タブレットに対応した 「次世代帳票ソフトウェア BIP Smart」 BIP Smart: Next Generation Form Software that Supports Tablets 名内昭文 * 道場 郷 ** 萩沢章一 ** Akifumi Nauchi Go Dojo Shoichi Hagisawa * ソリューション&ソフトウェアグループ ドキュメント・ソフトウェア事業部 商品企画開発部 ** PFU ソフトウェア株式会社 ドキュメントソフトウェア統括部 新しい帳票コンテンツ形式である「Smart 帳票 ®」により,タブレット上で帳票を活用できる次世代帳票ソフ トウェア「BIP Smart」を開発した.帳票とタブレットを組み合わせることで,今まで紙で行われていた帳票業 務を IT 化し,お客様のワークスタイル変革を目指す. PFU created "SmartBizForm" (a new form format), which led to the development of "BIP Smart". BIP Smart is next generation form software that can be used on a tablet with SmartBizForm. BIP Smart is designed to revolutionalize the style of your forms by digitalizing them on tablets, which eliminates the need for paper forms. 1 まえがき 帳票は取引の証拠や記録としてだけではなく,製造指 示書や作業依頼書など,業務を迅速,確実に進めるため のコミュニケーション手段としても古くから使われてい る. どの用途に加え,基幹システムと連携した業務端末とし て使うなど,より高度に利用したいと考える企業が増加 している. こうした背景を踏まえ,業務と密接な関係がある帳票 にも新たな運用形態が求められると捉え,PFU は「BIP 企業にとって重要な役割を持つこのような帳票を,効 Smart」 (以降,本製品)を開発した参1).新しい帳票形 率的に作成,運用できるよう支援するために,PFU は 式である「Smart 帳票注1)」の提供により,帳票業務の 1993 年から帳票ソフトウェア「BIP」の提供を開始し タブレット運用を支援する. た.そして,現在も多くの企業で利用されている. こうして長くお客様の帳票業務に携わる中,取り巻 く環境は大きく変化した.運用環境はホストコンピュー 2 本製品の狙い タシステムからクラサバシステム,Web システムへと 本製品の狙いは, 「人」と「業務」と「システム」のコミュ 移行した.それとともに帳票は紙(連帳,単票)から ニケーション向上により,お客様のワークスタイル変革 Web 表示,PDF(Portable Document Format)へ を支えることである.これまで培ってきた帳票のノウハ と進化してきた. ウやスキルを活かし,お客様がタブレットで快適に帳票 このように,時代の流れとともに変化するインフラや 業務を行えるようにする. テクノロジーに確実に対応していくことが,お客様の帳 1) 帳票業務の中には,お客様に接する所や現場に 票業務を支えるソフトウェアとしての,重要な役割の一 近い所など,まだまだ紙の運用が多い.このような つだと考えている. IT 化されていない帳票業務を,現場に負担をかけ また,昨今では,タブレットの法人利用が増えてきて おり,営業時のプレゼンテーションやマニュアル閲覧な 8 ずに運用改善できるよう,タブレットを紙帳票のよ 注1)Smart 帳票は,株式会社 PFU の登録商標である. PFU Tech. Rev., 25, 1,pp.8-12 (01,2014) タブレットに対応した「次世代帳票ソフトウェア BIP Smart」 用のイメージを示す. うに利用できる機能や操作性を提供する. 2) 紙帳票の運用に潜む問題には,記入された情報の (3) 既存システムへのアドオン データ化に伴う時間浪費,ミスやモレの発生,さら 図 - 4のとおり,これまで帳票出力していた既存シス に社外に持ち出す場合の紛失リスクなどがある.そ テムにアドオン的に導入できるため,帳票のタブレット こで, 紙帳票の電子化(タブレット化)だけでなく, 運用という新しい業務スタイルを短期間に低コストで導 帳票の重要な要素である「データ」をシステムで確 入可能となる. 実に扱える機能を提供する. 3) 紙の代わりにタブレットを利用する,ということ は,業務端末が増えるだけであり,お客様の基幹業 務が大きく変わるものではない.そこで,既存シス テムにあまり手を入れることなく,タブレットを利 用した帳票業務を追加できるような仕組みを提供す る. 2.1 BIP Smart 製品概要 48,400 BIP Smart は,帳票への手書きやチェックがタブ クス クボッ チェッ き 手書 サイン 付け 情報 貼り 写真 位置 24,300 年 月 日 レット上で行え,また,帳票に追記したビジネスデータ ◆図 - 2 タブレット上での利用イメージ◆ を本格的に利活用できる製品である.全体の運用構成を 図 - 1に示す. (Fig.2-Examples of how BIP Smart can be used on tablets) BIP Smart の主な特長は以下のとおり. (1) タブレットを紙のように利用 タブレット上に帳票をそのまま表示,手書きやチェッ クなどの追記が可能である.さらにタブレットならでは の機能を使用して帳票に写真や位置情報などを埋め込 むことができ,帳票業務のペーパーレス化を実現する. エビデンス確認 図 - 2にタブレット上での利用イメージを示す. 集計/分析 (2) ビジネスデータの利活用 データ 帳票に追記されたデータを取り出し,各種業務システ PDF ムで利活用が可能である.業務の効率化だけではなく, 検索 ビジネスのスピードアップも図れる.図 - 3にデータ活 入力定義 人手を介さずデータを取り出し ◆図 - 3 データの活用◆ Smart 帳票運用 (Fig.3-Data management) クラウド サービス 既存 帳票 PDF 業務サーバ 帳票ツール BIP データ 抽出 ツール アップロード 票を た帳 る 慣れ 使い まま使え の そ DATA 既存システム 既存 帳票 入力情報定義 入力定義 ツール 運用環境 に配置 Smart 帳票定義 BIP Smart 帳票連携 Edition 表示/入力 Smart 帳票 Reader ダウンロード for iOS BIP BIP Smart 使い慣れた帳票をSmart帳票に ◆図 - 1 BIP Smart の運用構成◆ ◆図 - 4 既存システムへのアドオン◆ (Fig.1-BIP Smart overview) (Fig.4-Applying BIP Smart to existing systems) PFU Tech. Rev., 25, 1, (01,2014) 9 タブレットに対応した「次世代帳票ソフトウェア BIP Smart」 3 表示・印刷 本製品開発の課題と取り組み データ層 3.1 次世代帳票コンテンツ形式「Smart 帳票」 現在の帳票ツールの一般的な出力形式は,紙,または レイアウト層 PDF である. 特に PDF は,それを表示するコンピュータ,または 表示・印刷のみに利用 印刷するプリンタの機種によらず,オリジナルのイメー ジを正確に生成するための文書フォーマットであり,帳 ◆図 -5 今までの帳票の概念◆ 票の電子的な出力形式として広く利用されている. (Fig.5-Previous forms) 紙または PDF は表示や印刷向きのフォーマットなの で,帳票の参照や保管目的としては非常に使い勝手がよ コミュニケーション層 い.しかし, 本製品が狙いとする「人」と「業務」と「シ ステム」のコミュニケーション向上を実現するには機能 データ層 が不足していた. そのため,タブレット上での帳票の業務利用を想定し レイアウト層 た新しいコンテンツ形式が必要であると考え, 「Smart 帳票」を検討した. XML コミュニケーション層を通してデータ層へアクセス 「レイアウト層」 図 - 5に示すとおり,今までの帳票は, と「データ層」から成っていた. 「レイアウト層」は帳 ◆図 -6 Smart 帳票の概念◆ 票のレイアウト(罫線や,どのデータをどの位置に表示 (Fig.6-SmartBizForm forms) するか)を定義するものであり, 「データ層」は帳票で 表示するデータを定義するものである.帳票製品は「レ る面ばかりではなく,どうしても操作性で劣る面が出て イアウト層」と「データ層」を重ね合わせることで帳票 くる. を印刷および PDF 化していた. BIP Smart ではこの問題を解決するために,ページ 図 - 6に示すとおり,Smart 帳票は,従来の帳票の 遷移のレスポンスの向上や,タッチ操作の反応速度の調 概念である「レイアウト層」 , 「データ層」に, 「コミュ 整など,紙と同等の操作性を実現するための工夫はもち ニケーション層」を追加した新しいコンテンツ形式であ ろん,さらには,帳票の特性を活かした「フォーカス機 る. 能」を実装した. 「コミュニケーション層」は, 「データ層」へのアクセ スの方法を定義したものであり, 「コミュニケーション 層」を通してデータの入力,変更,およびデータの取得 を行う. この概念を一つのコンテンツ形式として実現すること で,タブレット上での帳票への追記や,帳票からデータ を取得して業務システムへ反映するなどの今までの形式 では実現が難しかった帳票の利活用が可能になった. 3.2 紙以上の操作性の実現 帳票は,データを作業工程や情報単位に分類し,人が 見やすい形に整理したものである. 「フォーカス機能」はこの性質を利用し,あらかじめ 分類,整理された範囲を定義しておくことで,運用時に その範囲をワンタッチで拡大できる機能である. これにより,タブレット上でストレスのない帳票の参 照を実現した. 図 - 7にフォーカス機能の概要を示す. 3.3 タブレットならではの機能の活用 Smart 帳票は,タブレット上に帳票を表示し,入力 BIP Smart では,従来紙で行っていた手書き,チェッ したい場所をタッチするなど直感的な操作での利用が可 クなどの帳票への追記が可能であることはもちろん,タ 能である.これにより従来紙で行っていた帳票業務をタ ブレットならではの機能として「写真」 , 「位置情報」の ブレットに置き換えても違和感なく運用できることを目 帳票への埋め込みが可能である. 標としている. しかし,タブレットは実際の紙とは違うため,良くな 10 例えば,図 - 8のように,タブレットで撮った現場の 写真をその場で報告書に埋め込むことにより,より分か PFU Tech. Rev., 25, 1, (01,2014) タブレットに対応した「次世代帳票ソフトウェア BIP Smart」 りやすい報告書を簡単に作成できる. また,帳票に埋め込まれた位置情報を利用し,図 - 9 のように,帳票が保存された場所を地図上に可視化する の証拠としての活用が期待できる. BIP Smart は,タブレットならではの機能を活用す ることにより,新たな帳票の活用方法を提案する. ことで,作業場所や配送ルートの分析,および作業場所 4 適用例 様々な機器や装置の保守を行うカスタマエンジニア (以降,CE)の業務への適用例を図 - 10に示す. CE は朝,その日に行う予定の保守点検の作業チェッ クシートなどを一式印刷し,それを持ってお客様の所へ ワンタッチで拡大 出向く.点検しながら結果をチェックシートに記入し, 結果を報告書に手書きでまとめて,お客様に確認および 押印(サイン)をしていただく.事務所に戻ると,報告 書などを入力担当者に渡し,システムへエントリしても らう. ◆図 - 7 フォーカス機能◆ (Fig.7-Focus function) 紙で運用されているこの作業チェックシートや報告書 を BIP Smart でタブレット化することにより,以降の ような効果を見込む. 導入前:紙で運用. 紙紛失事故や,エントリミスが後を絶たない. 【現場】 1.チェックシート印刷 2.作業項目をチェック 作業に応じた チェックシートを 出発前に印刷 作業結果を チェックシートに 記入 3.チェック結果入力 チェック結果を 業務システムに 入力する 導入前 エントリ コスト 汚れ 破れ 紙管理 コスト モレ ミス 紛失 事務所 で印刷 現場の写真を帳票へ埋め込み 出発 CE 帰着 CE 入力担当 ◆図 - 8 写真の活用イメージ◆ 導入後:紙紛失事故を防止. エントリミスもなく,作業状況を迅速・確実に把握. (Fig.8-Example of using photos with BIP Smart) 【現場】 導入後 1.タブレットへ保存 2.チェック&手書き 3.チェック結果登録 必要なチェック シートをどこから でもタブレットへ ダウンロード! 作業項目の チェック, お客様確認も タブレット! チェック結果 (PDF&データ) を オンラインで システムに登録! (2)紙紛失事故の防止 (3)エントリ コストの削減 (1)ペーパーレス化 (4)モレや ミスの排除 地図データ ©2013 Google, ZENRIN CE 出発 CE お客様 帰着 CE (5)お客様対応件数の増加 位置情報を活用した分析 ◆図 - 9 位置情報の活用イメージ◆ (Fig.9-Example of the GPS function) PFU Tech. Rev., 25, 1, (01,2014) ◆図 - 10 保守業務への適用例◆ (Fig.10-Applying BIP Smart for maintenance purposes) 11 タブレットに対応した「次世代帳票ソフトウェア BIP Smart」 例えば,100 名の CE が 4 件 / 日の保守作業を行う ような規模を想定した場合,以下のような効果となる. (1) ペーパーレス化 タブレット化により,紙の使用はゼロにできるので, そのまま移動することが可能となるので,事務所に戻っ ていた時間の分だけ 1 日の対応件数を増やせる.また, お客様からの緊急な依頼に対応するなど,サービス向上 が図れる. 現状 1 件あたり 10 枚の紙を出力している場合,月に 約 8 万枚の紙を削減できる. 5 また,プリンタの保守運用コストも削減できる. (2) 紙紛失事故の防止 紙を持ち出す必要がなくなるため,紙の紛失による情 報流出事故を防止することが可能となり,安全性が向上 「帳票」の技術およびノウハウと「タブレット」を融 合させた,新しい帳票ソフトウェア「BIP Smart 帳票 連携 Edition V1.0」 を 2013 年 5 月に販売を開始した. する. (3) エントリコストの削減 むすび 販売開始以来,製造・流通,金融,サービス業など幅 広いお客様に適用をご検討いただいている. IT 化により,エントリにかかる時間はゼロにできる さらに,利用したお客様からは,業務帳票の使われ方 と見込む.報告書1件あたりのエントリ時間を現状 5 を考慮して作られている,操作がシンプルで使いやすい 分とした場合,これまで必要だった入力担当者約 4 人 などの評価を頂いた. 分のコスト削減が可能となる. (4) モレやミスの排除 システムへのエントリが IT 化されることで, 従来あっ たモレやミスなどの事故をなくすことができ,信頼性が 向上する. (5) お客様対応件数の増加 必要な書類を外出先でダウンロードできるため,事務 今後,BIP Smart は,お客様から頂いた声に加え, IT 技術の進化や変化にすばやく対応することで「Smart 帳票」をどんどん進化させ,お客様のワークスタイル変 革を提案し,ビジネスイノベーションを支えていく. 参考文献 参1)帳票ソフトウェア BIP Smart 紹介ホームページ http://www.pfu.fujitsu.com/bip/bipsmart/ 所へ戻る必要がなくなる.ある外出先から別の外出先へ 12 PFU Tech. Rev., 25, 1, (01,2014)
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