当日配布資料 - 東北学院大学情報処理センター

2008 年 04 月 15 日(火)
修士論文構想発表会、オープン・リサーチ・センター例会
ジェネラル・バプテスト成立の歴史的・神学的意味
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ジョン・スマイスとトーマス・ヘルウィス
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東北学院大学大学院
文学研究科
ヨーロッパ文化史
博士前期2年
津田真奈美
1.問題の所在
2.バプテスト派成立史に関するこれまでの理解
a. 再洗礼派継承説
b. 英国ピューリタン分離派
3.本論
a. 成立過程
b. ジョン・スマイスとトーマス・ヘルウィスの神学
4.結論
1.問題の所在
現在、バプテスト派とは何かという問いに、容易に答えることはできない。それは、い
わゆるバプテスト派と呼ばれる人々・集団の多様化と拡大などによって、その思想や神学、
あるいは形態が、一様でないからである。バプテスト派は各個教会主義であるために、そ
の全体像を探るのは難しいとされる。
しかし、それ以上に、バプテスト派を定義するのを困難にしている何かがあるのではな
いかと論者は推測する。それは、バプテスト派の成立時において、バプテスト派の二つの
グループ、ジェネラル・バプテストとパティキュラー・バプテストがよく理解されないま
ま、安易に「バプテスト派」いう括りでまとめられてしまっているのではないかというこ
とである。
バプテスト派には、一般的に①聖書絶対主義②各個教会主義③万人祭司説④信仰者のバ
プテスマと聖餐⑤良心の自由⑥政教分離⑦複数牧会という神学が代表的なものと位置づけ
られているが、大部分は、宗教改革時に広い意味で「洗礼派」と呼ばれた人々に共通する
ものでもある。
また、ジェネラル・バプテストはアルミニウス神学の影響を受け、「普遍贖罪説(キリ
ストの贖罪は信じる一般の人々に与えられる)
」を主張し、①人間の一部堕落②信じる者の
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みが救われるという条件的選び③万人に開かれたキリストの贖罪④人間が神の恵みを拒否
する可能性⑤救われた者が堕落し滅びる可能性の保有⑥自由意思の強調といった神学を持
つ。
他方、パティキュラー・バプテストはカルヴァン主義の影響を色濃く受け、「特定贖罪説
(キリストの贖罪は神に選ばれた特定の人々にのみ与えられる)と主張し、①人間の完全
な堕落②神による無条件の選び③選ばれた特定の人々へのキリストの贖罪④神の恵みを拒
むことの不可能性⑤信者の信仰は死ぬまで保持されること⑥神の絶対主権を主な神学とす
る。
彼らは、不思議なことに、成立過程や神学において大きな差異があるにもかかわらず、
今まで同じバプテスト派として扱われてきており、過去、バプテスト派の成立の研究を見
ると、ジェネラルとパティキュラー成立の間には 30 年の隔たりがあるにも関わらず、その
間のことが十分に明らかにされないまま、接ぎ木のように不自然に羅列されている。ジェ
ネラルに関しては、二つの派と呼ばれながら、パティキュラーが起こってからも現存して
いるにもかかわらず、歴史の中で顧みられることなくその影をひそめ、十分にその歴史の
経緯をたどることはされなくなってしまった。
このような問題意識に基づき、「バプテスト派とは何か、何故誕生したのか」ということ
を念頭に置きながら、ジェネラル・バプテストの成立を担った二人の牧師、ジョン・スマ
イスとトーマス・ヘルウィスの軌跡をたどり、その成立過程を分析していきたいと考える。
2.バプテスト派成立史に関するこれまでの理解
a. 再洗礼派継承説
再洗礼派から分派、あるいは再洗礼派そのものであるとする説。再洗礼派とバプテス
ト派の影響関係や接触の程度が未だはっきりと解明されていないため、完全には否定で
きない。支持する研究者も多く、宗教学者、また他教派の神学者ではこの説を定説とす
る人が多い。
(ヨハネ・マグダニエル、C. W. フリーマンら)
b. 英国ピューリタン分離派
現在で最も有力とされ、ほとんどのバプテストの研究者が支持している。バプテスト
の発祥は、英国ピューリタンが分化していく中に起こった分離派に端を発するものであ
り、その分離派の中から、その思想や改革が不徹底であるとして、ピューリタンである
ことを止めた一集団から起こったとする説。
バプテストの一派、ジェネラル・バプテストは、1611 年に英国で始まった。もともと
はピューリタンの分離派の牧師であったジョン・スマイスが、迫害を逃れてオランダに
亡命し、そこでの聖書研究で、ピューリタンの思想が聖書的に誤りであることを見つけ、
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分離派教会を解散したところから、その歴史は始まる。その後、スマイスは、聖書研究
で得た己の神学とオランダで発展していたメノナイトの神学が一致していることから、
合併を望んだが、弟子のトーマス・ヘルウィスら数名がそれに反対し、袂を分かった。
そして、ヘルウィスらは殉教覚悟で英国に戻り、最初のバプテスト教会を建てたとされ
ている。
他方、パティキュラー・バプテストは、英国国教会司祭であったヘンリー・ジェイコ
ブにより発足した独立派(いわゆるジェイコブ教会)から、より分離的教会を求めて離
脱した者たち(リーダー:ブラックロック)が、1642 年に再洗礼(彼らの信仰からすれ
ば、最初の唯一の洗礼。スタイルは浸礼だった。)を行って教会を新設したところにはじ
まったとされている。
また、この説を取る学者の中でも見解に相違がある。
①ジョン・スマイスらが亡命する前からイングランドにバプテスト派と呼ばれるグル
ープがあったとする説(フスト・ゴンザレスら)
②オランダでジョン・スマイスがすでにバプテスト教会を起こしたとする説
3.本論
a. 成立過程
現在は、Benjamin Evans, The Baptist History Series Number 21 The Early
English Baptist, 2vols., London, The Baptist Standard Bearer,Inc.,2001.を用いて、
分析をしている。
b. ジョン・スマイスとトーマス・ヘルウィスの神学
今後、彼らの著作や信仰告白を分析し、両者の違いや、彼らが分派する背景を明らか
にしたい。そのことによって、どちらがジェネラルの始祖であるか、バプテスト派はいつ
起こったのかという問題に一定の見解が下せるものと考えている。
・使用する資料
齊藤剛毅編『資料・バプテストの信仰告白
改訂版』、ヨルダン社、2000 年。
C. W. Freeman, J. W. McClendon Jr, C. R. Velloso Ewell, Baptist Roots –A Reader in
the Theology of a Christian People, Valley Forge, Judson Press, 1999.
W. L. Lumpkin, Baptist Confessions of Faith, Valley Forge, Judson Press, 1969.
*その他に、彼らの著作集があるので、入手し、使用したい。
4.結論
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文献一覧
≪英語文献≫
A. Leonard Tuggy Why I am a Baptist : a manual for church members , Quezon City :
Filkoba Press, 1974.
Benjamin Evans The Baptist History Series Number 21 The Early English Baptist 2
vols. ,The Baptist Standard Bearer, Inc., 2001.
Brooks E. Holifield The Development of Puritan Sacramental Theology in Old and New
England, 1570-1720, New Haven, Conn.:Yale University Press, 1974.
Christopher Hill Milton and the English Revolution, New York: Viking, 1977.
C. W. Freeman, J. W. McClendon Jr, C. R. Velloso Ewell Baptist Roots –A Reader in
the Theology of a Christian People, Judson Press,
1999.
Ernest A. Payne Thomas Helwys and the First Baptist Church in England,
London
and Dublin : Baptist Union of Great Britain and Ireland, 1966.
James. R. Coggins John Smyth’s Congregation: English Separatism,
Mennonite Influence, and the Elect Nation, Scottdale, Pa.: Herald, 1991.
John Smyth A True Description out of the word of God Of the Visible Church,
1958.
John Smyth A pattern of true Prayer, 1606.
John Smyth The Differences of The Churches Of The Separation, 1608.
Perry Miller The New England Mind : The seventeenth Century, New York : Macmillan,
1939.
Philip E. Thompson A New Question in Baptist History : “Seeking a Catholic Spirit
Among Early Baptist.” Pro Ecclesia 8 (Winter 1999):
Thomas Crosby A History of the English Baptists, 4 vols. London : n.p.,1790.
Thomas Helwys A short Declaration of the Mystery of Iniquity, 1612, London:
n.p.,1612; reprint Macon, Ga.:Mercer University Press,1998.
W. L. Lumpkin Baptist Confessions of Faith, Judson Press, 1969.
W. T. Whitley
A Baptist Bibliography, Ω, 1984.
W. T. Whitley The works of John Smyth, Cambridge: The University Press, 1915.
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≪邦語文献≫
関東学院大学キリスト教と文化研究所バプテスト研究プロジェクト編『バプテストの歴史
的貢献』、関東学院大学出版、2007 年。
木村文太郎、松田正三『バプテストの信仰と歴史』、日本バプテスト連盟、1970 年。
齊藤剛毅編『資料・バプテストの信仰告白
齊藤剛毅『バプテスト教会の起源と問題
改訂版』、ヨルダン社、2000 年。
信仰の自由を求めた人々』、ヨルダン社、1996 年。
高野進『近代バプテスト派研究』、ヨルダン社、1989 年。
千葉勇五郎『世界バプテスト略史』
、東京新生館、1932 年。
松田正三『バプテストの人と思想』
、日本バプテスト連盟、1970 年。
村椿真理『バプテストの教会契約
約束に生きる真の教会を目指して』
、ヨルダン社、1993 年。
森島牧人『バプテスト派形成の歴史神学的意味』、燦葉出版社、1995 年。
ヘンリー.C.ヴェッダー、F.G.ハリントン、久代外治譯『バプテスト教會史略』、米國
バプテスト共同傳道會社、1892 年。
H.ホイラー.ロビンソン、高野進訳『バプテストの本質』
、ヨルダン社、1985 年。
J.M.ペンドルン、E.T.ヒスコックス、F.G.ハリントン、久代外治譯『バプテスト
教會政治』、米國バプテスト共同傳道會社、1893 年。
ヨハネ・マクダニエル、大黒洋三訳『バプテスト・ハンドブック』、保守バプテスト同盟、
1976 年.
ジョン.T.クリスチャン、天利信司、山上雄治訳『バプテスト教会史
初代から現代にい
たる新約教会の歴史』、バプテスト文書刊行会、1979 年。
ムリンス、小野兵衞譯『バプテストの信仰』、福音書店、1914 年。
N.H.メアリング、W.S.ハドソン、大竹庸悦、藤原三千男訳『バプテスト教会の形成』、
日本バプテスト同盟教育部、1968 年。
P.L.ジョンス、小野兵衞譯『バプテストの主義』、福音書店、1913 年。
R.G.トービット、磯部文雄訳『バプテスト信仰史』、出版社、出版年不明。
W.L.ラムキン『浸礼の歴史』、ヨルダン社、1965 年。
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