平成 22 年度卒業研究発表要旨 2011 年 2 月 22・23 日 207 軟式野球バット表面の柔軟性と飛距離に関する研究 06-1-078-0035 服部 達也 知能システム工学科 応用力学研究室 先行研究では、木製バット、ビヨンドマックスや金属バットとボールを用いて復原力特性を実験的に求めたが、反 発係数にあまり差が出ていなかった。これは円形断面を重ねるという状況であったので、不安定な載荷実験であっ たためと考えられる。本研究ではビヨンドマックスを直接使うのではなく、ゴム板とボールとの復原力特性から反発係 数を求めることを試み、ゴム板を数種用意して、ゴム板の柔軟性(ばね定数)が反発係数に及ぼす影響を明らかにし た。 Key Words: ビヨンドマックス、復原力特性、反発係数、ばね定数 1. 緒言 本研究では、ゴム板とボールとの復原力特性から反発係数を 求めようと、ゴム板を数種用意して、ゴム板の柔軟性(ばね定数) が反発係数に及ぼす影響を明らかにしようと試みた。 5. 反発係数とばね定数の関係 図 3 よりいずれもボール単体の反発係数(0.72)より相当大きい。 ばね定数が大きいほど反発係数が大きくなるという傾向がみられ る。 2. ビヨンドマックス ビヨンドマックスとは、打球部(芯)が手で触っても変形するほど の柔らかい素材(*高反発素材:エーテル系発泡ポリウレタン)で 作られていることが大きな特徴である(図 1 参照)。 図 3 各ゴムの反発係数とばね定数の関係 図 1 ビヨンドマックスの特徴(1) 3. 復原力特性に関する実験 ゴム板、ゴム板・ボール複合系の復原力特性を求めるためにそ れぞれの載荷実験を行った。ゴムはネオプレンゴム、シリコンゴム の 2 種類の厚さを変えて使用した。 4. 反発係数 復原力特性の測定結果を載荷時、除荷時に分け、そのエネル ギーの割合で反発係数を求めた。各ゴムの反発係数はシリコン ゴム 10mmが 0.9936、ネオプレンゴム 6mmが 0.9713、10mmが 0.9634、6mm2 枚が 0.9553、10mm2 枚が 0.9658 となり、シリコン ゴム 10mmが最大となった。 図 2 ネオプレンゴムの復原力特性の一例 6. まとめ いずれのゴム板でも反発係数は、ボール単体の反発係数より 相当大きくなった。つまり、バット表面に柔軟性が全くない場合 (ばね定数が無限大)の反発係数よりも相当大きくなった。ゴム板 のばね定数が大きくなると反発係数は大きくなる傾向があった。 ばね定数が無限に大きい場合は、先に述べたように反発係数は 低くなるので、何か最適なばね定数があるものと推定される。以 上のことから、金属バットや木製バットを使用するよりもビヨンドマ ックスを使用するほうが、反発係数が大きくなり、よりボールを遠く に飛ばせるということが言える。 7. 今後の課題 本研究の結果から、反発係数が極大になるばね定数が存在さ れることが予想されるので、さらに多くのゴムを用いて復原力特 性を測定して、反発係数が極大となるばね定数を探索することが 望まれる。バットは振動しないと仮定した超高剛性バットとしてい る。しかし、実際、バットはボールとの衝突時に振動する。そのた め、バットの振動を考えなければならない(2)。さらに、ボールの飛 びには、打撃時の腕の動きも大きく関係しているので、腕の動き を考慮して検討する必要がある。 8. 参考文献 [1] 参考ホームページ http://www.mizunoballpark.com/ [2] ベースボール物理学、ロバート・アデア(中村 和幸 訳)、紀 伊国屋出版 2002 年
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