初期変形性膝関節症患者に対する B-SES の効果 The effect of B-SES for the early stage of knee osteoarthritis 長谷川 聡、小林 雅彦、森谷敏夫 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 下鴨病院整形外科 京都大学大学院人間・環境学研究科 【目的】初期変形性膝関節症(以下 OA)に対しては大腿四頭筋の筋力トレーニングなどの 保存療法が第一選択とされるが、我々はベルト電極式骨格筋電気刺激法(以下 B-SES)を 用いた受動的トレーニングによるセルフマネージメントの確立を進めている。本研究では、 下肢筋力トレーニングを含むセルフトレーニングを実施した群と B-SES トレーニングを実 施した群の 4 週間のトレーニング効果を比較検証した。 【方法】片側膝関節に症状をもつ初期 OA 患者 20 名を対象とし、下肢の筋力トレーニング を中心とした 10 種類のセルフエクササイズを毎日行う群(CON 群)10 名と B-SES によ る筋力トレーニングを週 5 日間実施する群(B-SES 群)10 名とにランダムに振り分けた。 両群ともトレーニング期間は 4 週間とした。B-SES 群は B-SES により大腿四頭筋・ハムス トリングス・下腿三頭筋・前脛骨筋を 20 分間同時収縮させた。刺激周波数は 20Hz、duty cycle5 秒 on・2 秒 off とした。評価はトレーニング実施前、4 週間のトレーニング直後、終 了 3 ヶ月後に、大腿部と下腿部の筋厚・膝伸展屈曲筋力・10m 歩行速度・JKOM score・ visual analog scale(以下 VAS)を用いた疼痛の経過を評価した。尚、本研究は本学医の倫 理委員会の承認を受け、患者に研究の主旨を説明し、同意を得て行った。 【結果および考察】膝伸展筋力は 4 週間のトレーニング後に CON 群、B-SES 群それぞれ トレーニング前と比較して平均 6.0%、32.0%増加し、増加率は両群間で有意な差を認めた。 4 週間のトレーニングによる筋厚の変化は、CON 群、B-SES 群の平均変化率がそれぞれ、 外側広筋で+4.5%、 +25.9%、 下腿筋で+2.6%、 +27.9%であった。 10m 歩行速度、JKOMscore、 疼痛は B-SES 群でのみ有意な改善を認めた。初期 OA に対する B-SES トレーニングは、 大腿および下腿の筋肥大、筋力増強をもたらすことによって、歩行能力の向上、膝関節痛 の軽減をもたらす可能性が示唆された。
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