意先に督促しなければならないということにもなりかねません。営業担当者から
入金予定表を事前に提出してもらい、十分にチェックしておくことも経理担当者の仕事です。
4-1-3 請求書と領収書の発行
p.66 請求書・領収書発行の注意点
請求書や領収書は、相手先にとっては支払を証明するための大切な書類です。同時に支払側にとって
は、請求書の発行控えや領収書の発行控えが、売上や代金回収の証拠になります。特に注意が必要な
のは、請求書や領収書が二重に発行されたり、発行控えがあるのに実際の売上や代金回収がされてい
ない場合です。監査や税務調査で、このような不一致が発見されたら大変なことになります。これらは複
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写式で、相手先に渡したものと同じ内容のものが控えとして保管されており、控えにも同じ領収書番号が
事前に連番で印字されていることが証拠として重要です。書き損じや発行ミスのものは、控えとセットに
して必ず保存しておくことが必要です。
4-1-4 Excel で領収書発行リストを作成する
p.70 Excel を利用する利点
Excel は複数のシートをまとめて 1 つのブックとして管理します。「発行リスト」というリストを 1 つのシート、
「領収書発行」という印刷帳票を 1 つのシートにして、データがシート間をリンクするように参照の設定を
します。このように領収書発行システムを作っておけば、これを少し変えるだけで請求書の発行システム
も簡単に作れます。リスト入力用(またはデータ蓄積用)のシートと、出力用のシートを組み合わせて 1 つ
のブックにまとめておくというパターンは、ブック単位で Excel を利用する場合の基本形の一つです。実務
での応用範囲がたくさんあるので、ここで十分理解させましょう。
4-2 得意先ごとの取引の記入
4-2-1 得意先元帳とは
p.79 得意先元帳の様式
仕入先元帳が仕入先別に作成する取引記録カードであるとすれば、得意先元帳は得意先別に作成する
取引記録カードです。仕入先元帳には、右の列に仕入、左の列に支払を記入するタイプのものと、左の
列に仕入を記入するという 2 種類の様式がありましたが、得意先元帳は、左の列に売上、右の列に入金
という様式しかありません。得意先元帳のことを「売掛帳」や「売掛金元帳」という場合もあります。
4-2-2 Excel で得意先元帳を作成する
p.80 得意先元帳への記帳
会計ソフトにも得意先元帳を作成する機能を持ったものが多くあり、販売管理ソフトとして独立して販売さ
れているものもあります。顧客との取引記録は、マーケティング資料として、営業部門においても活用で
きる会社全体の貴重な情報資源です。顧客管理を営業部門が中心となって行うのか、経理部門が中心
に行うのかによって使うソフトやシステムの内容も異なります。しかし、基本的な記録項目や記録の方法
は同じです。Excel で得意先元帳を作成することによって、記録すべき項目や内容を理解させましょう。
4-3 集金管理表とは
4-3-1 集金管理表の役割
p.84 集金金額の確認
当月分だけの集金管理表を作成する会社もあれば、12 ヶ月分を売掛金増減明細表という横に長い形の
表で作成する会社もあります。締め日から支払日の間に月末が到来する設定が多いので、月末には当
月分の請求額と同じ金額が未回収で残っているのが一般的です。しかし、何らかの事情で、それ以前の
締め日の残高が残っている場合もあります。得意先ごとの残高の内容を確認するとともに、残高の合計
が帳簿上の売掛金残高と一致していることを毎月末に確認します。
4-3-2 Excel で集金管理表を作成する
p.85 Excel を利用する利点
取引先ごとに当月請求額以上の残高が残っていないかどうかを目で見て確認するのは、件数が多い場
合は大変です。また、誰が見ても一目でわかるように表示したいものです。一件ずつ赤鉛筆で印を付け
る方法もありますが、Excel の IF 関数を使えば、一目で滞留がある得意先に「滞留」と表示することがで
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きます。Excel で縦横の合計を自動計算させるだけでなく、IF 関数を使えば、条件によって異なる計算や
表示を自動的にさせることができます。IF 関数活用の基本パターンなので、ここでよく理解させましょう。
第 5 章 記帳業務 ~取引を帳簿にまとめよう~
5-1 記帳業務とは
5-1-1 記帳業務とはどのような仕事か
p.94 仕訳と記帳の大切さ
経理の仕事は簿記という技術を使って行います。そして、仕訳が簿記の基本です。しかし、現在の会計
ソフトなどを使った経理の業務では、現金出納帳や得意先元帳、仕入先元帳などの画面に入力してい
けば、システムが自動的にそれらを仕訳し、処理してくれます。そのために、仕訳の意味がわからなくて
も、なんとなく経理帳簿ができてしまうため、経理業務全体の流れがわからないまま仕事をしている人も
多いようです。日々の取引を確実に記帳していくことが正しい決算の前提です。記帳の重要性と仕訳の
考え方を理解することが大切です。
5-1-2 記帳業務の流れ
p.94 必須の帳簿とは
経理の帳簿として、必ず必要なものは仕訳帳(本書では仕訳の記録方法を理解できるよう仕訳伝票を使
用)と勘定元帳です。この 2 つの帳簿は、仕入先元帳などを補助簿というのに対して主要簿といわれま
す。仕訳帳から勘定元帳を作成し、勘定元帳から試算表、試算表から決算書を作成するという流れを考
えると、この 2 つの帳簿だけで必要十分な資料があるということになります。しかし、会計ソフトでは補助
簿から自動的に仕訳帳を作成するので、その流れが表面上は見えません。補助簿に記入する場合にも、
仕訳としての必要な条件をすべて満たしているため自動的に仕訳帳が作成されるのです。どのようなシ
ステムを使おうと、仕訳が簿記の第一歩であることに変わりはありません。
5-2 簿記の考え方を学ぶ
5-2-1 仕訳のしくみ
p.95 仕訳と勘定科目
簿記では、お金などの資産や借入金などの負債が増加・減少したときに、「勘定科目」の増減として記録
します。しかし、単に増えた・減ったということを記録するだけではありません。必ずその原因も記録しま
す。原因は言葉で書き表すだけでなく、増減に対応する相手側の「勘定科目」として表します。現金が増
えれば、その相手側の勘定科目は売上という勘定科目の場合や、雑収入という場合もあります。仕訳は
必ず勘定科目とセットになっていなければなりません。
5-2-2 取引を分類する
p.95 勘定科目の 5 つの要素
取引は、勘定科目のセットである仕訳という形で記録されますが、仕訳のもとになる勘定科目は 5 つ
の要素にグループ分けすることができます。「資産」、「費用」は試算表の借方(左側)、「負債」、「資
本」、「収益」は試算表の貸方(右側)の科目です。仕訳では、借方の科目が増加したときには左側に、
貸方の科目が増加したときには右側に記入します。そして、借方の科目が減少したときには右側、貸
方の科目が減少したときには左側というように引き算は行わないで、減少は反対側に記録するのが
仕訳のルールです。必ず右と左が同額になるように、これらの科目の組み合わせで取引を記録する
のが仕訳です。簿記のルールを作った、昔のヨーロッパの人たちは引き算が苦手だったので、マイナ
スは反対側に記入することで済ましてしまっただけだという説もあります。
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5-2-3 仕訳伝票とは
p.99 仕訳帳と仕訳伝票
仕訳帳は仕訳日記帳ともいわれるように、もともとは帳面に付けるものだったようです。しかし、すべての
取引を一冊の帳面に記録しようとすると、分担して仕事を行っている場合には、それぞれの担当者が仕
訳という形で記帳することができません。それぞれが、仕訳を伝票に記帳しておけば、全社分の伝票を
経理部門に集めて並べ替えれば仕訳帳になります。振替伝票や入金伝票、支払伝票などという名前で
市販されているものは、ここでいう仕訳伝票の一種です。
5-2-4 Excel で仕訳伝票を作成する
p.102 Excel を利用する
ここでは、Excel の 1 枚のシートに 1 枚の伝票を記録し、1 ヶ月分を 1 つのブックに保存します。入力規則
のリスト入力で勘定科目をリストから入力する方法は会計ソフトでも同様です。
5-3 勘定元帳とは
5-3-1 仕訳伝票から勘定元帳へ転記する
p.110 勘定元帳への転記
事前に、すべての勘定科目について勘定元帳を準備しておきます。そして、仕訳はすべて勘定元帳に転
記します。その会社で使う、すべての勘定科目についての帳簿なので、勘定元帳のことを総勘定元帳と
もいいます。仕訳されたもの以外は元帳には記録せずに、仕訳されたものはすべて元帳に転記します
(前期からの繰越記入などは仕訳を通さないで記入する方式もありますが、考え方に変わりはありませ
ん)。全体として考えれば、仕訳の全体が勘定元帳の全体と完全に対応することになります。記帳の間
違いも、仕訳を訂正し、その訂正を勘定元帳に転記するため、仕訳帳からの単純な転記で勘定元帳は
再び作成することができます。しかし、単純な転記であるからこそ、人間が手作業で行うと間違いが生じ
やすいものですが、実際の業務では会計ソフトを使って自動転記するため、仕訳さえ間違えなければ、
コンピューターが転記を間違えることは通常あり得ません。コンピューターによって、経理業務が飛躍的
に効率化されたのは、そのような簿記の構造によるものです。
5-3-2 Excel で勘定元帳を作成する
p.115 Excel を利用する
実務では転記作業を 1 行ずつ手作業で行うことはほとんどなくなりましたが、Excel で元帳を作成し、実際
の転記を行うことで、仕訳伝票と勘定元帳の関係を確認してください。
5-4 試算表とは
5-4-1 試算表の役割と作成方法
p.124 試算表について
試算表とは、勘定元帳のすべての科目に対する転記や計算の結果を一覧表にまとめて試算する表です。
仕訳帳の段階で、借方と貸方には必ず同じ金額を記入しているため、仕訳帳の借方合計と貸方合計は
必ず一致します。そして、仕訳帳の貸方・借方そのままの金額を、勘定元帳のそれぞれの科目に転記し
ているため、勘定元帳の各科目の借方に転記した金額と各科目の貸方に転記した金額も合計では一致
しているはずです。この一致を試算するのが「合計試算表」です。また、勘定元帳の各科目の残高は、
繰越残高で貸方・借方が一致していれば、当期の貸方・借方が同額なため、その増減を計算した後の残
高合計でも、貸方・借方は一致します。これを試算するのが「残高試算表」です。その両方を同時に作成
したものが「合計残高試算表」です。現在の実務では、試算表の作成・入力を会計ソフトなどで行うのが
一般的です。貸方と借方が一致しない仕訳はエラーにして、その段階で入力できないようにし、機械的
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に仕訳を転記して試算表を作成するため、試算表の金額が一致しないということはなくなりました。それ
よりも、各勘定科目の増減と残高を一覧にして、内容的におかしいものがないかを確認したり、月次決
算書代わりに、その月までの経営成績や財政状態を確認したりする資料としても利用されています。
5-4-2 Excel で試算表を作成する
p.126 繰越残高について
借方科目(資産科目、費用科目)は、借方の金額を加算し、貸方の金額を減算して繰越残高を計算しま
す。貸方科目(負債科目、資本科目、収益科目)は、繰越残高に貸方の金額を加算し、借方の金額を減
算して繰越残高を計算します。
第 6 章 決算業務 ~決算をして経営結果を知ろう~
6-1 決算業務とは
6-1-1 決算業務とはどのような仕事か
p.134 決算業務について
会社は、株主や銀行、税務署、その他の役所などに、会計期間(期首から期末(決算)までの期間のこと
で通常は 1 年か半年)ごとに決算書を提出しなければなりません。会社の経営成績や財政状態を決算
書によって報告するわけですが、会社というのは、倒産したり、解散したりしない限りずっと継続していく
ものです。そこで、どこかで期間を区切って、その間の経営成績をまとめなければなりません。また、財
政状態というのも、ある日の資産、負債、資本の残高なので、決算日を決めて、その日の財政状態を報
ていかん
告することになります。会社は、定款という会社の憲法にあたるものを決めて、これを公証役場で認証し
てもらいます。この定款に定められた会計期間と、その会計期間の終了日である決算日現在の決算書
を作成するのが経理の 1 年間の仕事の締めくくりになります。
6-1-2 決算業務の流れ
p.135 決算業務の流れについて
日次や月次の処理では、実際に資産や負債が増減したり、損益が生じたりしたときに仕訳を行います。
しかし、1 会計期間分の売上原価を計算するために、前期から繰り越した商品を売上原価に加算し、今
期末に残っている商品を売上原価から差し引くというような仕訳は決算のときだけ行います。売上原価と
は今期に仕入れた商品の仕入・製造費用のことで、今期の仕入と前期からの繰越商品を足し、そこから
今期末に売れ残った在庫の金額を引いたものをいいます。本書では全体の流れを把握するために売上
原価については説明していませんが、実際にはこのような処理を行います。また、売上原価は会社が採
用している棚卸資産の評価方法により計算結果が異なる場合があります。決算手続きとして掲げた、商
品の棚卸、減価償却費の計算、費用や収益の見越し・繰延べ計算、引当金の計上はすべて 1 会計期間
分の収益と費用を正しく計算することを目的としています。そしてこのような決算のための仕訳を「決算
整理仕訳」といいます。
p.136 コラム:費用・収益の見越し、繰延べ
他社との契約で、継続して役務(サービス)の提供をしたり受けたりした場合に、代金入金と収益計上時
期、または代金支払と費用計上時期がずれることがあります。このずれを調整するために使われる勘定
科目が「前払費用」「未払費用」「前受収益」「未収収益」で、簿記ではこれらを「経過勘定項目」といいま
す。
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6-2 商品の棚卸とは
6-2-1 商品棚卸の流れ
p.141 棚卸について
今期の売上原価を正しく計上するためには、当期の仕入金額から決算日現在において、在庫として残っ
ている金額を差し引いて計算する必要があります。そうしないと、当期の売上とは関係なく、来期以降に
販売するために倉庫に保管している商品の仕入金額まで売上原価として計算されてしまいます。その分、
実際より利益が少なく計算されてしまいます。逆に、前期末に在庫であった商品の販売は今期以降です。
そこで、前期から繰り越した商品は、当期の売上原価に加えなければいけません。売上金額と、その商
品の原価を毎日、あるいは毎月確認することはなかなかできません。そこで、売上原価を確定するため
に棚卸という作業が必要になります。月次決算を厳密に行うために、毎月末に棚卸を行っている会社も
あります。また、コンピューターシステムを使って商品有高を管理している会社などでは、その帳簿残高
を使って毎日売上原価を管理している場合もあります。しかし、商品の紛失や盗難などによる棚卸減耗
を把握するためにも、少なくとも決算のときには実際に商品の数を数えて調べる「実地棚卸」が必要にな
ります。
p.141 ■商品棚卸の流れ
①商品の棚卸をする
実際に店舗や倉庫で確認するため、「本日棚卸のため休業」ということにして、社員総出で棚卸をする
場合もあります。
②棚卸表を作成する
すべての商品を実際に 1 つずつ確認して、棚卸表に記入していきます。商品有高をコンピューターなどで
記録している場合は、そのリストを持って実際に残っているものの数と確認します。数量の棚卸をしたら、
単価と掛け合わせて金額を算出します。同じものでも、仕入れたタイミングによって単価が異なる場合も
あるため、期末に残っているものの単価をいくらにするかという問題があります。同じ商品のため、実際
にそれぞれの商品を仕入れたときの単価を適用することは難しいので、事前に税務署に届けている評
価方法(たとえば、総平均法など)で行います。
③仕訳伝票を作成する
当期中に仕入れた金額の合計から棚卸で確定した金額を、売上原価の計算で差し引くために、商品
という資産に振り替える仕訳をします。仕入の減少なので、相手科目は仕入でもよいのですが損益計
算書に表示するときには、期末商品棚卸高という表示をしますので、勘定科目としても期末商品棚卸
高を使います。
④翌期首に在庫商品の額を費用に計上する
期末の棚卸商品は、決算修正仕訳で商品という資産に振り替えましたが、また、翌期以降の売上原価
になるので、翌期首で商品から売上原価に振り替えます。期末の処理と同じように、損益計算書の表示
に合わせて、期首商品棚卸高という勘定科目を使います。なお、この仕訳を、翌期首には行わないで、
次の期末の決算修正仕訳として行う場合もあります。
6-2-2 Excel で棚卸表を作成する
p.145 Excel を利用する
Excel を使って棚卸表を作成します。棚卸は大勢の社員で分担して行うことも多いため、各店舗で集計し
た棚卸表をまとめて、商品区分ごとに全社の合計を集計する場合などには Excel を使うのが合理的で
す。
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6-3 減価償却とは
6-3-1 減価償却のしくみと流れ
p.154 減価償却について
今期いくら利益が上がったかということは、お金の出入りの差額だけではわかりません。将来の何年間
にもわたって利用する高額な資産を購入した場合、その金額をすべて当期の費用にしてしまったら、当
期は大赤字ということになってしまいます。期間ごとの正しい費用を計算するためには、その資産の購
入金額をその資産を使う予定の期間に費用として配分する必要があります。これが減価償却を行う目的
です。しかし、少額なもの(税法では 10 万円未満のもの)や、あまり長くは使えないもの(税法上は、耐用
期間が 1 年未満のもの)は減価償却せずに、当期の費用にしてもよいことになっています。決算時には、
減価償却しなければならない資産が費用として処理されていないか、現在は使っていないものが資産に
計上されたままになっていないかなどを確認します。前期以前に取得して当期も使い続けているものと、
当期に取得した資産の減価償却費を計算し、仕訳をします。
6-3-2 減価償却費の計算方法
p.155 減価償却費の計算方法について
時の流れとともに費用になっていくという減価償却の計算は、考え方によって何通りもの方法があります。
一般的には、定額法(単純に毎年一定の金額を費用として配分する方法)と定率法(最初の年は取得価
額に、2 年目以降は、期首の帳簿価格に同じ率を掛けて計算するという方法)が採用されます。また、簿
記の考え方では、その他にもいろいろな償却の方法がありますが、税法では償却方法に制限があり、事
前に償却方法を税務署に届けなければ認められません。会社がどのような償却方法を選択しているの
かを確認しておくことが大切です。
p.156 ◆定額法
定額法は、税法で公表されている償却率を掛けて、税法で認める償却額を計算することになっています。
1 年目は使用した月数で月割計算しますが、2 年目からは償却の基礎になる価額にこの率を掛けて計算
するため、毎年、同額の償却費が計算されます。平成 19 年 3 月 31 日以前に取得したもの(旧定額法)
と平成 19 年 4 月 1 日以後に取得したもの(定額法)では償却費の計算方法が異なりますので、両方の
資産を所有している場合には、同一事業年度で旧定額法・定額法いずれの算式も使われることに注意
が必要です。
p.157 ◆定率法
定率法の償却についても、税法で決められている償却率表を使って計算します。しかし、定率法では、
償却の基礎になる価額を計算して、毎年これに率を掛けて計算するのではなく、期首簿価(帳簿価格と
もいう)に毎年同じ率を掛けて償却費を計算します。期首簿価とは、取得価額から前年までの償却累計
額を差し引いた金額なので、償却資産台帳などを整備して資産ごとの償却累計額が把握できるようにし
ておくと効率よく今期の計算が行えます。 定率法の計算方法は定額法よりもさらに複雑で、取得時期に
より 3 通りに分かれます。旧定率法(平成 19 年 3 月 31 日以前取得)、250%定率法(平成 19 年 4 月 1
日から平成 24 年 3 月 31 日までに取得)、200%定率法(平成 24 年 4 月 1 日以後取得)の各資産を所有
している場合には同一事業年度で最大 3 通りの算式が使われることに注意しましょう。
6-3-3 Excel で減価償却費計算表を作成する
p.162 Excel を利用する利点
耐用年数が経過しそうな資産の減価償却費の計算については注意が必要です。残存簿価 1 円に達した
時点で減価償却は終了となるからです。通常の償却費を計算して、その結果、期末簿価が残存簿価 1
円を下回ってしまったら、償却のし過ぎということになります。IF 関数を使うと、償却のし過ぎになってしま
う場合には、期首簿価から残存簿価 1 円を差し引いた金額だけを計算することができます。Excel を使え
ば、このような条件ごとの計算が簡単にできます。 ここでは比較的簡単な定額法の算式を最初に理解さ
せ、難易度の高い定率法は p.180 の実習問題(問題 1)で学習してもらいます。
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6-4 決算書とは
6-4-1 損益計算書と貸借対照表
p.168 損益計算書と貸借対象表のしくみ
経理業務の最終的な到着点は、適正な決算書を作成することです。毎日、毎月の業務を、確実に正しく
処理することで、適正な決算書が作成できます。損益計算書と貸借対照表以外にも、キャッシュフロー
計算書などの決算書類もありますが、この 2 つの報告資料を作成することが、決算の基本です。
p.171 コラム:キャッシュフロー計算書とは
株式を一般に売り出していて子会社を持っているような大企業は、損益計算書と貸借対照表以外に、決
算書としてキャッシュフロー計算書を作成することが義務付けられています。会社が持っているお金で資
産を購入しても、あるいはそれを借金で購入しても、損益計算書に計上される減価償却費は同じ額です。
決算書の目的が、会社の状態を関係者に明確に知らせることであることを考えると、当期中のお金の回
収や調達、投資資金の支払、借入の返済などを、内容ごとに区分して報告することが必要です。売上が
多くても売掛金が増加すると、あまりお金は回収しておらず、資金繰りは大変だという場合もあります。
損益計算書や貸借対照表とつきあわせて検討すれば、経営成績、財政状態とお金の動きの関連を見る
ことができます。その意味で、小さな会社でもキャッシュフロー計算書を作成することが多くなっていくも
のと考えられます。
6-4-2 Excel で決算書を作成する
p.172 Excel を利用する利点
簿記の最大の特徴は、仕訳という最初の記録内容に、途中で一切、変更や訂正を行わないで転記のみ
によって、最終の決算書までが作成されることです。何かおかしいところがあったとしても、まず転記が
間違いなく行われ、試算表などでの計算も正しく行われていることを確認します。そのことが確認できれ
ば、後は最初の仕訳内容、つまり事実と異なる仕訳が行われていないかを確認し、原因がわかれば、間
違いを修正するための仕訳をして、それを勘定元帳、試算表という流れで追加転記していきます。Excel
の参照機能は、簿記の考え方を実現するのに最適なしくみです。Excel を使えば、試算表や勘定元帳か
ら目的に応じていろいろな資料を作成できます。また、Excel で参照場所や計算式を間違いなく設定して
おけば、その結果はほぼ 100%正確です。この本の例を理解して、さらに発展させて活用するようにしま
しょう。
p.176 コラム:決算書から情報を読み取る
経理業務の担当者なら、決算書の内容や会社の取引の内容をよく理解していて当然です。しかし、実務
処理に追われていると、自分たちで作ったはずの決算書の内容をよく知らなかったり、次の業務に埋没
してしまったりすることにもなりがちです。経理業務を楽しいと思えるのは、その作成した資料から、会社
の内容や問題点、改善すべき点などが見えてくるようになったときです。日々の業務と決算書の作成だ
けでなく、問題点の分析までできるようになって初めて一人前といえるでしょう。手始めに、決算書から基
本的な情報を読み取る訓練を行いましょう。
解答のポイント
第 1 章 復習問題
知識問題
問題 1
①
経理の仕事では、会社の資金の出金だけでなく、入金も管理しなければなりません。当然、支払資
金が不足しないように預金の口座間の振替や預金から現金を払い出して、小口支払資金の準備な
ども行います。
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②
代金を支払う前に請求書の確認をしなければなりません。主に商品代金の支払なので、相手先は
仕入先ということになります。
③
代金を集金する前に経理として行う仕事は請求の締めです。得意先元帳を締め日で集計(帳簿を
締め切る)して、得意先に送付する請求書を作成します。
④
領収書や請求書は、会社が行った経理処理のもとになるものですから、証拠としていつでも必要な
ものが確認できるように整理して保存しておかなければなりません。
⑤
経理上の帳簿記録は、一般に公正で妥当であると認められているルールに従って行います。この
帳簿記録のルールのことを簿記といいます。
⑥
経理の仕事の最終的な目的は、会社の経営成績と財政状態を報告することです。その報告書が
決算書であり、それを作成するための処理が決算です。日々の正しい記帳が正しい決算の前提で
す。
問題 2
経理の仕事の最終目的は報告です。報告の相手先は株主や銀行など社外の場合もあれば、月次決算
などは、会社の経営管理資料として社内の各部門に対して行います。今までは、勘と経験で会社の経営
を行っていたところも、経理が作成する報告資料にもとづいて科学的に経営をしなければならないと考え
られるようになりました。社内のそれぞれの部門がどんな仕事を行っていて、どんな資料を必要としてい
るかを理解していなければなりません。
問題 3
毎日発生する取引は、その都度記帳しておかなければなりません。お金の実際の支払や回収は毎日発
生するため、現金出納帳や預金出納帳は毎日行う仕事です。また、1 日の出納業務は、出納帳残高と
実際の現金残高の一致を確認しなければ終了しないため毎日行います。さらに、売上や仕入のデータ
を毎日記録しておかなければ、得意先や仕入先からの問い合わせにも答えられないため毎日行わなけ
ればなりません。そして、仕訳伝票を作成して勘定元帳に転記するまでが毎日の仕事です。請求書の作
成や代金の支払などは毎月の仕事、勘定元帳を締め切って試算表や決算書を作成するのは年次の仕
事になります。
第 2 章 復習問題
知識問題
問題 1
出納帳には、お金の出入りを記録して管理します。日付、金額と摘要を記入しますが、摘要には仕訳を
する場合の相手科目も記入しておくとよりわかりやすいでしょう。そして、支払やその内容、相手先を確
認するための証拠として、相手先が発行する領収書を受け取って保存します。
問題 2
① 領収書は支払の金額だけでなく、内容を証明できるものでなければなりません。宛名が上様や空白
の領収書では、一番肝心な「当社が支払った」という内容が記載されていないわけですから、証拠と
しての価値があまりないということになります。
④ 日付順に保管し、いつでも必要なものが探せるように整理しておきます。
実習問題
問題 1
現金出納帳は毎日締め切ります。翌日は前日からの繰越金額を記入するところから記録を始めます。
前日からの繰越金額に、本日の入金を足して、本日の出金を引いたものが、入出金の都度計算する差
引残高の最後の行の残高と一致していなければなりません。
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問題 2
現金残高確認表を毎日作成して帳簿残高(現金出納帳で計算される残高)と確認します。一致しなけれ
ば、記帳の間違いや計算の間違い、現金の数え間違いなどがないか確認します。原因もわからないの
に、経理担当者が自分の財布からお金を出したり、逆に余ったお金を抜いておいたりということは絶対に
してはいけないことです。
問題 3
この問題のように現金過不足の原因がすぐにわかった場合は、実務上も出納帳を書き直してしまうとい
う処理もあり得るのですが、その日のうちに原因がわからない場合は、現金過不足の仕訳をします。そ
して、原因がわかった日に現金過不足を正しい科目に振り替える仕訳をします。簿記の原則として、さか
のぼって記帳を訂正することはできません。
第 3 章 復習問題
知識問題
問題 1
①
商品を購入したときに仕訳をする科目です。
②
会社が支払わなければならない未払金のうち、商品の掛代金はこの科目で処理します。
③
商品を買えば、支払うべき債務は増え、代金を支払えば減ります。
④
取引条件のうち、支払の条件が一番大事なことです。締支払の慣習がある日本では、何日締め
(たとえば月末)の何日払いで、現金か、振込か、手形かということを最初に決めてから取引を始め
ます。
問題 2
商品を購入するときには、まず注文をします。電話などで行うこともありますが、発注書という文書を発行
して発注するのが普通です。商品が納入されたら、納品書に受領印を押すかサインをします。仕入先元
帳に、納品書ごとに記録しておきます。締め日現在で作成された請求書が到着したら、チェックして支払
一覧表を作成し、支払を行いますが、仕入先元帳には納品を記帳するだけでなく、支払も記帳して支払
後の残高を計算します。
問題 3
②
摘要欄には、後でその記帳内容がよくわかるように、必要になるかもしれないことを詳しく記録して
おきます。ただし、後で帳簿を開いたときに見やすいように、欄内に普通の字の大きさで書き込める
程度の簡潔な記帳であることも必要です。
実習問題
問題 1
仕入先元帳の 7 月のページの余白に、前月までの仕入金額や累計金額、平均金額などを表示させます。
シートに名前を付けていなければ「=Sheet1!A:1」のような参照式になりますが、5 月分の Sheet に「5 月」
という名前を付けていれば「=5 月!A:1」のような参照式になります。
第 4 章 復習問題
知識問題
問題 1
①
会社に受け取る権利のある未収金のうち、商品の掛代金はこの科目で処理します。
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②
商品を売れば、受け取るべき債権は増え、代金を受け取れば減ります。
③
会社の得意先に対する窓口は営業担当者です。経理から直接電話をしたり訪問したりというのは
特別な場合です。まず、営業担当者に入金が遅れた事情を確認してもらい、営業だけでは解決で
きない場合には、上司の指示を受けて督促の方法を選択します。
問題 2
②
保存しているデータを電子帳簿として正式な書類とするためには、改ざん修正ができないようなしく
みを作って、それを役所に届けなければならないなど、法律上の制約があります。通常は、紙が原
本とみなされ、Excel はその紙の書類を作成するための道具に過ぎません。今でも、紙の書類が正
式な書類です。
③
会社が発行した領収書の控えを相手に渡した領収書とセットにして保存しているからこそ、領収書
の証拠としての意味があります。会社の領収書がいくらでも発行できるなら、それで、集金してきた
お金を会社に入れないという不正があってもわかりません。営業担当者が現金集金を行う場合など
には、経理から営業担当者にそのことを十分に説明する必要があります。
④
前月繰越、請求、集金を請求書、通帳、領収書控えなどと確認して、間違いがないことを確認しな
がら集金管理表を作成します。
問題 3
現金による集金は、銀行預金を通らないために間違いや不正が発生する可能性があります。営業担当
者に集金のルールを徹底する必要があります。営業担当者が名刺の裏や市販の領収書を使って、仮の
領収書を相手先に渡してきた場合には、会社の正式な領収書ではありませんが、印紙を貼らなければ
印紙税法違反ということになります。そのようなことを行わないように徹底するとともに、もしそのようなこ
とがあれば、すぐに正式な領収書を発行して、差し換えてもらうようにします。
実習問題
問題 1
Excel を使って、実際の得意先元帳の記入をしましょう。前月からの繰越金額を記入し、当月の振込回収
金額を記入した時点で差引残高がいったんゼロになることを確認します。そして、当月締めの請求金額
を記録すれば、通常、その差引残高がそのまま繰越金額になります。
第 5 章 復習問題
知識問題
問題 1
②
記録、分類、集計を行うときには、5 つの要素をさらに細かく分けた勘定科目をもとにします。どのよ
うに勘定科目を分類し、どのような名前を付けるかは、会社によって異なります。会社で決めたルー
ル(経理規定と勘定科目体系)を継続して守っていくことが必要です。
③
現金や預金のように形のある資産もあれば、特許権やソフトウェアのような形のない資産も経理上
は資産として扱います。
④
簿記の基本は、仕訳を毎日正確に行うことです。
⑤
正確には、左側に借方科目の増加と貸方科目の減少を記入し、右側には貸方科目の増加と借方
科目の減少を記入します。
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実習問題
問題 1
仕訳を行う場合には、必ずもとになる資料を確認して行います。現金による支払は領収書、振込入金は
普通預金の通帳、講座振替も普通預金の通帳を確認して行います。日付や借方科目、貸方科目、金額、
摘要を記入しなければ仕訳としての要件を満たさないことになります。入金の仕訳は、その時点での得
意先元帳で入金の内容を確認して摘要を記入します。売掛金が滞留している得意先の場合は、営業担
当者などに内容を確認して摘要を記入します。
第 6 章 復習問題
知識問題
問題 1
①
実際に商品在庫を調べることを実地棚卸、商品有高帳から在庫リストを作成することを帳簿棚卸と
いいます。
③
複数の期間に減価償却費をいくらずつ配分すればいいかは、目で見てわかる客観的な証拠はあり
ません。したがって、いろいろな配分の方法が考えられてきました。最近では、その資産の時価を評
価して、値下がりしていれば、その値下がり分も費用とする「減損会計」という方法も併用されるよう
になって来ました。しかし、通常は定率法と定額法のどちらかを選択して、その選択した方法で継続
して減価償却費の計算を行います。
問題 2
①
資産(固定資産)の増加と資産の減少
②
資産(商品)の増加と資産の減少
③
費用の増加と資産の減少(または、資産の控除項目の増加)
④
資産の増加と収益の増加(または、原価の控除項目の増加)
⑤
費用の増加と資産の減少
問題 3
①
損益計算書では、利益を増加させる項目を収益、減少させる項目を費用として報告します。当期の
経営実績の成績表ということになります。
②
貸借対照表では、決算日の資産、負債、資本の残高を報告します。決算日の財産というと、決算日
の時価で評価して純財産をいくら持っているかということになりますが、貸借対照表で報告するの
は勘定元帳の残高なので、資産や負債を時価で再評価したものではありません(一部時価で評価
する方法を用いるときもありますが、その場合でも仕訳を通して行うので、貸借対照表は勘定元帳
の残高から作成します)。
実習問題
問題 1
「調整前償却額≧償却保証額」となる年度では「調整前償却額」(購入初年度は「償却月数/12」を掛け
る)が、「調整前償却額<償却保証額」となる年度以降では「改訂取得価額×改訂償却率」が減価償却
費(残存簿価 1 円との比較前)となります。そのうえで期末簿価が残存簿価 1 円を下回らないよう比較計
算を行います。これらを、IF 関数を使って場合分けの設定をするのがポイントです。
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総合問題
知識問題
問題 1
①
公私の区別ができない人は会社のお金を預かることはできません。自分のお金(ポケットマネー)で
現金の過不足を調整することなどは絶対にしてはいけません。
③
金額や残高だけでなく、何のために使ったかを摘要に簡潔に記入します。
問題 2
現金の支払は、領収書と交換が原則です。支払の都度、現金出納帳に記入し、毎日、現金残高を確認
します。
問題 3
現金出納帳や預金出納帳は、左の列に入金、右の列に出金を記入します。普通預金の通帳は、預け入
れが右の列、払い出しが左の列になっており、出納帳とは逆になっているので注意しましょう。
問題 5
①
領収書の筆跡が発行した会社でなく、当社の営業や経理の担当者であれば、不正を疑われても仕
方がありません。宛名が空欄であるということは、支払の証拠としては不十分ですが、まったく支払
の証拠にならないというわけではありません。後日、発行した会社に宛先を確認してもらうことも可
能です。発行者以外のものが、勝手に追加記入することは絶対にしてはいけません。
②
現金の残高が合わないことはよいことではありませんが、それが事実であれば、事実を記録する
のが簿記の考え方です。一度、自分のお金でつじつまを合わせてしまうと、合わないときは、自分
のお金で調整をつけるようになってしまい、経理担当者としての誠実さを疑われてしまいます。
問題 6
①
商品と納品書はセットで送付します。
③
受領書にサインや押印すれば、商品の内容が納品書の内容と間違いないという確認をしたことに
なります。きちんと確認してからサインします。
問題 7
②
納品書によって、何が送られてきたのかを確認できます。
③
買掛金元帳ともいいます。
④
締め日までの納品で締め切るので、たとえば、締め日が 20 日なら月末までに送付してもらうように
仕入先に依頼します。
⑤
銀行に対する振込依頼書と兼用することもあります。
問題 8
①
小売業では現金取引が一般的です。
②
卸売業や製造業では信用取引が一般的です。
問題 9
末締めの翌月末払いという条件なら 6 月 1 日に購入しても、支払は 7 月 31 日でいいということになりま
す。資金繰りを考えるときには、締めと支払の条件を十分考慮することが必要です。
問題 11
得意先から商品の発注があれば、商品と納品書をセットにして送ります。納品書にサインや押印をもらっ
たら売上が確定するため、得意先元帳に記入します。請求書を作成し、集金をしたら得意先元帳に記入
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して、集金一覧表を作成します。未入金の得意先への督促は、営業担当者を通じて行いますが、経理
から行うこともあります。
問題 12
③
支払や集金は資金繰りの基本です。単なる間違いも、会社の資金繰りができなくなれば倒産してし
まうこともあります。仕入先の資金繰りについても責任があるのだという自覚を持つことが大切で
す。
問題 13
銀行印、取引印、社印、実印の違いを理解させましょう。それぞれの印鑑の管理者や管理場所、押印の
権限者などを確認しておくとよいでしょう。もし、印鑑を預かっていても、自分に権限のない印鑑を、勝手
に押してはいけません。
問題 14
IF 関数を使えば、条件によって異なる文字を表示することができます。最初のカンマの前が条件で、そ
の条件に一致すれば、カンマの次に記述した数値、計算結果、文字などを表示します。その次のカンマ
の後には、条件に一致しない場合に表示する数値、計算結果、文字などを記述します。
問題 15
前月繰越に、売上を加算し、集金を減算した結果が次月に繰り越す金額です。
問題 16
振込手数料をどちらが負担するかで得意先から入金される金額が異なります。得意先が負担する場合
には、売掛金の金額がそのまま入金されますが、当社負担の場合には、振込手数料を差し引いた金額
しか入金されません。支払の場合も、当社が負担するなら、支払額と別に振込手数料を支払いますが、
先方負担なら、支払額から振込手数料を差し引いた金額を振り込みます。
問題 17
仕訳から仕訳伝票、勘定元帳への転記、勘定元帳の締め切り、試算表の作成を行って決算となります。
問題 23
④
最後まで償却が終われば、それまでの期間を通じた費用や利益の額は同じになりますが、決算ご
との利益は償却の方法で異なります。
問題 24
①
定額法では、取得価額に償却率を掛けて償却額を計算します。
②
定率法では、取得価額から前期までの償却費の累計額を差し引いた期首簿価に償却率を掛けて
減価償却費を計算しますが、「調整前償却額<償却保証額」となる年度以降は改訂取得価額に改
訂償却率を掛けたものが減価償却費となります。
実習問題
問題 3
現金出納帳と得意先元帳は、どちらも借方が増加、貸方が減少なので、差引残高は「繰越金額+借方
金額-貸方金額」で計算します。仕入先元帳の差引残高は「繰越金額+貸方金額-借方金額」で計算
します。
問題 4
売上と集金の内容を確認していきます。売上を確認するために得意先に送付した請求書、振込を確認
するために普通預金の通帳を見ながら、得意先元帳と仕訳伝票を作成します。
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問題 5
仕訳伝票から売掛金の勘定元帳に転記します。実際の業務では、得意先元帳へ記帳すると、同時に仕
訳帳(仕訳伝票)や勘定元帳に転記されるという会計ソフトを使うことが多くなっていますが、ここでは、
転記することでそのしくみや流れを理解させましょう。
問題 8
勘定元帳の結果を試算表に転記し、借方合計と貸方合計が一致することを確認します。試算表の残高
を損益科目は損益計算書に、貸借科目は貸借対照表に転記して両者で計算される利益が一致すること
を確認します。
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即戦力になる!! ビジネス実務と PC 活用 経理入門編 第 2 版
講習の手引き
2014 年 12 月 15 日発行
著作・制作
発行
笠原 清明
日経 BP 社
© 2014 Kiyoaki Kasahara