ネットワーク空間分析ソフトウェアツール SANET Ver - CSIS

I7
Research Abstracts on Spatial Information Science
CSIS DAYS 2006
ネットワーク空間分析ソフトウェアツール SANET Ver. 3 の開発研究
- Developing SANET Ver. 3: A software toolbox for Spatial Analysis on a NETwork 塩出 志乃 1,○奥貫 圭一 2,岡部 篤行 3,金子 忠明 3,岡野 京子
1
東京大学 空間情報科学研究センター,2 名古屋大学 環境学研究科,3 東京大学 工学系研究科
連絡先: <[email protected]> Web: <http://ua.t.u-tokyo.ac.jp/okabelab/atsu/sanet/sanet-index.html>
(1) 動機: 実空間に見られる建物などの地理的オブジ
ェクトは道路網をはじめとするネットワーク空間に位
置していることが多い.こうしたネットワーク空間にあ
るオブジェクトとオブジェクトの間のネットワーク距離
(二つのオブジェクトを結ぶ最短経路の長さ)を利
用すれば,新しい空間分析,すなわち,ネットワー
ク空間分析,が可能になる.しかし,ネットワーク空
間分析を実践するためのソフトウェアツールボック
スは開発されていなかった.
(2) アプローチ: 近年,ネットワーク距離を分析に用い
る方法の理論的研究が蓄積されてきたので,これ
を踏まえて,ソフトウェアツールボックスを開発実装
して,これを非営利目的の研究に利用してもらうべ
く提供している.実装にあたっては,ArcGIS8 および
9 の拡張プログラムとして開発した.
(3) 意義: 都市内の交通事故発生地点分布の分析,
施設利用圏分析,店舗売上推定などに対して,従
来は難しかったネットワーク空間分析法を適用する
ことができる.こうした実践を可能にする分析ソフトウ
ェアの開発は,欧米の GIS 関連研究機関を中心に
盛んに競い合われており,その競争にわが国から
も参加することの意義は大きい.
(4) 特徴: 以下のネットワーク空間分析を実践できる.
・ ネットワークボロノイ図の描画
・ ネットワーク最近隣距離法の実践
・ ネットワークK関数法の実践
・ ネットワーク条件付き最近隣法の実践
・ ネットワーククロスK関数法の実践
・ ネットワークハフモデルによる商圏分析
・ ネットワーク上のランダムな点分布の生成
・ ネットワーク空間補間法の実践
・ ネットワーク可変クランプ法の実践
・ M 関数法の実践
(5) その他:
・ 無料で一般公開している.ソフトウェアを入手す
る に は , http://ua.t.u-tokyo.ac.jp/okabelab/atsu/
sanet/sanet-index.html にて利用者登録書をダウ
ンロードし,必要事項を記入の上で指定された
宛先にメール送付すれば良い.同じウェブサイト
にマニュアルも用意してあるので,詳細はそちら
を参照されたい.
・ 今後,このソフトウェアツールボックスの利用を進
めることを目指し,チュートリアルの作成を考え
ている.
図 1: SANET Ver. 3 利用の画面例
ネットワークボロノイ図を描いた様子.ネットワークデータとポイントデー
タのシェープファイルがあり,ArcGIS を所有している利用者であれば,容易
にネットワーク空間分析を実践することができる.
- 61 -