Ricardo社、米国市場向けに ディーゼルOBDを提供

Ricardo UK Ltd.
Graham Hunt、
Dr. Andrew Noble
Ricardo社、米国市場向けに
ディーゼルOBDを提供
ETASの画期的なツールチェーンが設計時間を短縮し、
品質と透明性を向上
OBDに関する規制改正は世界中で歩調を合わせて進められています。消費者の環境意識はますます高まり、自動車
メーカーは「即時解決」率を高めて新市場で成長しようという意欲を高めています。これらすべての要因が相まっ
て、OBDシステムを短期間で実現して各種市場や新しい法的要件への対応と品質保証費用の軽減を可能にする、優
れたサービスやツールソリューションの需要が急速に高まっています。
O
BDのソフトウェアは、自動車のオン
OBDシステムの内容は自動車の販売市場と
ボードコンピュータに組み込まれて部
用途によりさまざまです。適用される規制
定しているトラックメーカーを対象にOBD
品やシステムを監視し、有害排出物質の増
と監視要件は国ごとに、またエンジンの種
を実装した例を見ていきます。
加を招く排出物質浄化装置の故障を検知し
類(ガソリン/ディーゼル)と用途(乗用/
ます。排出物質に関わる不具合を検知する
商用/オフロード等)に応じて異なるうえ、
と、OBDシステムは計器盤上の故障表示灯
メーカー固有の診断のためのコードの量も、
Ricardo社は、自動車用OBDの開発により
以下のような米国市場向け製品群のOBD認
(MIL)を点灯して車のオーナーに知らせま
当然ながら関与するメーカーごとに異なり
可を得ようとしていました。
す。これにより速やかに修理が依頼される
ます。いずれにしても、ECU上の診断専用
• 5リットルのミディアムデューティ・
ので、排出物質の量が抑えられます。さら
コードの量は50パーセントを超えるのが常
にOBDシステムは重要情報を保存するよう
で、この傾向は今後も続きます。
品またはシステム、故障の種類、故障発生
つまり、メーカーにおいて、もはや中核的業
日時、故障時の動作状態等を特定できるた
務ではないにも関わらず、法令を遵守する
め、技術者は短時間で問題を診断して適切
ための大量のソフトウェアの開発やテスト
に修理でき、車のオーナーは少ない費用で
に労力の多くが向けられています。
トラック
(約15,000lbs/6.8t)
• 7.5リットルのヘビーデューティ・
トラック
(約26,000∼3,3000lbs/11.8∼15t)
最初から的確な修理を受けることができま
これは、まさにRicardoとETASの両社が重
点を置いている領域でした。Ricardo社は自
動車業界全般のOBD開発・試験の全領域に
わたって豊富な経験を有しており、ETASは
ツールチェーンによる工程改善に主眼を置
いてきました。
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RT J 1. 2 0 0 8
トラック
(約12,500lbs/5.7t)
• 5リットルのミディアムデューティ・
になっていて、その情報により故障した部
す。
この記事では、米国市場に製品の導入を予
プロジェクトの
概要
2005
ID
0
1
Task Name
Offline Development
Develop & Prototype new OBD functions
3
HiL Test
5
Sensor/ECU Supplier management
Testbed Development
6
Emissions relevance assessment
7
Calibration
8
9
Demonstrating Testing
Vehicle Development
10
Calibration Development/Testing
11
Climatic test trips
12
Hot/attitude
13
Cold
14
Fleet testing & Analysis
15
IUMPR fleet management
16
PVE Testing
17
18
2007
OBDII Development
2
4
2006
Qtr 4 Qtr 1 Qtr 2 Qtr 3 Qtr 4 Qtr 1 Qtr 2 Qtr 3 Qtr 4 Qtr 1 Qtr 2 Qtr 3 Qtr 4 Qtr 1
Documentation preparation/CARB negiotation
Vehicle SOP
01/06
オフライン
開発
HiL
PC
以上の製品群に対し、米国では 2 種類の
ES590
OBD規制が適用されます。まず14,000lbs
(6.35トン)未満の車には、カリフォルニア
のCCR 1968-2規制が適用されます。これ
はおそらくは最も厳しいOBD規制値が課せ
ETK
EDC7
INCA
既存OBDストラテジ
のベース適合
られている乗用車のものと同じです。
一方、14,000lbs(6.35トン)を超える車
はヘビーデューティーに分類され、CARBは
ES1000
これに対しエンジンメーカー診断(EMDま
ASCET
たはCCR 1971-13)を採用しています。
この診 断 は 2007 年 に初 めて採 用 され、
2010年OBD-II規制の厳しい要求にならっ
新しいOBDストラテジの
ラピッドプロトタイピング
て急速に発展してきたものです。
プロジェクト概要に示すように、このOBD
開発プロジェクトは自動車ソフトウェアの
開発とテストに関して想定されるほとんど
実験室で開発
また、INCAからECUにはETKを介してアク
の領域をカバーしています。重要なことに、
このような状況下では、典型的な自動車開
セスするので、高い速度と処理能力で開発
上述の規制では、実際の車両が実使用条件
発のほぼ全段階をカバーする幅広いツール
を進められ、このフェーズの工期を短縮で
下で規制に適合することを確認するため、量
チェーンが必要です。開発はまずオフライ
きます。最 後 に、この事 例 では J1962
産開始後のテストを義務付けています。
ンフェーズから始まります。既存OBD機能
(OBD)ポート経由で車両外部との検証に、
の基本的適合をHiLシステム上で行い、さら
Vetronix社のMTS 3100スキャンテスタ
にいくつかの機能を置換えるか「バイパス」 (Mastertech)を使用しました。
し、ASCET等のコードモデリング/生成環
➔
■
境とES1000システム等のラピッドプロトタ
イピングハードウェアを使用して変更を加
えるか、あるいは最初から設計しなおしま
す。
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J 2 0 0 8 .1 R T
オフラインフェーズ後、また部分的にはオ
開発早期には認定機関が要求する資料を作
車両開発:フリートテスト
フラインフェーズと並行しながら、テストベ
成する作業が必要なため、テストケース実
試験の第1フェーズは南スペインで高温・高
ンチを使用して開発を進めます。排ガス適
行とレポート作成を自動化できると非常に
地の要件について実施し、寒冷地試験は
性検査では部品の故障が排ガスに与える影
助かります。その後の実車ベースの開発は、
フィンランドとスウェーデンで行いました。
響を究明し、OBDモニタ適合では適合プロ
対象市場で実際に遭遇する可能性のある動
試験地は遠方で気候や環境の厳しい場所ば
セス入力用の実エンジンデータを取得し、検
作環境と極端な気候条件による影響に的を
かりで、この種の試験に伴う作業として、フ
証ではOBDアルゴリズムで欠陥部品を検知
絞って進めます。
ル仕様装備の車を試験地に運ぶ必要があり
ました。
します。また、適合後にテストベンチで行
うデモ試験では、経年エンジンの障害部品
フリートテストでは、米国内のさまざまな
を使用して排ガスレベルを記録します。
場所で車を数台走らせて諸条件を試験しま
した(カリフォルニア:運転条件、フロリ
ダ:高温高湿、デトロイト:市街地、デン
バー:高地、ミネソタ:低温)
。
VEHICLE
フリートテストのさまざまな場面でオフボー
ド通信の検証を行うため、またパフォーマ
ンスモニタとして使用するために、やはり
MTS 3100スキャンテスタを採用しました。
ETK
ES590
ES715
このフェーズには、設計上の介入がまった
く必要ない運転期間を伴う部分が多く含ま
れていたことは注目に値します。このフェー
EDC7
ズの目的は適切なデータをできるだけ多く
集 めることであり、そのために 1 )開 発
フェーズですでに作成したINCAの実験環境
を再利用でき、2)ETKインターフェースを
J1962
OBDコネクタ
サポートしているという 2 つの理由から、
ES715ドライブレコーダが選ばれました。
実験データはES715でメモリスティックに
記録し、毎夕サーバにアップロードしまし
データは
USBメモリスティックに
保存
た。
ES715はES590とETKを介してECUにアク
セスするので、点火時から高速でデータを
車両開発:フリートテスト
ロギングできます。このことは、コールドス
タート時のフレア分析等を行う際に重要で
す。
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RT J 1. 2 0 0 8
結局、Ricardo社はOBDソフトウェア開発
当然ながら、このフェーズで生成されるデー
また規制の別の部分では、排ガスに決定的
タの量は膨大で、その分析には大きな労力
な影響を与える部品およびオフボード通信
から試験・検証に至る広い範囲に渡って
が必要です。そこでRicardoでは独自のアプ
の検証が要求されています。オフボード通
ETASのツールチェーンを使用しました。関
信についての試験はSAEにより標準化され
係メーカーは極めて短期間のうちに米国市
リケーションをMATLAB®で開発しました。
ていて、シェアウェアとしてインターネット
場に自動車を投入することができました。
Ricardoの Fleet Logging Analysis
ツール(FLA)
にも公開されていますが、このコードは自動
化できないうえ試験の特定領域で実行させ
Ricardoの多彩な設計技能と、設計時間を
短縮し品質と透明性の向上に役立つETASの
以下のステップが組込まれています。
るといったことが難しいので、最終認定時
画期的なツールチェーンを採用しなかった
• OBDモニタ有効時(例えばエンジン回転
数>100rpmの時)の走行試験データか
の使用にしか適していません。開発早期に
ら、これほど早くリリースに至ることはでき
は、システムの各部分を個別に試験してオ
なかったでしょう。
らロギングされたすべてのデータを抽出
フボード通信による報告が成功しているこ
する。
とを確認できなければならない(少なくと
• OBDモニタ有効時の各データポイントに
も、確認できることが望ましい)といえま
ついて、パラメータとしきい値の差を算
す。この用途のために、ETASはOCTツール
出する(差が正ならパラメータはしきい
を開発しました。このツールは安定した
値により定められた範囲内、負なら範囲
ついて、各場合の時間を計算し、その時
COM APIにより完全に自動化でき、J1699
試験の適切な箇所を、例えばPythonまたは
C#のテストスクリプトから自動的に呼出す
ことができます( RealTimes 2007-2号
P.37∼39に関連記事)。また、このツール
間の分布をプロットする。
には他地域の市場要件にも対応できるので、
外)
。
• 差の分布を計算してプロットする。
• 差が正か負かどちらかのすべての場合に
例えばEOBDやJOBDの試験も扱うことがで
さらに、フリートテストフェーズには、
きます。
IUMPR(In Use Monitor Performance
Ratios:使用時モニタ実行率)を正確に報
告することが法令により求められています。
IUMPRはECUオンボードで算出される比率
で、モニタの実行頻度を示します。この値
RICARDO社
はN/D(Nはモニタの実行回数、Dは運転サ
イクル数)で算出されます。この比率を汎
世界の自動車、運輸、およびエネルギー業界にテクノロジ、製品革新、設計ソリュー
用スキャンツールに正確に報告する必要が
ション、および戦略コンサルティングを提供している先進プロバイダです。事業・製
あります。
品・プロセスの戦略を、基本的な技術研究や大規模な新製品開発プログラムの運用
と連携させることにより、事業の戦略や再構築、プロセスの再設計、製品設計、開
発、設計、テスティング、およびシステム統合といった多岐に渡る業務を請負うこ
とができます。
[email protected]
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