第8回アジア・太平洋 一般溶融亜鉛めっき国際会議参加報告

第8回アジア・太平洋
一般溶融亜鉛めっき国際会議参加報告
日本鉱業協会 鉛亜鉛需要開発センター
次長 中島和隆 1.はじめに
アジア・太平洋一般溶融亜鉛めっき国際会議
(Asia Pacific General Galvanizing Conference)
は,溶融亜鉛めっきに関する最近の金属工学的研
究,プロセス技術,環境関連事項,省エネルギー,
亜鉛めっき産業動向,亜鉛めっき市場関連事項の
交流を目的とし,3年毎にアジア・太平洋各地で
開催されており,今回は8回目であった。これま
で第一回会議が台北で開催されその後,神戸,ブ
リスベン,クアラルンプール,プサン,ケアンズ,
北京で開催されてきた。主な内容は講演発表と溶
写真1:会議場ホテル前での日本側参加者
融亜鉛めっき工場の見学であり,今回は国内に溶
界中から亜鉛めっき関係者が参集していた。2日
融亜鉛めっき企業16社(能力60万 t/ 年,実生産
間の会議期間中には常時約150名が参加していた。
量30万 t)を有する台湾で開催され,台北のシン
会場の圓山大飯店は中国風の雰囲気を持つ真紅
ボルとして有名な圓山大飯店(グランドホテル)
の大型建築物で台北のランドマークになっている
10階の国際会議場で2日間の会議と続いての溶融
ホテルで,宿泊施設,レストラン,会議場および
亜鉛めっき工場見学の日程で行われた。これに加
さまざまな販売店が入居していた。なお,会場の
えて,各国から関係者一同が集合するよい機会な
隣では展示ブースが設定されており,14社が参加
ので,昨年マドリッドで開催されたインターガル
していた。
バ国際会議の時と同様に会議にあわせてアジアガ
ルバ理事会が開催された。
会議への参加人数は合計約260名で,日本から
2.日程
11月21日:14:00~18:00アジアガルバ理事会
18:30~21:30歓迎会
は13社2団体の44名が参加した。その他の国では
中国71名,台湾56名,マレーシア16名,インドネ
11月22日:会議
シア14名,シンガポール12名,オーストラリア9
11月23日:会議
名,ドイツ5名,カナダとイタリアおよびベトナ
18:30~21:30台湾溶融亜鉛めっき協会
ムから各4名,イギリスとアメリカおよびインド
主催夕食会
が各3名,ベルギーと南アフリカおよびタイが各
11月24日:めっき工場見学
2名,その他スイス,オーストリア,ブラジルか
らの参加者があり,まさにアジアを中心にして世
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鉛と亜鉛 第261号 2011年1月
めっきのシリコン活性反応である。Si は鉄鋼の
強度アップのために添加される合金成分の一つで
ある。しかし,Si が存在すると溶融亜鉛めっき
時に亜鉛の付着性に問題が発生する。Si が入る
とδ相が薄くなり,Γ相も消失するため亜鉛めっ
き層が表面から滑り落ちてしまう。これは Si 中
の電子が入ることによりΓ相が不安定になること
で発生する。シリコン含有鋼材中の Si が0.15%~
0.20%のときに鋼中の Si が析出することでζ相の
分離と亜鉛相の異常成長が起こる。これを防ぐた
めには亜鉛浴中に Ni や Ti,Mn などの遷移元素
写真2:会場の様子
を添加して三元系の T 相を形成することで防止
することができる。その結果,亜鉛浴中の亜鉛消
3.会議の内容
費を減少することができる。しかし,Si が0.34%
11月22日の朝8時30分に開会した。先ず本大会
以上では Ni の効果は不十分で,この場合は V の
会長である台湾の蔣勝彦会長の開会挨拶があり,
0.05%~0.15%の添加が大変効果的である。しか
続いて台湾溶融亜鉛鍍金協会(TGA)の陳麒文
し,V は高価なので一般溶融亜鉛めっきでは使用
理事長の挨拶,アジア太平洋一般溶融亜鉛めっき
しにくい。この欠点を改善するために Teck は
協 会(APGGA) の Barry Bebb 会 長 に よ る 歓
Zn-0.04% V-0.05% Ti 合金を開発したが,この合
迎挨拶,最後に台北市の副市長からの歓迎挨拶の
金もいくつかの技術的な問題のため幅広く普及す
後,会議に入り2日間に全部で日本からの2件の
ることはなかった。さらにシリコン活性反応に有
発表を含めて32件,延べ35人の発表があり,質疑
効な元素は30年以上前から知られている Al であ
応答が展開された。2日目の最後に C.S.Chen
る。Al は溶融亜鉛めっき時に Zn-Fe 相の成長速
氏から2013年にシンガポールで開催される第9回
度を大きく抑制する。この成果は Cominco(現
APGGC への参加誘致講演があった。
Teck 社)の時代に Si が0.42%以上の鋼材に対し
以下に発表件名と発表者および発表内容を概説
て Zn-0.042% Al 合金が開発された。その後の研
する。今回は世界最大の溶融亜鉛めっき産業に成
究では Al が0.04%~0.07%の中間であらゆるタイ
長した中国の溶融亜鉛めっき企業の実情を2005年
プの鋼材において有効なことが判明した。最近の
から国連と IZA が中国側と共同して調査した詳
対応では Al が0.03%で単純化されて一般的に使
細な報告が行われたことが注目点である。中国の
用されている。なお,溶融亜鉛めっきでめっき性
企業はダイナミックに転換を遂げている最中で
や 湯 流 れ 性 な ど の 特 性 に 有 効 で あ っ た Pb が
若々しい活力が感じられた。これに対して,日本
RoHS 指令で有毒元素として使用制限対象になっ
は成熟期を終え,老齢期を迎えているように思え
てきたため,この代替元素として Bi を添加した
てさびしく感じた。
Zn-Bi 合金を開発し,またスパングルが必要な場
11月22日(月)9:00-17:10
合はさらに Sn を0.03%以下添加した Zn-Bi-Sn 合
セッション1「午前の部」
金もオプションで開発した。
・溶融亜鉛めっき産業の新しい発展
二番目は溶融亜鉛めっき浴中の Al と Si の相互
Nai-Yong Tang(Teck Metal)カナダ
作用についてである。Si は溶融亜鉛めっきでは
一般溶融亜鉛めっきに関する調査研究を数十年
愛 憎 半 ば す る 元 素 で あ る。 一 方 で は 連 続 溶 融
間研究してきた中で得られたいくつかの知見を以
Zn-Al 合金めっきで鋼とめっき合金の反応性を向
下に述べる。一つはシリコン含有鋼材と溶融亜鉛
上させる元素としてめっき浴槽中に添加される。
鉛と亜鉛 第261号 2011年1月
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ガルバリウム合金めっきでは Si が浴中に1.5%添
加されている。またいくつかの欧州の亜鉛めっき
企業ではめっき均一性を改善するためにガルファ
ン合金めっきに Si が添加されている。反対に,
鋼の強度を改善するために故意に添加される Si
と P は溶融亜鉛めっきに悪い影響を与える。主
要な Zn と Al,Fe および Si の4元素間の相互作
用は連続溶融亜鉛めっき企業により研究されて理
解が進んだ。そこで得られた知識が一般溶融亜鉛
めっき企業にも利用されている。溶融亜鉛めっき
浴中への Al の添加により2種類の重要な金属間
写真3:発表風景
化合物,Fe2Al5と FeAl3が発生する。これらの金
属間化合物は溶融亜鉛と鋼の表面の界面で重要な
いて55% Al のガルバニウム合金めっきが完成で
インヒビター層として形成され,Fe と Zn の内
きた。
部拡散速度を制御してめっき反応を制御する。一
・2010年サッカーワールドカップにおける一般
方,鋼中や浴中に含まれる Si は2つの金属間化
溶融亜鉛めっきの経験
合物中に入り込んで Fe-Al-Si 金属化合物τ5相
Rob White(IZA)ベルギー
を形成して鋼表面に密着する。この結果,鋼表面
オリンピックのようにサッカーワールドカップ
での Fe-Al 化合物の形成が困難になり製品のめ
も大部分の地域で大規模なインフラ投資が必要で
っき層の厚みが得られなくなる。このような研究
ある。計画はホスト国が選ばれてすぐに始まった
や開発は今後も一般溶融亜鉛めっきの技術開発を
が,この面で魅力的な溶融亜鉛めっきが優先的に
するために実行されねばならない。
採用された。南アフリカでは6か所のスタジアム
三番目はめっきの腐食抵抗の研究である。初期
の新規建設と4か所のスタジアムの改修が行われ
にはめっきされた亜鉛は鉄の腐食を防止すると理
た。これらのスタジアムの屋根はガルバニウム合
解されていた。しかし,亜鉛めっき製品は腐食か
金めっきで対応したが,それ以外のスタジアム設
ら長く製品を守ることが要求されるようになって
備の大部分が一般溶融亜鉛めっき品で対応した。
腐食抵抗の研究が盛んになった。Teck で実施さ
ここでは実際のスタジアムの建設状況を詳細に紹
れた Zn-Al 合金の腐食抵抗の詳細な研究結果に
介・説明するとともに,空港や鉄道,高速道路な
よると以下のようなことが判明した。Al の添加
どのインフラも新しく建設したり,改修したりし
量が15%程度までは腐食抵抗が改善し,純亜鉛の
たので南アでは溶融亜鉛めっき会社はリーマンシ
2倍以上の腐食抵抗になる。このピークは12% Al
ョックによる世界的な金融危機にもかかわらず好
にあるが9% Al や15% Al でも同様で,ガルファ
景気を謳歌した。
ン合金めっきもこれらと遜色がない。このような
・溶融亜鉛めっき法での最新の技術改善
Zn-Al 合金めっきを行うときはフラックスも重要
であり,Teck ではこれに適したフラックスも開
発した。また12%の高 Al 合金の釜やポットはセ
ラミックスや316L のようなステンレス鋼が使用
E. Moroni(Gimeco Srl)イタリア
ここでは以下の4件の技術紹介があった。
1)生 物脱脂技術”BIO-Sys“は60℃の pH=7.5
の条件でバクテリア脱脂技術を運用している。
されている。なお,Al が15%を超えると45% Al
2)廃 塩酸(HCl)に硫酸(H2SO4)を添加して
までは腐食抵抗は下がっていき,45% Al 以降の
溶解している Fe と Zn を硫酸鉄と硫酸亜鉛
組成では新しい腐食メカニズムの観点から研究が
の固形物として取り除いて塩酸を再生する方
始まった。このメカニズムの科学的な理解に基づ
法。
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鉛と亜鉛 第261号 2011年1月
3)通 常 の 亜 鉛 め っ き 浴 に は Al が0.002% ~
見通しや足元の技術課題および市場等について総
0.004%添加されているが,密着不良や表面あ
合的に調査を行った。今回はその調査目的の背景
れ,黒色ピンプル等が発生する。
について報告を行った。このプロジェクトは2005
“HAl - Ga”は Al を0.03%~0.05%添加した浴
年5月に上記各代表者達が調印してスタートした。
と専用のフラックスで構成されており,Ni 添加
プロジェクトは IZA の指導の下 CGA が実行組織
し た 4 ~ 6 % Al 浴 や Ni 添 加 し て い な い 8 ~
として行った。
12% Al 浴と同様に湯流れのよい溶融亜鉛メッキ
・中国溶融亜鉛鍍金協会と CFC プロジェクト活
を行うことができ,浴寿命も短くなることはなか
動の紹介
った。
Chang Qifu(IZA)中国
4)6価クロムの化成処理で白錆を防止する方法
2006年に中国では一般溶融亜鉛鍍金企業は935
に代わり,アクリル樹脂フィルムで表面をこ
社あり,めっき処理量は490万 t であった。これ
する代替法“GIM-Pass”を紹介していた。
は当時から世界でトップの実績である。溶融亜鉛
・「亜鉛が子供たちを救う」 IZA の UNICEF 支
援活動
めっきは原材料やエネルギーを大量に消費する重
要な産業であるが,進んだ技術を持たない中小の
Rob White(IZA)ベルギー
企業による公害や汚染が重大な問題になっていた。
「亜鉛が子供たちを救う」の標語のもとで IZA
溶融亜鉛めっきの CP(Cleaner Production)生
が UNICEF を支援する活動を行っていることを
産を目指して,中国の溶融亜鉛めっき企業に対し
紹介した。
て CFC 調査を行い,得られた課題に対して意識
セッション2「午後の部」
改革や資金面,技術面などから解決策を処方して
・中国鋼鉄での自動車用構造部材としての溶融亜
対策を行った。
鉛めっき HSLA 鋼の開発
・CFC プロジェクトの活動 - 調査,実行可能
Kuo-Cheng Yang(中国鋼鉄 CSC)台湾
性の研究(FS)
,研究の実施(品質と環境管理)
中国鋼鉄(CSC)は自動車の軽量化や衝突改善
Rob White(IZA)ベルギー
特性および耐食性の改善要求に併せて溶融亜鉛め
中国の溶融亜鉛めっき企業に対して CFC 調査
っきされた高張力合金鋼(HSLA)を自動車用に
を行い,品質管理の重要性を訴え,ISO9001の取
開発した。結果として,欧州の自動車メーカーで
得を進めた。また,環境への影響分析を行って実
溶融亜鉛めっきされた HSLA 鋼の需要が増加し
際の環境への影響をできるだけ抑えるために経営
ている。中国鋼鉄はこの製品開発で GM とフォ
管理訓練や実際の操業改善を行って環境管理の重
ルクスワーゲン社から優秀賞を受賞した。
要性も理解させた。
・CFC プロジェクトの背景:中国の一般溶融亜
・CFC プロジェクト実証試験対象の4社の実施
鉛めっき企業の技術移転状況と需要促進活動
例の報告
Rob White(IZA)ベルギー
Zhu Linlong, Zhu Wende, Lin Yuchun,
2005 年 か ら 国 連(UN) の CFC(Common
Lau Qiangguo(IZA)中国
Fund of Commodities:国連商品共同基金)プロ
CFC プロジェクトの最初の実証試験対象企業
ジェクトの一環として IZA(国際亜鉛協会)と
として下記の4社を取り上げた。最初に経営,操
ILZSG( 国 際 鉛 亜 鉛 研 究 会 ),CSCP(Chinese
業,品質,技術,安全および環境の6項目に関し
Society for Corrosion and Protection:中国腐食
て現状調査を行い,海外の企業のデータを基準と
防 食 学 会 ) お よ び CGA(China Galvanizers
してレーダーチャートを作成して比較を実施した。
Association:中国溶融亜鉛めっき協会)が共同
次に,得られた結果から劣る項目に関して実際に
で中国の一般溶融亜鉛めっき業界と企業を援助す
改善を実施し,改善前後の比較を行って改善効果
るために,中国の溶融亜鉛めっきの現況と今後の
を実証した。以下に対象4社の報告があった。
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1)上 海永丰(Yongfeng)溶融亜鉛鍍金有限公
入を図った。
司は中国で最大の生産量を誇る民間の一般溶
①事前監査:CFC プロジェクトで企業の現状
融亜鉛めっき企業の一つである。現状調査の
を事前監査して6項目からなるレーダーマップを
結果は経営を除く5項目で低い値であった。
作成し,状況把握を行った。
実施した改善対策として①重油燃焼から電気
②完全な詳細調査:各項目ごとに進歩した最適
加熱への変更,②廃酸排水系統のシステム改
技術と詳細に対比し,目指すべき目標を定めた。
善,③フラックスの純度アップと再生システ
③工程改善:目標に向けて必要な改善対策を実
ムの導入,④亜鉛ヒュームの捕集とフィルタ
ーシステムの導入を行った。この結果,6項
目すべてで海外の企業の80%前後のレベルに
達した。なお,2010年の生産量は29万 t を見
込んでいる。
施した。
④ ISO9001:製造工程に関する ISO 規格の取
得を行った。
⑤ ISO14001:環境項目に関する ISO 取得を行
った。
2)浙 江 盛 达 集 団(Zhejiang Shengda Tower
・CFC プロジェクト市場開発報告と将来の発展
Group Co.,Ltd.)は中国で最大の鉄塔製作企
Rob White(IZA)ベルギー
業の一つで一般溶融亜鉛めっき工程を持つ企
・中国の一般溶融亜鉛めっき産業の発展と将来ト
業である。CFC 調査により仕事への取り組
レンド
み姿勢や考え方が変わり,亜鉛原単位や水資
Zhang Qifu(IZA)中国
源のムダ削減,環境やリサイクルへの投資な
CGA は CFC プロジェクトの一環で2007年に全
どを行った。電力用鉄塔の生産量は15万 t で
国を5地域に分けて一般溶融亜鉛めっきの広範な
カンボジアやベトナム,ミャンマーなどへの
調査を行った。次いで,2010年に2回目の市場調
輸出も始まった。
査を行った。ここでは Rob White と Zhang Qifu
3)広東中芝重工有限公司(Guangdong Zhongyi
両氏の発表をあわせて報告する。
Heavy Industry Co.,Ltd.)は有名な鋼パイプ
調査内容は①製販分析,②企業情報,③操業パ
と港湾設備の製造業の一つ で小さな溶融亜
ラメーターおよび④環境の4点である。中国の一
鉛めっき設備を所有している。CFC 調査の
般溶融亜鉛めっき産業市場は約50%が電力関係で,
結果は大変低い値であったが,環境面の改善
約30%が交通と土木建築関係であった。その他幅
を中心に対策をとった。
広い製品に使用されていた。2009年の中国の亜鉛
4)広東東莞銀同溶融亜鉛鍍金有限公司(Silver
生産量は436万 t,消費量は512万 t であった。中
Town Co.,Ltd.)は中クラスの一般溶融亜鉛
国には400以上の亜鉛生産企業があるが,その上
めっき専業の会社で香港系の企業である。
位10位までの企業で50%強の生産量を占めていた。
CFC 調査の結果,電気加熱への変更,フラ
不完全な統計であるが,2006年に935企業で490万
ックス再生,めっき液の再生および環境保全
t の生産量であったが,2009年には1,100企業で
への投資を行った。溶融亜鉛めっきの生産量
900万 t かそれ以上であった。亜鉛めっき釜の容
は10万 t でマカオや台湾の他,日本や韓国へ
量が200t 以上の企業が250あり,年産10万 t 以上
も輸出して好評を得ている。
の企業が25社あった。企業の形態はほぼ50%が州
・CFC プロジェクト工場経営と操業訓練
Kong Gang(IZA,南中国工科大学)中国
の経営で40%が個人,残り10%が外資(主に香港,
台湾,日本)経営であった。酸洗は93%が塩酸で,
一般溶融亜鉛めっきは技術は単純だが,コスト
6%が硫酸,両方使用が1%であった。酸の消費
コントロールの難しい業種である。このため優れ
原単位は20~40kg/ 鋼材1t 当りであった。めっ
た経営と操業システムが必要となる。中国の溶融
き釜の容量は100~200t のものがどんどん増加し
亜鉛めっき企業には以下の5段階でシステムの導
ており,500t 以上の釜が10%を占めていた。め
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鉛と亜鉛 第261号 2011年1月
っき釜の寿命は50%以上が3年以下で,13%が4
っき釜の設計を行ってきた。
年以上の寿命であった。42%の企業が石炭を燃料
溶融亜鉛めっき釜は石炭を直接燃焼する第一世
とし,手動の燃焼制御を行っていた。電力は22%
代から現在の高速燃焼システムになる第六世代ま
で,その他が軽油,重油および天然ガスを使用し
で進化してきた。この変化を推し進めてきたもの
ていた。鋼材1t 当りの燃料原単位は石炭が100
は燃料価格であった。ここでは第一から第六世代
~130kg,電力が150~160KWh,重油が30~40kg,
までの釜の燃焼システムの長所と短所について考
軽油が20~30kg であった。鋼材1t 当りの亜鉛消
察し,その変遷について述べている。
費原単位は3mm 厚以下の鋼材で7~8%,3~
11月23日(火)8:30-17:10
6mm 厚の鋼材で5~7%,6mm 厚以上の鋼材
セッション3「午前の部」
で4~6%であった。亜鉛消費量の16%が亜鉛滓
・中国の溶融亜鉛めっき産業におけるクリーン生
で8%が亜鉛ドロスになった。大部分の企業で排
産(CP)の実施経験
水処理設備は持っているが,亜鉛ヒューム捕集設
Kong Gang(南中国工科大学)中国
備はほとんど持っていない。特に小企業では古い
中国の一般溶融亜鉛めっき産業は世界最大であ
生産技術と遅れた設備を使用しており,その結果,
るが,時代遅れの技術のため資源浪費型で公害発
原料と燃料を大量に消費し,重大な公害発生企業
生や重大な汚染を発生させるものと認識されてい
として考えられており,溶融亜鉛めっきの持続的
る。一般溶融亜鉛めっきの CP(クリーン生産)
継続は困難であった。
がこの産業を持続させる唯一の方法である。IZA
今後,中国では進んだ技術を取り込み,閉鎖型
によって始められた CFC プロジェクトの実施に
の回収システムや自動操業機能,酸浄化設備,廃
より技術移転が進んだことをこの報告で紹介して
水,排ガス,廃棄物の浄化設備を有して環境保全
いる。実証試験工場でクリーン生産と操業訓練シ
とリサイクルに注力した新しい一般溶融亜鉛めっ
ステムを立ち上げ技術移転を行った。その結果,
き工場に置き換わっていくと考えられる。今,中
亜鉛損失や水,石炭の削減ができた。この手法は
国の一般溶融亜鉛めっき産業はダイナミックに変
中国全土で展開され,コスト削減で利益を得るた
化している。
めに採用された。
・溶融亜鉛めっき釜の設計における歴史的なトレ
・溶融亜鉛めっきと持続的な建築経験,欧州での
ンドとわれわれの活動範囲
成果と将来
Lalit Shahani(Precimax Engineers Ltd.)インド
Murray Cook(EGGA)ベルギー
Precimax は1962年に設立し,これまでインド
欧州の一般溶融亜鉛めっき産業が持続的な建築
や中東,アフリカ等の50工場に対して溶融亜鉛め
環境を創造することに関心を抱き,意義を見出す
ために“グリーンな建築”社会にどのように従事
してきたかを述べている。欧州では建築向けが45
%の市場を占めており,今,“持続的な創造“が
キーワードとなっている。できるだけ補修しなく
てもすむ建築,環境保全に関する投資,一般溶融
亜鉛めっきと塗料の比較などについての報告書も
出版している。なお,2012年6月10~15日にパリ
で第23回インターガルバ国際会議が開かれること
を紹介した。
・一般溶融亜鉛めっきの新技術製品
畑野剛志(田中亜鉛鍍金㈱)日本
写真4:展示ブース
約20年前に一般溶融亜鉛めっき業界で鋼構造物
鉛と亜鉛 第261号 2011年1月
23
の摩擦接合や高耐食性,環境との調和などに関し
そのためには,各工程で閉鎖型環境を達成する
て新しい技術開発の要求があった。田中亜鉛鍍金
ことのできる環境にやさしい技術の導入が必要と
はこれらの需要に対応し,以下の4件の技術を商
報告している。
品化した。
・シンクロール上への WC-Co 熱溶射被膜について
1)タ ナカ―FC:高力ボルト接合用に溶融亜鉛
Tsai-Shang Huang(CSC)台湾
めっき表面の摩擦係数を高めるためのリン酸
熱溶射は連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)で
塩処理。これにより建築コストを下げること
シンクロールの寿命を延ばすためおよび溶融亜鉛
ができた。
めっき鋼板表面の品質を改善するために使用され
2)タナカ- AZ:高耐食性を有する Zn- 5% Al
て い る。 こ こ で は SUS316に 異 な る 4 種 類 の
WC-Co 粉末を熱溶射して試験を行い,最適な組
合金めっき処理。
3)タナカ- CZ:過マンガン酸処理により亜鉛
めっき表面の銀白色を消して低明度と低光沢
成を報告していた。
・還元雰囲気の溶融亜鉛めっき線製造ラインへの
高効率で環境にやさしい技術と設備について
を有する黒い表面に仕上げる処理。
4)タ ナカ- P 4:リン酸亜鉛処理により亜鉛
Sam Cao(Tianjin Congda Galvanizing
めっき表面を安定した灰色に仕上げた建材。
Equipment Co.,Ltd.)中国
・溶融亜鉛めっき鉄筋-国際的な展望
還元雰囲気の溶融亜鉛めっき線製造ラインで環
Stephen Yeomans(ニューサウスウエールズ大
境汚染や低生産効率,高い亜鉛消費原単位などの
学)オーストラリア
問題を解決するために多くの工程に技術改善を行
鉄筋の腐食は鉄筋コンクリート建築物の耐久性
った。特に,スケール除去への鋼ブラシや還元方
の欠如の原因である。コンクリート構造物の修理
法,化学活性,誘導加熱,チューブ型炉の加熱燃
対策にかかるコストは資源の莫大な浪費につなが
焼と冷却,浸漬したセラミックス釜,多次元ふき
る。また本来リサイクルされるべきものも埋め立
取りなどを改善した結果,高効率で環境にやさし
て処分されるだけである。コンクリート中の鉄筋
いグリーン生産体制が確立できた。
の腐食リスクを最小化することが建築・土木分野
・溶融亜鉛めっき鋼板表面のストライプ欠陥の研究
に利益をもたらすことができる。この発表では,
Chaur-Chi Huang(CSC)台湾
コンクリート中の溶融亜鉛めっき鉄筋の特性や挙
連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)で生産する
動について示し,IZA の支援のもとで国際的に
ガルバニール(めっき層を完全に鉄-亜鉛合金化
その技術を広めるための教育資料を作成したこと
した鋼板)は自動車向け鋼板として重要であるが,
を報告している。特に,世界各国から溶融亜鉛め
塗装後の鋼板表面に不鮮明なストライプ欠陥(縞
っき鉄筋を採用した各分野の物件の実例集も作成
上欠陥)が発生する。ここではその不鮮明なスト
した。
ライプ欠陥を様々な方法で研究した結果を報告し
・溶融亜鉛めっきの前処理工程での環境保護設備お
ていた。
よび工場経営と操業コストの効率改善について
・持続可能な設計における一般溶融亜鉛めっき
Tsai Fu Tsai(Beston Industry Co.,Ltd.)台湾
Doug Rourke(IZA)カナダ
溶融亜鉛めっき工場の目標は環境保護設備の効
「持続可能な設計」(SD:Sustainable Design)
率を上げることと操業コストを下げることである。
はすでに単なるキャッチフレーズではなく,設計
環境保護の費用は操業コストのかなりの部分を占
や材料工程で認められた手法である。したがって,
めるが,その結果や効率は明白でない。しかし,
溶融亜鉛めっき産業においてもこれに対応するこ
環境保護を重視することが“グリーンな溶融亜鉛
とは義務である。SD は経済と環境と社会の調和
めっき工場”に結びつき,コスト削減と利益につ
が必要である。IZA がアメリカ溶融亜鉛めっき
ながる。
協
24
会(AZA:American Galvanizers
鉛と亜鉛 第261号 2011年1月
Association)と共同で溶融亜鉛めっき製品に対
なってフラックスが消耗することを防いでいる。
し て LCI(Life Cycle Inventory) と LCA(Life
しかし,中性の脱脂剤と酸洗剤を開発すること
Cycle Assessment)の手法を用いて SD 面を評価
により水洗工程を廃止することができる。またフ
した結果,溶融亜鉛めっきは経済コストが低いだ
ラックス浴の pH が下がることで3価の鉄が沈殿
けでなく,環境コストも低いことが判明した。
するが,これはろ過工程を追加して除去する。こ
・鋼構造物を溶融亜鉛めっきしたときに発生する
の結果,めっき品質を落とすことなく汚水をなく
ひずみ機構とその抑制
することが可能になる。たとえば50万 t の生産に
藤村和男(㈱デンロコーポレーション)日本
溶融亜鉛めっきの操業においては,溶融亜鉛め
対して20万 t の水が節約できる。この技術は数年
後に実現できると考えている。
っきされるワークの寸法や形,構造およびその他
セッション4「午後の部」
の要素に依存する最適状態を選択することが必要
・溶融亜鉛めっき鋼板表面のドロスのミクロ的評価
である。ここではコンピューター・シミュレーシ
Chen, Hon-Bor(CSC)台湾
ョンの解析手法により最適な溶融亜鉛めっき条件
ドロスの形態はその大きさや形態,一般溶融亜
の選び方を提案している。
鉛めっき(GI)やガルバニール(GA)鋼板のド
1)ワークを溶融亜鉛中に浸漬したとき,内部に
ロスの組成および亜鉛浴からサンプリングしたイ
急激な温度変化が発生する。最初に加熱され
ンゴットなどを特徴づけることで調査された。調
た部分と後から加熱された部分の温度差によ
査の結果,大部分のドロスは GA の裏側よりも表
りワークに熱応力が生じる。たとえば,大き
側で多くみられた。ドロスの成分には Al が高く,
な I 形状の桁鋼材のような塊状のワークが溶
ドロスの下には鉄素材と亜鉛から由来するΓ相が
融亜鉛めっきされるとき,熱分布は激しく変
薄く着いていた。ドロスの形態をいろいろ調査し
動しがちであり,ここで作られた熱ひずみは
た結果,ドロスの発生モデルを検討することがで
増加する。ねじれ防止法を研究するために,
きた。
さまざまな浸漬方法に対する弾-塑性熱応力
・持続的な生産実施による収益の増加
解析によって熱ひずみと変異を数値化した。
Bryan Cullivan(Beta Control Systems inc.,)
2)複合パネルを溶融亜鉛めっきするときに発生
アメリカ
する熱応力の減少の仕方を弾-塑性熱応力解
60年以上の間,めっき産業は製品品質における
析によって研究するために,大きな内部応力
脱脂の効果を研究している。環境への影響と資源
と変位がどのような状態であるかを数値化し,
の保存が最近注目されており,既に規制も強くな
鋼製パネルの初期温度が予備過熱で変化する
っている。今日の金属めっきは価格競争に耐える
ならばどのくらいひずみや変位を減らせるか
ために効率的な操業が必要であり,顧客が満足す
を研究した。その結果,得られた計算変位を
る品質の製品を供給する必要がある。一方,資源
実際に測定した変位と比較した。たとえば,
の最少化と廃液の少量化も行わねばならない。こ
20℃から100℃に予熱すると,25%ひずみを
れらを達成するためには優れた経営管理としっか
減少できることが判明した。
りした工程管理が必要である。効率的な脱脂コン
・水無し洗浄の標準的な一般溶融亜鉛めっき技術
Zhu Wen De(Sheng Da Group)中国
トロールが進歩することにより,品質や収益およ
び持続性を達成することができる。
一般溶融亜鉛めっきの標準的な工程は,脱脂→
多くの工学的研究により水の最適使用と同様に
水洗①→酸洗→水洗②→フラックスで行われる。
多くの効率的な脱脂法が発見された。ここでは,
水洗①はアルカリ脱脂後のアルカリ液が酸洗槽に
溶融亜鉛めっき産業において必要な最適な脱脂シ
持ち込まれることを防止し,水洗②は酸がフラッ
ステムを提案することができ,この結果,最高の
クス浴に持ち込まれて pH を下げ,鉄濃度が高く
品質を達成し,廃液の最少化ができる新しい方法
鉛と亜鉛 第261号 2011年1月
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を紹介している。
・適切な前処理による亜鉛の節約
SJuergen Kader(Stockmeier Chemie GmbH &
Co.KG.)ドイツ
ここでは一般溶融亜鉛めっきの前処理である脱
脂と酸洗およびフラックス工程の機能と重要性に
ついていろいろな実験結果を通して解説している。
特に,脱脂や酸洗後の水洗は重要であり,水洗が
ない場合は亜鉛めっきに不具合が発生することを
報告している。
・一般溶融亜鉛めっき表面のスパングルの形態と
アンチモン分離
Chun Shan Che(南中国工科大学)中国
写真5:デンロコーポレーションの展示ブース前
にて
一般溶融亜鉛めっき工程で発生するスパングル
た。しかし最近では環境面から6価クロムが危険
は連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)で発生する
物質に認定されて RoHS 規制で使用が規制される
スパングルに比べて表面粗さが粗くなり,大きな
ようになった。このため CSC はクロメート処理
表面分離が発生する。これは一般溶融亜鉛めっき
に劣らない特性を持つ新しいクロメートフリー処
後の冷却速度が連続めっきに比べて非常に遅いこ
理を開発した。この新しいクロメートフリー処理
とに起因している。ここでは一般溶融亜鉛めっき
した亜鉛めっき鋼板は耐食性だけでなく耐熱性や
表面のスパングルの形態とアンチモン分離につい
塗布性,電気伝導性,溶接特性などに優れており,
て実験を行った。一般溶融亜鉛めっきの浴組成は
近い将来普及すると紹介している。なお,会場か
Zn-0.05% Al-0.2% Sb で450℃×60秒の条件でめ
らの質問で,この新しい処理の成分に希土類が使
っきを行い,得られた3種類のスパングル中のア
われているかどうかとの質問があり,希土類は使
ンチモンの分離状態の表面観察と物理分析による
用していないがバナジウム(V)を使用している
形態分析を実施して解析を行った。
との回答があった。
・中国鋼鉄(CSC)の溶融亜鉛めっきラインで
・CSC の CGL めっきラインにおける新型バッフ
の自動表面検査装置(ASIS)について
ル板の開発と設置
Ming-Hao Liu(CSC)台湾
Chih-Sheng Hu(CSC)台湾
伝統的な表面検査装置に比べて ASIS は多くの
Baffle 板(じゃま板)は溶融亜鉛めっきライン
利点がある。特に,その場でコイルすべての表面
でコイルのエッジ品質の改善とエアーワイピング
検査ができ,そのデータは保存されているので,
によって発生するノイズの減少のため使用されて
再調査もできる。また製造スタッフと検査スタッ
いる。大部分のじゃま板はコイルのエッジとの隙
フ間や顧客に対しても共通認識を図ることができ,
間がない状態で使用され,じゃま板の送り速度も
製品品質をさらに高めることができる。ここでは
ラインスピードと一致していない。さらに接触型
ASIS の原理や CSC の第一 CGL ラインに設置し
のじゃま板は一方向に独立して動くことができな
た状況および得られた検査データの解析結果につ
い。これを解決するために,CSC とその協力企
いて報告している。
業は共同で非接触型じゃま板を開発した。このじ
・CSC のクロメートフリー亜鉛めっき鋼板の開発
ゃま板には,新しく開発したセンサーがコイルエ
Tsun-Ren Lee(CSC)台湾
ッジを検知し,これによってより効果的に,自由
クロメート処理はコストが安く,防錆特性も高
自在に板とエッジのギャップを制御している。こ
いので溶融亜鉛めっき製品に幅広く使用されてき
のじゃま板は CSC の第一 CGL ラインのエアーナ
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鉛と亜鉛 第261号 2011年1月
イフの構造に合わせて設計した。じゃま板は機能
検査を実施後,2010年6月から実際にラインで稼
働し始めた。
・近代的な材料総合管理-仮想工場
Philipp Roth(INGENIA GmbH)オーストリア
ここでは一般溶融亜鉛めっき工場における近代
的な材料総合管理として最適な材料の流れ,自動
材料輸送システム,安全な作業領域,コンピュー
ターシュミレーション,進化した物流試験システ
ム,ソフトウエアの導入,製造最適化,品質制御
と経営情報などを取り上げて紹介していた。
4.アジアガルバ理事会
写真7:2013年の第9回 APGGC 招致演説
シアおよびブルネイの三カ国が共同してシンガポ
アジアガルバの理事会は本会議前日の11月21日
の14時から,以下の議題のもとに会議が開催され
た。
・去年のマドリッドでのインターガルバ国際会議
ールで開催することに決定した。
5.工場見学
工場見学は台北から車で約1時間の桃園県郊外
にある TGA の陳理事長の「力鋼工業股份有限公
時に開催された理事会の議事録確認
・各国の市場動向,現状の課題と今後の見通しに
司」と本大会の蔣会長の「臺鍍科技股份有限公司」
ついて各国からの最新状況紹介のためのプレゼ
観音工場を訪問した。
ンテーション
5-1)力鋼工業股份有限公司
力鋼工業股份有限公司は1964年に前身の太陽工
・APGGA 事務局からの報告
a)APGGA ケーススタディ CD のプレゼンテ
業公司を創立し,1974年に現会社を設立,1983年
に日本の巴コーポレーションと技術提携した。工
ーション
b)APGGA のウエブサイトの更新
場は鉄塔工場と鋼構造物工場の後の防食工程とし
・次回アジアガルバ会議の開催国
て溶融亜鉛めっき工場を有し,従業員は約200名
以上について議論が行われた。2013年の次回ア
ジアガルバ会議の開催国はシンガポールとマレー
である。
また鉄塔以外の製品としては墜落防止設備や追
尾式の太陽光発電設備の架台なども製造していた。
めっき工場の釜は12.5mL ×1.8mW ×2.0mD で
主に鉄塔を中心にピーク時には1,500t/ 月処理し
たが,現在は台湾の電力網も整備されたため,約
半分の稼働量とのこと。なお,台湾の鉄塔はアン
グル鉄塔で,日本のようなパイプ鉄塔ではない。
工場内の製品設計はすべて JIS 規格を採用してい
る。工場で使用する亜鉛地金はすべて住友金属鉱
山の1t ジャンボ塊を50t/ 月使用とのこと。
以下は工場見学時にヒアリングした内容である。
・めっき処理量は19t/hr。
・めっき浴の操業温度は446~448℃で,加熱は
写真6:アジアガルバ理事会の様子
LPG を使用
鉛と亜鉛 第261号 2011年1月
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写真10:臺鍍科技玄関の歓迎横断幕
写真8:めっき処理風景
・めっき浴には蒸留亜鉛に Al を0.003%添加して
観音工場は16.0mL ×1.8mW ×3.0mD の大釜と
使用。Al は浴面の酸化防止と光沢および湯流
3.0mL ×0.7mW ×1.0mD の小釜を有している。
れ性の改善効果のため。
大釜は H 型鋼や鋼管,鋼構造物を中心に6,000t/
・めっき工場のクレーンオペレータは女性を採用。
月,小釜はネジやナット,小物めっき品を中心に
・釜寿命は約10年。予備に2釜分を注文。
500t/ 月の生産を行っている。3年前から製品は
(新日鐵の材料で納期は半年かかる)
海外への輸出もあり,RoHS 指令に対応するため,
・作業員としてタイとベトナムから26名採用。
使用する亜鉛地金(3工場全体で約400t/ 月)は
・めっきの処理加工賃は20円 /kg 以下(6NT $/
全量99.995%以上の電気亜鉛(豪州産 SHG)に切
kg)とのこと。
り替えて対応している。
・中国大陸からはさらに安いめっき処理製品が流
入し,最近では液晶生産工場の柱などに採用さ
れている。
以下は工場見学時にヒアリングした内容である。
・
「小釜」:操業温度は510~530℃と高く,訪問時
の浴温度も520℃で操業。
5-2)臺鍍科技股份有限公司・観音工場
臺鍍科技股份有限公司は1977年に日本の ISK
株式会社と合弁でスタートし,現在,観音(桃園),
高雄および台南の3工場を有し,従業員は185名
である。
・酸洗は常温で塩酸を使用し,鋳鉄の場合はフッ
酸を使用する。
・ワークはめっき浴に短時間浸漬し,取り出して
すぐに遠心分離機にかける。
・製品のめっき仕上り状態は大変良く,日本向け
写真9:追尾式の太陽光発電設備
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鉛と亜鉛 第261号 2011年1月
写真11:小釜の操業風景
輸出品はプロの目からみて合格。
・小釜の板厚は50mm →25mm に減肉すると交換
し,寿命は1年。
・「大釜」:操業温度は訪問時に448℃で稼働。
・電気亜鉛地金に Al を0.003%添加。
・脱脂は60℃以上の NaOH を使用。
・酸洗浄は40~65℃の硫酸を使用。
・大釜の板厚も50mm →25mm に減肉すると交換
し,寿命は7年。
・工場作業従事者はすべてタイとフィリピン人で
あり,作業手順や看板も英語とタイ語で表示。
写真12:小物めっきの製品例
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