288 最新化粧品・ヘルスケア講座(第 I 講) J. Jpn. Soc. Colour Mater., 84〔8〕,288 – 294(2011) 化粧品美類への色材の応用 南 孝 司 *,† * ㈱資生堂リサーチセンター(新横浜) 神奈川県横浜市都筑区早渕 2-2-1(〒 224-8558) †Corresponding Author, E-mail: [email protected] (2011 年 5 月 9 日受付; 2011 年 6 月 14 日受理) 要 旨 メーキャップ製品にはさまざまな色材が含まれ,その役割は多岐にわたっている。ファンデーションの肌色や口紅のつややかな質感 を演出する色材,有害な紫外線から肌を守るための色材のほかに,近年ではスキンケア効果を謳う色材まで存在している。色材に求め られる効果はベースメーキャップ製品とポイントメーキャップ製品とでは微妙に異なり,ベースメーキャップ製品に対してはテクスチ ャーの良さや肌を自然に美しく見せる機能が重要なのに対し,ポイントメーキャップ製品では際立った輝きや色調の鮮やかさなど,色 材のもつ独特な外観・質感が重要な項目となる。本報ではメーキャップ製品の代表として,ベースメーキャップからはファンデーショ ン,ポイントメーキャップからは口紅を取り上げ,それぞれの美類の特徴を活かす色材を紹介するとともに,各色材の基礎的な性質や 実際の製品への応用例などを紹介する。 キーワード:化粧品,ベースメーキャップ,ポイントメーキャップ 用している人の心を豊かにする機能,紫外線や冬の乾燥などの 1.はじめに 外的環境から肌を守る機能等があるといわれている(図-1)が, 化粧品,とくに口紅やファンデーション,アイシャドーのよ 色材はこれら機能のどれにも関与する重要な素材である。 うなメーキャップ化粧品と呼ばれる美類は,色材と切っても切 メーキャップ化粧品には使用する部位あるいは使用目的か れない関係にある。メーキャップ化粧品は,肌の欠点を隠した ら,ベースメーキャップ化粧品とポイントメーキャップ化粧品 り,唇を鮮やかに演出することで人の肌や唇を美しく見せる機 との 2 種に大きく分類される。ベースメークアップ化粧品には 能,心地よい使用感やいつまでもくずれない美しさなどで,使 おもにファンデーションと白粉があり,肌の色や質感を整え, 顔全体に使用されるものである。一方,ポイントメークアップ 化粧品は,唇,目元,頬,まつ毛,眉,爪などを彩ることによ り,美しく魅力的な仕上がりを演出するのが大きな目的であ る。大切なのはどちらのメークアップ化粧品に対しても,機能 を付与するのはおもに色材の役目であり,その意味で色材は非 常に重要な素材である。 表-1 にメーキャップ化粧品に使用されるおもな粉体成分 1)を 挙げる。口紅の美しさを演出し,生き生きとした唇に見せる有機 系色材や,アイシャドーなどで光輝感を出す雲母チタンなどの パール剤,心地よい使用感を演出するタルクやマイカなどの滑沢 性粉末や,紫外線防御に用いる微粒子二酸化チタン,酸化亜鉛 などがある。本報においては代表的な色材について,その基礎 的な特徴とメーキャップ製品に与える効果について説明する。 図-1 メーキャップ製品の機能 2.ファンデーションに用いられる色材 〔氏名〕 みなみ たかし 〔現職〕 ㈱資生堂リサーチセンター新横浜メーキャ ップ・ヘア研究開発センター センター長 〔趣味〕サイクリング,カメラ 〔経歴〕 1981 年慶應義塾大学工学部応用化学科を卒 業。同年㈱資生堂入社。以来,約 30 年間メ ーキャップ製品の製品化研究と応用研究に 従事。口紅,アイシャドー,アイライナー, アイブロー,ネールエナメル,ファンデー ションなど,ほとんどすべてのメーキャッ プ製品の研究に携わってきた。 ファンデーションには,「顔のしみ・ソバカスやくまなどの 色むらを隠し,肌色を均一に見せる効果」と「毛穴・キメなど の凹凸を隠し,肌をなめらかに見せる効果」「肌の老化に関与 する有害な紫外線から肌を守る効果」「肌色を明るく生き生き と見せる効果」などが求められる。近年はこれらの機能を満た したうえで「素肌のような自然な仕上がり」をもつファンデー ションが求められ,ファンデーションに求めるデマンドは年々 − 20 −
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