2011 年1月 29~30 日 建交労第 12 回中央委員会【決定】 2011年春闘 建交労中央統一要求基準 【雇用主にたいする統一要求項目】 〈賃上げについて〉 (1)組合員1人あたり平均賃上げ 〈要求基準〉 イ.組合員など正規雇用労働者1人あたり平均 32,000 円以上の賃上げを要求し、そのう ち 80%を一律要求とし、20%は格差を是正する要求とします。 ロ.請負など短期間雇用で、日給を基本とする労働者1人あたり 1,800 円以上の賃上げ を要求し、請負原価から経費を除いて賃金相当部分を1日 15,000 円以上にします。 ハ.パートなど短時間雇用労働者1人あたり時間給 120 円以上の賃上げを要求します。 ニ.子ども手当の支給を理由とした賃金切り下げには反対します。家族手当などは、平 均して基本給に参入することします。 〈要求説明〉 ① 賃金要求は、4つの原則(❶生計費原則にもとづく標準賃金の引上げ、❷「同一労 働同一賃金」の確立、❸賃金の「底支え」と「底上げ」、❹国(自治体)の公契約に おける「適正賃金」の確保)を堅持し、アンケートにもとづいて平均賃上げ額を決定 します。 ② 職場にさまざまな雇用形態の労働者が働いています。これは雇用形態の違いを利用 して賃金格差をもちこみ総額人件費を削減することがねらいです。逆に賃金労働条件 が「均等」となれば、非正規労働者の職場への導入を規制することができます。世界 基準である「同一労働・同一賃金」の原則を適用することを重視します。雇用形態別 の賃金引き上げの重点はつぎのようにします。 イ.派遣労働者は「派遣先の賃金労働条件を適用する」という ILO 討議をふまえた世界 的原則に従い、要求は「正規雇用労働者」と同一労働条件を、派遣先企業と元企業の 責任で行うように要求します。 ロ.パートなど「短時間」、季節などの「有期」雇用労働者についても、時間単価あた りの「均等」待遇が実現できる賃金への引き上げを重視します。 -1- ハ.労働者でありながら「個人事業者」扱いをされ、労働基準法の保護を一方的に否定 されている「請負」労働者が急増しています。ダンプなど車もち労働者や個人請負労 働者の場合、ダンプ部会では、「車もちダンプ運転手」(2010 年4月全国平均)で、 「支払われるべき積算単価」を8時間運転で1日あたり 54,217 円と算出しています。 これには燃料費、ダンプ・リース代、タイヤ損料、福利厚生費用、消費税などの必要 経費に、労賃を加えたものです。請負労働では、必要経費+賃金の考え方が必要です。 該当する請負労働の実態にそくした賃金要求を設定し、必要経費こみの単価・運賃引 き上げ要求とします。 ニ.「公共サービス基本法」(2009 年7月1日施行)は、公共事業や公共サービスを発 注する国や地方自治体、公的機関は「安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に 実施されるようにするため、公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確 保その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるようつとめるものとする」(同 法第11条)としています。これで発注者は、委託企業で働く労働者、あるいは個人 請負労働者の賃金労働条件が「適正」かどうかを判断し、必要な措置をとる責任が生 まれています。これまでのように「民間企業の労務問題」であるとして門前払い同様 の扱いはできません。千葉県野田市のように、適正な賃金労働条件を「公契約条例」 として定める自治体も現れており、さまざまな地域でとりくみが進んでいます。公共 サービスの委託などで働く労働者は、委託企業に要求し、発注者に責任を果たすこと を求めていきます。 ③ 一律部分とは「誰でも」引き上げる要求です。格差(体系)是正は、雇用形態や男 女格差、年齢、企業間の格差などを是正する賃金要求です。賃上げ交渉に臨むにあた り、是正するところはどこか重点を決めておきます。 ④ 民主党の公約通り子ども手当(公約では中学生まで一人月額2万 6000 円だが、政府 予算案では 4 月実施で月1万 3000 円)や高校無償化などが政府から直接家計を支援す る制度確立がすすめられています。欧米に比べ所得の再配分機能が低く、社会保障制 度が不十分であったとこからの転換です。これは、同時に成果主義賃金制度の導入の 中で切り捨てられてきた「家族手当」や「住宅手当」などの復活でもあります。これ で結婚している、子どもがいる、高齢者をかかえているなど労働者の個別世帯の状況 で「賃金が高くなる」からと雇用差別を当然のように行ってきた企業の言い分はなく なります。内需型の経済秩序を確立する上できわめて重要な変更点です。従って、こ れまで出されてきた「家族手当」などは、総人件費を引き上げる必要のない費用です から、平均化して基本給に繰り入れることを求めます。 (2)成果主義賃金とのたたかい 〈要求基準〉 イ.成果主義賃金の導入に反対します。 ロ.すでに導入されているところでは、査定基準を公開させ、労働者の納得を得る公平 な基準とすることを要求します。 ハ.請負労働では、長期契約、エリア保障、使用継続保障、最低月収保障を求めます。 -2- 〈要求説明〉 ① 成果主義にもとづく業績給・能力給などの制度が、正社員や派遣、パートなどに導 入されているところでは、労働者の「働く意欲を低下」させ、❶評価や処遇への納得 感の低下、❷能力向上意欲の減退、❸人材育成軽視などが引き起こされ、企業の業績 向上にマイナスと経済産業省の研究報告(06年9月)、また労働者を評価する中間 管理職に矛盾が集中し「メンタルヘルス問題」を激増させています(社会経済生産性 本部「メンタルヘルス白書」06年7月)。欧米の成果主義がプラス型で総人件費を 増加させるのに対し、わが国の成果主義賃金はマイナス型で、正規雇用労働者の賃金 を切り下げる制度です。生計費原則に基づきこのようなマイナス査定型の是正をはか ることが求められています。 成果主義賃金は正規雇用労働者に限定された賃金切り下げ攻撃ではありません。請 負労働者の出来高払いは究極の成果主義賃金です。請負労働者への置き換えを許さな いことが大切です。 出来高給でも完全出来高給は禁止されています(毎月変動しない賃金が賃金総額の おおむね60%保障、労基法第 27 条を参照)。企業の査定で賃金を変動させようとす る企てに、生計費部分は必ず保障させる、毎月変動しない賃金が 60%以上にするとい う点を重視する必要があります。 ② 大企業では、成果主義の行き詰まりから「職種別賃金制度」への切り替えがすすん でいます。企業内で有資格制度や有資格者の最低賃金保障を決め、パートや派遣、請 負労働者にも適用して、非正規労働者にも労働意欲を持たせることが意図されていま す。しかしこれは、ヨーロッパのマイスター制度のように有資格者の決定が産業別に おこなわれ、企業横断的に決定されるのでなく、社内資格のために当該企業以外では 評価されません。職種別賃金制度を企業内で完結させるのでなく、産業別に定めるこ とが必要です。企業横断的な有資格者の決定方式、有資格の基準、一方的な職種変更 を許さない人事権の制限などを経営者、業界団体、政府にせまるたたかいが大切です。 ③ 中小企業では、基本となる賃金がもともと生活できないほど低水準なため、それを カバーするために残業や長時間などで「かせぐ」賃金制度がひろまっています。この ようなところでは、長時間労働や過労運転、過積載などがひろがり、欠陥商品や手抜 きサービス、法違反、労災事故・交通事故の多発などで、結局、企業の信用を失い、 経営危機にいたるケースが指摘されています。「当てはめ」として賃金総額を決めて から所定労働時間と残業時間から基準内賃金、残業手当額を算出するなどは許すこと はできません。 ④ 派遣労働の規制強化、最低賃金の改定などで、個人請負をはじめ請負労働が広がっ ています。さらに請負労働者の「労働者性」を否定し、大企業の自由に解雇でき、低 賃金労働者をつくりだそうとしています。これらを許さず、零細な個人請負労働者の 労働者性の確保を追求します。請負労働者の場合は契約内容をしっかり検討すること が必要です。労働者性否定を含め成果主義が強いほど、できるだけ短期の契約にして、 労災や業務上事故などになんの保障もつけません。長期契約、エリア(営業圏確保) 保障、継続保障、労災や事故補償制度、最低月収保障などを求め、「使い捨て」を許 さない枠組みをつくっていくことです。 -3- (3)建交労最低賃金・最低保障賃金 〈要求基準〉 イ.建交労最低賃金(18 歳以上の家族手当、通勤費を除く所定内賃金。パート労働者に たいしても適用)=月額 160,000 円以上、日額 8,000 円以上、時間額 1,000 円以上。 ロ.年齢別最低保障賃金 ・30 歳労働者(家族手当、通勤費を除く所定内賃金。勤続5年以上)=月額 235,000 円以上。 ・45 歳労働者(家族手当、通勤費を除く所定内賃金。勤続 10 年以上)=月額 365,000 円以上。 ハ.業種・職種別の特定最低賃金 業種別部会で、それぞれ対象となる産業・業種の主要職種の実態にもとづき設定し ます。職種別最低賃金は、有資格者賃金ですから、30 歳と 45 歳で設定し、年齢別最 低保障賃金要求を下回らないことにします。また、有資格者の範囲も決定します。 〈要求説明〉 ① 建交労最低賃金の要求は、全国どこでも、どんな業種の人にも適用する基準です。 従って、全労連の統一要求と一致しています。多業種産別である建交労は、業種別・ 職種別の特定最低賃金の確立と合わせて、全国一律最賃を追求します。 ② 自民党を除く主要政党は、2009 年8月の総選挙公約で、基本的には全国的に 1,000 円以上とすることを公約しています。民主党は、全国(一律)最賃を当面 800 円とし、 地域で上積みして、全国平均が 1,000 円以上となること、中小企業への援助策をとる としており、共産党も全国・地域の2本立てですすめることを明示しています。これ らの法定最賃が決まるには最低賃金法の再度の改定が必要です。現行最賃法では「生 活保護」水準との比較が盛り込まれており、生活保護水準に税・社会保険料負担など が加算されたものが最賃額とならなければならないものですが、現行の地域最賃「目 安額」はまだこれに到達していません。全国最賃を確立するためにも企業内の協定、 地域的な協定などが推進の力となるものです。時給1000円の全国最賃への国民世 論を背景に、全労連の全国一律最賃要求を統一して追求します。 ③ 最低賃金要求を確定する場合、現行の高卒者初任給水準(参考資料・表1)が参考 資料となります。さらに年齢別の最低保障賃金要求は、これまで建交労が定めてきた ように、年齢別にみた賃金の高低のひろがりから、全国全産業での賃金分布の低いほ うから 25%の水準(参考資料・表2)にもとづき設定します。 ④ 業種別・職種別の特定最賃は、全国一律最賃が「無資格者」を対象とするのに対し て、「有資格者」を対象とします。たとえばトラックなら大型免許保有者、建設では 一級建築士など、国家試験合格者など公的制度で資格が決まっている労働者の場合は、 この資格要件を基本に設定します。もう一つは、国家試験などがなく資格要件が不明 確な職種です。これらの職種の場合、実態調査などをもとに「期待される仕事を過不 足なく遂行できる経験、技能、知識を有する」ことを基準に設定する作業からはじめ る必要があります。欧米では、これを認定する企業横断的な制度が確立していますが、 -4- 日本ではまだ成立していません。商工会議所や各同業者団体などで設定している私的 な資格要件も参考にする必要があります。これらをもとに資格要件、認定方式に対す る要求を策定し、これに最低賃金要求をセットで要求します。 ⑤ 当面これらを基準に、職種別(巻末資料を参照)にその特性を考慮した県本部・部 会の統一要求を決定します。支部(分会)は、県本部・業種別部会統一要求で設定し た要求額を選択して提出します。 イ.地域別の加算は、大都市 12%、地方都市など6%を基準にします。この場合、建交 労最賃は 12%地域で 179,200 円、6%地域では 169,600 円となります。 ロ.パート労働者など短時間労働者の場合は、これらの要求金額を満たし、標準的月間 労働日と時間(月 20 日、160 時間)を上まわらない時間数で除した金額とします。 (4)夏季一時金要求 夏季一時金の引き上げを求めます。夏季一時金要求は賃上げ要求など春闘要求と同 時に提出します。ただし、要求額は産業間、地域間、企業規模間でなお大きな開きが あるので、県本部および業種別部会で統一要求を決定します。 〈雇用保障と労働時間短縮について〉 (1)長時間・過密労働をやめ雇用確保・失業防止 ① 人減らし、リストラ「合理化」をやめ、失業の防止、雇用安定に努めること。非正 規雇用労働者への置き換え、一方的な雇い止めや導入に反対します。また本人の同意 を得てパート・派遣・請負など非正規労働者の正職員化を要求します。日々雇用労働 者の仕事確保と拡充を求めます。 ② 会社の雇用施策、経営変更あるいは経営危機、倒産などにともなう労働者の雇用・ 賃金・権利保障などにたいする基本要求を、別途、「事前協議・同意協定書」要求と して提出するので、これを締結すること。 ③ 「足きり時間」なしですべての時間外(所定外勤務手当など)、休日労働、夜間時 間帯、深夜時間帯などの割増率を 50%とし合算されること。つまり、休日の深夜残業 の場合は、割増率が 150%となり、本給とあわせて 250%の賃金とすること。 ④ 長時間労働を規制し、雇用拡大に努めること。当面、月間の残業時間が6ヶ月間を 平均して 20 時間を超えないようにすること。外勤職員の時間外労働時間の管理に努め 残業代の支払い対象時間の一律頭打ち規制など、不法な不払い残業(サービス残業) をなくこと。「管理職」にも管理職手当を上まわる時間外労働には手当を支給するこ と。 ⑤ 時間外労働は男女共通で、当面1日2時間、1週5時間、月 20 時間、1年 150 時間 以内とすること。到達しているところは、基本要求1年 120 時間をめざすこと。 (2)賃下げなしの労働時間短縮 ① 1 日8時間・週 35 時間制、完全週休2日制の実施、年間総労働時間 1,800 時間以内 を実現すること。基本給を引き上げ、時短が原因で賃金水準が切り下げられない措置 をとること。 -5- ② 変形労働時間制をとっているところでは、本人合意を前提に、1日8時間制を基本 に、労働時間を平均して 1 週間あたりの所定労働時間を 35 時間以下にすること。また、 対象期間内の残業時間を含めた最長労働時間を 1 週 48 時間、1日9時間以内にするこ と。 また、1か月単位の変形労働時間制を採用している場合は、変形期間の開始までに あらかじめ1か月分の「各日ごとの始終業時刻」を具体的に特定し、特定後の変更は 認めない。ただし、やむをえず特定後の変更の必要性が生じた場合は、別途労使で協 議するとともに、本人の同意を得ること。 ③ 午後6時~翌朝7時までを「夜間時間帯」として、所定内労働時間であっても、こ の時間帯にかかる労働時間は 25%以上の割増賃金を支払い、さらに、午後 10 時~翌 朝6時までを「深夜時間帯」とし、さらに 25%以上(合計 50%以上)の割増賃金を支 払うこと。 ④ 深夜労働は、現行協定を堅持するとともに、新規に協定を結ぶ場合などは、妊婦、 産後1年以内のもの、義務教育未了の子・要介護者をもつ男女を適用除外とし、満 18 歳未満の労働者の深夜勤務はいっさい認めないこと。また、家族的要件・社会的要件 により深夜勤務ができないと申請するものを認め、不利益扱いをいっさいしないこと。 また、夜勤労働者の労働時間を1日7時間(実働)以下、週 35 時間以下とし、勤務 間隔は 16 時間以上とすること。また、回数は4週間をつうじて6回以内とすること。 ⑤ 変形労働時間制、フレックス制、裁量労働制の新たな導入には反対します。 〈要求説明〉 労働時間の短縮、不規則勤務の解消は、労働者の健康、家庭生活、社会生活の根源 的な要求です。また深刻化する雇用問題の解決手段としても重要です。しかし、日本 の労働法制では労働時間規制は、事実上「青天井」状態が一般化されています。この 結果、残業代に依存した賃金収入構造ができあがっています。国は残業規制の一環と して改正労基法、大企業では月60時間を超す残業には 150%の残業割増率を適用す ること、60 時間までは労使協定で割増率を引き上げることを本年4月1日からを実施 します(中小企業への実施は3年後の見直しまで猶予。しかし中小企業でも協定で実施 することは可)。すでに建交労は割増率については一貫して 150%を要求し、超長時間 残業は過労死防止のガイドラインに沿って規制をすることを求めてきました。今回の 法改正を受け、健康面からの超長時間残業規制を過労死ガイドラインだけでなく、具 体的な規制を設け、「一般の労働者並み」(6ヶ月平均で月20時間以内)とすること にします。これには賃金上げと残業割増率の引き上げの双方から追求することが必要 です(トラックなどの職場では、歩合給も割り増しの対象となりますから、これらの 手当を1つひとつチェックすることが大切です)。 〈休暇制度などの改善〉 (1)年次有給休暇 ① 採用時点より 14 日間以上、初年度 20 日以上へ増加すること。 ② 勤続1年以上の勤務者にたいしては、最低 35 日間とすること。 -6- ③ 特定日勤務者(パートなど)については、①、②に準ずること。また、年次有給休 暇の一方的な計画的付与は認めない。 (2)妊産婦の健康および休暇 妊産婦の健康やおよび休暇について以下のように要求します。 ① 産前産後休暇については、産前8週間・産後10週間(多胎の場合は各14週間) を有給で保障し、産前についても6週間は就業禁止期間を設けること。休暇中は代替 要員を配置すること。 ② 本人の請求があった場合、妊産婦に時間外労働・休日労働・深夜業をさせないこと (労基法 66 条)。 ③ 妊産婦に対し、通院休暇を与えること。妊娠 23 週までは4週間に1回以上・24 週 から 35 週までは2週間に1回以上・36 週から出産まで1週間に1回以上・出産1年 以内は医師や助産士が指示する回数を有給で保障すること。ただし、妊娠中医師や助 産士が指示した場合、指示された回数とすること(均等法 12 条)。一時金、昇級、勤 続年数不算入などの不利益取扱いをしないこと。 ④ 妊娠中・出産後の症状にかんして、医師などの指導を受けた場合「作業の制限」や 「勤務時間の短縮」「休業」を保障すること。また通勤緩和の措置を行うこと。賃金 保障は労使協議とすること(均等法 13 条)。 ⑤ 妊娠出産を理由とする解雇、その他の不利益な取り扱いをしないこと(均等法9条) ⑥ 本人の請求があった場合、妊娠中は軽易な業務に転換させること(労基法 63 条の 3)。 ⑦ とくに「危険有害業務への就労制限」(労基法 64 条の3)をうける女性労働者には、 妊娠中は軽易な業務に転換させること。 (3)育児休業・育児時間(事業主に義務化されているので、未協約をなくすこと) ① 育児休業は、男女の別なく現職復帰を条件に出生後1年半の本人の選択制とするこ と。 ② 休業中の賃金は、雇用保険給付とは別に平均賃金の 50%を保障すること。定期昇給 ならびに一時金、次年度有給日数などこの制度取得を理由に不利益なとりあつかいを しないこと。 ③ パートなどすべての労働者への適用を認めること。 ④ 労基法第 67 条による1日2回それぞれ 30 分の育児時間。育児は両親の共同責任の 考え方にもとづき、共働き家庭では男子労働者にも適用し、有給とすること。また、 期間を満3歳まで延長し、1日の育児時間を一括しても取得できるようにすること。 (4)介護休業(事業主に義務化されているので、未協約をなくすこと) ① 休業の期間・取得方法は、時間単位・日単位で1年度内に連続取得を含む最高1年 とすること。 ② 介護の対象は同居・別居の別なく配偶者、父母(夫妻双方)、子どもとすること。 ③ 休業中の賃金は、雇用保険給付とは別に平均賃金の 40%を保障すること。 -7- ④ 必要に応じた代替要員の配置および現職復帰など、介護休業を必要とする労働者が 安心してその制度を利用できるように配慮すること。 ⑤ パートなどすべての労働者への適用を認めること。 (5)特別休暇・手当 ① 生理休暇は、本人の申し入れによる休暇を認め、うち最低 2 日は有給とすること。 ② 結婚特別休暇 10 日間以上、結婚一時金 30 万円以上とし、有給とすること。 ③ 妻の出産にともなう出産補助休暇3日間以上、有給とすること。 ④ 労働者、とくに青年労働者の生活支援として住宅手当を拡充すること。また、女性 労働者に不利益を与えないよう「世帯主」要件をなくすこと。 ⑤ 30 歳未満の労働者にたいし研修・文化のための特別休暇2日間以上とし、有給とす ること。 ⑥ 子どもをもつ労働者にたいし、看護休暇(義務教育終了までの子ども)・教育休暇 (入園・学、卒園・学、参観・懇談)をそれぞれ年間 10 日間、有給で保障すること。 ⑦ 更年期障害などでも利用できる病気休暇を設け、年間 20 日間有給で保障すること。 ⑧ 私傷病欠勤は、有給で 180 日以上を保障すること。 ⑨ 出産祝い金として 10 万円以上を支給すること。 (6)忌引休暇 忌引休暇を以下の基準を最低基準として有給で保障すること。 ① 配偶者の場合は 10 日間以上。 ② 父母の場合は7日間以上。 ③ 子の場合は7日間以上。 ④ その他の親族、同居人について、前記基準をもとに必要日数を認めること。 (7)休業補償、有給の基準と休暇の出勤あつかいについて ① 会社都合により休業する場合は、平均賃金の 100%を補償すること。 ② 前記各項目の各休暇の有給とは、平均賃金または標準報酬日額とすること。「通常 賃金」というときには、労基法でいう通常賃金とし、歩合給などを除外することは認 めない。 ③ また、これらの休業・休暇を取得した場合、当該労働者は「出勤した」のもとして 扱い、一時金、年次有給休暇日数、退職金など出勤率にかかわる不利益扱いをいっさ いしないこと。 〈雇用継続・退職給付について〉 (1)定年制・雇用継続について 〈要求基準〉 ① 改正高齢者雇用安定法にもとづき、定年制を廃止するか、定年年齢を年金開始年令 または 65 歳まで引き上げること。雇用継続制度をとるところでは、希望者全員の 65 歳まで雇用継続を行うこと。また、定年延長、雇用継続を理由とする賃金・一時金切 -8- り下げに反対する。ただし、本人の希望により就労軽減などの措置をとるときは労使 協議とする。 ② 定年制延長などを理由とした、年令による賃金カット、強制出向・配転、退職金の 不利益扱いなどは撤回・廃止すること。退職金の減額を目的とした「第二基本給」な どの制度は廃止すること。 ③ 「早期退職制度」は原則として認めない。 (2)退職金・退職年金について 〈要求基準〉 ① 退職金制度の確立、退職一時金の引き上げ、退職年金の改善すること。 ② 退職給付債務積立金の不足を理由とする退職一時金、退職年金の給付水準の引き下 げ、退職年金の労働者負担分の増額などには反対する。 ③ パート、派遣、委託、請負労働者などに401K などを含む退職金制度を制度化す ること。建退共の適用拡大と充実をはかること。 ④ 税制適格退職金・(企業)年金制度は、大企業では確定給付型(厚生年金基金を含 む)、中小企業では中退金への継続を原則に要求する。 〈要求説明〉 ① 退職金・退職年金(企業年金)は「賃金の後払い」であり、退職後の労働者の生活 保障となる水準を要求します。ただし、具体的な金額などの内容については、産業・ 業種間格差、地域間格差、企業規模間格差を考慮し、県本部・業種別部会の統一要求 を別途提出します。 ② 退職引当金への課税強化がはかられおり、退職金や退職年金は原則的に社外に保全 すべきです(免税措置が受けられる)。中小企業での中退金を活用した社外保全や必 要な退職給付資産運営にたいする労働者・労働組合の監視強化を求め、運営上の拒否 権の確立を求めます。 ③ 税制適格退職金・企業年金制度は、2012 年(平成 24 年)3 月末で廃止されます。廃 止までに、解消するのか、継続するのかを問われています。退職金・企業年金の「社 外保全」と税制上の優遇措置からスタートした制度ですから、すでに加入していると ころは、要求基準にある対応が求められています。 〈安全、安心な職場づくりについて〉 (1)安全、安心な職場づくりのルールの確立 〈要求基準〉 ① 会社(複数以上の企業がかかわるところでは元請け企業)は、雇用形態にかかわら ず全ての労働者にたいし、事業と業務に関わる法令・規則、環境保全、労働基準、労 働安全衛生にかかわる法令・規則など、労働者が働くうえで知っておくべき法令・規 則などを、本人が十分自覚できるように教育し情報を提供すること。また、労働者が 受けた教育や情報をすべて文書で記録し保管すること。その際、文書の写しを組合に 提供すること。 ② 会社は、労働者に法令や規則に違反する業務を命令しないこと。万一、このような -9- 業務命令が出された場合は、労働者に就労を拒否する権限を認めること。労働者はこ のような命令を受けたことを組合、あるいは関係当局に通告する権限を有することを 確認すること。このような就労拒否、通告を理由とする一切の不利益処分をおこなわ ないこと。 ③ また、労働者が、自己ならびに他者の生命や健康にたいして重大な危険をもたらす と信ずる合理的な理由のある状態が生じた場合、ただちに直接の監督者に報告し作業 を停止することができること。また、この状態が改善されたことを確認するまで作業 に戻らなくともよいこと。 ④ 前記②、③などの事態が発生した場合、労使同数の調査委員会、あるいは第3者の 調査機関で事実関係を把握し、これらの調査機関は労使に調査結果を報告すること。 そのうえで改善策について、労使協議または団体交渉で確認すること。 〈要求説明〉 ILOは 155 号条約(職業上の安全および健康並びに作業環境に関する条約、1981 年)と「労働安全衛生マネージメント・ガイドライン(2001 年)」で定める、じん肺 根絶闘争の「長野方式」など産業別労働組合の労働安全衛生計画への参加、現場への 立ち入り権を含む職場監視権を要求します。これまで政府・財界は、改正労働安全衛 生法で公的監督や規制を弱める施策をすすめる一方で、企業内「労使自治」を主張し、 中災防、建災防などの労働安全衛生マニュアルでも、ILO条約・ガイドラインが設 定する産業別労働組合の現場監視権など下からの 規制についてまったく無視してき ました。 (2)過密労働の解消、快適な職場づくり、労災特別上積み補償 ① 「賃下げなし」の労働時間短縮、過重労働をなくすために必要な人員配置、車両・ 機械などの安全性の確保、安全な職場環境の整備・確保、定期健診の強化などにつと め、労働災害・職業病の発生を防止すること。すべての職場でアスベスト使用状況を 調査・確認し、アスベスト建材や機器類などを撤去し、安全な職場とすること。中小 企業では「地域産業保健センター」を活用して、労働者へのメンタルヘルス教育の実 施、相談体制の確立をはかり、メンタルヘルス対策の基本対策を確立すること。 ② 健康診断を最低年1回受診させること。業務に合わせて特別検診をおこない内容を 充実させること。特に、アスベスト関係職場では企業の責任で退職者を含む労働者の 特別健康診断を実施すること。また女性に対しては、婦人科検診を入れ、乳ガン検診 はマンモグラフィー検診とすること。健康診断はパート労働者など全てに適応するこ と。 ③ 職場環境向上をはかること、男女別トイレ・更衣室の設置を設置すること。 ④ 安全・衛生委員会(建設業では 30 人以下、その他は 50 人以下の事業所は安全・衛 生推進者)を組織・設置し産業医など職場の安全衛生に万全の措置をとること。複数 企業が同一事業所で作業を行っている場合は、労働安全協議会を必ず組織し、事業所 全体の労働者代表を参加させること、女性労働者がいる場合は、必ず女性の代表を参 加させること。 ⑤ 業務上災害特別上積み補償はつぎの基準とすること。 - 10 - 死亡および傷害1~3級 4,000 万円以上とすること(4 級以下はこれに準ずる)。 第3者行為の場合の相殺は禁止する。通勤災害の場合も 100%支給すること。 また、「過労死」などの場合は、労災認定をまたずに支給すること。支払いに必要 な資金は社外に保全するなどの適切な保全措置をとること。 〈職場の権利保障・福利・厚生について〉 (1)次世代育成支援対策 ① 次世代育成支援対策推進法にもとづき、各事業所は仕事と子育ての両立をはかるた め一般事業主行動計画を策定すること(従業員 101 人以上は義務規定・2011 年4月か ら施行)。 ② 行動計画策定にあたっては、労働組合と協議し決定すること。 (2)セクハラ防止(事業主に義務化されたので未協定をなくすこと) 労働協約・就業規則にセクシャル・ハラスメント条項を定めること。またセクシャル ・ハラスメント防止のための研修プログラムを作成し、管理職、従業員男女にたいして 研修を実施すること。相談窓口を開設するなど、迅速な解決をはかること(均等法 11 条)。 (3)労働者の権利・福利厚生の拡大 ① 社会保険料(介護保険を含む)の負担割合は、「労3・使7」とすること。 ② 法令に定められた労働者にすべての社会保険を適用すること。また、社会保険料の 滞納、他への転用などの不正、また社会保険の国保などへの切り替えを認めない。 ③ 建交労共済を活用して労働者の共済制度を確立すること。 (4)裁判員制度にともなう賃金・身分保障の確立 裁判員制度の発足にともない、選ばれた労働者の賃金保障と身分保障を確立すること。 (5)組合活動の自由と権利拡大 組合機関会議などへの出席の有給保障、就業時間中の組合活動の保障、施設利用。 〈自然災害の防災対策〉 ① 阪神・淡路大震災、新潟中越沖地震や風水害を教訓に、自然災害に備え、日常的な 防災対策を計画、立案し、防災訓練、建物補強、災害時の救援活動などについて必ず 協定化すること。 ② 災害救済法などにもとづき国や地方自治体と防災協定を締結するときは、適正単価 (金額)を明示した協定とすること。 - 11 - 【事前協議・同意協定統一基準】 ① 会社は、従業員に対し組合員であること、組合に加入しようとすることを理由に、 解雇その他、不利益な取扱をおこなったり、正当な理由なく団体交渉を拒否したり、 その他、労働組合法第7条にいう「不当労働行為」は一切おこなわない。また、健康 保険や雇用保険加入義務の履行などを含め、諸法規を遵守する。 ② 会社は、企業の解散・閉鎖・倒産・譲渡・合併・統廃合、分社・子会社・グループ 化、事業の整理・縮小・移転さらには会計基準の変更や経営危機・困難などにともな う労働者の解雇・希望退職、出向・転籍・移籍・転属、一時帰休、勤務形態変更の実 施あるいは賃金・労働条件、退職金・企業年金の不利益変更などにあたっては、事前 に組合と十分に協議し、組合・本人ともに同意のうえで実施する。 ③ 会社は、整理解雇の実施にあたっては、整理解雇の4要件「❶解雇の必要性(解雇 をおこなわなければ、企業の維持・存続が危殆に瀕する程度にさしせまった必要性が あること)、❷解雇回避努力義務(配置転換や一時帰休体制など、解雇を回避するた めの十分な努力がなされたこと)、❸説明・協議義務(労働組合にたいし、事態を説 明して了解を求め、人員整理の時期、規模、方法等について労働組合の納得が得られ るよう努力したこと)、❹整理基準、人選の客観性・合理性」を厳守する。 ④ 会社は、パート・アルバイト・臨時・契約・有期雇用社員などの採用・改変、派遣 労働者、親企業・背景資本からの出向者受け入れ、請負・下請・外注・業務委託など の導入・改変などについては、組合と事前に協議し同意のうえで実施する。 ⑤ 会社が経営再建をはかる場合には、組合を含めた「経営再建協議会」を設置するな ど、組合と共同して再建策を検討するとともに、経営困難の根本問題を解決するため の労働組合活動については、会社は就業時間内でもこれを認めるなど、労働組合との 協力・共同の立場を明確にする。 ⑥ 会社は、倒産・破産・閉鎖・廃業などが避けられない事態にいたった場合には、従 業員の労働債権確保を最優先におこなう。また、本人・組合同意を前提に一時的な賃 金労働条件の変更などは労働債権として保障する。 ⑦ 会社は、日常的に経営の民主化と透明性を追求し、一致する要求・課題での組合と の協力・共同を積極的に推進する。 - 12 - 【政府・自治体・業界にたいする要求】 〈労働者保護規制の強化のために〉 ① 公的就労事業の制度的確立。緊急雇用創出事業の拡充。雇用創出における「事業団」 ・「社会的企業」の積極活用。中高年齢失業者等求職者手帳の活用拡大。「社会的企 業」活用の具体化。職業訓練事業の改善。職業訓練生にたいする手当の支給。雇用保 険の適用拡大と給付水準の引き上げ、支給期間の延長、給付制限の撤廃。日々雇用者 への社会保険給付条件(2か月 20 日間に)を緩和と切り替えの不合理をなくすこと。 【要求説明】 世界同時不況後の長引く不況のもとで、不十分な失業保険給付、保険給付切れの失 業者、保険が適用されない失業者が、膨大な数で生まれています。政府は憲法 27 条に 定められた国民の勤労権を保障する対策を早急に進めることが求められます。すべて の労働者(個人請負労働者を含む)に雇用保険を適用し、職業訓練期間中の生活保障、 公的就労事業の実施、拡充をすすめるべきです。 ② 派遣事業・有料職業紹介事業の早期抜本改正。「日雇い派遣」「スポット派遣」「製 造業派遣」の全面禁止、「登録型派遣」の原則禁止、違法派遣・偽装請負に対する派 遣先企業への直接雇用の義務づけ、「見なし雇用」規定の創設、派遣先企業労働者と の均等待遇の義務化。派遣元企業の受け取るマージン率の上限を規制すること。派遣 労働者を代表する労働組合と派遣先企業の団体交渉の義務化。 【要求説明】 派遣労働法の抜本的な見直しは待ったなしの課題です。雇用の安定化は人の一生を 左右します。職安法第40条の基本に立ち返ることが大切です。建設や交通・運輸な ど危険・有害業務への導入は論外です。直ちに実施を求めることが大切です。 ③ 解雇規制法の制定。有期雇用制度の規制強化。有期雇用は1年以内、更新は 1 回の み、反復更新は「期間の定めのない雇用」とみなす原則の確立。また、危険・有害業 務を除外すること、臨時的・一時的業務に限定し労働局への届け出と認可制の確立。 正規社員との均等待遇の原則の確立。 【要求解説】 派遣労働法の抜本改正と合わせて、欠かすことができないのが「有期雇用」の規制 強化です。これは直接雇用ですが、「偽装請負」解消の替わりに利用されています。 派遣も有期雇用も、基本は「臨時的・一時的」業務のはずであり、それが1年も2年 も続くことが「異常」なのです。 ④ 零細な「個人請負業」は原則として労働基準法、労働契約法を適用して、30 人以下 の個人請負契約は発注者責任で労働局に届けることを義務化すること。労働者性の判 断は、総合判断方式を廃して、当面、ILO198 号勧告第 13 項にもとづく合致項目判断 とし、早期に法制化すること。異議申し立ての法的審査機関を設置し基準を裁定する - 13 - こと。独禁法を改正して、零細な個人請負業が労働組合・同業者組合で設定した統一 価格、業界団体と締結した統一労働条件協約をカルテル行為から除外すること。 【要求説明】 派遣労働・有期雇用などの規制強化、最賃引き上げなどを嫌い大企業は、「請負」 にシフトさせてきています。INAX メンテ、ビクターアフターサービスなど司法が、 これまでの個人請負の労働者性を否定する不当判決を出し、これを促進する情勢とな っています。零細な個人請負業者(30 人以下)を保護する法律がありません。 ILO186 号勧告は、個人請負労働者の概念規定を明確にして、労働者としての保護を 与えることを目的に策定されました。その第 13 項は、「加盟国は、雇用関係が存在す ることについての明確な指標を国内法令または他の方法によって定義する」ことが求 められており、これらの指標として以下の 13 項目があげられています。 (a)項ではおもに「指揮命令」にかかわる事項で、(1)仕事が他の当事者の指示及び 管理の下で行われていること、(2)仕事が事業体組織への労働者の統合を含むものであ ること、(3)仕事が他の者の利益のために専ら若しくは主として遂行されていること、 (4)仕事が労働者自身で行われなければならないものであること、(5)仕事がこれを依頼 する当事者が指定若しくは同意した具体的な労働時間内若しくは職場で行われている こと、(6)仕事が特定の存続期間及び一定の継続性を有したものであること、(7)仕事が 労働者に対して就労可能な状況にあることを要求するものであること、(8)または仕事 がこれを依頼する当事者による道具、材料及び機械の提供を含むものであること。 (b)項では「経済的従属」にかかわる事項で、(9)労働者に対する定期的な報酬の支 払があること、(10)当該報酬が労働者の唯一若しくは主な収入源となっていること、 (11)食糧、宿泊及び輸送等の現物による供与があること、(12)週休及び年次休暇等につ いての権利が認められていること、(13)労働者が仕事を遂行するために行う出張に対 して当該仕事を依頼する当事者による支払があること、又は労働者にとって金銭上の 危険がないことです。 日本ではこれらの項目のいくつかに当てはまることを前提に「総合的に判断する」 方式がとられ、あいまいな線引きが続いていますが、ILO 勧告は、どれか1項目でも 合致すれば「労働者」と判断することを求めています。 個人請負業者の労働者性が確定しただけでは不十分です。憲法第28条は「集団的 労使関係」を保障しています。従って、アメリカなどでも認めているように労働組合 や零細な中小企業が結集する団体の統一労働条件協約や統一価格協定を独禁法のカル テル行為から除外することが必要です(下請法などの規制強化は別項参照)。 ⑤ 全国一律最賃 1,000 円以上の実現、地域最賃の大幅な引き上げと罰則強化。全国一 律最賃制確立。産別最賃(特定最賃)の引き上げと適用枠拡大。実効ある職種別最低 賃金制度の確立。 【要求説明】 最低賃金を 1,000 円以上とすることは、すでに社会的合意となってきています。全 国だれもが 1,000 円以上とする制度を「全国一律最賃制」(民主党は「全国最賃」と 呼んでいる)としてきましたが、全国一律と地域での上積み方式が民主党、共産党な - 14 - どから提案されています。いずれにしても全国平均で 1,000 円以上となる制度を早期 に確立することが必要です。加えて前回の改正で見送られた「産業別最賃」「業種別 最賃」の確立が必要です。審議会方式の「特定」最賃」制が規定されていますが、こ れでは中小企業などが大企業・荷主と交渉する「武器」になりません。罰則の強化・ 適用と合わせて法改正をすすめるべきです。 ⑥ 「1日8時間」「1週 40 時間」労働の厳守・週休2日制の完全実施。「足きり時間」 なしにすべての時間外、深夜、休日労働割増率 50%の実施。残業時間上限、深夜・時 間外・休日労働の男女共通規制の法制化、その実現まで「女子保護」規制撤廃の延期。 家庭・社会生活に不便な労働時間への割増制新設など規制強化、交代勤務における正 常な勤務間隔の確保。夜業の回数制限と夜業従事者の特別な時間短縮。サービス残業 の禁止、労働時間短縮で雇用拡大の実現。 【要求説明】 残業時間規制は、労働者の健康と過程・社会生活を守るうえできわめて重要です。 いわゆる「ワーク・アンド・ライフ・バランス」を強調するのであれば、野放図に拡 大されている残業時間を法律で規制することが求められます。労基法が改正され月 60 時間以上の残業割り増しは 50%になりましたが(中小企業は除外)、これをまず、す べての残業時間に適用させることが必要です。また、24 時間型社会の強制の中で夜勤 が広がっています。これも労働者と過程のほお後のために規制を強化すべきです。こ れによるエネルギー消費を削減することにもつながります。EU 生活時間研究では、 スーパーなどの開店時間を延長しても、購買時間が変更になるだけで売上高には大き な影響がないことが分かっています。むしろ夜勤を行う労働コストの上昇で利益率の 低下が指摘されています。日本的 24 時間型社会は労働者の劣悪な労働条件、低賃金に 支えられているのです。 ⑦ 労災保険の「民営化・民間開放」反対、労働安全衛生管理の民主化と徹底、元方責 任制の徹底と労働者参加権、産業別労働組合による建設現場への立ち入り権、現場監 視権の確立。労災保険の適用拡大・拡充、個人請負業務の届け出を基本に、国と企業 の責任で個人請負業者が保護される労災保険制度の確立、特別加入の促進。労災・職 業病の認定基準の改善と事業者に必要関係書類提出の義務づけ、企業の健康管理責任 の強化・拡充。労災防止指導員の確保・活用強化。 【要求説明】 労災防止と労災保険に対する要求です。労災防止の基本(別項を参照)は、現場の 労働者と労働組合に防止の強力な権限を与えることが ILO の基本です。産業別労働組 合(企業内労働組合では不徹底になる)に現場監視権を認めることです。零細な個人 請負業者は、労働者として扱い、産業別に個人請負を利用する企業の負担責任でおこ なう労災保険を確立すれば、特別加入方式をとらなくても保障が受けられます。韓国 やドイツでおこなわれている制度などを参考に実行を迫ることが必要です。 - 15 - ⑧ ILOパート労働条約の批准、実効あるパート労働法の改正、改正「男女雇用機会 均等法」の実効性の確保・拡充。労基法の母性保護の権利拡充、所得保障をはじめ育 児休業、介護休暇の拡充。セクシャル・ハラスメントの根絶・使用者責任の明確化。 妊婦得の軽作業への転換、促進のための中小企業への援助制度の確立。妊婦が危険有 害業務、過重ないし危険と判断され休業する場合、出産手当金を支給すること。 ⑨ 労働委員会・各種審議会委員の民主的な選任と運営の民主化。官公労働者の労働三 権の全面回復。 ⑩ 1,047 人JR採用差別事件の政府・鉄道運輸機構の責任による早期全面解決、IL O勧告の履行。組合間差別の出向・配転など不当人事の禁止。整備新幹線建設にとも なう並行在来線の廃止・経営分離反対。 ⑪ 年齢による雇用差別に反対し、高齢者の雇用・就労機会の拡大。高齢者雇用安定法(第 5 条、第 40 条)にもとづく援助・育成団体の指針を示すこと。高齢者にふさわしい作 業環境・施設の改善。年齢に関係なく働ける高齢者就労の制度化、シルバー人材セン ターの改善。高齢者の雇用促進の随意契約の拡大と委託単価の改善。季節労働者の雇 用保険特例一時金削減を凍結し「50日分」に戻すこと、冬季雇用援助制度の復活。 ILO111 号条約、162 号勧告の批准。 ⑫ 交運労働者の派遺事業法適用反対、「自動車運転者の労働時間等の改善基準」(「改 善基準」)の拘束時間の短縮・休息時間の増大と法制化。元請・下請を含む業種ぐる みの労働時間短縮の促進。 ⑬ 学童保育の補助金大幅増額(常勤複数での積算・福利厚生費の予算化など)、学童 保育実施の最低基準の拡充をはかること。学童保育の全児童対策への解消反対。 ⑭ 国や自治体の責任を放棄し、市場原理を拡大して親と子どもの負担を重くし、子育 ての格差をひろげる「子ども・子育て新システム」(幼稚園と保育園の一体化など) に反対。 ⑮ ILO94 号条約にもとづく公契約法・条例を制定し、公共事業・サービスに従事する 労働者に適切な賃金労働条件を保障すること。国・自治体の民間委託すべてで現在雇 用されている労働者の雇用継続を入札参加条件とし、委託者の変更にともなう解雇を 許さず、発注者責任で雇用継続保障を行うこと。積算人件費を分離して、民間委託案 件にロアーリミット(最低制限価格)を設定すること。臨時職員、委託労働者には専 門性・経験をいかし公務員労働者との「均等待遇」を保障すること。従事者への直接 払いや、業者への部分払い、前払いなどの制を確立して、月ごとや定期的な支払い制 度を実施すること。予定価格とその積算基準を公表し、現在の実情に合わせて、予算 ・決算法を全面的に改定すること。 - 16 - 【要求説明】 ILO94 号条約の基本は、賃金労働条件を明記した委託契約書を結び、その賃金労働 条件は地域相場を上回ること、労働者への直接支払の2つの原則があります。現行の 公共サービス基本法や構想されている「公共工事報酬確保法」は、ILO 基準から見れ ば中間段階です。雇用と賃金労働条件をまもる責任が発注者側にあることは明確です。 これを保障するシステムを作ることが求められています。「民間開放」というのはも ともと「民間企業の低賃金」をあてにしたものであり、公務員と賃金労働条件を同水 準とするならば、「民間企業の利益分」だけ、余計に税金が使われることになります から、当然の帰結が生まれます。ピンハネや不正受注を許さない公契約過程の透明性、 賃金労働条件の適正確保がカギを握ります。 ⑯ 労災認定基準の改悪反対、早期認定の厳守。振動障害の治療指針である労働省「585 号通達」の抜本改正、「35 号通達」の撤回。騒音性難聴の労災保険請求権時効基準を 改めること。 ⑰ じん肺健康管理および労災保険の認定、治療、補償基準の改善。健康管理区分2で の賃下げなしの職場転換。国と企業・業界による「じん肺基金制度」の確立。粉じん 対策を抜本的に強化しじん肺予防に万全を期すこと。トンネル工事現場の出来高給制、 夜間長時間労働の禁止をはじめ粉じん暴露時間の規制を強めること。 ⑱ 国はこれまでのアスベスト対策を怠った責任を認め、すべてのアスベスト被害者に 対し謝罪し、抜本的・恒久的・総合的な補償制度を確立すること。アスベスト被害が 疑われる労働者・国民に対する公費による検診制度の確立。アスベストおよび含有製 品の掌握・管理・・除去・廃棄物処理などの総合対策を確立すること。中皮腫をはじ めアスベスト被爆が確認された疾病はすべて労災認定すること。肺ガンの被爆期間1 0年以上の基準などを含めアスベスト認定基準を見直すこと。被害者の時効はアスベ ストが原因によると知り得た時からとすること。労災保険が適用されないアスベスト 被害者の療養・休業・遺族補償給付などは労災保険と格差のない被害者補償制度を確 立すること。 〈業界秩序の確立、中小企業の経営安定のために〉 ① 零細な個人請負契約は原則としてすべて「下請け契約」とし、「下請二法」(下請 代金支払遅延等防止法・下請中小企業振興法)や、運輸などへの独禁法特殊指定によ る規制を強化し、親企業の下請けいじめを解消すること。親企業の一方的な発注削減、 運賃・単価切り下げなど不公正取引規制の強化、課徴金制度の確立。不公正取引被害 の救済措置(公取委査定による被害額3倍返しの制度化)の確立。 【要求解説】 下請けいじめを防止するには、独占禁止法と関係法律である下請け2法の強化がカ ギです。親事業者と下請け事業者の区分が、資本金による機械的なものであり、具体 的実践的な区分を確立すること、個人請負を位置づけることが必要です(個人請負業 - 17 - のカルテル除外要求は別項参照)。そのうえで違反親企業への罰則強化が不可欠です。 アメリカでは違反親企業は、契約額の3倍を被害を受けた下請け業者に支払うという 罰則があります。運輸の特殊指定は、荷主にも規制がおよびますから、その実質強化 が求められます。 ② 銀行・金融機関の不当な貸し渋り、貸金回収強要の是正。公的融資枠の拡大と直接 融資制度の強化。中小企業への金融機関の差別的取扱の禁止。銀行への公的資金投入 反対。退職給付会計基準の見直し・改善、中小企業への特例措置の確立。 ③ 国の道路・河川・港湾あるいは下水道などの維持管理責任放棄を許さず、国民の安 全・安心を第一とすること。委託労働者の大量解雇計画の撤回。公共事業を国民のく らしと国土・環境保全優先に転換させ、住民・地域密着型に重点をおき、計画・事業 決定には情報を公開し、住民参加の計画決定システムを確立すること。地元中小企業 と建設労働者の仕事と雇用、収入を確保し、くらしの安定をはかること。国民本位の 公共事業の執行体制の整備をはかること。 【要求解説】 道路、橋、堤防、下水道など国民生活を支えるインフラの大半が高度成長期に建設 されたもので、耐久年度を超え始めています。道路の陥没、橋の通行規制・禁止など 国民生活に支障が現れ、交通安全にも重大な問題となってきています。道路予算の削 減で、道路の維持管理費が大幅に削減されています。ダム工事がストップし「ダムに 頼らない治水治山」の検討が始まっています。地球温暖化による気候変動、ゲリラ豪 雨などから国民・住民を守るには、河川改修を急ぐ必要があります。しかし、実際に は国の予算の削減、自治体の財政難で、手抜きや放置が広がっています。ここから事 故や災害被災が増加しているのです。現場で維持補修管理を行う労働者の雇用、労働 条件は、コスト削減と低入札により大幅に悪化し、業者の廃業や倒産が続いています。 インフラ施設・設備を維持補修・修理改善していくシステムを早期に立ち上げ、必要 な予算を確保し、地域の中小建設業に仕事を出していくことが求められています。 ④ ダンプの交通安全を実現するため、ダンプ規制法第12条団体等に該当する建交労 全国ダンプ部会組合員の使用促進を請負者に指導すること。建造物の品質確保のため、 工事に使用する生コンは、既存の各地区生コンクリート協同組合およびマル適マーク 取得工場から購入すること。クレーン作業・走行の安全確保と実効性を確保する単価 の改善、関係者の教育制度の確立。公共・民間工事現場で働く生コン、ダンプ労働者 など関係労働者すべてに建退共証紙貼付を元請責任で行うように指導すること、未払 い退職金の解明と完全給付。 ⑤ 改正建築基準法による「官製不況」の保障と早期解決、公的責任による適合確認制 度の拡充、条件付き一般競争入札制度の導入、多様な評価基準による政策入札の実施。 工事種類・規模別の分割・分離発注の実施。元請・下請契約で労務費の別記契約とし、 発注者への施工体制台帳に記載し、すべて公表すること。公共機関は、建築物の安全 - 18 - 性、工事の安全で適切な施工、その他法規制が順守されているのか調査し、元請企業 を指導すること。 ⑥ 軽油引取税暫定税率の撤廃。一般国道を含め地方道の整備・補修の推進。主要国道 をはじめ道路の安全性の強化、道路・トンネル・橋梁などの更新対策をすすめ、仮眠 休憩施設の建設など、労働者・国民が安全に自由に通行できる条件の確保。環境保護、 輸送効率の向上、安全・安心にもとづく総量規制をすすめ、中小交通・輸送業者の育 成・保護を推進すること。交通運輸労働者の雇用と生活基盤の確保を視野に入れた交 通基本法の制定。 【要求解説】 民主党政権がすすめる高速道路無料化の社会実験に対しては、渋滞が激化して環境 保護と矛盾するという意見や財源問題での疑問が出されています。国民の移動の権利 保障から道路法では道路は「無料」が原則ですが、問題は、今日の自動車・道路政策 が自動車メーカーの販売台数拡大のためにとられて、乱開発で道路や高速道路がつく られてきた経過です。これらの道路のあり方を見直し、「人と物」の輸送効率を高め、 公共交通機関の充実をはかることが必要です。不況に苦しむ中小の交通・運輸事業者 への緊急支援を実施して経営を立て直して、安全・安心、確実な輸送の提供が可能と なる交通・運輸システムを確立することが緊急に求められているのです。 さらに必要なことは、地球環境保全対策で CO2 の25%カットなどの政策を遂行す る場合、運輸・交通では「自動車に頼らない」社会づくりが求められ、道路のあり方、 優先利用の方法(バスレーンの設置や地方高速道路の利用法、スクールゾーンなど地 域の性格にもとづく規制など)が検討される必要があり、運輸・交通のインフラ整備、 都市構造の変更にまでおよぶものです。まだ、かけ声の段階ですが労働者・国民、住 民の具体的な要求を1つひとつ実現していくことが必要です。 また、交通基本法については「労働者の雇用と生活、中小企業の経営基盤確保が安 全・安心・安定輸送の担保となること」を明確に位置づけることが求められます。 ⑦ 安全・安心、輸送効率の向上、環境保護の 3 点からトラック・港湾・バス・タクシ ーの規制緩和を抜本的に見直し、必要な規制の強化。「物流二法」・関連規制・通達 ・附帯決議による道路運送の安全、過労運転禁止の社会的規制の強化し、台数制限、 地域規制を強化し「往復型」から「片道型」運賃に戻すなど、必要な経済規制を実施 すること。燃料サーチャージ・適正取引ガイドラインの実効性確保。野放しの深夜営 業、時間指定、在庫コスト削減の看板方式制限。安全のための車両構造の改善。 【要求説明】 タクシーの規制緩和が見直され規制強化が進められています。交通・運輸関係の規 制緩和は、社会規制だけが強調されましたが、「背に腹は変えられない」と膨大な規 制違反が積み上がり、労働者と一般国民が犠牲となってきました。必要な業界ルール を確立するための経済・社会規制を強化することが必要です。自動車諸税暫定税率廃 止や高速道路無料化は、運賃体系に跳ね返ります。また、高速道路の利用は労働時間 の短縮にも影響を及ぼします。適正運賃を収受できるように経済規制や産業別労働組 - 19 - 合の関与と権限強化をすすめ安全・安心で堅実な交通・運輸産業の建設が不可欠です。 ⑧ JR関連事業の展開にあたっては、参院附帯決議(02 年6月 14 日付)にもとづき、 適切な労働力の確保、進出地域の振興、中小企業への配慮などのうえで行うこと。 ⑨ 公費による家賃補助制度の拡充と確立、低家賃の公共賃貸住宅の大量建設。単体規 制を強化するなど建築基準法の改正、居住権にもとづく住宅基本法の確立。自然環境 ・景観保護、安全・安心な街づくりの推進、国土保全計画法・都市計画法など開発型 まちづくり諸法の抜本見直し、大都市集中再開発を口実にした地方の防災・維持管理 切り捨て反対。下水道など老朽化している生活インフラの整備・維持保全の推進。限 界集落を見捨てるコンパクト・シティー構想に反対。国産木材の安定・適正価格での 供給体制の確立、林業労働者の雇用・労働条件の改善。地価の引き下げ、土地課税の 公平な是正。 【要求説明】 開発優先で乱暴な開発が進められた結果、地方都市では中心街がさびれ、地域の山 林・田畑の手入れが放棄され、耕作放棄地、工場移転、大型店舗の閉鎖などによる空 き地などもひろがっています。他方で都市部でも高額家賃住宅がひろがる一方で公共 住宅が減らされ、橋や下水道など生活に直結するインフラが老朽化し、自然環境の破 壊と合わせて生活ができない空間が広がっています。防災上もきわめて危険な場所や がけ地も放置されています。まちづくり、国土保全と地域の再生を進めることが重要 な課題となっています。大型開発事業から生活関連公共事業への転換を具体的にすす めることが必要です。子ども手当の項でも示したように世帯の構成の違いでかかる費 用を企業負担から政府負担に変更するなかで、住宅政策のカギは公費による家賃補助 制度の確立です。すでに「派遣切り」などで寮を追い出されたりした失業者に自治体 が借り上げた住宅を提供し、家賃補助を国費を使って行うケースも生まれています。 高額家賃で住宅を確保できない労働者・住民のためにヨーロッパの大都市では、人口 の 60~70%は家賃補助付き住宅に居住しています。東京の都心などいくつかの自治体 では具体化されはじめています。こうした公費による家賃補助による政策誘導なしに 住環境の向上はできません。乱開発ですすめられた住環境に対する実態調査を実施し、 新たなまちづくりの方向を打ち出していくことが求められています。また、国産木材 の使用促進が住宅の耐久性だけでなく、国土保全にも重要ですが、低価格な輸入材に おされ、林業全体の低迷を導いています。この改善が求められています。 ⑩ 地球温暖化防止規制の抜本強化、一酸化炭素・二酸化窒素・亜酸化窒素など排出規 制強化、生活環境最優先の公害行政への転換。自動車排ガス規制の強化に当たっては、 ダンプなど車もち労働者や中小零細運送事業者への過重負担をゆるさず、政府・メー カーの責任で減少させる後付装置の開発、装着費用の助成、あるいは車種変換助成措 置を確立すること。グリーン課税(環境税)の設立に当たっては、実態を調査し、輸 送効率性にもとづき、排出総量の多いところほど負担が重くなる環境コスト負担制度 の確立、および国民や住民に環境改善、クリーンエネルギー投資を諸物価、料金引き - 20 - 上げ、あるいは下請け負担への転嫁などをさせないこと。エネルギー再生住宅への助 成制度の拡充・確立。 【要求説明】 地球温暖化防止対策として政府は環境税の導入をすすめます。地球温暖化防止・環 境保全は、人類の将来には待ったなしの課題です。問題は、エネルギーの大量消費、 排ガスや産業廃棄物を大量に生み出してきた大企業の責任を明確にし、中小零細企業 が防止策や保全対策を具体的にとれる支援制度を確立することです。運輸・交通産業 では、モーダルシフト、車の排ガス規制やグリーン課税などの措置だけでは排出総量 の削減には5%前後の貢献です。CO2 の25%カットと言うことになれば、「車を使 わなくてすむ」社会構造をこの分野では追求せざるを得ません。すでに97年に旧運 輸一般が提起したように産業活動の基幹を占める輸送・交通対策では、「輸送効率性」 に基づいた自動車交通の総量規制が求められます。そのために産業別労働組合も参加 した実態調査をすすめ、きめの細かい防止策や対策を確立すべきです。 ⑪ アスベスト廃棄物回収の安全管理と無害化処理の徹底、ダイオキシン対策の強化、 溶融炉など大型焼却によるものや「広域」処理でなく、現有システムの改善、発生原 因別ゴミ分別徹底などで対処すること。ゴミの製造者・販売者・廃棄者・許認可者責 任の強化・徹底。アスベスト特別廃棄物の自治体への届け出を徹底し、自治体にはア スベストに関する専門的知識を持った担当者を配置すること。清掃、メンテナンスに おける適正委託料の設定、ダンピング規制をおこなうこと。 【要求説明】 労働・生活環境からアスベストをなくすことは緊要の課題です。問題は建物に使用 されているアスベスト対策は建物のオーナー責任で対応することとされたため、消防 法などで一時使用を強制された建物を含めて、費用がかさむことなどから対策が放置 されたり、違法な措置が続いていることです。また、使用済み・回収したアスベスト 処理ですが、これは自治体の責任とされており処理施設は強化されていますが、使用 されたアスベストの量から見てきわめて不十分で、財政難の自治体では対策すら立て られない状況があることです。 ⑫ 公営競技における業務委託労働者の雇用と賃金労働条件を保障すること。公営競技 が赤字でも一定率をとる交付金制度の見直し、とりわけ赤字施行者から交付金の免除、 減額をおこなうこと。交付金の補助対象、事業を使途目的の必要性を基準に精査する こと。 【要求説明】 公営競技が求められるのは、ギャンブル制が低く国民のレクレーションとして享受 できる内容であること、地域の経済・雇用に有益であることなどが条件です。構造改 革の中で公営競技にも採算性が求められ、リストラ「合理化」がすすめられてきまし た。政府から業務委託を「随意契約」から「一般競争入札」に変えられて、現業の多 くの労働者が雇用不安や賃金労働条件の切り下げに直面しています。公営競技の基本 に立ち返り、地域の雇用を守り賃金労働条件の改善をはかる運営方式に転換させるこ - 21 - とが重要課題です。 〈国民生活擁護のために〉 ① 所得税の大幅減税、高齢者、配偶者や扶養控除の復活拡大、消費税増税反対。消費 税の廃止・税率3%への引き下げ・食料品・医療費非課税、特別減税の復活、住民税 の減税。課税最低限度額の引き上げ(180 万円以上)。大企業優遇、株式投資優遇な ど不公平税制の是正、中小企業減税の強化。中小企業への社会保険料補助の創設。公 共料金値上げ反対・引き下げ。 ② 社会保障費の毎年 2200 億円の削減をやめること。宙に浮いた 5000 万件の不明年金 の責任解明と早期処理の実現、社会保険庁解体の中止。年金給付額の引き上げなど年 金制度の抜本改善、保険料負担軽減、大企業と国庫負担による最低保障年金9万円の 確立。厚生年金積立金の金融市場での運用中止、満額年金 60 歳支給開始。市場金利に 連動した企業年金制度の是正、企業の責任を明確にした厚生年金基金、企業年金、退 職金などの民主的運営の強化・充実。 ③ 後期高齢者医療制度の廃止、協会「けんぽ」をはじめ医療保険の保険料の地域別格 差、制度別格差の是正、公平負担の確立、保険料引き上げ反対。労使対等、予防対策 のできる業種別医療保険制度の確立。だれでも、どこでも安心して受診できる医療制 度の確立。診療報酬を改善し、療養病床の削減、混合診療拡大は行わないこと。一部 負担の削減、高額医療費限度額の切り下げ、入院時の食費、部屋代などの保険外負担 の拡大反対。保険 100%給付の回復、傷病手当金を 80%給付の実現。国保保険料の引 き下げ、保険証を無条件に交付すること。保険者への健診データ集中は「国民総背番 号制」にならないこと。過重な支援金・拠出金負担反対。子どもと高齢者の医療費「窓 口負担」をなくすこと。 【要求解説】 医療関係の要求項目です。日本の医療制度の最大の問題は、保険料負担が公平でな いことです。組合健保でも大企業の健保が 40~70‰など低額に比べ、中小企業の組合 健保では 90~100‰以上で、95‰以上は中小経営者が負担しています。国保のように 事業主負担がない健康保険組合では財政危機が頻発しています。保険制度は母体の数 が多いほどリスクが分散できるわけですから、「国民皆保険」である以上だれもが公 平な保険料負担とすることが第 1 です。現在地域別に保険が再編されていますが、こ れでは傷病原因の大本である賃金労働条件に迫ることができません。組合健保や業種 別国保、ドイツなどでの経験をいかし、労使対等で保険を運営し、絶えず傷病傾向を 押さえて、産業別の健康対策が提案できるようにしていくことが必要です。 ④ 公的責任で必要とする人が安心して受けられる介護保障の拡充。国庫負担を拡大し、 介護保険の減免制度、一部負担の拡大を止め、介護サービス利用の拡大など介護保険 制度の改善。介護報酬基準の抜本見直し、介護職員雇用と賃金・労働条件の抜本的改 善。保育の直接契約方式・公的責任縮小、公的保育所の民営化反対。障害者福祉政策 に負担増・サービス利用を抑制する応益負担の障害者自立支援法の廃止、障害者雇用、 - 22 - 障害者年金の充実。社会福祉の完全民営化をすすめる社会福祉構造「改革」路線反対。 看護婦・福祉労働者の増員・制度要求実現。公務員の定数削減反対。 ⑤ 生活保護基準切り下げ反対、老齢加算・母子加算を元に戻すなど、最低生活保障を 抜本的に改善すること。国会による科学的で公正な国民最低生計費調査の確立。 ⑥ 改定「教育基本法」の関連法規・規定の改悪を許さず、政府・行政の教育介入に反 対。30 人学級早期実現、私学助成の拡大。高校・大学の授業料の大幅な引き下げ、授 業料減免措置・就学援助制度の適用拡大。高金利で学生を将来にわたり苦しめる奨学 金制度の抜本改正。所得制限なしに、義務教育終了前までのすべての子どもに月額3 万円を支給すること。「子どもの権利条約」にもとづく実効ある措置、平和・民主教 育の確立。「サッカーくじ」廃止。 ⑦ 国の形を変え、ナショナルミニマムの解体を推進する「地域主権改革」や道州制反 対。公務公共サービスの拡充をすすめる公務労働者の権利と必要人員の確保。農漁業 をはじめ日本経済と国民生活を破壊するTPP(環太平洋経済連携協定)への参加反 対。コメ輸入自由化反対。BSE対策など輸入食品の安全対策の強化。食糧の自給確 保。食料の安全基準・点検の規制緩和反対。 ⑧ 加盟国の主権尊重にもとづく国際通貨基金、世界銀行、世界貿易機構の民主的改革、 公正・公平、平等・互恵の原則にたった国際貿易・経済秩序の確立。多国籍企業の民 主的規制。移民労働者・ゲスト・ワーカー(外国人労働者)の内国人待遇の確立。 〈平和・民主主義擁護のために〉 ① 憲法改悪反対、平和的民主的条項の完全実施。政財官軍の癒着、疑惑の徹底解明。 改憲発動につながる「国民投票法」実行規定反対。 ② 周辺事態法、武力攻撃事態対処法、国民保護法、自衛隊法第103条にもとづく動 員発令など有事法制の発動阻止、指定公共機関による戦争動員計画策定反対。自衛隊 恒久派兵法など戦争遂行法制確立に反対。 ③ 沖縄普天間基地の無条件撤去を求めます。辺野古への移設はもとより国内への米軍 基地「たらいまわし」、在日米軍の再編強化反対。沖縄戦の史実を改ざんする教科書 検定意見の撤回、米兵犯罪の根絶、被害者への完全補償、日米地位協定見直し、日米 安保条約廃棄、軍事費削減。 ④ 核戦争阻止、核兵器廃絶・国際条約の締結、核実験・核開発の中止、非核三原則の 法制化、国家補償による被爆者救援法の制定。 ⑤ 国会法改悪、衆議院比例定数削減反対。小選挙区制・政党助成廃止、企業・団体献 金の禁止。共謀罪の施設反対、情報公開法の制定。公務員労働者の労働基本権の保障。 - 23 - 〈自然災害対策にかかわる要求〉 ① 住宅・店舗への公的支援制度の創設、災害被災者生活再建支援法の抜本改正の実現。 ② 震災に建造物が耐えられるよう建築基準を全面的に見直すこと。新基準作成の過程 を国民に開放し、政府から独立した機関が自主・民主・公開を原則に策定すること。 既存の建造物の新基準への補強、建て替えの必要な財政支援措置をとること。 ③ 国・地方自治体の責任で、必要な防災対策と救援体制を確立すること。 ④ 集中豪雨・台風による風水害、阪神・淡路大震災・新潟県中越地震などの教訓を総 点検し、「激甚災害」法を総合的に見直すこと。また被災し失業・休業状態となった 労働者への生活・雇用保障。 ⑤ 鉄道軌道整備法にもとづき、被災鉄道輸送の早期復旧を行うこと。 - 24 - 2011年1月29日~30日 建交労2011年春闘統一要求基準(資料) 表1.今年度の高校新卒者の初任給 男子 女子 単位:千円 年 職業計 専門技術事務 販売 運輸通信技能工 2010.3 166 166 162 169 171 167 2009.3 167 166 165 171 171 167 2008.3 168 166 163 169 173 169 2007.3 168 165 163 169 174 168 2006.3 167 164 165 167 174 167 2010.3 158 155 156 162 157 158 2009.3 160 157 158 164 161 159 2008.3 160 154 158 163 159 160 2007.3 158 153 157 162 157 158 2006.3 156 150 155 159 158 156 出所:厚生労働省職業安定局「新規学卒者初任給情報」平成18年~22年 (注) 本調査は、毎年3~4月に雇用保険に加入した新規学卒の初任給の調査です。 したがって、現行水準を示し、職安や都道府県の労政部局の指標となっています。 表2.同一年齢でどれくらい賃金の格差はあるのか 高卒男子(全産業、企業規模計)の所定内給与額の分布特性値 区分 年 労働者数(10人) 第1十分位数(千円) 第1四分位数(千円) 中位数(千円) 第3四分位数(千円) 第9十分位数(千円) 十分位分散度 四分位分散度 25歳 2005 2006 2007 3784 3232 2217 176.9 179 176 194.3 193.9 193.2 215.6 214.2 210.5 239 237.6 234.4 268.2 269 265 0.21 0.21 0.21 0.1 0.1 0.1 2008 2663 176.9 197.5 217 243 268.3 0.21 0.11 30歳 2009 2005 2006 2007 2317 5407 4561 3211 175.5 209 203.7 202.7 193.1 226.9 225.8 224.9 211.7 254 255.9 255.1 238.2 285.2 289.1 289.7 267.3 323.5 330.6 333.7 0.22 0.23 0.25 0.26 0.11 0.11 0.12 0.13 2008 3317 205.9 227.1 257.4 293.6 334.1 0.25 0.13 45歳 2009 2005 2006 2007 3120 3442 3456 3408 198.2 301.1 293.1 304.3 221.6 348.6 339.9 355.1 255.3 398.7 397.6 412.5 294.7 475.2 470.5 465.7 343.6 540.8 526.8 528.8 0.28 0.3 0.29 0.27 0.14 0.16 0.16 0.13 出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」平成18年、19年、20年、21年、22年の各版 (注1) (注2) 【追加説明】 この表は、同一年齢でどれぐらいの賃金格差があるのかを示す表です。 第1十分位数とは、下から10%のところにある賃金額です。 第1四分位数とは、下から25%のところにある賃金額です。 中位数とは、ちょうど真ん中にある賃金額です。 第3四分位数とは、上から25%のところにある賃金額です。 第9十分位数とは、上から10%のところにある賃金額です。 分散度とは、その格差の幅を指数化したものです。 建交労の場合、これまで年齢ポイントをこの第1四分位の賃金額に おいてきました。 貧困率(相対的貧困率)は、下から25%までをとります。基本となる調査資料が異なるので 一概には述べられませんが、第1四分位数の賃金に到達すれば、貧困ラインを突破し「世間 並み」となったと評価できるでしょう。 2008 4486 298.4 339.4 390.8 451.9 516.8 0.28 0.14 2009 3624 293.3 339.6 386.9 450.7 516.7 0.29 0.14 表3.産業・業種、年齢階層の高卒男子の賃金動向 区分 単位 高卒男子 【20-24歳】 全産業 全産業女子 建設・生産 建設・技術 製造・生産 製造・技術 道路貨物 道路旅客 【30-34歳】 全産業 全産業女子 建設・生産 建設・技術 製造・生産 製造・技術 道路貨物 道路旅客 【45-49歳】 全産業 全産業女子 建設・生産 建設・技術 製造・生産 製造・技術 道路貨物 道路旅客 年間 年間 時間あたりの賃金単価 産業別の格差の状況 総実 給与総額 全産業を100とした場合 労働時間 所定単価残業単価年間単価所定単価年間単価 時間 千円 円 円 円 % % 2,172 2,088 2,268 2,340 2,136 2,124 2,460 2,328 3,021 2,501 3,059 3,227 3,172 3,142 3,186 2,725 1,145 1,037 1,206 1,147 1,168 1,160 1,154 1,029 1,660 1,450 1,493 1,545 1,840 1,614 1,376 1,274 1,391 1,198 1,349 1,379 1,485 1,479 1,295 1,170 100 90.6 105.3 100.2 102 101.3 100.8 89.9 100 86.1 97 99.1 106.8 106.3 93.1 84.1 2,232 2,052 2,244 2,292 2,160 2,148 2,520 2,460 4,129 2,887 3,892 4,392 4,237 4,798 3,848 3,350 1,514 1,193 1,536 1,602 1,517 1,712 1,384 1,175 1,928 1,614 1,900 2,106 2,206 2,200 1,546 1,516 1,850 1,407 1,735 1,916 1,962 2,234 1,527 1,362 100 78.8 101.5 105.8 100.2 113.1 91.4 77.6 100 76.1 93.8 103.6 106.1 120.8 82.5 73.6 2,172 2,028 2,232 2,196 2,112 2,064 2,532 2,424 5,483 3,163 4,734 5,765 5,294 6,456 4,364 3,589 2,020 1,290 1,855 2,221 1,925 2,357 1,544 1,254 2,357 1,933 2,500 2,270 2,723 2,850 1,632 1,693 2,525 1,560 2,121 2,625 2,506 3,128 1,724 1,481 100 63.9 91.8 110 95.3 116.7 76.4 62.1 100 61.8 84 104 99.2 123.9 68.3 58.7 出所:厚生労働省「賃金センサス・平成22年版」より作成(調査は2009年6月実績) 「全産業女子」は高卒女子、残りはすべて高卒男子。「年間単価」に「賞与・ボーナス」を含む。
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