鹿児島大学工学部研究報告 第 47 号(2005 年) 鹿児島大学大学院理工学研究科 学位論文 博士(工学) 理工研第 199 号 CRT TV 用偏向ヨークの高性能化に関する研究 Studies on High-Performance Deflection Yokes for CRT TV Sets 岩崎 Katsuyo 1. はじめに グローバルの観点から CRT TV は今後もデ ィスプレイの主役であること、また、放送の ディジタル化の拡大によって、その使用頻度 が増えてくることから、CRT とともに用いら れる偏向ヨークの省エネ化と高性能化が必 要になってきている。そこで本研究では、偏 向ヨーク側からの省エネとコンバーゼンス やラスター歪などの高性能化を実現するこ とを目的とし、そのために新しい偏向ヨーク システムの開発と特性の高精度数値計算シ ステムの開発を行った。 2.解析・実験方法及び結果 省エネ対応として、従来の断面角型コイル とフェライトコアの組合せによる偏向ヨー クは、特にコンバーゼンスのばらつきが大き くなり生産性が悪化するなどの問題が発生 していた。この問題を解決するために、想定 される全ての要因について分析実験をする ことで原因を究明した。さらに数値計算で省 エネに対するコイルとフェライトコアの寄 与度を分離し、結果として、断面角型コイル 学位授与日 2005 年 3 月 25 日 松下東芝映像ディスプレイ株式会社 勝世 IWASAKI と丸型フェライトコアの組合せを考案し、省 エネと生産性を両立させることができた。同 時に、省エネ検討に必要である偏向パワーの 簡易的、高精度推定法も確立できた。 さらに、特性の高性能化を実現するために、 従来の数値計算フローの各ステップを高精 度化の観点から検証し、そのポイントは、コ イルモデリング時にいかに現実のコイル位 置を正確に関数で表わせられるかであるこ とを究明した。これは「測地線」という考え 方をコイル設計時に導入することで実現で きることも検証した。 また、本研究で得られた設計手法を大型広 偏向角用偏向ヨークに応用し、本ヨークにお いても精度確認ができることや、これを活用 して設計の方向付けを行うことができるこ とを示した。さらに、本手法を投射型用偏向 ヨークの設計にも展開し、要求される特性が 容易に得られることも実証し、偏向ヨークの 高性能化に対する本手法の有効性を示すこ とができた。 3.まとめ 本研究では、偏向ヨークの高精度化という 観点から省エネと生産性を両立させるとと もに、コイル設計時に「測地線」の考え方を 導入して、高精度の数値計算フローを確立、 検証することができた。
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