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小さなこどもを抱えた母親を支援するために

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NPO法人 ヒューマン・エイド22 代表
にいつ子育て支援センター育ちの森 館長
椎谷 照美(しいや・てるみ)氏
NPO法人 ヒューマン・エイド22 副代表
にいつ子育て支援センター育ちの森 副館長
樋口 栄子(ひぐち・えいこ)氏
新潟市の「にいつ子育て支援センター育ちの森」の管理運営を担うNPO法人
ヒューマン・エイド22。乳幼児を抱えた母親たちの苦労を、身をもって知って
いるからこそ、福島県から新潟県に自主避難してきた母親たちのサポートに
早期から取り組んでいる。福島県から県外に避難している人は、2013年9月
時点で5万人以上いるといわれる中、母親たちの孤立や孤独を防ぐために
主に0~3歳の乳幼児とその母親たちが利用する新潟市秋葉区の子育て
支援施設「にいつ子育て支援センター育ちの森」
必要なこととは?
小さなこどもを抱えた母親を支援するために
新潟市秋葉区にある「にいつ子育て支援センター育ちの森」(以下育ちの森)は、主に0~3歳の乳幼
児とその保護者、祖父母が利用する子育て支援施設だ。年間の利用者数は19,000名にのぼる(2012年
度実績)。運営しているのは2002年3月設立のNPO法人ヒューマン・エイド22。子育ての大変さを経験して
きた母親たちが「これから子育てをする母親に自分らしい子育てができるよう応援していきたい」と子育て
支援団体を立ち上げ、6年間活動したあとNPO法人挌を取得した。
2004年4月からは、育ちの森で乳幼児と保護者が遊べる「あそびの広場」や乳幼児の一時預かり、母
親対象のセミナー、相談対応などを10名のスタッフで行なっている。また、中学生の総合学習の一環とし
て、育ちの森で乳幼児とのふれあい体験を行なう中学校でのサロンを開催している。思春期の中学生に
とってこのような経験は親から大切に育てられたことに気付く機会にもなっている。
この秋葉区地域のすくすくサポート「小さな森の広場」※は、秋葉区内の6中学校区の中学校と校区内
のコミュニティセンターや公民館を会場にスタッフが絵本、おもちゃを持参してサロンを開催している。
ヒューマン・エイド22代表で、育ちの森館長の椎谷照美さんは「来る人たちの支援と、こちらから出向く
支援を行なっています」と語る。子育てに携わるすべての人を応援したいと思っている。
「見知らぬ土地で、しかも母子だけで生活するのはとて
もたいへんなことなのです」と語るNPO法人 ヒューマ
ン・エイド22 代表の椎谷照美さん
情報発信も積極的だ。育ちの森だより『森の広場』を毎月発行するほか、季刊誌『Cocokara』を毎号
4,000部発行し、新潟市内の保育園、公共施設などに配布している。
東日本大震災後、福島県から新潟県に避難してきた母子の支援に乗り出したのは、2004年10月の新潟県中越地震を通じて「乳幼児を抱えての避
難生活」のたいへんさを知っていたからだ。
ヒューマン・エイド22は新潟県中越地震の被災地で、子どもと保護者で参加できる親子あそびを行なうなどの支援をするほかに、アンケート調査も行
なった。すると「こどもの泣き声で迷惑をかけるから避難所にいられず車の中で生活した」「安心して授乳できるスペースがなかった」といった声が寄せ
られた。被害にあった母親216人の声をまとめた冊子を発行し、子どもを連れて避難した母親たちの実情を伝え今後に活かすために、「震災フォーラム」
を開催した。こういった経験が今回のいち早い支援につながった。
※「小さな森の広場」 : 新潟市秋葉区の子育て支援事業で、未就園の乳幼児とその保護者のためのサロン。中学校区ごとの会場で開催されている。
比較的少人数での開催となるため、広いスペースでのびのびと遊んだりできる。中学生の乳幼児ふれあい体験の場としても活用されている。
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新潟での生活になじんでもらうために
最初の支援は2011年4月だった。福島県から新潟県に避難してきた親子が新潟の人たちとコミュニ
ケーションするときに役立ててもらおうと、新潟の方言をまとめた冊子(『Cocokara』特別編集)をつくり、近
隣の公園マップとともに 新潟市内の避難所に配布。翌月にはバザーを開いて寄付をした。
福島県で子育て支援に取り組むNPO法人ビーンズふくしまとつながりがあったため、情報交換などを通
じて連携した。「地域で子育てしている母親を支援している私たちが、つらい気持ちを抱えて慣れない土
地で暮らしている親子をサポートするのは当然のことです」と椎谷さんは言う。
2011年の夏を迎える頃、自主避難している母親たちが徐々に育ちの森に集いはじめる。「避難者同士
のネットワークが広がったことと、育ちの森発行の季刊誌(Cocokara)で情報提供しました。また、どこに
住んでいるのか、私たちには情報がないので、行政(秋葉区)を通じて避難生活を送る人たちにチラシを
配布しました」とヒューマン・エイド22副代表で、育ちの森副館長の樋口栄子さんは当時を振り返る。「子
育て」という共通点を持つ新潟市の母親が育ちの森で近所にある店や遊び場の情報を伝える頻度も増え
ていった。
10月には「福島限定日」を設けた。これは福島県から避難してきた母子のみが育ちの森を利用できる
「ちょっとしたことでよいので、新潟県に避難している人
たちをサポートしてください」と言うNPO法人 ヒューマ
ン・エイド22 副代表の樋口栄子さん
日だ。方言や話題を気にせず交流することで「ずいぶん心が軽くなったようです」と椎谷さんは言う。
その「福島限定日」から生まれたものがある。福島県から避難してきた人の子育てサークル「キビタンズサークル」だ。きっかけは、震災前から育ち
の森を利用していた福島県出身の母親から「なにかお手伝いできることはありますか?」と相談されたこと。サークル活動のサポートは椎谷さんたちの
得意とするところだ。「自分たちの居場所ができた」と喜ばれ、現在も月2回の活動を続けている。
中越地震と大きく違うのは家族が離れ離れで暮らすという点。「父親も一緒に避難して来た家族は当初も今も少ないと思いますし、福島にいる夫や
家族の体調を心配している方も多いのです」と言う樋口さん。「冬の雪道の運転が心配」という声を受けて、冬季の高速道路の危険個所、雪道運転の
注意点などの講習を警察署の協力を得て行なったこともある。
母子が一緒に参加する「ふくしまママサロン」や子どもを預けて母親だけが参加するセミナー「ふくしまママ茶会」「ふくしまママ話会」などを織り交ぜ、
情報交換する場を設けて、見知らぬ土地で暮らす母親たちの支援を今も続けている。
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孤立や孤独を防ぐ住民の温かい目
一方では、県外避難者を支援する側の人たちへの情報提供も行なっている。ヒューマ
ン・エイド22は、2012年12月に『母子避難支援ガイド』を1,000部発行し、希望者に送付して
いる。親子への対応をテーマにした講演会(福島県心のケア事業講演会)を新潟市内で実
施。支援者向けのセミナー(福島県心のケア事業)は2013年12月に実施する。それは「こ
れからもずっとケアが必要」と椎谷さんたちが考えているからだ。
震災から3年目を迎えた今、母子ともに新潟の生活に慣れてきた一方で、個人的な悩み
が生まれているそうだ。椎谷さんは「新潟の暮らしがわからないという共通の悩みから、子
どもが成長して入園、入学など個別の悩みへと変わってきています」と指摘する。ただでさ
えたいへんな子育てに、避難生活という二重の苦労がのしかかる。
これからはどのような支援が必要なのだろうか。
「まずは話を聴くことです」と椎谷さん。個別の相談に対応しながら「常に近くにいる」とい
う安心感をもってもらうこと、さらに「母親たちが自分に合った支援を選べるように今後もい
ろいろな活動をしていくことが必要です」と言う。母親のいちばんの救いは「子どもの笑
顔」。だから、子どもが笑顔になるような活動を、たくさんの団体がしていくことが大事なの
だ。
(写真上)「にいつ子育て支援センター育ちの森」を運営するNPO法人
ヒューマン・エイド22の皆さん。施設内だけでなく、積極的に地域へ出向
き、0歳からの子育てに携わる人を幅広く支援している
(写真下)年4回、毎号4,000部発行している『Cocokara』。単なるイベント
情報だけでなく「読み返して役に立つ」地域密着型の情報誌として人気だ
樋口さんは放射線に関する誤った情報や知識を子どもに伝えている大人がまだいるこ
とを懸念する。「つらい思いをしている母親と子どもが、さらに傷つくようなことがないように、私たち大人が思いやりを持ち、誤った情報を子どもに伝え
ないという意識が大切だと思います」と言う。
まもなく新潟には雪の季節がやってくるが、避難生活を送る母親は子どもを背負って一人で雪かきするしかない。「駐車場で福島ナンバーの車を見
かけたら、余力のある方はひとかきでも雪かきを手伝うなど、気にかけてほしい」と提案する。
福島県から避難している人々は日本各地にいるが、問題が長期化するにつれ孤独を感じることも増えているのではないだろうか。慣れない土地で
孤立するのを防ぐためには「母親たちが声を出せる場」が必要だと椎谷さんは言う。
「全国でいろんなかたちで支援している方々がたくさんいると思います。避難生活を続ける母親たちが孤立しないように、いつまでも寄り添ってもらい
たいです」。
2013年10月取材
(C)Tohoku-Electric Power Co.,Inc. All Rights Reserved.
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