1.地震に備える 大地震の揺れによる危険は家の中や事務所など屋内においても常に身の回りに潜んでい ます。そうした危険を事前に察知して可能な限りの対策を講じることができるかどうかが 身の安全を護るカギとなります。例えば、家具や什器の転倒は下敷きや屋外に脱出すると きの妨げとなり思わぬ被害を被ります。こうした生死にかかわる事態も、事前の対策によ って相当程度、回避できます。ここでは誰もができる地震対策として家具・什器の転倒・ 落下防止について取り上げます。 まず、皆さんが住んでいる家の間取りと各場所に置かれている家具・什器を改めて再確 認します。すると場所的にふさわしくないと思われる物が、何の固定もなく置かれている ことに気づきます。また壊れて鋭利な状態となっている物が放置されているかもしれませ ん。そうしたものを片づけてから家具・什器の固定という作業に入ります。もちろん片づ けるといっても必ずしも捨てることではなく、全体を根本的に考え直すことです。以下、 家庭と職場において固定・連結作業が求められる家具・什器について考えてみましょう。 -家 庭- ○寝 室・・・タンスの固定は必須です。万一、倒れても安全な位置と向きに設置します。 ○子供部屋・・・2段ベッドと勉強机は固定し、家の中でも比較的安全な空間を確保するこ とを目標とします。 ○キッチン・・・背が高く重量のある冷蔵庫や食器棚の転倒を防止します。重い物は棚の下 段に置くように気を配りましょう。 ○居 間・・・照明灯の破損と落下を防止します。テレビとキャビネットとを連結して落 下防止を図ります。キャスター付のキャビネットなら壁と固定する必要が あります。 ○客 間・・・絵皿などの装飾物を固定します。美観を損なわないよう工夫しましょう。 ○玄 関・・・造り自体は比較的頑丈です。ただ装飾物の転倒と揺れにより扉が開かなく なるといった事態が想定されます。 -職 場- ○事 務 室・・・事務机は田の字型に連結します。机上のパソコンは落下・横滑りを防止す るため机と連結します。大きな揺れは重量のあるキャスター付複写機を暴 走させますので固定が必須となります。 ○会議室・応接室・・・シャンデリアなど大型天井灯、彫像、額縁が落下・転倒するのを防ぎまし ょう。 固定・連結は家具・什器ばかりか家屋本体を傷つけます。また位置変更や固定による変 化により制約と不便が生じ、不満が高じる可能性があります。これが地震対策への嫌悪感 や否定的感情を生じさせるため、誰もが納得した上で作業に取りかかることが求められま す。その他、作業に取りかかる際に気をつける点を以下に示します。 1 ○美 観・・・居住空間内の器物の美観体裁は文化・財産であるため、傷つけてまで作業 を行うか否かは、代わりの方法がないかの熟慮をして決めます。 ○施 工 者・・・専門家に作業を依頼することで安心感は得られるでしょうが、まずは自分 の頭で考えて作業を行います。地震への意識や自信が高まります。 ○費 用・・・費用には限界があります。美観性・便宜性・耐震性を考え常識的範囲に止 めましょう。 ○定期点検・・・施行状況、使用器具(部品等)の劣化やたるみや取り付け不具合を定期的 に点検します。 工具を使った作業に苦手意識を持つ人は多いですが、専門家による建物全体の耐震補強 は別として、屋内の家具・什器の固定の作業はさほど難しくなく素人でも十分に行えます。 被害予測に沿った対策が求められます。 家庭と職場における家具・什器の固定・連結の仕方、および使用する金具の取り付け方 を図を用いながら示していきます。 2
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