アフガニスタン大統領選挙準備期間の人権侵害と政治的抑圧

Human Rights Watch
Sept 2004
The Rule of the Gun
Human Rights Abuses and Political Repression in the Run-up to Afghanistan’s
Presidential Election
銃規制
アフガニスタン大統領選挙の準備段階での人権侵害と政治的抑圧
Human Rights Watch によるブリーフィング
2004年9月
1 要約--------------------------------------------------------------------1
2 背景--------------------------------------------------------------------9
3 脅迫と全体的な政治的抑圧-----------------------------------------------15
地方での問題-------------------------------------------------------------16
大統領立候補者の問題-----------------------------------------------------35
選挙の構造問題-----------------------------------------------------------36
4 結論-------------------------------------------------------------------41
5 勧告-------------------------------------------------------------------44
付録-----------------------------------------------------------------------47
The following translation was done through the Japan Afghan NGO Network (JANN) and is taken from the following
Human Rights Watch report: The Rule of the Gun: Human Rights Abuses and Political Repression in the Run-up to
Afghanistan’s Presidential Election. The full report is available at the Human Rights Watch website www.hrw.org. The
overview was translated by Ms Arisa Shimoji and edited by Tohru Tada and Christian Dennys.
以下の翻訳は日本アフガン NGO ネットワーク(JANN)を通じておこなわ、ヒューマン・ライツ・
ウォッチ(HRW)のレポート銃規制アフガニスタン大統領選挙の準備段階での人権侵害と政治的抑
圧を元にしました。完全版は HRW のウェブサイト www.hrw.org で利用可能です。これは杉井弥生
と辻伸浩が翻訳し、多田透とクリスデニスが編集しました.
Human Rights Watch
Sept 2004
1
要約
今日の政治において銃犯罪者が求めるものは最終的には実現する。
これはどういった民主主義なのだろうか?
政治オーガナイザー、ジャララバード(Jalalabad)2004年5月31日
2004年10月9日、アフガニスタン(Afghanistan)で初の国内選挙が行われる。満期
5年の大統領が有権者によって選ばれる。この選挙は、過去25年間、ソビエト連邦による占領、内
戦、無政府状態、女性に対する抑圧、そしてタリバン政権による冷酷な支配などに苦しんできた国に
とって歴史的なイベントになるだろう。銃弾や爆弾ではなく、投票によって治められる未来への見通
しは多大な期待へとつながるだろう。タリバン(Taliban)勢力や他の反政府武力組織は、今でもな
お選挙活動家や選挙地を攻撃の標的にして選挙を混乱させようとしている。そして、南部や南東部で
は非常に不安定な状況が続いているところもある。 それでもなお、選挙当局者は準備をすすめてい
る。アフガニスタンそして国際指導者たちは選挙が無事に成功するよう祈っている。
しかしながら、現実はもっと複雑で大変である。国会選挙は安全問題や事業の問題で200
5年に延期されてしまった。この国の未来には、安全問題や人権問題が存続しており危険にさらされ
ている。 地域の実力者による政治的抑圧は重大な問題である。武装した派閥争い(民兵やタリバン
政権の敗北によって実権を握った過去のアフガン武力の残存者)が、武力や脅し、買収などの手段で
正当な政治活動を抑圧し選挙作業を支配しようと、地域レベルで政治的実力を保ちつづけている。そ
ういった派閥や民兵組織と何らかかわりのない独立した政治オーガナイザーは殺害への脅威に直面
しており、国の組織化に苦しんでいる。アフガニスタンの男性や女性の政治活動者や、違った方法で
国の政治に参加しようと望んでいる将来可能性のある指導者たちは選挙活動から身を引いたり、自分
たちの活動にとても慎重であったり、命の危険におびえている。軍事的指導者や地域の指導者は、地
方の有権者の多くに投票方法を教えたり、政治抑圧を加え民主体制から疎遠にしたりと、有権者を従
わせている。有権者そして政治関係者として女性も排斥されたままである。
権力をめぐる武装した派閥争いとハミッド・カルザイ(Hamid Karzai)政権に対する反乱との間で
起こる衝突によって政治もまた不安定である。西部地域の都市、ヘラト(Herat)などいくつかの地
域では、つい最近政治状況が一変して暴力と化し、未だに予想のつかない状況である。ザブール
(Zabul)やクナール(Kunar)などの他の地域では、地域全体がアメリカ軍とアフガニスタン政府
軍がタリバンや他の反乱集団に対して軍事活動を行っている紛争区域となっている。
南部や南東部のアフガン人は、住民に選挙に参加しないよう脅し、選挙準備を攻撃し、アメリカとア
フガン政府軍と戦いを続けているタリバンや反乱集団の脅威に直面している。
アフガニスタン国内そして国外からの多くの監視者は、人権や政治的進展に対する主な脅威としてタ
リバン対策に焦点を当てているが、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)によ
ると、アフガン人は、ほとんどの地域で、タリバンではなく地域の派閥指導者や軍指導者を恐れてい
る。タリバン事情どころか、ほとんどのアフガン人は、彼らの主な恐怖は jangsalaran(ダリ語と
パシュト語で軍事的指導者の意)であると言っている。彼らは、アフガニスタンは軍事指導者の問題
を抱えていると考えている。地方政府や軍、警察、情報機関を含む政府や国家機関を支配している軍
の派閥勢力の問題である。
そして、多くのアフガン人が言うには、この軍指導者の問題は結局のところ人権問題であると言うこ
とだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチの過去の多くのレポートによれば、軍指導者の派閥の多くは、
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Human Rights Watch report: The Rule of the Gun: Human Rights Abuses and Political Repression in the Run-up to
Afghanistan’s Presidential Election. The full report is available at the Human Rights Watch website www.hrw.org. The
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ウォッチ(HRW)のレポート銃規制アフガニスタン大統領選挙の準備段階での人権侵害と政治的抑
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Human Rights Watch
Sept 2004
過去のそして未もなお続いている人権迫害や政治的抑圧にさかのぼる。
2004年6月から9月にかけて行われたヒューマン・ライツ・ウォッチによる調査に基づいた報告
のなかで、10月9日の選挙でのこの今も度重なる人権問題について詳細が述べられている。その報
告では、政治グループ機関を後退させるために、軍事指導者の派閥による詳細にわたった脅しの策略
がまとめられており、大統領そして副大統領候補がどのように脅しやその他のいやがらせに直面して
いるかなどを説明している。アフガンジャーナリストや来年の議会選挙と地方選挙の大統領立候補者
にたいする脅しのパターンを報告している。多くの地方投票者は、彼らの政治における権利について
十分な情報と教育を欠けており、派閥リーダー人々の投票をコントロールできてしまうような無記名
投票用紙よる秘密厳守の概念なども持っておらず理解していない。
報告によると、これらの派閥勢力が、大統領候補を含む政治立候補者を推薦するさいに、どうやって
何千もの一般市民の投票用紙を集めるのに力で脅したりだましたりするかを説明している。アフガニ
スタンでの選挙登録者の数は2600万人の投票可能な年齢人口において1050万人を超えてお
り、しかしながらこの数は正確な数ではないことが明らかになっており、これは投票者が複数にわた
って登録したものである。ここで説明した通り、40パーセントの登録投票者が女性であるという事
実を誇らしげにしているアフガン人の役員や国際役員の見解は、何万人もの女性が1回以上登録され
ており(投票用紙により補助金や食料供給の資格が与えられると信じているものもいる)、登録され
ている人の10パーセント以下が女性であると明らかにしている南部のいくつかの地区のデータを
含む数字に表れている、地域による変化の違いを偽っている。カブール(Kabul)の選挙管理人の数
人は、去年の9月ヒューマン・ライツ・ウォッチに10月9日に投票を望んでいるアフガン人の数は
たったの500万人から700万人にのぼると認めた。
まとめとして、一般的な行動やさまざまな武装争いによる絶え間ない支配がどのようにアフガニスタ
ンでの恐怖や、多くのアフガン人(投票者、党幹事、ジャーナリスト、女性の政治活動家、そして政
府関係者)が公で話すのを恐れたり、自らの行動を慎んだりするような政治的不安を生み出している
のかが報告されている。
失望に満ちた希望
今日、アフガニスタンでは挫折感が漂っている。多くのアフガン人は軍事支配にうんざりしており、
法による支配を強くのぞんでいる。彼らは、暴力的な軍事的指導者が政府の地位を得ることに疲れ果
てており、これらの軍事指導者は無害であり、彼らは改善されており、もしくは彼らは好ましいとい
う考えが、国際社会の中で生まれつつあることに多くのアフガン人が侮辱を受けてるように感じてい
る。彼らは、軍事指導者が権力の座から遠退くことを望んでおり、2002年と2003年のロヤ・
ジャーガス(Loya Jirgas)とよばれる2つの最高会議を含むこれまでのアフガニスタンの政治的
過程が単に軍事指導者の影響力を合法化していることに怒りを感じている。
多くのアフガン人は、信頼のある選挙が国をすさんだ軍事指導者が率いる領地から国民の人権を擁護
してくれる合法な市民による政府が作り上げる機能的な国へと変化する方法だと考えている。この点
で、選挙とゆうものはただ単にアフガニスタンでの目的、よい結果が生まれるもしくは目的それ自体
だけではなく、人権問題や軍事主義を表す方法として見ることができる。
問題は、2004年の大統領選挙(そして2005年の地方そして議会選挙)が国をその目的にまで
近づけるかどうかである。この報告書が伝えてる通り、それは起こりそうにはない。ほとんどの兆候
は軍事主義と派閥支配がただ増加していることを示唆している。
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Human Rights Watch
Sept 2004
誤った充足感
安堵感は漂ってはいない。大統領立候補者を含む多くのアフガンの政治活動家は、身の安全を感じて
おらず怯えていると伝えている。アフガニスタンは、今なお十分な専門職や独立した警察に欠けてお
り、司法制度はほとんど機能していない。NATO (North Atlantic Treaty Organization: 北大西洋
条約機構) 率いる International Security Assistance Force (ISAF: 国際治安支援部隊) やアフガ
ニスタンに駐留しているさまざまな国によって運営されている国際共同軍事市民チームである、さま
ざまな Procincial Reconstruction Teams (PRTs: 地方再建チーム)は、保護努力に援助している
が、国中にわたって全体的な安全を改善するまでには至ってはいない。その欠点の主なそして度重な
る理由として、NATO 加盟国が不十分な数の兵士にこれらの活動を任せていることがあげられる。驚
くことに、不十分な国際部隊の配属が原因で、大統領選挙における現在の安全計画は、投票所を監視
するために軍事指導者や派閥部隊を代理に立てることを盛り込んでいる。そして、それらの軍事指導
者や派閥部隊は多くのアフガン人がもっとも恐れているものである。
他のカブールの事務所で働くいくつかの国際役員と追従して、The United Nations Assistance
Mission in Afghanistan (UNAMA: 国連アフガニスタン支援ミッション) は現在も進行している問
題と必死に立ち向かっており、特にカブールではたくさんの弱者やグループの援助に介入している。
しかし、国際役員と機関だけでは大多数のアフガンの政治活動かを保護できるまでには至っていない。
アフガン政府が国中にわたって安全性を供給するまでは、十分な国際安全部隊は必要とされるだろう。
ハミッド・カルザイ政府は、政治的圧力を伝える努力をしており、暴力的な指導者を抑制するいくつ
かの重要な転換を果たした。もっとも著しいのは、9月にイスマイル・カーン (Ismail Khan) をヘ
ラトの知事の座から追い出したとこと防衛長官のファヒム (Fahim) を副大統領候補からはずした
ことである。カルザイ氏の事務所もまた特定の暴力を防ぐためにいくつかの出来事に介入した。しか
し、大統領自身が安全性を恐れて選挙活動ができない状態であり、大統領官邸から事実上抜け出せな
いでいることから、カルザイ大統領のカブール市外の多くの地域にわたる影響力はいまだに比較的弱
く、事務所はカブール市外の多くの地域での弱い人々を保護できる能力にまでは至っていない。そし
て、カルザイ政府は特に国の南部ではいくつかの暴力に巻き込まれており、他の地域からの圧力から
政治的に利益をえているかもしれない。
一方で、アフガニスタン情勢に深く関わっているアメリカ高官を含む国際地域の人々の多くはさほど
心配していないようである。多くの人は民主主義の兆しが見えてきていると誤って推測をしている。
しかし、民主主義の重大要素−三権分立による権力の抑制と均衡体制、独立した司法制度、そして報
道の自由に対する暴力や脅しから開放された選挙過程に参加する投票者や立候補者−は見えてこな
い。タリバン政権後以来最初の政権を配置した2001年のボン合意(Bonn Agreement)から3
年が経ってもなお、機能した民主国家の設立において何の進展も果たされていない。
不十分な計画と避けることのできない遅れ
問題がいまだに残っていることは驚くべきことではない。以前になにも存在しなかったところに民主
制度を立ち上げなければならない。3年前、アフガニスタンはもっとも残酷で無能な現代政府のひと
つに支配されていた。武装闘争、多大な教育の欠如、そしてまったくの貧困に中で、新政府が再建さ
れようとしている。何が民主主義なのか、何が法の支配なのか、何が人権なのかが実際どういう意味
なのかはっきりとした考えをもったひとはこの国にはほとんどいない。
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Human Rights Watch
Sept 2004
現在も進行している不安定、乏しい戦術、そして乏しい計画性はただ問題を深刻化しているだけだ。
全体として、民主主義の工程はこの過去2年間で何度もつまずいている。憲法であるロヤ・ジャーガ
(Loya Jirga)は2003年の間で7ヶ月間延期され、また不十分に説明された理由により、アフ
ガニスタンでの大統領、議会、そして地方選挙の予定は去年にわたって混乱していた。国民投票(大
統領、議会、地方職の合同選挙)は2回も延期され、議会選挙と地方選挙は2005年に延期された。
これらの遅れは、何週間も何ヶ月も確かではない噂が出回った後の2004年初期に公表されたもの
で、今も進行している事業上の問題や資金不足、必要不可欠な法律制定の実施における遅れ、そして
選挙活動家や登録所でのタリバンによる止まない攻撃などが理由で公的に正当化された。しかし、こ
の遅延のもっともな理由は、政府統治下での地域を含むアフガニスタンでの全体的な安全状況が、今
もなお自由で公平な選挙を妨げていることだ。
The Joint Electoral Management Body (JEMB: 合同選挙管理機構)―選挙の監視そして管理をす
るためにカルザイ大統領によって任命された国連とアフガニスタン政府の合同機構―は、アフガニス
タン政府と国際パートナーは今年議会そして地方選挙に選出しようと臨んでいる多くの立候補者の
安全を確保することができないと、2004年7月に結論付けた。カルザイ大統領に承認された
JEMB は、10月の大統領選挙と少数の立候補者による議会選挙を来年に開くと、2004年の歩み
寄りを決定した。
政党と軍事指導者の役割
アフガン人は明らかに選挙に参加するのを望んでいる。軍事派閥勢力に加担していないいくつかの独
立した立候補者を含み、18人の立候補者が大統領に選出するための登録に成功している。現在まで、
おおよそ70の政党が政府に登録を申し込んでいる。そのうち、これまで少なくとも40が登録に成
功している。
これらの政党は組織構成、党員の特性、そしてさまざまな派閥や政府高官との関連において異なって
いる。これらの政党の中には、ソビエト連邦に支持されたナジブラ (Najibullah) やバブラク・カー
マル(Babrak Karmal)政権を含む、ダオウド・カーン(Daoud Khan)(1973−1978)政権
や前アフガニスタン国王であるザヒーヤ・シャー (Zahir Shah) 政権から成る1992年以前の前
政府高官から構成されているものもある。他には、さまざまな社会主義や共産主義、非宗教的、そし
てさまざまなイスラム教徒のグループを含む、政治的には決して重要ではなかった1960年代から
1980年代にかけての政党の化身的な政党もある。また、全く新しい政党や若者をリーダーとする
政党もある。
しかし、アフガニスタンの政治活動の多くは軍事派閥によって支配されている。さまざまな軍事派閥
またはそれらの中の分割した派閥の代わりだけにすぎないいつくもの政党―実際のところこれがも
っとも勢力である−がある。アフガニスタンの登録法は政党が私有の兵を維持することを禁止してい
るが、ほとんどの国民軍は防衛省の管理下で分割軍や大隊として正式な地位を獲得しているため、派
閥 政党 は私有の軍隊を所有していないと、陰険に主張することができる。例えば、第10回陸軍
部隊−カブール政府下の公式部隊−は、実際は Ittihad-e Islami (“Ittihad”) 勢力よる派閥軍であ
り、それは勢力のある派閥指導者のアブドル・ラブ・アルラスル・サヤフ (Abdul Rabb al-Rasul
Sayyaf) によって支配されている。
その上、いくつかの派閥勢力はなんとかして法にふれるのを避けるために、登録目的で自らの政党名
を変えている。例えば、Jamiat-e Islami (Jamiat) −ソビエト占領に対抗して戦ったムジャハディ
ーン (mujahidin)− のメンバーのほとんどは、Nehzat-e Melli という政党として組織されている。
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Human Rights Watch
Sept 2004
パシュトュン人 (Pashtun) の軍事派閥である Ittihad は現在は Daw’at-e Islami として知られて
いる。
(その他の派閥についての情報については付録 A を参照)名前を変えた政党は軍事派閥とは何
の公式な関係性もなく独立していると陰険に主張することができる。
現在まで、アフガン政府の政党登録事務所は、私有兵を保持していたりそれらと関連をもつ政党の資
格を奪うまでには至っていない。登録に申し込んだ大統領候補の中には専門的な問題(例えば、指名
権に必要条件である1万票の署名を持っていないという理由)で資格を与えられなかったものもいる
が、そのほかの大統領候補は事実上の民兵のリーダーとして仕えていたものでも資格を与えられてい
る。JEMB にとって、ドストュン将軍 (General Dostum)やユニス・カヌーニ (Yunis Qanooni)、
ムハンマド・ムハキク (Mohammad Mohaqqiq)、カリム・カラーリ (Karim Khalali) などの立候
補者が事実上軍隊のリーダーであり、またはそれらの軍隊と関係をもっているという事実を見つける
ことは技術上難しくはないだろう。JEMB はこれらの立候補者の民兵との関連についての不満を含
む、彼らについての不満を多く受け取っている。しかし、政治的不安(一部の JEMB 役員において
これらの立候補者をまったく恐れていないにしても)によってこれらの不満はさえぎられている。
勧告
アフガン政府と国際パートナーはすばやく行動する必要がある。綿密に議論されずにいる現在の選挙
は深刻な政治的危機がなくとも進行していくかもしれないが、これが、国が人権危機の状態であると
いう事実を覆ってしまってはいけない。さらに激しさを増すであろう来年に予定されている議会選挙
では、すでに深刻化している人権状況を大いに悪化してしまう深刻な政治危機がこれからの数ヶ月予
測される。そして、軍事派閥が公式な地位、権力、そして正当性(議会の免除特権はいうまでもなく)
を完全なものにするにつれて、ただ危機がどれくらい重大であるかを過度に強調することが難しくな
る。1990年代初期にいまいましい内戦で戦ったアフガニスタンのさまざまな派閥勢力は互いにと
って決して簡単にいくような味方ではない。この進行する軍事派閥主義は、もしこれからの数年野放
しの状態であれば、アフガニスタンでの新しい内戦にまで発展する可能性があり、また2001年後
期にタリバンを追放したアメリカ率いる軍事力によって導かれた利益や好機をすべて危険にさらし
てしまうだろう。
これらの問題を述べるにあたって、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、カルザイ大統領とアフガン政
府に残酷な指導者を妨げ、軍事支配をさらに確立させるような条件取引を控える努力の促進に努める
よう促している。政治活動家のアフガン人や投票者に対する暴力や脅迫に即座に対応し、暴力の乱用
者に関しては法的に罰しなくてはいけない。政府は、現在深刻な人権乱用に立ち向かうことの可能な
唯一のアフガン機構である AIHRC (Afghan Independent Human Rights Commission: アフガ
ニスタン独立人権委員会) の活動に全面的に協力しなければならない。
アメリカはアフガニスタンでの戦術を明確にし、アメリカの優先課題である民主化と国家設立を可能
にするような人権保護を確立すべきである。中央政府とカブールに対する責務を拒否するような地域
そして地方の軍事指導者の両方を指示するような現在のやり方では、民主体制と法の支配の確立を衰
えさせてしまう。アメリカは暴力的な軍事指導者と共に動き、彼らを指示するのをやめなければいけ
ない。毒陸警察活動家の保護に力を注ぐ一方で、アメリカや他の国々は、民兵の武装解除をした国家
政府そして効果的で人権を重んずる国家兵や警察の発達を援助する努力を増すべきだ。これらの国々
は、暴力、脅迫、そして政治活動家のアフガン人や投票者に対しする脅しに反対し、これらが責任重
大であるということを非難しなければならない。
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Human Rights Watch
Sept 2004
アメリカや NATO 加盟国、そしてその他の関係している政府は ISAF との協力を強め、アフガニス
タン中の安全性を確保するための軍隊レベルを拡張する働きをすべきである。ISAF 軍の交わりとし
て使われる Provincial Reconstruction Teams (地域復興支援チーム)は、武装解除の努力と弱い政
治活動家やグループの保護の手助けをするためのより明確な指令を与えられるべきだ。ドナー国は人
権と民主化の促進における援助を強めるべきである。このことは、UNAMA の手助けに焦点を当て
るべきであり、これが人権の監視と保護そして政治事情の監視のための職員レベルを急激に向上させ
るだろう。またアフガニスタンの人権状況を監視する際には、AIHRC の活動支援もすべきである。
ドナー国はまた、JEMB と UNAMA に2005年選挙を運営するための必要な資金があるか確実に
するために、余分な資金供給を優先すべきである。また、UNAMA を2005年選挙の監視に加担
する中央独立監視団体を促進し、その団体の資金提供に乗り出すよう促すべきである。
すべての勧告は44ページの
勧告
項目に掲載してある。
注釈:方法論
このブリーフィングはヒューマン・ライツ・ウォッチによって2004年6月から9月にかけて、ナ
ンガハール (Nangahar)、パクシャ(Paktia)、マザレシャリフ (Mazar-e Sharif)、カンダハール
(Kandahar) 、 そ し て カ ブ ー ル で 行 わ れ た 1 5 0 以 上 に も わ た る イ ン タ ビ ュ ー と ク ン ダ ズ
(Kunduz) とヘラト を含む他のいくつかの地域での情報源が確認された電話インタビューに基づ
いている。これらのインタビューは、外交員や外交幹部、UNAMA や UNHCR、さまざまな国際非
営利政府組織(NGOs) の役員を含む国際役員はもちろん、政治オーガナイザー、立候補者、市民社
会のリーダー、女性人権活動家、人権監視者、人道活動家、ジャーナリスト、編集者、医者、教師、
教授、そして地域政府役員と国家政府役員を含んでいる。例外を除き、インタビューを受けたアフガ
ン人は、彼らの名前を証言に使ってほしくないとはっきりと示した。また、インタビューを受けた多
くの国際役員も名前の表示を否定した。したがって、この報告は名前によってこれらの出所を引用し
ておらず、ほとんどの場合実名と関係のないイニシャルを使っている。
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