03-2.「冷凍機」の解説 夏,庭先に打ち水をすると涼しく感じます.これは,まいた 水が蒸発しようとするときに,熱せられた地面から熱を奪 い取ってくれるからです. このように,水が蒸発するときに,周囲から奪う熱のことを 蒸発潜熱(気化熱)といいます.気化熱とは液体の物質 が気体になるときに周囲から吸収する熱のことです.液体 が蒸発するためには熱が必要となり,その熱は液体が接 しているものから奪いとって蒸発するわけです. 水 蒸 気 水 蒸 気 熱 熱 水 蒸 気 熱 蒸発する液体 冷水 水 蒸発する液体の中に,伝熱用のパイプを通し,パイプ中 に水を流してみると,蒸発潜熱によって流れている水の熱 が奪われるため,パイプ中の水は冷たくなります. しかし,液体が全て蒸発してしまうと,パイプ中の水を冷 やすことができなくなってしまいます. 伝熱用のパイプ 蒸発する液体の補給 水 蒸 気 水 蒸 気 熱 熱 水 蒸 気 熱 冷水 水 伝熱用のパイプ これを防ぐためには,液体が蒸発・気化した分だけ液体を 補給してあげればよいわけです.こうして,液体の蒸発と その補給により,冷水を連続的に作り出すことができます. しかし,ここで問題となるが,奪った熱をどのように捨てるか ということです.そこで考えられたのが,その熱を運んで,効 率よく大気に放熱させる方法です. 03-2.「冷凍機」の解説 P1/P3 水から熱を奪った水蒸気 水蒸気のもつ熱が冷却水に 奪われ,水蒸気は凝縮して 水となる.(液化する.) 水 蒸 気 大気に 放熱 熱 熱 伝熱管 熱を与えられた水 冷却水 凝縮器 熱を運搬する 僕を冷媒って 言うんだ! 水 熱を捨てるために,別のところから引いてきた冷却水に熱 を与え運んでもらいます.その際,気体は冷やされて,ま た,液体に戻ります.(熱は奪われる.) 水 熱を与え られた水 冷水 冷却水 ぬるい水 水(冷媒) 蒸発器 凝縮器 また,凝縮した液体は,再び循環させて使用することがで きます.このように,液体から気体となるときに熱を奪い, その熱を冷却水に渡して再び液体となって次の仕事をす るという熱の運搬役を,冷媒といいます.「蒸発器」では, 冷媒が水から熱を奪い(パイプ中の水は熱を奪われるこ とで冷えます.)蒸発します.「凝縮器」では,冷媒は冷却 水に熱を与え(冷却水は熱を与えられるため温度が上昇 します.)凝縮します. 放熱 熱を与え られた水 凝縮器 コンデンサ 高温部 冷却塔 冷却水 外気 冷却水 ポンプ 冷凍機 冷水 冷風 低温部 戻り空気 クーラー 蒸発器 ぬるい水 冷水 ポンプ 空調機 これまでの内容を系統的に示したのが左図です.冷媒の 連続蒸発によって冷やされたパイプ中の冷水は,冷水ポ ンプで空調機に送られ室内空気と熱交換します.一方, 凝縮器へ運ばれた冷媒蒸気は,冷却水に熱を与え凝縮 (液化)します.熱を与えられた冷却水は,冷却水ポンプ により冷却塔に運ばれ,大気との熱交換によって冷やされ, 再び冷却水として働きます. 冷媒が蒸発して冷水を作り出す個所を蒸発器(クーラー), 冷却水により凝縮液化する個所を凝縮器(コンデンサー) といいます. ここで蒸発器で蒸発した冷媒を蒸発器から 運びだすために圧縮機を使用するものを「圧縮式冷凍機」 といい,吸収溶液の吸湿作用を利用するものを「吸収式 冷凍機」といいます. 03-2.「冷凍機」の解説 P2/P3 ■ 吸収式冷凍機のしくみ 水はふつうの状態では,100℃で沸騰する.しかし,気圧が大気圧より低い状態であれば 100℃以下(例えば10℃)であっても,沸騰・蒸発する.吸収式の冷房は,減圧した密閉 容器の中で水が沸騰・蒸発するときの気化熱を上手に利用するものである. ※尚,現在では,再生器を2つ設けて熱をさらに有効利用する,二重効用型吸収冷温 水機が主流となっている. 冷却塔 1)パイプ内の水は熱を与え られて,冷却塔へ戻される. 2)冷却塔にて熱を大気に 放出し再び冷却水として, 凝縮器に送られる. ⑥. 再生器で蒸発させ られた水蒸気(冷媒)を 凝縮器に送る. ⑤. 加熱により,水分(冷媒)を蒸発させ, 濃度の高い臭化リチウム溶液(水蒸気を 吸収しやすい吸収液)に戻す. 再生器 凝縮器 ⑦. 水蒸気(冷媒)が冷却水の 通っているパイプに触れると,凝 縮して水に戻る.(液化する.) 熱を大気に放出 水蒸気 37.5℃ (熱を与え られた水) 器内圧力 680~700mmHg 蒸発 ④. 吸収器で水蒸気 を吸収し,濃度の薄 くなった吸収液を再 生器に送る. 器内圧力 60~65mmHg 冷却塔 (クーリングタワー) 32.0℃ 水(冷媒) 吸収液 水(冷媒) 加熱 (冷却水) 吸収液+水(冷媒) 水蒸気 器内圧力 6~7mmHg ⑧. 凝縮器で戻された 水(冷媒)を蒸発器に 送る. 水蒸気 7℃ (冷水) 空調機 室内冷却 蒸発 吸収 臭化リチウム溶液 水(冷媒) ③. 水蒸気を吸いやすい吸収液 吸収器 (臭化リチウム溶液)より,送られ てきた水蒸気(冷媒)を吸収. ゆえに,吸収液の濃度は薄くなる. ②. 蒸発器で蒸発した水蒸 気(冷媒)は,吸収器の中 にある吸収液に吸収される. 器内圧力 6~7mmHg 12℃ (ぬるい水) 蒸発器 ①. 真空に近い状態(蒸発しやすい状態, 低気圧)で,水(冷媒)をパイプにかけると, 水は勢いよく蒸発.気化熱により,パイプ 内の水を冷やす. 空調機 1)パイプ内の冷水(7℃)を ファンで吹くことで,冷やされ た風(部屋を涼しくする.) となる. 2)パイプ内の水はぬるくな って(12℃),蒸発器側に 送られる. 03-2.「冷凍機」の解説 P3/P3
© Copyright 2024 Paperzz