平成 2 0 年度 教 育論 文 自分の思いを表現できる子どもの育成 ―「話したい・聞きたい」という思いを大切にした活動を通して ― 熊本 市 立 託麻 西 小 学校 教諭 右田 祐美 目次 はじめに ・・・ ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・・ ・ 1 研究主題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 主題設定の理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ (1)今日 的課題か ら ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2)学習指 導要領解説(国語 編)か ら 2 2 2 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ 3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 3 (3)児童の 実態から 3 研究主題について 4 研究の仮説 5 取り組みの視点 6 7 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 4 研究の構想 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 5 研究の実際 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 ( 1 )単 元 に つ い て ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2 )指 導 計 画 、評 価 計 画 ( 3 )研 究 の 実 践 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ① 児童の実態にあった指導内容の工夫(仮説1について) ② 表現力を高める手立ての工夫(仮説2について) ③ 表 現 活 動 の 場 の 設 定 の 工 夫( 仮 説 3 に つ い て ) 5 6 7 ・・・・・・・ 7 ・・・・・・・・・・ 13 ・・・・・・・・・・・・・ 18 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 8 研究の成果と課題 1 はじめに 多くの子どもたちが幼稚園・保育園の生活を経て小学校へ入学してく るが、幼稚園・保 育園と小学校では生活のリズムが変わってくる。小学校の生活に希望をもって入学した 子 どもたちに元気で楽しく学校生活を送ってほしいと願っている。そして、子どもたちが学 校生活や学習の場面で、 「わかった」 「できた」 「 や れ そ う だ 」と い う 気 持 ち を た く さ ん 持 て るようにしていきたい。 低学年の特に 1 年生の 子どもたち は 、学校生活や学習 面で新し く学ぶこ と が多く、張り 切っている。新しいことを経験するたびに、それを話したり聞いたりすることに興味をも つ時期である。話したり、聞いたりすることは、学習習慣や人間関係づくりの 基礎となる 低学年の時期に「話す楽しさ、話を聞く楽しさ」を実感できるようにすることが大切であ る。 実感することで、できた喜びを相手に話したいという気持ちが湧いてくるものである。 それと同時に、教師や子どもたち同士が温かく見守り、よいところを認めたり、ほめたり する学級の雰囲気も必要になる。そこには、相手の話を聞こうとする気持ちがはたらくは ずである。話をしたり、話を聞いたりする態度は「伝え合う力」の土台であり、すべての 教科や日常生活で重要になってくる。 そこで、今回は国語科に重点をおくことにした。国語科の学習で身に付けた力を他の教 科 や 日 常 生 活 で 生 か す こ と が で き る か ら で あ る 。 国 語 科 の 中 で 、「 自 分 の 思 い を 話 す こ と 」 「 相 手 の 思 い を 聞 く こ と 」「 表 現 す る 力 を 高 め る こ と 」 を 念 頭 に お き な が ら 教 材 研 究 を し 、 授業づくりをしていきたいと考えた。 本 年 担 当 し て い る 1 年 生 の 子 ど も た ち が 、国 語 科 の 学 習 を 通 し て 話 す 楽 し さ や 話 を 聞 く 楽しさを味わい、自信をもって自分の思いを表現できるようになってほしいと思い、研究 に取り組んでいくことにした。 1 研究主題 自分の思いを表現できる子どもの育成 ―「話したい・聞きたい」という思いを大切にした活動を 通して― 2 主題設定の理由 (1)今日的課題から 現代は、都市化による地域社会の崩壊、情報社会の合理化によって希薄な人間関 係しか築けない時代であるといわれている。そのためか、 自己表現力が低く、対人 関係が結べない人が増えてきている。また、子どものコミュ二ケーションの危機的 な状況を象徴するような事件や現象をよく目にするようになった。 望ましい人間関 係を築くためには、伝え合う力が不可欠であることが指摘されている。 このような現状にあるからこそ、 学校で豊かな人間関係を築くために必要な「伝 え 合 う 力 」 を 育 む こ と が 言 わ れ て い る 。「 伝 え 合 う 力 」 を 育 成 す る た め に は 、「 表 現 活 動 の 場 の 工 夫 」 や 「 指 導 の 充 実 」、「 受 容 ・ 共 感 的 な 学 級 の 雰 囲 気 づ く り 」 が 重 要 2 になると考える。教師がどのようにして、子どもの実態にあった表現活動など学び合い の場を設けるか、また友達の思いに共感し受け入れる温かいまなざしを 育てるかが課題 である。 (2)学習指導要領解説(国語編)から 学 習 指 導 要 領 解 説 の 改 訂 の 要 点 の 中 に 、『「 伝 え 合 う 力 」 と は 、 人 間 と 人 間 と の 関 係 の中で、互いの立場や考えを尊重しながら、言語を通して適切に表現したり理解した りする力』とある。国語科の基本的な目標である国語による表現力と理解力の育成と ともに「伝え合う能力」の育成が重視されている。そのことにより、現行の学習指導 要 領 解 説 で は 、「 話 す こ と 」 と 「 聞 く こ と 」 と が 1 領 域 と し て ま と め ら れ て い る 。 ま た 、改 訂 の 要 点 の 中 で 、言 語 活 動 例 の 具 体 化 に つ い て も 触 れ て あ る 。そ こ で 、 「話 すこと・聞くこと」の言語活動を参考にして、子どもたちの実態に応じた学習内容を 工夫することが大切であると考える。 さ ら に 、 第 1 学 年 及 び 第 2 学 年 の 「 話 す こ と ・ 聞 く こ と 」 の 内 容 に 、「 聞 く こ と ・ 話すことの言語活動は、子どもの心 理的な面と大きくかかわっている」とある。話し たい・聞きたいと思えるような学習活動を考えながら、授業づくりをしていきたい。 (3)児童の実態から 本 学 級 の 児 童 は 、 元 気 で 明 る い 1 年 生 で あ る 。「 話 す こ と ・ 聞 く こ と 」 の 調 査 で は、話すことが好き20人、いいえ11人であった。学級の3割が話すことに消極 的であることがわかった。話すことが好きではない理由として多かったのが、恥ず かしいからであった。聞くことに関しては、聞くことが好き25人、いいえ6人で、 学級の2割が聞くことに消極的であった。聞くことより、話すことに自信を持てない 子どもが多いことがわかった。 子どもたちは、4 月に入学して、やっと学校生活に慣れ、新しい学級の友達との輪 を尐しずつ広げているところである。そのため、安心して話すことができないのでは ないかと考える。ペア学習やグループ学習など学習形態を工夫して、安心して話すこ と が で き る 場 を 設 け る こ と が 大 切 で あ る 。低 学 年 の う ち に 、 「自分の思いを話すことが 楽しいな、みんなの話を聞いて楽しいな」という経験をたくさん味わうことで、自信 をもって自分の思いを表現できるようになると考える。 3 研究主題について 「 話 し た い・聞 き た い 」と い う 思 い は 、誰 も が 心 の 中 に も っ て い る も の で あ る 。特 に、 低学年の子どもたちは、新しいことに触れる機会が多く、 その経験をするたびにその事 を誰かに一生懸命話すものである。その時の子どもたちの顔は、 聞いてもらえたという 嬉 し さ と 喜 び に 満 ち て い る 。こ の よ う な 低 学 年 の 時 期 に 、 「 話 す 楽 し さ 、話 を 聞 く 楽 し さ 」 を子どもたちが実感することは、学年が上がっても「話すこと・聞くこと」に意欲的な 子どもたちを育てることにつながるのではないだろうか。そこで、 安心した雰囲気の中 で、子どもたちが自信をもって自分の思いを表現できることを目指したいと考えた。 3 「国語科を中心として」とは、国語科の学習で話をしたり、話を聞いたりする態度を 身 に つ け た こ と を 他 の 教 科 や 日 常 生 活 で 生 か す こ と が で き る か ら で あ る 。国 語 科 の 中 で 、 「 自 分 の 思 い を 話 す こ と 」「 相 手 の 思 い を 聞 く こ と 」「 表 現 す る 力 を 高 め る こ と 」 を 念 頭 におきながら教材研究をし、授業づくりをしていきたいと考える。 これらを踏まえて、 「 話 し た い・聞 き た い 」と い う 思 い を 大 切 に し た 授 業 づ く り を 研 究 していく。 4 研究の仮説 《仮説1》 児童の実態 にあった 指導内容 の工 夫を行えば、進ん で活動し 学習の効 果 を上げること ができるであろう。 《仮説2》 学習の中で 表現力を 高める手 立て の工夫を行え ば、より意欲 的に自分 の 思いを表現す ることができるであろう。 《仮説3》 児童相互の表 現活動の 場の 設定 を工 夫すれば、安心して 自分の思 いを表現 し、話した り聞いたりすることの楽しさを味わうことができるであろう。 。 5 取り組みの視点 《 児 童 の 実 態 に あ っ た 指 導 内 容 の 工 夫 》( 仮 説 1 に つ い て ) ・ 学習への興味や動機づけとなる学習内容の工夫 ・ 児童の多様な思いを引き出す発問の工夫 《 表 現 力 を 高 め る 手 立 て の 工 夫 》( 仮 説 2 に つ い て ) ・ 児童の思考の深まりにつながる学習シートの工夫 ・ 児童の思いを大切にした支援の在り方 ・ 発表の仕方、聞き方の指導 《 表 現 活 動 の 場 の 設 定 の 工 夫 》( 仮 説 3 に つ い て ) ・ 学習形態の工夫(ペア学習、グループ学習) ・ 日常での言語活動(朝の会でのスピーチ、読書の推進) 4 6 研究の構想 伝え合う力 達成感 話す楽しさ 聞く楽しさ 自分の思いを表現できる子どもの育成 表 現 を 高 め る 手 立 て の 工 夫 支援の 学習内容 の工夫 指 導 内 容 の 工 夫 在り方 発問の 工夫 学習シート の工夫 学習形態 の工夫 発表の仕方、 聞き方の 指導 表 現 活 動 の 場 の 設 定 日常での 言語活動 「話したい・聞きたい」という思い 興味・関心 児童の実態 7 研究の実際 -1 年国語 単元名 本とともだちになろう 「ずうっと、ずっと、大すきだよ」- (1)単元について 本教材「ずうっと、ずっと、大すきだよ」は、語り手である主人公「ぼく」と愛 犬 エルフの成長や老いて死にいくエルフを最後まで見守り続けた「ぼく」の心のきずな を 描 い た 作 品 で あ る 。ま た 、挿 絵 が 多 く 使 わ れ て お り 、 「 ぼ く 」と エ ル フ の 交 流 の 様 子 や 命 へ の 慈 し み を よ り 一 層 強 く 感 じ る こ と が で き る 。さ ら に 、エ ル フ を 愛 し 続 け る「 ぼ く」の心情を中心にして、場面の様子や登場人物の行動など、想像を広げながら読ん だり、感想を伝えあったりすることをねらいとしている。 また、このような学習を通して易しい読み物に興味をもち、読書の楽しさを味わ い ながら、進んで本を読もうとする態度を育てたいと考える。読書の楽しみと親し みを 広げるために、友達に自分の好きな本を紹介する場を設定した。友達と本の紹介をし 合うなかで、本について書いたり話したりする活動を通して、読みたい本に出会い、 さらには読書意欲の喚起につながっていくと考える。 5 (2)指導計画、評価計画 次 時間 学習活動 評価規準 1 1 1 題 名 や 挿 絵 を 見 て 、物 語 の 内 容 を 予 想 【関】挿絵に関心をもち、グループの友 する。 達 と 内 容 を 考 え て い る 。( 発 言 、 観 察 ) ・挿絵の並べ替えをして、物語の内容を 話し合う。 【話・聞】考えた内容を発表したり、友 達 の 発 表 を 聞 い た り し て い る 。( 発 言 、 ・グループごとに発表する。 観察) ・物語を聞き、あらすじをつかむ。 2 2 場面の様子や「ぼく」やエルフの行 動 な ど を 考 え た り 、話 し 合 っ た り す る 。 ・エ ル フ に つ い て 知 り 、 「 ぼ く 」と エ ル フ 2 の交流をワークシートに書く。 気持ちをワークシートに書く。 や 気 持 ち を 書 い て い る 。( ワ ー ク シ ー 【読】場面の様子や「ぼく」とエルフの ・「 ぼ く 」 の エ ル フ へ の 愛 情 を 読 み 取 る 。 5 心の交流を想像しながら読んでいる。 (観察) 3 6 言、観察) ト) ・エルフの死を読み取る。 4 し て 、話 し た り 、聞 い た り し て い る 。 (発 【書】 「 ぼ く 」や エ ル フ が 一 緒 に し た こ と ・エ ル フ の 老 い を 知 り 、 「 ぼ く 」の 行 動 や 3 【 話・聞 】「 ぼ く 」の 行 動 や 気 持 ち を 想 像 「ずうっと、ずっと、大すきだよ」 【話・聞】自分で選んだところを友だち の好きなところ、心に残ったところを に聞こえるように話したり、最後まで 選び、発表する。 友 達 の 発 表 を 聞 い た り し て い る 。( 発 ・好きなところ、心に残ったところを選 表、態度) ぶ 。( 文 に 線 を 引 く 、 挿 絵 を 選 ぶ ) 7 ・ペア→グループと広げて、選んだとこ ろの発表をする。 3 4 「1ねん2くみ 本 や さ ん 」を 開 き 、 【 関 】 自 分 の 好 き な 本 を 決 め て 、 進 ん で 自分の好きな本の紹介をしたり、友達 の紹介を聞いたりする。 紹 介 し よ う と し て い る 。( 観 察 ) 【書】本の題名や登場人物、お話の中で 8 ・紹介するための絵を描く。 あったことなどに気をつけて、相手に 9 ・本 の 紹 介 文 の 内 容 を 3 つ に 分 け て 書 く 。 伝わるように自分の好きな本の紹介文 10 ・紹介の準備をしたり、相手に聞 こえる を書いている。また、自分で選んだ表 紹介の仕方を練習したりする。 11 ・「 1 ね ん 2 く み 現方法で伝えようとしている。 (ワーク 本やさん」を開店し、 読んでみたい本をチェックしたり、自 分の好きな本の紹介をしたりする。 シート、準備物) 【話・聞】自分の好きな本のおもしろさ や楽しさを友達に伝わるようにはっき りと話し、友達の発表を最後まで聞こ う と し て い る 。( 発 表 、 ワ ー ク シ ー ト ) 4 5 友達の紹介を聞いて読んでみたい 本を決めて、読んで感想を書く。 12 ・紹介した友達に読んだ感想を書く。 6 【読】易しい読み物を進んで読もう と し て い る 。( 観 察 ) (3)研究の実践 ① 児童の実態にあった指導内容の工夫(仮説1について) ア 学習への興味や動機づけとなる学習内容 の工夫 ○ 単元のつながりを考えた学習過程の工夫 「本と と も だ ち に な ろ う 」の 実 践 を 行 う に あ た っ て 、国 語 科 の 中 で 計 画 的 に 学 習 の つ な が り を も た せ る よ う に し た 。( 図 1 ) な ぜ な ら 、 一 つ の 単 元 だ け で 子 ど も た ち に つ け さ せ た い 力 を 育 て る こ と は 難 し い か ら で あ る 。「 本 と ともだちに なろう」では、友達と本の紹介をする場を設定し、友達と紹介し合うなかで、読 書の楽しみと親しみを広げることをねらいとしている。他の単元でも、本と親し む活動を取り入れることで学習により興味をもって取り組むことができるので はないかと考えたからである。 本となかよし てがみをかこう 友達と一緒に 夏休みに読ん ずうっと、ずっと、 絵本を読む。 だ本を書く。 大すきだよ 図1「学習のつながり」 ・「 本 と な か よ し 」 「本となかよし」には、1 年生の子どもたちにあった絵本が教科書に紹介して ある。その絵本を友達と一緒に読むなどの学習を通して、 読書の楽しさを知るこ とができる。紹介してある本やどの子も楽しめる本を30冊ほど準備して、友達 と 一 緒 に 読 む 時 間 を 設 け た 。( 図 2 ) お も し ろいね。 この本を 読んでみ ようか。 図2「友達と一緒に本を読む様子」 席の隣の子と一緒に本を選ぶようにした。ほとんどの子どもたちは友達と一緒 に読みたい本を選び、楽しく本を読むことができた。なかには、友達に絵本を読 み聞かせしたりや読み終わったあとクイズを友達に出したりするなど、意欲的に 本と関わる姿が見られた。しかし、友達と読みたい本が違うことで本選びに時間 がかかったり、読むスピードの違いから仲良く読 めなかったりする子どももいた。 友達と一緒に本を読む活動の最後に、本に関するクイズを出していたペアを全 体 に 紹 介 し た 。そ し て 、ペ ア で し て い た ク イ ズ を み ん な で 一 緒 に す る こ と に し た 。 クイズを出す本は、全員が読み聞かせで聞いたことがあったので楽しめると考え たからである。クイズにはみんなが進んで答える姿が見られ、友達と本を読む楽 し さ を 知 る い い 機 会 に な っ た 。( 図 3 ) 7 この本のクイズを今 から出します。 答 え が わ かったよ。 図3「楽しくクイズに参加している様子」 ・「 て が み を か こ う 」 この単元では、送る相手を決めて手紙を書き、書き方や書く楽しさを知ること をねら い と し た 。 教 科 書 で は 、「 お じ い ち ゃ ん 」 に 「 あ さ が お の こ と 」 を 書 く 例 が 挙 げ て あ る 。 授 業 で は 、 書 き 方 の 約 束 で あ る 「 相 手 の 名 前 」「 伝 え た い こ と 」「 自 分 の 名 前 」 の 3 つ を 入れることをおさえて、手紙を書く練習をした。送る相手は子どもたちが決め、書く内 容は全員が共通体験をした「1学期に読んだ本」について書くようにした。共通体験を した内容にすることで、書くことが苦手な子も進んで書くことができると考えたから で あ る 。そ し て 学 習 し た こ と を 日 常 で 生 か せ る よ う「 夏 休 み 、先 生 に 手 紙 を 書 い て ね 。」と 声 か け を し た 。書 く 内 容 に つ い て は 、 「 夏 休 み に 読 ん だ 本 」と し た 。な ぜ な ら 、夏 休 み 前 に図書室で本を2冊全員借りるので、読んだ本について知らせることができるからであ る。また、そのことについて学級通信で保護者にも伝えた。学級通信には、書きやすい ように手紙の書き方の例を載せた。 ( 図 4 )子 ど も た ち か ら 夏 休 み 、2 2 通 の 手 紙 を も ら った。手紙は、学級通信の例を参考にして書いたものが多く、書く手立てとなったよう だ。 ( 図 5 )そ し て 、手 紙 を も ら う 嬉 し さ を 実 感 で き る よ う 子 ど も た ち 全 員 に「 夏 休 み に 読んだ本」として手紙を出した。 図4「学級通信でのお知らせ」 ○ 図5「子どもから来た手紙」 本単元における学習過程の工夫 「ずうっと、ずっと、大すきだよ」の学習過程の中で、導入にどのような活動をする かが動機づけとして重要になってくると考える。導入の活動で子どもたちが楽しそうだ 8 な、やってみたいなという気持ちが湧いてこなければ、意欲的に取り組むことができな い。物語の導入では、教師の読み聞かせを聞いて子どもたちが感想を書くという活動 が 多いように感じる。本学級には読み聞かせが好きではない児童が8人 おり、その活動を はじめから取り入れることは児童の実態に合わない。そこで、読書指導法のアニマシオ ンを参考にして導入に取り入れてみることにした。アニマシオンとはゲーム的手法を使 って本の世界を楽しむことである。アニマシオン は、ゲーム的活動で子どもたちが楽し く取り組めるよさがあり、興味をもって活動できると考えた。また、見通しをもって学 習 に 取 り 組 み こ と が で き る よ う に 学 習 計 画 を 示 し な が ら 授 業 を 進 め た 。 (図 6 ) 子どもにわかり やすいめあてに した。一時間の 学習が終わると エルフマークを 貼って次時の学 習を見通せるよ うにした。 図6「子どもたちに示した学習計画」 ・導入での学習 本教材については、単元入れ替えを行っており、子どもたちは初めての出会いであっ たため、事前に読んでいる子どもはいなかった。 はじめに、教材「ずうっと、ずっと、大すきだよ」の挿絵5枚をグループの友達 とお 話の順に並べる活動をした。挿絵5枚は物語の中で重要だと考える場面を教師が選び、 子どもたちに提示した。子どもたちは、登場人物の成長の様子や顔の表情、場面の様子 を し っ か り 見 な が ら 、 挿 絵 を 並 べ る 姿 が 見 ら れ た 。 (図 7 ) げ 、 悲 し い 話 と 考 え て い る 。 あ っ て い る 。 」 と 想 像 を 広 下 の 絵 か ら 「 犬 の お 葬 式 が や 動 物 が 出 て く る か な ? ど ん な お 話 か な ? ど ん な 人 も し ろ い 話 と 考 え て い る 。 絵 に 描 か れ た 様 子 か ら 、 お 図7「お話づくりの学習シート」 次に、グループで考えたお話の順番を発表する活動をした。各グループの発表を聞く た び に 、「 1 番 は 同 じ だ よ 。」「 最 後 だ け が 違 う 。」 と 自 分 た ち が 考 え た 順 番 と 比 べ な が ら 9 聞く姿が見られた。どの順番が合っているのかわからないというゲーム的な活動なので 発表の最後まで意欲的に活動できていた。 最後に、 「 ず う っ と 、ず っ と 、大 す き だ よ 」の 読 み 聞 か せ を 聞 い て 、そ の 感 想 を 書 く 活 動 を し た 。読 み 聞 か せ で は 教 科 書 で は な く 、絵 本 を 使 っ て 読 み 聞 か せ を し た 。な ぜ な ら 、 絵本には多くの挿絵があり、話の内容を理解しにくい子どもたちが挿絵を見ることで内 容を理解しやすいのではないかと考えたからである。読み聞かせの際 にお話づくりで使 用 し た 挿 絵 が 出 て く る と 、「 あ の 絵 が 出 て き た 。」 と つ ぶ や く 子 ど も も い た 。 知 っ て い る 挿絵がいつ出てくるのか楽しみにしながら、聞いていた。 読み聞かせ後、お話の感想を 書けない子どもは見られなかった。 「 エ ル フ が し ん で し ま っ た か ら 、か わ い そ う で し た 。」 などかわいそうに思ったわけを入れて書くことができていた。また、半数の子どもが不 思 議 に 思 っ た こ と や 疑 問 に 思 っ た こ と を 書 い て い た 。( 図 8 ) 子 ど も た ち の 感 想 よ り 、子 ど も た ち が ゲ ー ム 的 な 活 動 で 興 味 を も ち 、読 み聞かせを通してお話を意欲的に 聞くことができることがわかった。 さ ら に 、子 ど も た ち が そ れ ぞ れ の 感 想 を も つ こ と で 、次 の 活 動 へ の 動 機 づけとなった。 図8「読み聞かせ後の子どもたちの感想」 イ 学習過程の工夫 本単元は、教材「ずうっと、ずっと、大すきだよ」の学習→自分の好きな本を紹介し 合う学習という流れになっている。 どのように学習過程の工夫をして、学習の効果を上 げ ら れ る か が 課 題 に な る と 考 え る 。 そ こ で 、 以 下 の よ う な 学 習 過 程 を 考 え た 。( 図 9 ) 「 ず う っ と 、ず っ と 、大 す き だ よ 」 自分の好きな本を紹介し合う学習 教材を通して、紹介文を書い スキルを使って、自分の好き たり、友達に本の紹介をした り す る ス キ ル を 学 ぶ 。( 基 礎 ) な本の紹介文を書いたり、友 前学習で学んだ 達に紹介をしたりすることが ことを生かして で き る 。( 応 用 ) 図9「学習過程の工夫」 教材を通して、子どもたちが紹介文を書いたり、本の紹介をしたりするスキルを学ぶ こ と で 、「 で き そ う だ な 。」 と い う 気 持 ち を も た せ る こ と が で き る と 考 え る 。 こ の 基 礎 の 部分をしっかりしておかないと、次のステップである自分の好きな本の紹介をすること に子どもたちは不安を感じるであろう。子どもたちが自信をもって取り組めるようにす ることが大切である。 10 ウ 児童の多様な思いを引き出す発問の工夫 教 材 「 ず う っ と 、 ず っ と 、 大 す き だ よ 」 は 4 つ の 場 面 に 分 け る こ と が で き る 。「 ぼ く 」 と エ ル フ の 交 流 ( 起 )、 エ ル フ の 老 い ( 承 )、 エ ル フ の 死 ( 転 )、「 ぼ く 」 の エ ル フ へ の 愛 情(結)である。ここでは、エルフを愛し続ける「ぼく」の心情を中心にして、場面の 様子や登場人物の行動など、想像を広げながら読んだり、感想を伝えあったりすること をねらいとしている。そこで、子どもたちが「ぼく」の気持ちになって、様々な思いが 引き出せるような開かれた発問をしたいと考えた。 ・「 ぼ く 」 と エ ル フ の 交 流 ( 起 ) 1の場面は、 「 ぼ く 」と エ ル フ が 一 緒 に 大 き く 成 長 し て い く と こ ろ で あ る 。一 緒 に 寝 た り 、一 緒 に 遊 ん だ り し た こ と が 書 い て あ り 、 「 ぼ く 」と エ ル フ が 何 を す る に も い つ も 一 緒 に し た こ と が わ か る 。こ こ で は 、 「 ぼ く は 、エ ル フ の あ た た か い お な か を 、い つ も ま く ら に す る の が す き だ っ た 。」と い う 一 文 に 着 目 し た 。そ し て 、中 心 発 問 を「 ぼ く は ど ん な 夢 を 見 た の か な 。」と し た 。こ の よ う に 発 問 す る こ と で 、教 科 書 に 書 い て あ る こ と だ け で は な く 、子 ど も た ち が「 こ ん な こ と も 一 緒 に し た よ ね 。」と 想 像 を 広 げ る こ と が で き る と 考 え た 。 (図 1 0 ) 教科書に書いて 一緒に大きくなった夢 一緒に遊んだ夢 発問 き 出 し )だ け で な ぼ く は 、ど ん な 夢 を 見 た の か な 。 く 、自 分 で 想 像 を 一緒に海へ 行った夢 あ る こ と( 上 の 吹 一緒に歯磨 一緒かくれん 一緒にかけっ きをした夢 ぼをした夢 こをした夢 図10「1の場面での子どもたちの思い」 広げて書くこと (下の吹き出し) 子どももいた。 ・エルフの老い(承) 2の場面は、元気だったエルフが年をとり、しだいに老いていくところである。いつ も一緒にできていたことができなくなっていったエルフを心配する「ぼく」の様子がよ くわかる。ここでは、エルフに「ぼく」が必ず言ってやった「エルフ、ずうっと、ずっ と 、大 す き だ よ 。」に 着 目 し た 。そ し て 、発 問 を『「 エ ル フ 、ず う っ と 、大 す き だ よ 。」っ て 言 っ て や っ た 後 に 、自 分 だ っ た ら ど ん な こ と を 話 し か け ま す か 。』と し た 。こ の よ う に 発 問 す る こ と で 、「 ぼ く 」 を 自 分 に 置 き 換 え て 自 分 の 思 い を 書 く こ と が で き る と 考 え た 。 (図11) 子 ど も た ち は 、「 ま た 、 一 緒 に あ そ ぼ う ね 。」 「 元 気 に な っ た ら 散 歩 に 行 こ う ね 。」 などエルフと一緒にして楽しかった経 験 に 触 れ て 書 い て い た 。ま た 、キ ー ワ ー ド と な る 「 大 す き だ よ 。」 と い う 言 葉 を 使 っ て 書 い て い る 子 ど も が 半 数 い た 。枠 い っ ぱ い に 書 い た り 、は み 出 し て 自 分 の 思いを書いたりしている姿も見られた。 図11「2の場面での子どもたちの思い」 11 ・エルフの死(転) 3の場面は、夜のうちに死んでしまったエルフを家族全員で庭に埋めて、肩を抱き合 って泣くところである。家族全員がエルフことを好きだったから悲しい気持ちになって い る 様 子 が よ く わ か る 。こ こ で は 、 「 ぼ く だ っ て 、か な し く て た ま ら な か っ た け ど 、い く らか き も ち が ら く だ っ た 。」 の 一 文 に 着 目 し た 。 こ の 文 は 、「 ぼ く 」 が 家 族 の 中 で 一 番 エ ル フ に 「 大 す き だ よ 。」 と 言 っ て や っ て い た と い う 気 持 ち を 表 現 し て い る か ら で あ る 。 こ こ で の 発 問 を『 エ ル フ が なくなってしまったとき、 「 ぼ く 」や か ぞ く は 、ど ん な こ と を お は な し し た か な 。』 と し た 。「 ぼ く 」 と 家 族 を 分 け て エ ル フ に お 話 し た こ と を 書 く こ と で 、「 ぼ く 」 の エ ル フ に 対 す る 深 い 愛 情 に 気 づ く こ と が で き る と 考 え た 。( 図 1 2 ) 「 お 兄 ち ゃ ん 」の 話 で は 、し て あ げ な か ったことを後悔している話が多かった。 「 お 母 さ ん 」の 話 で も「 お 兄 ち ゃ ん 」と 似 た こ と や「 い た ず ら を し た 時 、怒 っ て ご め ん ね 。」と 書 い た 子 も 目 立 っ た 。 「ぼ く 」 の 話 で は 、「 天 国 で ゆ っ く り 休 ん で ね 。」 な ど 様 々 な こ と を 書 い て い た 。 ま た 、「 ぼ く 」「 お 母 さ ん 」「 お 兄 ち ゃ ん 」 3 人 以 外 の 家 族 に つ い て も 、自 分 で 吹 き 出しを作って書いている子も見られた。 図12「3の場面での子どもたちの思い」 ・「 ぼ く 」 の エ ル フ へ の 愛 情 ( 結 ) 4 の 場 面 は 、隣 の 子 が「 ぼ く 」に 子 犬 を あ げ る と い う が 、 「 ぼ く 」は 子 犬 を も ら わ な い ところである。エルフが死んでしまった後も「ぼく」がエルフをとても大切に思ってい る様子がよくわかる。ここでは「もらっても、エルフは きにしないって わかってい た け ど 、ぼ く は 、い ら な い っ て い っ た 。」と い う 一 文 に 着 目 し た 。そ し て 、発 問 を「 隣 の 子が子犬をくれるといったのに、いらないと言ったのはなぜでしょう。 ぼくになってお 話 し て み ま し ょ う 。」と し た 。子 犬 を も ら わ な か っ た 理 由 を「 ぼ く 」の 気 持 ち に な っ て 書 く こ と で 、 エ ル フ を 大 切 に 思 っ て い る こ と に 気 づ く こ と が で き る と 考 え た 。( 図 1 3 ) 発問 いらないと言ったのはなぜかな。 ぼくの気持ちになって考えた時はいつも エ ル フ の こ と を 書 い て い た け れ ど 、こ こ で エルフのことを書いた子どもは8人ほ はエルフのことは考えていないのかな。 どしかいなかった。他は「別の動物を 飼 う か ら 。」「 自 分 の 好 き な 犬 を 飼 い た 「 エ ル フ の こ と が 大 す き だ か ら 。」「 エ い か ら 。」 「 自 分 で 決 め る か ら 。」な ど「 ぼ ル フ の こ と を 忘 れ た く な い か ら 。」な ど く」ではなく、自分の思いを書いてい 「ぼく」のエルフに対する気持ちを 入 る子が多かった。何を書いていいか悩 れて書いていた。しかし、最後まで書 み、何も書けない子どもも数人いた。 くことができない子どもが2人いた。 図13「4の場面での子どもたちの思い」 12 ② 表現力を高める手立ての工夫 ア 児童の思考の深まりにつながる学習シートの工夫 ○ 教材「ずうっと、ずっと、大すきだよ」での学習シート 場 面 ご と の 学 習 シ ー ト を 作 る こ と に し た 。( 図 1 4 、 図 1 5 、 図 1 6 、 図 1 7 ) 「 ぼ く 」と エ ル フ が 一 緒 に し た こ と を 穴 埋 め で お さ え た 。し た こ と だけを書くようにし、子どもたちが教科書から見つけやすくした。 「ぼく」とエルフ が 、と て も 仲 良 し だ ったことがわかる 文を穴埋めにした。 かっこに点線を入 れ 、ど の 言 葉 を 入 れ たらよいかわかり やすくした。 挿絵に吹き出し を 付 け 加 え 、「 ぼ く」の夢を想像 しやすくした。 図14「1の場面の学習シート」 キーワードとなる大事な 教科書に書いてある3 年をとったエルフの行動 言葉をおさえた。前後に つのことを抜き出して をおさえるため、穴埋め は文を書き、教科書から 書けるよう罫線で仕切 にした。穴埋めにするこ 見つけやすくした。 って書きやすくした。 とで短時間で書けた。 書く内容にそった挿絵を入れることで、想像して書くことができるようにした。 図15「2の場面での学習シート」 13 吹き出しには、罫線を 入れて文字の大きさが 小さくならないように し た 。ま た 。 「 ぼ く 」の 吹き出しは他の家族よ り多く書けるよう大き くした。 教科書には隣の子が載っていたが家族で悲しんでいる様子をより感じることができ る よ う 載 せ な か っ た 。ま た 、自 分 で 吹 き 出 し を 付 け 加 え て 書 い た 子 ど も が 多 く い た 。 図16「3の場面での学習シート」 どの場面でも 挿絵に色塗り をする子ども が多く見られ た。 挿 絵 だ け 載 せ る の で は な く 、隣 の 子 が 言 っ た 言 葉 を 吹 き 出 し で 書 い て お く こ と で 、「 ぼ く 」 と 隣 の 子 が 話 し て い る よ う に し た 。 図17「4の場面での学習シート」 14 ○ 本の紹介文を書く学習シート(図18) 教材「ずうっと、ずっと、大すきだよ」の紹介文の学習シート 「~が好きでし 本 の 名 前 、登 場 人 た 。」と 書 け る よ 物を書くように うに広くした。 し た 。ま た 、そ の また、書くとこ まま読めば紹介 ろを二つにして 文になるよう一 分けて書くよう 文で表した。 にした。 「自分の好きな本」の紹介文の学習シート 紹介文を書く学 習シートは同じ で あ る 。心 に 残 っ たことをたくさ ん書く子どもが く っ つ け る 多く見られたの で 、同 じ 枠 の 用 紙 を用意した。 図18「本の紹介文を書く学習シート」 好きな場面を描いた絵の後ろに紹介文を貼り、子どもたちが紹介文を見ながら自信を も っ て 話 せ る よ う に し た 。( 図 1 9 ) 表 裏 図19「発表時の学習シートの活用」 イ 児童の思いを大切にした支援の在り方 ○ 学校図書館司書補助の先生との連携 15 本単元では自分の好きな本を紹介することが大きな目標になる。その前段階とな る自 分の好きな本を選ぶことができるかが重要になる。子どもたち全員が自分の好きな本を 決めることができるように支援することが大切である。そこで、司書補助の先生に1年 生に適した本を40冊ほど選定してもらった。昔話や外国のお話、日本のお話などジャ ンルが偏らないように配慮をお願いした。また、子どもたちの実態調査で生き物を飼っ たことがある子どもは20人いたが、そのほとんどが昆虫や金魚であった。教材「ずう っと、ずっと、大すきだよ」に出てくる犬などの動物を飼った経験が ある子どもは3人 であった。そこで、動物の生死をとりげた絵本を7冊準備してもらうようにした。司書 補 助 の 先 生 か ら 準 備 し て も ら っ た 本 を 学 級 の 後 ろ の 棚 に「 本 コ ー ナ ー 」と し て 設 置 し た 。 それと合わせて、子どもたちは友達と畳などに座って読むことを好むので司書補助の先 生 に 図 書 室 の 畳 を 貸 し て も ら っ た 。 休 み 時 間 な ど に 自 由 に 読 め る よ う に し た 。( 図 2 0 ) 楽しいな。 どの本にし ようかな。 図20「友達と一緒に本を読む子どもたちの様子」 自分の好きな本を選ぶ際、設置した「本コーナー」の中から本を選ぶ子どもがたくさ ん い た 。し か し 、4 人 の 子 ど も は 自 分 の 好 き な 本 を 決 め る こ と が で き な か っ た 。そ こ で 、 図書室に一緒に行き、たくさんの本を見ながら好きな本を探した。2人の子どもたちは 本を決めることができたが、残り2人の子どもたちは選ぶことができなかった。本に詳 しい司書補助の先生に相談をし、2人の子どもたちは、司書補助の先生と一緒に話をし ながら、自分の好きな本を決めることができた。 ○ 付箋の活用 本 単 元 で は 付 箋 を 2 つ の 活 動 で 活 用 し た 。一 つ は 、 「本の中で心に残った場面選びをす る と 」、 も う 一 つ は 「 友 達 の 好 き な 本 を 読 ん だ 感 想 を 書 く と き 」 で あ る 。 ・場面選び 自分の好きな本の紹介文をいきなり書くことは難しいものである。そこで、子どもた ちが活動にスムーズに入ることができるよう事前に好きな本を読み、場面選びをした。 全員が1場面は選び、同じ状態から紹介文を書けることが大切だと考えた。 場面を選ん だら担任に言いにくるようにし、選んだ理由が言えたら付箋を付けた。子どもたちは、 「 ○ ○ だ か ら 好 き で す 。」 「 △ △ の と こ ろ が 悲 し い で す 。」と 話 し て い た 。子 ど も た ち の 中 には何度も言いに来る子どもが多く見られた。言いに来られない子どもには、一緒に本 を 見 な が ら 場 面 選 び を し た 。紹 介 文 を 書 く 活 動 で は 、本 を 読 ん で 思 っ た こ と を 書 く と き 、 付箋の貼ってあるところを見ながら書く子どもがたくさんいた。また、なかなか書けな い 子 ど も に は 、 付 箋 が 貼 っ て あ る と こ ろ を 一 緒 に 見 な が ら 、 書 き 進 め た 。( 図 2 1 ) 16 ここを選んだの は、どうしてだ ったかな。 おじいさん になったか ら 、か わ い そ うだから。 図21「紹介文を書く際の付箋の活用」 ・読んだ感想を書く 本単元では、友達の紹介した本を読むことでより読書に親しみをもてるようにするこ とをねらいとしている。読むだけの活動ではなく、友達からの感想を知ることで本を紹 介する楽しさをさらに味わうことができると考える。しかし、子どもたちは感想を書く ことを嫌がる傾向にある。1年生の子どもたちでも簡単に書けるよう付箋を活用した。 一 文 が 書 け る 広 さ の 付 箋 を 使 用 す る こ と で 、「 書 け そ う だ 。」 と 子 ど も た ち が 思 え る よ う に し た 。( 図 2 2 ) ここが好きだっ たところだよ! ぜ ん ぶ 、よ う ふ く が かわるところがお もしろかったです。 図22「付箋を活用して感想を書いた様子」 ○ 挿絵の活用 教材「ずうっと、ずっと、大すきだよ」の挿絵は教科書に10枚載せてある。教材の 絵本を読んでみると、教科書には載っていない挿絵が多くあることに気づいた。 場面ご との学習で、子どもたちがより場面の様子が想像できるように絵本の挿絵を示した。ま た、前時の振り返りでも挿絵を使用することで、視覚的なので子どもたちがとらえやす か っ た 。( 図 2 3 ) 多くの挿絵を 使 っ て 、「 ぼ く」とエルフ の成長の過程 が視覚的にわ かるようにし た。 図23「授業での挿絵の活用の様子」 17 ウ 発表の仕方、聞き方の指導 発表するときは相手に聞こ えるように体の向きを変え る 、聞 く と き は 相 手 の 方 に 体 と目を向けるということを 授 業 で は 、必 ず 確 認 す る よ う に し た 。ま た 、声 の 大 き さ の め や す を 示 し て 、「 2 番 の 声 で」と声かけをした。 図24「発表の仕方、声のものさしの掲示」 ③ 表現活動の場の設定の工夫(仮説3について) ア 学習形態の工夫(ペア学習、グループ学習) ○ 教材「ずうっと、ずっと、大すきだよ」での学習形態 一人学び → ペア学習 → グループ学習 → 一人学び ま ず 、自 分 で 席の隣同士で自分 多くの友達の 友達の思いを参考に 考 え る 時 間 の思いを話したり、 思 い を 聞 き 、思 して、もう一度自分 をもつ。 聞いたりする。 考を深める。 の思いをまとめる。 図25「教材での学習形態について」 それぞれの場面で上のような学習形態をとった。 ( 図 2 5 )1 ~ 3 の 場 面 で は 、始 めの一人学びでは自分の思いを書くことができない子どもがいた。しかし、ペア学 習やグループ学習を通して最後の一人学びでは、友達の思いを元に自分の思いを書 け た 姿 が 見 ら れ た 。4 の 場 面 で は 、始 め 一 人 学 び を し た 後 に 一 斉 学 習 を 取 り 入 れ た 。 な ぜ な ら 、「 ぼ く 」 の 思 い に 立 っ た 考 え を 書 け て い た 子 ど も が 尐 な く 、 ペ ア 学 習 や グループ学習をしても子どもたちの思考の深まりが見られないためであった。一斉 学習を取り入り入れたことで、ほとんどの子どもたちが「ぼく」の立場 に立って書 けたが、2人の子どもたちは書けなかった。しかし、友達の思いを聞くことで学習 前より深まった。また、尐人数での表現活動の場を設けたことで、1時間に1回は 自分の思いを話したり、聞いたりできるようにした。 ○「自分の好きな本を紹介し合う」での学習活動 一人学び → ペア学習 → 一人学び → 2グループでの発表 ま ず 、自 分 で 二人組になり紹介文を話 間違いがあ 人数を学級の半数 考える時間 したり、聞いたりする。 ったところ にし、安心して話 をもつ。 気づいたことを教える。 を訂正する。 せるようにする。 図26「自分の好きな本を紹介し合う活動での学習形態について」 18 「自分の好きな本を紹介し合う」活動では(図26)のような学習形態をとった。 ペ ア学習で話したり、聞いたりすることで間違いを教えたり、声の大きさや速さについて ア ド バ イ ス す る よ う に し た 。ま た 、好 き な 本 を 紹 介 し 合 う 活 動 で は 、2 グ ル ー プ に し て 、 安心した雰囲気で話せるようにした。ほとんどの子どもたちが聞き手に聞こえるように 話 す 姿 が 見 ら れ た 。( 図 2 7 ) 発 表 す る 子 ど も は 紹 介 文 を 読 み 、別 の友達が本をもつようにした。ま 私の好きな た 、聞 い て い る 子 ど も た ち は 本 の リ 本は… ス ト を 持 ち 、紹 介 を 聞 い て 読 み た い 本に○印をつけるようにした。 図27「自分の好きな本を紹介し合う活動の様子」 イ 日常での言語活動(朝の会でのスピーチ、読書の推進) ○朝の会でのスピーチ 私の好きな 好きな食べ物や好きな動物など、テーマ 食べ物は… にそって話している。一文ずつ増やして 尐 し ず つ 長 く 話 す よ う に し て い る 。ま た 、 自分の話したいことを順序よく言えるよ う事前に書く活動を入れて、スピーチを 行っている。 図28「朝のスピーチの様子」 ○ 読書の推進(読書カードの活用) 1 学期より継続して読書カードに記入を続けている。カードの内容は、読んだ日付、 本 の 題 名 、 思 っ た こ と の 印 づ け (◎ 、 ○ 、 △ )の 3 つ で あ る 。 で き る だ け 簡 単 に し て 、 書 くことが苦にならないようにしている。また、 1 冊読んだら一つシールを貼るようにし て い る 。 (図 2 9 ) 図29「読書カードの活用」 19 8 研究の成果と課題 《成果》 ○ 単 元 ご と に 学 習 の つ な が り を も た せ た こ と で 、よ り 興 味 を も っ て 本 に 触 れ 、読 書 の 楽 し さ を 実 感 す る こ と が で き た 。ま た 、導 入 に ゲ ー ム 的 活 動 を 取 り 入 れ た こ と に よ り 、 児童が意欲的に取り組むことができた。 ○ 児 童 の 様 々 な 思 い が 引 き 出 せ る よ う な 発 問 を す る こ と で 、教 科 書 に 書 い て な い こ と など想像を広げながら読むことができた。 ○ 場面の様子を穴埋めでおさえたり、挿絵を入れたり、吹き出しを利用することで、 より登場人物の気持ちになって自分の思いを表現することができた。 ○ 司 書 補 助 の 先 生 と 連 携 す る こ と で 、児 童 の 実 態 に あ っ た 適 切 な 手 立 て を と る こ と が で き た 。そ し て 、ど の 児 童 も 自 分 の 好 き な 本 を 決 め て 、紹 介 す る 絵 や 文 を 紹 介 す る こ とができ読書意欲につながった。 ○ 尐 人 数 の 学 習 形 態 を と る こ と で 、授 業 中 1 回 は 自 分 の 思 い を 話 し た り 、聞 い た り す る こ と が で き た 。最 後 に 一 人 学 び を 設 け る こ と で 、友 達 の 思 い を 参 考 に し て 思 考 を 深 めることができた。 《課題》 ● 児 童 は 様 々 な 思 い を 想 像 し て 書 い て い た が 、自 分 の 思 い を 文 に 表 現 す る の に 時 間 が かかっていた。想像を広げて自分の思いを書く時間を確保する必要がある。 ● 児 童 は 自 分 の 思 い を も っ て い る が 、そ れ を 学 習 シ ー ト に ど の よ う に 表 現 し た ら よ い の か 悩 む 姿 が 見 ら れ た 。個 別 に 支 援 に 入 り 、児 童 と や り と り を し な が ら 表 現 で き る よ う今後も取り組んでいく。 ● 事前の調査結果と比べ、 「 話 す こ と が 好 き 」が 2 3 人 で 3 人 増 え 、 「聞くことが好き」 が 2 9 人 で 4 人 増 え た 。話 す こ と が 恥 ず か し い と い う 気 持 ち か ら ま だ 苦 手 意 識 を も っ ているので、今後も尐人数の場を設定して安心して話すよう取り組んでいく。 おわりに 今回、研究に取り組んで感じたことは、子どもの実態を把握し、つけさせたい力を教師 が明確にしておくことの大切さである。そして、子どもの活動の姿を思い浮かべ、 手立て を工夫することで子どもたちが自分の思いを表現できるようになると実感した。 また、読書活動を含んだ研究であったため司書補助と連携を図って進め 、活動を充実さ せ る こ と が で き た 。 好 き な 本 を 紹 介 し 合 う 活 動 で は 、「 話 す こ と が 楽 し か っ た 」「 友 達 の 話 を聞いて本を読みたくなった」という子どもたちの声が多く聞かれて嬉しく思った。 「話すこと・聞くこと」の活動を通して「友達が聞いてくれるから話すことが楽しい 」 と思っている子どもがいる。今後も、そのような子どもたちが増えるよう日々の授業の中 で 、話 す 聞 く 態 度 の 指 導 の 充 実 を 図 り 、 「 話 す 楽 し さ 、聞 く 楽 し さ 」を 味 わ え る よ う な 授 業 づくりをめざしていく。 参考文献 ・小学校学習指導要領解説「国語編」 平成11年5月 文部省 ・児童心理 5月号 「気持ちをうまく伝えられない子の理解と援助」 ・児童心理 臨時増刊 「学級づくりの基礎・基本」 20 金子書房 金子書房
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