英国心理学会発達部門大会参加報告 - 京都大学 大学院教育学研究科

2010 年 9 月 21 日
英国心理学会発達部門大会参加報告
グローバル COE・子安増生
英国心理学会発達部門 2010 年大会は、2010 年 9 月 12 日~15 日にロンドン大
学ゴールドスミス・カレッジで開催された(BPS Developmental Psychology Section
Conference 2010 at Goldsmiths, University of London, 12th-15th September, 2010)。
今 BPS 大会では、京都大学教育学研究科とランカスター大学心理学部との交
流協定の精神に基づき、ランカスター大学からギャヴィン・ブレムナー教授と
チャーリー・ルイス教授が協力し、京都大学からは子安増生(京都大学教育学
研究科教授)、板倉昭二(京都大学大学院文学研究科准教授)、明和政子(京都
大学教育学研究科准教授)の 3 人がグローバル COE の事業として英国心理学会
発達部門大会に派遣され、板倉准教授のキーノート・アドレス(基調講演)と、
ブレムナー教授と子安が企画する国際シンポジウムに板倉、明和両准教授が話
題提供するという枠組みで進められた。なお、教育学研究科から、2名の院生
(小川絢子、溝川藍)も大会に参加し、ポスター発表を行った。
会場のロンドン大学ゴールドスミス校は、英国鉄ロンドン・ブリッジ駅から
1駅 5 分ほど乗車のニュー・クロス駅下車、徒歩 5 分という便利なところにあ
る。ロンドンの9月は、最高気温が 20 度前後で大変しのぎやすく、また期間中
は毎日晴天に恵まれた(雨に遭ったのは3日目の夜の懇親会の移動時のみ)。
アンディ・ブレムナー大会委員長(ゴールドスミス校シニアレクチャラー)
は、ギャヴィン・ブレムナー発達部門長のご子息であり、大会期間中は先頭を
切って会場の運営にあたっていた。大会参加者は約 300 人と小ぶりで、6件の
キーノート・アドレスは、同じ時間帯に別の行事を入れないようにし、大きな
レクチャー・シアターに参加者が一堂に会するようになっている。発表形式と
しては、4~5件の類似のテーマを集めたシンポジウム、口頭発表、ポスター
発表である。6件のキーノート・アドレスの概要は以下の通りで、乳児研究と
自閉症研究が多かった。
・Prof Dorothy Bishop (Oxford University) Overlaps between autism and specific
language impairment: Phenomimicry or shared etiology?
自閉性スペクトラム障害と特定言語障害の遺伝的関連性を説明する4つのモデ
ルの説明力について検討し、G×G 相互作用モデルが最適という結論を示す内容。
・Dr Shoji Itakura (Kyoto University) Development of the social mind: A perspective
from “Developmental Cybernetics”
1
メンタライジングをキーワードに、子どもが身体、心、コミュニケーションの
それぞれの理論をどう発達させるかをロボットを介した研究を中心に説明。
・ Prof Peter Smith (Goldsmiths) Research on cyberbullying: Challenges and
opportunities
インターネットや携帯電話等、電子的媒体を介するいじめを “cyberbullying” と
呼び、どの世代や性別で多く生じているかなど実態と介入の方法について説明。
・Dr Matthew Belmonte (National Brain Research Centre, Manesar, India) Autism, part
and parcel of human cognitive diversity
ニール・オコナー賞(Neil O’Connor Prize Winner)受賞者による講演。様ざまな
自作の電子ゲームを用いて自閉症の多様性を明らかにしようとする研究を紹介。
・Prof Andy Meltzoff (University of Washington, USA) Developing social cognition: An
interdisciplinary exploration of the mind
模倣の研究を中心に、ロボットを用いた研究、MEG 測定研究などを紹介しなが
ら、模倣が生起し感情が模倣を調整するプロセスについての自身の理論を説明。
・Dr Victoria Southgate (Birkbeck, University of London) Mechanisms of action
prediction in infancy
マーガレット・ドナルドソン賞(Margaret Donaldson Early Career Award Winner)
受賞者による講演。乳児が他者の行為の予測と、行為が目標に結びつくことの
予測をどのように発達させるかについて実験的研究と脳機能研究の成果を説明。
板倉准教授のキーノートアドレス(末尾の写真参照)ならびに国際シンポジ
ウムは、大会2日目の午後に行われた。シンポジウムの内容をプログラムにそ
って示すと下記のようになる。
International Symposium on Social Cognitive Development
14 :00-15 :40 Monday 13th September 2010 at IGLT
ORGANISERS
Gavin Bremner (Lancaster University) and Masuo Koyasu (Kyoto University)
SPEAKERS
Shoji Itakura (Kyoto University)
Masako Myowa-Yamakoshi (Kyoto University)
Victoria Southgate (Birkbeck, University of London) and
Antonia Hamilton (University of Nottingham)
DISCUSSANT
Charlie Lewis (Lancaster University)
シンポジウムの開始直前になって、企画・進行役のギャヴィン・ブレムナー
2
教授が突然の体調不良で出席できないことが分かり、共同企画者の子安が司会
進行を担当することになった。念のために用意しておいたパワーポイントで企
画趣旨、京大-ランカスター大学のリンクの歴史、日本発達心理学会と英国心
理学会発達部門の協力関係について説明をした後、4人の発表者が掲題のテー
マでそれぞれ持ち味を生かした発表を行い、最後にルイス教授が発表者一人ず
つに対して丁寧なコメントを行った。シンポジウムの後、アンディ・メルツォ
フ教授をはじめ何人かの出席者から、シンポジウムがハイ・クォリティであり
交流の実があがって大変良かったというお褒めと励ましの言葉をいただくこと
ができた。
最終日の掉尾を飾るヴィクトリア・サウスゲイト博士のマーガレット・ドナ
ルドソン賞受賞記念講演のキーノート・アドレスが終わった後、アンディ・ブ
レムナー大会委員長が大会全体の締めくくりの挨拶をされたが、その中で国際
シンポジウムの成功と日本側の協力に謝意を表明していただいた。なお、来年
のこの大会は、9月にニューカッスルで開催されることが紹介された。
3