新体操競技の普及及び競技力向上のための一考察

新体操競技の普及及び競技力向上のための一考察
体
操
専
門
部
山 形 城 北 高 等 学 校
大
倉
めぐみ
1. はじめに
新体操とは、13 メートル四方の演技面の中で、徒手、またはロープ・フープ・ボール・クラブ・リボンの
5 種目の手具を使いながら、音楽の特性に合った華麗な動きと巧みな技を競い合うスポーツである。その演
技は、モダン・バレエの要素を多く取り入れており、美しさと芸術性をはじめ、音楽に合ったリズミカルな
動き、力強さ、スピード、柔軟性、洗練された動きと手具操作などが求められる。
新体操の競技種目は、個人競技と団体競技がある。個人競技では、1 人の選手が 5 種目のうち、その年度
に決められた種目の手具を使用しながら 1 分 15 秒~1 分 30 秒以内の演技を実施する。また、団体競技では、
1 チーム 5 人の選手が 2 分 15 秒から 2 分 30 秒以内の演技を実施し、その年度によって、全員が一種類の手
具を使用する場合もあれば、二種類の手具を使用する場合もある。
新体操の採点方法は、個人競技、団体競技どちらも最高 20.00 点満点で採点される。
(2013 年~2016 年度
採点規則)内訳は、難度(D)10.00 点+実施(E)10.00 点-コーディネータージャッジ (CJ)=最終
得点となっており、難度(D)においては、事前に演技内容を申告し、申告通りきちんと実施された場合に
カウントされる加点法で採点され、実施(E)においては、実際の演技の出来栄えから不正確な個所を減点
していく減点法で採点される。
現在、本県で女子の新体操を部活動として行っている高校は、山形城北高校、山形北高校、山形西高校、
上山明新館高校、鶴岡北高校、米沢東高校の6校である。過去には、国体総合優勝、インターハイ個人総合
優勝、オリンピック選手の輩出など本県の新体操部員は輝かしい成績を収めてきた。しかし、近年では少子
化や中学校での新体操部減少などから競技人口が減少傾向にあり、各校ともに部員確保が難しくなっている
現状がある。前項で述べたように、団体競技は 1 チーム 5 人となるが、部員が 5 人集まらず残念ながら団体
競技出場を断念せざるを得ない高校もあり、競技人口の減少が競技力の低下につながっていると考えられる。
このようなことから、今後、本県で新体操の競技人口の増加を図り、競技力向上につなげていくためには
どのような対策が必要なのか、本県のジュニアから高校生の新体操選手にアンケートをし、選手の感じてい
る現状や意識を調査、分析するなかで考察することとした。
2. 研究の方法
(1)調査方法
アンケート
(2)調査対象
本県新体操選手
ジュニア(小・中学生)
高校生
16名
(3)調査期間
平成 26 年 12 月~平成 27 年 1 月
(4)調査内容
以下の記述内容による
-1-
20名
合計
36名
3. 結果と考察
(1)ジュニア(小・中学生)アンケート結果の分析および考察
Q1
新体操をはじめたのはいつですか?
④5%
①幼稚園
①30%
③25%
②小1~3年
③小4~6年
④中学生
②40%
Q2
新体操をはじめたきっかけは何ですか?
①母親・知人に勧められた
④15%
②友達に誘われた
③10%
①65%
②10%
③姉が新体操をしていてやりたいと思った
④体験に行って楽しかった
Q3
新体操のどんなところに魅力を感じましたか?(新体操をはじめる前) 複数回答可
⑥5%
⑤5%
①楽しそうと思った
②かっこいいと思った
④10%
③リボンなど手具に魅かれた
①30%
④レオタードがきれい
③30%
⑤音楽に合わせて踊りたい
②20%
⑥先生が優しい、かっこいい
【考
察】
近年、新体操の全国大会や国際大会で活躍している選手は、幼少の頃から新体操に取り組み、多くの競
技会に出場している。幼い頃に新体操に必要な柔軟性、表現力、しなやかな筋肉の基盤を作り、成長に合
わせてトレーニングを積み重ねていくことが、その後の競技成績に大きくあらわれている。
上記の結果より、本県のジュニア選手も幼少の頃から新体操を始めている選手の割合が高いことが分か
った。この結果は、幼少期から習い事をさせたいと思う親や周囲の影響が大きいのではないだろうか。
是非、たくさんの子どもたちが新体操に興味を持ち、幼少期のうちにしっかりと基礎を身につけ、高校
で力を発揮していただきたいと感じた。
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Q4
新体操は楽しいですか?
②0%
○「はい」と答えた理由
③0%
・新体操が好き
・練習でうまくできたときに嬉しい
①はい
・踊るのが楽しい
②いいえ
①100%
③どちらとも言えない
・技ができるようになると嬉しい
・友達と一緒に踊れる
・友達ができて嬉しい
Q5
どんなときに新体操の魅力を感じますか?(新体操をはじめてから) 複数回答可
⑤5%
⑥5%
①踊っているとき
②思い通りに演技ができたとき
④30%
③人に見てもらったとき
①40%
④技ができるようになったとき
⑤先生に褒められたとき
③10%
Q6
⑥衣装を着たとき
②10%
高校生になっても新体操をしますか?
③50%
①はい
①39%
②いいえ
③まだ分からない
②11%
Q7
なぜ、Q6 のように答えましたか?
「はい」
「いいえ」
「まだ分からない」
・新体操が好きだから
・目指している高校があるから
・もっと上手になりたいから
・勉強を頑張りたいから
・踊ることが楽しいから
部がないから
・他にやりたいことが見つかる
・高校生の演技がかっこいい
【考
・行きたい高校(中学)に新体操
かもしれないから
察】
上記の結果より、ジュニアの選手は自ら楽しんで新体操に取り組んでいることが分かった。この結果は、
ジュニア指導者が選手たちに新体操の楽しみを教え、その教えがしっかりと選手たちに伝わっている成果
だと感じる。また、どんなときに新体操の魅力を感じるかという質問で最も多かった回答は、
“踊っている
とき”であった。ジュニア期に踊ることの楽しさを感じることは、高校でも新体操を続けようという意欲
につながるため、是非、ジュニアの選手には楽しんで演技を踊ってもらいたい。
-3-
しかし、残念ながら、高校生になっても新体操をするかという質問では、39%の選手のみ継続の意思を
示すという結果になった。これは、新体操を楽しんでいる選手たちが長く競技に携わり、競技人口の増加
につなげていくためにも県全体として対策をとらなければいけない課題であると考える。
(2)高校生アンケート結果の分析および考察
Q1
新体操をはじめたのはいつですか?
⑤7%
④7%
①幼稚園
①21%
②小1~3年
③小4~6年
③29%
④中学生
②36%
Q2
⑤高校生
新体操をはじめたきっかけは何ですか?
⑤13%
①母親・知人に勧められた
①27%
②友達に誘われた
④20%
③姉が新体操をしていてやりたいと思った
④体験に行って楽しかった
③33%
【考
②7%
⑤部活紹介を見てやりたいと思った
察】
上記の結果より、現在新体操を行っている高校生も幼少の頃から新体操に取り組んでいる選手の割合が
高いことが分かった。前項で述べたように、競技力向上を目指すためには幼少期のトレーニングが非常に
重要となってくるため、是非、現在のジュニア選手には高校生になっても新体操を続けてもらいたい。
また、新体操をはじめたきっかけで最も多かった回答は、
“姉が新体操をしていてやりたいと思った”で
あったが、高校生の回答を分析すると、姉が新体操をしている姿を見る、体験に行って楽しかった、部活
動紹介を見てやりたいと思ったなど、きっかけは様々だが、どんなきっかけにおいても選手自らが「新体
操がやりたい」と感じ、新体操に魅了されてはじめていることが分かった。
Q3
新体操のどんなところに魅力を感じましたか?(新体操をはじめる前) 複数回答可
⑤20%
①20%
④13%
①楽しそうに踊っている
②色々な技がすごい
③リボンなど手具に魅かれた
②20%
③27%
④レオタードがきれい
⑤音楽に合わせて踊りたい
-4-
Q4
どんなときに新体操の魅力を感じますか?(新体操をはじめてから)
複数回答可
⑤6%
①踊っているとき
①19%
②新しい技ができたとき
④25%
③試合で演技しているとき
④試合でいい演技ができたとき
②44%
③6%
【考
⑤褒めてもらえたとき
察】
上記の結果より、新体操をはじめる前は高校生もジュニアとほぼ同様の魅力を感じたことが分かった。
やはり、しなやかな演技と様々な手具は新体操の魅力であり、見る人を惹きつけるのであろう。私自身も
新体操をはじめたきっかけは優雅に舞うリボンに惹かれたからであった。
また、新体操をはじめてからは、技ができたときやいい演技ができたときなど、主に達成感を感じたと
きに魅力を感じていることが分かった。ジュニアの時期に新体操をするやりがいを見つけたり、達成感を
味わうことができると「高校生になっても続けたい」という意欲につながるのではないかと感じた。
Q5
高校生でも新体操を続けたのはなぜですか?
・もっと上手になりたかったから
・団体競技に挑戦したかったから
・高校でも新体操を頑張ろうと思ったから
・自分にはこれしかないと思ったから
・インターハイに出場したかったから
・本気で新体操がしたかったから
・同世代の人と一緒に踊りたかったから
・高校生がかっこよかったから
・中学生の最後の試合で悔いが残り、高校でその悔しさをはらしたいと思ったから
・部活見学で楽しそうだったから
Q6
高校の新体操部として、どんな活動をしたいですか?
・部員全員で協力し合える充実した活動がしたい
・多くの大会に出場したい
・活気のある練習がしたい
・雰囲気の良い練習がしたい
・多くの技に挑戦できるような練習がしたい
・色々な演技をしたい
・全国で上位を目指せるような活動がしたい
【考
察】
上記の結果より、現在新体操を行っている高校生は、それぞれの選手が目的意識をきちんと持っており、
何をするために高校の新体操部に入部したのか、目標が明確であることが分かった。また、ジュニア時代
に身近で高校生の演技を見ていた選手は、高校生の活気ある練習や迫力のある団体演技に憧れを抱き、高
校でも意欲的に新体操をしている。このことから、ジュニアと高校生の交流を深め、一緒に練習する機会
を増やしていくことが高校新体操部の競技人口増加につながっていくのではないかと感じた。
また、高校の新体操部としてどんな活動をしたいかという質問では、雰囲気の良さ、様々な技や演技に
挑戦できること、大会成績の向上など、練習や試合に対する熱い思いが伝わる回答が多かった。この要望
を少しでも多く実現させ、生徒たちのやりがいにつなげていきたいと感じる。
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4. まとめ
今回の調査結果より、本県の新体操を行っているジュニアの選手は、新体操に魅了され、自ら楽しんで練
習に励んでいることが分かった。しかし、その選手たちの約半数は今後も新体操を続けていくかについては
不明確であり、中学や高校進学時に競技を離れてしまう選手も少なくない。中学、そして高校でも継続して
新体操がしたいと思う選手が増えるよう、ジュニアと高校の指導者が協力し、それぞれの年代で感じること
ができる新体操の魅力を伝える努力をしなければならないと感じる。また、選手のなかには、進学したい学
校に新体操部がない等の理由により、新体操を続けたくても続けていくことが困難であることから、ジュニ
ア期に基礎をしっかりと身につけてきた能力の高い選手まで継続することを断念せざるを得ない状況がある。
この問題は、県全体で何らかの対策をとり、改善していかなければならないと考える。
高校での競技人口を増加させ、選手たちが多くのライバルと共に競い合いながら競技力を高めていき、本
県の新体操がさらに発展していくよう、新体操関係者と連携して努めていきたい。
最後に、本研究を進めるにあたってアンケートに協力してくださった皆様に感謝を申し上げ、本研究を終
了したいと思います。
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