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3)豆新素材の調理科学的研究(豆新素材を利用した食品化)
①日常食および介護食、乳児食での試作、評価(調製、嗜好性)
ア.国民栄養調査結果から得られる課題
日本人の食事内容の質・量的変化が、生活習慣病の増大にかなり関与していることは事
実であり、その背景にある社会環境、生産・流通システム、生活観などの変容と大きく関
っている。豆類の国民栄養調査栄養結果をみると、大豆以外のその他の豆類の摂取量は極
めて少なく(厚生労働省「国民栄養調査」食品群別摂取量の推移 参照)
、21 世紀における
国民健康づくり運動(健康日本 21)で掲げる一日当たり豆類摂取目標量(成人 100g以上)
を大きく下回っている。大豆は各種製品で摂取されていることを考えると、豆類摂取量を
増加していくためには、大豆以外の豆の優れた栄養学的利点(
「五訂食品成分表」雑豆の栄
養成分表、食品可食部の全窒素 1g当たりのアミノ酸組成 参照)を明確にし、幼いころか
ら食べなれる習慣を作ることが生活習慣病の予防、健康な食生活の確保の上で重要と思わ
れる。また、乾豆を粒のまま利用することは、予備浸水の必要性や軟らかくするまでの加
熱時間の長さから利用を狭める要因となり、また、水煮缶、ドライパックのようにすぐ使
える形態が以前に比べで増えているが、大豆以外の豆は煮豆・餡等に使うものとして、強
い固定観念が組み込まれている世代が親の代になっているため、利用の拡大に限界がある
のが現状のようである。
このような点から、豆を粉末化するという発想は他の食材と共存し易く、意識せずに味
になじませられるため、それを繰り返せば、大人あるいは高齢になって“懐かしい味”の
食材になり得る。すなわち、長期的戦略をたて、保育園や学校給食に使える“食物”を、
具体的に提案していくことが必要となる。そのため、安全で消化吸収のよい加工形態や豆
粉の製造を検討するとともに、調理・加工特性の良し悪しと嗜好性の関りを考察すること
が重要と考えられる。
イ.手亡豆粉を用いた試作
(ア)手打ちうどん
(1)腰の強いタイプ
材料は手亡豆粉(皮あり、およびハンマーミル酵素処理)
、強力粉:豆粉=8:2、5:5、
10:0(基準)
、粉 100gにつき水 45g、精製塩 4gを用いた。まず粉に塩水を加えて均一
になるまでこね、30 分ねかして中捏ねを軽くし、さらに 20 分ねかした後、径 30cm の円
形にのし、屏風畳して 3mm 幅にカットした。沸騰湯で 5 分ゆで、水洗い後すぐ試食した。
その結果、5:5使用の場合は加水して捏ねる段階、中こねの段階で、豆粉入りはポロ
ポロして扱い難く、酵素処理粉は特にそれが強く感じられた。ゆでた時もゆで汁に煮とけ
るようであり、ゆであがり倍率は 1.38(基準は 1.72)となった。8:2 は両者とも腰が
あったが、酵素処理粉は麺にえぐみが残り、皮ありは豆の風味のある麺となり、後者の方
がやや食べ易かった。
(2)ソフト麺タイプ
材料は、手亡豆粉(皮あり、およびハンマーミル酵素処理)
、強力粉:豆粉=8:2、5:
5、10:0(基準)
、粉 100gにつき微温湯 60g、精製塩 6.2gを用いた。作り方は、前述
(1)と同様に行なった。但しゆで時間は 5、10 分とした。
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その結果、5:5使用の場合はいずれも生地としてまとまり難く、特に酵素処理豆粉は
豆の刺激臭があり、
中こね時や製麺時は硬くて伸ばし難かった。
ゆで汁にはトロミがあり、
ゆで麺もえぐい、塩からい、苦いという味に対するマイナス評価であった。8:2 は皮あり
手亡粉の方が酵素処理より製麺性が高く、食感も好まれた。腰がないので、咀嚼しやすい
ように感じられた。ゆで時間は 5 分、10 分で大差ないようであった。ゆで上がり倍率は基
準が 1.80、8:2 の皮ありは 1.75、酵素処理粉は 1.65、5:5 の皮ありは 1.69、酵素処理
粉は 1.56 であり、酵素処理粉系はゆでて崩れ易いようである。ゆで麺を1晩冷蔵したが老
化感はなく、腰のないやわらかさであった。
(イ)サブレ(ショートネスの高いクッキー)
材料は、手亡豆粉(皮あり、およびハンマーミル酵素処理)
、薄力粉:豆粉=8:2、5:
5、10:0(基準)、上記の粉 100g、バタ-60g、砂糖 15g、卵黄 20g、バニラエッセンス、
卵黄の水溶きを使用した。バターを軟らかく練り、砂糖をいれ混ぜた後、卵黄を加えて軽
くまぜ、香料を加えた。さらにふるった粉を入れてこね、布巾をかけ 1 時間ねかした。麺
棒で 4~5mmにのして長方形に切り、卵黄の水溶きをはけで塗り、170℃のオーブンで 10
分焼成した。
その結果、5:5 は生地としてまとめ難かった。酵素処理粉入りの焼き色は濃くなり、
5:5 は焦げたきな粉臭が強かった。しかし、いずれもサクサク感があり、8:2 のサブレ
がほのかな豆の香りがあり、甘味も穏やかで、ナチュラルな風味のサブレであった。
②調理法毎の豆新素材の評価、利用条件(使用条件)の確定
豆の粉末化製品を利用した食べ物を調製し、その性質や嗜好性を把握して、新たな用途
を提案できるような基礎的知見を得ることを目的とした。
ア.4製法5種の豆粉を利用した料理の分類の試み
豆、豆粉を使う食べ物は主食、主菜、副菜、デザート類に利用され、多種多様であるが、
それぞれを水分含量からみると、水分含量 70%以上(和風茹で麺類、ゼリー、カスタード
プデイング等)
、60%台(飯、茹でスパゲテイ、こしあん等)
、50%台(水羊羹、串団子等)
、
40%台(ホットケーキ、草もち、今川焼きなど)
、30%台(菓子パン類、タルト、ケーキ
等)
、20%台(ドーナッツ、カステラ等)
、10%以下(スナック菓子、サブレ、クッキー、
バターケーキ、煎餅類)と分類した。
豆粉を利用する食べ物について、水分含量の違いは食味や風味を確認するひとつの視点と
して捉えられる。
イ.豆粉を利用した食べ物の試作とその評価
(ア)豆粉の試食
5 種の豆粉(A:手亡皮あり・ハンマーミル非酵素処理粉(以下「手亡皮あり粉」とい
う。
)
、B:金時・ハンマーミル酵素処理粉(以下「ハンマーミル粉」という。
)
、C:金時・
マスコロイダー酵素処理粉(以下「マスコロイダー粉」という。
)
、D:金時焙煎 200rpm
粉砕粉、E:金時焙煎 400rpm 粉 )のうち、加熱せずに食べることのできる D、E の 2
種について、本学修士課程の学生 11 名に、味と口触りについて官能評価させた。2点識
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別試験を行ったところ、味については有意差がみられず、口触りについては1%の危険率
で有意差があり、400rpm の方が幾分なめらかで、粘る感じがあり、顎にまとわりつくと
評価された。この食品は何かという問に、両者とも、大豆、きな粉、黒豆が共通してあげ
られ、200rpm に対しては 2 名からコンソメの味というコメントがあり、1 名からはきな
粉、貝柱、ゴマの混合パウダーという記述があったが、美味しいという表現は見られなか
った。このまま食する場合には、きな粉の代用的な使い勝手になる可能性が考えられるた
め、焙煎粉の特有な味を緩和するように他の副材料・調味料・香辛料との取り合わせが必要
であろう。
(イ)各豆粉を使った試作
水分含量の違いにより、味、香り、テクスチャー等に 5 種類の差異が明確になると考え
られるため、水羊かんとソフトクッキーを取りあげ、色は測式色差計による測定やデジタ
ルカメラによる記録、物性はレオメーター、食味評価は研究室員 10 名(5、6名の学生を
含む)により、食味について官能評価を実施した。
(1)水羊かんの場合
a.基本配合と調製方法
実験Ⅰ:通常の水羊かんの基本配合は、出来上がり重量に対し粉寒天 0.5%・砂糖 30%・
生あん 30%であるが、本実験では生あんに替えて A~E の豆粉を用いて調製した。一般に
生あんの代用で使用される市販さらしあんを対象として、生あんと同等の水分量となるよ
うに水を加えた。ビーカーに水 120gに粉寒天 1.0g を振り入れて煮溶かした後、砂糖 60g
と試料の豆粉 16.8g を混合したものを撹拌しながら混和し、
沸騰湯せんで 5 分間加熱した。
加熱終了後、ビーカー内の試料重量を全て 200g になるよう蒸発分は水を補い、45℃にな
るまで撹拌しながら冷まし、50ml ビーカー2 個に分注して、4℃の冷蔵庫で冷却した。ま
た、豆粉やさらしあんの入らない 0.5%寒天(砂糖 30%)のゲルも調製した。
実験Ⅱ:実験1の 0.5%より軟らかい方が水羊かんとしてのテクスチャーが好まし
いものが存在すると予想されたことから、寒天使用量のみ変更し 0.2、0.3、0.4%の
それぞれの水羊かんを実験Ⅰと同様に作成した。
b.色調
寒天濃度 0.5%、砂糖 30%の大正金時粉の水羊かんは小豆あんの水羊かんと比べて色調
が異なり、3系統の色調を示した。手亡皮あり粉は明度(L)の高い明るい薄い小豆色系
統となり、マスコロイダー粉とハンマーミル粉は薄墨色を呈した。また、焙煎粉は褐色系
を示し、測色結果では色差(△E)も大きく、感覚の差異を反映していた(図38、表2
2)
。
c.物性と離漿率
レオメーター(REONERⅡ,YAMADEN)により次のような条件で測定した。測定条
件:ロードセル2Kg、プランジャーは 8mm ディスク型、圧縮率 70%、測定スピード 1mm
/sec で、テクスチャー解析を行った。水羊かんの硬さ・付着性は、さらしあんを利用し
たものに比べいずれもやわらかく、皮ありの付着性は他に比べて付着性が高い(図39)
。
またゲルから水分の離漿状況を比較すると、手亡皮あり粉、ハンマーミル粉、マスコロイ
ダー粉は焙煎粉に比べて離漿が少なく、ゲルの安定性が高い傾向を示した。
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d.官能評価
手亡皮あり粉はやわらかく、もったりしたテクスチャーで、豆の風味があった。ハンマ
ーミル粉は塩からく味がよくないという評価があり、マスコロイダー粉も幾分塩味が感じ
られ、
2 種の焙煎粉はきな粉臭が強く、
水羊かんには向かないと評価された。
寒天濃度 0.4%
では食味、テクスチャーともに 0.5%に比べやや軟らかいが食味は良好であった。
e.総合評価
手亡皮あり粉を使用したものが、色合いが淡色系で、口どけもよく、風味もナチュラル
で穏やかなインゲン豆系の風味があり、一番好評であった。
(2)ソフトクッキーの場合
a.基本配合と調製方法
基本配合は薄力粉 50g、ベーキングパウダー 1g(粉重量の2%)
、砂糖 25g(粉重量の 50%)
、
無塩バター25g(粉重量の 50%)
、全卵 12.5g(粉重量の 25%)
、バニラエッセンス数滴と
した。バターを室温にして、泡だて器で砂糖と共にすり混ぜた後、撹拌しながら卵を混入
し、均一になったら粉を振り入れて混和した。これを直径 12mm の口金をつけた絞り袋に
入れ、オーブンペーパー上に 5cm の長さに搾り出し、天板にのせた。170℃で予熱をした
オーブンに入れて、13 分焼成した。オーブンから出し、ケーキクーラー上で冷ましたもの
を測定と官能検査試料に用いた。豆粉 5 種は小麦粉の 50%置換し(薄力粉 25g に豆粉 25g
を混和)
、後は基本と同条件で調製した。また、ハンマーミル粉とマスコロイダー粉は生地
が硬く扱いにくいことから、牛乳 5g(粉重量の 10%)を更に生地に添加して他と類似の
軟らかさの生地にしたものも調製した。
b.ソフトクッキーの形状と焼成後の焼き色
基準配合に比べ、生地の色はいずれも色は濃く、筒上の形態であったが、焼成後はコン
トロールの薄力粉と手亡皮あり粉で平らに広がる傾向が最も強かった。また、マスコロイ
ダー粉とハンマーミル粉では手亡皮あり粉と焙煎粉に比べて焼き色が濃く、裏面も幾分焦
げ色がつき易かった(図40)
。断面の色についての測色結果(L,a,B 値)
、目視で観
察した結果を反映し、焦げ色の強いハンマーミル粉、マスコロイダー粉では L 値が低く、
a値が高なり、b値が低かった(表23)
。
c.ソフトクッキーの物性
クッキーは超音波カッターで組織構造を破壊しないように両端を切り落とし,長さ
15mm に切り出した。これをレオナー(水羊かんと同じ機器)により、ロードセル 20kg、
プランジャーはくさび形、測定スピードは 1mm/sec、圧縮率 80%で、テクスチャー解析
を行った。図41に示すように、薄力粉の 50%を豆粉に置換したソフトクッキーは薄力粉
に比べ、幾分硬かった。牛乳を追加したハンマー粉、マスコロイダー粉は基本に類似した
硬さを呈した。また、焙煎粉とマスコロイダー粉、ハンマーミル粉はもろさが増す傾向を
示した。
d.官能評価
ハンマーミル粉は刺激臭が感じられ、塩味がかなり感じられる。マスコロイダー粉も塩
味が幾分あり、手亡皮あり粉、焙煎粉は塩からさはないが、焙煎粉についてはきな粉ビス
ケットという印象が先行した。このクッキーのように薄力粉と同量(粉の 50%)の豆粉を
使う場合、手亡皮あり粉を利用したものが、ほのかではあるがインゲン豆らしい匂いがあ
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って好ましく、テクスチャーも好評なソフトクッキーであった。
(ウ)考察
豆粉の食味上の特徴としては、手亡皮あり粉が一番自然な風味がある。生地を調製する
とき、幾分やわらかくなる傾向があり、皮が混在していることに起因する。ハンマーミル
とマスコロイダーの酵素処理した粉は味に特徴があり、使用量が多いと塩味や苦味のよう
な違和感のある呈味を示した。刺激臭があると指摘されることがあった。焙煎粉はいずれ
も臭いに特徴があり、きな粉臭とひと括りに評価されるので、食材としては大正金時らし
さを消失していると感じられた。また、水羊かんやクッキーでの嗜好性では、手亡皮あり
粉が香り、味、色、テクスチャーの面で高水分系の水羊かん、低水分系のソフトクッキー
で好評であった。
③有望用途の絞込みと具体的提案
上記までの研究結果を踏まえ、2製法により製造された金時豆粉について、ヘルシーで
作り易く、おいしい料理の提案を検討した。苦味などを取り除いた金時・マスコロイダー
酵素処理粉(以下「酵素処理粉」という。
)と金時・ハンマーミル非酵素処理粉(以下「ハ
ンマ―ミル粉」という。
)の2種について実施し、また17年度産の金時豆から作られた酵
素処理粉とハンマーミル豆粉(食総研製と外部委託製)についても比較検討した。なお、1
7年度産の金時豆粉を( 新 )という冠を記して示した。
ア.実験方法
(ア)豆粉の新旧の比較
(1)豆粉の膨潤度
豆粉1gを精秤し、水 50mlを加えた。水だけの場合は、スタ―ラ―を用いて 5 分間撹
拌し、湯煎の場合は、30 秒撹拌後、80℃湯煎で振とうしながら加熱した。2,000×gで 15
分間遠心分離し、上澄液を除き、残った沈殿部分に重量を測り、豆粉1gあたりの給水量
を膨潤度とした。
(2) 豆粉の懸濁液の沈降体積
水に懸濁した場合の沈降体積は、まず豆粉 2g と水 45g を合わせ、泡立て器で攪拌(約 160
回)した後、50ml のメスフラスコに移し、メスアップした。試験開始直後・30 分後・60
分後の時間経過に、沈殿層の高さを測定した。水に懸濁した試料を加熱した場合の沈降体
積は、まず鍋に豆粉 8g と水 212g を合わせ、泡だて器で攪拌し、電磁調理器で始めからの
加熱時間が 5 分になるまで加熱した。加熱終了後、室温にまで冷まして 250ml のシリンダ
ーに攪拌しながら移し、30 分後から経時的に沈殿層の高さを測定した。
(3)あんの物性
豆粉5g と上白糖8g に熱湯 27g を混ぜながら加え、
ヒーターで沸騰するまで加熱して、
40g に仕上げ、ラップで包んで放冷した。室温まで冷却させ、クリープメーター(山電
製)でクリープ測定を行い、瞬間弾性率とニュートン粘性率を求めた。
(4) 水羊かんの官能評価および冷蔵保存による離水率
粉寒天0.4g を水 160gの中に振り入れ膨潤させ、ヒーターで寒天を煮溶かした。
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豆粉8.4gと上白糖30g をよく混ぜ合わせものを加えて、混ぜながら 100gまで煮詰
めた。これを50ml ビーカー2 つに分注し、各重量(A)を記録した。その後パラフィル
ムで封じて冷蔵庫にいれ、24、48 時間後の離水量(B)を測り、離水率=A/B×100(%)
を求めた。官能評価は 1 時間冷蔵後に評価した。
(イ)官能評価
豆粉の使用量を多くし、日常の食事に組み込みやすいように、主食、おかず(主菜、副
菜)
、甘味(菓子)に分けて料理を試作し、熟練パネルによる官能評価を行い、解析した.
官能評価用紙の一例を図42に示す。
イ.実験結果
(ア)豆粉の新旧の比較
(1)金時豆の新豆粉(17年度産)と豆粉(16年度以前産)の膨潤度の比較(表24)
豆粉の履歴が明確でないので、生産年度の要因のみとは言えないが、金時豆粉の膨潤度
はいずれの製法でも加熱により増大し、ハンマ―ミル粉の方が著しい。また、酵素処理粉
は鮮度の新しい方が、膨潤度が高い傾向である。ハンマーミル粉は鮮度の差による影響は
少ないが、新しい豆粉の方が低めを示す傾向がみられた。
(2)豆粉の沈降体積
豆粉の沈降体積を表25に示した。
(3)豆粉のあんの物性
豆粉のあんの物性を表26に示した。新しい豆粉の方が古い豆粉より物性値が高い傾向
を示した。また、ハンマーミル粉の方が、物性がしっかりしたゾルを形成していた。
(4)豆粉の水羊かんの冷蔵保存による離水率(%)
豆粉の水羊かんの冷蔵保存による離水率(%)を表27に示した。水羊かんの離水率に
及ぼす新旧の差異は製粉処理法により逆の傾向であり、明確ではなかった。
(5)水羊かんの官能評価結果
水羊かんの官能評価結果を図43に示した。ハンマーミル粉はざらつき、軟らかいゲル
であり、寒天分子の網目構造を阻害していると考えられ、軟らかいゲルでは新旧の差を感
じ難かった。また、酵素処理は非常に滑らかでゲルも硬く、その場合新旧で差異が感じら
れた。特に色は暗く、アクっぽさも強い評価となった。
(イ)試作
(1)主食向け
a.豆粉食パン
材料は強力粉 200g、<150g>、
(新)豆粉 50g<100g>、上白糖 17g、スキムミ
ルク6g、ショートニング(植物性)11g、水 190g、ドライイースト3gを使用した。
これらの材料を、自動パン焼き器でスタートから焼成終了まで 4 時間、焼成した。発酵を
伴う食パンでは、
添加油脂のバターは風味が豆粉とあわないので、
ショートニングとした。
また、ここに使用した豆粉はすべて,17 年度産である。
試作の結果、粉の 20%豆粉を添加した場合、ハンマーミル粉は市販食パンのように、均
一に膨らみ、食パンらしいテクスチャーで、金時豆らしい風味があったことから、小麦粉
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のグルテン形成を阻害しないと考えられる。ハンマーミル粉は膨化度が高かったので、
40%まで添加すると、膨化度は著しく低下した。酵素処理粉は 20%添加でも、ハンマーミ
ル粉の 7 割程度までしか膨化しなかった。官能評価では、豆粉 20%添加の場合、総合評価
は普通で、ハンマーミル粉が評価値は高いものの有意差は認められなかった。酵素処理粉
はライ麦パン,ドイツパンのようだというコメントが記されているので、形態をローフ状
にして焼けば、重たい食感ではあるが、味わい深くなると考えられる。
b.豆粉パスタ
材料は強力粉 200g、豆粉(強力粉の 20、40%相当を置き換える)
、卵黄 2 個、水9g
(粉の 45%)
、サラダ油、4g(粉の2%)
、塩 2g(粉の1%)を使用した。まずボール
に強力粉と豆粉を入れてよく混ぜ、これに卵黄・水・塩・油を加え混ぜたものを菜ばしで
混ぜながら加え、まとまった段階でなめらかになるまで手で十分にこねた後、ラップをか
けて 30 分寝かせた。これを 2mm厚さに麺棒でのし、打ち粉をして3つ程度にたたんで、
包丁で 3~5mm巾に切った。大き目の鍋にたっぷりの湯を沸かし、湯の 0.3%の塩を加え
た湯で 10~15 分ゆでた。製麺性としては、酵素処理粉は 20、40%まで置き換えられ、ハ
ンマーミル粉は 20%までが扱い易く感じられた。また、茹で上げた豆パスタを直ちに試食
し、官能評価した結果、酵素処理粉の方が麺の味のバランスがとれていると感じた者が4
名、ハンマーミル粉の方がよいという評価が2名であった。アレンジとして、豆の風味を
弱めるが中国風の肉味噌や棒棒鶏(バンバンジ)のような唐辛子ゴマ風味を加えたり、さ
っと茸類をバター(サラダ油)で炒め、塩、コショウして、生クリームであえて豆の風味と
クリームの風味を融合させたり、オリーブ油でにんにく、唐辛子を炒め、豆パスタにからめ
て塩、コショウで味をつけるなど、
にんにく風味のパスタの歯応えを味わうといった調理法
が考えられる。
c.赤飯風
材料は、もち米(無洗米)320g(2 カップ)+水 320g、豆粉 25~30g+水を用いた。
本試作では、手軽に家庭で作れるように電子レンジを使用し、もち米の無洗米を耐熱ガラ
スの大きめのボールに入れ、豆粉に水 320gを少しずつ加え混ぜながらペースト状から液
状にして、
米に少量ずつ加えて丁寧に混ぜた後、
フタをして少なくとも 2 時間以上おいた。
ボールより一回り大きいラップを 2 枚用意し、一枚を水面に敷き、もう1枚を器の上部に
しっかりかけて、電子レンジ(600W,8 分前後)で加熱した。飯杓子で軽く混ぜ、上部の
みラップをして電子レンジ(600W,4 分前後)してラップしたまま 10 分蒸らして軽く混
ぜた。
官能評価では、パネル数が少なく統計処理ができなかったが、赤飯風は金時豆風味より
も、もち米の風味が強かった。赤飯とは味わいが異なり、色合いは小豆の赤さに比べ、くす
んでいた。食べ方のアドバイスとしては、出来たてを麺棒で軽く飯粒をつぶし、一口大の
大きさの球状に丸め、餡、砂糖を好みの分量加えたきな粉、すりゴマ、ココア、抹茶でお
萩風に仕上げる方法が挙げられる。
d.豆粉粥
材料は、米 80g(0.5 カップ)
、水2.5カップ、豆粉 25~30g+水1カップ 塩(仕
上がり重量の 0.3~0.5%)小さじ 1/3~1/2弱(仕上がり量 600g、3~4 人分)
を用いた。米を手早く洗いざるにとり、よく水気をきった後、炊飯器の内鍋にいれ、水を
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加えて少なくとも 30 分おいた。小ボールに豆粉を入れ、1カップの水を少しずつ混ぜな
がら加えた(玉にならないように丁寧に行う)
。30分後、水溶き豆粉を少しずつ飯杓子で
混ぜながら米に加え、スイッチを入れ、粥モードで炊く。スイッチが保温になったら塩を
いれ、軽く混ぜた。
官能評価は、パネルが少なく統計処理はできなかったが、おだやかな塩味があり、豆の
風味になれてくると、両者とも食べ易かった。食べ方のアドバイスとしては、豆粉の水溶
きを加える時に、15mm角切りのサツマイモ(30 分位水さらししたもの)を加える、ある
いはスイッチが切れる 10 分位前に、1/2パック(小)のマイタケ等をほぐす、全卵を
粥に入れ好みの加熱程度の落とし卵にする、さらりと食感の粥がよければ米に加える水を
4(五分粥)~9カップ(3分粥)に増やす(量を多く食べないと腹持ちが弱い)
、といっ
た方法が挙げられる。
(2)おかず向き
豆粉のグラタン用ソースを、ライスグラタンおよびポテトグラタンに仕立てた。
材料は、バター10g、豆粉 10g、牛乳 270g、塩1gを用い、180gに仕上げた(出来上が
り2人分)
。厚手鍋(ソースパン)を温め、バターを加え、泡立つ程度(焦がさないこと)
になったら豆粉を入れ、弱火で1,2分炒めた。温めた牛乳(60℃)を加え泡たて器でさ
っと混ぜ、木杓子に変え、全面が煮立つような状態で 180gになるまで煮詰めて、ソース
を完成させた。
a.ライスグラタンの場合(2 人分)
材料は、飯 200g、バタ―10g、塩小さじ1/6、コショウ適宜、シーフードミックス
60g、玉葱 30g、マッシュルーム 25g、粉チーズ3g、塩小さじ1/6弱を用いた。まず玉
葱をみじん切りにしてバターで透明になるまで炒め、さらにシーフードを加えてさっと炒
め、塩、コショウした。ご飯を電子レンジで温め、バターを加え、余熱で溶かし、塩、コショ
ウした。豆粉ソースを大さじ2杯加え、他の材料を加え混ぜた。グラタン皿に飯等を盛り、
ソースをかけ、粉チーズをふり、200℃のオーブンで7分前後焼いた。
b.ポテトグラタンの場合(2人分)
材料は、じゃがいも(皮をむいて)200g、玉葱 25g、バター10g、塩少々、コショウ
適宜、とろけるチーズ 15gを用いた。まずじゃがいも(新しいもなら皮付き可)を5mm
厚さに切って 10 分位茹で、玉葱は薄くせん切りにした。厚手鍋を熱し、バターを溶かし、
玉葱が透明になるまで炒めて芋を加え、芋が熱くなるまで炒めて塩・コショウした。出来
たての豆ソースにこれを加え、軽くまぜ、皿に移し、チーズを振った後、200℃のオーブン
で 15 分前後焼いた。
官能評価では、ソースの仕上がり状態は外観に大きな差異がみられ、酵素処理粉はさら
りとした状態で、ハンマーミル粉はドロッとして、ホワイトソースらしかった。しかし、食
味は両者の差がわかり難かった。ライスグラタンとポテトグラタンの官能評価を図44、
図45に示した。
ソースがピンクっぽい色合いだが、
加熱されると肌色になる傾向があり、
豆の風味があった。また、ライスや芋のグラタンにすると、豆の風味が馴染んで、両者の
豆の差がなかった。酵素処理粉のソースは材料の中にしみ込み、ハンマーミル粉は材料の
周りに絡まり加熱され、風味はバター・チーズと渾然一体となっていた。色鮮やかな仕上
がりが食欲をそそるので、さっと茹でた赤パプリカやブロッコリー、グラッセしたニンジ
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ンを加えてもよいと思われる。
(3)甘味(菓子)
a.豆粉のスポンジケーキ(バターを卵の 20%加えるタイプ)
材料は、鶏卵 150g、上白糖 75g、薄力粉 75g、バター30g(18cm ケーキ型 1 個分)
を用い、このうち薄力粉を 25,50,75,100%まで豆粉に置き換えて使用した。下準備と
して、まず粉と豆粉をよく混ぜておき、バターを室温に戻した。また、18cm 型の底と周
囲に紙を敷いておき、オーブンは予熱した。まずボールに鶏卵を測りいれてハンドミキサ
ーで1,2 分泡立て、さらに砂糖を加えて線が描けるまで泡立てた(フォーム比重=0.24)
。
あわせた粉を万能こしきで振り入れてゴムベラでざっくりまぜ、粉けのある状態で溶かし
バターを加え、丁寧にまぜた後、型に流しいれた。オーブン 160℃で 25 分焼成し、型紙
つきで、焼き時間の2倍放冷させた。
豆粉の添加量を変えた時の膨化を検討した結果、ハンマー処理粉は薄力粉の 25、50%
相当分の豆粉を加えても、薄力粉のみに相当する程度に膨化したが、酵素処理粉の豆粉は
25%が限度で、50%を豆粉にすると著しく膨化度が低下し、ケーキのテクスチャーとはい
えなかった(図46)
。官能評価では、パネル数が少なく統計処理はできなかったが、バタ
ーの風味が豆粉にむかないというコメントが2、3人から寄せられたが、豆の風味は残っ
ていた。両製法の豆粉の膨らみとテクスチャーからみて、豆の使用量は、薄力粉のスポン
ジと同じ食感にするためには粉の 25%を豆粉にして、残りを薄力粉にすると作り易いと考
えられた。
b.豆粉のスポンジケーキ(ダイエットタイプ:油脂を入れないケーキ)
材料は、鶏卵 150g、上白糖 75g、薄力粉 75(18cm ケーキ型 1 個分、豆粉を使う場合、
薄力粉を 50、100%置き換えて使用)を用いた。作り方は、aの豆粉のスポンジケーキと
同様に作成した(手早く粉類を混ぜ、混ぜすぎないこと)
。
出来上がりの外観写真を図47に、官能評価を図48に示した。小麦粉をすべて豆粉に
置き換えたものはどの評価項目も評価が低かった。小麦粉の 50%を豆粉に置き換えたケー
キの総合評価は薄力粉と有意な差異はみとめられなかった。重回帰分析の結果、総合評価
を決定する要因はテクスチャー、味とにおいの好みで、これらの寄与率は 92.45%であっ
た。
c.豆粉のシフォンケーキ
材料は、卵黄 52.5g(3 個分弱)
、上白糖 65g、水 35g(小麦粉の場合)または水 45
g(豆粉使用の場合)
、サラダ油 27g、薄力粉 75g(この 50、100%を豆粉に置き換えて
使用)
、卵白 163.g(5 個分)を使用し、出来上がりは径 16.5cm のシフォンケーキ型
1 個分となった。オーブンは 180℃で予熱し、型はそのまま使用(油の塗布は不要)した。
作り方は、まず大き目のボールに卵白を入れ、半量の砂糖を加え、ハンドミキサーでしっ
かり角が立つまで泡立てたメレンゲにした(高速で 3~4 分)。次に卵黄と砂糖半量をボール
に入れ、ハンドミキサー(中速)で 2 分撹拌した。さらにサラダ油を加え、1 分混ぜた後に
水を加え、さらに 1 分撹拌した。粉を振り入れてゴムヘラでざっくりまぜ、泡たて器でメ
レンゲの1/3を混ぜた後、もう1/3 をあわせ、さらに残りを入れてゴムヘラで混ぜた。
型に流し入れて、30 分焼成し、型のまま膨らみをおさえないように注意して、逆にして放
冷した。
- 59 -
出来上がりの外観写真を図49に、官能評価を図50に示した。シフォンとはベルベッ
トのようになめらかかな薄地の絹織物を指し、シフォンケーキは、やわらかでなめらかな
口ざわりが求められるケーキである。ハンマーは粉を用いた場合、50、100%置き換えても
性状のよいケーキで、薄力粉のものと遜色がないが、酵素処理粉の 100%は膨化度が半分
となり、50%はきめの細かさやテクスチャーがハンマーに比べやや劣っていた。重回帰分
析の結果、総合評価を決定する因子はテクスチャーと味、においの好みで、その寄与率は
91.5%であった。
d.豆粉のかるかん
材料は、山芋 40g、上白糖 50g、水 40g、上新粉 40gあるいは上新粉 25g、豆粉 20
g、ベーキングパウダー1g(出来上がりは角バット 15×12×2.8cm型 1 個分)を用い
た。型にクッキングシートを敷き、山芋は市販山芋粉に5倍重量の水を加え混ぜ、10分
寝かした(山芋粉8gに40gの水)
。また、粉類とベーキングパウダーはあらかじめよく
混ぜておいた。山芋に砂糖を2、3回に分けて加えながら、ハンドミキサー(低速)で1分
半撹拌し、水を少しずつ入れながら1分半撹拌後、高速でさらに 30 秒程度泡立てた。粉
を少しずつ加え、泡たて器で混ぜた後型に流し、沸騰した蒸し器にいれ、10 分蒸した。
出来上がりの外観写真を図51に、官能評価を図52に示した。両者の粉とも、上新粉
のみのかるかんに比べ、色と豆の香り以外に、においの好み、きめの細かさ、テクスチャ
ー、味、総合評価に有意差は認められなかった。総合評価を決定する因子であるテクスチ
ャーと味、においの好みについて、これらの寄与率は 90.52%であった。また、山芋、金
時豆、上新粉の独特のにおいが、おいしさを創造したと考えられる。
e. 豆粉の蒸し羊かん
材料は、豆粉 40g、上白糖 50g、食塩 0.25g、熱湯 70g、上新粉 50g、砂糖水(上白
糖 30g+水 50g)を用いた。粉の種類を上新粉、薄力粉、強力粉、デンプンで試作し、上
新粉が適すると判断した。まず、豆粉、砂糖、塩を混ぜてから熱湯を加えて、ゴムヘラで
よく練った後、上新粉を入れ混ぜた。砂糖水を少しずつ加え混ぜ、クッキングシートを敷
いた角バット(15×12×2.8cm)に流し入れ、蒸し器で 40 分蒸し、冷めた後に適宜切り分け
た。
官能評価では、パネル数が少なく統計処理ができなかったが、両者とも蒸し羊かんらし
い食味であった。金時豆の甘納豆を数粒丸のまま加えて蒸しあげると、食感に変化が出る
と考えられる。
f.豆粉クッキー(油脂の種類の検討)
材料は、薄力粉 100gあるいは薄力粉 50g+豆粉(ハンマー)50g、ベーキングパウダー3
g、重曹 0.6g、上白糖 60g、ショートニングあるいはバター50g、卵 20g(12 個分)を
用いた。まずボールに油脂を入れ、泡たて器でクリーム状によくすり混ぜた後に砂糖を加
え混ぜ、さらに卵を混ぜた。粉類をふるって入れ、木杓子で軽く混ぜた。打ち粉をふった
乾いたまな板に、ひとまとまりにおいて直径 3cm の棒状に伸ばし、12 個に切り分けた。
これを円形に整え、手のひらで軽く押して、直径 5cm 位にのばした。薄く油を引いた天板
に間をおいて並べ、中央を指で軽く押し、くぼみをつけた。つやよく焼く為に、表面に卵
の水溶きを薄くはけで塗り、180℃に温めたオーブンで13~14分焼いた。
出来上がりの外観写真を図53に、官能評価を図54に示した。以前のクッキー試作の
- 60 -
際、バターを使用したクッキーは豆の風味とあわないという評価があったことから、植物
性のショートニングを使ったところ、バターよりやや総合評価が高い傾向を示した。
g. ハンドメイドの豆粉アイスクリーム
材料は、豆粉(酵素処理)25g、砂糖 40g、熱湯 35g、植物性クリーム(脂肪 47%)
90g、牛乳 53g、卵黄 15g、黒砂糖(粉末タイプ)35gを使用した。まず、豆粉・砂糖・
熱湯を先に合わせて、豆あんを作った。卵黄・砂糖・牛乳を加えてゴムベラでかき混ぜな
がら電磁調理器で加熱し、内部温度が 80℃になったら火を止め、常温まで冷ました。これ
に八分たてのホイップクリームを加え混ぜ、冷凍庫で冷やす。固まったらかき混ぜ、再び
冷凍庫で冷やす操作を 2~3 回繰り返した。官能評価を図55に示した。
h.冬のドリンク・ホット金時ミルク
材料は、牛乳 200ml、豆粉(酵素処理)大さじ(1/2~1)を用いた。マグカップに
豆粉と砂糖(小さじ 1~3)を入れスプーンでよく混ぜる。牛乳を少しずつ丁寧に加え混
ぜる。ラップして電子レンジで 1 分 30 秒前後(600W)温める。
官能評価は特に行わなかったが、ホットミルクが好きで、健康志向の方に勧めたい。
ウ.考察
(ア)豆粉の新旧の差異
豆粉の新旧の差異といっても、この比較結果は、同一産地の同一品種の豆を収穫して豆
粉を作り、経時的変化を確認する手法ではない。収穫時期の違う豆から調製されたので、
厳密にみれば、変動要因を多く含む上での比較であるが、ハンマーミル粉より酵素処理粉
の方が豆粉の膨潤度やあんの物性値から、影響を受け易いように感じられた。また、新旧
両者の豆粉で調製した水羊かんの官能評価をしたが、総合評価には有意差は認められなか
ったが、若干新豆の方が、両製法でアクっぽさが弱いという評価傾向であった。
(イ)金時豆粉の試作結果
学生に試作・試食にも参加させた結果、初めは「豆臭い」といっていたものが、
「豆の味
がわかる」に変わり、
「豆の味が生きている」
「意外と好き」といった評価に変わって来た
ため、食べなれるということが重要だと思われる。このことから、豆や豆粉を食べること
が、健康的にも、日本の風土や食文化からも、本当によいという研究成果を集め、子供達
の場合は好きなものに、少し加え味にならしていく検討が必要と考えられた。
また、主食、おかず(主菜、副菜)、甘味(菓子)に分けて、小麦粉、上新粉、あん、豆等を
利用する調理に豆粉を導入し、試作した。それらを中心にして、調理系教職員及び同卒業
研究生からなる熟練パネルにより評価し、概略を図56に示した。
(ウ)金時豆粉の調理での扱い方
前述の主食、おかず(主菜、副菜)、甘味を家庭的分量で試作した際、調理上の工夫が必
要と思われ、
(2)の概略と共に、図57、58に表した。
- 61 -
水羊かん(寒天濃度0.5% ,砂糖30%)
市販さらし
あん
焙煎 (200rpm)
皮つき
焙煎 マスコロイダー
(400rpm)
酵素処理
ハンマー
酵素処理
図38 各豆粉を用いた水羊かん
表22 各粉を用いた水羊かんの色調
市販ようかん
さらしあん
皮あり
焙煎200
焙煎400
マスコロイダー
ハンマーミル
L値
a値
b値
17.6
17.5
35.1
30.4
29.7
27.9
25.3
2.9
5
3.6
5.2
5.2
3
3.9
4.2
3.1
3.1
8.8
8.5
2.1
3.2
△E(N.B.S.)1) △E(N.B.S )2)
-
2.3
17.5
13.8
13
10.5
7.8
2.3
-
17.7
14.1
13.3
10.6
7.9
1) 市販水羊かんとの色差 , 2) 市販さらしあんを用いた水羊かんとの色差
v
応力(×103 N/m2)
4.0
水羊かんの硬さ
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
豆粉なし
さらし
あん
皮あり
焙煎
200
焙煎
400
付着性(×103 J/m2)
水羊かんの付着性
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
豆粉なし
さらし
あん
マスコ
ロイダー
水羊かんの離漿率 (4℃12h保存後、室温30分放置)
7.0
6.0
ハンマ
ーミル
皮あり 焙煎
200
焙煎
400
ハンマ
ーミル
マスコ
ロイダー
試 料
豆粉なし
さらしあん
皮あり
焙煎200
焙煎400
マスコロイダー
ハンマーミル
図39 水羊かんの物性と離漿率
- 62 -
離漿率(%)
3.48
2.06
0.98
3.39
4.62
0.50
0.60
ソフトクッキー
A:基本(薄力粉100%)
生地状態
B:皮あり(薄力粉の50%配合)
C:焙煎200rpm(〃)
D:焙煎400rpm(〃)
E:マスコロイダー(〃)
F:ハンマーミル(〃)
G:マスコロイダー(〃)+牛乳10%追加
H:ハンマーミル(〃)+牛乳10%追加
焼成後の外観
焼成後の横断面
図40 ソフトクッキーの焼成後の焼き色
表23 ソフトクッキーの焼き色
ソフトクッキーの焼き色
<表面の色>
ソフトクッキー表面の色
マスコロイダー
+牛乳
ハンマーミル
+牛乳
0.0
20.0
暗い
(黒)
b値 (黄色)
マスコ
ロイダー ハンマ
ーミル
40.0
焙煎400
焙煎200
基本
皮あり 60.0
80.0
明るい
(白)
L値
30.0
基本
20.0
焙煎400
焙煎200
a値
b値
基本
67.2
8.1
29.6
皮有
49.9
13.7
21.0
焙煎200
48.6
12.5
21.0
焙煎400
48.2
12.6
20.6
マスコロイダー
34.3
13.4
14.5
ハンマーミル
38.0
13.6
15.7
マスコ牛乳
14.4
17.3
6.8
ハンマー牛乳
16.6
19.5
8.1
<断面の色>
ハンマー
+牛乳
マスコ
10.0
マスコ
+牛乳
0.0
10.0
L値
皮付き
ハンマー
0.0
20.0
a値 (赤色)
- 63 -
L値
a値
b値
基本
76.9
0.1
皮有
59.3
6.9
24.8
14.8
焙煎200
49.7
10.2
18.6
焙煎400
49.0
10.3
18.3
マスコロイダー
52.4
8.7
18.0
ハンマーミル
46.7
10.3
15.9
マスコ牛乳
27.2
29.1
16.8
ハンマー牛乳
21.9
24.2
13.1
応力(×105 N/m2)
6.0
ソフトクッキーの硬さ
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
基本
皮あり
焙煎 200
焙煎 400
マスコロ
イダー
ハンマ
ーミル
応力(×105 N/m2)
マスコ
ロイダー
+牛乳
ハンマーミル
+牛乳
4.0
ソフトクッキーのもろさ
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
基本
皮あり
焙煎 200
焙煎 400
マスコ
ハンマー
図41 ソフトクッキーの物性
- 64 -
マスコロイダー ハンマーミル
+牛乳
+牛乳
2006.2.17
水羊かん(
1. 色
氏名 (
)
)を食べて、以下の評価項目の該当する箇所に○をつけて下さい。
普通
やや
好ましい
好ま
しい
非常に
好ましい
普通
やや強い
強い
非常に
強い
普通
やや
好ましい
好ま
しい
非常に
好ましい
普通
やや良い
良い
非常に
良い
やや好ま
しくない
普通
やや
好ましい
好ま
しい
非常に
好ましい
好まし
くない
やや好ま
しくない
普通
やや
好ましい
好ま
しい
非常に
好ましい
好まし
くない
やや好ま
しくない
普通
やや
好ましい
好ま
しい
非常に
好ましい
非常に好
ましくない
好まし
くない
非常に
弱い
弱い
非常に好
ましくない
好まし
くない
非常に
悪い
悪い
非常に好
ましくない
好まし
くない
非常に好
ましくない
非常に好
ましくない
やや好ま
しくない
2. 甘味
やや弱い
3. あくっぽさ
やや好ま
しくない
4. ざらつき
やや悪い
5. テクスチャー
6. 味の好み
7. 総合評価
何かお気づきの点がありましたらお書き下さい。
(
)
図42 水羊かん官能評価用紙
表24 金時豆の新豆粉(17年度産)と豆粉(16年度以前産)の膨潤度の比較
試料名
水温膨潤度(A)
80℃30 分膨潤度(B) 膨潤率(B/A)
旧酵素処理
3.41<100>( 3.81<100>
1.12
新酵素処理
3.73<109>
5.43<143>
1.46
旧ハンマ―
2.67<100>
5.04<100>
1.89
新ハンマ―(食総研) 2.40< 90>
4.95< 98>
2.06
新ハンマ―(外部) 2.38< 89>
4.42< 88>
1.86
*なお、<>内数値は各処理の旧の膨潤度を100とした比率を示す。
- 65 -
表25 豆粉の沈降体積
<水に懸濁した場合>
旧ハンマー 新ハンマー 新ハンマー 旧酵素処
(外 部 依
理
ミル
(食 総 研 )
直後
30分 後
44.5
44.0
60分 後
44.0
(5.0)
4 3.5
43.5
(9.5)
43.5
(9.5)
43.0
43.0
(8.0)
43.0
(8.0)
(単 位 m l)
新酵素処
理
43.5
43.5
(22.0)
43.0
(19.5)
4 3.5
4 3.0
(12.5)
4 2.5
(13.0)
※ 時 間 経 過 と と も に 、 層 が 2 重 に な っ た た め 、 ( )内 の 数 値 は 下 層 の 値
<水に懸濁した試料を加熱した場合>
旧ハンマー 新ハンマー 新ハンマー
(外 部 依
ミル
(食 総 研 )
沸騰時間
1分 40秒
1分 40秒
1分 40秒
全加熱時間
5分 00秒
5分 00秒
5分 00秒
30分 後
185
180
185
60分 後
185
175
185
90分 後
185
175
180
120分 後
180
175
174
150分 後
180
176
170
180分 後
184
174
168
※ 青 数 字 は 、デ ジ カメか らの 目 測
試料名
酵素処理
新酵素処理
ハンマー
新ハンマー
旧酵素処
理
1分 45秒
5分 00秒
( 単 位 m l)
新酵素処
理
1分 30秒
5分 00秒
170
140
130
120
118
115
190
190
190
180
表26 豆粉のあんの物性
瞬間弾性率(N/m2) ニ ュ ー ト ン 粘 性 率
(Pa.S)
3
0.160×10
測定不可
3
0.172×10
2.492×105
1.265×103
6.088×105
0.906×103
1.484×105
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
観察メモ
非常にゆるい
ややゆるい
かたい
ややかたい
表27 豆粉の水羊かんの冷蔵保存による離水率(%)
試料名
24 時間後
48 時間後
観察メモ
酵素処理
型から出しにくい
0.23
0.37
新酵素処理
型から出しやすい
0.85
1.56
ゲルが滑りより出し易
ハンマー
1.60
3.70
い
新ハンマー
1.32
2.62
- 66 -
〃
新旧に差を感じ67%が
ロをあくっぽいと評価
7.0
b
6.0
by
b
5.0
bxy
4.0
abx
a
bx
3.0
新旧に差を感じにくい。
50%が同じと評価
2.0
1.0
イ:新ハンマー
ロ:旧ハンマー
ハ:新酵素処理
ニ:旧酵素処理
by
色
色の好み
a
甘味 あくっぽさ
味
かたさ
a
粘り
ざらつき
図43 水羊かんの官能評価
総合評価
a,b:
異なる文字間に有意差あり(p<0.01)
XY:
異なる文字間に有意差あり(p<0.05)
(n=6)
7.0
6.0
ラ イ スグラ タン :
ハン マー
*
5.0
ラ イ スグラ タン :
酵素
4.0
3.0
2.0
1.0
ソース色
におい(豆の香り)
においの好み
ソースのとろみ
テクスチャー
味の好み
総合評価
*:有意差あり
(p<0.05)
図44 ライスグラタンの官能評価
(n=6)
7.0
**
6.0
**
5.0
ポテトグラ タン:
ハンマー
4.0
ポテトグラ タン:
酵素
3.0
2.0
1.0
ソース色
におい(豆の香り)
においの好み
ソースのとろみ
テクスチャー
味の好み
図45 ライスグラタンの官能評価
- 67 -
総合評価
**:有意差あり
(p<0.01)