人を対象とする生物医学研究倫理審査法 Regulations on Ethical

人を対象とする生物医学研究倫理審査法
Regulations on Ethical Reviews of Biomedical Research Involving Human
中華人民共和国衛生部
第1章
総則
第1条
人を対象とする生物医学研究およびその関連技術を用いた診療が、人の生命、健
康と尊厳を守り、被験者の権利を尊重し保護しながら実施されるよう規制するた
めに、“中華人民共和国職業医師法”および“医療機関管理条例”に基づき、“人
を対象とする生物医学研究倫理審査法”を制定する。
第2条
すべての人を対象とする生物医学研究に対する倫理審査は、本法を順守して行わ
れなければならない。
第3条
本法における、人を対象とする生物医学研究およびその関連技術を用いた診療に
は以下が含まれる。
1)人体の生理的、病理的現象に関する現代の物理学、化学および生物学的手法を用いる
研究、および疾病の診断、治療、予防に関する研究活動。
2)生物医学研究の結果得られた医療技術、健康技術、および関連製品を試験的に使用す
る活動。本法が施行される2年以上前から行われている治療法、および本法施行前に
衛生部の認可を得た技術は、本法の適用範囲に含まれない。
第4条
倫理審査は、国家の法と規制のみならず一般的な生命倫理原則も順守しなければ
ならない。また、倫理審査は、独立して、客観的に、公正で、透明性を確保した
やり方で行われなければならない。
第2章
倫理委員会
第5条
中華人民共和国衛生部は医療倫理委員会を設立した。各省の衛生部は、その管理
下に倫理審査の指導および助言を行う専門機関を設立した。国家衛生部と各省衛
生部によって設立される委員会は、医療倫理における重要な倫理問題を考察し、
指針策定のための助言をし、必要に応じて重要な研究計画の倫理審査を実施する
専門のコンサルタント機関である。また、これらの委員会は管轄地域内の倫理委
員会における倫理審査の指導と監視を行う。国家衛生部と各省衛生部によって設
立される倫理専門委員会は、個別に“規約”を策定する。
第6条
医療保健機関、科学研究機関、疾病予防管理医学機関、婦女子健康管理機関等で、
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人を対象とする生命医学研究および関連技術の応用研究を実施する機関は、機関
内倫理委員会を設立しなければならない。機関内倫理委員会の主な責務は、各機
関や各機関に所属する組織で実施される生命医学研究および関連技術の応用研究
に対する倫理審査と監視である。機関倫理委員会は、各種社会活動から要求され
委任された倫理審査を実施し、それらに対し倫理教育プログラムを実施する。
第7条
各機関倫理委員会の委員は、倫理委員会を設立しようとする団体や機関内の意見
を幅広く聴取した上で、生命医学、医療管理学、倫理学、法学、社会学等の領域
から選ばなければならない。各機関委員会は、男女比も考慮された5名以上の委
員によって構成されなければならない。少数民族を有する地域では、その少数民
族を代表する委員も考慮しなければならない。
第8条
各機関倫理委員会委員の任期は5年とし、再任を可とする。各機関倫理委員会は、
委員の互選により委員長と数名の副委員長を選任する。委員長と副委員長の再任
を可とする。機関倫理委員会を設置する各団体や各機関は、各委員の仕事量に応
じた補償金を支払わなければならない。
第9条
機関倫理委員会の責務は、被験者の人間の尊厳と人権を守るための研究計画の審
査、いかようにも被験者を危険にさらしていないことを保証すること、と同時に
承認された研究計画の監督と監視、および被験者の不平や被験者に起こった事象
への対応である。
第10条
機関倫理委員会は次の権限を持つ:
1)インフォームド・コンセントの証明を研究者に要求する。または、研究者の求めにより、
インフォームド・コンセント取得の免除を承認する。
2)研究者に研究計画の修正を要求する。
3)研究者に研究活動の停止、または中止を要求する。
4)研究計画の承認の可否、または修正後の承認を決断する。
第11条
倫理委員会の委員は、倫理審査をした研究計画の秘密を保持しなければならな
い。
第12条
倫理委員会は、外部からのいかなる干渉の影響も受けず自らの決定をしなけれ
ばならない。また、審査結果は、時宜にかなった公開をしなければならない。
第13条
倫理委員会は、所属する行政区および国家衛生部の監督管理下に置かれなけれ
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ばならない。
第3章
第14条
審査手続き
人を対象とする生命医学研究の審査原則は次の通りである:
1)インフォームド・コンセントの手続きを順守し、被験者候補を尊重し、人権を擁護する
こと。被験者候補が研究への参加または不参加を自律的に決定できるようにすること。
研究参加の同意を得るための、だまし、そそのかし、強要などが決してあってはなら
ない。研究のどの段階であっても、同意の取り消しを可能とすること。
2)科学的社会的利益を考える前に、被験者の安全、健康および人権を第一に考えること。
被験者の利益を最大とし、傷害や被害を避けるようにしなければならない。
3)被験者が研究参加によって得る受益に対する経済的負担を軽減または免除すること。
4)被験者のプライバシーを尊重し保護すること。個人情報の保管と安全措置について時
宜にかなった告知をすること。これらの情報を無関係の第三者や報道機関に決して公
開しないこと。
5)研究によって引き起こされたいかなる障害についても、無償の治療と補償を被験者が
確実に受けられること。
6)子ども、妊婦、精神遅滞者、精神病患者、受刑者、経済的または教育的に恵まれない
人々をはじめとする自らの人権を保護する能力が無いまたは不足している被験者(脆
弱性を有する人々)に対して特別な保護をすること。
第15条
研究計画者は、次の書類を倫理委員会の倫理審査に提出しなければならない:
1)倫理審査申請書
2)研究結果や関連技術の利用計画
3)被験者候補の同意書
第16条
研究計画申請者は、最初に被験者候補の自由意思によるインフォームド・コン
セントを書面で取得しなければならない。書面による同意が不可能な場合は、
口頭によるインフォームド・コンセントを取得し、同意取得の証明書を添付し
なければならない。自ら意思決定を行うことが困難な被験者候補の場合は、保
護者または代理人から書面によるインフォームド・コンセントを取得しなけれ
ばならない。
第17条
インフォームド・コンセントの手続きにおいて研究計画申請者は、研究に関す
る総合的で理解可能な情報を被験者候補に提供しなければならない。説明文書
は、被験者候補が理解しやすい平易な文言で書かれなければならない。説明文
書は、少数民族の居住地においては、その地域の言葉とすることもできる。被
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験者候補は、被験者となるかどうか決定するために十分な時間を与えられなけ
ればならない。
第18条
実際の手順や研究計画の状況に変更がある場合には、再度インフォームド・コ
ンセントを取得し、倫理委員会に審査申請しなければならない。
第19条
倫理委員会は、国家の法や規制に違反する研究計画の倫理審査申請を受理して
はならない。倫理委員会と申請された研究計画との間に利益相反が生じる場合
には、倫理委員会はその研究計画への関与を積極的に回避しなければならない。
回避が不可能な場合には、申請者に対して利益相反を明示しなければならない。
第20条
倫理委員会は次の事項について審査を行う。
1)研究者の適格性、研究者が研究計画の遂行のために必要な能力、経験を有しているか。
2)研究計画の科学性と倫理原則の順守。
3)被験者が受ける利益と危険性とのバランスは適正かどうか。
4)被験者候補(その家族、保護者、法定代理人)に提供された情報は、詳細で分かりやす
かったかどうか。インフォームド・コンセントの取得に使われた方法は適切だったか
どうか。
5)被験者の情報の秘匿性を守るための措置が講じられているかどうか。
6)被験者候補の選択基準と除外基準は適正で正当化できるものかどうか。
7)理由がなくとも研究参加を取りやめられ、それに対していかなる仕返しもないことも
含めて、被験者の持つ権利が被験者に明示されているか。
8)被験者が適正な経済的補償を得られるかどうか。研究参加によって傷害を負った場合
や死亡した場合の医療の提供や経済的補償は適当であるかどうか。
9)研究チームの中にインフォームド・コンセントおよび被験者の安全に関連する事項の
処理に責任を持つ者が指名されているかどうか。
10)研究参加によって起こり得る危険に対して保護措置が講じられているかどうか。
11)研究者と被験者の間に利益相反が生じていないかどうか。
第21条
倫理委員会は、研究計画の承認、否認、修正後の再審査を決定しなければなら
ない。倫理委員会の決定には委員の3分の2以上の同意がなければならない。
その決定を行った理由が告知されなければならない。被験者が被る傷害や不快
の可能性が、日常のものまたは通常の診療のもの以上ではないとき(主に研究の
リスクが最小限の場合)には、倫理委員会委員長もしくは倫理委員長によって指
名された委員によって研究計画の審査を行うことができる。
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第22条
倫理委員会に承認されて実施している研究計画に変更の必要が生じたときには、
変更を倫理委員会に申告し承認されなければならない。研究実施中に被験者に
深刻な否定的反応や重篤な有害事象が認められたときには、倫理委員会に申告
しなければならない。
第23条
第4章
第24条
倫理委員会の承認無しに、申請中の研究計画を実施してはならない。
監督管理
人を対象とする生物医学研究の倫理審査に対する監督管理は、あらゆるレベル
における保健当局の科学研究事業領域に含まれていなければならない。監督管
理業務は次の事項が含まれる。
1)人を対象とする生物医学研究を実施する機関に、倫理委員会が設立されているか。
2)機関倫理員会は、倫理審査原則に則った倫理審査を実施しているか。
3)倫理審査の結果を、実行する段階で異議があるか。
第25条
衛生部は、全国の倫理委員会を総合的に管理し、倫理審査の規制を完全なもの
とし、倫理審査について研究をし、必要な関連政策を定める。各省の衛生部は、
その省に属する倫理委員会の監督管理を負う。
第26条
在外機関および在外研究者は、人を対象とする生物医学研究を中国で行う承認
を自国もしくは該当地域で得たのち、本法により設置された倫理委員会に倫理
審査を申請しなければならない。
第27条
人を対象とする生物医学研究を終了するときには、研究責任者は、その研究計
画が倫理委員会の倫理審査を受けた証を提出しなければならない。人を対象と
する生物医学研究の論文を発表する前に、著者は、その研究が倫理委員会の倫
理審査を受けた証を提出しなければならない。
第28条
あらゆる個人と機関は、規制違反と非倫理的行為を告発する権利と義務を有し
ている。
第29条
規制違反と非倫理的行為を発見したときには、当該研究機関と衛生行政当局は、
関係する研究者に罰を与え、公開批判し、報酬を受け取る資格をはく奪し、不
正の軽重に応じて研究計画の実施を停止し、国家法に抵触する場合は告訴する
権限を有する。
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第5章
附則
第30条
本法は、その公布日より施行する。
注:本法は、中華人民共和国衛生部により作成され、2007年1月11日に施行された。
この英語版は、中国医学協会(Chinese Medical Association)で翻訳された。
この和訳版は、中国医学協会による英訳版を東海大学医学部生命倫理学でさらに翻訳した
ものです。
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