財務省近畿財務局 Kinki Local Finance Bureau Ministry of Finance 平成22年4月23日 地域産業の発展と地域金融機関の取組み 1. 近畿企業の対アジア取引拡大支援 2. 医療・健康分野における成長産業への支援 3. 環境分野における成長産業への支援 4. 観光分野の企業等に対する支援等 5. 伝統産業に対する支援 【総括】 地域産業の発展に向けた課題と地域金融機関の取組みの概要 1. 1.近畿企業の対アジア取引拡大支援 近畿企業の対アジア取引拡大支援 【背景】 関西の輸出入は、中国の構成比が比較的高く、成長市場であるアジア、特に中国とのつながりを背景に、関西経済の成長が期 待されている。一方で大企業のアジアシフトに伴い、中小企業における大企業からの受注減少や値下げ要求が生じている。この ような状況のなか、中小企業にもアジアからの部品、部材調達によるコストダウンやアジアへの販路開拓を進める動きがある。 【課題】 中小企業は海外における商慣習、規制、マーケティング等の情 報が乏しいほか、部材調達・販路の構築が困難。 アジアへの事業展開支援の取組み ○大阪東信用金庫は㈱ひがしん総合研究所を介して、アジアへ の事業展開の実務に精通する㈱プロネット(中国系商社)と業務 提携し、「中国(ASEAN)ビジネスサポート」を実施。 ○アジアへの事業展開によるコストダウン・販路拡大等を考える 中小企業に対し、中国企業の紹介や海外の商取引に関する情 報提供等のサポートを行っている。 ④コンサルティング アジアへの事業展開 を考える中小企業A社 ⑤融資 ①相談 提携 ・現地におけるマーケティ ング情報提供 ③「中国ビジネスサポートに 関する基本契約書」を締結 ②A社相談案 件の持ち込み 大阪東 信用金庫 ・部材調達や販路拡大の ための現地企業を紹介 ㈱ひがしん 総合研究所 【地域金融機関の強み】 ①アジア営業拠点を通じた海外情報の集積 ②金融機関や外部機関の持つコンサルティング力 海外進出企業の現地調達、販売支援を目的とした現地 ビジネスマッチングの実施 ○南都銀行、滋賀銀行、みなと銀行など地銀13行は協働して、 中国進出中小企業現地法人のニーズに対応するため、部品・部 材の現地調達、販売支援を目的としたビジネスマッチングを実施 した。 上海に進出している地銀13行(うち近畿管内金融機関 3行) 現地企業への 来場案内PR 現地サプライヤー (部品・部材現地調達支援) 各行取引先企業から 出展企業の募集 上海進出中小企業150社 (販売支援) 【ものづくり商談会@上海開催】 ㈱プロネット アジアへの事業展開の実務に (中国系商社) 精通した外資系商社と提携 −1− ・来場した現地(中国)サプライヤーとの部材調達に関する商談会 ・上海進出中小企業(現地法人)同士のビジネスマッチング 2. 2.医療・健康分野における成長産業への支援 医療・健康分野における成長産業への支援 【背景】 関西には、高度な技術力を有する医療関連企業や大学・研究機関が集積している。また、「先端医療開発特区」の4割近くが関西 から採択されるなど先端医療の開発・実用化が進められており、中小企業が既存技術を活かして成長市場である医療分野に参 入する動きがある。 【地域金融機関の強み】 ①取引先中小企業のニーズ等に関する情報の蓄積 ②大学等研究機関とのネットワーク ③創業・新事業支援にかかるノウハウ 【課題】 中小企業にとっては、大学等研究機関の研究内容等、情報 の把握が困難であり、人的なつながりもないことから、産学連 携の取組みが進まない。 大学と中小企業との共同研究による商品開発の取組み 医大の研究成果(シーズ)と地元企業のニーズを結び つける異業種交流会の開催 ○紀陽銀行は和歌山県立医科大学と産学連携協定を締結。同大 学の特性を活かした食品・医療等に関する研究成果(シーズ)と同 行取引先地元企業のニーズを結びつける異業種交流会を開催。そ の後の共同研究により新事業の創出に繋げている。 紀陽銀行 連携協定 連携協定 和歌山県立 医科大学 研究成果プレゼン 施設見学会 企業 事業 ニーズ 異業種 異業種 交流会 交流会 意見交換会 個別相談会 ○大阪信用金庫は、産学連携による取引先中小企業の商品開発を 推進するにあたり、大阪府立大学に「産学連携コーディネーター」を 常駐させて大学の研究内容を把握したうえ、より効果的な共同研究 をコーディネートすることにより、確度の高い事業化を推進している。 ⑤商品の事業化 研究 シーズ 産学連携 化学系 研究室等 共同研究 共同研究 医療関係の新商品の事業化を 検討している中小企業 教授 大阪府立大学 〔理工系に強い大学) 新事業 新事業 の創出 の創出 Kt コーディネーター 研究内容把握 ④共同研究 ①相談 バイオ系 研究室等 ③最適なコーディネートを実現 ②相談案件の持ち込み 大阪信用金庫 コーディネーター派遣 −2− 大学に常駐 3. 3.環境分野における成長産業への支援 環境分野における成長産業への支援 【背景】 関西は、エネルギー・環境分野の大企業が集積していることに加え、東大阪市を中心に高度な技術力を持っている中小企業群 があり、垂直方向に厚みを持つ産業構造となっている。 【課題】 【地域金融機関の強み】 ①取引先中小企業の技術力に関する情報の蓄積 ②環境CSRの取組みによって蓄積された環境に関する情報と ノウハウ 中小企業は大企業等のニーズ情報が不足している一方、 大企業等は中小企業の技術情報を持っていないことから、 大企業等のニーズと中小企業の技術シーズを結びつける ことが困難。 大企業の技術ニーズ発の提案型個別マッチングサポートの取組み ○大阪市信用金庫は、特定の大手メーカー(1業種1社)から提示さ れた開発課題、ニーズに応じて、データベース化された当庫取引先 中小企業の事業内容、設備、技術などの情報を精査して最適な中小 企業をピックアップ。コーディネーターが中小企業を訪問調査した上 で、当該中小企業の技術を大手メーカーに提案する提案型個別マッ チングを行っている。 環境に特化したビジネスマッチングの取組み ○滋賀銀行は、環境CSRに取り組んできた特性を活かし、中小 企業の環境対応型製品・技術・サービス等の販路拡大に向けて、 環境ビジネスに特化したビジネスマッチング(商談会)を開催して いる。 『しがぎん』エコビジネスマッチングフェア(商談会) 新事業の創出 新エネルギー・省エネルギー 滋賀銀行 ⑤A社と技術マッチング成立 A社 陶器製品の関連企業 大手電機メーカー ④技術提案 ①開発課題提示 [次世代ヒーター開発] [課題解決に最適な技術を提案] 大阪市信用金庫 大阪市信用金庫 企業支援センター 企業支援センター ②データベース精査 [耐熱、高精度部品加熱などに 技術を持つ企業を抽出] 浄化(水・土壌・大気) リサイクル 環境土木建築 B社 半導体部品企業 マッチング サポート 環境サポート・ソリューション 環境アグリ・フード ③コーディネーター(注)によ る訪問調査 [企業の課題対応力、意欲などを 調査] (注)技術系企業OBの当庫職員 −3− 環境対応型製品等や業務提携先を求める企業(全国から公募) 4. 4.観光分野の企業等に対する支援等 観光分野の企業等に対する支援等 【背景】 関西は、古都京都をはじめ5つの世界遺産などの歴史遺産や、大阪・京都・神戸を中心とする商業施設などの観光資源と、発達 した交通網により滞在型観光が可能となっており、こうした地の利を活かした観光産業の活性化が期待されている。 【地域金融機関の強み】 ①各種金融商品を活用した資金支援 ②消費者に対する情報発信力 【課題】 集客力の更なる向上を図るための、 ・魅力的な街づくりのための安定資金の確保 ・観光資源の優位性の効果的な情報発信 観光産業の活性化への取組み ○京都銀行は、地域経済の活性化に向けて、地域経済の牽 引力である京都ブランド・観光関連事業者の資金需要への対 応に加え、京都の魅力を各店舗において紹介するなど、情報 発信の取り組みを行っている。 京都 銀行 観光・京都ブランド企業への融資商品及び観光産業活性化に資 する預金商品の取扱い 京銀観光支援特別融資(賑わい) 京めぐり満喫定期預金 設備資金で20年の超長期返済が可能 京都定期観光バスクーポン付 観光支援室(H17.4設置) 観光産業・観光関連事業者に 対する資金支援 【 京銀観光支援特別融資<賑わい>実行累計額】 (億円) 140 122 120 京都銀行独自の観光関連事 業者専用ローン「京銀観光支援 特別融資(賑わい)」は平成17年 12月の取扱開始以降、実行累 計額が120億円を突破 102 100 観光支援室が中心となり、各店舗におい て以下の取組みを実施 87 80 観光写真展 57 60 観光パンフレット備置 40 20 8 観光情報ビデオ放映 0 H18/3 H19/3 H20/3 H21/3 H22/3 −4− 観光セミナー ○専用商品の活用によ るきめ細かな資金応需 ⇒観光関連企業の発展 に寄与 ○京都の魅力を各店舗 にて情報発信 ⇒観光客の呼込みに効 果 5. 5.伝統産業に対する支援 伝統産業に対する支援 【背景】 奈良は、そうめんなどの名産地であり、また大和野菜など優良食材の生産地でもあることから、こだわりの食材を生産・加工する 食品関連企業や農業生産者が多数存在している。昨今、「食の安全・安心」「地産地消」「顔の見える食材」に対する消費者の関 心の高まりから、これら企業等のビジネスチャンスは広がっている。 【課題】 地元の食品関連企業や農業生産者にとって、大手流通企 業やホテルに販路を開く情報、ネットワークが不足しており、 販路拡大のチャンスを掴めていない。 【地域金融機関の強み】 ①取引先企業の情報の蓄積 ②大手流通企業等とのネットワーク 食品・農業関連分野に特化した「食の商談会」の実施 ナント「食」の商談会 ○南都銀行は、地場産品であるそうめん、大和野菜 などの販路拡大を求める地元の食品関連企業や農 業生産者のニーズと、特色ある農産品や食材を求め る百貨店やホテルなどのニーズをアレンジし、食品・ 農業関連分野に特化した「食の商談会」を実施。 こだわり食材を生産・ 加工する食品関連企 業や農業生産者 取引先企業の情報を集 約し、ニーズをアレンジ 特色ある農産品や食 材を求める百貨店や ホテル等大手企業 (食材調達ニーズ) (販路拡大ニーズ) 【 商談会の開催実績 】 情報 情報 第1回 平成20年 1月 商談件数1,578件 成約件数 73件 第2回 平成20年11月 商談件数1,627件 成約件数 91件 南都銀行 第3回 平成21年12月 商談件数2,954件 成約件数 16件 商談中187件 −5− 【総括】 1.地域産業の発展に資するための地域金融機関の取組みの現状 ○ 地域金融機関は、 ① 取引先中小企業の技術力に関する情報の蓄積 ② 大企業・大学等を含めた地域におけるネットワーク ③ 資金力や新事業支援のノウハウ 等の面で強みを持っており、これらを活かして地元の中小企業と大企業、研究機関、海外進出 企業等との間のビジネスマッチングにおいて大きな役割を果たしている。 2. 今 後 の 課 題 ○ 今後は、地域経済の発展を牽引する大企業の成長力が中小企業にまで波及するよう、大企業 のニーズをわかりやすく翻訳し、そのニーズに合った技術・商品を持つ中小企業にスムーズに繋げ るためのコーディネート機能の高度化が必要であり、それを通じてビジネスマッチングの成果を 収益に結びつけ、持続可能な取組みとすることが期待される。 ○ そのためには、今後、 ① ニーズとシーズを結びつける技術系人材(企業OB等)を確保すること ② ビジネスマッチングを行っている商工会議所や他の地域金融機関との間の広域的な連携を 強化すること が課題となる。 −6−
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