内容はこちらから(PDF

抄読会 2010/4/25
担当:中岡
Research on treating neuropsychiatric symptoms of advanced dementia with non-pharmacological
strategies, 1998-2008:a systematic literature review
Karan S. Kverno, Betty S. Black, Marie T. Nolan and Peter V. Rabins
International Psychogeriatrics(2009), 21(5), 825-843
総評:A 扱っている論文数は目的に沿って 21 文献に選定されており、妥当な文献数を取り扱っていた。
 論文の選定プロセスは丁寧に述べられ、選定基準も厳密であった。
 メタ分析を実施しなかった理由の記載がなかった。
 扱った論文において、アウトカムとなる NPS(神経精神症状)の測定尺度が明確に示されず、統一されて
いなかった。
 論文内容としては新奇性に欠ける。
感想:Impact factor が 2.1 の journal であり、看護系の author がまとめたシステマティックレビューとして興味
があった。まず、論文自体が長文であり、非薬物治療に関する知識、及び一般的に用いられている専門用語
の訳語を把握しておく必要があった。しかし、非薬物治療についての分類や内容について学ぶ良い機会とな
った。また、一貫して非薬物治療に関して臨床へ有益な示唆が得られる視点で考察されていたことも評価でき
るが、新奇性に富む内容ではなく、総評は A-となった。
Abstract
背景:進行した認知症は重度の認知障害及び機能障害によって特徴づけられ、セルフケアの殆どで依存的にな
る。神経精神症状(NPS)は進行した認知症には一般的であり、QOL を低下させ、ケアの負担を増す。ヘルスケ
ア提供者の挑戦は、安全で効果的な治療を見出すことである。非薬物的な介入は、より安全な代替として薬物療
法を提供する可能性があるが、それらの効果については殆ど知られていない。このレビューは、進行した認知症
において NPS を治療する非薬物的な介入についての文献を評価している。
方法:文献検索は、進行した認知症と診断された患者の NPS アウトカムを測定している 1998-2008 の間の非薬
理学的な介入研究を探すために実施した。まず、厳密な包括基準は、すべての研究参加者は重度かもしくはと
ても重度の認知症であることを要求した。しかし、この範囲は、後で、中等度から非常に重度までのレベルを包括
するように広げられた。
結果:215 の介入研究のうち、21(9.8%)文献が特に、中等度から非常に重度の認知症の対象者に焦点を当て
ていた。それらの研究は、アロマや好みの音楽やもしくは生の音楽、多重感覚刺激を含む感覚に頂点を当てた
方法を用いる高い質のエビデンスに限定されたものであった。疑似現実のような感情志向的アプローチは、残さ
れた言語的な相互的な能力をもつ対象者にはより効果的である可能性がある。
結論:NPS に関与する認知症への多くの介入研究は、軽度から中等度の認知症を対象としていた。重度の認知
障害をもつ対象者に、同様の方法で NPS 治療に効果を示すとは限らない。さらなる研究は、特に進行した認知
1
抄読会 2010/4/25
担当:中岡
症患者への非薬理学的治療をさらに段階を特化した効果へと広げてデザインされるべきである。さらなる研究へ
の特別に必要な領域は、行動基盤療法やタッチセラピーや個別的なケアルーチンの間に提供される介入である。
個人の覚醒パターンのバランスの均衡を保つ場合に、介入は最もよく作用するように思われる。
Introduction
認知障害をもち、severe~very severe な範囲である人々は、米国の特別ケアユニット及びナーシング
ホームにおいて認知症と診断されている入所者の約 40%を占める(Gruneir et al., 2007)。特に、ヘルス
ケアケ提供者にとっての挑戦や患者及び家族の苦悩は、認知症に関連した神経精神症状(NPS)である。
NPS は認知症において一般的であり、advanced 進行した認知症の殆どは一つもしくはより多く有し、
最も一般的な NPS は、agitation 興奮、aggressive behavior 攻撃的な行動、depression 鬱、apathy 無
感情、withdrawal 引きこもり、psychosis 精神障害、aberrant motor behavior 異常行動である(Zuidema
et al., 2007; Kverno et al., 2008) 。さらに、進行した認知症は、多重の医学的な併存疾患に悩まされて
おり(Black et al., 2006)、多くの薬剤が処方されている(Blass et al.,2008)。特に感心の範疇は、NPS に
処方されてきた抗精神病薬に関するリスクである。NPS の薬物療法によって生じている複雑な問題、進
行した認知症患者の QOL 向上への関心によって、非薬物療法への指針が強調されるようになってきた。
最近の認知症患者に対する American Psychiatric Association(米国精神医学会)の診療ガイドライン
では、段階的に特異的な治療計画の発展を提唱している。段階的に特異な治療計画は、現在の知識の統
合による。莫大なシステマティックレビューで、認知症に関する NPS の治療が調べられているが、特に、
進行した認知症のこれらの兆候に対する治療に関して明らかにしたものは知られていない。
このシステマティックレビューの目的は、進行した認知症の NPS の治療に関して過去十年の文献を明ら
かにしてまとめることである。非薬物療法の方針は4つの広いカテゴリーに分割することができる:感
情志向、刺激志向、行動志向、認知志向(Rabins et al., 2007)。進行した認知症患者は、言語的な障害を
有するので、認知的な機能を要さないタイプの非薬物的介入から最も素晴らしい効果を示すだろうと仮
定した。このレビューの焦点は、典型的に人生の最後の 6 カ月の間を指す緩和もしくは終末期ケアでは
ない。それよりも、重度の認知的な障害のある人々に対する非薬物的な NPS 治療、彼らが緩和ケアを受
けているかそうではないのかを明らかする。NPS を軽減する目標は、認知症の段階に関わらず、QOL の
向上である。
10 年前 Opie et al.(1999)は、認知症の行動障害に対する心理社会的なアプローチの効果を調べ、さら
なる研究に、より綿密な方法、大規模な対象者、より広い範囲の環境を推奨した。ここでは、以下の疑
問への答えを探す:(1)進行した認知症の NPS 治療において最近ではどのような進歩があったのか?
(2)現在我々が知ることを示した上で、臨床家にとって批判的な要素は何か?(3)進行した認知症
の最近の治療を明らかにする際に研究者にとって批判的な要素は何か?
Methods
1974 年~2008 年 5 月:電子データベースによる検索~2008 年 5-9 月の間は手作業での検索
MEDLINE, CINAHL, Psyc-INFO, EMBASE, Dissertations International, the Cochran Database of
Systematic Reviews(online research management database)
システマティックレビューの文献リストの手作業検索
Master heading term:dementia, stage(advanced, severe, late stage),
treatments(treatments, therapies, interventions, psychotherapy)
研究・システマティックレビューの・メタ分析・診療ガイドラインに限定
広範囲での検索:全てのタイプの(薬物療法、非薬物療法)治療に関する介入研究
2
抄読会 2010/4/25
担当:中岡
Inclusion criteria に合致する研究
Inclusion criteria
論文審査のある学術専門誌の英語言語の介入研究
i.
全ての対象者が妥当性のある認知機能測定尺度による severe~very severe な基準に合致すること
ii.
重要なアウトカム変数として NPS が測定されていること
Table1(略・改):進行した認知症の病期分類
Scale
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
Mini-mental
State
Examination(MMSE*)
Severe
Impairment
Rating
Scale(SIRS*)
Clinical Dementia Rating(CDR)
Global Deterioration scale(CDS) 別紙
Functional
Assessment
Staging(FAST)別紙
International
Classification
Disease(ICD-10)
Moderately
severe
severe
11-17
0-10
Stage5
Stage6
*最も基本的な尺度
Very
severe
3
Stage6
Stage7
6 以下
MMSE に お い て
6以下の者
Stage7
新しいことを記憶にとどめること
ができない。
以前に学んだ情報の断片しかとど
めていない。
近親者でさえも認識できない。
言語または知性的な観念の消失に
よって示されるその他の認知機能
の衰退。
of
重症度スコアの範囲が示されていない場合に、含めた重症度の決定は、平均認知障害スコアプラス
MMSE0-10 の間の平均からの 2SD もしくはそれに相当する測定値を基にした。
(認知機能障害の基準は、最近、MMSE0-17 もしくはそれに相当して広げられている)
Exclusion criteria
以下の条件を研究から除外した。
Ⅲ薬物療法を優先して焦点を当てたもの、もしくはハーブや食事を用いた非薬物療法と薬物療法を組
み合わせている
Ⅲ電機刺激の効果を調べている
Ⅲ緩和もしくは終末期ケア(NPS を軽減することに特に焦点をあてたものを除き)に焦点をあてて
いる
Ⅲ認知症で睡眠機能異常もしくは睡眠構造に焦点をあてている
Ⅲ一名の症例報告、観察研究、または質的研究
Data synthesis
An adapted version of the Johns Hopkins Nursing Evidence-Based Practice(JHNEBP) model によ
り、基準に適合した全ての研究において、デザインの強度とエビデンスの質を査定した。
Practice(JHNEBP) model:Forbes(1998) Validity Rating Tool 参考(table2)からの基準を用いて実施
されたものである。
Table2 :個々の研究における研究エビデンスの強さと質の評価スキーム
LEVEL
STRENGTH OF EVIDENCE / DESIGN
Ⅲ
実験研究/無作為化比較試験から得られたエビデンス
個人が無作為に違った介入をもつフループに割り当てられた要因的もしくは交叉デザインを含む
Ⅲ
無作為化もしくは調整のどちらかを欠くプレ実験的もしくは、準実験的研究から得られたエビデンス
3
抄読会 2010/4/25
Ⅲ
担当:中岡
非実験的研究、質的研究、メタアナリシスから得られたエビデンス
GRADE
QUALITY OF RESEARCH EVIDENCE
control
methods
sample
conclusion validity
High
検出力分析が報告さ
れている
交絡因子が調整されて
いる
同等群
治療やコントロール状況
における等しい注意と
diversion
記述の複製が許可されて
いる
・欠落:Ⅲ10%もしくは欠損データの分析に
対する他の適切な方法
・少なくとも一つの妥当性及び信頼性のあ
るアウトカム測定ツールの使用
・参加者群への盲検調査
Moderate
どのような対象が選
択されたかの基準が
明確
非等価性のグループも
しくは比較状況におい
て等しくない注意や変
換
主要な詳細が記述されて
いる
・欠落:11-12%とグループの等価性
・少なくとも一つの妥当性及び信頼性のあ
るアウトカム測定ツールの使用
・潜在的は調査者/評価者のバイアスを制
限するいくつかの試み
Low/major
flow(s)
説明なし、小規模の
コンビニエンスサンプ
ル(nⅢ10)
交絡因子を調整しようと
していない
不適切な記述
・欠落>20%,分析なし、報告なし
・データ収集が妥当性のある測定尺度を用
いていない(NPS)
・潜在的な調査者/評価者のバイアス
レベルⅢについてはレビューに含めなかった。終末期近い集団を伴う臨床研究を実施する上で内在する
難しさのため、我々はレベルⅢに、無作為に割り当てられ、あらゆる状況で参加する交叉研究もしくは要
因デザインを含めた。実験的なコントロールに欠く研究もしくは、無作為ではないものは、レベルⅢに含
めた。質の評価は、上下に high~low で評価した。
Results
Selection of studies
ⅢInitial search strategy:3826 文献
↓タイトルとアブストラクトを基に除外:3366 文献
460 文献:認知症における非薬物療法に関する文献(オンラインデータベース)
+30 文献(オンライデータベースとシステマティックレビューの引用文献からの手作業検索)
+11 文献:initial search では明らかにならなかったタッチやマッサージを含む文献(オンラインデータベース)
↓
Ⅲ除外基準(Ⅲ)-(Ⅲ)からの選定
+ ・1988 年以前の文献の除外
・最近の 10 年の研究を含まない、もしくは
認知症の NPS 治療に焦点を当てていないシステマティックレビューの除外
↓
215 介入研究
↓
Ⅲ認知症における非薬物的・心理社会的療法の APA(American Psychiatric Association practice
guideline, Rabin et al., 2007)の 4 カテゴリーに分類
研究はNPSだけでなく、広く治療の焦点によって分類されている。
例えば・・・
Sensory-oriented treatment:感覚を刺激するあらゆる療法を含む(運動、アロマテラピー、音楽を聴
く)、時々引きこもり行動(無感情)や破壊的な行動(興奮)に照準を当てている
Emotion-oriented treatment :喜びを増し、悩みを軽減することに焦点が当てられている(確認療法
validation therapy、疑似刺激療法 simulated presence therapy)
4
抄読会 2010/4/25
担当:中岡
Behavior-oriented treatment:進行した認知症での安全や有益な環境を作り出すことに特に焦点をお
いている(適切な空間、騒音、特別ケア病棟)Ⅲreinforcement 強化や redirection の技術も行動志向
的療法に含めることもできるが、我々の基準には含められる内容はなかった
Cognitive-oriented treatment : 現 実 見 当 識 訓練( RO) reality orientation, 認 知 訓 練 cognitive
retraining, 技術訓練 skills training のような言語を基盤とした療法を含むⅢ進行した認知症のNPS
療法においては認められなかった
↓
Ⅲ最終段階
進行した認知症に対する非薬物療法に関する研究を明らかにした。
215 文献中
4 文献:severe dementia(MMSE0-10)
+17 文献:moderately severe~severe(MMSE0-17)
Table3
Ⅲ以下の項目別に文献を整理
著者と場所
認知障害の
重症度
治療と
対象群
NPS 症候と
アウトカムの測定
データ収集の
タイミング
期間と追跡
研究デザイン
結果
強度/質
進行した認知症を対象にしたシステマティックレビューはなかった。
2000~2008 年の間に出された 143 の介入研究を包含する最近のシステマティックレビュー22 文献
のうち、moderately severe~very severe な認知症障害(=進行した認知症)を対象にしているのは、
わずか 11 文献(7.7%)であった。
Data synthesis
Severe な認知症に対する厳密な基準に合致した対象に焦点を当てた 4 つの研究によって、興奮に対す
る非言語的な影響を調査した。
3 文献はアロマテラピーの効果で、
1 文献は光療法の影響を調査していた。
moderately severe から severe の認知症(MMSE0-17)の基準に合致した対象者を用いた 17 の介入研
究を加えた後の結果は以下である:
4 文献:感情志向アプローチ(感情志向 2/疑似刺激直面療法 2)
3 文献:行動/環境アプローチ(
15 文献:感覚刺激志向アプローチ(アロマ 4/光 2/行動療法 3/音楽 3/MSS2/タッチ 1/ Balancing arousal1)
1 文献:感情志向(疑似刺激)と感覚志向的療法(音楽)との比較→両者に分類;Garland et al.(2007)
0 文献:認知志向的療法
Emotion-oriented approaches
4 文献
・レベルⅢ
・3 文献は quality: high 1/1 文献は quality: moderate
<VERBAL AND NON-VERBAL・EMOTION-FOCUSED CARE>
2 文献:multi-center RCT
Magai(2002):感情への非言語的な表出を認識することによる研究で、NPS の変化をいくつかの尺度で
測定、ケア提供者の 6 週間のトレーニングにおいて感情的に感覚的なケアを受けた群はより良い効果を
得た。
Finnema(2005):感情に焦点を当てたケア(validation、回想)、中等度の認知症には有効であったが、
5
抄読会 2010/4/25
担当:中岡
重度の認知症には有効ではなかった
2 文献では一貫性がなく、一方は非言語的な側面に焦点をあて、もう一方は言語能力への介入であった。
上記の文献から、感情に対する非言語的な側面に関する感度は、感情における短期間のポジティブな効
果が示唆されたが、言語能力に依存する方針は進行した認知症には効果的ではない可能性がある。
<SIMULATEDE PRESENCE 擬似刺激>
家族から、ビデオなどの録音された会話や思い出など
2 文献
Camberg,1999/Garland, 2007:ナーシングホームの入所者(moderately severe ~severe の認知症)
における興奮的な行動へ擬似刺激療法の影響を調査
両者共に、言語的な対話能力のある対象としていたので、進行した認知症を除外していた。
Neutral recording(ニュース、ガーデニング)と usual care(記録なし)の比較をしていた。
結果として、usual care と placebo recording に比べて家族の擬似刺激は興奮行動に、セラピー後短期間
は有意に有効であったことが結論づけられた。→限定された高い質のエビデンスを提供していた。
Behavior or environment-oriented approaches
3 文献
・レベルⅢ:準実験的デザイン(非同等性群で実施)
<SPECIAL CARE UNITS(SCUs)>
2 文献:イタリアのロンバルディ地方で実施された多施設での研究は長期の特別ケア病棟での効果を報告
したもの
moderately severe ~severe の認知症に関する NPS 療法におけるスタッフへの優れたトレーニングによ
るものであった。
Ballelli(1998):スタッフへのトレーニング内容→行動的な問題の認識、潜在的要因の探究、医療的手順
の適用
看護師への指導内容→聴覚的、視覚的刺激を減らす方法、優しいケアや非薬物的療法へ重点
をおくこと、機能的な能力を促進し維持させること(アクティビティを楽しませる、栄養摂取の維持、
転倒予防、身体的・薬物的抑制の不必要な使用)
Frisoni(1998):3 か月間、伝統的なナーシングホームと SCUs における入所者の行動障害の比較 特別
な介入はなかった
2 文献での介入は、NPS の軽減が報告されているものの、明らかに特別なものでなかったので、低い質
評価で、一般化されなかった。
<ENVIRONMENTAL MODIFICATIONS>
Morgan&Stewart(1998):12 か月間、高密度の SCUs と低密度の新しい SCUs の比較
行動障害は低密度において著名に軽減、新しい施設へのスタッフの反応といった調整されていない因子
が、非特異的な影響を与えたかもしれないが、この研究結果は、社会的な密集を減ずることによって進
行した認知症における NPS を減少させるという低いエビデンスを示した。
Sensory stimulation-oriented approaches
進行した認知症への非薬物的療法を調査した研究の 71%が感覚刺激を含んでいた。
感覚刺激志向アプローチにはアロマ、ブライトライト、移動、多重感覚、音楽、タッチセラピーが含ま
れていた。
<AROMATHERAPY>
4 文献
ラベンダーとメリッサ(レモンバーム)の 2 つのオイルが興奮に用いられていた。
ディフューザーの設置場所(量と時期は様々であった)
6
抄読会 2010/4/25
担当:中岡
Holmes(2002):共用スペース→加湿器と比べてラベンダーに 60%が興奮が減少する効果
Lin(2007):個人のベッドサイド→プラセボに比べてラベンダーに興奮、異常行動、抑鬱に有意に効果あり、
エビデンス低い
Snow(2004):匂い袋→効果なし、7 名と少ない対象者
Ballard(2002):スキンクリーム→レベルⅢ、severe の認知症を対象に興奮へのレモンバームの効果を調査、
プラセボ 11%に対してレモンバームでは 35%に興奮が減少した、対象者の行動や引きこもり時間などを
示していた
エビデンスの限界はあるが、ラベンダーとレモンバームはアロマセラピーを実施している期間は興奮や
無感情を軽減する効果が示唆された。
<BRIGHT LIGHT THERPY>
認知症の崩壊した睡眠‐覚醒サイクルは異常行動(徘徊、怒鳴る、せん妄)に関連する可能性がある。
Skjerve(2004):10 名の対象者(severe)、朝に 45 分間のブライトライト療法を毎朝 4 週間→対象者が少
ない、興奮を認める患者のドロップなど
Mishima(1998):無作為、22 名の対象者(moderately severe から severe)、ブライトライトとディムライ
トの 2 種類、1 日に 2 時間(2 週間)の 4 週間間隔、活動はアクチグラフでモニタリング→他の興奮や
NPS の測定尺度を用いずに身体的活動をモニタリング
2 文献とも、異常行動が軽減する効果を認めたが、エビデンスが低い。
<MOVEMENT THERAPY>
2 文献:moderately severe の認知症を対象
行動療法の内容
Holliman(2001):風船バレーボール、拍手、ボールのパス→実験群と対照群に差異はなかったが、相互活
動で積極的な参加者が増えた、対照群のサンプルサイズが不明
Heyn(2003):パンを焼く、スイミング、鳥と飛ぶイメージ(多重感覚活動の運動と連動し音楽や読み聞か
せの介入を含む)→61.5%の参加者がより幸せで、運動療法の参加後に落ち着きを見せた。
2 文献は、参加者や実施内容において一貫性はない。
進行した認知症への運動療法の有用性へのエビデンスの解釈には限界があるという大きな弱点がある。
<MUSIC>
3 文献:moderately severe から severe(MMSE0-17;GDS5-7)の認知症を対象
Garland(2007):以前の記憶のお気に入りの音楽、刺激となるもの(録音された家族による会話)、ガー
デニングブックからのプロセボの録音されたナレーション、普段のケアとの比較(行動障害)。1 週間に
3 回、15 分
Svansdottir&Snaedal(2006):生の慣れ親しんだ音楽と普段のケアとの行動反応の比較(行動の反応)。6
か月間、1 週間に 3 回 30 分
Holmes(2002):注文された音楽(ライヴ、以前に記憶されている音楽)と静けさとの比較(無感情)。30
分続けて
3 文献とも効果があった。
興奮及び無感情において短期間の軽減には音楽療法を用いるというあまり質のよくないエビデンスが限
界である。進行した認知症の患者には以前記憶している音楽よりもライブ音楽や好みの音楽の方がより
効果的であるように思われる。
<MULTI-SENSORY ATIMULATION (MSS)>
Snoezelen 療法
ここでは、他の感覚刺激アプローチと重複するので感覚志向的アプローチに含める。
7
抄読会 2010/4/25
担当:中岡
2 文献:無作為、相互反応的及び身体的技能(カードゲームをする、クイズをする、写真を探す) を要
求する活動に対する MSS の比較、4 週間
Baker(2001):moderately severe ~severe の認知症が対象→参加後 1 日以内に精神的不安 dysphoric
mood の軽減、3 カ国、大規模なサンプル
Baker(2003):severe な認知症(MMSE0-9)と moderately severe(MMSE10-17)の比較→severe
では apathy が軽減、moderately severe では apathy が増加→severe と moderately severe に層化した
参加者の人数を示していなかった、post hoc 分析
高い質の研究であるが、severe な認知症患者において apathy を軽減するために、非言語的な MSS が相
互的な介入よりも効果的であるというエビデンスには限界がある。
<TOUCH>
マッサージ、ハンドマッサージ、治療的マッサージ、頭蓋仙骨のマッサージを含む。
Gerdner(2008): moderately severe(GDS5-7)の認知症、6 か月間、毎日頭蓋仙骨のマッサージを実施
→身体的及び言語的興奮の有意な軽減→サンプル少ない
他のどのタッチセラピーにもレビューの基準は合わなかった。
進行した認知症へのタッチセラピーの有効性を支持するエビデンスは十分ではなかった。
<BALANCING AROUSAL CONTROLS EXCESSES(BACE)>
Kovach(2004):Kovach’
s Model of Imbalance of Sensoristasis(MIS);進行した認知症において、感覚刺
激と感覚沈静との間での不均衡がある場合に、興奮行動が始まり、悪化すると仮定するモデル
RCT(78 名の対象者)、覚醒不均衡(15 時間もしくはそれ以上持続する覚醒と定義)実験群に存在するかど
うか、不均衡な覚醒状態である人々(12 時間の観察時間中に 2.5 時間もしくはそれ以上の不均衡と定義)
の活動スケジュールが遂行されているかを明らかにした。→対照群に比べて、介入(実験群に 12 時間以
上 1 日のスケジュールの調整を実施)後、平均的な興奮レベルは有意に減少
中等度の質のエビデンス
Discussion
研究は、11 カ国において全て day hospitals か residential ケア施設で実施されていた。
言語:英語に限定、1998-2008 年
レビューが直面した問題:多くの研究が、MMSE を得点の範囲ではなく、平均値及び SD を報告してい
たこと
MMSE の中心傾向は、サンプルサイズによって影響をうけ、全ての対象者が severe や very severe の範
囲内であるかは明確ではない。
全ての対象者が認知症の重症度の基準に合致した研究だけをこのレビューに含めた。よって、平均認知
度が重度の範囲であっても、いくつかの研究が除外された。以上のような研究のサンプルのレビューに
よって、このレビューの結論の一貫性が結果として得られるといえる(e.g. Gerdner, 2000; Lawton et al.,
1998)。
重度認知症の NPS 治療において最近 10 年でどのように進歩しているか?
Opie et al.(1999):10 年前に認知症の行動障害に対する心理社会的介入の研究をレビュー
・ 認知レベルによる介入の調査はしていない
・ さらなる研究として、より多くの対象者、多変量解析、多角的な結果測定が必要
・ スタッフは適切なトレーニングを受けることが薦められる
・ 最終的な報告は十分な詳細を提供すべきである
本レビューは・・・
8
抄読会 2010/4/25
担当:中岡
・ 21 文献が 11 カ国からの研究であり、moderately sever~very sever の対象者に特に焦点をあて
ている。
・ 12 文献は RCT
・ 15 文献は、大規模はサンプルサイズの多様な施設からのデータ
・ 20 文献は妥当性と信頼性のある NPS アウトカムの測定尺度を用いている
進行した認知症への NPS 治療と理解は進歩しているものの、疑問が残る。
215 文献のうちわずか 21 文献(9.8%)だけが、moderately sever~very sever である対象者に特化し
て、非薬物的療法を明らかにしており、4 文献(1.9%)のみが、sever/very sever に特化して調査をして
いた。
老人ホームの約 40%が sever~very sever の認知症であり、
殆どの入所者が NPS に苦しんでいる。
進行した認知症において、言語理解能力の衰退につれて、ケアへ抵抗を示し、しばしば攻撃性として名
づけられる患者数は、8 倍に増える。本研究は、個別的なケアを通して苦痛を軽減する非薬物的療法の指
針を明らかにする重要性に焦点を当てている。
我々が今知っていることを考慮に入れると、臨床医にとって、取り組むべき重要な要素は何か?
NPS は”
burn out”
しない、もしくは認知症が進行するにつれて問題が少なくなってきていることが明
らかである。進行した認知症は多角的な病因をもつ症候に苦しんでいる。
例えば、NPS は不快感、不適切な身体的ケアニーズ、人と環境の衝突(覚醒の不均衡)、ストレス反
応を呈する。これらの兆候へとられるアプローチは、少なくとも部分的で、明らかになっている病因や、
兆候を査定した意味による。にもかかわらず、NPS を治療し、明らかにする包括的な目標が快適さや QOL
の強調であることを考慮して、我々は、介入を支持するために、限界はあるが、以下の介入に関する効
果の中等度から高い質のエビデンスを見出した。
・ 社会的、空間的密集を最小限にする物質的な環境(Morgan and Stewart, 1998)
・ 感情に対して非言語的表現を有効になるような、そして敏感になるために訓練されたスタッフ
(Magai et al.,2002)
・ 覚醒不均衡を正すための様々な活動や介入を統合する個別的なスケジュール(Kovach et al., 2004)
○覚醒不足
underarousal 状態(apathy)を減らす介入もしくは以下の実施を増す
■擬似刺激療法(Camberg
et al., 1999)
■レモンバームでのアロマセラピー(Ballard
■多重感覚刺激-特に
et al., 2002)
severe な認知障害患者に対して(Baker et al., 2001; 2003)
■生の音楽を聴く(Holmes
et al., 2006)
○興奮や異常行動のような過覚醒状態を減少させるための介入
■擬似刺激療法もしくは、録音された会話(Camberg
■ラベンダー(Holmes
et al., 2004; Garland et al.,2007)
etal.,2002; Lin et al.,2007)でのアロマセラピー(Ballard et al., 2002)
■好んでいたもの、もしくは生で相互作用のある音楽を聴く(Garland
et al., 2007; Svansdottir &
Snaedal, 2006)
疑似的刺激を用いた研究が、言語的な相互作用的な能力をもつ参加者を要求することを記すことは重
要であり、その発見は、severe な認知障害をもつ患者に適当できない可能性がある。このような人々に
とって、非言語的、感覚を基盤とした治療は最も効果的だと思われる。
他の潜在的に混合するタッチセラピーを含む非言語的な介入、行動療法、個別的なケアアプローチをさ
らに調査していく必要がある。
進行した認知症に対する従来の治療を明らかにする際に研究者が取り組むべき重要な要素は何か?
9
抄読会 2010/4/25
担当:中岡
多くの介入研究にはこのレビューにある基準には合致しなかった。なぜなら、層化せずにもしくは重
症度の標準化された尺度を用いずに広い範囲の重症度のレベルの患者を含めていたからである。NPS を
軽減することを目的とした治療は疾患の重症度を調べなければならず、介入が重症度レベルにおいて均
しく効果的であるということを査定することは誤りであるということをデータによって確信した。多く
の介入が言語や認知的スキル(例:回想)や残存する精神運動領域の機能(例:行動療法)に関する相
対的な予防に起因するように思われるので、このことは部分的に真実である。例えば3つの研究は非薬
物的療法に対して中等度の認知症と進行した認知症では異なった反応が示されている。以前に記憶した
音楽、カードゲームのような言語に基づいた活動、感情志向的なケアからは軽度から中等度の認知症と
同様に進行した認知症でも有効でなかった。それに対して、非言語的に形成された多重感覚応用刺激か
らは多いに効果があった。最低限、研究者は重症度によって参加者の層化もしくは進行した疾患をもつ
患者を限定するべきである。
研究の介入の効果を評価する際には、治療の忠実性の問題は重要である。例えば Kovach ら(2006)
は、無作為に調整された多方面の介入研究に関して否定的な気付きを脱構築し、指針の連続した段階は
参加者のほぼ半数には従えないということを示した。忠実性の潜在的なバリアの範囲を示すなら(例:
職員配置、仕事量、妥当性の認識)、研究者は将来的なケアを導くための研究にこの問題を含めなけれ
ばならない。
しばしば多くの介入の効果的なキーとなる要素は明らかではない。例えば、Garland ら(2007)の研
究では、進行した認知症の患者(MMSE0-12)では、彼らが慣れ親しむことや、関連しているかどうか
でなくても、録音した声への反応で言語的な興奮を同様に減少できることが示された。Camberg ら
(1999)の研究では、週間のスタッフ調査によって、一般的なケアや刺激的な存在がプラセボと比較し
てポジティブに作用するのに均しく効果的あることが示された。これらの結果によって、非薬物的療法
の観察される有効性は治療の特異的なタイプからの結果からなのか、もしくは、目新しいような他の明
らかになっていない効果からなのか、ケア提供者や人間の声のない静けさからの結果なのかどうかとい
う疑問が生じる。最終的に、行動の変化を測定する時に、重要なことは、苦悩を緩和し、QOL を向上さ
せる臨床的に意味のある変化を明らかにすることである。明らかになった感覚志向的な非薬物療法の長
期的な結論の欠如にも関わらず、興奮を緩和し、関わりが増す短期間の援助は、臨床的に意味あるよう
に思われる。
進行した認知症において NPS を扱う次の 10 年の研究への示唆は、Opie ら(1999)によって 10 年前言及
されたことを含む:厳密な方法の実施、多数の対象者、環境の広い範囲、多角的な方法と測定。興奮や
攻撃のような用語は、しばしば、非特異的であり、それらの用語は、明らかに行動を表すことと、状況
(例:個別的にケアを提供する間の闘争的なこと)を明らかにすることによって操作されなければなら
ない。Mild~moderate の認知症患者において調査されてきた NPS に対して今後期待される非薬物的、
相互的に要求のない介入は進行した認知症での効果を試験するべきである。行動的なケアに対して存在
するモデルの多様性はさらなる研究への素晴らしい枠組みを提供する。
用語
reality orientation:RO/現実見当識訓練(脳損傷兵士回復のための方法を認知症患者に応用したもの、時
間・場所・対人関係に関する見当識の把握や周囲の状況理解により、自己規制・自尊心回復を目的とし
た治療法)
skill training:技術訓練(リハビリテーションの一部として実施されることがあるが、認知症患者の職
業継続には倫理的に問題があるという反論もある)
reminiscence therapy:回想法(患者に過去を思い出させ感情を刺激する方法)
10
抄読会 2010/4/25
担当:中岡
validation therapy:確認療法(認知症患者との会話を通じて感情を介した精神療法・心理社会療法を行
う方法)
simulated presence therapy:疑似刺激療法(孤立にともなう行動異常を減らすと報告されており、欧米
では広く試みられる。信頼できるエビデンスは確立途上にある)
light therapy:光療法/高照度光療法(太陽光やそれと同等の光をあたえることにより生体リズムを整
えて睡眠障害(不眠)などの様々な症状に対処する治療法)
参考 URL:日本神経学会治療ガイドライン
http://www.neurology-jp.org/guidelinem/neuro/thihou/thihou_03.pdf
Dorothy Forbes’External, Internal, and Statistical Conclusion Validity Rating Tool (Forbes
1998)
Dorothy Forbes’
validity tool and rating scale was developed during her systematic review of
strategies for managing the behavioural symptoms of dementia. As it was developed for the
field of dementia research where experimental design is quite varied, it provides more
detailed guidelines for the evaluation of varied experimental designs. This tool was selected
to complement NHMRC(National Health and Medical Research Council:国立健康医学研究評議
会)assessment for studies using RCT, cohort and other experimental design techniques. The
project team noted the tool’
s rigour. However, an element from the ‘
Checklist for appraising
the quality of studies of interventions’
developed by the Cochrane Collaboration was
included to assess randomisation and blinding.
(Catherine Runge, Joanna Gilham, Ann Peut
Review,
:
An Australian Government Initiative,
Transitions in care of people with dementia
A Systematic
February,page16, 2009)
11