CTGE法の微生物生態学への応用 - Bio-Rad

Nippon
Bio-Rad Laboratories
2000 JUL.
目 次
●CTGE法の微生物生態学への応用 …………………………………………………………………………………1
●遺伝子銃による生体への遺伝子導入:
原虫感染症に対するDNAワクチン及びサイトカイン遺伝子治療への応用 …………………………………3
●医薬品精製プロセスで使用されるセラミックハイドロキシアパタイト ………………………………………7
●Quantum Prepプラスミド精製キットによるLB及びTB培地からのプラスミドの精製 …………………9
●BioLogic DuoFlow システムによるタンデムカラムクロマトグラフィー ………………………………10
●モレキュラーイメージャーFXによる生後発達期のマウス小脳における遺伝子発現の解析………………13
●モレキュラーイメージャーFXを用いた植物ゲノム解析………………………………………………………15
CTGE法の微生物生態学への応用
東京都立大学 大学院 理学研究科 生物科学 微生物生態学研究室 石井浩介、福井 学
に普及し、応用されていることを意味している。本稿は
DGGE法の微生物生態学への利用例を簡単に紹介する。
DGGE法は、元来染色体DNAのポイントミューテーシ
ョンの検出のために開発されたが、微生物生態学ではそ
の高い分離能力を利用して、環境中などの微生物群集を
解析するために用いられている。具体的には環境中(例
えば土壌)から直接抽出した核酸をGCクランプ付きユ
ニバーサルプライマー(標的遺伝子として、16Sリボソ
ームDNAが頻繁に用いられている)でPCR増幅する。そ
のPCR産物をDGGE法によって分離することによりその
環境中に存在する微生物をバンドとして認識することが
できる。さらに、バンドを切り出してシーケンス解析す
ることによって、微生物由来DNAフラグメントをDNA
データーベース上の相同性検索を行ったり、系統解析す
ることが可能である。これらの結果、微量のサンプルか
らその環境中に存在する(PCR可能な)微生物の遺伝子
を培養過程を経ずに検出できる。培養できない微生物の
遺伝子でも検出可能な点でクローニングと似ているが、
DGGEではバンドとして可視化できるためにその環境中
にどれくらいの種類の微生物が存在するのかを容易に判
断することが可能である。図1は生ゴミのコンポスト化
過程におけるバクテリアの遷移をDGGEで解析した結果
はじめに
自然界には様々な微生物が存在しているが、その生態
を調べるために従来、培養による検出や顕微鏡観察が行
われてきた。しかし微生物、特にバクテリア(Bacteria)、
アーキア(Archaea)は形態学的な特徴に乏しいため、
それらの分類は非常な困難を伴う。また、微生物代謝機
能は多様であるため培地による検出は限界がある。例え
ば微生物を計数する場合、顕微鏡法と、平板培地法との
間に通常10倍以上の計数値の差が生じる。そのため、こ
れらの問題点を克服する一つのアプローチとして分子生
物学的手法を利用した微生物の検出が近年急速に広まっ
た。DGGE(微生物生態学ではCTGEを主に利用するが、
DGGEと区別せずにDGGEと呼んでいる)法の微生物生
態分野への最初の応用は1992年バルセロナ(スペイン)
で開催された第6回微生物生態学シンポジウムにおいて
オランダ人研究者Gerard Muyzerによって行われた。そ
れ以来、DGGE法はこの分野において強力な手段として
認識されている。1998年ハリファックス(カナダ)で開
かれた第8回微生物生態学シンポジウムではDGGEおよ
びTGGE法を利用した発表が約80件あった。このことは、
この方法が短期間のうちに微生物生態分野において急速
1
ニップルをつけた
パスツールピペット
20%
ゲル中のバンドが光って見える
押しつける
変
性
剤
濃
度
パスツールピペット先端
DGGEゲル
拡大
吹き出す
60%
エッペンチューブ
0
4
9
13
20
24 28
Days
32
38
43
45
DGGEゲル
図1. エチジウムブロマイド染色したDGGEゲルの反転画
像の例(コンポスト化過程における細菌群集の遷移。
左から右に向かってコンポスト化過程が進行してい
る)
。
ゲル中のバンドが
光って見える
図2. アクリルアミドゲルからのDGGEバンドの
切り出し方。(3)
(エチジウムブロマイド染色DGGEゲルの反転画像)で
ある(1)。コンポスト化が進むにつれてバクテリア群集構
造が変化していることがDGGEバンドのプロファイルの
変化から読みとれる。このように、DGGEゲル上のバン
ドの位置や本数の比較により、生息場所、培養前後、時
間経過等のサンプル間での微生物群集構造の比較が容易
に可能である。
通常ゲルからのDNAの抽出を行った後に再びPCR増幅を
行う。ポリアクリルアミドゲル中のDNA抽出のために、
いくつかの会社から市販されているキットを利用でき
る。ここで紹介するのはそれらを使わずに、切り出した
ゲルをそのままPCRするという方法である。図2に示し
た手順にしたがい、滅菌したパスツールピペットをゲル
に押しつけて切り出し、数回滅菌水で洗う。その後ゲル
を含んだチューブにPCR反応溶液を加えPCRを行う。プ
ライマーセットはDGGEで用いたものと同一のもの(GC
クランプ付き)が好ましい。なぜならば増幅後に再度
DGGEを行う事によって、その増幅産物の単一性を確認
できるからである。他のプライマーセットを用いる場合
は単一性の確認の後に行うべきである。
PCRテクニック
微生物生態学でDGGE解析のための標的遺伝子は、主
に16SリボソームDNAである。リボソームRNAは全生物
にわたって保存性の高い部分と、変異の高い部分の両方
をかね備えた遺伝子である。したがって、使用するPCR
プライマーを変えることで、微生物群集を系統的に幅広
く検出することも、ある特定の微生物群に焦点を絞って
検出することもできる。例えば、バクテリア全体にわた
って調べる場合には、バクテリア(真正細菌)用プライ
マーを用いてPCRを行う。その結果、微生物群集に占め
る割合の高い微生物(真正細菌)を種類に関係なく検出
できる。一方、ある特定の微生物(例えば硫酸還元菌)
を検出する場合は、その微生物に特異的な(例えば硫酸
還元菌(SRB)用)プライマーを使用してPCRを行う(2)。
この場合には微生物集団に占める硫酸還元菌の割合が低
くて、真正細菌用プライマーでは検出できない場合でも
検出できる可能性が高い。このようにプライマーを使い
分けることによって様々な系統的レベルでの解析が可能
である。
微生物生態学において利用する際の注意点
このようにDGGE法は微生物生態学において強力なツ
ールの一つであるが、いくつかの欠点もある。我々は主
に16SリボソームDNAを標的にしてPCR-DGGEを行って
いるが、この方法で現在までに我々が認識している注意
点を手順の段階を追って紹介する。
第一に、微生物からの核酸の抽出効率の問題である。
微生物の細胞壁は多様であるため、壊れやすい種類の細
胞壁構造を持つ微生物の核酸が選択的に抽出される可能
性がある。また、DNAの回収率が極端に低いと再現性の
低下の原因となる。細胞破壊効率と核酸抽出効率を把握
する必要がある。次に、PCRの問題である。この方法に
より、微量のサンプルから培養不可能な微生物でさえも
検出が可能になり、また、より選択的なプライマーセッ
トを用いたり、ネステッド(nested)PCRにより検出感
度をあげることが可能である(4)。その反面、DNAフラグ
(6,7)、
メントのキメラの生成(5)や増幅のバイアス(bias)
そして、リボソームDNA(rDNA)を標的にする際には
微生物によりコピー数が異なる(8)、といったことに注意
ゲルからのDNA抽出と再増幅
次にDGGEバンドを再増幅するための簡便な方法を紹
介する。DGGEのバンドの塩基配列決定を行うためには、
2
Bio-Rad Laboratories
な微生物生態学の概念が創り出されることが期待される。
を払う必要がある。
最後に、DGGE自体の限界である。DGGEによって、
∼500bpのGCクランプ付きDNA断片であれば、理論上す
べての点変異のうち95%は分離できる(9)。5種類のバク
テリア混合物から抽出した核酸を用いてDGGE解析した
場合、注目する種類の集団がその群集の1%以上を占め
るならば、エチジウムブロマイド染色による確認が可能
である(10)。もちろん、この解像度は細菌種、PCR産物の
量、ゲル濃度の幅や、ゲル染色の違い等により変化する。
バンド確認後、ゲルはバンドを切り出して、その塩基配
列決定や、DGGEバンドへのオリゴヌクレオチドプロー
ブハイブリダイゼーション等への応用ができる。また、
異なる配列を持つDNA断片でも同じ位置にバンドが観察
される可能性や、異種複合体(heteroduplex)の生成に
より、実際よりも多くのバンドが検出される可能性もあ
る。これらの他に、今後、新たな問題点が提起されるか
もしれない。また、現在の問題点は今後の改良により解
決されていくことであろう。
文献
(1) K. Ishii, et al. The 99th General Meeting Abstracts.
1999. Chicago: American society for microbiology.
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(8), 2943-2951
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(8), 3233-3241
(5) W. Liesack, et al., Microb. Ecol., 1991, 21191-198
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64(10), 3724-3730
(7) M. T. Suzuki, et al., Appl. Environ. Microbiol.,
1996, 62(2), 625-630
(8) V. Farrelly, et al., Appl. Environ. Microbiol., 1995,
61(7), 2798-2801
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(9), 3131-3145
(10) G. Muyzer, et al., Appl. Environ. Microbiol., 1993,
59(3), 695-700
以上簡単に微生物生態学における利用法を示したが、
今後、様々な微生物群集をDGGEで解析した結果を、活性
値や環境条件等のデータを統合することによって、新た
遺伝子銃による生体への遺伝子導入:原虫感染症に対する
DNAワクチン及びサイトカイン遺伝子治療への応用
徳島大学医学部寄生虫学教室 酒井 徹、姫野國祐
分子生物学の発展に伴い生体へ遺伝子を導入・発現さ
せることにより目的の遺伝子機能をin vivoで解明する又
は遺伝子導入技術を臨床治療に応用する研究が生命科学
の分野を問わず現在行われている。生体への遺伝子導入
の手法としてはウイルスベクターやリポソームを用いる
方法があるが、ベクターの病原性、毒性あるいは煩雑な
操作が必要などの点で改良すべき問題点も残っている。
上記以外に生体への簡便な遺伝子導入法として遺伝子銃
を用いる手法があり、その概要及び応用例について解説
したい。
するものである。その基本原理があたかもけん銃に類似
しているため遺伝子を打ち込む銃として遺伝子銃と呼ば
れている。従来この遺伝子導入法は細胞壁があり遺伝子
の導入が困難な植物細胞の形質転換法として用いられて
きた1)。しかしながらその遺伝子導入の簡便性及び高い導
入効率から動物個体への遺伝子導入技術の一手法となっ
てきている。遺伝子銃システムは複数の遺伝子導入が可
能でありさらに常圧下での打ち込みが可能であることか
ら動物個体の特定臓器への遺伝子導入が可能である2、3)。
そのためこの遺伝子銃による遺伝子導入システムはDNA
ワクチンや遺伝子治療をはじめとする様々な分野に応用
されている。
1.遺伝子銃による遺伝子導入の概要
2.遺伝子銃を用いたマウスへの遺伝子導入
遺伝子銃とは金粒子やタングステンなどの重金属パー
ティクル(微小粒子)にプラスミドなどの遺伝子を付着
させ、その遺伝子/パーティクル複合体をヘリウムガス
により高速に加速し生体の組織あるいは細胞に直接導入
遺伝子銃による遺伝子導入効率は遺伝子/パーティク
ル複合体を加速するヘリウムガス圧、コーティング時の
PVP (Polyvinylpyrrolidone) 濃度、導入に用いるパー
ティクル及びDNAの量などにより左右される。我々は
はじめに
3
直接宿主に導入することにより病原体抗原に対する免疫
応答を惹起させ感染抵抗性を獲得させるものである。従
来の免疫方法に比べDNAワクチンの持つ特徴及び利点と
しては(1)抗原ワクチンでは誘導が困難な細胞傷害性
T細胞(CD8 + T細胞)の誘導ができる(2)DNAを接種
するため弱毒病原体株接種で時として認められる副作用
がない(3)抗原ワクチンに比べ精製・調製が簡便であ
り熱に対しても抵抗性である(4)他の遺伝子との共導
入あるいはワクチンベクターの工夫(宿主細胞で発現さ
せる抗原を分泌型あるいは細胞内に留まらせる)ことで
宿主免疫応答を増強及そして任意のMHC class II/MHC
class I依存型免疫応答の制御が可能などがあげられる。
現在DNAワクチンにおける遺伝子導入法としては、発現
プラスミドを生理食塩水などに溶解し直接筋肉接種を行
う方法と遺伝子銃を用いる方法が主に用いられている。
遺 伝 子 銃 を 用 い る と 筋 肉 接 種 法 に 比 べ 約 1/ 100か ら
1/1,000程度のプラスミドで同程度の免疫応答を誘導でき
るとされている4)。近年、DNAワクチンに関する研究が
報告されつつあり、ウイルス、細菌及び原虫感染症での有
効性が動物実験で明らかにされている。
原虫感染のなかでもマラリア感染は世界中で8億人以
上が罹患さらに年間200万人以上がその感染のために死
亡している地球上第1級の感染症である。現在、宿主防
御免疫からのエスケープ機構が巧みなマラリア感染に対
する有効なワクチンは皆無である。我々はマラリアワク
チン開発の基礎研究として赤血球期のマラリア原虫に発
現し有力なワクチン候補抗原の一つであるセリンリピー
ト抗原(SERA)遺伝子を用いマウスにDNA免疫の実験
を行った。遺伝子銃を用いSERA DNA免疫をすることに
より免疫マウス血清中にSERA特異的抗体が出現した
(図3)。またSERA DNA免疫による免疫応答を増強そし
て制御する目的でinterferon-γ(IFN-γ)
、interleukin
(IL)-4、IL-12及びGM-CSFといったサイトカイン遺伝子
を共導入した場合の影響について検討を行った。いずれ
Helios Gene Gunを用い主にマウス皮膚へ遺伝子導入を
行っており、マウス皮膚への遺伝子導入至適条件につい
て検討した結果について示す(図1)。ヘリウムガス圧
及びPVP濃度について様々な条件を設定してその条件下
でChloramphenicol acetyltransferase (CAT) 発現プラ
スミドをマウス皮膚に遺伝子導入を行った。PVP濃度に
ついてはヘリウム圧にかかわらず0又は0.05mg/mlで
CAT遺伝子の発現が0.1mg/mlに比べ高い傾向が認められ
た。ヘリウムガス圧については200psi及び300psiでCAT
遺伝子の発現が高かった。またDNAをコーティングした
金粒子を導入した皮膚を組織学的に検討してみると金粒
子は皮膚上皮及び真皮に局在していた(図2)。
20
10
0
100 200 300 400 500
(PSI)
30
20
10
0
100 200 300 400 500
CAT concentrations (ng/mg protein)
30
PVP (0.1 mg/ml)
PVP (0.05 mg/ml)
CAT concentrations (ng/mg protein)
CAT concentrations (ng/mg protein)
PVP (0 mg/ml)
30
20
10
0
100 200 300 400 500
(PSI)
(PSI)
図1. マウス皮膚への遺伝子導入条件の検討
PVP濃度及びヘリウム圧がマウス皮膚への遺伝子導入効率にあ
たえる影響について検討を行った。遺伝子銃を用いCAT発現プ
ラスミドを様々な条件下で遺伝子導入を行い24時間後のCAT遺
伝子の発現を測定した。
OD (415 nm)
0.8
図2. マウス皮膚への遺伝子導入後の金粒子の局在
遺伝子銃を用いマウス皮膚への遺伝子導入後、皮膚における金
粒子/プラスミド複合体の局在を組織学的に検討を行った。金
粒子は皮膚表皮及び真皮層に局在している。
SERA
Control
0.6
0.4
0.2
0
2
4
6
8
Weeks after immunization
3.DNAワクチンへの応用
図3. SERA DNA免疫による特異抗体の誘導
遺伝子銃を用いてSERA発現プラスミドを2週間間隔で3回マ
ウス皮膚に導入し経時的にSERA特異的抗体をELISAを用い測
定した。
DNAワクチンとは病原体抗原遺伝子を動物細胞内で発
現できる発現プラスミドに組換え、その構築したDNAを
4
Bio-Rad Laboratories
Control
SERA
SERA + IFN-γ
IgG
0.4
0.3
0.2
Parasitemia ( x 104 /ml)
(B)
1.5
(C)
IgG2a
IgG1
OD (415 nm)
OD (415 nm)
0.5
(A)
OD (415 nm)
0.6
500
SERA + IL-4
SERA + GM-CSF
SERA + IL-12
1
0.5
1
0.5
Control
IL-12
400
300
200
*
* **
100
0
0.1
10
0
0
0
200 600 1800 5400
40 120 360 1080
200 600 1800 5400
Dilution (1/ n)
Dilution (1/ n)
Dilution (1/ n)
20
25
30
35
図6. IL-12遺伝子導入よるクルーズトリパノソーマ感染防
御効果
図4. DNA免疫により誘導される特異抗体におけるサイト
カイン遺伝子の影響
クルーズトリパノソーマ感染マウスに遺伝子銃を用いIL-12発
現プラスミドを導入し、経時的に血中に出現するクルーズトリ
パノソーマの数を測定した。IL-12遺伝子群は原虫数の低下が
認められ、IL-12遺伝子導入により感染抵抗性が増強した。
SERA発現プラスミドとサイトカイン(IFN-γ, IL-4, GM-CSF
又は IL-12)発現プラスミドを共導入することによりSERA特
異的IgGレベルの上昇が認められた(A)。さらにIFN-γ又はIL12遺伝子の共導入によりTh1型免疫応答の指標である特異的
IgG2a レベルの上昇が著明に認められた(B)。
瘍に対し治療効果があることが実験動物レベルで明らか
になっている。Yangらは遺伝子銃を用いIL -12遺伝子を
マウスに導入し悪性腫瘍に対する治療実験を行った。そ
れによると腫瘍細胞をマウスに接種したのちIL -12遺伝子
を導入することにより腫瘍の増殖が抑制され、またある
種の腫瘍株においては腫瘍の消失が認められた 6)。我々
はIL -12発現プラスミドを遺伝子銃によりマウスに導入し
原虫感染症に対する抵抗性が増強するか検討を行った。
遺伝子銃によりIL -12発現プラスミドを導入することによ
り皮膚導入局所にIL -12蛋白の発現が認められた(図5)。
シャーガス病の病原体であるクルーズトリパノソーマを
感染させたマウスにIL -12発現プラスミドを導入した結
果、感染後血中に出現するクルーズトリパノソーマの数
がコントロールに比べ有為に減少しており原虫感染症に
対する治療効果が認められた7)(図6)。
のサイトカイン遺伝子を共導入した場合もSERA特異的
抗体価の上昇が認められた。さらに1型ヘルパーT細胞
(Th1)の免疫応答の指標であるIgG2aレベルは特にIFNγ及びIL-12遺伝子共導入で高いことからこれらのサイト
カイン遺伝子はDNA免疫による免疫応答をTh1型に制御
したことを示唆している(図4)5)。これらの結果より
サイトカイン遺伝子共導入はDNAワクチンによる免疫誘
導を増強及び制御する手法の一つである事が示された。
4.サイトカイン遺伝子治療への応用
IL -12はTh1細胞の分化誘導、リンパ球の細胞傷害活性
及びNK細胞活性増強など様々な作用をもつ生理活性物
質である。これまでの研究でIL -12は様々な感染症及び腫
5.まとめ
500
IL-12 (pg/mg protein)
15
Days after infection
遺伝子銃を用いて行った原虫感染症に対するDNAワク
チン及びサイトカイン遺伝子治療の結果を簡単に紹介し
た。遺伝子銃を用いた生体への遺伝子導入法は他の手法
に比べ煩雑でなく簡便であることからDNAワクチン又は
遺伝子治療以外の分野にも広く応用されるものと思われ
る。
400
300
200
100
謝辞
本稿で紹介した研究は大阪大学微生物病研究所堀井俊宏
博士、大阪大学医学部宮崎純一博士・新田能朗博士との
共同研究である。
0
IL-12
Control
図5. 皮膚組織へのIL-12遺伝子導入によるIL-12蛋白の発現
遺伝子銃によりIL-12発現プラスミドをマウス皮膚に導入24時
間後、導入部におけるIL-12 p70蛋白の発現をELISAにより測定
をした。
5
文献
1. Birch, R. G., Franks, T. : Development and optimization of microprojectile systems for plant genetic transformation. Aust. J. Plant. Physiol., 18: 453-469, 1991.
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response by coinoculation of cytokine expression plasmid. Parasitol. Int., 48: 27-33, 1999.
2. Yang, N.-S., Burkholder, J., Roberts, B., Martinell, B.,
et al. : In vivo and in vitro gene transfer to mammalian
somatic cells by particle bombardment. Proc. Natl.
Acad. Sci. USA, 87: 9568-9572, 1990.
6. Rakhmilevich, A. L., Turner, J., Ford, M. J., McCabe,
D., et al. : Gene gun-mediated skin transfection with
interleukin 12 gene results in regression of established primary and metastatic murine tumors. Proc.
Natl. Acad. Sci. USA, 93: 6291-6296, 1996.
3. Cheng, L., Ziegelhoffer, R. P., Yang, N.-S. : In vivo promoter activity and transgene expression in mammalian
somatic tissues evaluated by using particle bombardment. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 4455-4459, 1993.
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Gene gun-mediated delivery of IL-12 expression plasmid protects from infections with intracellular protozoan parasites, Leishmania major and Trypanosoma
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4. Pertemer, T. M., Roberts, T. R., Haynes, J. R. : Influenza virus nucleoprotein specific immunoglobulin G subclass and cytokine responses elicited by DNA vaccination are dependent on the rote of vector DNA delivery.
J. Virol., 70: 6119-6125, 1996.
医薬品精製プロセスで使用される
セラミックハイドロキシアパタイト
旭光学工業
(株)
医用機器事業部
小川哲朗
水部分を持たず、膨潤収縮しないため、尿素など変性剤、
界面活性剤、有機溶剤の併用も可能であるため溶解しに
くい膜タンパクの分離に威力を発揮する。
更にCHTの特徴としてCa10(PO4)6(OH)2という化学
式で示される表面の構造がハイドロキシアパタイト固有
の分子構造であり、常に一定であるということがあげら
れる。表面に各種官能基を導入したポリマーやシリカ系
担体は合成工程や反応工程の差が吸着特性に微妙に影響
するため、ロットやメーカーにより選択性が異なること
がある。ハイドロキシアパタイトの結晶構造および、そ
の中のリン酸イオン、カルシウムイオンの規則的な配置
は分子レベルで一定であるため、過去の膨大な文献デー
タを適用することができるという長所を有する。
当然、粒子サイズ、比表面積、細孔構造など二次構造
の違いにより、キャパシティ、溶出時間、耐久性などが
若干シフトすることがあるが、その挙動は予測可能であ
る。以下、実際の使用例とプロセス開発に役立つヒント
について紹介する。
1.はじめに
1993年にBio-Radと旭光学がパートナーとなり、マク
ロプレップセラミックハイドロキシアパタイト(以下、
CHTと略)をプロセスクロマトグラフィー用担体として
ワールドワイドに供給を開始してすでに7年が過ぎた。
CHTはハイドロキシアパタイト微粒子を高温で焼結した
もので、セラミック人工骨の製造技術を応用することに
よって開発された。CHTはバイオゲルHTなどの従来の
板状結晶状ハイドロキシアパタイトに比べて優れた分離
能、粒子強度、耐久性、再現性、ロット間再現性を有し
ていることが認められ、急速に欧米を中心とする医薬品
メーカーの製造工程に採用が広まった。またセラミック
の長所である耐熱性、対アルカリ性、無毒性が滅菌、洗
浄、再生工程のバリデーションに有利に働いた。現在、
注目すべき応用領域として、ワクチン、抗体、タンパク
製剤、プラスミドDNAの精製工程があげられる。
分離のメカニズムはリン酸イオンに基づく陽イオン交
換的が支配的であるがカルシウムイオンとの陰イオン交
換作用も共存するため、両性イオン交換体として働き、
酸性、中性、塩基性の種々のタンパク質や核酸も含む広
範囲の荷電物質を等電点分離する機能を有する。また疎
6
Bio-Rad Laboratories
2.プロセスでの使用実績
3.小型カラムのプロセス開発への応用
1991年にCHTがFDAのドラッグマスターファイルに登録
されてから欧米の医薬品メーカーに徐々に採用されてき
た。当時、旧タイプのハイドロキシアパタイトを使用して
いたプロセス担当者はCHTの特徴である、高流速かつ低背
圧、再現性、充填の容易さ、耐久性、高分離能を高く評価
し、研究開発段階での新規採用や既存精製工程に於ける担
体変更にCHTの採用を開始した。
プロセスで使用される担体は当初、操作性、背圧の面
で有利な粒径80μmの製品が選択されることが多かった
が、近年は40μmの担体の占める比率が徐々に増加して
おり、分離能が重視される傾向にある。これはポンプ、
カラム等のプロセスクロマトグラフィー関連装置の進歩
も寄与していると考えられる。また発売当初はセラミッ
クタイプの担体の操作は初めてというユーザーが殆どを
占めており、充填方法、溶出バッファーの選択、洗浄、
滅菌バリデーションなどに関する基本的な問い合わせが
頻発した。例えば「10リッターカラムによるパイロット
スケールは問題なかったが、60リッターにスケールアッ
プしたら耐久性が半分以下になった。理由は再充填の際
に金属スコップでカラム内の担体を掻き出したため、損
傷し微粒子が生じたためであった。」といった事例であ
る。
その後Bio-Radと弊社技術陣が連携してユーザーの技
術サポート体制を強化した結果、問題が発生することは
希となり、多くのユーザーが短期間でスムースに前臨床
段階までスケールアップに成功している。表-1に近年登
録された米国特許に見るCHTの使用例を示す。
研究段階で精製プロトコールの開発を迅速に効率よく進
めることが求められている。またプロセススケールの精製
工程において分画フラクションを迅速に分析するいわゆる
プロセスモニタリングが必要な場合がある。通常2μmま
たは10μmの担体を充填した高性能HPLCカラムが用いら
れることが多いが、培養上清などのクルードな試料の精製
において不溶性微粒子や、培地成分、可溶化剤などの影響
によりカラム内部の目づまり、非特異吸着成分の蓄積など
予想困難な原因により高価なカラムが劣化する場合があ
る。対策として、プロセスで使用する20μm以上の担体を
充填したカラムを利用する方法があげられる。CHTは球
状セラミックビーズで比重が大きいため、シリカ担体と同
様乾式のタッピング充填が可能である。
4mm×30-100mm程度の充填カラムに目的に応じて選
択したCHT担体を充填し、適当なタンパク質試料のグラ
ジェント溶出パターンを標準化しておけば良い。(図1,
図2)このカラムは製造用CHT担体の受入検査等にユー
ザーが利用することもできる。また廉価な充填カラムと
して、エコノパックカートリッジ(CHTタイプII 20μm
が充填されている)をHPLCシステムに組み込む方法も
ある。通常エコノパックカートリッジはルアーロック接
続で低圧クロマトシステムで使用されるが、別売りの
HPLC用の1/16インチ押しネジ用接続アダプターを両端
に装着することにより、操作性の良いHPLCシステムを
用いたグラジェント溶出が可能となる。(図3)これら
のカラムは担体のサイズが20μm以上であるため、高流
速でも背圧は殆ど無視できるため、5分程度のグラジェ
ントで標準タンパクを分析することも可能である。
表-1
PAT. No Title 出願人
内容
6,020,182
Subunit respiratory syncytial virus vaccine
preparation (RSウイルスサブユニットワクチンの調製)
Connaught Laboratories Limited
150リッターのバイオリアクターでVERO細胞を培養し、RSウイルスを増殖した。濃縮した
ウイルスを2M尿素で洗浄後、1%TritonX-100で可溶化し、CHTタイプIIのカラムにロードし、
開始緩衝液:1mMリン酸緩衝液, pH 6.8, 50 mM NaCl, 0.02% Triton X-100、溶出緩衝液:1
mMリン酸緩衝液, pH 6.8, 400 mM NaCl, 0.02% Triton X-100を用いて融合(F)タンパク、結
合(G)タンパク、マトリックス(M)タンパクをワンステップで同時精製した。従来のレク
チンカラム法で問題であった溶出リガンドの混入がなくなり、ワクチン品質が向上。
6,013,466
TNF alpha. converting enzyme
(TNF-α変換酵素)
Immunex Corporation
ヒト単球樹立細胞の膜を1%オクチルグルコシドと10mMtris-HCl(pH8)で可溶化し抽出し
た腫瘍壊死因子(TNFα)変換酵素(TACE)の精製にCHT タイプII 40μmを使用。陰イオン
交換カラム、CHTカラム、ゲルろ過カラムを組み合わせて精製。
6,001,636
Isolated agarase enzyme from flavobacterium SP.
strain NR19, cloned genes therefor, and expression
thereof in transformed host cells
Promega Corporation
海洋バクテリアであるflavobacterium SP. strain NR19のアガロース分解酵素アガラーゼを精
製した。直径9cmのアミコン製カラムに2リッターのCHTを充填。400mMのリン酸カリウム
緩衝液で洗浄後、1mMの同緩衝液で平衡化、100ml/minの流速で培養上清を通液し、非吸着
成分としてアガラーゼを得た。
5,965,389
Production of GAD65 in methylotrophic yeast
ZymoGenetics, Inc.
メチロトローフ酵母の培養により発現したグルタミン酸脱炭酸酵素(Glutamic acid decarboxylase:GAD65)を含む上清をアニオン交換カラムQ-Sepharoseで精製後、還元剤と界面
活性剤を含むリン酸緩衝液で透析しCHTカラムで夾雑タンパク質と分離した。アニオン交換
カラム後、吸着バッファー濃度を高めて、GAD65を非吸着成分として精製する方法も述べら
れている。
70gのNTHi細胞で発現したインフルエンザウイルス表面のNucA蛋白質および全細胞抽出物を
5,955,596
NucA protein of Haemophilus influenzae and the 含む培養上清を透析後、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、(pH 8.0)で平衡化した 25mlの
CHTカラム(80μm)で濃縮分離した。さらにアニオン交換カラムで精製し、SDS-PAGEで
gene encoding that protein
単一バンドを示すNucAタンパク(分子量63kD)が2.5mg得られた。
American Cyanamid Company
7
Gradient: 0% to 75%B in 15 min
Optimizing Gradient Condition on 20um
Hydroxyapatite Column
15
10
5
Column:
PENTAX Hydroxyapatite Column
SH0410C(4x100mm, Ceramic
Hydroxyapatite 20μm)
Eluant:
A= 10mM Sodium Phosphate(pH6.8)
B= 400mM Sodium Phosphate(pH6.8)
Flow Rate: 0.5ml/min.
Pressure: 3kg/cm(45bar)
Sample:
1. Bovine Serum Albumin,
2. Myoglobin, 3. Lysozyme,
4. α-Chymotrypsinogen A,
5. Cytochrome-c
5ul of sample containing 1mg/ml of
each protein
Detection: UV 280nm
Rntion Time
図1. CHT(20μm)を乾式充填した汎用ステンレスカラム
(4×100mm)によるタンパク質分離例
Column
Elution
Sample
CHTの医薬品製造プロセスへにおける使用状況、特許
状況について簡単に述べた。また小型カラムのプロセス
開発、監視への応用可能性について紹介した。企業にお
ける実際の詳細な使用例は特許や文献で公開されつつあ
るが、まだごく一部でしかも肝心なパラメーターは企業
秘密として明らかにされていない。しかし、使用実績は
年々確実に増加しておりCHTの有効性、安全性に関する
理解が今後も深まることが期待される。
2.5ml/min( 900cm/hr)
, Gradient Time=6min,
Pressure=13bar
5.0ml/min(1800cm/hr)
, Gradient Time=3min,
Pressure=25bar
9.0ml/min(3250cm/hr)
, Gradient Time=1.5min, Pressure=40bar
1.5
1
0.5
#3
2
#2
4
#1
2
4.まとめ
: 4.0 x 35mm
: 10mM to 400mM sodium phosphate(pH6.8)
in 1.5 min.(90 sec)Linear Gradient
: BSA, Lysozyme, Cytochrome-c
1
Run #1:
Run #2:
Run #3:
図3. HPLC用アダプターを装着したエコノパックカートリ
ッジ(CHT 20μm タイプII)
図2. CHT(80μm)を乾式充填した汎用ステンレスカラム
(4.6×35mm)によるタンパク質高速分離例
第2回Hydroxyapatite Conference開催のお知らせ
第1回は1998年フランス、リヨンでハイドロキシアパタイトの基礎か
ら応用まで活発な討論が行われました。企業の研究者から工業的応用に
ついての発表も行なわれ、新しい形のcoferenceとして好評でした。第
2回のconferenceは所を変え、サンフランシスコで開催されます。今回
もhotな討論が期待されています。
First announcementがございますのでご希望の方は下記までご連絡下
さい。
日本バイオ・ラッド
ラボラトリーズ㈱
ライフサイエンスグループ
プロセスクロマトグラフィー担当 末広
Tel:03-5811-6271
Fax:03-5811-6272
8
Bio-Rad Laboratories
Quantum Prepプラスミド精製キットによる
LB及びTB培地からのプラスミドの精製
by Gabriella Armin of Bio-Rad US
はじめに
目的
近年、遺伝子診断、遺伝子治療の分野では多くの研究
が行われ急速な進歩をとげています。これらの研究の中
で用いられるDNAの精製・分離も種々の方法が報告さ
れ、ready to useのキットも多数販売されております。
バイオ・ラッド社はタンパク質、核酸精製・分析の分野
でリーダーとして多くの製品を提供しており、分子生物学
の研究者から多くの要望や情報をいただき、DNA精製キ
ットでも幅広い製品群を揃えております。その中心に位置
しているのはQuantum Prepプラスミド精製キットです。
培養液のプラスミド精製に及ぼす影響をQuantum
PrepとQ社のMiniプレップキットで比較を行った。
材料及び実験方法
プラスミド:pGem3
培養:DH5α細胞をLuria-Bertani(LB)およびTerrific Broth(TB)で培養し、各々1.5mlを精製に使用した。
プラスミド精製:それぞれのキットで指示された方法
に従った。
DNA定量:分光光度計により、260nmの吸光度を測定
し換算した。
このキットを使用することで、自動化蛍光シークエン
シング、トランスフェクション、DNAサブクローニング
あるいは制限酵素処理に適したDNAを卓越した純度で調
整することが可能です。Quantum Prepキットは以下の
ような特徴を有し、全てのロットが厳密に検査され高品
質を保っていますので、常に高い再現性を示します。
結果および考察
Quantum Prep MiniキットとQ社Miniプレップキット
とを用い、LB及びTB培養液からプラスミドDNAの精製
を行った結果を図1に示す。
図1に示されるようにQuantum Prep Miniプレップキ
ットを使用することでLBからもTBからも、高い回収率
で高純度のプラスミドDNAを回収することが出来た。
すなわち、プラスミドDNAの回収量は、LBの場合に
はQuantum Prepキットが10.80μgであったのに対しQ社
キットでは9.18μgとわずかな差であったが、TBの場合
にはQuantumが15.80μgであったのに対しQ社では5.13
μgであり、TBからの回収量はQ社の3倍以上高かった。
Quantum Prepの特徴
①Quantum Prepプラスミド精製キットは珪藻土をDNA
吸着剤として使用しているため(特許)、高い純度のDNA
が高い回収率で得られます。なぜなら、この珪藻土の骨
格はDNAに特異的な結合部位の数が非常に多く、3次構
造でDNAに結合するため、他社で使用している陰イオン
交換体や2次構造で結合するシリカを内蔵した膜吸着剤
とは比較にならない高い選択性と吸着量を示します。
②Quantum Prepキットを使用することによって、他の
製品で精製した場合、効率よく回収することが困難な
Terrific Broth(TB)のような培養液からもDNAを精製
することが出来ます。
③Quantum Prepキットはスピンカラム法を採用してい
るためプラスミドDNAを調整する際の時間が大幅に短縮
されます。カラム法では調整に時間が掛かり、カラムの
目詰まりなどが起きますが、スピンカラムは担体に結合
したDNAの洗浄と溶出が迅速に効率よく行われます。
④Quantum Prepキットでは、Birnboime and Doly 1)に
よって報告されたアルカリ溶解法を採用しています。細
菌をアルカリ溶解した後中和し、遠心分離されたプラス
ミドDNAは、高い塩濃度で担体に吸着し、低い塩濃度の
バッファーあるいは水で溶出されます。
図1.
plasmid DNA Yield(μg)
Plasmid DNA Isolation Yields
9
20
Q社
Quantum Prep
15
10
5
0
LB
Media
TB
Reference
1) Birnboim HC, Doly J,
A rapid alkaline extraction procedure for screening
recombinant plasmid DNA, Nucleic Acids Res 24, 151323(1979)
このように、Quantum Prepプラスミドキットは短時
間でしかも培養液を問わず、高い回収率でプラスミドの
精製が可能であった。
BioLogic DuoFlow システムによる
タンデムカラムクロマトグラフィー
日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ
アプリケーション
通常、クルードなサンプルから目的成分を精製する場
合、いくつものステップ(カラムクロマトグラフィー)
を行う必要がありますが、クロマトグラフィーとクロマ
トグラフィーとの間に脱塩などのサンプルの処理を行わ
ずに、次のクロマトグラフィーに移行できる場合があり
ます。また、抗体精製など、アフィニティークロマトグ
ラフィーを含む系などは、2種類のクロマトグラフィー
で終了する場合もあります。
バイオラッドの生体成分精製クロマトグラフィーシス
テム、BioLogic DuoFlowシステム(およびHRシステム)
では柔軟なバルブデザインを生かし、2つのクロマトグ
ラフィーを連続して行うタンデムカラムクロマトグラフ
ィーが可能です。
今回は、BioLogic DuoFlowシステムを用いたタンデム
カラムクロマトグラフィーの例を紹介いたします。
タンデムカラムクロマトグラフィー流路図
図1−1.
AVR7-3
Position 1
AVR7-3
Position 2
4
1
7
A
保存用
エタノール
B
H2O
NaOH
カラム1用
Aバッファー
2
3
H2O
SV5-4
カラム2用
Aバッファー
カラム1用
Bバッファー
3
カラム2用
Bバッファー
1
2
4
1
SV5-4
3
2
5
6
7
4
AVR9-8
3
UV/Cond
ディテクター
H2O
5
4
SV5-4
カラム1用
Aバッファー
SVT3-2
フラクションコレクター
カラム1用のバッファーでサンプルのインジェクション
(□内流路図)と溶出を行います。
図2.
AVR7-3
Position 3
A
H2O
SV5-4
カラム1用
Aバッファー
カラム2用
Aバッファー
B
5 6
4
1
保存用
エタノール
AVR7-3
Position 1
5
6
7
2
H2O
SV5-4
3
カラム1用
Bバッファー
カラム2用
Bバッファー
AVR9-8
7
4
3
2
1
カラム2用
Aバッファー
B
2
3
3
H2O
SV5-4
カラム1用
Bバッファー
カラム2用
Bバッファー
AVR9-8
2
1
サ
ン
プ
ル
ル
ー
プ
カラム2
カラム1
NaOH
7
4
1 8 7
9
2
6
3
UV/Cond
ディテクター
4
5
SVT3-2
フラクションコレクター
目的成分を含む溶出時間を指定して、SVT3-2バルブによ
り、カラム2用のサンプルループに充填します。
AVR7-3
Position 2
サ
ン
プ
ル
ル
ー
プ
5 6
7
4
3
2
1
サ
ン
プ
ル
ル
ー
プ
カラム2
カラム2
カラム1
NaOH
A
保存用
エタノール
5 6
4
1
1 8 7
9
2
6
AVR7-3
Position 1
5
6
7
カラム2
カラム1
AVR7-3
Position 1
サ
ン
プ
ル
ル
ー
プ
5 6
5
6
7
図1−2.
AVR7-3
Position 1
1 8 7
9
2
6
3
UV/Cond
ディテクター
4
5
サンプルループよりカラム2にサンプルをインジェ
クション後(□内流路図)、カラム2用バッファー
で溶出を行い、最終的にフラクションコレクターで
回収します。
SVT3-2
フラクションコレクター
10
Bio-Rad Laboratories
実験1
ゲルろ過クロマトグラフィーで分離した目的成分を含むフラクションをカラム2(UNO Q1)用サンプルループに充填
し、連続してイオン交換クロマトグラフィーで分離を試みた。
サンプル:イオン交換クロマトスタンダード(Cat. No.: 125-0561)
Myoglobin(17KD, pI6.9), Conalbumin(77KD, pI4.9), Ovalbumin(45KD, pI4.5),
Soybean Trypsine Inhibitor(17.5KD, pI4.5)
カラム1:Macro-Prep 100/17(ゲルろ過カラム)(8×300mm)
カラム2:UNO Q1(陰イオン交換カラム)(Cat. No.720-0001; 7x35mm)
流速:カラム1、カラム2ともに1ml/min
カラム1用バッファー:10mM Sodium Phosphate, pH7.8
カラム2用Aバッファー:10mM Sodium Phosphate, pH7.8
カラム2用Bバッファー:10mM Sodium Phosphate, 1M NaCl, pH7.8
図3.
図4.
0.300
100.0% Buffer B
O
6
溶出時間(カラム1、単位:min)
8 10 12 14 16 18 20 22 24
KD
250
150
100
75
50
37
0.250
0.200
0.150 50.0
25
15
0.100
A
B
0.050
C
0.000
図5.
0.0
カラム2へ
ゲルろ過クロマトグラフィー
−0.050
00:00:00
AU
強陰イオン交換クロマトグラフィー
00:30:00
01:00:00
Hr:Min:Sec
図3. 最初の30分間のゲルろ過クロマトグラフィーの12分から19分のフラクション
(7P)をカラム2用サンプルループに充填し、30分目からの強陰イオン交
換クロマトグラフィーで分離を行った。
図4. ゲルろ過クロマトグラフィー部分のフラクションの電気泳動結果。Oはオリジ
ナルサンプル。上の数字はフラクションナンバー(図3の「カラム2へ」部分)
。
図5. 図3中、A、B、C部分(各2フラクション分)を泳動。Oはカラム2用サン
プルループに充填したサンプル。
O
A
B
C
KD
250
150
100
75
50
37
25
15
結果
ゲルろ過クロマトグラフィーでではMyoglobin, Conalbumin, Ovalubuminの3成分は分離が不十分であったが、これら
3成分を含む部分を一度サンプルループに入れ、UNO Q1カラムで分離を行った結果、きれいに3成分を分離することが
できた。従来はゲルろ過クロマトグラフィーのフラクションを一度回収し、改めてUNO Q1カラムにインジェクションし
クロマトグラフィーを行ったが、この系を用いることで、2つのクロマトグラフィーを連続して、全自動で行うことが可
能である。
11
実験2
近年、ハイドロキシアパタイトの応用例として、免疫グロブリンの精製が数多く報告されているため、セラミックハイ
ドロキシアパタイトカラムを用い、分離例としてゲルろ過クロマトスタンダードに含まれるγ-globulinの精製を試みた。
サンプル:ゲルろ過クロマトスタンダード(Cat. No.; 151-1901)
Thyroglobulin(670KD, pI4.5), γ-globulin(158KD, pI5.1), Ovalbumin(44KD, pI4.6),
Myoglobin(17KD, pI6.9), Vitamin B-12(1.4KD, pI4.5)
カラム1:UNO Q1(強陰イオン交換カラム)(Cat. No.720-0001; 7x35mm)
カラム2:Bio-Scale CHT2-I(セラミックハイドロキシアパタイトカラム)(Cat. No.751-0021; 7x52mm)
A Buffer For Column1:10mM Sodium Phosphate, pH7.8
B Buffer For Column1:10mM Sodium Phosphate, 1M NaCl, pH7.8
A Buffer For Column2:10mM Sodium Phosphate, pH7.8
B Buffer For Column2:400mM Sodium Phosphate, pH7.8
図6.
0.0400
1
5 10
100.0% Buffer B
75.0
0.0250
0.0200
溶出時間(カラム1、単位:min)
13
14 15
16
17 18 19
O
フラクション ナンバー(カラム2)
3
4
5
6
7
8
9 10
50
37
50.0
25
0.0150
0.0100
O
KD
250
150
100
75
0.0350
0.0300
図7.
15
25.0
0.0050
0.0000
−0.0050
0.0
カラム2へ
強陰イオン交換クロマトグラフィー
00:00:00
AU
00:30:00
ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー
01:00:00
Hr : Min : Sec
図8.
01:30:00
図6. 最初の50分の強陰イオンクロマトグラフィーの12分から19分のフラクション
(7P)をカラム2用サンプルループに充填し、50分目からのハイドロキシ
アパタイトクロマトグラフィーで分離を行った。
図7. 強陰イオンクロマトグラフィー部分のフラクションの電気泳動結果。Oはオリ
ジナルサンプル。上の数字はフラクションナンバー(図6の「カラム2へ」部分)
。
図8. 図6上の数字(フラクションナンバー)の電気泳動結果。Oはカラム2用サ
ンプルループに充填したサンプル。
KD
250
150
100
75
50
37
25
15
結果
γ-globulinを含むフラクションにはOvalubuminが含まれている(図7)が、この部分を含むフラクションをハイドロキ
シアパタイトカラムに自動でアプライした。γ-globulin以外の成分はハイドロキシアパタイトカラムに吸着せず、リン酸
ナトリウムバッファー濃度を上昇させたところ、γ-globulinのみが溶出された(図8)。
まとめ
今回の2つの例は、ともにクロマトグラフィー用スタ
には、このタンデムカラムクロマトグラフィーを利用で
ンダードを用いた分離例ですが、すでにDEAE Affi-Gel
きます。そのほか、Bulletin 2026にありますようにアフ
Blueとハイドロキシアパタイトカラムを用いたIgGの精
ィニティークロマトグラフィーとその他の手法の組合せ
製例をBulletin 2026でご紹介しております。
にも応用が可能です。
この方法を用いた他の応用例としましては、疎水クロ
BioLogic DuoFlowシステムおよびHRシステムは最大
マトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィー、イオン
7つ(フラクションコレクターバルブ含む)のバルブを
交換クロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィー
コントロールでき、また、それぞれのバルブの使用方法
などの塩溶出クロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグ
を自由に設定できるため、このタンデムカラムクロマト
ラフィーの組み合わせが考えられます。また、イオン交
グラフィーが可能になります。
換クロマトグラフィーとハイドロキシアパタイトクロマ
BioLogic DuoFlowシステムを用いて、連続した2つの
トグラフィーなど、前に行ったクロマトグラフィーで溶
クロマトグラフィーを全自動で行うことができるため、
出したサンプルを直接次のカラムにアプライできる場合
時間とコストの削減が可能になります。
12
Bio-Rad Laboratories
モレキュラーイメージャーFXによる生後発達期
のマウス小脳における遺伝子発現の解析
理化学研究所 脳科学総合研究センター 分子神経形成研究チーム
佐藤 明・中村 浩・定方哲史・関根友紀子・白石陽子・鏡 良弘・古市貞一
がある。
本稿では、モレキュラーイメージャーFXを用いて、
FDD法による生後発達期のマウス小脳における遺伝子発
現の解析例を紹介する。
はじめに
小脳皮質の神経回路形成は、マウスでは生後3週間で
基本的な枠組みが完成する。その生後の発達は、神経細
胞の増殖と移動、分化と成熟、樹状突起や軸索の伸長、
シナプス形成、投射様式の変遷、細胞死など中枢神経系
を特徴づけるのに必須の多くの神経形成イベントが、そ
のタイムテーブルに沿って、正確に連続的に進行するこ
とで完結される。従って、各発達ステージで特徴的な遺
伝子発現パターンを体系的に探索することで、各イベン
トに関わる遺伝子群が明らかになると予想される。これ
らのイベントには多くの遺伝子とその産物が関与すると
推察されるが、その分子メカニズムを完全に説明できる
ほど遺伝子の同定・機能解析は進んでいない。筆者らは、
これらの遺伝子発現プロファイルを網羅的に大量検索す
る手段として、蛍光ディファレンシャルディスプレイ
(FDD)法(1,2)を行っている。
DD法は、遺伝子の変異や多型を見出すために開発さ
れたDNAフィンガープリンティング法の変法であり、異
なる細胞間の微量な遺伝子発現の差異を簡便に見つけら
れる方法 (3) として近年広く利用されている遺伝子解析
法の一つである。例えば異なる組織、異なる発生段階、
異なる細胞刺激などによる遺伝子発現の変化などの情報
を短時間で得ることができる。原理は、まず、オリゴdT
約15塩基の3' 末端にT以外の1もしくは2塩基を付加し
たアンカープライマーを用いてRNAをcDNAに逆転写す
る。次にcDNAを鋳型にして、任意の配列をもつ10塩基
程度のプライマー(任意プライマー)とアンカープライ
マーを組み合わせて通常より低いアニーリング温度で
PCRを行う。これより、任意プライマーに依存して複数
のPCR断片が増幅する。そして、これらのPCR断片を電
気泳動により1枚のシーケンスゲル上に展開させること
で、複数の遺伝子の発現パターンを視覚化させ、目的の
遺伝子について比較解析を進めるものである。現在、そ
のゲル上のPCR断片の検出手段として、基質として 32 P、
33Pあるいは 35Sで放射標識されたdNTPを用いたり、5' 末
端にFITCやローダミンなどの蛍光物質を付加したアンカ
ープライマーを用いてPCRを行う方法、また、電気泳動
後のゲルを核酸蛍光染色試薬(SYBR Green Iなど)で染
色する方法などがある。放射標識PCR断片をオートラジ
オグラフィーで検出する以外は、いずれも泳動後のゲル
をイメージアナライザーにかけて蛍光画像解析する必要
鋳型cDNAの調製
胎生(E)18日目、生後(P)0、3、7、12、15、21日
目、成体(8週目)のマウス小脳の全RNAを抽出する。
オリゴdTの3' 末端に塩基を1つ付加したアンカープラ
イマー(GT15X、X=A, C or G)を用いて、選択的逆転写
反応により全RNAから鋳型cDNA(第一鎖cDNA)を調
製する。ゲノム由来のDNAの混入を避ける為、全RNAは
DNase処理したものを用いる。また、DDによるバンド
の再現性を確認する為に、少なくとも2つの独立に調製
した全RNA由来の鋳型cDNAを調製した方がよい。
PCRによるDNA増幅
下記の反応液を氷中で調製する。
①鋳型cDNA溶液(100-200 ng)
4.0
②ExTaq(5U/μl)
0.05
③10×ExTaqバッファー
1.0
④2.5 mM dNTPs
0.8
⑤50 μM FITC標識アンカープライマー
0.1
⑥50 μM任意プライマー(10-mer)
0.1
⑦滅菌水
3.95
───────────────────────
10.0 μl
上記反応液を以下のプログラムでPCR反応させる。
94℃
3分
↓
94℃
30秒
40℃
2分 30サイクル
72℃
2分
↓
72℃
5分
)
13
電気泳動
①無蛍光ガラス板(300 mm × 400 mm ×
5 mm)2枚(耳付きと耳なし)をスポン
ジを使って洗剤で磨いた後、滅菌水でよく
すすぎ、エタノールで水分を除去する。
②片方のガラス板のゲル面側をシリコン処
理し(ゲルからはがす側のガラス板を泳
動後にはがしやすくする為)、2枚のガラ
ス板を組み立て(スぺーサーは0.35 mm
を使用)、非変性ポリアクリルアミドゲル
溶液(5%ポリアクリルアミド(29:1)
/0.375 M Tris-HCl pH8.9)を注入する。
シャーク歯型コームを使用。
③ゲルが固化したら、泳動槽を泳動バッフ
ァー(25 mM Tris/192 mM グリシン、
pHは調整しなくてもよい)で満たし、プ
レランを800Vで約20分間行う。
④PCR反応液10μlに6×ローディングバッ
ファー2μl(0.375 M Tris-HCl pH6.8/
30%グリセロール/0.05%BPB)を混合し、
その6μlをゲルにアプライし、1100Vで
約2時間泳動する(約200塩基対長以上
まで泳動している)。
E18 P0 P3 P7 P12 P15 P21 Adult
E18 P0 P3 P7 P12 P15 P21 Adult
E18 P0 P3 P7 P12 P15 P21 Adult
800bp
700bp
600bp
500bp
400bp
300bp
200bp
図1. 胎生(E)18日、生後(P)0、3、7、12、15、21日、成体(8週目)
のマウス小脳の蛍光ディファレンシャルディスプレイの例
モレキュラーイメージャーFXによるスキャニング
④バンドを切り出した後のゲル板を再びスキャンし、目
的のバンドが正しく切り出されたか確認する。(切り
出したバンドのこの後の解析については他のマニュア
ルを参照されたい。)
①泳動終了後、泳動槽からゲル板を取り外し、イメージ
ャーに取り込む側のガラス板表面をきれいにふいた
後、スパーテルを使ってシリコン処理した方のガラス
板を注意深くゲルからはがす。後でバンドを切り出す
為、ゲルの両端数カ所に切れ込みを入れておく。(片
側のガラス板をゲルからはがした方がバンドの焦点が
よい。また、バンド切り出しの際に位置決めになるマ
ーク(切れ込み)をゲルに入れることができる。)
②Multi-Sample Tray IIにスペーサー(備え付けの灰色の
もので厚い方を1枚。ガラス板とゲルの厚さにより、
最適なスぺーサーの厚さの組み合わせが異なってくる
ので注意すること。)を置き、その上にゲルが接着し
たガラス板を置いて、トレーをイメージャーに挿入す
る。FXのコントロール画面を開き(空スキャンは予め
行っておく)、スキャンする範囲を指定し、以下の条
件で画像を取り込む。
・Select Application: Fluorophores / FITC / Low Sample Intensity
・Select Resolution: 100 micrometer
③スキャン後、“Transform”で画像を適度に処理後、
“print actual size”でA3用紙にプリントアウトする。
プリント用紙の上にトレーから取り出したゲル板を①
で入れた切れ込みを目印に正確に重ね合わせ、目的の
バンドを切り出す。
モレキュラーイメージャーFXによる生後発達
期のマウス小脳における遺伝子発現の解析
胎生(E)18日目、生後(P)0、3、7、12、15、21
日目、成体(8週目)のサンプルを同時に泳動すること
によって、生後発達期に沿ったマウス小脳の遺伝子発現
パターンを容易に視覚的に捉えることができる(図1)。
図1に3つのFDDの例を示す通り、胎生から成体にかけ
て常に発現しているもの、胎生から生後7日目頃にかけ
て発現が減少するもの、生後12日目頃から成体にかけて
発現が増加するもの、ある期間に一過性に発現するもの
など様々な発現パターンを示す遺伝子群が示された。発
達段階ごとにその発現が制御されているこれらの遺伝子
群を解析することにより、小脳の神経回路形成を遺伝子
レベルで理解できるとともに、中枢神経系における神経
回路形成の分子メカニズムの理解にも迫ることができる。
14
Bio-Rad Laboratories
参考文献
(1) Ito, T., Kito, K., Adati, N., Mitsui, Y., Hagiwara ,H.
& Sakaki, Y.(1994)FEBS Lett., 351, 231-236
(2) Shiraishi, Y., Mizutani, A., Bito, H., Fujisawa, K.,
Narumiya, S., Mikoshiba, K. & Furuichi, T.(1999)
J. Neurosci., 19, 8389-8400
(3) Liang, P. & Pardee, A. B.(1992)Science, 257,
967-971
おわりに
以上モレキュラーイメージャーFXを用いた蛍光ディフ
ァレンシャルディスプレイ法の一例を紹介した。この方
法では、ラジオアイソトープを用いた方法、また、泳動
後のゲルを核酸蛍光染色試薬で染色する方法に比べ、電
気泳動後、すぐにそのままゲルをスキャンすることがで
き、実験結果を迅速かつ簡便に得ることができる。また、
今回我々が使用しているような比較的大きめのゲルもス
キャンすることができ、大量のサンプルの解析にも有用
である。
モレキュラーイメージャーFXを用いた
植物ゲノム解析
日本飼料作物種子協会 西那須野支所
池田成志・王丙旭・井上真以子
AFLPと同様の材料からの葉組織を液体窒素中で摩砕後、
Trizolにより抽出した。得られたペレットを滅菌水に溶
解後、2M塩化リチウムによりRNAを沈殿させたものを
cDNA合成の鋳型とした。DD反応はニッポンジーン社製
のmRNAフィンガープリンティングキットを使用した。
但し、PCR反応ではRoxラベルした3’
アンカープライマ
ーを使用した。
上記で得られたAFLP、DDの各PCR産物2μlを2μlの
変性液(95%ホルムアミド、10mMEDTA-pH8.0、0.1%
ブロモフェノールブルー)と混合し、80℃で2分間加熱
することによりDNAを変性した。変性後、氷中にて急冷
し、全量を解析に使用した。電気泳動は6%アクリルア
ミドゲルを用いて40W、2000Vの定電圧で2時間15分行
った。泳動後、モレキュラーイメージャーFXを用いてデ
ータの取り込みを行った。
1.はじめに
(社)日本飼料作物種子協会では農水省草地試験場及び
家畜改良センターと共同研究を組みながら飼料用トウモ
ロコシやイタリアンライグラス、チモシー等の飼料作物
を対象としたゲノム解析事業を行っている。この事業の
目的は有用形質に関するDNAマーカーの作出及び遺伝子
単離等のゲノム研究を通した効率的な飼料作物の育種へ
の貢献である。現在、研究目標の一つとしてポジショナ
ルクローニングによる病害抵抗性遺伝子の単離を試みて
おり、染色体ウォーキングあるいはランディングのため
のDNAマーカーの作出を行っている。
DNAマーカーの種類としては情報量が多く迅速に行え
るPCRベースのマーカーとしてAFLPとDD(Differential
Display)を主に使用し、DNA多型の検出にはBioRad社
製の蛍光イメージアナライザーであるモレキュラーイメ
ージャーFXを用いて良好な結果を得ている。本稿では蛍
光プライマーを用いた低コスト・ゲノム解析の一例とし
て我々の研究手法について紹介したい。
3.結果
AFLPについてはEcoRI−MseIプライマーの全組合せ
(4096組合せ)について検討した結果、抵抗性系統に特
異的なAFLPマーカーが110個検出された(図1)。また、
感受性系統に特異的なAFLPマーカーも10個得られた。
抵抗性系統の作出には同一の遺伝資源が用いられてお
り、今回のスクリーニングの結果とも一致している。
DDについては150組のプライマーセットでスクリーニン
グした結果、抵抗性系統に特異的な2個のDD断片を得
ることができた(図2)。
AFLPやDDでは増幅断片ごとに増幅割合が異なる
が、上記の実験条件ではシグナルが非常に鮮明に得られ、
シークエンサーで見られるハレーション等による解析の
2.方法
トウモロコシごま葉枯病抵抗性及び感受性の各2系統
(2組の準同質系統)の葉組織からCTAB法により全
DNAを抽出後、PE社製のAFLPキットを用いてAFLP反
応を行った。但し、EcoRIプライマーは全てRoxラベル
したものを使用し、Selective PCR反応ではEcoRIとMseI
の各プライマーの終濃度が0.25μMとなるように加えら
れた。
DD用の鋳型RNAは以下のように調製された。即ち、
15
障害はなかった。また、我々の研究室では通常のシーク
エンサーゲル8枚を使用して1日最大256反応を泳動す
る事ができ、上記の実験量をAFLPで約3ヶ月、DDでは
3日で行うことが出来る。従来までは蛍光プライマーを
用いたAFLPやDDの解析にはシークエンサーが流用され
ていたが、この場合一日の実験量がシークエンサーの台
数により規定される。我々の場合、一日最大1024反応が
一台のスキャナーにより解析可能である。また、電気泳
動には通常のスラブゲルを利用しているため操作も簡単
で低コストで行える。さらに、シークエンサーとは異な
り、ゲルからのDNA断片の回収も非常に容易である。モ
レキュラーイメージャーFXについては我々が使用した範
囲においては非常に取扱いが容易であり、ラジオアイソ
トープを用いたAFLPやDDと比較しても十分な検出感度
があるように思われた。
RR r r
図1. AFLPマーカーのスクリーニングの一例
R:抵抗性系統,r:感受性系統
RR r r
研究室の風景
図2. DDによるcDNAスクリーニングの一例
R:抵抗性系統,r:感受性系統
本
社
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