ロシアビジネス ロシアNIS貿易会の活動 今月のピックアップ 道銀

業界トピックス
「
2014年3月の動き
ロシアビジネス
道銀ウラジオストク事務所開設へ
味の素、ロシア外食市場向け冷凍餃子を販売
日通、ウラジオストク向け発着一貫輸送
ダイドードリンコがロシアに本格進出
日本商社がサウスストリーム向けに鋼管供給
日産、ロシアの現調率を80%まで高める
日産がロシア向けダットサンのスケッチを公開
JAL、S7とのコードシェアを拡大
ロシアNIS貿易会の活動
モスクワ国際木造住宅展への出展支援
第6回日露投資セミナー開催
今月のピックアップ
関西広域連合・鳥取県主催「ロシア商談会」
道銀ウラジオストク事務所開設へ
株式会社北海道銀行は3月7日、ウラジオストクに駐在員事務所を開設するこ
とを発表した。ロシア極東への進出を計画する建設関連企業や漁業事業者らを支
援する。同事務所の概要は以下の通り。
■ 名
称:株式会社北海道銀行 ウラジオストク駐在員事務所
The Hokkaido Bank, Ltd. Vladivostok Representative Office
■ 住
所:17 Okeanskiy Pr., office 613, Vladivostok, 690091, Russian Federation
■ 開設日:平成26年3月18日
■ 人
員:日本人スタッフ2名・現地スタッフ1名
所長 天間幸生 副所長 伊藤清平
味の素、ロシア外食市場向け冷凍餃子を販売
味の素株式会社は3月17日、同月末より、モスクワとサンクトペテルブルグで
日本食レストランを中心とした外食市場向けに、冷凍野菜餃子「Vegetable Gyoza」
の販売を開始すると発表した。同社はロシアにおいて食品事業のさらなる拡大を
図り、2016年までに食品事業の売上高6億円を目指す。「Vegetable Gyoza」はグ
ループ会社のタイ味の素冷凍食品社がタイで生産し、ロシア味の素社(ロシア国
内において食品およびアミノ酸関連製品を販売)が輸入・販売する(詳細は今号
「ビジネス最前線」を参照いただきたい)。
日通、ウラジオストク向け発着一貫輸送
日本通運株式会社は3月1日より、日本発海上混載一貫輸送サービスの新たな
126
ロシアNIS調査月報2014年5月号
2014年3月の動き
仕向地としてウラジオストクを追加し、販売を開始した。日通の海外ネットワー
クをいかして、現地法人ロシア日本通運合同会社のウラジオストク営業所を窓口
とすることで、発着ともに日本通運グループによる高品質な一貫輸送を提供する。
日本の各港(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、博多、石狩、苫小牧、新潟、富
山、金沢)から発送することができ、ウラジオストクでコンテナから取り卸、輸
入通関の後、さらにハバロフスクなど内陸地への配送にも対応する。日通は、す
でに鉄道を利用したロシア国内各地向け鉄道輸送サービスや、ロッテルダムを起
点としたモスクワ向け混載トラックサービスなども展開している。
ダイドードリンコがロシアに本格進出
『読売新聞』(2014.3.9)は、ダイドードリンコ株式会社が自動販売機を用い
た清涼飲料水の販売事業でロシア市場に本格進出すると報じた。これまで約5年
間かけてウラジオストクに100台の自販機を置き、試験的に缶コーヒーやジュー
スなどを売ってきた同社は、2019年1月期までにモスクワ市内を中心に1万台の
自販機を設置し、売上高50億円を目指すという。
日本商社がサウスストリーム向けに鋼管供給
『日刊産業新聞』(2014.3.18)によると、住友商事株式会社および伊藤忠丸紅
鉄鋼株式会社がロシアから黒海海底を経由し欧州へ天然ガスを輸送するプロジ
ェクト「サウスストリームプロジェクト」において、黒海海底部分の第2パイプ
ラインに鋼管を供給することが決定した。第2パイプラインでは長さ12mの鋼管
が約7万5,000本使用される予定。契約金額は合計で8億ユーロ。
日産、ロシアの現調率を80%まで高める
『日刊自動車新聞』(2014.3.7)は、日産自動車株式会社のシニアバイスプレ
ジデントであるコリン・ローザー氏の言として、同社がロシアの生産拠点で約
20%にとどまる現地調達比率を80%まで高める方針であることを報じた。日産車
が新たな開発手法であるコモン・モジュール・ファミリー(CMF)に切り替わ
ることで部品の共通化が図りやすくなるため、ひとつのサプライヤーからの調達
規模の拡大が見込めるという。
日産がロシア向けダットサンのスケッチを公開
日産自動車株式会社は3月13日、ロシアに投入する新興国向けブランド「ダッ
トサン」新モデルのデザインスケッチを公開した。4月4日にモスクワで同モデ
ルの発表会を開催する。ロシア専用に開発した新型車は、日産が資本提携先のル
ノーと共同買収したロシア自動車最大手、AvtoVAZの工場で生産される。
ロシアNIS調査月報2014年5月号
127
業界トピックス
JAL、S7とのコードシェアを拡大
日本航空株式会社は3月11日、ロシアの航空大手シベリア航空(S7)との共同
運航(コードシェア)を同月19日から拡大すると発表した。現行の成田~ウラジ
オストク、成田~ハバロフスクの極東2路線に加え、モスクワ発着でサンクトペ
テルブルグなどロシア国内12都市を結ぶ路線を追加。日航が運航する成田~モス
クワ線との乗り継ぎの利便性を高める。他の共同運航の対象はヴォルゴグラード
線、エカテリンブルク線、ソチ線、サマラ線など。
モスクワ国際木造住宅展への出展支援
平成25年度国庫補助事業対ロシア貿易・投資促進ビジネスマッチングの一環と
して、当会業務部の原真澄部長ならびに専門家3名を3月11~18日にかけてモス
クワへ派遣し、モスクワ・クロックス国際見本市会場で開催された「第10回モス
クワ国際木造住宅展2014」(開催期間:3月13~16日。主催:World Expo Group
社)で日本企業の出展支援を行った。当会が確保した展示スペースにおいて、日
本企業2社(YKK AP株式会社と富士スレート株式会社)が住宅建材製品を展示。
ロシアの建材市場、住宅市場について豊富な情報をもつ大陸貿易株式会社および
サンクトペテルブルグの住宅建材商社住宅メーカーである有限会社Construction
& Distributionの協力を得て、適切なアドバイスを行い、出展した日本企業の商談
成果を導いた。また、3月17日には、モスクワ郊外に立地する一戸建て住宅展示
場を視察し、その建築技術、使用されている建材、価格などを調査。ロシアの住
宅市場の特徴、ロシア人の住宅文化などの情報を収集した。
第6回日露投資フォーラム開催
3月19日、東京のホテルニューオータニにおいて、「第6回日露投資フォーラ
ム」が開催された(経済産業省、ロシア経済発展省、日露貿易投資促進機構が主
催、ロシアNIS貿易会等が後援)。日ロ双方から1,000名以上が参加し、過去最多
の参加者数となった。同フォーラムは、日本企業のロシア市場進出および投資の
拡大を目的として実施されているもので、2006年9月にサンクトペテルブルグで
開催された第1回から、2012年6月カザン開催の前回まで、日ロ交互にこれまで
計5回開催されてきた。第6回目の今回はテーマを「日露投資協力の新分野の開
拓」に設定し、従来にも増して広い分野にわたり活発な議論が行われた。フォー
ラムの模様は本誌特集を参照いただきたい。
128
ロシアNIS調査月報2014年5月号
2014年3月の動き
関西広域連合・鳥取県主催「ロシア商談会」
3月4~8日、大阪府内および鳥取県内で、2回目となる関西広域連合(構成
団体:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、徳島県、京都市、
大阪市、堺市、神戸市)・鳥取県主催の「ロシア商談会」が実施された。これは
昨年度から始まった、ロシア向け輸出として有望な製品・技術を有する企業の発
掘、対ロビジネスの推進を目的とした事業であり、今年度は「食品、日用雑貨、
化粧品、建材」分野のロシア企業8社を招聘した。昨年度の1回目(3月25日お
よび27日に鳥取県米子市、大阪市において開催)よりも日ロ双方の参加企業は増
え、活発な商談が行われた。今号では、前回に続き、同事業について鳥取県商工
労働部経済産業総室通商物流室課長補佐の清水明史さんよりご寄稿いただいた。
自治体による側面支援はどうあるべきか。関係各位にとって大いに参考になると
思われるので、ぜひお読みいただきたい。
*
*
*
*
*
商談概況 商談件数は61件。なかでも食品および化粧品の引き合いが強く、約
8割の商談において、サンプルの持ち帰りや商談の継続が決まった。参加企業は
以下の通りである。
【招聘ロシア企業】
(8社)
●「ズダローヴィ・プロドクティ」(ヴォロネジ州) 健康食品取扱企業
●「エイランCPB」(サンクトペテルブルグ市) 日本産食品取扱企業
●「シュパシュカル」(チュヴァシ共和国)
ショッピングセンター
●「建材資材センター」(チュヴァシ共和国) 建材卸会社
●「ロケット・ピザ」(サマラ州) チェーン展開のピザ店
●「TOKUMO」(ハバロフスク地方) 日本商品取扱企業
●「YUME」(ハバロフスク地方) 日本商品取扱企業
●「エイラン」(沿海地方) 日本商品取扱企業
【日本側参加企業】
(21社)
大阪会場(16社)
メーカー(化粧品、健康食品、製菓、調味料)、機械製造(小動物駆除、
計器)、 建築事務所、商社等
米子会場(5社。※別途、会社訪問による商談1社)
メーカー(化粧品、調味料、飲料)、農機具・建機販売、商社
商談会を振り返って
はじめてコンタクトをしたロシア企業家に「この商品は
素晴らしいので日本に来て商談しましょう」と誘ってもなかなか来ていただけな
ロシアNIS調査月報2014年5月号
129
業界トピックス
い。それでもひとたび訪日すれば、「たくさんの商品をみたい」、「あっちも行き
たい、こっちも行きたい」とリクエストは増える。しばらく日本に滞在してもら
って、こちらがアテンドするのは吝かでないが、日程も予算も限られている。
そういう時の対応に便利なのが、既存の産業見本市である。われわれは今回、
商談会を「第51回大阪インターナショナルギフトショー」の時期に併せて実施し
た。初めて日本に来られるロシア企業家の方にとっては、
「日本の技術レベルの
高さがわかった」
、
「何点か関心のある商品をみつけた。参加企業と連絡をとりた
い」など、「日本ブランド」に対する信頼を訪日早々に植え付ける意味で、効果
があった。また、
「この産業見本市があるから訪日を決断した」というロシア企
業家の方もおられた。今回はロシア側の関心を引くために、日本で開催する見本
市を有効活用できたと考えている。
わが国地方自治体の立場からは、
「地元の商品以外をPRする場までアレンジで
きない」、
「地元の商品とバッティングしてしまう」という懸念があるかもしれな
い。しかし、ロシアの企業家は、
「日本のいろいろな商品」に関心があるわけで、
そこを拾わないことには、地方における商談会そのものがセットできなくなるだ
ろう。
既存の産業見本市では、たくさんの商品を見ることができるが、その後の成約
如何は企業間のやりとり次第になる。他方、地方開催の個別商談会は、主催者の
「おもてなし力」で、日ロ双方の企業をしっかり支援する。よって主催者側の運
営にあたっては、それぞれの行事の目的を明確にした事業展開が必要である。
新たな発見
ロシア欧州部から参加した5社のなかから面白い発言があった。
「日本商品は品質が高いので今後取扱いを検討したい。ただ、ロシア西部は、
極東と異なり日本から遠い。よって、このたび知り合ったロシア極東企業を窓口
とし日本商品を輸入したい」
私たちにとっても、この話が実現して、ロシア極東をゲートウェイとしたロシ
ア西部への新たな物流網の構築ができることはうれしいことであり、今後の進展
に期待している。
なお、最終日の夜(日
本時間23時50分頃)は、
「国際女性デー」
(3月8
日)の前日ということも
あって、以下のやりとり
があった。
「国際女性デーに乾
杯!」
(ハバロフスク地方。
※同地方は日本よりも時
差が2時間早い)
「われわ
大阪会場における商談会の様子
130
ロシアNIS調査月報2014年5月号
2014年3月の動き
れの地域は3月7日だ。まだ早い!」(チュヴァシ共和国)「ここは日本ですよ。
もうすぐ3月8日になるので祝ってね」
(ヴォロネジ州)「カンパーイ!!」。
商談会後の今後の協力の話も含めて、硬軟とりまぜた話で盛り上がっていた。
改めてロシアの広さを実感すると同時に、訪日したロシア人同士が親密につなが
ったと思えた。
細やかな対応
中小企業にロシアビジネスへの関心をもってもらうにはどう
すればよいか。われわれの課題のひとつである。このたびの日本側商談会参加者
は「これからロシアを考えてみたい」という企業がほとんどであった。商談会後
のアンケートでは、
「商談会開催前にロシアセミナーを開催してほしかった」
「こ
のような商談会をたくさん開催してほしい」
「情報量がアジアに比べて少ないの
で、ロシアのライフスタイルなど、どんどん情報提供してほしい」
「自社商品は
たくさんあるので、それをすべてロシア企業に紹介できるシステムを構築してほ
しい」
「商談後のフォローアップで協力してほしい。ロシア側企業との商談会後
にアンケートを実施して、サンプル持ち帰り後の反応を確認してほしい」「商談
時間はもっと長く。30分では短い」などのご意見があった。
中小企業といっても経営基盤および業種は様々である。ロシア企業と直接取引
を行う企業もあれば、関心はあるが日本商社を間に挟む形態でないと実施できな
いという企業もある。情報提供および商談会の開催等により、ロシアビジネスに
取り組む日本側企業の掘りおこしに重点をおきながら、その後のフォローアップ
については、企業の要望に応じたサポートの必要性を再認識した。
日本センターの活用を 本誌『ロシアNIS調査月報』2013年5月号に寄稿した際
にも言及したが、今回もロシア各地の日本センターには、優良なロシア企業の紹
介、アドバイス等で大変お世話になった。この場を借りて、感謝申し上げたい。
「日本センターをどんどん利用すべきだ」と改めて感じた。
ロシア全土を対象に
地方レベルの経済交流事業はロシア極東中心になってし
まいがちだが、このたびはロシアの幅広い地域からお越しいただいた。ビジネス
は(当たり前であるが)「できるところとやる」ことになるので、地域を限定し
てしまうと、可能性もそれだけ狭まってしまう。今回の被招聘者、日本センター、
ロシア国内で開催される行事(商談会および見本市)への参加等を通じたネット
ワークを活用しながら、関西地域において新たなビジネスが創出されるよう、今
後とも支援を継続していきたい。
ロシアNIS調査月報2014年5月号
131