平成26年度事業の概要 平成26年度においては、薬価改定、診療報酬改定により未妥結減算制度の導 入やジェネリック医薬品使用促進策の推進、消費税増税、薬価改定の頻度に関す る議論の再燃等、業界に影響を及ぼす施策がいくつも実施され、業界を取り巻く 環境に大きな変化があった。 平成26年度における当連合会活動の概要は以下のとおりである。 1.医療用医薬品市場 (1)流通改革の推進 (流通改善懇談会) 平成26年度においては、流通改善懇談会(以下「流改懇」という。)の下に 設けられた3つのワーキングチーム会合と流改懇がそれぞれ2回開催された。 7月2日に開催された第21回流改懇では、バーコード表示の推進と平成25 年度における流通改善の取組状況が議題とされ、当連合会からは新バーコードに ついては流通量の多い品目から新バーコード表示を行うよう要望した。25年度 における流通改善については、単品単価取引が順調に進展し、薬価調査の信頼性 確保に向けて大きく前進した状況を報告した。一方、市場構造が大きく変化し、 カテゴリーチェンジが起こっており適正利益の確保が難しい状況にあることを報 告し、価値に見合った仕切価設定と市場環境の変化に応じた仕切価の見直しを要 望した。 12月9日に開催された第22回流改懇では、平成26年度の診療報酬改定で 導入された「未妥結減算制度」の流通への影響と、「薬価調査・改定の頻度変更 の場合における流通への影響」を中心に議論された。 (未妥結減算制度) 平成26年度の診療報酬改定において、すべての保険薬局及び200床以上の 病院を対象として、毎年9月末までの妥結率が低い(50%以下)場合は薬価調 査の障害になるため、診療(調剤)報酬を一定程度減算する未妥結減算制度が導 入された。 また、この制度導入により卸売業者が取引において医療機関等に対して優位な 立場にならないよう、流通上の適正化策として保険薬局等を対象に卸売業者に関 する相談窓口が厚生労働省医政局経済課に設置された。 これについて3月下旬から4月上旬にかけて全国10地区での経済課による制 度説明会が開催された。制度の対象とされた医療機関等は毎年10月中に妥結率 の実績を地方厚生局へ報告することが必要となり、妥結率の根拠となる資料を卸 売業者が提供することとなった。このため、会員各社が提供する証明資料の統一 様式を作成し、医療関係団体へ制度の説明と併せて周知を行った。また、会員各 社においては、200床以上の保険医療機関(約2,700軒)及び保険薬局(約 55,000軒)に繰り返し、制度の周知を図るとともに、早期妥結を念頭にお いた価格交渉を行い、その結果を妥結率の根拠となる資料として提供した。 未妥結減算制度の導入により長期未妥結が改善されるとともに遡及値引きがな いことを取引当事者間で合意できたことは評価できるが、一方で短期間の価格交 渉となったため単品単価交渉の停滞や、特定卸、特定品目、特定期間のみの部分 妥結によって減算対象となることを回避する医療機関等が出るなど、薬価調査の 信頼性確保に資するという制度導入の趣旨から見て不適切な対応も見られた。 また、短期間で正確かつ漏れなく妥結を証明する書類を作成し提供するという 膨大な作業は、会員各社にとっては価格交渉に加えて極めて大きな負担となるた め、流改懇で意見発表するとともに、厚生労働省へ制度の対象となる調剤薬局の 範囲の限定、提供資料の簡素化等について改善要望を行った。 (薬価改定の在り方) 経済財政諮問会議等において薬価の毎年改定議論が行われ、平成26年6月に 閣議決定された骨太の方針2014において、「薬価改定の在り方について、そ の頻度を含めて検討する」とされた。薬価改定は卸経営に甚大な影響を及ぼすた め、これまでも毎年改定には反対の立場を取ってきたが、改めて毎年改定に反対 の声明を発するとともに、厚生労働大臣へ要望書を提出した。また、薬業政治連 盟と連携しロビー活動を行った。 12月の流改懇では薬価改定の頻度変更については、メーカーの高仕切価と医 療機関等の薬価差要求の間で価格交渉が難航し、一次売差マイナスの改善が進ま ない、単品単価取引が後退する、診療報酬と同時改定が行われない場合は、薬価 差益の増大などにより卸経営に甚大な影響を及ぼすおそれがあること等を説明し 理解を求めた。 (川上取引の改善) 流通改善については、単品単価取引の推進、取引条件の事前明示と有効期間を 定めた覚書の締結など川下取引においては一定程度進展してきたが、製薬メーカ ーとの間で問題としている一次売差の改善、仕切価水準の見直しなどの川上取引 については、ほとんど進展をみていない。このため、流改懇ワーキングチーム会 合と併せて、内外の製薬メーカー団体と頻繁に意見交換を行い改善要望した。 (厚生労働省との意見交換会) 平成19年から開催されてきた厚生労働省と当連合会との意見交換会は、今回 より「厚生労働省と医薬品・医療機器流通業界との意見交換会」として、当連合 会の他、日本ジェネリック医薬品販社協会、日本医療機器販売業協会の三団体合 同で平成27年3月30日に開催された。厚生労働審議官を始め、医政局長、大 臣官房審議官(医療保険担当)、経済課長等の厚生労働省幹部の出席の下、三団 体から要望等を説明した。当連合会からは未妥結減算ルール、薬価の毎年改定、 後発医薬品の流通等について要望事項を説明し意見交換を行った。 (2)消費税の円滑な転嫁 平成26年4月から消費税率が8%へ引き上げられた。医療機関等との価格交 渉時に税抜価格を提示することとし、その税抜価格は薬価から消費税相当額を控 除した薬価本体価格からの値引率(額)で表し、価格交渉を行うことを公正取引 委員会に表示カルテルとして届出を行い、10月より開始した。 表示カルテルの実施に当たっては、事前に日本医師会等関係団体に説明すると ともに、会員各社の社内教育用資材としてパンフレット「消費税と薬価の制度に ついて」を作成し、配布した。 (3)情報化の推進 医療用医薬品の新バーコード表示はトレーサビリティや医療安全の確保、流通 の効率化を進める上において必須であり、製薬メーカーとの新バーコード表示推 進ワーキングチーム会合において、流通量の多い品目から優先的に表示するよう 要望するとともに、日本製薬団体連合会に要望書を提出した。 なお、当連合会会員各社においては新バーコード表示の利活用を図るため、新 バーコード対応リーダーの入れ替えを進めてきたが、物流センターではほぼ全て が対応可能な状況になった。 (4)医薬品の適正管理 医薬品の適正管理の基礎となるJGSPについて、保管中の医薬品の紛失や盗 難等による事故を未然に防止し、併せて従事者のコンプライアンスの一層の向上 を図るため、一部改訂を行った。 また、厚生労働省が国際的な「医薬品査察協定及び医薬品査察協同スキーム(P IC/S)」に加盟し、同組織より「医薬品の物流に関する基準(GDP)」が 加盟国に提示されたことから、厚生労働省からJGSPとの比較検討を行うよう 指示を受け、検討を開始した。 2.大衆薬市場 (1)大衆薬卸部門経営効率調査の実施 2年毎に実施している大衆薬卸部門経営効率調査を行い、平成27年2月9日 開催の卸薬粧セミナーで調査結果を発表した。大衆薬卸部門における月商5千万 円以上の15社から平成25年度実績数値について回答を得た。平成10年度調 査では10%程度あった売上総利益率は、次第に減少し2年前の調査では7%台 まで下がったが、今回、若干持ち直し8%台になった。販売管理費率も若干増加 したが営業利益率はプラスに転じた。各社の営業損益を見ると黒字企業数が15 社中8社となり、過去10年では初めて赤字企業数を上回った。返品率は年々改 善して今回初めて3%台となった。一方、物流センターフィーが増加傾向にあり、 卸経営を圧迫しており、適正な利益確保のため改善に向けた取組強化が今後の課 題である。 (2)消費税増税への対応 消費税率8%への増税の影響により大衆薬の売上が落ち込み、売上が回復しな い。今後予定されている再増税に向けて、日本チェーンドラッグストア協会、日 本OTC医薬品協会と連携し、OTC医薬品の積極利用を進め、セルフメディケ ーションを推進するため、平成29年4月の再増税の際にはOTC医薬品につい て、軽減税率の適用を求めていくこととした。 (3)大衆薬関係団体との意見交換 日本チェーンドラッグストア協会が主催するセルフメディケーション推進委員 会や異業種交流委員会等に参加し、大衆薬市場の活性化や商慣行の改善に向けた 情報交換を行った。また、初めて日本薬剤師会幹部との意見交換会を開催し、大 衆薬卸の経営実態、商慣行の改善方策、消費増税に向けた取組等について意見交 換を行った。 3.危機管理流通 平成26年8月30日に実施された南海トラフ大地震を想定したDMAT事務 局と関連業界との連携訓練や、平成27年1月23日に実施された政府主催の新 型インフルエンザ等対策訓練に参加し、情報連絡体制の確認を行った。 3月6日に開催された厚生労働省医政局経済課の職員を対象とした大規模災害 対応研修会では、経済課及び日本医療機器販売業協会を交えて過去の震災の教訓 を生かしたその後の取り組みについて意見交換を行った。 また、3月11日に政府主催の「東日本大震災4周年追悼式」が開催され、卸 連を代表して鈴木会長が参列した。 昨年3月に発足した宮城県医師会が主宰する災害医療チーム「JMAT宮城」 には、宮城県医薬品卸組合がチームメンバーとなり、3月22日に開催された研 修会では、村井国際委員会委員長が出席し、災害時における医薬品調達の流れや 最近の卸各社の対応例を紹介するとともに、国際委員会で調査中の米国における 災害発生時の情報の一元化システムの有用性について発表を行った。 4.国際交流 (1)IFPW(国際医薬品卸連盟) 今回で第20回目となるIFPW総会は、平成26年10月20日、21日に 中国・北京で開催され、日本からは同伴者も含めて41名が参加した。世界19 カ国から300名以上の参加があり、「医療の中心におけるパートナー」をメイ ンテーマに2日間にわたり熱心な討論が行われた。ビジネスプログラムでは渡辺 紳二郎氏((株)アトル社長)と福神雄介氏(アルフレッサ(株)執行役員経営 企画部長)が、医療における日本卸の貢献、医薬品の流通改善や今後の市場予測 などについて講演を行った。また、IFPW理事によるパネルディスカッション では中北馨介氏(中北薬品(株)社長)が「流通の未来と卸売業界のグローバル 化」について、メーカーとの連携・協力が不可欠であることなどを述べ、いずれ の講演も会場から高い評価を受けた。なお、総会に先立ち行われた理事会におい て、日本代表理事が別所芳樹氏(卸連顧問)から鈴木賢氏(卸連会長)に交代す ることが全会一致で承認された。総会の閉会挨拶において、マーク・パリッシュ IFPW代表から平成28年の次回総会は英国・ロンドンで開催することが報告 された。 (2)アジア・パシフィック医薬品流通フォーラム IFPW北京総会の期間中、日本・中国・韓国の代表者会議を行い、平成27 年10月16日に韓国・仁川において、「外資製薬メーカーの低マージンへの対 応」をテーマとして第2回フォーラムを開催することが決定された。 5.調査・研究、広報・教育研修 (1)調査・研究 会員各社の平成25年度決算数値を対象として43回目の経営実態調査を実施 し、回答のあった62社のデータを集計のうえ、8月7日記者発表を行った。 医薬品売上高は8兆7,933億円(うち医療用医薬品は8兆4,726億円) で前年度比4.28%増加。売上総利益率は6.80%(前年度比0.05ポイ ント上昇)、販売管理費率は5.92%(前年度比0.20ポイント改善)、営 業利益率は0.88%(前年度比0.25ポイント改善)であった。 大規模自然災害発生時の医薬品供給における課題と対応について、米国におけ る実態を実地に調査するなど国際比較研究を進めた。 会員各社が薬学生の実務実習に協力する際、医薬品流通と医薬品の適正管理等 について、均質に教育を行い、薬学生が医薬品流通の重要性を学ぶための「実務 実習薬学生の受入協力におけるガイドラインと留意点」をとりまとめ、会員各社 へ周知した。 (2)広報活動 会報誌「月刊卸薬業」については、医薬品流通の総合誌として購読者に興味を 持って読まれるよう常に誌面の充実に努めている。平成27年3月現在の発行部 数は2,160部となっている。今年度は再び薬価の毎年改定論議が始まったこ とから、薬価の毎年改定について当連合会としての活動等を含めて最近の経緯を 整理して掲載した。また、IFPW北京総会の前には総会参加予定者の参考とし て、中国の医薬品流通事情について4回にわたり掲載した。 インターネットホームページは、原則として毎月更新し最新情報を掲載してい るが、中医協情報については随時掲載し、タイムリーに情報提供している。平成 26年度におけるアクセス回数は年間約65,800回に上った。 (3)各種セミナーの開催等 平成26年5月23日の公取協と共催で実施した独禁法研修会は、「企業不祥 事の原因とその対策について」をテーマに元名古屋高等裁判所長官中込秀樹氏を 講師として迎え、会員卸、関係団体から117名の参加があった。 7月7日、8日に開催したヒルトップセミナーは、4月に薬価改定が行われた ことから「薬価制度改革の影響を考察する-診療報酬改定を踏まえて」をテーマ に中医協委員等を講師に招いて開催し、57名の参加者があった。 11月13日に開催した卸連セミナーは、4月の薬価改定、新薬創出加算制度 の試行継続、後発医薬品の使用促進、消費増税等、医薬品市場へ大きな影響を及 ぼす施策の実施を背景として、「変貌する医薬品市場と流通問題」をテーマに開 催し、368名の参加者があった。 平成27年2月9日開催の卸薬粧セミナーでは平成25年度大衆薬卸部門経営 効率調査結果を発表した。会員卸・賛助会員、関係団体等から100名の参加が あった。 平成27年3月に医薬品の不正流通を未然に防止するため、研修DVDを作成 ・配布し、会員各社へ全従業員を対象としてコンプライアンス研修の実施を求め た。 6.行政・関係団体との連携 (1)行政 全国7カ所において地区会議を開催し、厚生労働省から経済課長他担当官を招 き医薬品流通を中心として意見交換を行った。また、流改懇に出席し医薬品卸売 業界としての必要な意見を述べた。 (2)卸勤務薬剤師会・卸公取協・薬政連 当連合会の関連団体である日本医薬品卸勤務薬剤師会、医療用医薬品卸売業公 正取引協議会及び日本薬業政治連盟と連携し、各種セミナー、講演会等を開催し た。また、それぞれが推進する各種事業を支援し、当連合会の目的達成に努めた。 (3)メーカー団体 日本製薬工業協会、PhRMA(米国研究製薬工業協会)及び EFPIA(欧州製薬団 体連合会)との間で医薬品流通に関する意見交換会を開催した。 また、大衆薬の分野においては、日本 OTC 医薬品協会、日本チェーンドラッグ ストア協会等との情報交換を行った。 第4 平成26年度事業報告の附属明細書 平成26年度事業報告には、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施 行規則」第34条第3項に規定する附属明細書「事業報告の内容を補足する重要 な事項」は存在しないので作成しない。
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