論文 - 関東学生マーケティング大会2015

他者評価を利用した男性スキンケア提案
西川班
五十嵐将平
石井拓也
草原有希恵
西川路子
はしがき
本年度の関東マーケテイング大会のテーマは、
「明日話したくなるマーケティング」として、始まった。
日本の状況は、近年の不景気から抜け出ている途中であり、アベノミクスや新卒就職率がリーマンショ
ック以前の水準まで戻りつつあるなど、明るいニュースが増えてきている。この景気回復に更なる後押し
として、身の回りから出来る「明日話したくなるマーケティング」が必要である、と解釈した。
まず我々は、今のトレンドが何なのかを知ることから始めると、トレンドとして男性の美容に関する情
報が多くあることに驚いた。また、その当時、班の男性たちが肌荒れの悩みを抱えていた。人間は活きる
うえで一度は美しくありたいと思ったことがあるだろう。その意識に男女差はあるものの、誰しもが出来
るならば、綺麗で美しくいたいのではないだろうか。近年の不景気から抜け出しているのと相成るように
して、男性の美に対する意識が高まっているのを理解する必要があるだろう。よって我々は「男性スキン
ケア」を研究テーマに選んだ。
本研究は 6 月から始まったが、
「この方向性でいいのだろうか」
「この先どう進めたらいいのだろうか」
と、幾度となく話し合いを行っても研究は進まなかったり、今までの研究の流れが白紙になったりするこ
ともあった。その後も意見の違いからぶつかり合い、研究ができなくなったこともあった。様々な壁に直
面したが、それでもこの 4 人であったからこそ乗り越えられたのだろう。苦しいことや悲しくつらいこと
は沢山あったが、それの何倍もの楽しいことや嬉しいことがあった。この研究を共にした班員には、感謝
の気持ちで一杯である。
最後に本研究を行うにあたり、数多くのご指導を頂いた菅野佐織先生、卒業論文などで忙しい日々を送
っているなか時間を割いて、まるで自分の研究のように真剣にアドバイスを下さった先輩方、互いに励ま
しあい意見交換をしあった同期の仲間、そして本研究に関わったすべての方に感謝の意を表したい。
2014 年 11 月吉日
1
① ―――はじめに
西川班
② ―――序論
五十嵐将平
1.
研究テーマ
2.
現状分析
(1)
スキンケアの定義
(2)
化粧の機能
(3)
男性のスキンケア市場
(4)
男性のスキンケア使用状況
(5) 男性のスキンケアに対する意識
(6)
3.
現状分析まとめ
問題提起
③ ―――本論
1.
既存研究レビュー
(1)
女性の化粧行動
(2)
公的自意識
(3)
自己呈示
(4)
賞賛獲得欲求・拒否回避欲求
2.
仮説の提唱
3.
仮説の検証
4.
(1)
調査概要
(2)
検証方法と手順
(3)
分析結果
(4)
検証結果の考察
(5)
検証結果のまとめ
新規提案
(1)
新規提案の導入
(2)
新規提案の概要
(3)
早朝におけるプロモーション
(4)
深夜におけるプロモーション
(5)
新規提案まとめ
④ ―――結論
参考文献
補録 ―――調査アンケート
2
石井拓也
草原有希恵
西川路子
キンケアにかける費用が高いのが韓国であると述
べられている。2 位のデンマークに比べると 3 倍を
①はじめに
上回り、日本円にすると約 2590 円である。最もス
日々時間が流れていく中で、製品やサービスは
キンケア消費の高い韓国の男性人口は日本の約 4
もちろんのこと文化や社会までもが変化していく。
割であり、もし日本の男性が韓国と同様の美意識
例えば 10 年前までは、育児は女性がするものだと
を持ったならば、男性スキンケアの潜在市場規模
誰もが考えていたが、現在では育児休暇を取る男
は非常に大きいのではないだろうか。
性も増えてきて、男性の育児休暇という制度に肯
1.研究目的
定的な企業が増えている。それは女性の社会進出
が以前よりも顕著になったことが影響しているの
である。その理由として、1986 年の男女雇用機会
社会的背景から男性の基礎化粧品の普及活動が活
均等法の施行により、女性が男性と同じ権利を得
発になったのは近年のことであり、男性基礎化粧
たことで女性を取り巻く環境は次第に変わってい
品の購買心理に関する研究はあまりされていない。
き、バブル経済までで女性の状況は劇的に変化し
しかし近年の市場の動向から、男性基礎化粧品市
た。この社会背景により男性は、家事・育児に積
場には高いポテンシャルがあると推測ができる。
極的に参加する機会は増えてきたが、女性のよう
また、男性が、自身の肌に対する関心が高まって
に環境が大幅に変化したとは言い難い。だが一方
いることから、我々は男性基礎化粧品をテーマに
で変化したこともある。それは、美意識の変化で
検証を行う。そして消費者の動機に即した学術的、
ある。女性の社会進出が進むにつれて男性が女性
実務的な販売戦略を提案する。
と交流をもつ機会がかなり増え、女性からの視線
を気にするようになった。それゆえ今までになか
2.現状分析
った女性からの指摘などが男性の“男は男らしく”
という価値観に変化をもたらし、女性の行動・意
見を素直に取り入れるようになった。また、近年
本章では、まずスキンケアの定義と役割について
の経済不況により先行き不透明な時代であり、社
とりあげ、次にスキンケア市場について述べる。
会における実力や内面だけでなく外面や印象も良
そして、スキンケアについての使用状況や男性の
くして自分に自信を持つことが、ビジネス手段の
意識について見ていく。
一つと考えるようになった。その結果、肌に気を
付ける人が昔よりも多くなってきている。しかし
(1)スキンケア(男性基礎化粧品)の定義
日本においては女性が行うものとしての認識が強
く、男性スキンケアが広く浸透しているとは言い
難いのではないだろうか。
「化粧」という言葉は多くの意味を含む広義の
そこで日本ではなく世界に目を向けて考える。
言葉である。2014 年に出版された薬事法第二条に
2014 年発売の米紙ウォール・ストリート・ジャー
よると化粧品とは「身体を清潔にし、美化し、魅
ナル記事によると、欧州マーケティング企業ユー
力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を
ロモニターが 2014 年にて、世界で最も 1 か月にス
健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他こ
3
れらに類似する方法で使用されることが目的とさ
男性が女性に従属し、女性が男性を支配する母権
れる物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。
」
社会が存在していると述べられている。
(平松[2009])
と定義されている。また、
(阿部[2001])は化粧品を
は美しく装い、化粧をするのが男性か女性かとい
ケア、メイクアップ、フレングランスに大きく分
うのは、その人が所属する社会が父権社会か母権
類することが出来ると述べている。また、1986 年
社会であるかによると述べている。例をあげると、
に出版された現代商品大辞典
鳥類のオスは繁殖期になると美しい羽根を生やし
新商品版によると、
基礎化粧品とは、皮膚を健やかに保ち、肌質自体
て求愛活動行う。これと同じように人間界でもど
を整えるということを目的とする化粧品を出す語
ちらが弱者かによって化粧をする性が変わること
である。
が予測される。以上から、化粧は経済的弱者が強
者に対して優位に選択されるために存在している
ことが分かる。つまり、化粧と社会経済は深い関
(2)化粧の機能
係があると考えられる。
(阿部[2001])よると、先ほど述べた分類のうち、
(3)現在の男性スキンケア市場
ケアは一般的にスキンケアと称される「維持」機
能を、メイクアップ、フレグランスは「演出」機
能を果たすと述べている。なおスキンケアは「維
かつての化粧品市場は、女性をメインターゲッ
持」機能ともやや関連する。
トとして市場を拡大させてきた。しかし、近年成
また(長谷川[2006])は、化粧の機能を社会的心
長が滞っている。
理学の視点から捉えると、自己維持機能と対人相
男性が美に対する意識、つまり美意識が高まっ
互作用機能の2種類に分けることが出来る。自己
てきている。男性が服装や髪形に気を使うことは
維持機能は、化粧によって本人自身に巻き起こる
以前からあったが、身だしなみ、特に肌への関心
効果をさす。対人相互作用機能は、社会的な相互
が高まってきたことによって、男性のスキンケア
作用を行う上で、有効な表現力のうちに外見的魅
市場が拡大している。2012 年に発表された経済産
力があり(大坊 [1998])、化粧の出来や具多雨的な
業省・出荷額ベースによると、男性スキンケア市
内容によって異なるが、化粧をすることで身体的
場は年々わずかではあるが、拡大している。割合
魅力が増すと一般的には期待されている。
でみると、年間訳 10%程度、約 10 億円伸びてい
そもそもなぜ化粧をするのは女性であるといっ
る。しかし女性化粧品市場と比較すると、わずか
た考え方が定着しているのか。
(平松[2009])は化粧
30 分の 1 しかない。
をする者・しない者が性役割によって決まると考
■表―――1
え、それはその人の生活する社会がどんな社会で
スキンケア市場の推移
あるかが深く関わっているのだと述べている。女
性だけが化粧をするのは、女性が男性に従属して
いるからであり、逆に男性が女性に従属している
社会では男性が化粧をすると述べ、女性が男性に
従属し、男性が女性を支配する父権社会以前には、
4
(出典:大塚製薬
(出典:経済産業省出荷ベース
2014)
2012)
(5)男性のスキンケアに対する意識
企業は現在男性化粧品の広告やドラッグストア
などでの店頭販売に特に力を入れている。例とし
ては CM で Biore は俳優の向井理、OXY は女優の
2014 年に発表された大塚製薬のデータによると、
佐々木希を起用し、憧れの俳優のような肌になり
スキンケアに対する意識はかなり高いことがわか
たい、きれいな肌になって女性にほめられたい、
る。
というような多くの男性が抱いている理想の肌に
男性にとっても、肌を良質に保つことが対人関係
なれるということを広告で謳っている。
にプラスの影響を及ぼすのを理解していることが
容易に想像出来る。
(4)男性のスキンケア使用状況
■表―――3
女性においてスキンケアは日常生活の一部であ
スキンケアに対する意識
るが、男性でスキンケアを日常的に行っている割
合は 20%にも満たない。たまに使用している人を
含めても5割に満たない。細かく見ると、20 代、
30 代が他年齢に比べ若干高いことが分かる。しか
し、60 代も 3 割が使用していることから、どの年
代も一定数利用する者が存在することが推測出来
る。
(出典:大塚製薬
2014)
■表―――2
年代別スキンケア使用状況
(6)現状分析まとめ
以上の現状から、時代の変化、男性の意識変化
によってスキンケアに対する意識が高まっている
ことが分かる。男性化粧品市場は年々拡大してい
5
るが、女性化粧品市場と比べると 30 分の 1 しかな
からの目線を気にする公的自意識、自己の印象を
い。しかし意識が高まり、企業もアプローチをか
コントロールする自己呈示、さらに自己呈示の中
けていることから、成長市場であると思われる。
にある 2 つの欲求である賞賛獲得欲求・拒否回避
化粧行動には自身と対人関係にプラスの影響を及
欲求を既存研究として考察していく。
ぼすことも明らかとなった。また、男性と女性の
性的役割に変化があったことから、男性が外見、
(1)女性の化粧行動
特に肌への関心が高まることは必至であると考え
られる。さらに、スキンケアの使用状況は少ない
が、プラスのイメージ持っている者は非常に多い
我々は、男性スキンケアにおける興味・関心と
ことが明らかとなった。
購買のズレを解消するために心理的影響要因を探
る。しかし、女性の化粧(購買)における心理的
影響要因についての既存研究は数多く存在するが
3.問題提起
男性の化粧心理的影響に関する研究はされていな
い。そこで、女性の化粧とはどのようなものであ
現状で述べたように、スキンケアを使用してい
るかを見ると(木戸[2009])では、化粧はマナーとし
る男性は少ないが、スキンケアに良いイメージを
て社会的傾向性、化粧行為や要望印象管理が社会
持っている男性は圧倒的に多い。また、肌が綺麗
的役割を担っているといわれており、また、
(松井・
であることが対人関係に正の影響を与えることが
山本ら[1983])によると化粧への動機として、
「他者
明らかだろう。さらに、スキンケア使用者数は市
への印象管理」と「自分の欠点の補い」の2つが
場規模を見ての通り増えてきており、スキンケア
挙げられている。したがって、女性の化粧行動は
に対しての興味・関心を持っている男性が多いに
社会的義務であり、社会や文化などの外的な要因
も関わらず現在の規模までしか至っていないこと
ではなく個人の心理的な要因である、他者から見
から、興味・関心はあるのに購入までに至ってい
られていることによる意識と自己から生まれる意
ない男性が多いと推測される。
識の 2 つに影響を受けているといえる。
以上から、私たちは男性基礎化粧品をテーマに、
また、(平松・牛田[2008])では、化粧規範に関
スキンケアに興味・関心がある男性がなぜ購入に
する研究について検討しており、女性の化粧意識
いたらないのか、そのギャップ(要因)を解明す
は魅力向上・気分高揚・必需品・身だしなみとい
る。
うことが明らかになっている。そして(平松[2007])
によると、男性の化粧行動と対自的な「魅力向上・
気分高揚」の化粧意識との関連が明らかになって
1.既存研究レビュー
いるにもかかわらず、男性を対象とした研究が見
当たらないことなどの課題がある。
前章でも述べたように私たちの研究目的は、興
つまり、女性の化粧行動と男性の化粧行動におい
味・関心と購買のギャップを埋めることである。
ては化粧意識の部分で共通している部分があるも
よって、本章では消費者心理にどのような影響を
のの、男性スキンケアにおける役割やその後の購
及ぼすのかを解明する。その中で化粧行動、周囲
買までの心理的影響の部分がいまだに解明されて
6
いないのである。そこで本研究では、女性の化粧
とめると、公的自意識と化粧には関連性が高いと
における社会的役割を男性スキンケアの社会的役
結論付けることができる。
割に、女性の化粧行動を男性スキンケアと当ては
めて、既存研究の考察を進めていく。
(4)自己呈示
(2)公的自意識
前項で個人の心理的な要因における他者から見
られていることによる意識として公的自意識の考
公的自意識とは(Fenigstein, et al[1975])による
察を行った。そこで本項では、公的自意識と対な
と、他者に観察される自己の側面に注意を向ける
ものと考え、自己から生まれる意識として自己呈
程度に関する個人差を指している。この研究をス
示について考察していく。
キンケア行動にあてはめた場合、他者から自分の
まず自己呈示とは、
(Leary [1994])によると、自
肌はどのような印象を受けるのかを気にすること
己に対する他者の知覚(印象)をコントロールし
を指すものといえる。なので、肌を綺麗にしたい
ようとする過程、と定義づけられている。スキン
理由としては、他者からの印象をよくしたいとい
ケア行動の場合、スキンケアを行うことで、自己
う周囲の影響が強いと考えられる。また
に対して他者からのイメージを変えることができ
(Duval,Wicklund[1972])では、自己に注意が向か
るのである。また(小島[2007])によると、自己の
うことにより現実の自己が‘かくありたい自己像’
行動や態度に対して他者の注視がある状況下では、
と比較され、その間のギャップが強く意識される
他者の抱く自己の印象をコントロールしようとす
ようになる、述べられている。つまり、スキンケ
る動機が高まりやすい、といわれている。つまり、
アをすることによって理想の自己を作り、その理
他者から見られているという意識がより高い人ほ
想の自己を見ている他者に対して、現実の自己よ
ど自己の印象をよく見せたいのである。さらに(藤
りもいい印象を与えたいと感じているのである。
島・町田[2005])によると、化粧行動は自己呈示行
次 に 数 ある 公 的自 意 識の 特徴 の 一 つ と し て 、
動の一つであり、他者に良い印象を与えたいとい
(Fenigstein[ 1979])は、他者からの評価的フィー
う動機づけと連動している、といわれている。以
ドバックに敏感である、と述べている。言い換え
上より、化粧をして自己を繕うことと、他者に見
ると、公的自意識の高い人は他人の印象を気にす
られたいという感情は密接に交わっているといえ
るだけでなく、他者からの評価も大いに気にする
る。よって自己呈示は化粧行動との関係性が高い
ということである。このことはスキンケア行動に
のである。
おいて、自分が作り上げた理想の自己に対しての
他者からの評価を気にすることと解釈することが
(5)賞賛獲得欲求・拒否回避欲求
できる。さらに公的自意識の特徴の二つ目として、
(菅原・岩男・松井
[1985])によると化粧に対す
る関心が高い、といわれている。さらに
(小島・太田・菅原[2003])は、自己呈示の他者か
(Miller&Cox[1982])によると、公的自意識と化
らの評価を気にするという点に着目し、賞賛獲得
粧の使用量との正相関を見出している。以上をま
欲求と拒否回避欲求の二つの欲求を見出した。
7
その中で、賞賛獲得欲求の強さは、 自己の能力
の高さや性格の良さなど、 自己の肯定的な側面へ
(6)心理面における化粧行動
の注意を喚起し、 そのような側面を呈示する必要
のある対人場面での積極性につながると考えられ
る。 スキンケアに置き換えると、自己の肌を綺麗
本項では、前述で触れた化粧行動を心理的な面
にしたいと考えることであり、さらにはその自己
から考察していく。(平松[2007])は、メイクアッ
を他者との交流の際、よりよく見せようと考え、
プによる自己の外面の不満や欠陥のカバーにとも
行動することといえる。積極的に自己の良い部分
なう外見魅力の上昇などが、自信や満足感を高め
を他者に見せることで、他者の中での自己をより
ていると考えられる、と述べられている。また、
(余
肯定的に見せたいという欲求である。
語・浜・津田・鈴木・互[1990])でも、化粧の心理的
賞賛獲得欲求と対比する形で、拒否回避欲求が
効果として、自信と満足感を高める効果がある、
存在する。拒否回避欲求の強さは、 自己の否定的
といわれている。これらの研究より、化粧によっ
な側面が他者に露呈しないこと注意 が喚起され
て自信の外見的魅力が上がったと感じ、心理的効
るため、 対人場面では自己の能力や性格が否定さ
果において肯定的な影響を与えている。この肯定
れないように防衛することを促すと考えられる。
的影響がスキンケアの心理的効果に当てはまるの
つまりは、どのようにすれば他者から否定的に思
で、同じことがいえるだろう。また(大坊[2004])
われないかを考え、行動している人のことである。
では、化粧をすることは、対人関係を円滑に展開
スキンケア行動の場合、自己の肌が綺麗と思われ
していく効果がある、と述べられている。よって、
るよりも汚くないと思われたい、肯定的な意見は
化粧を行うことで個人的な心理におけるプラスの
求めていないけれども、否定的な意見は避けたい
効果だけではなく、対人においてもプラスの効果
と考える欲求のことである。
を得ることができると、上記の研究によって解明
また(小島・他[2003])の研究においては、他者か
されている。
ら自己に対しての評価がプラスなものである、肯
定的フィードバックと一方、他者から自己に対し
2.仮説設定
ての評価がマイナスなものである、否定的フィー
ドバックの二つの条件を設定し、それぞれどのよ
うな反応がみられるのかを検証した。その結果、
以上の研究により我々は、他者から見られてい
肯定的フィードバックを与えた場合、賞賛獲得欲
ることへの意識である公的自意識によってスキン
求が強い人は満足を、拒否回避欲求が強い人はテ
ケアの購買に与える心理的影響と自己に対するこ
レの感情がそれぞれ相対的に関係していることが
とへの意識によってスキンケアの購買に与える心
見出された。一方、否定的フィードバックを与え
理的影響が示された。これらから我々は次の仮説
た場合、賞賛獲得欲求が強い人は怒りを、拒否回
を導出した。
避欲求が強い人はハジの感情が関連していること
が顕著であったことが明らかになっている。この
(1)公的自意識の既存研究から消費者は他者か
結果をもとに次項以降で、購買と絡めながら研究
ら見られているという意識があり、スキンケアに
を進めていくこととする。
当てはめると、自身の肌がどのように思われてい
8
るかを気にすることで公的自意識は高まる。その
拒否回避欲求が強い人はテレの感情が見出されて
公的自意識が高まった人は化粧に対する関心が高
いる。また、否定的フィードバックを与えた場合、
く、他者からの評価的フィードバックに敏感であ
賞賛獲得欲求が強い人は怒りが、拒否回避欲求が
る。その化粧に対する関心が高いというのは、現
強い人はハジの感情が見出されている。したがっ
状分析からスキンケアに対する意識が高いことか
て、賞賛獲得欲求が強い人は他人からの評価を肯
ら言えるため、消費者の公的自意識は高いと理解
定的に見せたいと考えて行動するため、肯定的評
することができる。したがって、評価的フィード
価フィードバックを与えたほうが、購買意図が高
バックに敏感である消費者が他者からプラスの評
まるのではないだろうか。それに対して、拒否回
価的フィードバックすなわちプラスの影響を受け
避欲求が強い人は、どのようにすれば他者から否
た場合と、他者からマイナスの評価的フィードバ
定的に思われないかを考えて行動するため、肯定
ックすなわちマイナスの影響を受けた場合にスキ
的評価フィードバックを与えたほうが、購買意図
ンケア商品の購買に積極的になるのではないだろ
が高まるのではないだろうか。このことにより、
うか。それは評価に敏感である人ならばどちらの
異なった形式の消費者への興味関心とスキンケア
評価であっても評価を受けたことで積極的になる
商品の購買のズレを解消できるアプローチ方法の
と考えられる。このことにより、男性スキンケア
一つなのではないだろうかと仮説を設定した。
における興味関心とスキンケア商品の購買のズレ
2-1.賞賛獲得欲求が高い人は肯定的評価フィー
を解消できるのではないだろうかと仮説を設定し
た。
ドバックを与えたほうが、購買意図が高まる。
2-2.拒否回避欲求が高い人は否定的評価フィー
1-1.評価に敏感である人がプラスの影響を受け
ドバックを与えたほうが、購買意図が高まる。
た場合、スキンケア商品の購買に積極的になる
1-2.評価に敏感である人がマイナスの影響を受
(3)化粧行動の心理的効果の既存研究から、化
けた場合、スキンケア商品の購買に積極的になる
粧を行うことで自信と満足感を高める効果があり、
また、女性の化粧行動を男性スキンケアと当ては
めているので男性がスキンケアをおこなったなら
(2)自己呈示の既存研究から、消費者は自身に
ば同様の効果があると考えられる。また、前述し
対する他者からの評価を自ら変えようとすること
た公的自意識の既存研究で、公的自意識と化粧の
であり、この自己呈示行動の一つに化粧行動が含
使用量は正の相関が見出されていることから化粧
まれている。また自己呈示には賞賛獲得欲求と拒
を行っている人は公的自意識が高く、化粧品の使
否回避欲求の二つを見出し、賞賛獲得欲求は積極
用量が多いのだということが理解できる。つまり
的に自身の良い部分を他者に見せて、他者からの
化粧品の使用量が多いと言うことは、化粧品の消
評価をより肯定的に見せたい欲求の強い人であり、
費が早く購買のサイクルも早いということになる。
拒否回避欲求は、どのようにすれば他者から否定
このことから、公的自意識が高い人がスキンケア
的に思われないかを考えて行動する欲求の強い人
を行ったならば心理的効果として、自信と満足感
と言える。さらに、肯定的フィードバックを与え
を高め、使用量が増え、消費が早く購買に積極的
た場合、賞賛獲得欲求が強い人は満足の感情が、
になるのではないだろうか。このことにより、ス
9
キンケア商品の購買・消費の流れをよりスムーズ
になるのではないだろうかと考え仮説を設定した。
3-1.公的自意識が高い人ほど、スキンケア商品
(2)本調査詳細
本調査の具体的内容は心理面における個人差要
を購買・使用する
因群の公的自意識と自己呈示について着目し検討
された尺度を利用する。公的自意識の高いグルー
プと低いグループで分けて高いグループへ向けた
3.仮説検証
分析を行っていく。また自己呈示で賞賛獲得型欲
求と拒否回避型欲求の 2 種類を検討された尺度を
本章では上記した仮説を調査・検証を統計処理に
利用し購買行動との関連性を検討していく。
よって行っていく。自己呈示の他者からの評価を
公的自意識尺度として(菅原[1984])によって検
気にするという点に
討された公的自意識の因子を尺度項目として利用
する。(Fenigstein[1975])が作成した尺度項目であ
り、菅原が独自に選択、収集した 26 項目を 7 件法
(1)調査概要
の反応形式で回答させた項目である。特に因子負
荷量 0.65 以上の 5 項目を公的自意識尺度として利
本研究では、現状分析で調査対象におけるスキ
用する。次に自己呈示尺度として(小島[2007])に
ンケアへの興味や使用に関する情報は得られてい
よって検討された賞賛獲得欲求・拒否回避欲求尺
るため、仮説における調査項目を設定して本調査
度項目を利用する。(小島・太田他[2003])により各
のみを行う。本調査では男性のスキンケアに対し
欲求について抽出された各 9 項目より関連性の高
て心理面の質問をアンケート用紙と WEB アンケ
い項目を独自に 5 項目ずつ選択した。上記のそれ
ートにて回答を得た。次に調査対象だが前述して
ぞれの尺度からアンケートの設問 3 つとの関連に
いる通り本研究の目的として若年層のスキンケア
ついて検討していく。
グッズの購買を促進することで年齢を重ねてもス
仮説を検討する上で必要となる設問 2 では男性
キンケアの有用性を理解した状態で団魂の世代ま
の購買意思決定までを自己呈示の影響を考えてい
で継続使用をしてくれる事を期待している。その
る。前述した項目に関しスキンケアへの関心の高
ため対象の大学生の男性とし、スキンケアの購買
まりと影響された行動について回帰分析にて検定
意思決定までの自意識に対する外部影響を主に質
していく。また自意識に対して情報処理との関連
問した。調査期間は 10 月 29 日と 30 日の 2 日間で
性についても検討する必要を考え 4 つの項目で回
ある。有効回答数は 288 人であった。アンケート
帰分析を行う。設問 3、設問 4 では肯定的評価、否
の具体的内容は後述し、アンケートは補禄で掲載
定的評価の状況設定をしたダミー変数を利用した
する。
t 検定を行っている。諸項目を 4 件法で回答しても
らい、その平均に対し公的自意識、自己呈示尺度
図表-X 本調査概要
で平均値の相関関係について検討していくと共に
研究目的であるスキンケアと外部要因について考
えていく。最後の設問 5 では本論で引用した検討
10
された尺度を利用した尺度測定を行っている。ま
ず公的自意識を高群と低群にグループ分けするた
めに我々はこの前述した高負荷量の因子項目に対
し 1 項目につき平均 2.5 以上を高い公的自意識を
もつ集団と設定し、本論では 5 項目の得点を合計
12.5 以上である対象を公的自意識の高群と設定す
ることとする。また公的自意識の低いグループに
まず購買欲求に関する肯定的評価と否定的評価の
ついては本論では検討しない。
項目を公的自意識の高いグループと低いグループ
自己呈示尺度の利用はそれぞれが賞賛獲得欲求
の平均値で比較していく。公的自意識の高群と低
と拒否回避欲求に関する高い因子を利用している
群の平均を比較検討していく上で「肌が汚い」
「肌
ので調査それぞれの平均値との比較との対応関係
が綺麗」というダミー変数を設定し、評価を受け
を検定している。
たことでそれぞれの影響に差があるのか検討する。
まず図表 2、3 は結果である。グループ統計上では
(3)仮説検証
両グループに平均の差が見て取れる。これが有意
差であるかを求めていく。等分散性の Levene 検定
1-1.評価に敏感である人がプラスの影響を受け
の等分散が仮定されている F 値と優位確立を利用
する。F 値が肯定的評価 2.95、否定的評価 0.121
た場合、スキンケア商品の購買に積極的になる
1-2.評価に敏感である人がマイナスの影響を受
という結果が得られた。優位確立が肯定的評価
0.089、
否定的評価 0.728 となり優位確立 5%
(0.05)
けた場合、スキンケア商品の購買に積極的になる
以上であったため等分散が仮定されているとする。
公的自意識の分析において前述していた
この場合自由度(n1+n2-2)の t 分布に従う。図表
(Fenigstein[1975])が作成した尺度項目を引用して
3 より優位確立(両側)は 0.000 であり危険率 1%
(菅原[1984])によって検討された公的自意識の因
未満で母分散は等しくないと言える。図表 3 の結
子負荷量 0.65 以上の尺度項目を分析で利用する。
果から 2 つの母平均の差の検定の等分散が仮定さ
Excel で因子得点の合計値を算出し合計得点を
れている項目を見ると優位確立 0.000 であるから
12.5 以上の公的自意識の高いグループに対してそ
優位水準 0.01 未満となり両グループには差がない
れぞれの質問項目から t 検定を行っていく。
という帰無仮説は棄却される。両グループには差
があると検定できる。
■表―――4
仮説の検討として公的自意識の高群と低群の間
の平均値はおおよそ 0.3~0.5 の差があり高群の方
が肯定的評価と否定的評価のいずれも評価を受け
た方がスキンケアに対する欲求は上がりスキンケ
ア商品への購買欲求が高まると言える。特に公的
自意識が高い高群に対しては否定的評価を与えた
■表―――5
方がよりスキンケアへの欲求が高まることが求め
られた。
11
■表―――7
2-1.賞賛獲得欲求が高い人は、肯定的評価フィ
ードバックを与えたほうが購買意図は高まる。
2-2.拒否回避欲求が高い人は、否定的評価フィ
ードバックを与えたほうが購買意図は高まる。
仮説 2 を検証する場合でも t 検定を利用する。
5 項目をそれぞれ t 検定で分析し、等分散のため
本仮説では仮説 1 とは違い前述した自己呈示尺度
の Levene の検定の優位確立に着目すると優位確
を高群と低群に分ける手法は使用しない。それぞ
立 0.05 未満が水準優位で平均値の差を認めるが 3
れの「肌が汚い」
「肌が綺麗」と言われた条件下で
項目が 0.05 未満であったので等分散が仮定されて
の質問項目に対し当てはまるかどうかを各尺度で
いないとなった。残りの項目を等分散が仮定され
回答してもらった。この場合コードを 6.00 に当て
ているとした。結果 2 つとも優位確立(両側)で 1%
はまるとやや当てはまると回答とし 5.00 をあまり
水準で優位を下回ったためすべての項目で 2 つの
あてはまらないと、あてはまらないとした。その
グループに差が認められた。
尺度間の差に着目し検討していく。自己呈示には
■表―――8
賞賛獲得欲求と拒否回避欲求があるとされ仮説 2
では小島・太田ら[2003]により各欲求について抽出
された高い負荷量を持つ因子を各 9 項目より関連
性の高い 5 項目をそれぞれ選択し、これを利用す
る。
図表 4 で質問は
「肌が汚いと言われたことで、
」
スキンケアに興味が出ましたか」
「肌が綺麗と言わ
れたことで、スキンケアでより綺麗になりたいで
すか」を検証している。それぞれの欲求に関して
項目がいずれも差が認められることが望ましいが
■表―――9
3 項目以上が差に優位性を持った場合仮説は立証
とする。
■表―――6
続いて「肌が綺麗」と言われたことでの両グル
ープの差を検討していく。等分散性のための
Levene を参照すると優位確立 0.05 未満が 2 項目
存在し等分散が仮定されていないとした。残りの
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項目を 2 つの母平均の差の検定に着目する。平均
尺度の利用を変え、因子負荷量が比較的に高い因
値の差を見るとすべてが優位確立 0.05 未満であり
子から独自に選択し項目として利用した。スキン
5%水準で優位であった。
ケアへの欲求に関しての項目との比較でそれぞれ
この点から自己呈示の面においてもスキンケア
の平均の差について検定を行いそれぞれの項目に
への関心は高まることが言える。この結果より仮
対し両グループの差を利用した。結果からいずれ
説 2 において肯定的フィードバックと否定的フィ
の項目からも優位性のある差が認められまた当て
ードバックは購買意図を高めると言える。次にど
はまるグループの度合が高いため仮説は立証され
ちらが自己呈示としてより影響があったのだろう
た。この仮説 2 の検証の際に賞賛獲得欲求の高い
か。これらの因子項目それぞれに 1%水準で優位が
グループは肯定的フィードバックにおいてより購
示されているためこれらを利用して比較検討を行
買意図を高める影響があることが分かった。自己
っていく。この場合において評価フィードバック
呈示は賞賛獲得欲求と拒否回避欲求の 2 面性があ
による購買意図をより高める方を求めたいので標
り片方だけが存在するわけではない。賞賛獲得欲
準偏差を各項目ずつ比較していく。
求は平均値のみをみると拒否回避欲求より数値上
■表―――10
では劣るがより影響が大きいことが結果から得ら
自己呈示尺度
拒否回避欲求1
標準偏差
0.98407
比較
<
標準偏差
0.87577
自己呈示尺度
賞賛獲得欲求1
れた。これらの検証から我々が男性に向けたスキ
拒否回避欲求2
0.94713
<
0.93372
賞賛獲得欲求2
拒否回避欲求3
0.93365
<
0.87204
賞賛獲得欲求3
ンケアの提案は否定的な影響も肯定的な影響も実
拒否回避欲求4
0.92726
<
0.43254
賞賛獲得欲求4
拒否回避欲求5
0.84507
>
0.86343
賞賛獲得欲求5
用的だと言える。またそれぞれの尺度より男性の
特性の理解も得られ有意義な結果が得られた。個
図表 8 より項目 4 つが賞賛獲得欲求を拒否回避
人の心理的な要因である、他者から見られている
欲求が下回る結果となった。これにより購買意図
ことによる意識と自己から生まれる意識の 2 つの
が賞賛獲得欲求の高い人対しての肯定的フィード
影響を他者からの評価に絡めスキンケアの提案を
バックが購買意図を高めると考えられる。
行うことがこれからの男性スキンケアには必要で
はないかということが言える。
4.仮説検証まとめ
4.新規提案
本論においてスキンケア行動に対し自意識と他
者からの評価の相関関係について考えてきた。結
果として仮説として設定したすべてが立証された。
(1)新規提案の導入
t 検定を用いたこれらの仮説検証は男性が持つ公
本研究においては、分析結果から評価に敏感であ
的自意識の特に高い層の他者からのプラスまたは
り、さらには否定的なフィードバック受けた場合
マイナスの影響を受けることでスキンケアへの欲
により効果があると検証されたので、この二つを
求を高め、購買に繋がる可能性を示すことが出来
軸に新規提案を行っていく。
た。結論からより評価に敏感な男性(公的自意識
の高男性)は他者からマイナスな影響を受けた方
(2)新規提案の概要
がよりスキンケアへの欲求を示すことが出来た。
仮説 2 に対しては同じく t 検定を行っているが
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本研究における新規提案の概要は、昼間に会う
他者から肯定的な評価を得るために、朝と夜のス
キンケア行動が大事であるということを、いくつ
(4)深夜におけるプロモーション
かの広告を使い男性に広く普及させる。前章まで
で、他者からの評価を気にすることが明らかにな
夜には一日の肌の汚れを落とすという役割が存在
ったので、他者からの評価をより良くするものと
するが、広告において朝同様、夜専用のものはな
して進めていく。花王のホームページでは、朝の
く、さらには街頭広告も存在していないのが現状
起きたばかりの肌は前の日(入浴後)の約 8 倍も
である。電車の中吊り広告には夜の下り電車にビ
ベタついていて、寝ている間に分泌された過剰な
ールの広告が多くなることを参考にし、帰宅する
皮脂を取り除く必要があり、夜は一日の汚れを落
男性に PR するために、下り電車での中吊り広告に
とすために必要と述べられている。しかし、スキ
肌の汚れを強調するものを打つ。また、歯磨き粉
ンケア行動を一日に二回行う必要があるといわれ
や口臭のように、その行為をしなくても生きてい
ていて、さらに個人によって肌質が違うにもかか
けるが、それ自身には悪影響なことだと認識させ
わらず、広告の例として CM を見た場合、一日中
るプロモーションを提案する。それを企業が行う
同じ CM しか行われていないのが現状である。そ
ことで男性がスキンケアの必要性を感じさせるこ
こで私たちは、昼間の他人と触れ合う場面が多い
とによってスキンケア商品の購買につなげる。
時間により他者からの印象をよくするために、朝
自宅で肌を綺麗にして、外出をし、夜の帰宅後は
一日の汚れを落とすことを促すために、朝と夜で
(5)新規提案まとめ
別々のプロモーションを打つことを提案する。
以上のように朝と夜という別々のプロモーショ
ンを打つことによって、これまで使用していた人
(3)早朝におけるプロモーション
には一日二回という習慣づけをさせ、使用してい
なかった人には使用に至る動機づけをさせるとい
朝起きたての顔は、夜よりもベタつきが激し
う意味で、この提案を提唱する。
いことは一般的に知られていないので、ベタつき
とるために朝のスキンケア行動が必要だというこ
結論
とを強調した、朝専用の広告を打つべきであると
考える。また、一人でも多くの男性に朝にスキン
ケア行動をすることが重要だと認識させるために、
本研究はまず、女性と比較しての男性スキンケ
電車の中吊り広告にベタつきをアピールした広告
ア市場規模の小ささに着目した。そこで男性スキ
を打つことで、通勤時に男性の目に留まりやすく
ンケアにおける興味・関心と購買のギャップを埋
なる。これら二つの広告を打つことで、私たちが
めるべく、研究を進めてきた。
ターゲットとしている学生だけでなく、ビジネス
分析結果によると、評価に敏感である人がマイナ
マンなどにもスキンケア行動を印象付けることが
スの影響を受けた場合により購買に積極的である
できるのではないだろうかと推測できる。
ことが立証された。つまりは、他人からの目を気
14
にしやすい人には、マイナスの影響を与えたほう
菅原健介・岩男寿美子・松井豊[1985]『化粧行動に
が、より購買につながりやすいと結論づけること
関する心理学的研究-化粧行動に及ぼす自意識の影
ができる。また、賞賛獲得欲求と拒否回避欲求は
響 - 』( 社 会 心 理 学 会 第 26 回 大 会 発 表 論 文 集
どちらも有意であると立証されたが、賞賛獲得欲
106-107.)
求が強い人に対する肯定的フィードバックを与え
松井豊・山本真理子・岩男寿美子[1983]『化粧の心
られたほうが、標準偏差が高かった。よって、人
理的効用』
(マーケティング・リサーチ,21,30-41)
の内面には2つの欲求があるが、中でも賞賛獲得
余語真夫・津田兼六・浜知世・鈴木ゆかり・互恵
欲求に訴えかけたほうが、より購買意欲が高まる
子 [1990] (女性の精神的健康に与 える化粧の効
という結果を得ることができた。
用健康心理学研究,3,28−32,
)
藤島嘉嗣・町田玲奈[2005]『化粧行動におけるスポ
ットライト効果:化粧行動の顕現性推測における
参考文献
自己中心性バイアス』
(昭和女子大学生活心理研究
所紀要
Vol.8)
薬事法(2014 年 3 月 31 日最終発行)
株式会社花王 HP
現代商品大辞典 新商品版(1986 年)
http://www.kao.com/jp/
化粧行為にみられる自己 : 他者間の対話的関係性
への考察(2009 年)木戸彩恵
自己意識が化粧行動と、素顔を見せることに対す
る抵抗感に与える影響(2006 年)
平松隆円[2007] 『スキンケアによる感情調整作用
に関する研究』
(大学共同利用機関法人人間文化研
究機構国際日本文化研究センター)
Duval,S.,&Wicklund,R.A.[1972] 『 A theory of
objective』
self-awareness.
NewYork:AcademicPress
Fenigstein,A.[1979]
『
Self-consciousness,self-attention,andsocial
interaction.』(Journal of Personality and Social
Psychology,37,75-86)
Leary,M.R.[1994]
management
and
Self-presentation Impression
Interpersonal
behavior
,
Dubuque Iowa ( Brown & Benchmark)
Miller,L.C.&Cox,C.L.[1982]
For
appearances
sake (Public self-consciousness and makeup use.
Personality and Social Psychology Bulletin , 8,
748-751 )
15
16