小学校国語科 ディジタルコンテンツ活用実践アイディア

これは使えるディジタルコンテンツ小学校活用事例
小学校国語科
ディジタルコンテンツ活用実践アイディア
市原
抄
録
俊和
児童は授業のなかで,多くの認知処理を行っている。
国語科の教科書は,情報教育の宝庫でもある。情報活
黒板に書かれた情報,教科書の情報,教師からの情報,
用能力を育成する教材が数多く掲載され,国語科は,IT
他の児童からの情報等,多くの情報を次々に認知処理し
機器との親和性の高い教科の1つである。
ていかなくてはならない。この負荷は大変大きく,特に
児童の認知処理を考えるとき,視覚的な認知処理を IT
機器によって支援できるならば,児童の認知負担は大幅
認知処理がアンバランスな場合はなおさらである。
IT の活用は,この認知処理の負荷を軽減させ,学習効
果を上げるうえでも有効な手だてである。
に軽減されるであろう。
<キーワード>
情報教育,情報活用能力,IT 活用,認知,小学校国語科
1
国語科と情報教育
いうまでもなく,情報教育はコンピュータ教育のこと
ではなく,社会において進展し続ける情報化に相応した
「情報活用能力」を子どもたちに身に付けさせることで
ある。
3
IT 活用アイディア
(1)スライドショーで発表の仕方指導
-3年「わたしのお気に入りの場所」
(東京書籍)-
*本内容は熊本市立飽田東小学校教諭 前田康裕氏の「アップとルーズ
で伝える」の実践を参考に構成した。
①
小学校国語科の教科書を開いてみると,実に多くの“情
報教育”教材が掲載されていることに気づく。
例えば,教科書「新編
新しい国語
三年」
(東京書籍)
目
的
・ 話の中心を考えて目的に応じた説明の仕方をくふ
うする。
②
使用する IT 機器等
「知ってほしいな,自分のこと」では,自分に関する情
・ デジタルカメラ
報を適切に選択し,相手に伝わるようスピーチをする単
・ パソコン(使用ソフト:Windows フォトストーリー)
元もある。国語科の学習において情報活用能力の育成は
・ プロジェクタ
日常的に行われており,国語科は,IT 機器の活用とも親
③
和性が高い教科といえよう。
・ グループで,お気に入りの場所についての発表につ
活用方法
いて計画を立てる。
2
認知処理と IT 活用
通常,われわれは外界からの情報をインプットし,脳
の中枢でその情報を認知し,アウトプットするという一
連の処理を行いながら生活している。その処理は,全体
としてまとめて処理する視覚的なものであったり,連続
的に順に従って処理する聴覚的なものであったりする。
これらの認知処理はバランスよく発達するものであ
るが,どちらかの処理がうまくできないなど個人差もあ
る。児童の認知処理に合わない授業は学習効果が上がら
ないばかりか,児童の学習意欲の低下を招くことになる。
ICHIHARA
・ お気に入りの場所に行き,デジタルカメラで紹介し
たい対象を撮影する。
・ 撮影した写真をプリントアウトし,協議しながら必
要な写真と不必要な写真とを選り分ける。
・ 選択した写真を Windows フォトストーリーのタイ
ムラインに配置する。
・ タイムラインに沿った発表台本をグループで話し
合いながらストーリーを作る。
・ 発表内容に合う BGM をソフトの音楽作成機能を使
ってストーリーに加える。
・ 各グループのストーリーを発表する。
Toshikazu:高知県教育センター(高知県高知市大津乙181)
- 22 学習情報研究 2007.7
④
IT 活用のポイント
・ 漢字を書くことについて筆順に従って書くことを
・ 普段の生活の
身に付ける。
なかからデジ
・ 正しい筆順で漢字を書
タル作品とし
くことで,形を整え,美
て視点を変え
しい字を書く。
ることで,普段
②
気づかなかっ
・ パ ソ コ ン ( 使 用 ソ フ ト : EasyToon ( Keijiro
たことに気づ
使用する IT 機器
Takahashi 氏作,フリーウェア)
くおもしろさがあること。
③
活用方法
・ 多くの情報を吟味し,IT 活用で短時間に取捨選択
・ EasyToon というフリーウェアを使用し,書き順の
しながら,相手によく伝わるための発表の仕方を学
アニメーションを作成する。慣れてくると短時間で
ぶことができる。
何文字分ものアニメーション作成が可能となるた
・ 同じ場所を選んでも,発表の仕方が変わると受け取
め,当番制にして新出漢字アニメーション作成を分
り方も違ってくることに気づき,くふうの大切さが
わかること。
・ 授業のはじめに新出漢字アニメーションで筆順を
(2)プロジェクタの活用で原稿用紙の使い
方指導
①
目
担させる。
確認する。
④
・ アニメーション作成時に筆順を繰り返し確認しなが
的
ら作成するため,自然に正しい筆順を覚えていくこと。
・ 原稿用紙への書き方を知る。
②
・ この活動は教師の筆順指導を補完するものである
使用する IT 機器等
ということが前提であること。
・ パソコン(使用ソフト:MS PowerPoint)
・ プロジェクタ(できるだけ高輝度のものを使用)
③
活用方法
(4)拡大提示で筆使い指導 -書写(毛筆)-
①
・ 最も簡単な方法は,黒板の暗線を原稿用紙に見立て
目
的
・ 点画の始筆,送筆,終筆等を書くときの筆の使い方
ることである。通常,暗線は児童側には目立たない
や運び方がわかる。
ものであるが,強い光線を当てると方眼が浮かび上
②
がってくる。
・ デジタルカメラ
*黒板によっては十分な結果が得られない場合がある。
・ プロジェクタを用意し,パソコンに接続後,黒板に
使用する IT 機器等
・ テレビもしくはプロジェクタ
③
活用方法
・ ほとんどのデジタルカメラは TV 出力機能が付いて
投影する。
いるため,教室のテレビにプレビュー画面を映すこ
・ PowerPoint のスライドショーを実行する。*「F5」
とができる。
キーを押すとすぐにスライドショーが実行できる。
・ 「W」キーを押す。スクリーンがホワイトアウトさ
・ 教師の筆使いは教室後方ほど確認しづらい。そこで,
れ,黒板の暗線が浮かび上がる。再度,
「W」キー押
教師の筆使いをデジタルカメラでズームアップし,
下で元に戻る。
テレビやスクリーンに拡大提示することで,点画の
ポイントを示すことができる。
・ 黒板がそのまま原稿用紙に様変わりするため,直接
④
チョークで書き込みができる。
④
IT 活用のポイント
・ 書写の指導は教師の準備も大変である。デジタルカ
IT 活用のポイント
・ この活用方法は,会話文における「かぎ(「
IT 活用のポイント
メラの TV 出力とテレビを組み合わせることで簡便
」)」
かつ効果的な書写指導ができること。
の使い方や,会話の部分などを改行して書くことの
指導においても有効であること。
・ 黒板にチョークで書き込むことができ,書画カメラ
等と組み合わせて活用することで用途がさらに広
がること。
(3)アニメーション作成で漢字の筆順学習
①
目
的
4
おわりに
国語科の指導においては,情報活用能力を育成する多
くの教材が教科書のなかに掲載されている。IT 活用のア
イディア次第で教育効果を上げる機会は多いと考える。
- 23 市原俊和:小学校国語科ディジタルコンテンツ活用実践アイディア