住宅政策戦略チーム 2005.05.30 【諸外国の住宅政策】のリリースについて ∼はじめに∼ 我が国の住宅政策について検討を行うにあたり、諸外国の政策変遷について比較研究を行う ことはとても有意義なことです。 住宅政策戦略チームでは、常日頃の自主研究や受託調査により得られた諸外国の住宅政策に 関する情報ストックを体系的に整理し、順次リリースすることにいたしました。 欧米の住宅政策の変遷については、当然のことですが、各国とも変遷の背景が異なり、各国 を同一軸により整理していくことは難しい面があります。 よって、各国の住宅政策の特徴を表現できる軸をそれぞれ設け、変遷の特徴がわかりやすく なるよう、可能な限り体系図として表現するようにしております。 ここでは、各国とも、概ね2000年までの変遷について整理し、ここ数年間の動きについ ては、別途ご紹介していくことにいたします。 尚、リリースした資料については、よりわかりやすい資料となるよう、適宜、内容の更新を してまいります。その際はホームページ上でご案内いたします。 以上 お問い合わせ先 株式会社 価値総合研究所 〒108-0073 東京都港区三田三丁目4番10号 リ【 ー ラヒジリザカ7階 主要な委託者】 戦略調査事業部 住宅政策戦略チーム 担当:小沢([email protected]) 森田([email protected]) TEL:03-5441-4811 FAX:03-5441-7661 Copyright92005Value Management Institute,Inc 住宅政策戦略チーム アメリカ住宅政策の俯瞰( 1990年代まで) アメリカ住宅政策の俯瞰 1930年代 ルーズベルト民主党 ■ニューディー 【ニューディール】 ル政策(ルー PWA( 公共事業庁) による住宅建設 ズベルト) ■連邦住宅庁 設置 ■住宅金融シ ステムの萌 芽 ■中産階級の 持家政策本 格展開 ■スラムクリア ランス 1934年 住宅法 PWAの住宅供給は連法政府に より中央集権的に実施。1937年 住宅法では各州のPHA( 公共住 宅庁)が行う制度に変更 FHA( 連邦住宅庁) 創設 ■貧困戦争 ■偉大なる社 会計画 1937年 住宅法 PHAによる公共住宅供給制度化 ( 2000年: 約3200ヶ所、120万戸の供給) 融資条件の変化 資産価値40∼50% 返済期間3∼5年 利子10% モーゲージローンの保険制度(FHA保険) MPSはFHA保険の適用要件 Property Standards(後のMPS(Minimum Property Standards))の創設→住宅の質を規定(担保価値規定) 資産価値80% 返済期間20年 利子5%下回る スリフトへのモーゲージリファイナンス資金の供給 ( モーゲージの買取) 公共住宅と社会福祉 の同時受給認めず 1949年住宅法 公共住宅の所得制限が厳しくなる⇒所得中間層への「 補助の穴」 タイトルⅠ 都市更新事業( Urban Renewal: UR) 福祉受給者の入居が可能に 公共住宅がより貧困階層への制度へ 低所得者の集中居住「連邦のスラ ム」、地域社会からの隔絶。 公共住宅へのネガティブなイメージ 人種的に異質な近隣地区は財産価 値が不安定という理由により「レッド ライン」を引く→FHA保証の対象外 スリフトを住宅金融専門機関として市場から 分離保護。連邦政府が間接的に支援・ 規制 措置。 中堅所得者の郊外居住促進 カベナント(私的契約) : 土地利用につ いて黒人の排除、入居者の同質性、不 動産価値の保全への効果を意図 1966、1969年 クレジット・クランチ(市場金利の高騰と預金 金融機関の金利上昇規制間の矛盾→低水 準預金の解約、自由金利商品へのシフト) 1960年代 マイノリティの「 再発見」 ケネディ→ジョンソン「貧困との戦い」、「偉大なる社会」計画。 1965年: HUD( 住宅都市開発省) の設置 家賃補助プログラム開始: 建設補助金ではなく「家賃と居住者所 得の20%」の差を補助。 1968年 住宅都市開発法 モーゲージ利子に対する利子補助金の供給 セクション235:持家に対する補助 セクション236:賃貸住宅に対する補助 1974年 住宅コミュニティ開発法 新規建設・ 大規模修復プログラム: 民間低所得者向け住宅供給。 家賃と居住者の所得の25%の差額が補助金供給。家主は一定期 間維持提供しなければならない。 既存住宅プログラム:家賃と所得の25%の差額を世帯ごとに補 助。 ■新保守主義 (ロナルド・ レーガン 1983年 住宅及び農村都市再生法 (共和党) 新規建設・大規模修復プログラムの大幅縮小→老齢障害者向け ■住宅政策の予 に限定 算削減 ■ホームレスの 増加 スリフトへの流動性資金供給制度(加盟スリフトの預 金受入れ、モーゲージを担保とした短期融資) 1944年 退役軍人調整法 VA( 退役軍人庁)創設 ■連邦政府財 セクション8 政悪化 ■新連邦主義 ( ニクソン共和 党) 【アメリカの住宅金融の基礎】 FNMA規定→1938年設立 1961年 セクション221(d)(3): 市場以下の金利。民間賃貸住宅のモーゲージ 利子を3%に下げる→家賃の低下を図る。( あまり効果なし) ■住宅都市開 発省の設置 1932年 連邦住宅貸付銀行法 FHLBanks(連邦住宅貸付銀行:全 米12地域)設立 バウチャー方式の導入 明確な指針欠如 →不公正は補助 金配分 受給資格の明確 な基準 補助基準算定方 法の統一 1966年 FAHプログラムがインナーシティを対象に 連邦財政の圧迫 1973年1月:ニクソン共和党 「 一切の住宅補助の中断( moratorium)」 宣言により停止 住宅費の支払い能力の不足している低所得層に直接 補助を与える新しいアプローチに転換すべき 『 家賃補助実験事業』 家賃補助を受けた低所得者はどのように住宅を探すの か、住宅水準は向上するのか、市場にどのように影響 を及ぼすのか w サーティフィケートでは公正市場家賃を超えない民間住 宅を選択でき、家賃補助額は調整後所得の30%と実際 の聡家賃との差額⇒自己負担額は家賃によって影響さ れない。⇒できるだけ高家賃の住宅を探す動機に⇒市場 家賃の上昇が懸念 w バウチャー方式では、公正市場家賃を超えない固定され た支払標準額( payment standard)と調整後所得の差額を 採用⇒自己負担額は実際の家賃に影響⇒低家賃契約 へのインセンティブ⇒市場家賃は上昇しないとの理論 ※バウチャーについては、別途特集により、その詳細をご紹介します。 1990年 アフォーダブル住宅法 ■レーガン政権の 州・地方政府に対して、包括的住宅アフォーダビリティ戦略(CH 方向性が基本 AS)の計画策定義務化。 的に引継がれ HOPEⅠ: 公共住宅の民間非営利団体等への売却、民間主導に る よる住宅供給。 ■ジョージ・ ブッ スラムクリアランス 中高所得者住宅の創出、低所得者住宅の破壊 【CDC(community development corporation】 1960年代半ば都市不安に対応すべくインナーシティの 黒人コミュニティを組織する近隣地区のリーダー達から 成長したもの 預金金利の上昇規制が導入されているスリフ トで顕著→住宅資金供給能力が急速に低下、 住宅投資の後退 直ぐに預金金利規定を撤廃せずに、機関投資家資金の住宅 金融市場への導入を意図して新たな住宅モーゲージの流動 化・証券化スキームの検討 1968年 住宅金融機構改革 FNMAの民営化、GNMAによる民間金融機関からのモーゲー ジ買取、FNMAへの売却「タンデムプラン」によりキャピタルロ スを負担するモーゲージ買取機関となる。 FHLBanksが民営化( 68年)されたが、70年緊急住宅金融法 により政府から2億5千万ドルの追加資金→特定担保に対し ては優遇金利での貸付可能となる。 モデルシティ・プログラム(住宅都市 開発省) 経済機会法タイトル1‐ Dプログラム (コミュニティ開発法人を中心とした 貧困対策) CDCの業務と住宅開発の専門家を 雇用するために補助金供給 CDBG(コミュニティ開発包括補助 金) モデルシティ、UR、上下水、近隣施 設、公共施設への投資をコミュニ ティ開発プログラムに統合 「カテゴリ−・グラント」から「ブロッ ク・グラント」へ 予算削減に伴い、州・地方政府では住 宅供給のための独自財源の確保の必 要性 →住宅トラスト・ファンド創設 リンケージプログラム:都心部におけ る民間資本のオフィス建設などに開発 負担金の拠出を求める制度( サンフラ ンシスコ市が1980年に開始) スリフトの破綻 1989年金融機関救済法により、破綻機関の処理を行う整理 信託公社( RTC)の設立。3000億ドル程の財務負担。 FHA保険、VA保証プログラムの累積赤字。GNMAは84年に 買取活動を停止。 ・HOMEプログラム ・タックスクレジット 1980年代アフォーダビリティの悪化 CDC(コミュニティ開発法人)の伸張 1992年 住宅都市開発法タイトルⅧ(連邦住宅関連企業の財 務安全性・ 健全性促進法) FNMAとFHLMCの財務状況を監視する機関( OFHEO:連邦住 宅関連企業監督局) の設立 シュ共和党 ■ビル・クリント ン民主党 1992年 HOPEⅥ:PHA管理のもと,老朽公共住宅の再開発プログラム 主な法律・制度の変遷 主な住宅金融関連制度 の流れ 主なコミュニティ開発関連 の流れ 1993年 包括予算調整法タイトルⅧ( EZ/EC) 連邦コミュニティ開発プログラム EZ(エンパワーメントソーン):大都市の衰退地 域の指定 EC( エンタープライズコミュニティ):小都市の 衰退地域の指定 主な社会情勢、施策展開 (小玉、大場、檜谷、平山)『欧米の住宅政策』(ミネルヴァ出版)、(渋谷、井村、中 により発生した事象 浜) 『 日米の福祉国家システム』 ( 日本経済評論社)等、各種資料をもとに作成 Copyright92005Value Management Institute,Inc
© Copyright 2024 Paperzz