◎ 研 究 成 果 ◎ 収穫ロスを低減する「エンレイ」のコンバイン収穫のポイント ~刈取り作業の改善で単収向上!~ 1 はじめに (2)収穫時期の影響 富山県における大豆の単収は、近年では 150kg 程 収穫時期が遅くなると裂莢損失が増加します(図 度に低迷しています。その要因として、大豆作付け 2)。収穫ロスと自然落下損失を加えた減収率は、成 回数の増加による地力低下などの他に、大豆コンバ 熟期 18 日後では 30%に達すると試算され、強風雨 インによる収穫ロスが考えられます。特に、コンバ に遭遇した場合はさらに高くなると考えられます。 イン収穫時の汚粒を回避するために、成熟期を過ぎ、 25 子実や茎の水分を低下させてから収穫し、その結果、 成熟期 3日後 成熟期 18日後 20 損失率(%) 裂莢や落莢が増加し、単収をさらに低下させている 事例がみられます。 そこで、「エンレイ」のコンバイン収穫において、 収穫ロスの原因を探り、単収を向上させるための作 15 10 5 業のポイントを整理しました。 0 2 落莢 成熟期後日数と裂莢の関係 裂莢 莢付 落茎 頭部損失 「エンレイ」の裂莢率は成熟期頃から徐々に増加 脱穀選 計 別損失 図2 収穫時期が収穫ロスに及ぼす影響(2012) ます。さらに、成熟期後に強風雨に遭遇した場合、 成熟期 3 日後: 作業速度 0.44m/s 子実水分 14.1% 茎莢水分 50.4% 自然落下損失は大幅に増加します(図1)。 2011 2012 自然落下損失(%) 小計 収穫ロス するため、自然落下損失もそれに伴い、大きくなり 50 刈残し 40 成熟期 18 日後: 作業速度 0.40m/s 子実水分 16.7% 茎莢水分 25.9% 30 20 (3)作業速度の影響 10 作業速度が速いほど、刈高が高くなり、刈残し損 0 -10 0 10 20 30 40 成熟期後日数(日) 図1 自然落下損失の推移(2011、2012) 失が増加し、収穫ロスが大きくなります。高速で作 業することにより機体の上下振動が激しくなったこ となどが原因と考えられます。 図中の↓は 2012 年の強風雨(瞬間最大風速 18m/s 以上) があった日 自然落下損失=立毛状態で落下した子実 4 まとめ これらのことから、コンバイン収穫ロスを低減す るためには、①刈取り始期から裂莢が進まないうち 3 コンバイン収穫のポイント (1)収穫ロスとは に収穫を開始すること、②刈り残しを多くしないよ うに作業速度 0.4~0.5m/s 程度で実施する。さらに、 収穫ロスは、「頭部損失」と「脱穀選別損失」に分 「エンレイ」は収穫時期が遅くなることにより、し 類されます。「頭部損失」はコンバインの刈取部で わ粒の発生も多くなるため、刈取り始期以降、速や 収穫できなかった子実の損失で、「脱穀選別損失」 かに収穫作業を開始することが品質向上のために は、コンバインで選別されずに茎や莢と一緒に排出 も重要です。 された子実です。 (栽培課 中村一要(現農産食品課) 、吉田 稔)
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