「3・11 被災地における排泄ケアの実態調査」 結果報告

2011 年 11 月 7 日
「3・11 被災地における排泄ケアの実態調査」 結果報告
~震災を
震災を通じて見
じて見える排泄
える排泄ケア
排泄ケアの
ケアの課題と
課題と期待~
期待~
NPO 法人日本コンチネンス協会(所在地:東京都杉並区、会長:西村かおる)とユニ・チャーム株式会
社排泄ケア研究所は、東日本大震災の被災地に従事した介護・看護従事者を対象に、被災直後と7ヶ
月が経過した現在の在宅介護の状況、その中でも特に排泄ケアに関してアンケート調査およびインタビ
ュー調査を実施しました。
本調査は、震災に対する介護・看護従事者の備えや心構え、行政の在宅介護制度づくりの一助とな
ると同時に、緊急時ではない日頃の在宅介護・排泄介護においても気付きを与える結果となりました。
本調査によって、震災時における在宅介護の難しさや緊急時に限らない排泄ケアの課題として下記
のようなことが明らかになりましたのでご報告いたします。
【調査結果概要】
◆在宅介護は被災後 1 週間が勝負。被災によって浮き彫りになる「排泄・食事」ケアの重要性
◆被災によって ADL(※)低下が 48.9%。「トイレに行けない」環境によって便秘、ADL 低下に。
◆避難所・在宅まで物資が届かない。被災直後のおむつ・尿取りパッドの配給、備蓄に課題
◆最大5枚の重ね使いも。非常時に限らず介護のプロも間違いがちな「おむつの重ね使い」
◆震災を経て、在宅家族に知っておいてほしかったこと、「おむつの買い置き・交換方法」
(※)ADL(Activities of Daily Living):日常生活の動作能力
【インタビュー調査抜粋】 被災家族と被災地の介護・看護従事者の声
【本調査の考察と総括】 日本コンチネンス協会・会長 西村かおる
「排泄」、「排泄介護」は人としての尊厳にかかわる問題です。本調査が 11 月 11 日の「介護の日」に向
けて介護に関わる人々のみならず、日頃排泄ケアの実情に接する機会の少ない方々にとっても、在宅
介護・排泄介護について考えるきっかけになれば幸いです。
【調査概要】
倫理的配慮:調査協力者に目的を説明し、承諾を得た上、個人の特定ができない配慮を実施
◆調査期間:2011 年 9 月下旬~10 月中旬
◆調査方法:郵送によるアンケート調査
◆調査対象:青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉の訪問看護ステーション・介護ステーション従業員
◆サンプル数:震災によって業務に支障が出たと回答した 130 件 回収率 9.36%
(アンケート送付先 1389 事業所、回収アンケート数 198 件のうち)
※アンケートによる定量調査結果の具体的な実態を明らかにするために下記のインタビュー調査を実施
①被災地にて在宅介護を担うご家族 2 名にインビュー調査を実施
②回答があった事業所の内、代表的な介護事業者 3 名にアンケート結果を深掘りするインタビュー調査を実施
1
◆在宅介護は被災後 1 週間が勝負。被災によって浮き彫りになる「排泄・食事」ケアの重要性
本調査では、震災によって訪問介護・訪問看護業務に支障が生じたと答えた回答者のうち、震災
の影響によりサービスが中断した方は 65.4%でした(図表 1)
。そのうち、サービス再開には 1
週間程度、1 ヶ月程度という回答が 59.3%を占め(図表 2)、介護の現場でも 3 月の東日本大震
災の被害の甚大さがうかがえる結果となりました。
また、
「被災直後にケアサービスを提供していく上で困ったこと」と「
(サービス対象者の)家族
が困っているという印象を受けたこと」を聞いたところ、双方ともに上位 3 位が「排泄ケア」
「食
事ケア」
「清潔ケア」という結果になっています。(図表 3)
。日頃、訪問ケアサービス事業者が
担うことが大きい排泄ケアは、被介護家族にとっても大きな懸念事項となったようです。
今回の震災では、地震発生からライフラインが回復し、物資が供給され始めるまでに約 1 週間か
かっています。この 1 週間を家族や地域の力でいかに乗り切るかが「食事ケア・排泄ケア」を始
めとした介護全般について非常に重要であると言えます。
【図表1
図表1】
被災により
によりサービス
サービスが
中断しましたか
被災
により
サービス
が中断
しましたか
(SA、
SA、n=130)
130)
【図表 2】
何日後に
サービスを
再開することができましたか
何日後
にサービス
を再開
することができましたか
(SA、
SA、n=86)
86)
5.8%
0%
1.2%
15.1%
33.7%
34.6%
3日以内
65.4%
1週間程度
はい
1ヶ月程度
44.2%
いいえ
2ヶ月程度
3ヶ月
それ以上
【図表 3】 被災直後、
被災直後、ケアサービスを
ケアサービスを提供して
提供していく
していく上
いく上で困ったことはありますか。
ったことはありますか。(MA
(MA、
MA、n=127)
127)
またご家族
またご家族が
家族が困っていたとお感
っていたとお感じになった事
じになった事はありますか。
はありますか。(MA
(MA、
MA、n=125)
125)
「家族、介護者共に 1 位は排泄ケア」
37.6
37.8
排泄ケア
食事ケア
36.8
25.2
28.8
清潔ケア
33.1
16.8
15.0
呼吸管理
家族
介護者
6.4
褥瘡ケア
13.4
機能訓練
2.4
4.0
14.4
その他
18.9
0
5
10
15
20
2
25
30
35
40(%)
◆被災によって ADL 低下が 48.9%。「トイレに行けない」環境によって便秘、ADL 低下に。
東日本大震災直後、多くの被災地で断水によるトイレが使えない問題が大きく報道されました。
排泄ケアの現場でも同様に、被災直後に対応が難しかった排泄に関する困りごととして、
「トイ
レが使用できない」が 1 位となっています。次いで「便秘」、
「プライバシーが守れない」と続き、
4 番目に「パッド、おむつからの漏れ」という結果から、トイレに行けないことによって結果的
に便秘に悩まされた当時の状況がうかがえます(図表 4)。
【図表 4】 a.被災直後
a.被災直後に
被災直後に対応が
対応が難しかった排泄
しかった排泄に
排泄に関する困
する困りごとはありましたか(MA、
MA、n=88)
88)
b.トイレ
b.トイレが
トイレが使用できなかった
使用できなかった人
できなかった人のうち ADL に変化があった
変化があった人
があった人はいますか(
はいますか(SA、
SA、n=38)
38)
44.3
トイレが使用できない
0%
「ADL 低下は 50%」
38.6
便秘
15.8%
23.9
プライバシーが守れない
①ADLが低下した
50%
②一時的にADLが低下した
34.2%
18.2
パッド、おむつからの漏れ
③ADLが向上した
④ADLに変化はなかった
⑤ADLが改善
15.9
その他
0%
0
10
20
30
50 (%)
40
( b)
( a)
また、震災前後でケアサービス対象者の ADL に変化があったかどうかを調査したところ、ADL が
低下したと答えた人はおよそ半数に上りました(図表 5)。また「トイレが使用できない」と答
えた方のうち、ADL が低下した人は 50.0%に及びました。多くの人の排泄環境が不自由になった
ことが、ADL の低下につながったと推察されます。高齢者にとっては、トイレに行くこと自体が
運動機能の維持・回復に重要な運動であり、ADL の低下を防ぐことにつながります。被災直後に
は、避難所等から外出ができない可能性もありますが、可能な限りトイレへの誘導や体を動かす
機会を作るなど、介護が必要な人に対する周囲の理解と協力が不可欠です。
【図表 5】 介護対象者の
対象者の方は全般的に
全般的に震災前と
震災前と比較して
比較して ADL に変化はありましたか
変化はありましたか(
はありましたか(SA、
SA、n=129)
129)
0.8%
13.2%
①ADLが低下した
②一時的にADLが低下した
49.5%
35.7%
③ADLが向上した
④ADLに変化はなかった
⑤改善した
0.8%
一方で、震災直後は「一時的に ADL が低下した」ものの、現在は震災前と同じ状況まで回復して
いると思われる方が 35.7%存在していることも貴重な事実です。別の調査項目では「排泄ケア
について震災前と比べ、ケアの必要性について大きな変化がない方」との回答が 74.9%に上り
ます。これは、介護・看護従事者やご家族が適切で献身的なケアを継続することにより、低下し
た ADL 及び排泄ケアの必要性は回復することが出来るという希望の持てる結果だと考えます。ま
た、高齢者にとって普段通りの日常生活を送ることがいかに重要なことかが見て取れます。
3
◆避難所・在宅まで物資が届かない。被災直後のおむつ・尿取りパッドの配給、備蓄に課題
震災直後、
「排泄ケアの資材で不足したもの」について調査した結果、
「おむつ」、
「尿取りパッド」
の不足が目立ちました。おむつやパッドは性別・用途に合わせて様々な種類があるため、被災後
の支援活動時には特に不足しているおむつの種類や用途を確認することが大切なようです(図表
6)。また、
「震災を経験して、震災に備えて常備しておくと良いと思うもの」として、「おむつ」
と「尿取りパッド」
、「使い捨て簡易トイレ」が上位に挙がっています(図表 7)
。今後、震災等
の非常時の対策として、排泄ケア関連用品の備蓄対応が求められると考えます。
【図表 6】 震災直後、
震災直後、排泄ケア
排泄ケアの
ケアの資材で
資材で困ったことはありますか (MA、
MA、n=87)
87)
81.6
おむつ
74.7
パッド
10.3
カテーテル関係
11.5
尿器、ポータブルトイレ
0
20
40
60
80
100 (%)
【図表 7】 震災に
震災に備えて備蓄
えて備蓄しておくと
備蓄しておくと良
しておくと良いと思
いと思うものはありますか (MA、
MA、n=101)
101)
テープ型おむつ
69.3
パンツ型おむつ
54.5
多量パッド
47.5
使い捨て簡易トイレ
45.5
中度パッド(300cc程度)
34.7
0
10
20
30
4
40
50
60
70
80(%)
◆最大5枚の重ね使いも。非常時に限らず介護のプロも間違いがちな「おむつの重ね使い」
「震災直後の排泄ケアとして対処したこと」を聞いたところ、
「パッド、おむつの工夫をした」
という回答が最も多く、その工夫として、ほとんどが「重ね使い」を実施していたことが分かり
ました。また、震災から 7 ヶ月がたった 10 月の段階で、排泄ケアとして対処していることのう
ち、パッド、おむつを工夫しているという 21 名の回答者のうち 16 名が「重ね使い」をしていま
す。重ねた枚数についても、震災直後は約 60%、現在でも約 45%の方が 2~3 枚以上の使用が適
切と回答しました。
「重ね使い」は、本来のおむつの使用方法とは異なっており、吸収機能や保水機能の補強には、
ほとんどなりえません。むしろ、重なりによるすき間を作ることから、漏れやすさにつながり、
ムレや不快感の原因になるだけでなく、褥瘡や ADL の低下の要因ともなりえます。被災直後に必
要に駆られておむつを使用するケースだけではなく、日常的なおむつ使用時でも、介護現場では
おむつ着用方法が間違われ続けていることが懸念されます。
【図表 8】 震災直後の
震災直後の排泄ケア
排泄ケアとして
ケアとして対処
として対処したことはありますか
対処したことはありますか (MA、
MA、n=87)
87)
現在排泄ケア
現在排泄ケアとして
ケアとして対処
として対処していることはありますか
対処していることはありますか (MA、
MA、n=39)
39)
「最も多かった工夫は被災直後、現在共にパッド、おむつの重ね使い」
37
パッド、おむつの工夫として、重ね使いをした
16
パッド、おむつの工夫として、代用品を使用した
14
2
パッド、おむつの工夫として、消臭剤を使用した
7
5
パッド、おむつの工夫として、その他工夫をした
6
2
尿器、トイレの工夫として、おむつを使用した
25
5
尿器、トイレの工夫として、代用品を使用した
4
尿器、トイレの工夫として、その他工夫をした
1
7
2
排尿症状への対応として、パッド、おむつを使用した
29
10
排尿症状への対応として、水分を多くとった
8
排尿症状への対応として、トイレ誘導をした
8
7
排尿症状への対応として、受診をした
1
1
排尿症状への対応として、その他工夫をした
1
1
9
被災直後
現在
排便症状への対応として、摘便・浣腸をした
25
13
排便症状への対応として、パッド、おむつの対応をした
11
排便症状への対応として、水分を多くとった
11
排便症状への対応として、食品の調整をした
22
16
11
8
3
3
排便症状への対応として、市販薬を使用した
排便症状への対応として、受診をした
0
排便症状への対応として、その他工夫をした
0
0
2
1
5
10
5
15
20
25
30
35
(人)
40
◆震災を経て、在宅家族に知っておいてほしかったこと、「おむつの買い置き・交換方法」
介護・看護従事者として、
「震災を経て、排泄ケアについて普段からサービス対象者の家族に知
っておいて欲しかった(周知しておくべきだった)と感じた点」について聞いたところ、1 位が
「パッド、おむつの買い置きの必要性」
、2 位が「パッド、おむつの最適な選び方・交換方法」
、
3 位が「下剤、浣腸の理解と準備」となりました(図表 9)
。介護・看護のプロだけでなく、在宅
介護サービスを受けるご家族も普段から排泄ケアを意識して、パッド、おむつの買い置きだけで
なく、その種類や使い方を知っておくことが非常時に役立つことが示唆されています。
実際にコンチネンス協会の支援として 4 月に被災地を訪れた際に、紙おむつ、パッドの備蓄がす
ぐに底をついたこと。そして、重ね使いをしているご家族に、正しいあて方を説明した際、「今
まで誰も教えてくれなかった」と語った出来事が、その方に限らず普遍的なものであることを表
しています。
【図表 9】 震災を
震災を経て、排泄ケア
排泄ケアについて
ケアについて普段
について普段からご
普段からご家族
からご家族に
家族に知っておいて欲
っておいて欲しかったことはありますか
(MA、
MA、n=96)
96)
79.2
パッド、オムツの買い置きの必要性
おむつ
32.3
パッド、オムツの適切な選び方・交換方法
おむつ
25.0
25
下剤、浣腸の理解と準備
排泄誘導のタイミング
15.6
簡易ポータブルトイレ、尿器の買い置き
13.5
5.2
その他
0
20
40
60
80
100
(%)
冒頭の図表 1,2 の結果からも分かるように、大きな災害が起こった時には、介護サービスが中断
してから再開するには 3 日から 1 週間程度が必要です。
その間、
適切な排泄ケアを行うためには、
物資の提供や介護サービスが再開するまでの 1 週間分、最低でも 3 日分のパッド、おむつを避難
所・訪問介護関連施設に備蓄しておくことが必要です。また、備蓄だけでなく、適切な使い方を
知っておくことで不要なおむつを減らし、不適切なケアを防ぐことが出来ます。それにより、ト
イレの使用が困難であっても ADL の低下を最低限に防ぐことが可能です。
6
【インタビュー調査抜粋】 被災家族と被災地の介護・看護従事者の声
定量調査のより具体的な内容を把握するため、現地の在宅家族、および介護・看護従事者
に対するインタビュー調査を実施しました。被災地での介護・排泄ケアに対する生の声、
そこから感じ取れるもの・示唆されるものが、数多く浮かび上がっています。
■被災家族の声
【被災家族 A さん】
・震災後約 1 ヶ月間はトイレが使えない状況だった。当時は近くの公園に穴を掘り排泄をしてい
た。
・被介護者は地震のショックから眠れなくなり、睡眠薬が増えた。そのため転倒の危険が高くな
った。震災直後に困ったことはトイレだった。夜間頻尿となり、2 階で寝泊りをしていたが公
園までは間に合わずもらすことが増え、おむつの使用を始めた。大変だったが、避難所ではこ
のような介護はできなかったと思う。
・現在も夜間頻尿はあり、夜間のトイレ介助を行っている。今は一旦椅子に座らせそこから手を
引いてトイレに連れて行く状態で以前よりは楽になったが十分睡眠を取れないことには変わ
らない。日中は仕事の復興に追われ、夜間はトイレの介護が大変である。
・これから冬に向けて、仕事が多忙になるので、一時施設入居の予定をしている。
【被災家族 B さん】
・被介護者は認知症。介護をしながらでは避難所で生活が出来ないため実家の兄弟と同居をした
が、避難所にいなければ情報が全く入ってこない状況だった。
・トイレは畑に穴を掘り大便は済ませた。発電機と貯水タンクがあったため川から汲んできた水
を溜め、尿はトイレで排泄した。しかし、トイレに十分な水はなかった。被介護者がパッドを
間違ってトイレに捨てることがないか非常に気を使った。
・仮設住宅に移ってから認知症が悪化したため、現在は仮設住宅に近い特別養護老人ホームに入
居中。介護費用を一部免除してもらっているのでとても助かっているが、この免除がなくなっ
たら、また家庭に引き取る事になるだろうが、それまでに仕事を再開していきたい。
■被災地介護・看護従事者の声
【ヘルパーステーション C】
・震災直後はヘルパーが自転車や徒歩で利用者の自宅を訪問することが続いた。
・食べ物の次に排泄の問題が起きた。おむつの在庫はすぐに底をつき、サンプルなどを在宅に配
ったが、必ずしも利用者のニーズにあったものを配れたわけではない。
【訪問看護ステーション D】
・避難所ではおむつ交換をする場所がなく、隅のほうで交換していたが、失禁が酷かったため回
りからのクレームが多発した。
・震災当初はおむつがかなり不足した。在宅での備蓄はすぐに底をつき、事業所の多少の備蓄も
配った。小売業再開後も、長時間並んだり、お一人様一個の数量制限もあり入手困難であった。
介護施設や避難所には物資が届いたが、在宅には届かず今回、在宅は盲点となった。
・高齢者専用住宅で、トイレの水が使えないので介護スタッフにおむつを着けられた方がいた。
ご本人は非常に傷ついており、本来おむつを使用しなくてもよい方が使用してしまったケース
もあった。
・今までトイレで排泄できた人がおむつをせざるをえなかった。緊急事態としての使用に留める
ため一定期間を経て、ヘルパーもおむつを外すように指導した。
7
【本調査の考察と総括】 日本コンチネンス協会理事 西村かおる
大きな災害時に深刻な問題としてあがるのは排泄です。同様に問題となる食事は多少我慢した
り、抜いたりすることはできますが、排泄は我慢ができず、しかも尊厳や衛生、健康に直結して
おり、より緊急性を要します。
今回の災害は阪神淡路大震災と比較し、地震より津波による水害が大きく、避難所でも穴を掘
って排泄することができなかった、トイレと水はあっても下水管が詰まっているために使用でき
ず排泄に困ったという報告が多々出ています。
そのような過酷な状態で避難所より実態がつかみにくい在宅の排泄ケアをどのように対応し
たのか、そこから、今後に備えるものは何かを明らかにすることを目的でこの調査は実施しまし
た。その結果に対し、以下のことが示唆されたと思います。
1.日常の
日常のケアが
ケアが有事の
有事の際にも影響
にも影響する
影響する。
する。
今回の調査結果、および私が被災地での支援活動に入った時に体験したことから強く実感した
ことは、日頃のケアの延長に有事の際のケアもあるということでした。具体的にはその方にあっ
た的確なおむつの選択ができていない、おむつの不要な重ね使い、安易なおむつ使用、排尿障害
に対する治療が実施されない、安易な下剤の使用等は日常の排泄ケアの課題として強く感じてい
ることです。特におむつの重ね使いは尿の吸収量増加にはならず、隙間からの横漏れによる汚染
や皮膚トラブルの原因、高コストとなるため避けるべきことです。より効率をあげ、トラブルを
防止したい時にその反対となるケアを実施していたことは正しい知識が浸透していなかった例
としてあげられると思います。
また頻尿はできれば受診をして治療による症状を改善しておきたいものです。
2.パッド、
パッド、おむつの適正
おむつの適正な
適正な使用が
使用が重要。
重要。
今回は緊急事態としておむつが使用されたことが明確になりましたが、それについては以下の
点を考慮する必要があると考えます。
①支給のシステム
的確なパッド、おむつが支給されていなかったことは調査からも私の経験からも明確です。パ
ッド、おむつは種類が多岐にわたっているということが理解されずに無差別に支給されていたた
め、尿量が合わなかったり、寝たきりの人に元気に動ける人用のおむつが配布され介護者が困っ
たりしていました。おむつに限らず、今回は全体の物流に困難が生じましたが、特に福祉用具は
支給する側もある程度の知識は必要で、コーディネートできるようなシステムを構築する必要が
あります。知識のある民間人を福祉用具支給のチームに置くなど、検討する必要があると思いま
す。
②使い方
前述しましたが、家族、あるいは在宅ケアチームはその方にあった正しい使用方法を日頃から
実施しておくことが重要です。使用後のパッド、おむつの処理も問題になりますが、尿量にあっ
たおむつの選択でゴミを削減できる可能性もあります。
③備蓄
普段使用しているものに加え、長時間交換できない可能性も考えると、普段より吸収量の多い
物を備蓄しておくことも重要です。
8
3.便秘への
便秘への対応
への対応
食事、ストレス、運動の低下、トイレ不足から便秘は多くの人が抱える問題です。
その対応として摘便、浣腸が最も多くなっています。これは目前の現実にすぐ対応でき、即効性
があります。訪問看護師がご家族に知っておいて欲しかったこととして、
「下剤、浣腸の理解と
準備」が上がっています。普段からその方の排便周期を確認しておくことはより効率にケアをす
る上で重要なことです。
しかしできれば頼らずに出すことができることが望まれます。そのためには、腸内細菌を整え、
便秘にも下痢にも、感染にも効果がある整腸剤や食物繊維、オリゴ糖などを備蓄しておき、摂取
することが体に優しい方法として勧められます。
これも普段から効果があるものを確認しておくことが望まれます。
4.在宅ケア
在宅ケアを
ケアを支える人
える人たちの努力
たちの努力
ご家族また在宅サービスを実施している方々の生の声、および震災直後に低下した ADL が改
善している方が 36%もあり、合計 86.3%もの人が ADL 低下しなかったというデータから
ケアしていらっしゃる方々の努力を強く感じました。
「大変だけど避難所ではできなかった」と
いうご家族の感想、自らも被災者でありながら在宅ケアに速やかに戻られた従事者の方々の努力
がこの数値に出ていると感じます。
しかし仮設住宅では十分なスペースがない、同じような家で認知症の方は混乱を生じる、また
震災直後からの心労の蓄積、なじんだ近隣の人たちとのつきあいの崩壊、寒さ対策などこれから
の在宅ケアへの新たな課題があり、細やかな対応が必要です。
個人の努力に頼るのみではなく、地域住民、民間と行政が一体となって支援できるシステム構
築が早急に必要と考えています。
最後に調査のご協力いただきました方々に深く御礼を申し上げます。
※リリース内のデータは全てユニ・チャーム調べです。
≪本件に関するお問い合わせ先≫
一般メディアの方は、 ユニ・チャーム㈱広報グループ
流通業界紙・誌の方は、 ユニ・チャーム㈱営業企画部
TEL:03-6722-1019
TEL:03-6722-1007
消費者の方は、
TEL:0120-041-062
ユニ・チャーム㈱お客様相談センター
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