水環境事業で地域貢献 ―企業使命としての「水」の浄化技術の活用― 会社名:小柳建設株式会社(新潟県三条市) 代表者名:代表取締役 小柳 直太郎 創業年月:昭和20年8月 資本金:350百万円 本業:総合建設業 直近年度売上高:8600百万円(平成18年度) 社員数:235名 ホームページアドレス:http://www.n-oyanagi.co.jp 1.事業着手のきっかけ 日本の高度経済成長に伴い工場廃水・生活排水等により、河川・湖沼等、内水 面のヘドロ等堆積を伴う水質悪化が深刻な状況になっていることを感じ、人が汚 したものは、人の手で綺麗にすべきであり、それが建設業の使命の一つと考え、 『甦 れ清流に』を合言葉に浚渫事業への取り組みに着手した。尚、既存技術のポンプ 式浚渫船(カッター式)工法では含泥率が10%程度である為、ヘドロ浚渫では余水 の還元による二次的水質汚濁が懸念されることから、含泥率80%以上の高濃度 浚渫工法の導入を行った。 また、建設業は社会資本整備を通じ、様々な災害防止の使命を持っている。し かし、当社では建設を通じた災害防止だけでなく、「人の心と身体の災害防止」す なわち、『人々の心身健全』に寄与することも同様に使命があると考え、人の健康 増進・生涯学習・教育複合事業に着手した。 2.事業実施の経緯 【内水面高濃度浚渫事業】 1986 年 小型浚渫空気圧送機(水陸両用自走式浚渫機)及び浚渫空気圧送船(非航 船)組立台船)導入。 1986 年 新潟県聖籠町 弁天潟風致公園整備工事(小型浚渫圧送機により湖面の全 てを覆った睡蓮・葦を除去し、堆積土砂の浚渫を行い、弁天潟を復元した。 その後、白鳥が飛来するようになり、蓮の花も美しく開花するようになる。 1987 年 沖縄県中城湾埋め立て工事に伴う覆土工事(浚渫空気圧送船) 1989 年 吸引圧送機(自走式水陸両用型)新造。新潟県阿賀野川河口にて流域下水処 理場排水による堆積泥土を吸引浚渫圧送し天日乾燥(河川に濁水発生せ ず) 1989 年 新潟県村上市三面川河口付近の瀬波船溜りに於いて都市下水路の堆積泥 土を吸引圧送し天日乾燥。(濁水発生せず) 1991 年 新 潟 県 福 島 潟 の ヨ シ 、 マ コ モ が 密 生 す る 湿 地 帯 内 に オ オ ヒ シ ク イ等の餌場・休息池を水陸両用型自走式吸引圧送機「ヨシ根浚渫対応型開 発」により浚渫・造成(浚渫圧送‐天日乾燥)。 2000 年 新潟県早出川ダムを浚渫空気圧送船(圧送能力増強型に改良)にて浚渫。 自社開発の浚渫船にて圧送距離約 3.5km、揚程(水面からの高さ)52 mの浚渫に成功。 1 2000 年 石川県羽咋川において、浚渫空気圧送船で浚渫。浚渫土を田の嵩上げ客土 に活用。 2002 年 吸引圧送船新造(自主分解組立型=河川内で自力船体切り離し、橋脚を通 過した後、船体を組立)。新潟県西蒲原地内の大通川放水路を浚渫。 2005 年 皇居外苑千鳥ヶ淵を自社開発の高濃度吸引圧送船(小型組立台船型)で浚 渫。浚渫土を脱水、焼成しセメント資材として全量有効利用。ゼロエミッ ション。 2005 年 高濃度浚渫装置として特許取得。 2006 年 霞ヶ浦高崎沖を吸引圧送船にて浚渫土厚 30cm の薄層浚渫。 【健康・生涯学習・教育複合事業】 2006 年 4 月下旬 20 年間運営を行ったスイミングスクール旧施設の閉校 新分野・新市場進出のプロジェクトの立ち上げ 2006 年 12 月上旬 建設地の確保、設計開始 2006 年 12 月下旬 建設開始、会員管理システムの設計開始 2007 年 1 月下旬 先行入会の開始 2007 年 5 月下旬 建物完成 2007 年 6 月 2 日 「秋葉スクール」グランドオープン 2007 年 6 月 11 日 「五泉スクール」リニューアルオープン 3.工夫・苦労した点 【内水面高濃度浚渫事業】 「平成17年度の皇居外苑千鳥ヶ淵浚渫工事」 (写真1)において、当初設計では、バックホウ浚 渫⇒浚渫土をフィルタープレスに送泥⇒脱水⇒脱 水ケーキを東京湾から広島県付近の最終処分場に 廃棄。と言うものであった。事前の水底質調査の結 果、シルト分と粘土分の合計が 93.2%∼98.9%、 自然含水比が 313.8%∼380.9%d である為浚渫工法 の変更協議を行った。バックホウ浚渫では、掘削時 =写真1= に水質汚濁の恐れがあり、また、底泥を水上に露呈 することによる景観や悪臭拡散の問題も予想された。そこで、それらを回避する ことを目標に協議の結果、水底の泥土を乱さず、高濃度(含泥率80%)で吸引 しパイプラインで圧送できる、当社で開発した高濃度浚渫装置(泥土吸引圧送工 法)を用いることを承認頂、濁水及び臭気も発生する事無く、景観にも配慮しな がら浚渫工事を無事完了する事が出来た。特に本工事で気を配った点は御濠の石 垣や桜・イチョウ等の樹木を一切傷付け無いことであった。浚渫船の解体・引上 げが無事完了した時の安堵感は、なんともいえないもであった。 また、浚渫土の処理方法についても、環境負荷を最小限にすることを目標に協 議した結果、脱水ケーキをセメント工場で焼成し、全量セメント資材として活用 することで、ゼロエミッションを達成することが出来た。 「H18 高崎沖浚渫工事(霞ヶ浦北部)」(写真2)においては、当社独自の高濃 度浚渫の特徴を生かし、凝集剤の使用料を格段に低減するとともに、放流余水の 高度処理を目指した。本工事の仕様書での放流基準は SS:10ppm 以下であった。 当社工法の浚渫土は高濃度の為、従来技術のように凝集剤を直接浚渫土に混合し 2 てもフロックは形成が出来ない。従って、浚渫土仮 置きヤードからの余水に混合し、凝集させ、更に砂 濾過を行うことで高度処理を図った。その結果、凝 集剤の当初設計量に対して、次のよう大幅に低減を はかることができた。(表1) ・アニオン系凝集剤(高分子凝集剤) 当初設計量 17,850kg⇒使用量 64kg(0.36%) ・無機凝集剤(ポリ塩化ナトリウム) =写真2= 当初設計量 60,550kg⇒使用量 4,870kg(8.04%) ・SS:仕様書基準値 10PPM⇒放流水測定値 最高値 3PPM 最低値 1PPM 未満 (平均値 1PPM 未満)(霞ヶ浦自然水 26PPM) 項 目 湖水 (A) 原水(余水) 処理水 湖水と処理水の比較 (B) (A)‐(B) pH 7.7 (25℃) 7.2(25℃) 7.7(25℃) 0.0(mg/ℓ) COD(Mn) 8.9 (mg/ℓ) 73(mg/ℓ) 3.8(mg/ℓ) 5.1(mg/ℓ) 25(mg/ℓ) SS 27 (mg/ℓ) 860(mg/ℓ) 2 (mg/ℓ) 全窒素 1.27 (mg/ℓ) 10 (mg/ℓ) 2.15(mg/ℓ) ‐0.88(mg/ℓ) 0.2 (mg/ℓ) 2.2 (mg/ℓ) 0.03(mg/ℓ) 0.17(mg/ℓ) 全燐 =表1= 以上から、薬品(凝集剤)大幅に低減できたことは、環境負荷の低減も図れた 事になったと考えている。また、放流水も自然水よりきれいになり、霞ヶ浦の水 質浄化に多少なりとも役立てたと考えている。 【健康・生涯学習・教育複合事業】 地球の 7 割が海である。また、人の体内の 7 割も 水である。つまり、地球も人も健康の源は水である と言える。人間の誕生、成長の過程を見ても、人間 の大元となった原始生命の誕生、その後の進化はほ とんど海、つまり水の中で始まったことが理解でき る。また羊水の成分構成をみても、 『生命の根元は水 にあり』ということを知ることができる。なぜなら それらは海水にきわめて近い性質をしている。そこ =写真3= で、この羊水に最も近い水に触れることにより心と 身体の健康が保たれると考え、「プール水」の殺菌消毒である塩素について工夫を 行った。(写真3) また、スイミングスクールだけでなく、特に心の健康のた めにヨガを取り入れているが、(写真4)子供の切れやすい 精神状態をケアするためにインドから伝わったヨガを子供 のためにも取り入れた。さらに、文武両道の育成方針を実施 するために、礼儀のためには空手教室を、国際人になるため に英会話教室を、リズム感を養うためにヒップホップなどを それぞれ取り入れた。これらにより、 「義を持って塾」 「義を 持っての武道」とし、「信義」を子供たちに伝え教え、真の =写真4= 日本人をつくることを実施する体制を整えた。 3 さらに、高齢者には水中運動を通じて、いつまでも元気でいてもらい、痴呆と か寝たきりにならない期間(健康寿命)を伸ばすことが大切である。言い方をか えれば、 「ぴんぴんころり(PPK)」の実現であり、 「身体の面でも」 「心の面でも」、 ぴんぴん(健康)で生きていく、そして、あの世に行くときは、 「ころり」といく。 つまり、「予防医学」観点から高齢者に元気でい続けていただくための生涯学習の 場を提供することにも工夫を行った。苦労した点としては、これら上記の理念が 大切なことであることに利用者に気付いてもらう方法を検討することであった。 4.メリットと成果 【内水面高濃度浚渫事業】 浚渫土を焼成することで全量セメント資材として活用することで、ゼロエミッシ ョンを達成し、さらに、アニオン系凝集剤(高分子凝集剤)を当初設計量 17,850kg ⇒使用量 64kg(0.36%)へ、また、無機凝集剤(ポリ塩化ナトリウム)についても当 初設計量 60,550kg⇒使用量 4,870kg(8.04%)へとメリットである当社工法の利 点を活かして薬剤を確実に低減することができた結果から、人が汚したものは、 人の手で綺麗にすべきであり、それが建設業の使命の一つと考える当社の理念に 沿って、直接、地域の水質改善が進んでいることが成果である。 【健康・生涯学習・教育複合事業】 直接塩素剤を使わないプール水を生み出したことで、のど・目・肌に優しく、 髪も痛まない、さらには、アレルギー肌などの敏感肌にも優しいプールとなり、 まずもって、お客様から喜びの声が聞けたこと。また、子供の挨拶がよくなって いるなどのご父兄のお声を聞けたことが、企業として最大の喜びであり、メリッ トや成果である。 5.今後の課題・問題点 「内陸面高濃度浚渫事業」及び「健康・生涯学習・教育複合事業」とも、今後 も引き続き、「当社の考える使命」や「品質の良さ」を世に広め、さらに、大切さ に気付いて頂くことが最大の課題である。 例えば、体内の重要な役割を行う「五臓」の癌発症率は、様々な要因はあるに せよ、飲み水に塩素剤を使用するようになってから間違いなく増加していること は事実でもあり、また、 「水」の権威である徳島文理大学の池田教授によれば、 「様々 な水を調べてきたが、結果、数値的な証明はないが、水の消毒・殺菌成分である 塩素は心身に間違いなく悪影響を及ぼしていると思われる」とのことからも、間 違いなく体内に摂取したり触れたりする「水」は生命に重要なものである。 従って、次代のためにも「水」をきれいにしなければいけない。今後も当社は 様々な事業の取り組みをもって「水」をきれいにすることが使命であると考える。 6.問合せ先 会社名:小柳建設株式会社 担当者名:取締役副社長 小柳 直亮 電話:0256‐32‐0006 / Fax:0256‐35‐8123 Eメールアドレス:[email protected] 4
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