2P02 - 理論化学研究室

2P02
カルボシランの特徴的な光物性に関する理論的研究
京大院工 1、量子化学研究協会 2 ○江原正博 1、西山嘉一 1、中辻 博 2
[email protected]
260
Me
Me3Si
(
240
220
Si
Me
Anti
SAC-CI
Me
)
Si n
Me
⎯
○
⎯
▲
200
180
Si2A
⎯
○
▲
⎯
⎯
SiMe3
⎯
○
▲
⎯
○
▲
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⎯
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Si4A Si6A Si8A
Molecules
⎯
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⎯
Si10A
280
260
240
220
200
180
Me3Si
(
Si Si
)n
Cisoid
⎯
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○
▲
Si4C
SiMe3
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○
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▲
SAC-CI
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○
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▲
Si6C Si8C
Molecules
⎯
⎯
⎯
○
⎯
▲
⎯
⎯
⎯
Si10C
Absorption wavelength (nm)
280
Absorption wavelength (nm)
Absorption wavelength (nm)
Excitation energy (eV)
【序】長鎖のシリコン化合物はサーモクロミックな性質を示し、その光物性は大変興味深い。
これは長鎖シリコン化合物の柔軟な骨格に起因する。本研究ではテトラシラン、ヘキサシラ
ン、オクタシラン、デカシランの σ 共役による特徴的な光物性について研究を行い、鎖状カ
ルボシラン化合物の光物性とコンフォメーションの相関について検討した。
【方法・結果】シリコン化合物の励起状態を SAC-CI 法(ダイレクト・アルゴリズム[1])を用い
て研究を行った。基底関数は Si には VTZ1P を用い、C, H には DZ を用いた。分子構造は 2
面角を固定し、DFT 法による構造最適化を行った。
テトラシランの光物性: カルボテトラシランでは二面角の変化に対してその励起スペクトル
が大きく変化することが知られている。二面角が増大するに従って、強度が強い σσ*状態が安
定し、σπ*は不安定化することから、状態間の交差が ω=40~50°付近で起きることが分かった。
また、二面角を制御した環状テトラシランと同じ二面角を持つ鎖状テトラシランでスペクト
ルが異なるのは環のひずみの効果であることを示した。
8.0
ヘキサシランの σσ*, σπ*状態の状態間交差: ヘキサシ
Si6 H 14
ランのコンフォメーションが変化する過程で、許容と
7.5
禁制遷移がどのように交差するか検討した。Si6H14 の
σπ*
σσ*
7.0
(2-3-4-5)の二面角を 180 度に固定し、(1-2-3-4)と(3-4-5
-6)の角度を変化させた場合に、状態間の交差が起こり、 6.5
σπ*
σσ*
そのエネルギー変化はテトラシランより大きい結果
6.0
が得られた(図 1)。これは Si 鎖長が長くなるにつれて
0
30
60
90
120
150
180
Dihedral angle (ϖ )
*
Dihedral
angle
(ω)
Anti 型では σ 軌道の非局在性が増大することによる
図 1. Si6H10 の励起エネルギー
ことを示した。
の二面角依存性
鎖状 Si 分子のコンフォメーションに由来する光物性:
鎖状 Si 化合物において Si 鎖長を長くした場合の励起エネルギーは、Anti 型と Cisoid 型で異
なることが実験的に観測された [2]。この光学的性質を解明するために SinMe2n+2(n=4-10)で検
討を行った。理論計算からも Anti 型では Si 鎖長が長くなると励起エネルギーが低下するのに
対し、Cisoid 型ではほぼ変化がない結果が得られた(図 2)。Anti 型では σ*軌道の非局在化がお
こり励起エネルギーが低下するが、Cisoid 型では σ*軌道が非局在化しないことから、この光
学的性質を説明できることを明らかにした。
[1] R. Fukuda, H. Nakatsuji, J. Chem. Phys. 128, 094105 (2008).
[2] H. Tsuji, M. Terada, A. Toshimitsu, K. Tamao, J. Am. Chem. Soc. 125, 7486 (2003).
280
Me
(
実験
Me
Si
)
260
Me3Si
240
Anti型
Si n
Me
SiMe3
Me
Me3Si
220
(
SiMe3
Cisoid型
200
180
)
Si Si n
Si2
Si4
Si6
Si8
Molecules
図 2. Si 鎖長の変化による励起エネルギーの変化(○は強度が最大の状態)
Si10