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数の成り立ち、写像と無限集合
目次
1.数の成り立ち、集合の扱いについて
自然数、整数、有理数、実数
2.写像について
写像、写像の個数、単射、全射、逆写像、
写像の合成
3.無限集合について
濃度が等しい、N~Z、N~Q、N~Rでない、
カントールの対角論法
1.0
自然数,整数
有理数,無理数
実数
可算無限集合
非可算無限集合
実数
有理数
整数
自然数
無理数
1.1 自然数,整数
●
●
1.2 有理数(その1)
●
●
●
1.3 有理数(その2)
●
1.4 数直線と有理数以外の数
自然数,整数,有理数
有理数,有限小数
有理数ではない
有理数,循環小数
有理数でない数
0
●
1
7
3
4
1
2
2
数直線
1.5
が有理数でないことの証明
(高校の教科書にもある有名な証明)
1.6 有理数,無理数と実数
●
●
●
1.7 実数の四則演算における法則
●
1.8 何故,1.7の法則が成立するか?
●
1.9 可算無限集合,非可算無限集合
●
2.1
写像と関数の話
定義(写像) 集合X,Yに対し,Xの各元xに対
してYの元yを対応させる規則をXからYへの写像
(mapping)という.
f:X→Y
Xをfの定義域(domain)
f(X)={f(x)|x∈X} をfの値域(range)という.
一般に、f(X)⊆Y.
2.2 学校では規則が、式で表される場合(関
数による対応付け)を扱うことが多い
数から数への写像を関数と呼ぶことが多い.
f(x)=xの多項式
f(x)=xの累乗、n乗根
f(x)=xの有理関数(分母、分子がxの多項式)
f(x)=xの三角関数
f(x)=xの指数関数、対数関数
これらはどれも対応が式でかけている.
2.3 でも、写像には対応の規則が式で表せ
ない場合もある!!
X={ナミヘイ、フネ、サザエ、カツオ、ワカメ、マスオ、タラ}
Y={男、女}
f:X →Y
漫画をご存知なら、定義域のどの要素にも値域の
「男または女」を対応つけることができます.
この規則は皆さんがこれまで勉強したxの式では
かけません.(sin(ナミヘイ) や (カツオ)2では表現
できない)
2.4 関数は写像の特別な場合!!
写像
数から数への対応
ものからものへの対応
対応が式でかける場合もかけない場合もある
関数
写像で定義しておけば
その定義を実数の集合などに
おきかえると
関数の定義になる!!
数から数への対応
を問題にする
2.5 注意1:定義域の全部の要素に対応付けし
ないと写像とは言わない!!
X={ナミヘイ、フネ、サザエ、カツオ、ワカメ、マスオ、タラ}
f:X →X (父親を対応付ける)
漫画の知識に従って、xに対して父親を対応つけると、
f(サザエ)=ナミヘイ、f(カツオ)=ナミヘイ
f(ワカメ)=ナミヘイ、f(タラ)=マスオ
ですがナミヘイ、フネ、マスオの父親はXの要素にないために
f(ナミヘイ)を決められません.この場合、この対応付けfを
写像とは言いません.
2.6 注意2:定義域の要素に2個以上の要素を対応
付ける場合は写像とは言わない!!
X={ナミヘイ、フネ、サザエ、カツオ、ワカメ、マスオ、タラ}
f:X →X (子供を対応付ける)
漫画の知識に従って、xに対して子供を対応つけると、
f(ナミヘイ)=サザエ、f(ナミヘイ)=カツオ
f(ナミヘイ)=ワカメ
となり、ナミヘイに3つの要素が対応します.写像であるため
には、定義域のどの要素にも値域の1つの要素を対応つける
必要があります.したがってこの場合も、この対応付けfは
写像とは言いません.
2.7 集合 X から集合Yへの写像の個数は?
XからYへの写像は複数ある!!
X={1,2} から Y={a,b} には4つの写像 f1,f2,f3,f4がある.
1番目の写像 f1
2番目の写像 f2
3番目の写像 f3
4番目の写像 f4
f1(1)=a, f1(2)=a
f2(1)=a, f2(2)=b
f3(1)=b, f3(2)=a
f4(1)=b, f4(2)=b
f1,f2,f3,f4を式でかく必要は全くありません.
この場合には fi は単に記号の意味しかありませんが.
2.8 複数ある写像の中で、次の特徴的なものを
単射、全射、全単射と呼ぶ!!
f:X→Yへの写像とする.
 単射 (1対1の写像)
x1 ≠ x2 を満たすどんな X の元に対しても必ず
f(x1) ≠ f(x2) が成り立つ写像
 全射 (上への写像)
f(X)(={f(x)|x∈X})=Yを満たす写像
 全単射 (上への1対1の写像)
単射かつ全射である写像
2.9 ベン図による写像の表示
2.10 逆向きの対応が写像になる場合もある.それを
逆写像(逆関数)という!!
全単射
に限っ
て逆向
きの対
応も写
像にな
る!!
2.11 f:R→{y∈R|y>0}(f(x)=ex)には
逆関数が存在する.


fは単調増加なので、単射.
f(R)={f(x)|x∈R}={y∈R|y>0}より、全射.
従って、yからxへの対応も関数になる.この関数が
x=f-1(y)=logy である.(通常、改めてこの変数yをx
に書き換えて、f-1(x)=logx とかく.)
f:R→R(f(x)=ex)とし、逆の対応を考えるとき、y=0と
y<0に対してxを対応付けられないので、逆関数は存在
しなくなる.実際には、対数の真数条件によりy≦0
の場合を除外し、逆関数が存在するようにしている.
2.12 写像の合成と全単射
(1)写像 f:X→Y、g:Y→Zで共に全単射ならば
g。f:X→Zも全単射になる。
(2)(g。f)-1:Z→Xも全単射になる。
(3) (g。f)-1= f-1 。g-1
3.1 集合の要素数の比較
(1)集合A、Bが有限集合の場合:個数を数えて比較
する。
(2)集合A、Bが無限集合の場合:集合の包含関係を
見て比較できそう。
(3)全単射の写像で対応を付けて比較する。(包含
関係とは異なる性質がわかる:集合の濃度)
3.2 集合の濃度が等しい

集合 A から集合 B への全単射があるとき、A と B
は濃度が等しいと言われる。
整数の集合Zと自然数の集合Nは濃度が等しい
f:Z→N を f(z)= 2|z|-1 (z<0)
2(z-1)
(z≧0)
でfは全単射
3.3 N2={(n,m)|n,mは自然数}
とNは濃度が等しい
f:N2→Nを次で定義する
f((n,m))=(1/2)(n+m-1)(n+m-2)+m
(n,m)は(n+m-1)群のm番目(群数列の考え)
3.4 有理数の集合QとNは濃度が等しい

Q={y/x | y,xは整数、xは0でない}

Z、N2、QとNはどの集合も濃度が等しい
3.5 実数の区間(a,b)(a<b)と
(c,d)(c<d)は濃度が等しい
f: (a,b)→(c,d) を以下で定義する
f(x)={(d-c)(x-a) / (b-a) } + c
例5 (-π/2, π/2 ) と R=(‐∞,∞)は濃度が等しい
f:(-π/2, π/2 )→(‐∞,∞)を f(x)=tanx で定義
3.6 実数の区間(a,b)(a<b)と
R=(‐∞,∞)は濃度が等しい
f:(a,b)→(-π/2, π/2 ) 全単射
g:(-π/2, π/2 )→(‐∞,∞) 全単射
g。f: (a,b) →(‐∞,∞)も全単射になる。
g。f(x)=g(f(x))=g( {π(x-a) / (b-a) } -π/2 )
=tan( {π(x-a) / (b-a) } -π/2 )
3.7 [0,1]と(0,1)は濃度が等しい
[0,1]と(0,1]も濃度が等しい
f: [0,1]→(0,1) でf(x)=xとすると全射にならない。
[0,1]の中の有理数の集合1/2, 1/3, 1/4, …と
無理数の集合に分けて扱う。
xが無理数のとき、f(x)=x
xが0のとき、f(x)=1/2、xが1のとき、f(x)=1/3
xが1/nのとき、f(x)=1/(n+2)
例8.R2とRの濃度は等しい
3.8 (カントールの対角論法)
実数Rと自然数Nの濃度は異なる

f:R→N の全単射があると仮定して矛盾を導く。

N、Z、QなどのNと同じ濃度の集合を加算無限集
合とよび、Rと同じ濃度の集合を非加算無限集合
とよぶ。
課題(レポート)
番号(
名前(
Ⅰ.
X ={ナミヘイ、フネ、サザエ、カツオ、ワカメ、マスオ、タラ}
子供:X →X について
子供全員: X →P(X)(={Y⊆X|YはXの部分集合})
とすると、写像になることを確認せよ.
例えば、
子供全員(ナミヘイ)={サザエ、カツオ、ワカメ} ∈P(X)
子供全員(カツオ)={}∈P(X)
なので、Xの各要素にP(X)の要素を1つ対応可能.
P(X)をXのべき集合という.
)
)
Ⅱ.集合{1,2,…,n} から集合{1,2,…,m} への写像について以
下を検討せよ.
 写像は何通りあるか?
 nとmの関係がどのような場合に単射を作れるか?作れる場
合の単射は何通りあるか?
 nとmの関係がどのような場合に全射を作れるか?
 nとmの関係がどのような場合に全単射を作れるか?作れる
場合の全単射は何通りあるか?
Ⅲ.(a,b)={x∈R|a<x<b}とする.



開区間(a,b) から開区間(c,d)への関数で、全単射となる
関数f(x)を1つあげよ.
開区間(-π/2,π/2) から実数全体の集合(-∞,∞)への関数
で、全単射となる関数f(x)を1つあげよ.
できる人は上記の2つの関数を合成し、開区間(a,b)から
実数全体への全単射となる関数f(x)を作れ.このことか
ら、(0,1)に含まれる実数と (-∞,∞)に含まれる実数には対
応が付く.