知っておきたい「液面制御リレー」の基礎知識 はじめに 私たちの生活で

知っておきたい「液面制御リレー」の基礎知識
はじめに
私たちの生活で欠かすことのできない「水」の代表的な液面制御として「液面制御リレ
ー」があります。「液面制御リレー」には一般的に電極式、フロート式、静電容量式、圧
力式、光電式、超音波式など種々の方式がありますが、最も一般的な給排水用途における
液面制御としては電極式が多く使われています。ここでは電極式の「液面制御リレー」に
て機能・しくみ・事例を紹介します。また、「液面制御リレー」のトラブルの事例やフロ
ート式との違いについても説明いたします。
1.液面リレーの仕組みと役割
ビルやマンションなどの建築物での水の給水設備は、屋上などに設置した高架水槽に
給水を行い、高低差による水圧を利用して各階に給水する方式をとっています。
ここでは高架水槽を例にして説明します。水の消費によって水槽内の水位が下がれ
ば、ポンプを回して受水槽から補給します。さらに、ある水位まで貯水されると今度
はポンプを停止します。
給水
上限
受水槽
一定
下限
給水停止
高架水槽
図1、液面リレーの仕組み
受水槽
このように高架水槽では上限と下限の間に水位を保つように水位の制御を行うわけで
す。この水位の制御を自動的に行うための簡単な例として浮子(フロート)を利用し
たボールタップ式があります。
これは浮子のメカ的な動きで、バルブを直接
開閉するものです。以前はこの方式が主流
でしたが、ボールタップ式のようなメカ式
だと、設置の際の調節も手間がかかり大変です。
また、メカ部の磨耗や錆びなどによる
トラブルが避けられませんでした。
よって、安定した水位制御を行う
電極式が主流となりました。
水 槽
図2.ボールタップ式
2.液面リレーの動作原理
ここでは電極式液面制御リレーの動作原理を説明します。
電極式液面制御リレーでは水を媒体として電極間に電流が流れることで水の有無の検
出を行っています。
交流8V
リレー
X
リレー接点
b
a
E 1
c
コンタクタへ
E3
電流は流れない
図3.液面制御リレー動作原理(1)
(1)電極E1が液面に触れていない図3の場合は、電流が通る回路が開いている
(E1−E3間)ため電流は流れない。したがって、リレー「X」は動作せず、
リレー「X」の接点は「b」側です。
交流8V
リレー
X
リレー接点
b
a
E1
c
E3
コンタクタへ
電流が流れる
図4.液面制御リレー動作原理(2)
(2)電極E1が液面に触れている図4の場合は、回路が閉じた状態(E1−E3間
が液で閉じられた状態)となるためリレー「X」が動作し、接点が「a」側に
なります。
このリレー接点をコンタクタに接続すれば液面の位置に従ってポンプのON、
OFFができます。
ただ、図3、4のように電極が2本の場合は電極E1の近くで波が発生し、リ
レーのバタツキをおこします。
そのため電極式液面リレーには自己保持回路があります。
3.自己保持回路
c 2
交流8V
リレー
a2
X
b2
リレー接点
a1
b1
ON
c1
E1
OFF
E3
E2
図5.自己保持回路
E1、E3電極の他にE2電極を用い、図5のようにa2接点を介してE2、E1を
接続します。この場合(図5)にて液面がE1に触れてリレー「X」が動作し、接点
がいったん「a側」になります。つぎに液面がE1より低下してもE2−E3間で回
路を閉じた状態に保つことができます。
このようにE2電極と接点で構成した回路を自己保持回路といいます。
液面がE2より低下するとふたたび回路が開いてリレー「X」が「b側」に復帰しま
す。このようにE1、E2間でリレー「X」をON、OFF制御することができま
す。
4.液面制御リレーの構成例
液面制御リレー
電極保持器
モータ
上限
下限
ポンプ
高架水槽
上水道・地下水など
電 極
給水源
図6.液面制御リレー構成例
ここでは一般的な液面制御リレーの構成を示しています。
液面制御リレーにて高架水槽の水位を保つのが水位制御の目的です。
高架水槽の水位が下限になるとポンプにて給水源から給水します。また高架水槽の水
位が上限になればポンプは停止し給水を止めます。
また、ここでの構成例では給水源側にも電極があります。この電極の目的は給水源の
水位が下がったときにポンプの空運転を防止するためです。
給水源の水位が下がるとポンプは起動しません。
モータの駆動にはコンタクタが一般的に使われますが、図からは省いています。
5.液面制御リレーのトラブル対応について
ここでは液面制御リレーの一般的なトラブル事例と対処方法について説明します。
液面制御リレーのトラブルには「動作不良」と「復帰不良」があります。
「動作不良」とは、水位が電極に達しているにもかかわらず液面制御リレーが動作し
ないことです。「復帰不良」とは、水位が電極から離れているにもかかわらず液面制
御リレーが復帰しないことです。
それぞれのトラブル「動作不良」「復帰不良」にて説明します。
(1)動作不良(水位が電極に達しているにもかかわらず液面リレーが動作しない。)
< 動作不良トラブル1 >
液面制御リレーまたは電極
E3電極
E2電極
E1電極
保持器への接続箇所に
おいて接続用端子が外れ
かけており、電極端子と
導通していないため、
水位が電極に達しても
液面制御リレーが動作しない。
接続用端子
再度、端子部の接続の確認
をしてください。
また電源部の接続状態の確認
も必要です。
図7.動作不良トラブル1
< 動作不良トラブル2 >
液面制御リレーの使用用途は水の水位検出ですが、水以外の液では液面制御リレー
が電極に達しても動作しないことがあります。これは電極間の液抵抗が大きくなり
液面制御リレーが動作しない場合が考えられます。このような場合には購入店へ問
い合わせていただき液面リレーの交換をしてください。
水
正常動作
水以外
動作しない
図8.動作不良トラブル2
注意:液抵抗とは電極間(E3―E1間)の抵抗分のことで、大きくなると電流
が流れなくなることです。
(2)復帰不良(水位が液面から離れているにもかかわらず液面制御リレーが復帰しな
い)
< 復帰不良トラブル1 >
復帰不良のトラブルで多いのが、電極間にゴミ
電極保持器
が付着することで水位が下がっても復帰しない
場合です。
これはゴミによって電極間が導通されて発生する
トラブルです。主に屋外の水槽では枯葉が
ゴミ
水槽内に入りトラブルになる場合があります。
対応策としては定期的な電極棒の清掃や防波菅
を使用することをお勧めします。
図9.復帰不良トラブル1
注意:防波菅とは電極を覆うパイプのことです。
防波菅を使用すればゴミなどによるトラブルを避けることができます。
< 復帰不良トラブル2 >
電極保持器
液面制御リレー
液面制御リレーと電極保持器間の配線長が
長い場合、水位が電極より離れても液面制御
図10.復帰不良トラブル2
リレーは復帰しないことがあります。
参考までに一般形の液面制御リレーの配線長は最大1kmです。配線ケーブルは
0.75mm 2 (φ)となります。ケーブルの線径が太くなると配線長は短くなりま
す。
6.液面制御リレーご使用に際して注意事項
(1)用途にあった液面制御リレーを選定
液面制御リレーにはさまざまな水位制御に適した機種が取り揃えられています。
目的にあった機種の選定をしてください。
(2)制御する液に適切な機種の選定
水以外の制御においては一般形の液面制御リレーでは動作しないことが想定され
ます。必ずカタログの記載内容を確認してから機種の選定をしてください。また
詳細に確認したい場合は、購入会社のテレフォンサービス等を使うのも有効で
す。
(3)電極保持器の選定
電極保持器は液面制御の目的やタンク(水槽)の形状などによりさまざまな機種
が取り揃えられています。目的のあった機種を選定してください。また電極棒は
切断しても使用することは可能です。
(4)設置現場においての適切な機種選定
液面制御リレーと電極保持器間が離れている場合(1km∼4km)は遠距離配
線が可能な液面制御リレーもあります。
(5)液面制御リレーの商品情報の入手と活用
これから液面制御リレーを検討されている方、またはすでにお使いになっている
方々には液面制御リレーの商品カタログをご覧になることをお勧めします。
日ごろのメンテ作業からトラブル時の対応まで詳しく書かれたものもあり、トラ
ブル時にお役立ちできるものと思います。また、最近ではネットにてカタログな
どの資料も入手できます。
7.最後に
液面制御リレーは私たちの生活になくてはならない機器となっています。生活水の断
水などによるトラブルも日ごろの機器のメンテ次第では防ぐことができます。
ここで紹介したトラブル事例などを参考にしていただければ幸いです。