大手から中小企業まで採用が進む 検索エンジンマーケティング

6-1 ウェブマーケティングとネット広告
大手から中小企業まで採用が進む
検索エンジンマーケティング
渡辺隆広●アイオイクス株式会社 チーフアナリスト
第
6
部
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ネ
ス
事
業
者
動
向
広告媒体としての役割を担う検索エンジン
他のオンライン広告より費用対効果の高さで注目を集める
インターネットにおいて検索サービスは、電子メールに次
メ 格安」と入力したユーザーは、値段の安いデジタルカメラ
いで利用されるサービスへと成長した。現在、ウェブサイト
を求めていると推定できよう。このユーザーに対して、その検
を訪問するユーザーの80%近くは検索エンジンを利用して訪
索を行っている最中に「格安で販売するデジカメ広告」、ま
問しているといわれる。また、検索を利用している時間の
たはそれに準じる情報とリンクが検索結果に表示されれば、ユ
30%は過去に訪れた経験のあるウェブサイトへの再訪問のた
ーザーは喜んでそれをクリックしてくれる。この「ユーザーの
めに用いられているという。さらに近年オンラインショップの
興味関心が最も高まり、それを探索している」その瞬間に関
成長に伴い、商品やサービスの購入を目的とした検索エンジ
連あるリンクを提示可能なことがSEM の効果を高めている。
ンの利用者数も急速に伸びている。
またキーワードによりターゲットとする顧客に絞り込むこと
こうしたオンライン消費者の検索エンジンへの依存と利用
ができるのもSEMの魅力だ。企業が取り扱っている商品やサ
状況に相まって、2002年前半にSEO、後半にはグーグルと
ービスに関連するキーワード、それを探し求めていると推定
オーバーチュアから相次いで検索キーワードに連動して表示
される検索キーワードに限って広告やリンクを提示すること
する広告商品が日本市場に登場した。これが米国に遅れるこ
で、無駄な広告費用を極力抑えることが可能となっている。
と数年、日本でも検索エンジンマーケティングに注目を集め
るきっかけとなった。
SEMが先行して成長している欧米をみると、米IBMやモ
トローラ、シティバンクといった名立たる企業が相次いで何
検索エンジンマーケティング(以下、SEM)とは、検索エ
らかのSEMを採用している。日本でも2003年に入り、大手
ンジンを通じて消費者に商品やサービスの購入・利用の誘発
企業から中小企業までオーバーチュアやアドワーズ広告の利
を促すための活動全般を指す。つまり企業が検索エンジンを
用が目立ち始め、今後さらに採用企業は増加していく勢いだ。
一種の巨大な広告媒体と捉え、それを利用してウェブサイト
への集客を試みようとする行動だ。その具体的な活動方法と
して、たとえば SEO (検索エンジン最適化)や有料リステ
有料リスティングから始める企業も多い
先述したようにSEMの具体的な手段はいくつか存在する。
ィング(オーバーチュア、グーグルアドワーズなど)、PFI
グーグルのようなロボット型の検索エンジンが適切にウェブサ
(検索エンジン有料登録)などが挙げられる。いずれもサービ
イトの情報を理解し、関連するキーワードで上位表示させる
スの詳細は違えど検索結果に企業サイトへのリンクを提示し、
ユーザーの誘導を試みる点では一致する。
ようにウェブを構築するための SEOもあれば、広告を表示さ
せたいキーワードに対してクリック課金型の料金を支払って
利用するアドワーズ広告やオーバーチュアもある。
他のオンライン広告より費用対効果が高い
290
両者にはそれぞれ一長一短があり、どちらかが優れている
SEMの特筆すべき点は、他のオンライン広告媒体と比較
と言い切ることはできない。SEOは、どれだけのクリックが
して費用対効果やコンバージョン率(購入に至る率)が圧倒
発生しても追加費用がかからない反面、常にターゲットとし
的に高いことだ。米NPD Groupの調査では検索エンジン経
たキーワードで検索結果の上位表示を維持できるわけではな
由で購入に至る確率はバナー広告経由に比べて5倍高かった
い。有料リスティングは指定したキーワードで確実に広告を
という結果も出ているほどだ。この背景には、消費者に対し
表示できる反面、クリックが発生するたびに広告費用が発生
て何らかのメッセージと企業サイトへのリンクを提示するタイ
するため、検索回数の多いキーワードを利用する時にはそれ
ミングに秘密がある。
相応の広告予算をとらなければならない。
SEOも有料リスティングも、リンクを提示するのはユーザ
2003年の日本企業の動きをみると、SEMを体験すること
ーが情報検索を行っている時だ。それは検索キーワードに連
と初期導入の手軽さから SEOよりも有料リスティングから手
動して表示される。ところで検索エンジンを利用しているユ
をつける企業が少なくない。同時に従来の広告枠をそのまま
ーザーは何らかの情報に対するニーズを持ち、そのニーズを満
有料リスティングに投資するため、費用対効果、「ROI」と
たすために検索を行っている。たとえばキーワードに「デジカ
いう視点が欠如した運用も散見される。
+ インターネット白書 2004 +
ウェブマーケティングとネット広告
図1 検索エンジンマーケティングの概念図
ログ分析による効果検証が不可欠
SEMの活動はウェブサイトに記録されたログ分析と広告効
果測定ツールの利用により、かなり詳細な検証を行うことが
可能だ。ログ分析に対する企業の関心は近年高まっており、
今後は SEMの一環として広告効果の分析も行われることに
なるだろう。また米国の調査で、同じ検索キーワードに対す
検索エンジン
選択肢 1
SEO
Google
選択肢 2
PFI
MSN
消費を促す
goo
る検索結果でも、広告として表示される有料リスティングより
もロボット型検索の表示する情報をクリックするユーザーが過
ターゲット顧客
Yahoo!
6
商品の購入、問い合わせ、
資料請求、etc...
選択肢 3
有料リスティング
半数を占めているという結果も出ている。この結果からSEO
の重要性も無視することはできず、ログ分析でユーザーのオ
ンライン行動を分析しながらSEOと有料リスティングを戦略的
に組み合わせた運用がSEMに求められていくことになる。
第
検索エンジンマーケティング(SEM)は、顧客層や広告予算、目標に応じ
てSEO、PFI、有料リスティングを使い分け、検索エンジンを通じてタ
ーゲット顧客にアプローチして消費を誘発させる活動。マーケティング
の目的や予算、市場に応じて①〜③を選択する
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検索エンジンマーケティングのキーワード
SEO(検索エンジン最適化)
PFI(Pay for Inclusion)
ウェブページに関連するキーワードで
検索エンジン有料登録。ロボット型
検索した時に、検索エンジンの上位
検索は一般的に特定のウェブサイトの
効果測定
に表示されるようにウェブを検索エン
登録を保証しないが、PFI の利用によ
SEO も有料リスティングも検索エン
ジンが理解しやすい形式で構築するこ
り検索インデックスへの掲載が保証さ
ジンの上位に表示させることが目的で
と。一定のルールに基づいてページの
れる。ただし特定のキーワードに対し
はない。検索をするユーザーを自社の
評価・分析を行うロボット型検索エ
て上位に表示されることは保証されな
サイトまで誘導してくるとともに、求
ンジン、たとえばグーグルが対象とな
い。PFI は検索エンジン側が提供して
めるアクション(たとえば購買や資料
る。検索エンジン利用者は検索結果
いる場合に利用できる。たとえば 米
請求)まで導く必要がある。SEO や
ページの最初しか見ないため、検索エ
Yahoo! の Site Match がある。日本で
有料リスティングが正常に機能してい
ンジンに関連性が高いと評価されるペ
は一時期 goo が PFI を提供していた。
るか、キーワード選定やクリエイティ
ージ作りが重要となる。
大規模サイトからの需要があることか
ブに課 題 がないか検 証 するために
ら今後日本でもPFI が再び登場する可
SEM 活動を行う時にはそれらの効果
能性がある。
測定もあわせて実施される。
有料リスティング
いて非常に重要な役割を担っている。
検索エンジンに一定の広告費用を支
払うことで指定したキーワード検索時
検索キーワード
ROI
に広告を表示する広告商品。オーバ
検索エンジンが利用される時に必ず入
費用対効果。SEM においては投資し
ーチュアの「スポンサードサーチ」や
力されるのが検索キーワード。検索キ
た費用に対してどれだけの利益を上げ
Google の「アドワーズ広告」が代表
ーワードはユーザーが探している情報
ることができたかを測定するための指
的な例。オークション形式を採用して
を具現化したものであり、キーワード
標として用いられる。SEM は費用対
おり、同一キーワードを複数の広告主
には必ずそれの検索意図やニーズがこ
効果が高いマーケティング手法である
が利用する時は、最も高額なクリック
められている。SEM の活動はSEO も
が、効果測定ツールを用いることで非
単価を支払う広告主のサイトが上位
有料リスティングもユーザーが発した
常に精緻な数値化が可能。すべてが
に表示される。ヤフーや MSN といっ
キーワードに対応してリンクを提示す
数値化されるが故に限りなく無駄を省
た利用者数の多いポータルに横断して
る形式をとっている。いいかえれば、検
くことが可能であり、したがって ROI
広告掲載ができるうえ、クリック課金
索キーワードの選定の成否が SEM の
が重視される傾向にある。
型であることから広告主からの人気が
効果を決定することになる。その意味
高まっている。
でも検索キーワード分析はSEM にお
+ インターネット白書 2004 +
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